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【発明の名称】 高炭素鋼熱延鋼板の冷却制御方法
【発明者】 【氏名】笹沼 昭男

【氏名】渡辺 勉

【氏名】志賀 幸成

【氏名】田村 徹也

【要約】 【課題】ランナウトテーブル上における高炭素鋼熱延鋼板の従来の温度予測計算では、水冷による温度降下だけでなく、変態発熱による温度上昇も考慮していたため、温度偏差の発生原因が水冷設備の経年劣化によってもたらされる計算誤差によるものか、変態発熱の計算誤差によるものか判別が困難で、温度予測精度が低くなっていた。本発明は、変態発熱を計算しないで、注水制御を行うことにより巻取温度精度を向上させる。

【構成】仕上温度計FDT測定位置から中間温度計MT測定位置までを前段とし、中間温度計MT測定位置から巻取温度計CT測定位置までを後段とする。前段では変態発熱を計算しない温度予測モデル式を用いて算出したMT測定位置での中間温度計算値が過去のデータから求めた巻取りまでに変態が完了する仮想の中間温度目標となるように注水するダイナミック制御を行い、後段では目標とする巻取温度となるようにフィードバック制御を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上温度計FDT測定位置からランナウトテーブルの中間温度計MT測定位置までを前段とし、中間温度計MT測定位置から巻取温度計CT測定位置までを後段として、前段では変態発熱を考慮しない温度予測モデル式を用いて算出したMT測定位置での中間温度計算値が過去のデータから求めた、巻取りまでに変態が完了する仮想の中間温度目標値となるように注水するダイナミック制御を行い、後段では目標とする巻取温度となるようにフィードバック制御を行うようにしたことを特徴とする高炭素鋼熱延鋼板の冷却制御方法。
【請求項2】
上記仮想の中間温度目標値が下記数1式及び数2式を用いて算出されることを特徴とする請求項1記載の高炭素鋼熱延鋼板の冷却制御方法。
【数1】


【数2】


ここで
OMT:オペレータが手動で注水する場合に、後段ではほとんど注水せずに巻取りまで に変態が完了してCT測定位置での巻取温度が目標巻取温度となるような目安 となる中間温度で、過去のデータから求められるオペレータ目標値
ΔMT:OMTの補正値
n:当材使用値
n+1:同一ロットの次材使用値
G:学習ゲイン
ΔCT:目標巻取温度とCT測定位置での実際の巻取温度の差
【請求項3】
算出した中間温度計MT測定位置での中間温度計算値が前記仮想の中間温度目標値を満足できない場合、MT測定位置にできるだけ近い位置で前記仮想の中間温度目標値となるように、後段で変態発熱を考慮しない上記温度測定モデル式に基づいて注水を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の高炭素鋼熱延鋼板の冷却制御方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間仕上圧延機と巻取機との間に設けられた冷却装置による高炭素鋼熱延鋼板の冷却制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱延鋼板は、仕上圧延機より巻取機に至る間の搬送テーブル(ランナウトテーブル)に設けた冷却装置によって所定の温度まで冷却されたのち巻取られるが、冷却の温度履歴によって鋼板の金属組織が変化し、それにより鋼板の機械的性質が変化するため、冷却は所定の冷却速度で冷却することが材質要求上望まれ、また変態時の発熱による温度上昇が大きな高炭素鋼では、ランナウトテーブル上で変態を完了させてから巻取ることが要求される。万一変態が完了しないで巻取ってしまうと、巻取後のコイルが変形したり、パーライト組織が肥大化して機械的性質が変化するためである。
【0003】
所定の巻取温度で冷却するために従来は、冷却装置からの注水による冷却のほか、輻射熱、空気への熱伝導、テーブルローラへの熱伝導等の伝熱や、変態熱の影響を考慮した温度予測モデル計算式を用い、仕上圧延機出側の鋼板温度、圧延速度、板厚等から所定の巻取り温度を達成するために必要な注水条件を決定して冷却を行っていた。
【0004】
簡易的な冷却方法としては、前段の注水設定をテーブル設定でプリセットし、後段の冷却をフィードバック制御する方法が知られる。
【特許文献1】特開平4−141531
【特許文献2】特開平8−103809
【特許文献3】特公昭61−19322
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
温度予測に関し、低炭素鋼では変態時の発熱による温度上昇が小さいため、変態熱は無視しても温度予測モデルの計算誤差として補正係数を掛けることで十分な精度が得られるが、高炭素鋼では上述するように、変態時の発熱による温度上昇が大きいため変態発熱量の予測計算が不可欠であった。しかしながら高炭素鋼の変態の態様は、冷却速度、変態開始温度によって変化するため予測計算が困難で、温度予測の精度は低くならざるを得なかった。また注水実績、シミュレーション等によって温度予測モデルを調整する際には、所定の巻取り温度との誤差の発生原因が変態発熱の項によって生ずるのか、注水等の熱伝達の項によって生ずるのか判別することが困難で、調整がきわめて困難であった。
【0006】
また前段の注水をプリセットし、後段でフィードバック制御する方法に関しては、前段の注水設定が固定であるため、仕上温度計FDT(以下FDTという)測定位置での仕上温度実績値の変化、仕上圧延機の出側での速度の変化に対応できず、所定の巻取温度を得ることが期待できなかった。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決することを目的としてなされたもので、変態発熱を計算しないで、注水制御することにより高炭素鋼熱延鋼板の巻取温度精度を向上させることができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、高炭素鋼熱延鋼板の冷却制御方法に関するもので、FDT測定位置からランナウトテーブルの中間温度計MT(以下、MTという)測定位置までを前段とし、MT測定位置から巻取温度計CT(以下、CTという)測定位置までを後段として、前段では変態発熱を考慮しない温度予測モデル式を用いて算出したMT測定位置での中間温度計算値が過去のデータから求めた、巻取りまでに変態が完了する仮想の中間温度目標値(以下、仮想MTという)となるように注水するダイナミック制御を行い、後段では目標とする巻取温度となるようにフィードバック制御を行うようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明の仮想MTが下記数1式及び数2式を用いて算出することを特徴とする。
【数1】


