トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き

【発明の名称】 連続圧延機における張力制御方法及び連続圧延機
【発明者】 【氏名】前田 知幸

【要約】 【課題】圧延材先端部の通板時におけるスタンド間張力の変動を防ぎ、安定した操業を可能とする連続圧延機における張力制御方法、及びこの張力制御方法を適用可能な連続圧延機を提供する。

【構成】複数の圧延スタンド2とルーパ6とを備えた連続圧延機1における張力制御方法であって、圧延材3の先端部を圧延するに際し、ルーパ6に作用するルーパ慣性相当量を推定し、推定されたルーパ慣性相当量に基づいて、圧延スタンド2のいずれかの圧延条件を変更して、圧延材3の先端部における張力が所定の値となるように制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延材を圧延する複数の圧延スタンドと該圧延スタンドの間に配備されたルーパとを備えた連続圧延機における張力制御方法であって、
前記圧延材の先端部を圧延するに際し、前記ルーパに作用する慣性モーメントであるルーパ慣性相当量を推定し、該推定されたルーパ慣性相当量に基づいて、前記圧延スタンドのいずれかの圧延条件を変更して、前記圧延材の先端部における張力が所定の値となるように制御することを特徴とする連続圧延機における張力制御方法。
【請求項2】
前記圧延材の先端部における張力が所定の値となるように制御するに際し、
前記連続圧延機の最下流に備えられた最終圧延スタンドと、該最終圧延スタンドの上流側に隣接する前段圧延スタンドとに着目し、
前記最終圧延スタンドと前段圧延スタンドとの間における圧延材の張力、ルーパ角度、ルーパトルクの少なくとも1つを用いて、最終圧延スタンドと前段圧延スタンドとの間に配備されたルーパのルーパ慣性相当量を推定し、
前記推定されたルーパ慣性相当量に基づいて、前段圧延スタンドのロール速度及び/又はロールギャップを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の連続圧延機における張力制御方法。
【請求項3】
前記推定されたルーパ慣性相当量に基づいた1又は複数の制御ゲインを準備しておき、前記制御ゲインを用いて、前段圧延スタンドのロール速度修正量及び/又はロールギャップ修正量を算出し制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の連続圧延機における張力制御方法。
【請求項4】
圧延材を圧延する複数の圧延スタンドと該圧延スタンドの間に配備されたルーパと該圧延スタンド及びルーパを制御する制御装置とを備えた連続圧延機において、
前記制御装置には、前記圧延材の先端部を圧延するに際し、前記ルーパに作用する慣性モーメントであるルーパ慣性相当量を推定し、該推定されたルーパ慣性相当量に基づいて、前記圧延スタンドのいずれかの圧延条件を変更して、前記圧延材の先端部における張力が所定の値となるように制御する張力補正手段が備えられていることを特徴とする連続圧延機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、連続圧延機における張力制御方法、及びこの張力制御方法を適用可能な連続圧延機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、薄鋼板や薄アルミ板等の圧延材は、複数の圧延スタンドを有する連続圧延機により製造されている。連続圧延機では、圧延材の板厚を所定のものにするために、圧延スタンドにおける圧下荷重やロールギャップなどを制御している。加えて、圧延スタンド間にはルーパが配備されており、圧延スタンド間における圧延材の張力(単に、スタンド間張力と呼ぶこともある)が所定の範囲に収まるように、当該ルーパの立ち上がり角度などが適切に制御されていた。
このようなスタンド間張力を制御する「張力制御方法」は、従来より数々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された技術は、圧延スタンド間に設置されたルーパの高さを計測し、その実績高さと目標高さとの差に基づいてロール速度を制御すると共に、スタンド間張力の実績値と目標値との差に基づいてルーパ電流を制御して張力を適正な値としている。さらに、ルーパ制御系の共振周波数、減衰係数を推定しつつ、この推定値に応じてロール速度の設定値に変更を加えることで、共振周波数、減衰係数を適正値に修正し、連続圧延機を安定操業を図っている。
また、特許文献2に開示された技術は、不特定の原因により発生する当該圧延スタンドの入側板厚変動を、入側板厚計などにより計測し、該計測値から当該圧延スタンドの後進率の変動量を算出し、該変動量を抑制するための出側板厚変化量を算出し、その結果を当該圧延スタンドに適用することで、圧延スタンド入側の張力変動の発生を抑制するものとなっている。
【特許文献1】特許第3041155号公報
