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【発明の名称】 ハイドロタルサイト様物質を用いた土壌浄化装置および土壌浄化方法
【発明者】 【氏名】朝倉 健夫

【氏名】大野 睦浩

【氏名】梶本 崇

【要約】 【課題】低コストで陰イオン交換性能が高い土壌浄化装置および土壌浄化方法を提供すること。

【解決手段】有害物質等で汚染された土壌8から汚染水(地下水)9を揚水する揚水手段5と、結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質又はハイドロタルサイト様粒状体と揚水手段5が揚水した汚染水9とを混合し、汚染水9からイオンを除去するイオン除去手段1と、土壌8にイオンが除去された水を注水する注水手段6と、を具備する土壌浄化装置10を用いて、汚染された土壌8から汚染物質であるイオンを除去し浄化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌から地下水を揚水する揚水手段と、
結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質と前記揚水手段が揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去手段と、
を具備することを特徴とする土壌浄化装置。
【請求項2】
前記ハイドロタルサイト様物質は、陽イオンを吸着固定するものであることを特徴とする請求項1記載の土壌浄化装置。
【請求項3】
土壌から地下水を揚水する揚水手段と、
結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質から製造されたハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水手段が揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去手段と、
を具備することを特徴とする土壌浄化装置。
【請求項4】
土壌から地下水を揚水する揚水手段と、
少なくともハイドロタルサイト様物質と水とを含む材料を前記ハイドロタルサイト様物質の絶乾温度以下で乾燥させてなるハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水手段が揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去手段と、
を具備することを特徴とする土壌浄化装置。
【請求項5】
前記ハイドロタルサイト様粒状体は、前記乾燥を90℃以上110℃以下で行うことにより製造されたものであることを特徴とする請求項4記載の土壌浄化装置。
【請求項6】
土壌から地下水を揚水する揚水手段と、
フッ素イオン(F)の濃度が116mg/lの20℃に調節されたフッ素溶液1000mlに10gを添加し、60分間撹拌した際のフッ素イオン(F)の吸着量が8mg/g以上であるハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水手段が揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去手段と、
を具備することを特徴とする土壌浄化装置。
【請求項7】
前記ハイドロタルサイト様粒状体は、塩化物を含有することを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の土壌浄化装置。
【請求項8】
前記ハイドロタルサイト様粒状体は、NaClを含有することを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の土壌浄化装置。
【請求項9】
前記ハイドロタルサイト様粒状体は、陽イオンを吸着固定するものであることを特徴とする請求項3ないし8のいずれかに記載の土壌浄化装置。
【請求項10】
前記土壌に水を注水する注水手段を具備することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の土壌浄化装置。
【請求項11】
前記注水手段は、イオンが除去された前記水を前記土壌に戻すことを特徴とする請求項10記載の土壌浄化装置。
【請求項12】
前記地下水を前記土壌内に遮蔽する遮水壁を具備することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の土壌浄化装置。
【請求項13】
土壌内に結晶子サイズが20nm以下のハイドロタルサイト様物質を供給するハイドロタルサイト様物質供給手段を具備することを特徴とする土壌浄化装置。
【請求項14】
結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質からなり、所定範囲の土壌を遮蔽する浄化壁を具備することを特徴とする土壌浄化装置。
【請求項15】
前記浄化壁は地下水を透過可能に形成されることを特徴とする請求項14記載の土壌浄化装置。
【請求項16】
土壌から地下水を揚水する揚水工程と、
結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質と前記揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去工程と、
を有することを特徴とする土壌浄化方法。
【請求項17】
前記ハイドロタルサイト様物質は、陽イオンを吸着固定するものであることを特徴とする請求項16記載の土壌浄化方法。
【請求項18】
土壌から地下水を揚水する揚水工程と、
結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質から製造されたハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去工程と、
を有することを特徴とする土壌浄化方法。
【請求項19】
土壌から地下水を揚水する揚水工程と、
