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【発明の名称】 油で汚染された土壌の浄化方法
【発明者】 【氏名】石嶋 洋一

【氏名】庭本 克彦

【要約】 【課題】油で汚染された土壌を、微生物を利用して浄化する場合、油が土壌粒子の中に浸透している場合や粘土質など本来油が浸透しにくい土壌に少しずつ油が浸透していた場合などでは、浸透した油と油分解微生物との接触機会が少なく分解までに非常に長期の時間を必要とする。これが微生物利用の土壌浄化に要する施工期間を長引かせる要因の一つになっている。

【解決手段】油が土壌粒子の中に浸透している場合に、最初に界面活性効果を持つ油分散剤を土壌に十分に浸透させて土壌粒子の中に浸透した油分を遊離させる。遊離させることで油の微生物による分解が容易になる。さらに遊離した油を油吸着材に吸着させることで土壌中に残る油の量は相対的に低下し、微生物の分解効率を一層高めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油で汚染された土壌の浄化において、はじめに界面活性効果を持つ油の分散剤を油汚染土壌に撒布して撹拌することにより、油分を土壌より分離し、その後、当該土壌中に生息する微生物を利用するバイオレメディエーションによって油の分解を図ることを特徴とする油汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
油で汚染された土壌の浄化において、はじめに界面活性効果を持つ油の分散剤を油汚染土壌に撒布して撹拌することにより、油分を土壌より分離し、ついで油の分解性能に優れた微生物を含有する微生物製剤を撒布するバイオレメディエーションによって油の分解を図ることを特徴とする油汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
油で汚染された土壌の浄化において、はじめに界面活性効果を持つ油の分散剤を油汚染土壌に撒布して撹拌することにより油分を土壌より分離し、次いで油吸着材に吸収させ、その後、当該土壌中に生息する微生物を利用するバイオレメディエーションによって油の分解を図ることを特徴とする油汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
油で汚染された土壌の浄化において、はじめに界面活性効果を持つ油の分散剤を油汚染土壌に撒布して撹拌することにより、油分を土壌より分離し、次いで油吸着材に吸収させ、その後、油を分解する微生物を含有する微生物製剤を撒布するバイオレメディエーションによって油の分解を図ることを特徴とする油汚染土壌の浄化方法。
【請求項5】
油で汚染された土壌の浄化において、はじめに界面活性効果を持つ油の分散剤を油汚染土壌に撒布して撹拌することにより、油分を土壌より分離し、次いで内部に油を分解する微生物を含有する油吸着材に吸収させ、その後、当該土壌中に生息する微生物を利用するバイオレメディエーションによって油の分解を図ることを特徴とする油汚染土壌の浄化方法。
【請求項6】
油で汚染された土壌の浄化において、はじめに界面活性効果を持つ油の分散剤を油汚染土壌に撒布して撹拌することにより、油分を土壌より分離し、次いで内部に油を分解する微生物を含有する油吸着材に吸収させ、その後、内部に油を分解する微生物を含有する微生物製剤を撒布するバイオレメディエーションによって油の分解を図ることを特徴とする油汚染土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、油で汚染された土壌の浄化工程において、長期にわたって油が土壌中に浸透していて、通常の工法では油の浄化がしにくい場合などに、特に効率的な手段として、油分を土壌中から遊離させ、しかる後に微生物を利用したバイオレメディエーション工法を適用することにより油の浄化を促進する技術に関するものであるが、油の漏出事故等による油汚染の緊急対策としても十分に適用可能な技術である。
【背景技術】
【0002】
油汚染土壌に対する微生物を利用したバイオレメディエーション工法(技術)は、油汚染地域に天然に生息する油分解性微生物を利用した、いわゆるバイオスティミュレーションが一般的に利用されてきたが、2005年3月に経済産業省と環境省より告示された「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」では油汚染地域とは別の場所で採取、又は培養された油分解機能を有する天然の微生物を利用した油の浄化方法、いわゆるバイオオーグメンテーションが油除去に有効であることを確認し、その微生物の取扱指針を与えている。
【0003】
また2006年3月に環境省より告示された「油汚染対策ガイドライン」では油で汚染された土壌の浄化基準として油臭や水中での油膜の発生がないことを浄化の目安としている。