【特許文献2】特許第3451919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ユーザからの製品に対する要求は厳しくなっており、例えば、コストダウン等もその一つとなっている。そのため、薄板等の圧延においては、従来であれば明確な制御を行わず、製品として出荷しなかった圧延材の先端部分に対しても、厳格なスタンド間張力等の制御を行い、製品として採用するような要望が現場より挙がってきている。また、非定常部である圧延材先端部を安定して圧延し連続圧延機全体を安定操業する観点からも、圧延材の先端部における張力制御の重要性は増してきている。
しかしながら、特許文献1の技術は、圧延材の先端部の通過後の定常部のみを想定した制御方法であって、圧延材中途部での張力制御を行うことは可能であるが、先端部での張力抑制は困難である。
【0005】
特許文献2の技術も、圧延材の中途部における張力変動を抑制する制御方法であって、圧延材の先端部等の非定常部での大きな張力変動には対処が困難なものとなっている。
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、圧延材先端部の通板時におけるスタンド間張力の変動を防ぎ、安定した操業を可能とする連続圧延機における張力制御方法、及びこの張力制御方法を適用可能な連続圧延機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本願発明者は、圧延材の先端部、すなわち非定常部における張力制御を行うにあたり、数々の圧延データを基に検討・研究を重ねた。その結果、非定常部における張力制御を行うに際しては、ルーパのみの制御、例えば、ルーパ電流やルーパトルク等を用いたルーパ角度のフィードバック制御では、非定常部の圧延中にルーパが圧延材から離れたり、必要以上に圧延材を押し上げたりすることがあり、連続圧延機全体として、不安定な制御を行うことを明らかとした。
【0007】
そこで、圧延材の先端部の張力制御においては、ルーパの動きのみに着目しそれを制御するのではなく、当該ルーパに作用する慣性モーメント(ルーパの慣性相当量)から得られた制御量を基に、圧延スタンド側を制御するようにし、圧延機全体、言い換えるならば制御系全体を安定に制御するやり方を採用することとした。
その結果として、圧延材を圧延する複数の圧延スタンドと該圧延スタンドの間に配備されたルーパとを備えた連続圧延機における張力制御方法であって、前記圧延材の先端部を圧延するに際し、前記ルーパに作用する慣性モーメントであるルーパ慣性相当量を推定し、該推定されたルーパ慣性相当量に基づいて、前記圧延スタンドのいずれかの圧延条件を変更して、前記圧延材の先端部における張力が所定の値となるように制御することとした。
【0008】
この張力制御方法を用いることで、圧延材先端部の通板時におけるスタンド間張力の変動が生じた場合であっても、該変動を確実に防止でき、連続圧延機を安定して操業することが可能となる。
好ましくは、前記圧延材の先端部における張力が所定の値となるように制御するに際し、前記連続圧延機の最下流に備えられた最終圧延スタンドと、該最終圧延スタンドの上流側に隣接する前段圧延スタンドとに着目し、前記最終圧延スタンドと前段圧延スタンドとの間における圧延材の張力、ルーパ角度、ルーパトルクの少なくとも1つを用いて、最終圧延スタンドと前段圧延スタンドとの間に配備されたルーパのルーパ慣性相当量を推定し、前記推定されたルーパ慣性相当量に基づいて、前段圧延スタンドのロール速度及び/又はロールギャップを制御するとよい。
【0009】
連続圧延機では通板された圧延材は、下流側に行くに従って圧延材の板厚が薄くなるため、厳格な張力制御が必要となることが知られている。そのため、本発明の張力制御方法においては、最終圧延スタンドとその1つ上流側に位置する前段圧延スタンドとに着目することとした。具体的には、最終圧延スタンドと前段圧延スタンドとの間に配備されたルーパに着目することにした。
また、前記ルーパ慣性相当量は、「圧延材の張力」や、ルーパの立ち上がり角度である「ルーパ角度」、ルーパに設けられた駆動モータが発生するトルクである「ルーパトルク」などの値により大きく変動するため、これらをファクタとしてルーパ慣性相当量を推定するようにした。
【0010】
加えて、ほとんどの連続圧延機では、下流側の圧延スタンドの圧延条件を変更すると、それに連動して上流側の圧延スタンドの圧延条件が変更されるといった制御が従来より採用されている。従って、推定されたルーパ慣性相当量に基づいて、最終圧延スタンドの圧延条件を変更すると、前段圧延スタンドの圧延条件も予期せず変更されることがあり、本発明の張力制御の本来の機能を十分に発揮できない可能性も否めない。ゆえに、推定されたルーパ慣性相当量に基づいて、最終圧延スタンドではなく、前段圧延スタンドのロール速度及び/又はロールギャップを制御するようにしている。
【0011】
さらに好ましくは、前記推定されたルーパ慣性相当量に基づいた1又は複数の制御ゲインを準備しておき、前記制御ゲインを用いて、前段圧延スタンドのロール速度修正量及び/又はロールギャップ修正量を算出し制御を行うとよい。
制御ゲインを複数用意し適宜切り替えることにより、制御量が不足するなどの現象が発生することを確実に排除できる。