少なくともハイドロタルサイト様物質と水とを含む材料を前記ハイドロタルサイト様物質の絶乾温度以下で乾燥させてなるハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水手段が揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去工程と、
を有することを特徴とする土壌浄化方法。
【請求項20】
前記ハイドロタルサイト様粒状体は、前記乾燥を90℃以上110℃以下で行うことにより製造されたものであることを特徴とする請求項19記載の土壌浄化方法。
【請求項21】
土壌から地下水を揚水する揚水工程と、
フッ素イオン(F)の濃度が116mg/lの20℃に調節されたフッ素溶液1000mlに10gを添加し、60分間撹拌した際のフッ素イオン(F)の吸着量が8mg/g以上であるハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去工程と、
を具備することを特徴とする土壌浄化方法。
【請求項22】
前記ハイドロタルサイト様粒状体は、塩化物を含有することを特徴とする請求項18ないし21のいずれかに記載の土壌浄化方法。
【請求項23】
前記ハイドロタルサイト様粒状体は、NaClを含有することを特徴とする請求項18ないし21のいずれかに記載の土壌浄化方法。
【請求項24】
前記ハイドロタルサイト様粒状体は、陽イオンを吸着固定するものであることを特徴とする請求項18ないし23のいずれかに記載の土壌浄化方法。
【請求項25】
前記土壌に水を注水する注水工程を有することを特徴とする請求項17ないし24のいずれかに記載の土壌浄化方法。
【請求項26】
前記注水工程は、イオンが除去された前記水を前記土壌に戻すことを特徴とする請求項25記載の土壌浄化方法。
【請求項27】
前記揚水は、前記地下水を前記土壌内に遮蔽する遮水壁の内側で行うことを特徴とする請求項17ないし26のいずれかに記載の土壌浄化方法。
【請求項28】
土壌内に結晶子サイズが20nm以下のハイドロタルサイト様物質を供給することを特徴とする土壌浄化方法。
【請求項29】
結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質からなる浄化壁を用いて、所定範囲の土壌を遮蔽することを特徴とする土壌浄化方法。
【請求項30】
前記浄化壁は地下水を透過可能に形成されることを特徴とする請求項29記載の土壌浄化方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイドロタルサイト様物質を用いた土壌浄化装置および土壌浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、人の生産活動によって排出された有害物質が土壌に蓄積し、動植物や人間の健康等に重大な影響を及ぼすことが問題となっている。この問題を解決するために、土壌中の地下水を揚水し、この地下水中に溶解した有害物質をイオン交換樹脂や電気透析手段を用いて除去した後、土壌に戻すというサイクルを繰り返すことによって土壌中の有害物質を低下させる方法がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−277531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、コストが高くなると共に、有害物質の除去性能も低いという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、低コストで陰イオン交換性能が高い土壌浄化装置および土壌浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の土壌浄化装置は、土壌から地下水を揚水する揚水手段と、結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質と前記揚水手段が揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去手段と、
を具備することを特徴とする。
【0007】
この場合、前記ハイドロタルサイト様物質は、陽イオンを吸着固定するものである方が好ましい。
【0008】
また、本発明の土壌浄化装置は、土壌から地下水を揚水する揚水手段と、結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質から製造されたハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水手段が揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去手段と、を具備することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の土壌浄化装置は、土壌から地下水を揚水する揚水手段と、少なくともハイドロタルサイト様物質と水とを含む材料を前記ハイドロタルサイト様物質の絶乾温度以下で乾燥させてなるハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水手段が揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
この場合、前記ハイドロタルサイト様粒状体は、前記乾燥を90℃以上110℃以下で行うことにより製造されたものである方が好ましい。
【0011】
また、本発明の土壌浄化装置は、土壌から地下水を揚水する揚水手段と、フッ素イオン(F)の濃度が116mg/lの20℃に調節されたフッ素溶液1000mlに10gを添加し、60分間撹拌した際のフッ素イオン(F)の吸着量が8mg/g以上であるハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水手段が揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去手段と、を具備することを特徴とする。