【0004】
一般に、水中の油や容器に付着した油を遊離させるための分散剤は界面活性剤が公知であり、家庭でも家庭用洗剤として広く使用されているほか、工業用としても数多くの洗浄剤が市販されている。
【0005】
油を吸着する材料を土壌改良剤及び土壌改良方法として使用する技術は、特開2003−41255号公報(特許文献1)等により提案されている。しかし、この提案はセルロースよりなる基材と生きたバクテリアを含有する土壌改良剤を利用して、土壌を植物の栽培に適した状態に改良することを目的としたもので、油の浄化を目的とするものではない。
【特許文献1】 特開2003−41255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の「油汚染対策ガイドライン」によれば、鉱油の流出や土壌中への蓄積などで周辺環境への影響がある汚染が発覚した場合、汚染原因者に対策が求められる。汚染の原因が重油パイプの破損等事故による場合は、発覚後直ちに油除去の為の適切な対策をとることにより比較的容易に浄化(修復)が可能である。
【0007】
一方で、工場等長期にわたって油が地下に浸透した場合などは、油が土壌の微細な粒子の中に浸透しており通常の対策ではなかなか除去しきれない場合が多い。特に土質が粘土質などの場合は油が浸透しにくいが、一度浸透するとその中の油を除去するのは容易ではない。このような汚染土壌では、従来技術によれば汚染部分の土壌を掘削して産廃処分するのが唯一の手段であった。この方法は汚染した油を除去する方法として確実ではあるが、汚染土壌を焼却処分するなどその処理に要する費用の問題、焼却に使用する燃料による過剰な炭酸ガスの発生など環境への悪影響が避けられず、また処理後の土壌は高温で加熱するために土壌としての再利用も困難になるなど多くの問題を抱えていた。その上、産業廃棄物処分場の受け入れ容積の不足など大きな社会問題に直面することにもなる。このため、土壌の入れ替えに代えて、安価で環境に優しく、しかも確実に油の汚染を除去する技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
土壌中に浸透した油の浄化を促進するために、本願第1の方法は油汚染土壌中の油を分解、除去する浄化工程において、はじめに界面活性効果をもつ油分散材を油汚染土壌に撒布してよく撹拌することにより油を土壌から遊離させて、しかる後に土壌中に天然に生息する微生物を利用して油の浄化を行なうものである。
【0009】
本願第2の方法は土壌中に浸透した油の浄化を促進するために、油汚染土壌中の油を分解、除去する浄化工程において、はじめに界面活性効果をもつ油分散材を油汚染土壌に撒布してよく撹拌することにより油を土壌から遊離させて、しかる後に、特に油分解に優れた性能を有する微生物を1種乃至十数種含有する微生物製剤を土中に撒布、撹拌するなどして利用することにより油の浄化を促進するものである。微生物は例えばArthrobacterやBacillusなどの中から人や環境に対して安全なもののみを選んでいる。
【0010】
本願第3の方法は土壌中に浸透した油を分解、除去する浄化工程において、はじめに界面活性効果をもつ油分散材を油汚染土壌に撒布して撹拌することにより油を土壌から遊離させ、分散剤に吸収させる。次いで油吸着材を混合、撹拌して分離した油を分散剤ごと吸着材に吸収させる。このようにして土壌中に残る油を相対的に減少させた後、土壌中に天然に生息する微生物の働きで油を分解させるものである。
【0011】
本願第4の方法は土壌中に浸透した油を分解、除去する浄化工程において、はじめに界面活性効果をもつ油分散剤を油汚染土壌に撒布して撹拌することにより油を土壌から遊離させ、油分散剤に吸収させる。次いで油吸着材を混合、撹拌して分離した油を分散剤ごと吸着材に移動させる。このようにして土壌中に残る油を相対的に減少させた後、内部に優れた油分解機能を有する微生物を含有する微生物製剤を土壌中に撒布して油の浄化を促進するものである。なお、この方法では微生物製剤中に含有する微生物には例えばArthrobacterやBacillusなどの中から人や環境に安全なもののみ1種乃至十数種を選んでいる。
【0012】
本願第5の方法は土壌中に浸透した油を分解、除去する浄化工程において、はじめに界面活性効果をもつ油分散剤を油汚染土壌に撒布して撹拌することにより油を土壌から分離させて油分散剤に吸収させ、しかる後に油吸着性能に優れ、かつ油分解性微生物を含有(内在)させた油吸着材に吸収させることで土壌中の油を分散剤ごと油吸着材に移動させ、さらに土壌中に生息する微生物を利用するバイオレメディエーションによって油の浄化を促進させるものである。なお、この方法では油吸着材に吸収した油は、内在する微生物により吸着材内部で分解される。
【0013】