また、本発明に係る連続圧延機は、圧延材を圧延する複数の圧延スタンドと該圧延スタンドの間に配備されたルーパと該圧延スタンド及びルーパを制御する制御装置とを備えたものであって、前記制御装置には、前記圧延材の先端部を圧延するに際し、前記ルーパに作用する慣性モーメントであるルーパ慣性相当量を推定し、該推定されたルーパ慣性相当量に基づいて、前記圧延スタンドのいずれかの圧延条件を変更して、前記圧延材の先端部における張力が所定の値となるように制御する張力補正手段が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る圧延材の張力制御方法、及びこの張力制御方法が適用された連続圧延機を用いることで、圧延材先端部の通板時におけるスタンド間張力の変動を防ぐことができる。また、圧延材先端部の張力を適切に制御することで、当該先端部における板厚等も適切なものとすることができ、連続圧延機を安定して操業することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る張力制御方法を、薄板の熱間連続圧延機を例示して図を参照しつつ説明する。
薄鋼板や薄アルミ板は、加熱されたスラブや元板を複数の圧延スタンドが備えられた連続圧延機に導入し、連続的に圧延することで製造される。連続圧延機の上流側に備えられた圧延スタンドは粗圧延スタンドであり、下流側に備えられた圧延スタンドは板厚などを整える仕上げ圧延スタンドである。
最終段に備えられた最終圧延スタンドを出た圧延材は、所定の板厚、板幅、板クラウンへと圧延され、移送方向の下流側に配置された冷却装置内を通りながら冷却され、巻き取り装置で巻き取られる。
【0014】
図1は、連続圧延機1の下流側に配置された複数個の圧延スタンド2を示したものである。なお、本実施形態の説明においては、圧延材3の移送方向において、移送されていく側(巻き取り装置10側)を下流側、その反対側を上流側と呼ぶ。各圧延スタンド2は、一対のワークロール4と、このワークロール4をバックアップする複数のバックアップロール5と、圧延荷重を測定するロードセルと、を供えている。各圧延スタンド2には、板速度を測定する板速度検出器、入側及び出側板温度計、入側及び出側板厚計なども設置されている。
【0015】
各圧延スタンド2の間には、圧延材3の張力(単にスタンド間張力と呼ぶこともある)を調整可能なルーパ6が設けられている。このルーパ6の基端側にはトルク計などの張力測定手段をが設けられ、スタンド間張力を計測可能となっている。
また、連続圧延機1には、プロセスコンピュータなどにより構成される制御装置7が備えられている。制御装置7には、例えば、最終圧延スタンド2[N]の出側板厚を基に各圧延スタンド2のロールギャップを調整する公知の板厚制御手段や、圧延材3の中途部(定常部)を圧延する際に、ルーパ6で計測された張力値を用いて、圧延スタンド2のロール速度を制御する公知のロール速度制御手段8を備えたものとなっている。
【0016】
加えて、制御装置7には、圧延材3の先端部における張力の実績値を用いて、ルーパ6のルーパ慣性相当量(単に、慣性相当量と呼ぶこともある)を推定し、推定されたルーパ6の慣性相当量に基づいて、圧延スタンド2の圧延条件を変更して、圧延材3の先端部における張力が所定の値となるように制御する張力補正手段9が備えられている。
次に、張力補正手段9で実行される圧延材3の先端部における張力制御について述べる。
張力補正手段9では、連続圧延機1の最下流に備えられた最終圧延スタンド2[N]と、最終圧延スタンド2[N]の上流側に隣接する前段圧延スタンド2[N−1]とに着目し、最終圧延スタンド2[N]〜前段圧延スタンド2[N−1]における圧延材3の張力、ルーパ角度、ルーパトルクの少なくとも1つを用いて、最終圧延スタンド2[N]〜前段圧延スタンド2[N−1]に配備されたルーパ6の慣性相当量を推定し、推定されたルーパ6の慣性相当量に基づいて、前段圧延スタンド2[N−1]のロール速度及び/又はロールギャップを制御するものとなっている。
【0017】
以降、最終圧延スタンド2[N]〜前段圧延スタンド2[N−1]に配備されたルーパ6を「当該ルーパR」、最終圧延スタンド2[N]〜前段圧延スタンド2[N−1]における圧延材3の張力を「当該スタンド間張力」と呼ぶ。
図3には、張力制御方法のフローチャートが示されている。
まず、圧延工程の最初は、圧延材3の先端部が圧延されつつ上流側から流れてきて、前段圧延スタンド2[N−1]に噛み込み、その数秒後に最終圧延スタンド2[N]に噛み込むことになる。
【0018】
その際、最終圧延スタンド2[N]に圧延材3が噛み込んだことを確認した後、待避位置にある当該ルーパ6が立ち上がり、所定のルーパ角度を維持すると共に圧延材3を上方へ押し上げ、圧延材3に張力を与えるようになる。
その後、例えば「最終圧延スタンド2[N]への板噛み込み+T秒」以降から、当該スタンド間張力の実績値tfi-1を、当該ルーパRにより計測する(S1)。
次に、圧延材3の先端部が通板した際に立ち上がった当該ルーパRが、圧延材3に確実に接触しているか否かを、当該ルーパRから得られた当該スタンド間張力の実績値tfi-1と、予め設定された閾値THを用いて、式(1)により判定する(S2)。
【0019】
【数1】