【0012】
これらの場合、前記ハイドロタルサイト様粒状体は、NaCl等の塩化物を含有しても良い。また、前記ハイドロタルサイト様粒状体は、陽イオンを吸着固定するものである方が好ましい。また、前記土壌に水を注水する注水手段を具備する方が好ましく、更に好ましくは、前記注水手段は、イオンが除去された前記水を前記土壌に戻すものであることが良い。また、前記地下水を前記土壌内に遮蔽する遮水壁を具備する方が好ましい。
【0013】
また、本発明の土壌浄化装置は、土壌内に結晶子サイズが20nm以下のハイドロタルサイト様物質を供給するハイドロタルサイト様物質供給手段を具備することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の土壌浄化装置は、結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質からなり、所定範囲の土壌を遮蔽する浄化壁を具備することを特徴とする。
【0015】
この場合、前記浄化壁は地下水を透過可能に形成される方が好ましい。
【0016】
また、本発明の土壌浄化方法は、土壌から地下水を揚水する揚水工程と、結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質と前記揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
この場合、前記ハイドロタルサイト様物質は、陽イオンを吸着固定するものである方が好ましい。
【0018】
また、本発明の土壌浄化方法は、土壌から地下水を揚水する揚水工程と、結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質から製造されたハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去工程と、を有する方が好ましい。
【0019】
また、本発明の土壌浄化方法は、土壌から地下水を揚水する揚水工程と、少なくともハイドロタルサイト様物質と水とを含む材料を前記ハイドロタルサイト様物質の絶乾温度以下で乾燥させてなるハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水手段が揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去工程と、を有する方が好ましい。
【0020】
この場合、前記ハイドロタルサイト様粒状体は、前記乾燥を90℃以上110℃以下で行うことにより製造されたものである方が好ましい。
【0021】
また、本発明の土壌浄化方法は、土壌から地下水を揚水する揚水工程と、フッ素イオン(F)の濃度が116mg/lの20℃に調節されたフッ素溶液1000mlに10gを添加し、60分間撹拌した際のフッ素イオン(F)の吸着量が8mg/g以上であるハイドロタルサイト様粒状体と前記揚水した水とを混合し、前記水からイオンを除去するイオン除去工程と、を具備する。
【0022】
これらの場合、前記ハイドロタルサイト様粒状体は、NaCl等の塩化物を含有しても良い。また、前記ハイドロタルサイト様粒状体は、陽イオンを吸着固定するものである方が好ましい。また、前記土壌に水を注水する注水工程を有する方が好ましく、更に好ましくは、前記注水工程は、イオンが除去された前記水を前記土壌に戻すものである方が好ましい。また、前記揚水は、前記地下水を前記土壌内に遮蔽する遮水壁の内側で行う方が好ましい。
【0023】
また、本発明の土壌浄化方法は、土壌内に結晶子サイズが20nm以下のハイドロタルサイト様物質を供給することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の土壌浄化方法は、結晶子サイズが20nm以下であるハイドロタルサイト様物質からなる浄化壁を用いて、所定範囲の土壌を遮蔽することを特徴とする。
【0025】
この場合、前記浄化壁は地下水を透過可能に形成される方が好ましい。
【発明の効果】
【0026】
請求項1ないし12,16ないし27記載の発明によれば、低コストで確実に土壌浄化を行うことができる。
【0027】
請求項13,28記載の発明によれば、土壌内に直接ハイドロタルサイト様物質を供給するので、汚染物質を確実に吸着して土壌浄化を行うことができる。
【0028】
請求項14,15,29,30記載の発明によれば、浄化壁によって汚染されている土壌を汚染されていない土壌から確実に遮蔽すると共に汚染物質を吸着して、土壌浄化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の第一の土壌浄化装置10は、図1に示すように、有害物等で汚染されている土壌8から地下水9を揚水する揚水手段5と、ハイドロタルサイト物質又はハイドロタルサイト様粒状体2と揚水手段5が揚水した水(以下、汚染水9という)とを混合し、この汚染水9から汚染物質であるイオンを除去するイオン除去手段1と、土壌8に水を注水する注水手段6と、で主に構成される。
【0030】
揚水手段5は、例えば、地下水(汚染水9)を揚水できる位置まで挿入した揚水井と、この揚水井の汚染水9を地面81まで揚水するポンプとで構成すれば良い。この揚水井の上側部分は、遮水性のコンクリート壁等で形成され、下側部分は、多数の通孔を有する透水性のコンクリート壁によって形成される。勿論、揚水手段5はこれに限られるものではなく、土壌8中から地下水(汚染水9)を揚水できるものであれば、他のどのような構成でも構わない。また、揚水手段5を複数設けることも可能である。
【0031】
イオン除去手段1は、このハイドロタルサイト様物質と汚染水9とを接触させてイオン、特に汚染物質であるイオンを除去するためのもので、例えば、汚染水9を供給する供給流路31と、イオンが除去された水(以下、浄化水という)を排出する排出流路32とに接続される容器状に形成したものを用いることができる。イオン除去手段1の材質としては、汚染水9と反応する物質でなければどのようなものでも良く、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)や塩化ビニル等の樹脂の他、金属、木材等を自由に用いることができる。