本願第6の方法は土壌中の油を分解、除去する浄化工程において、はじめに界面活性効果をもつ油分散剤を油汚染土壌に撒布して撹拌することにより油を土壌から分離させて、油分散剤に一度吸収させ、しかる後に油吸着性能に優れ、かつ油分解性微生物を含有(内在)させた油吸着材に吸収させることで土壌中の油を油吸着材に移動させ、さらに、油分解に優れた性能を有する微生物を1種乃至十数種含有する微生物製剤を土中に撒布、撹拌することによって油の浄化を促進するものである。油吸着材及び微生物製剤の中に含有させる微生物としては、いずれも、ArthrobacterやBacillusなどの中から人や環境に安全なもののみを選んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の方法を油汚染土壌に適用することによって、油分解の機能を持つ微生物がその性能を発揮し易い環境を与えることができ、油の分解を促進すると同時に、バイオレメディエーションの工期を著しく短縮できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
長期にわたって油汚染土壌中の微細な粒子にまで浸透した油は、そのままでは、微生物による分解効果が著しく削減され、浄化に要する時間が長期化する。そこで、浸透した油は一度土壌粒子から遊離させ、油分解機能を有する微生物が油と接触しやすい環境を整えてやることが必要である。
【0016】
土壌中に浸透した油を土壌粒子から遊離させる方法としては、界面活性効果を有する油分散剤を利用することが極めて効果的であることが分かった。すなわち油分散剤を汚染土壌に均一に混合することで土壌中の油分の多くが遊離して分散剤に溶け込み、このことで土壌中に残存する油は大幅に減少する。同時に、当該土壌から遊離した油は微生物との接触機会が多くなり、微生物による油の分解を促進させるのに役立つ。勿論、土壌粒子に浸透した油以外の汚染の場合でもより効率的に適用が可能なことは言うまでも無い。
【0017】
また、このようにして分散剤に溶け込んだ油は、油吸着材に吸収させることができる。吸収した分だけ相対的に土壌中の油は減少し、これにより以後のバイオレメディエーションは比較的容易に進行することが可能となる。さらに油吸着材として、油分解機能を持つ1種又は十数種類の微生物を内在させた植物性油吸着材を利用すれば、吸着材内部に取り込んだ油は、吸着材内部の微生物が分解し、土壌に残る油は土壌中の微生物が分解を促進することになり極めて効果的であるが、微生物を内在しない吸着材を使用する場合でも土壌中に生息する微生物又は別途に添加する微生物の働きで、一層油の分解が促進する。いずれの場合でも油吸着材を併用することで油分解の機能は一層助長される。なお、油吸着材としては、油の分解後土壌中の微生物により分解されるよう、綿の廃材などを使用した植物性のものが望ましい。
【0018】
環境に優しい油の分解・除去方法としてバイオレメディエーションが広く活用されるようになってきているが、この方法の課題は油の除去までに要する工期の問題であった。油の種類によっても異なるが、通常、微生物が油を分解するには、気温や栄養塩、水分及び酸素の補給が十分に行なわれている場合でも数ヶ月、通常3ヶ月以上、特に現地に生息する微生物を利用する場合などでは6ヶ月以上を要することも珍しくない。この理由は微生物が十分に油を分解できるだけの数にまで増殖させるのに時間が必要なこと、特に現地に生息する微生物では必ずしも効率の良い微生物が生息することが保証されないこと、また微生物が油を捕捉して新陳代謝により油を水と炭酸ガスに分解するまでにある程度の時間を要することなどである。
さらには、仮に微生物が効率良く働くことのできる環境下にあっても、肝心の油と微生物が接触できる機会が十分でなければ分解は遅々として進まないことになる。これが油汚染土壌の浄化期間を長引かせ、或いは浄化期間をばらつかせる大きな要因の一つであった。
【0019】
本発明は、油分解微生物がその機能を最大限に発揮できる環境を作るために、被分解物質である油を油分解性微生物に接触させる機会を増やし、もって油の分解を促進する方法を提供する。この方法は土壌の汚染の状況や土質が変化しても微生物による分解効果に影響を受けないところに特長がある。
本発明によれば、土壌中に浸透した油の遊離と油吸着材への吸着により、微生物の活動に必ずしも適当でない比較的低温の気候であっても、油臭や油膜の発生を抑えることができ、微生物の働きやすい環境、例えば気温が上昇すればいつでも微生物が活動を再開し、その分解機能を発揮させることができる。
【0020】
遊離した油を強力な油吸収材に吸収させることで、前述の油汚染対策ガイドラインに適合するように油膜や油臭を抑えるだけであれば、微生物が働きにくい環境下、例えば比較的低温の下でもそのための工期は著しく短縮され、バイオレメディエーションの課題の一つである工期改善に著しい効果が発揮される。