【数2】


ここで
OMT:オペレータが手動で注水する場合に、後段ではほとんど注水せずに巻取りまで に変態が完了してCT測定位置での巻取温度が目標巻取温度となるような目安 となる中間温度で、過去のデータから求められるオペレータ目標値
ΔMT:OMTの補正値
n:当材使用値
n+1:同一ロットの次材使用値
G:学習ゲイン
ΔCT:目標巻取温度とCT測定位置での実際の巻取温度の差
【0010】
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明において、算出したMT測定位置での中間温度計算値が仮想MTを満足できない場合、MT測定位置にできるだけ近い位置で仮想MTとなるように後段で変態発熱を考慮しない温度測定モデル式に基づいて注水を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
従来の温度予測モデル計算では、水冷による温度降下だけでなく、変態発熱による温度上昇も考慮していたため、温度偏差の発生原因が水冷設備の経年劣化によってもたらされる計算誤差によるものか、変態発熱の計算誤差によるものか判別が困難で、熱延鋼板間の温度偏差を小さくすることは困難であったが、請求項1に係わる発明の冷却制御方法では、前段で変態発熱を考慮しない温度予測モデル式を用いて中間温度計算値が仮想MTとなるようにダイナミック制御を行い、後段で実測値と目標巻取温度との偏差が0となるようにフィードバック制御しており、仮想MTと実績値との偏差が水冷計算誤差によるものか、変態発熱の計算誤差によるものか、という分析を行う必要がないこと、変態が巻取りまでに完了できること、前段の注水をプリセットし、後段でフィードバック制御する方法に比べると、前段では温度予測モデル式を用いて算出した中間温度計算値が仮想MTとなるように注水し、注水設定が固定でないため、熱延鋼板全長にわたって高い精度を確保することができること等の効果を奏する。
【0012】
請求項2に係わる発明は、熱延鋼板1本ごとにCT測定位置による実測値と目標巻取温度との偏差ΔCTを求め、これに学習ゲインGを乗じてΔMT値の更新を行うようにしたもので、水冷能力の経時変化を含めた環境変化に追従させることができる。
【0013】
請求項3に係わる発明によると、前段での冷却能力不足により、中間温度計算値が仮想MTを満足しない場合でも後段のMT測定位置に近い位置で仮想MTになるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明方法を実施するランナウトテーブル冷却設備のレイアウトを示すもので、仕上圧延機の最終スタンド1より巻取機2に向うランナウトテーブル上の熱延鋼板3に対し、水冷の冷却装置4により冷却を行うようにしている。図中、5はFDT、6はMT、7はCTである。
【0015】
次に熱延鋼板3の冷却制御方法を図2に従って説明する。
先ず、オペレータが手動で注水する場合に、後段ではほとんど注水せずに巻取りまでに変態が完了してCT測定位置での巻取温度が目標巻取温度となるような目安となる中間温度であり、過去のデータから求められるオペレータ目標値であるOMTを求め、図示しない計算機に格納しておく。次に該計算機が仕上圧延機の第1スタンドに熱延鋼板(n)3の先端が進入したタイミングでOMTと、下記数2式に基づいて事前に算出して計算機に格納しておいたΔMT(n)とを用いて下記数1式に基づいて仮想MTを算出する。
【数1】