【0032】
また、イオン除去手段1には、ハイドロタルサイト様物質と汚染水9とを均一に混合するための混合手段、例えば、モータ等の回転により撹拌するミキサーや、容器内に気泡を供給することにより撹拌する気体供給手段等を設けても良い。
【0033】
また、イオン除去手段1には、ハイドロタルサイト様物質から浄化水を脱水するための脱水手段、例えば、フィルタプレス等を設けても良い。勿論、脱水手段をイオン除去手段1とは独立して設けることも可能である。
【0034】
イオン除去手段1に用いるハイドロタルサイト様物質としてはどのようなものでも良いが、例えば、以下のような方法で製造したものを用いることができる。
【0035】
まず、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンを含む酸性溶液を調製する。
【0036】
アルミニウムイオンのアルミニウム源としては、水中でアルミニウムイオンを生成するものであれば良く、特定の物質に限定されるものではない。例えば、アルミナ、アルミン酸ソーダ、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ボーキサイト、ボーキサイトからのアルミナ製造残渣、アルミスラッジ等を用いることができる。また、これらアルミニウム源は、いずれかを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0037】
また、マグネシウムイオンのマグネシウム源としては、水中でマグネシウムイオンを生成する物であれば良く、特定の物質に限定されるものではない。例えば、ブルーサイト、水酸化マグネシウム、マグネサイト、マグネサイトの焼成物等を用いることができる。これらマグネシウム源は、いずれかを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0038】
なお、前記アルミニウム源としてのアルミニウム化合物、マグネシウム源としてのマグネシウム化合物は、前記酸性溶液にアルミニウムイオン、マグネシウムイオンが存在していれば完全に溶解している必要はない。したがって、酸性溶液中に溶解していないアルミニウム化合物やマグネシウム化合物を含んでいても問題なくハイドロタルサイトを製造することができる。
【0039】
ここで、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンからなるハイドロタルサイトの一般式は、Mg2+1−xAl3+(OH)(An−x/n・mHO(An−はアニオン)であり、高結晶質のハイドロタルサイトの最も一般的な組成では、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンのモル比が1:3(x=0.25)となっていることが知られている。したがって、酸性溶液中のアルミニウムイオンとマグネシウムイオンのモル比は、1:5〜1:2の範囲とするのが好ましい。この範囲とすることによって、アルミニウム源とマグネシウム源を無駄にすることなく、物質収支的に有利にハイドロタルサイト様物質を製造することができる。
【0040】
また、前記酸性溶液を酸性に調製するには、硝酸又は塩酸を用いるのが好ましい。
【0041】
次に、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンを含んだ前記酸性溶液を、アルカリを含むアルカリ性溶液と混合する。このアルカリ性溶液は、pHが8〜11のものを用いるのが好ましい。また、混合の際、アルカリ性溶液を激しく撹拌すれば、結晶子サイズ(結晶子の大きさ)が小さいハイドロタルサイト様物質を生成することもできる。この場合、ハイドロタルサイト様物質の結晶子サイズが小さいので、混合時に溶液はコロイド状となる。なお、酸性溶液とアルカリ性溶液の混合の方法としては、酸性溶液をアルカリ性溶液へ一気に加えて混合するか、酸性溶液をアルカリ性溶液へ滴下して混合するのが好ましいが、これら以外の方法であっても良い。
【0042】
ここで、アルカリ性溶液に含まれるアルカリとしては、水溶液をアルカリ性とするものであれば良く、特定の物質に限定されるものではない。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、石灰、セメントの固化剤などを用いることができる。また、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア水、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムなども用いることができる。これらアルカリはいずれかを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0043】
また、高結晶質のハイドロタルサイトは炭酸イオンと優先的にイオン交換するため、炭酸イオンを含むと目的とする陰イオンと効率良くイオン交換できない。したがって、ハイドロタルサイト様物質においても、目的とする陰イオンと効率良くイオン交換させるために、前記酸性溶液および前記アルカリ性溶液に炭酸イオンを含まないようにするのが好ましい。
【0044】