【0021】
本発明は、長期にわたるなどして油が徐々に土壌中に浸透してしまって、そのままでは微生物による油の分解が困難な場合に、土壌中に浸透した油を界面活性効果のある分散剤を使用して土壌粒子から遊離させ、以後の微生物による分解を促進させることを特徴としたものである。遊離した油はそのままでも土壌中に生息する微生物又は後から添加する微生物製剤で分解が可能であるが、さらに油吸着材によって遊離した油を吸着すれば、土壌中の油濃度は油吸着材に吸収された分だけ薄められ微生物の油分解効率を高めることができる、という効果もある。さらに土壌中に残った油を効率良く分解するために、油分解効率の良い微生物のみを予め配合した微生物製剤を撒布することで油の浄化は一層促進できる。
以下に実施例を示す。
【実施例1】
【0022】
自動車解体工場から流出した廃油で汚染された山林内の土壌の浄化を行なった。特に汚染のひどい表層部分は除去し、産業廃棄物として処理した。残った比較的汚染の少ない部分について、油膜及び油臭の除去を目的として浄化作業を行った。汚染された部分約200平方メートル、深さ約1メートルの土壌を掘削して空地の部分に積み上げ、この上から油分散剤として水で希釈した工業用洗浄剤を撒布しバックホウで撹拌、混合した。2時間ほど放置した後に、この土壌に、バイオレメディエーションの効果を高めるために使用される栄養剤として水溶性の農業用の肥料(主成分は窒素、リン酸及びカリ)を撒布、混合しながら土中に埋め戻した。9月の作業前の油分濃度はTPHで2000mg/kgで、油臭と油膜が確認されたが、2ヶ月後の11月にはTPHで500mg/kgまで油分濃度が下がり、油膜、油臭ともに見られなくなり、油分散剤の効果が認められた。なお、通常の栄養剤のみではこのような短期間で油の浄化が進むことは殆んど期待できない。
【実施例2】
【0023】
工場の機械油汚染を除去するために、汚染土壌を掘削し、工場空地を利用してバイオレメディエーションによる土壌の浄化を行なった。積み上げた土壌200立方メートル(約340トン)に工業用分散剤(洗浄剤)を水で50倍に希釈し、これに栄養塩として水溶性の農業用肥料を加え、約2000リットル撒布し、重機を利用して十分に撹拌した。その後、植物性油吸着材を約1000kg撒布し、良く混合した。このあと、は水と空気を補給するために、1週間ごとに水を撒布し、土壌の切り返しを行なった。この結果当初約10000mg/kgあった油分濃度は3ヶ月後に1000mg/kg以下まで低下した。
本実施例における分散剤の水による希釈倍率や栄養塩の量、植物性吸着剤の量は油濃度や土質により適宜変えることができる。
【実施例3】
【0024】
用地転用を予定しているガソリンスタンド跡地で、油分(TPH)約8000mg/kgの汚染が発覚し、バイオレメディエーションによる浄化を行なった。汚染土壌の量は約300立方メートル(約500トン)あった。最初に50倍希釈の分散剤を約3000リットル撒布し、十分に撹拌した。次いで微生物を内在させた油吸着材を約1500kg撒布混合した。次に微生物製剤と栄養塩を加えた水溶液を1500リットル撒布して混合した。その後も1週間から2週間ごとに土壌の切り返しを行い酸素と水の補給を行なった。
実施時期は2月から3月にかけてで、微生物には条件の良くない時期であったが、2ヶ月経過後の油濃度は油臭、油膜のまったく認められず、油分(TPH)は500mg/kgまで低下した。分散剤の効果に加えて、現地生息微生物にみでなく分解効率の良い微生物を添加した材料を使用したことが、冬季でありながら工期の短縮という好結果につながった。
尚、本実施例における分散剤の水による希釈倍率や栄養塩の量、微生物製剤の量及び植物性吸着剤の量は分散剤の種類、油汚染濃度や土質により適宜変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
微生物を利用するバイオレメディエーションは浄化に要する工期が長いと考えられ、ガソリンスタンドの跡地等、転用が決まって短工期での修復が要求される場所への適用が困難と言われていた。しかし、本発明により、工期短縮が実現できたことで産業的にも有用であることが分かった。しかも環境に新たな負荷を与えない点でも優れた方法といえる。
【出願人】 【識別番号】501040369
【氏名又は名称】株式会社バイオ・ジェネシス・テクノロジー・ジャパン
【出願日】 平成18年9月19日(2006.9.19)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−73672(P2008−73672A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2006−281911(P2006−281911)