【数2】


ここで
OMT:オペレータが手動で注水する場合に、後段ではほとんど注水せずに巻取りまで に変態が完了してCT測定位置での巻取温度が目標巻取温度となるような目安 となる中間温度で、過去のデータから求められるオペレータ目標値
ΔMT:OMTの補正値
n:当材使用値
n+1:同一ロットの次材使用値
G:学習ゲイン
ΔCT:目標巻取温度とCT測定位置での実際の巻取温度の差
【0016】
仮想MT算出後、上位計算式から得られた熱延鋼板3の温度、板厚等から従来用いてきた普通鋼の温度予測モデル計算式である下記数3式の変態発熱の項を除いた式に基づいて仮想MTと合致するように注水順テーブルに従って注水バルブの設定を行う。このとき計算機によって算出した中間温度計算値が仮想MTを満足しないときには、後段で数3式の変態発熱の項を除いた式に基づいた注水バルブの設定を行ってMT測定位置にできるだけ近い箇所で仮想MTに合致させるようにする。
【0017】
上記の計算による注水バルブの設定を熱延鋼板(n)3がCT側へ一定距離進む毎に実施するダイナミック制御を行う。
【数3】


【0018】
以上のようにして設定された条件で計算機が仮想MTを目標とした注水制御を行う。図中、点線は計算温度、実線は実績温度を示す。熱延鋼板3がMT測定位置に達すると、以降の後段では、目標巻取温度とCT測定位置での実績値との差が解消されるようにフィードバック制御が行われる。図示される後段の温度上昇は、変態発熱によって生じたものである。
【0019】
熱延鋼板(n)3の先端から所定の距離の部分がCT測定位置を通過したタイミングで、熱延鋼板(n)3の実績巻取温度と目標巻取温度との偏差ΔCT(n)を用いて数2式に基づいて同一ロットの次材のΔMT(n+1)を算出し、計算機に格納する。同一ロットの次材においては、このΔMT(n+1)により数1式に基づいて仮想MTが算出され、計算機が前述の段落番号0016に記載の手順により注水バルブの設定を行う。
【実施例】
【0020】
材質SK90、板厚1.80mm及び2.00mmの2種類の板厚の熱延鋼板136本について、それぞれ上述の実施形態に示される冷却制御、すなわち各熱延鋼板(n)3の先端が仕上圧延機の第1スタンドに進入したタイミングでOMTと、数2式により事前に算出して計算機に格納しておいたΔMTとを用いて数1式により仮想MTを算出し、ついで鋼板の板厚と温度から数3式の変態発熱の項を除いた式に基づいて仮想MTと合致するように注水バルブの設定を行い、この設定に基づいて計算機による注水制御を行った。そして熱延鋼板がMT測定位置に達したのちは目標巻取温度の590℃とCT測定位置での実績値との差が解消されるようにフィードバック制御を行った。その結果、熱延鋼板136本中、1本だけ目標巻取温度とCT測定位置での実績値との差が許容範囲を越えたため手動によるバルブ制御を行ったが、その他は許容範囲に収まり、手動操作を伴わない計算機の注水制御による自動化比率は99.3%に達した。
また、巻取温度のコイル内変動を示す指標である巻取温度コイル内標準偏差は、全コイルの平均で7.9℃であり、以下に述べる比較例に比べコイル内の巻取温度の安定性にも優れていた。
【比較例】
【0021】
実施例と同じ熱延鋼板46本について、それぞれ数3式の変態発熱の項を含めた式に基づいて目標巻取温度に合致するように注水バルブの設定を行った以外は実施例と同じ方法で冷却制御を行ったところ、手動操作を必要としない自動化比率は56.5%となった。こここで手動操作を必要とする態様には、自動制御で冷却制御を開始し、冷却中に実績CTが許容範囲を越えたために手動操作を実施した態様のほか、自動制御で調整の見通しが立たなかったために冷却開始時点から手動操作を実施した態様がある。
また、実施例と同様にして求めた巻取温度コイル内標準偏差は10.4℃であった。
以上の結果を以下の表1と図3に示す。
【0022】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ランナウトテーブル冷却設備のレイアウトを示す図。
【図2】本発明方法の模式図。
【図3】巻取温度のコイル内標準偏差を示す図。
【符号の説明】
【0024】
1・・最終スタンド
2・・巻取機
3・・熱延鋼板
4・・冷却装置
5・・FTD
6・・MT
7・・CT
【出願人】 【識別番号】000004581
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
【出願日】 平成18年7月13日(2006.7.13)
【代理人】 【識別番号】100079636
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 晃一


【公開番号】 特開2008−18459(P2008−18459A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−192937(P2006−192937)