酸性溶液をアルカリ性溶液と混合してハイドロタルサイト様物質を生成した後、中和又は水分を除去する。この際、熟成を行わずに中和又は水分の除去を行えば、ハイドロタルサイト様物質の結晶が成長することなく、結晶子サイズの小さいハイドロタルサイト様物質を製造することができる。ハイドロタルサイト様物質の結晶子サイズは小さい程陰イオン交換性が高く、フッ素イオン等の吸着量が高くなる。したがって、結晶子サイズが20nm以下、好ましくは10nm以下になるように調製するのが好ましい。なお、「熟成を行わずに中和又は水分を除去する」とは、酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、時間を置かずに直ちに中和又は水分を除去するということである。水分を除去するためには、吸引濾過、遠心分離、または上澄み液の分離など適当な方法を用いることができる。また、水分を除去することによって、ハイドロタルサイト様物質はほぼ中性となる。確実に熟成を行わせないためには、水分を除去した後のハイドロタルサイト様物質を洗浄しても良いが、NaCl等の塩化物を含有させておいても良い。また、ハイドロタルサイト様物質は、アルカリ性溶液中でのみ熟成が行われる。
【0045】
ここで、ハイドロタルサイト様物質としては、粉状のものを用いても、スラリー状のものを用いても良い。また、イオン除去手段1では、ハイドロタルサイト様物質を粒状にしたハイドロタルサイト様粒状体を用いることも可能である。
【0046】
ハイドロタルサイト様粒状体としては、造粒機や、バインダを用いて製造したものを用いることができるが、好ましくは、少なくともハイドロタルサイト様物質と水とを含む材料を、ハイドロタルサイト様物質の絶乾温度(ハイドロタルサイト様物質の結晶水が抜け始める温度)以下で乾燥させてなるものが良い。具体的には、下記のように製造したハイドロタルサイト様粒状体を用いることができる。
【0047】
まず、上述したハイドロタルサイト様物質から、フィルタプレスにより所定の圧力をかけて水分をできるだけ除去した後、ハイドロタルサイト様物質の結晶水が抜け始める温度(以下絶乾温度という)以下で乾燥させる。換言すると、ハイドロタルサイト様物質の結晶外の水のみを除去する。具体的には、含水率が70%以下、好ましくは65%以下、更に好ましくは60%以下のハイドロタルサイト様物質を、最終生成物であるハイドロタルサイト様粒状体の含水率が10%以上20%以下、好ましくは10%以上15%以下、更に好ましくは、11%以上12%以下になるように乾燥させる。ここで、ハイドロタルサイト様粒状体の含水率を10%以上に保持する理由は、ハイドロタルサイト様粒状体の含水率が10%未満であると、溶液等に触れた際にハイドロタルサイト様粒状体が水分を吸収して体積が急激に膨張し、破砕し易くなるためである。なお、含水率とは水分を含むハイドロタルサイト様物質全体の質量に対する水の質量である。ハイドロタルサイト様物質が含んでいる水分の質量の測定は、日本工業規格「土の含水比試験方法」(JIS A 1203:1999)に準拠して行った。
【0048】
なお、乾燥させる温度としては、ハイドロタルサイト様物質の絶乾温度以下であればどのような温度でも良いが、ハイドロタルサイト様粒状体の粒径を大きくするためには比較的低温で乾燥させる方が好ましい。ただし、あまり低すぎる温度で乾燥すると、ハイドロタルサイト様粒状体が水に解け易くなる。したがって、具体的な乾燥温度は、25℃以上125℃以下が良く、好ましくは90℃以上110℃以下が良く、更に好ましくは95℃以上105℃以下が良い。
【0049】
また、この乾燥はどのように行っても良く、例えば、通常の乾燥炉等を用いれば良い。勿論、室温で自然乾燥にすることも可能である。また、乾燥時の湿度を高く調節する方がハイドロタルサイト様粒状体の形態安定性の点で良い。例えば、乾燥炉内の水蒸気の量を飽和水蒸気量付近(湿度が90%〜100%)となるように調節すれば良い。
【0050】
また、このようにして乾燥したハイドロタルサイト様物質をふるいにかけ、析出した塩化物等を除去しても良い。
【0051】
また、ハイドロタルサイト様粒状体は、その用途に応じて粒径を調製しても良い。この場合、ハイドロタルサイト様粒状体の粒径は、後述する定置手段を通過しない大きさ、例えば、0.24mm以上が良く、好ましくは0.36mm以上が良く、更に好ましくは1mm以上2mm以下が良い。粒径の調製は、どのように行っても良いが、例えば、ハンマー等により破砕し、目的とする大きさの目をもったふるいにかけて行えば良い。このように製造したハイドロタルサイト様粒状体の陰イオンの吸着量は高い方が好ましい。例えば、フッ素イオンの吸着量は、少なくとも8mg/g以上、好ましくは8.5mg/g以上、更に好ましくは8.7mg/g以上が良い。また、本発明のハイドロタルサイト様粒状体は、カドミウムイオン、鉛イオン等の陽イオンを吸着固定する方が好ましい。また、材料として用いるハイドロタルサイト様物質の結晶子サイズは小さい程陰イオン交換性が高く、フッ素イオンの吸着量等が高くなる。したがって、材料としては、結晶子サイズが20nm以下、好ましくは10nm以下のハイドロタルサイト様物質を用いるのが良い。
【0052】
ハイドロタルサイト様粒状体を用いる場合、イオン除去手段1としては、ハイドロタルサイト様粒状体2が配置されると共に、汚染水9とハイドロタルサイト様粒状体2とを接触させることができるものであればどのようなものでも良いが、例えば、図2に示すように、汚染水9を接触部3内に供給する供給流路31と、接触部3内でイオン、特に汚染物質であるイオンが除去された水(以下、浄化水という)を接触部3内から排出する排出流路32とに接続される容器状に形成したものを用いることができる。この場合、接触部3に供給流路31や排出流路32を接続する位置はどこでも良く、例えば、図2に示すように接触部3の下部で供給流路31に接続し、上部で排出流路32に接続したり、図3に示すように接触部3の下部で供給流路31と排出流路32に接続したりすれば良い。また、ハイドロタルサイト様粒状体2が汚染水9の流れによって接触部3内の一部に偏り、イオンの除去効率が下がるのを防止するため、供給流路や排出流路を複数設けるようにし、接触部3内の汚染水9の流れに変化を付けるようにしても良い。また、図4に示すように、供給流路と排出流路とを兼ねる共通流路33とし、汚染水9の供給と浄化水の排出を共通流路33一本で行うことも勿論可能である。
【0053】
また、接触部3の別の形態としては、図5に示すように、流路自体として形成しても良い。この場合、ハイドロタルサイト様粒状体2は、流路の底部39に配置すれば良い。