【0020】
式(1)を満たさない場合(スタンド間張力が小さい場合)は、当該ルーパRと圧延材3とが非接触であると判断して、例えば、圧延スタンド2のロール速度やロールギャップなどの修正量である制御補正値を計算せず、再度、S1へ戻る。
式(1)を満たす場合は、当該ルーパRが圧延材3に接触していると判断し、当該スタンド間張力の補正を行うための制御補正値を計算する。それに先立ち、S3において、ルーパ6の慣性相当量を算出する。
一般にルーパ6に関しては、式(2)が成立することが知られている。
【0021】
【数2】


【0022】
式(2)のDは、スタンド間張力の目標値と実績値との差であり、制御系から見ると外乱と考えられるものである。
かかる式(2)から導出される式(3)を基に、当該ルーパRのルーパ慣性相当量T’Iの推定を行う。
【0023】
【数3】


【0024】
ここで、TWは、最終圧延スタンド2[N]〜前段圧延スタンド2[N−1]に位置する圧延材3の自重に起因するトルクであり、圧延材3の寸法や密度、ルーパの立ち上がり角であるルーパ角度、当該ルーパRの各種寸法から算出される。TMは、当該ルーパRの自重によるトルクであって、ルーパ6の形状寸法、重量、ルーパ角度等を用いて計算できる。
Lはルーパトルクであり、ルーパ電流IL 当該ルーパRのトルク係数φを用いて、式(4)で算出することができる。
【0025】
【数4】


【0026】
次に、式(3)で推定されたルーパ6の慣性相当量を用いて、当該スタンド間張力を補正する必要があるか否かを判断する。かかる判断には、予め設定した閾値α,βを用いて計算を行う(S4)。
【0027】
【数5】


【0028】
式(5)を満足しない場合は、張力補正のための制御補正値を0とし、ルーパ慣性相当量に基づいた張力制御を行わないものとする。
式(5)を満たす場合は、制御補正値を算出するようにする(S5)。
本実施形態の場合の制御補正値は、前段圧延スタンド2[N−1]のロール速度の変更量ΔVRtであって、PI制御に基づく式(6)を用いて計算する。
【0029】
【数6】


【0030】
ロール速度の変更量ΔVRtを算出するための制御ゲインGP,GIは、一定であってもよく、ルーパ慣性相当量T’Iの範囲毎に複数個用意しておき、その範囲に合わせて変更して(切り換えて)もよい。ただし、制御ゲイン切換を行う場合であっても、ルーパ慣性相当量T’Iが一定値以下の場合には、制御ゲインGP,GI を切り換えないようにすると非常に好適な制御を行うことができる。
式(6)で得られるロール速度の変更量ΔVRtを前段圧延スタンド2[N−1]のロール速度の速度指令値に加算し、前段圧延スタンド2[N−1]のロール速度を変更する(S6)。
【0031】
なお、制御補正値として前段圧延スタンド2[N−1]のロールギャップ変更量ΔSRtを採用した場合、かかるΔSRtは、式(7)を用いて算出する。
【0032】
【数7】