【0054】
また、イオン除去手段1は、接触部3に配置するハイドロタルサイト様粒状体2が汚染水9又は浄化水と共に接触部3から流出するのを防止するため、汚染水9又は浄化水を流通させる共にハイドロタルサイト様粒状体2の流通を防止する定置手段を、接触部3の浄化水の排出側や汚染水9の供給側に配置するようにしても良い。定置手段としては、例えば、ハイドロタルサイト様粒状体2の粒径よりも細かい目を有するフィルターを用いることができる。この場合、接触部3と供給流路31や排出流路32との接続部分にこのフィルターを配置すれば良い。また、フィルターの強度を補うために、フィルターの目より粗い目を有する補強板をフィルターとハイドロタルサイト様粒状体2との間に設けても良い。
【0055】
また、定置手段の別の形態として、ハイドロタルサイト様粒状体2の粒径よりも目の細かいネットを用いることも可能である。この場合、ハイドロタルサイト様粒状体2をネットによって包持して接触部3に配置すれば良い。このようにすれば、ハイドロタルサイト様粒状体2をネットで包持したものを、例えば水路等に容易に配置することができ、水路を流れる水の中からイオンを除去し水を浄化した後、水路から容易に取り出すことができる。
【0056】
また、接触部3に汚染水9を一定の速度で流し続けると、ハイドロタルサイト様粒状体2が汚染水9の流れによって接触部3内の一部に偏り、イオンの除去効率が下がるという問題がある。そこで、イオン除去手段1に、接触部3内のハイドロタルサイト様粒状体2を撹拌する撹拌手段4を設けても良い。これにより、接触部3内のハイドロタルサイト様粒状体2を均一に分散させることができる。ここで、撹拌手段4としては、例えば、接触部3内に供給する汚染水9の流量を変化させる流量調節手段、例えば流量調節弁等を用いることができる。なお、接触部3に流す汚染水9の流量を変化させることには、負の流量にすること、すなわち、接触部3内へ流す汚染水9の方向を逆にすることも含まれる。
【0057】
また、撹拌手段の別の形態として、接触部3に気体を供給する気体供給手段とし、接触部3内のハイドロタルサイト様粒状体2を均一に分散させるようにしても良い。もちろん、流量調節手段と気体供給手段とを併用することも可能である。
【0058】
また、イオン除去手段1は、図6に示すように、接触部3を複数連結して形成しても良い。このように形成すれば、ハイドロタルサイト様粒状体2は、汚染水9中のイオンのうち、吸着しやすいイオンから順に吸着するため、汚染水9中のイオンを各接触部3で選択的に除去することができる。また、供給側の接触部3の方が汚染水9中のイオン濃度が高く、ハイドロタルサイト様粒状体2のイオンの吸着能力が劣化し易いため、ハイドロタルサイト様粒状体2の交換は、供給側の接触部3を取り外し、排出側に新しいハイドロタルサイト様粒状体2を有する接触部3を連結するとハイドロタルサイト様粒状体2を有効に利用することができる。ここで有害物質であるイオンを除去された浄化水は、後述する注水手段6によって土壌8に戻しても良いし、河川等に排出しても良い。
【0059】
また、各接触部3に、接触部3内の汚染水9をサンプリングするためのサンプリング流路5を設けるようにしても良い。これにより、各接触部3内の汚染水9のイオンの種類や濃度を測定することができる。
【0060】
また、粉状又はスラリー状のハイドロタルサイト様物質を用いる場合には、イオン除去手段は、例えば、汚染水9を供給する供給流路と、イオンが除去された水及びハイドロタルサイト様物質の混合物を排出する排出流路とに接続される容器状の混合部を形成して用いれば良い。混合部の材質としては、溶液と反応する物質でなければどのようなものでも良く、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)や塩化ビニル等の樹脂を用いることができる。
【0061】
また、混合部には、ハイドロタルサイト様物質と汚染水とを均一に混合するための混合手段、例えば、モータ等の回転により撹拌するミキサーや、容器内に気泡を供給することにより撹拌する気体供給手段等を設けても良い。
【0062】
また、混合部には、ハイドロタルサイト様物質から洗浄水を脱水するための脱水手段、例えば、フィルタプレス等を設けても良い。勿論、脱水手段を混合部とは独立して設けることも可能である。
【0063】
注水手段6は、土壌8に有害物質を含まない水、又はイオン除去手段1によって汚染水9から有害物質を除去された浄化水を注水するもので、例えば、図1に示すように、土壌8に挿入された注水井として形成すれば良い。この注水井は、揚水井と同様に、注水井の上側部分が遮水性のコンクリート壁等で形成され、下側部分が多数の通孔を有する透水性のコンクリート壁で形成される。勿論、注水手段はこれに限られるものではなく、土壌8中に浄化水を戻すことができるものであれば、他のどのような構成でも構わない。また、注水手段6を複数設けることも可能である。
【0064】
これにより、注水井から水を注水すると、有害物質で汚染された土壌8をこの水が通過すると共に有害物質を土壌8から分離させ、揚水井からポンプによって揚水される。揚水された汚染水9は、有害物質であるイオンがイオン除去手段1のハイドロタルサイト様粒状体2に固定され浄化水となる。
【0065】
また、土壌浄化装置10は、地下水(汚染水9)を有害物質で汚染された土壌8内に遮蔽する遮水壁7を設けることも可能である(図1参照)。遮水壁7としては、例えば、水を通し難い難透水層82の位置か、少なくとも揚水井や注水井よりも深い位置まで形成された遮水性のコンクリート壁により形成することができる。これにより、有害物質で汚染された土壌8と汚染されていない土壌との混合を防止することができる。
【0066】
また、土壌浄化装置10は、土壌8中の地下水(汚染水9)の水位91を測定する水位センサー(水位測定手段)を設けても良い。この場合、例えば、揚水手段5近傍と注水手段6近傍に水位センサーを設け、地下水(汚染水9)の水位をモニタリングすることにより、地下水(汚染水9)の水位に応じて、揚水手段5の揚水や注水手段6の注水を調節することができる。