【0033】
圧延材3の先端部の圧延が終了した後は、かかる張力制御をOFFとしてもよいし、ONのままでもよい。ON状態を維持したとしても、圧延材3の中途部(定常部)を圧延する際には、当該ルーパRのルーパ慣性相当量は適正値に落ち着き、式(5)を満たさないものとなる。ゆえに、本発明に係る張力制御は実際には作用しないことになり問題は生じない。
【実施例】
【0034】
図4〜図6には、本発明に係る張力制御方法を適用した場合の制御結果が示してある。
各図における破線は、本発明の張力制御方法を適用しない場合の例を示す(比較例)。比較例を見るとわかるように、圧延材3の先端部が最終圧延スタンド2[N]に噛み込んでルーパ6が立ち上がる際には、当該スタンド間張力が略1.10近くまで急激に上昇し、それに応じて従来からあるロール速度制御手段8によりロール速度を変更するような制御がなされている。加えて、先端部で生じた当該スタンド間張力の変動が大きな値であるため、それを修正するために必要な修正時間も長いものとなっている。
【0035】
一方、図4の実線に示す実施例では、圧延材3の先端部においてルーパ慣性相当量を的確に算出しそれを基に張力制御しているため、比較例と比して、より迅速にロール速度の修正を開始することができると共に、ロール速度の修正量も比較例が1.05であるのに対して本実施例では1.03程度で小さなものとなっている。それに伴い、当該スタンド間張力の変動も1.03程度に低減でき、変動抑制も短時間で実現できた。
つまり、本発明の張力制御方法を用いることで、圧延材3先端部の通板時における当該スタンド間張力の変動を防ぐことができると共に、連続圧延機1自体の安定した操業が可能となる。
【0036】
図5の実線に示す実施例は、前段圧延スタンド2[N−1]のロール速度を修正するための制御ゲインを、ルーパ慣性相当量の値に応じて切り換えるようにした場合の制御結果である。
ルーパ慣性相当量の値に応じて、制御ゲインを切り換えるといった「きめ細かい制御」を行っているため、図4の場合に比して、短時間での制御の効果が現れるものとなっている。例えば、ロール速度の修正も当初1.04程度となるが、短い時間で1.01程度まで減少するようになる。それに伴って、スタンド間張力の変動も1.03から短時間で1.01程度まで減少している。
【0037】
図6の実線に示す実施例は、前段圧延スタンド2[N−1]のロール速度の補正をするのではなく、推定したルーパ慣性相当量に基づき、前段圧延スタンド2[N−1]のロールギャップ修正量を算出し、このロールギャップ修正量により前段圧延スタンド2[N−1]を制御して張力制御を行ったものである。この場合であっても、迅速にロールギャップ量修正を開始することで、張力変動も比較例より大幅に且つ短時間で低減できるようになった。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0038】
例えば、制御ゲイン切換に関しては、制御ゲインGP,GI をロール速度やロールギャップの範囲毎に複数個用意しておき、その範囲に合わせて変更するようにしてもよい。
また、前段圧延スタンド2[N−1]の圧延条件を変更し張力制御を行ったが、これに限定されるものではなく、前々段圧延スタンド2[N−2]を制御対象としてもよい。その場合は、前々段圧延スタンド2[N−2]と前段圧延スタンド2[N−1]との間に位置するルーパ6の情報を基に制御補正値を計算することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】連続圧延機の概略を示した図である。
【図2】制御装置のブロック図である。
【図3】本発明に係る張力制御方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る張力制御方法を用いて連続圧延機を制御した結果(1)を示す図である。
【図5】本発明に係る張力制御方法を用いて連続圧延機を制御した結果(2)を示す図である。
【図6】本発明に係る張力制御方法を用いて連続圧延機を制御した結果(3)を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 連続圧延機
2 圧延スタンド
3 圧延材
6 ルーパ
7 制御装置
8 ロール速度制御手段
9 張力補正手段
R 当該ルーパ
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年7月13日(2006.7.13)
【代理人】 【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄

【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄


【公開番号】 特開2008−18460(P2008−18460A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−193164(P2006−193164)