【0067】
また、本発明の第二の土壌浄化装置は、土壌内に粉状やスラリー状のハイドロタルサイト様物質を供給するハイドロタルサイト様物質供給手段を具備するものである。ハイドロタルサイト様物質供給手段としては、例えば、上述した注水井と同様に形成された井戸として形成することができる。この井戸は、井戸の上側部分が遮水性のコンクリート壁等で形成され、下側部分が多数の通孔を有する透水性のコンクリート壁で形成される。勿論、これに限られるものではなく、土壌中にハイドロタルサイト様物質を供給することができるものであれば、他のどのような構成でも構わない。また、ハイドロタルサイト様物質供給手段を複数設けることも可能である。これにより、土壌内に直接ハイドロタルサイト様物質を供給するので、汚染物質を確実に吸着して土壌浄化を行うことができる。また、汚染された土壌から汚染物質が拡散するのを防止することができる。なお、供給するハイドロタルサイト様物質は、結晶子サイズが20nm以下である方が好ましい。
【0068】
また、本発明の第三の土壌浄化装置は、ハイドロタルサイト様物質又はハイドロタルサイト様粒状体からなり、所定範囲の土壌を遮蔽する浄化壁を設けるものである。
【0069】
例えば、水を通し難い難透水層82の位置まで汚染された土壌を囲むように穴を掘り、ここにハイドロタルサイト様物質又はハイドロタルサイト様粒状体を詰めて形成することができる。この場合、ハイドロタルサイト様物質は、結晶子サイズが20nm以下である方が好ましい。これにより、汚染された土壌内から汚染されていない土壌へ浄化壁を地下水が透過する際に、汚染物質が浄化壁のハイドロタルサイト様物質又はハイドロタルサイト様粒状体に吸着されるので、汚染土壌を浄化することができると共に、汚染土壌が広がるのを防止することができる。なお、前記した土壌浄化装置10と併用することも勿論可能である。
【実施例】
【0070】
以下に、本発明のイオン除去手段1に用いるハイドロタルサイト様粒状体およびその製造方法の実施例について説明するが、本発明に係るハイドロタルサイト様粒状体は、これら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例のハイドロタルサイト様粒状体は、上述した製法とほぼ同様に製造するため、その同様な部分についての重複する説明は省略する。
【0071】
なお、フッ素イオンの吸着量の測定は、次のような方法で行う。まず、フッ素濃度が116mg/lとなるように調製したフッ素溶液1000mlを準備する。次に、各実施例により製造したハイドロタルサイト様粒状体10gを添加し、マグネチックスターラーで1時間撹拌した後、フィルターを用いて濾過する。なお、ハイドロタルサイト様粒状体の粒度は2〜4.75mmに調製したものを用いた。また、陰イオンの吸着は、20℃の恒温室内で、フッ素溶液の温度を20℃に調整して行った。このフッ素溶液の濃度の変化を、吸光光度計(DR.LANGE社製のLASA−50)とこの吸光高度計の専用試薬(LCK323)を用いて測定し、ハイドロタルサイト様粒状体1g当たりが吸着した陰イオンの量を計算して、これをフッ素イオンの吸着量とする。
【0072】
また、カドミウムイオン及び鉛イオンの吸着固定化測定は、次のような方法で行う。まず、カドミウム(Cd)を2250ppm(高濃度)及び1.6ppm(低濃度)含むカドミウム溶液と、鉛(Pb)を885ppm(高濃度)及び1.17ppm(低濃度)を含む鉛溶液をそれぞれ100ml用意する。次に、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、5wt%となるように粉状のハイドロタルサイト様物質の添加量を調節する。これをマグネチックスターラーで1時間撹拌した後、フィルターを用いて濾過する。なお、カドミウムイオン、鉛イオンの吸着固定は、20℃の恒温室内で、フッ素溶液の温度を20℃に調整して行った。このカドミウム溶液、鉛溶液の濃度の変化を、吸光光度計(DR.LANGE社製のLASA−50)とこの吸光高度計の専用試薬として、カドミウムにはLCK308を、鉛イオンにはLCK306を用いて測定した(表2参照)。また、濾過により得られた残渣(ハイドロタルサイト様物質)をXRD、SEM・EDSにより測定した。
【0073】
また、ハイドロタルサイト様粒状体の形態安定性を観察するために、透水性を測定した。ここで透水性とは、ハイドロタルサイト様粒状体を充填した円筒容器内に一定圧力で水を流した際の水の流れ易さを意味し、ハイドロタルサイト様粒状体の形態が安定しているものは一定の透水性を示すが、形態が不安定で細かく砕けやすいハイドロタルサイト様粒状体の場合には、時間と共に水が流れにくくなり透水性が低くなる。本実施例では、透水性の評価を次のようにして測定した。まず、高さ250mm、内径が90mmである円筒容器(接触部)の底部に、直径5mmの孔を7mmピッチで配置したPMMA目皿(補強板)を配置し、更にその下部に直径0.36mmの孔を有するPPメッシュ40{フィルター(定置手段)}を配置し、この容器内にハイドロタルサイト様粒状体を1kg充填した。ハイドロタルサイト様粒状体の粒度は2〜4.75mmに調製したものを用いた。次に、水頭差4mの水をこの円筒容器内の下部から上部に12時間流し、水の流量を計測して透水性を測定した。この際、透水性の大きいものから順に大、中、小として表1に示した。
【0074】
供試材1
結晶子サイズが20nm以下、平均結晶子サイズが10nmであるハイドロタルサイト様物質を含む含水率が約63%の材料を、室温で一週間自然乾燥し、ハイドロタルサイト様粒状体を製造した。この供試材1の吸着量と透水性の変化を表1に示す。
【0075】
供試材2
結晶子サイズが20nm以下、平均結晶子サイズが10nmであるハイドロタルサイト様物質を含む含水率が約63%の材料を、温度が50℃の乾燥炉内で24時間乾燥し、ハイドロタルサイト様粒状体を製造した。この供試材2の吸着量と透水性の変化を表1に示す。
【0076】
供試材3
結晶子サイズが20nm以下、平均結晶子サイズが10nmであるハイドロタルサイト様物質を含む含水率が約63%の材料を、温度が100℃の乾燥炉内で24時間乾燥し、ハイドロタルサイト様粒状体を製造した。この供試材3の吸着量と透水性の変化を表1に示す。
【0077】
供試材4
結晶子サイズが20nm以下、平均結晶子サイズが10nmであるハイドロタルサイト様物質を含む含水率が約63%の材料を、温度が100℃の乾燥炉内で24時間乾燥し、ハイドロタルサイト様粒状体を製造した。なお、この乾燥は、乾燥炉の換気口を閉じ、乾燥炉内の湿度が100%に近い状態で行った。この供試材4の吸着量と透水性の変化を表1に示す。
【0078】
供試材5
結晶子サイズが20nm以下、平均結晶子サイズが10nmであるハイドロタルサイト様物質を含む含水率が約63%の材料を、温度が125℃の乾燥炉内で24時間乾燥し、ハイドロタルサイト様粒状体を製造した。この供試材5の吸着量と透水性の変化を表1に示す。
【0079】
供試材6(比較例)
結晶子サイズが20nm以下、平均結晶子サイズが10nmであるハイドロタルサイト様物質の粉体にバインダを添加し球状に成型した。この供試材6の吸着量を表1に示す。
【0080】
【表1】


【0081】
【表2】


【0082】
表1より、本発明に係るハイドロタルサイト様粒状体(供試材1ないし5)は、バインダを用いて球状体にした供試材6に比較してフッ素イオンの吸着量が高い。
【0083】
また、表1より、換気を行わずに比較的湿度の高い状態で乾燥を行った供試材4のハイドロタルサイト様粒状体が最も透水性の変化が小さく、形態が安定している。
【0084】
また、表2より、本発明に係るハイドロタルサイト様粒状体を構成する粉状のハイドロタルサイト様物質は、陽イオンであるカドミウムイオン、鉛イオンの濃度を低減させることがわかる。XRD測定によると、カドミウムイオンの吸着固定化試験後のハイドロタルサイト様物質には、ハイドロタルサイト様物質以外の回折ピークは検出されなかった。一方、鉛イオンの吸着固定化試験後のハイドロタルサイト様物質には、ハイドロタルサイト様物質以外に、水酸化塩化鉛(PbClOH)の回折ピークが検出された。また、鉛イオンの吸着固定化試験後のハイドロタルサイト様物質には、鉛塩化物の生成が確認されたが、カドミウムイオンの吸着固定化試験後のハイドロタルサイト様物質には、カドミウムイオンの化合物を観察することはできなかった。したがって、カドミウムイオンは、ハイドロタルサイト様物質に吸着していると考えられ、鉛イオンは、ハイドロタルサイト様物質が触媒的な働きをし、水酸化塩化鉛(PbClOH)として、固定化されたと考えられる。この結果から、本発明に係るハイドロタルサイト様粒状体は、カドミウムイオン、鉛イオン等の陽イオンを吸着固定することがわかる。
【0085】
次に、本発明のイオン除去手段及びそのイオン除去方法の実施例について説明する。
【0086】
まず、イオン除去手段としては、底部に供給流路に接続される供給口が形成され、底部と対向する天部に排出口が形成された高さが250mm、内径が90mmである円筒容器を用いた。この円筒容器の底部に、補強板として直径5mmの孔が7mmピッチで形成されたPMMA目皿を配置し、更にその下部に定置手段として直径0.36mmの孔を有するPPメッシュ40(フィルター)を配置した。また、この円筒容器(接触部)内には、供試材4のハイドロタルサイト様粒状体を5.0kg充填した。このイオン除去手段に、供給口から溶液を1.5l/minの流量で供給し、供給した液体のフッ素イオン濃度(図7中の実線)と排出口から排出された液体のフッ素イオン濃度(図7中の波線)からハイドロタルサイト様粒状体が吸着したフッ素イオン濃度(図7中の一点鎖線)を測定した。その結果を図7に示す。
【0087】
フッ素の一律排水基準を8mg/lとすると、8mg/lを超えるまでに要した時間は約14時間であり、それまでのフッ素イオン吸着量の合計は26,916mg、ハイドロタルサイト様粒状体1g当たりの吸着量は5.4mgだった。また、試験開始後、約53時間経過時点でフッ素イオン及び硫酸イオンの吸着量がほぼ同時に0となり、フッ素イオン及び硫酸イオンに対しハイドロタルサイト様粒状体が飽和した。この時点でのフッ素イオン吸着量は、12.1mg/gであることが確認された。
【0088】
以上の結果より、本発明の土壌浄化装置および土壌浄化方法は、イオン交換性能が高いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の土壌浄化装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係るイオン除去手段を示す概略正面図である。
【図3】本発明に係る別のイオン除去手段を示す概略正面図である。
【図4】本発明に係る別のイオン除去手段を示す概略正面図である。
【図5】本発明に係る別のイオン除去手段を示す概略斜視図である。
【図6】本発明に係る別のイオン除去手段を示す概略正面図である。
【図7】本発明に係るイオン除去手段を用いて溶液を処理した際のグラフである。
【符号の説明】
【0090】
1 イオン除去手段
2 ハイドロタルサイト様粒状体
5 揚水手段
6 注水手段
7 遮水壁
8 土壌
9 汚染水(地下水)
10 土壌浄化装置
【出願人】 【識別番号】000231198
【氏名又は名称】日本国土開発株式会社
【出願日】 平成18年11月17日(2006.11.17)
【代理人】 【識別番号】100131657
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 律次

【識別番号】100120606
【弁理士】
【氏名又は名称】五丁 龍志


【公開番号】 特開2008−126116(P2008−126116A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−311957(P2006−311957)