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【発明の名称】 環境汚染物質の処理方法及びバイオリアクター
【発明者】 【氏名】植本 弘明

【要約】 【課題】環境汚染物質が高濃度に存在している環境下、少量でも微生物の機能が阻害される毒性物質、例えばシアン化合物が存在している環境下においても、微生物の機能を阻害させることなく、簡易且つ低コストに環境汚染物質を分解処理する。

【構成】環境汚染物質5が存在している被処理領域と環境汚染物質分解微生物3が棲息している領域との間に非多孔性膜2を介在させて環境汚染物質分解微生物3を被処理領域から遮蔽し、被処理領域に存在している環境汚染物質5を非多孔性膜に収着させると共に非多孔性膜2の分子透過性能に支配される速度で環境汚染物質分解微生物3が棲息している領域に透過させて環境汚染物質分解微生物3に供給し、環境汚染物質分解微生物3により環境汚染物質5を分解処理する。非多孔性膜2として、ポリエチレン膜またはポリプロピレン膜を用いる。または、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境汚染物質が存在している被処理領域と前記環境汚染物質を分解処理する能力を有する微生物が棲息している領域との間に非多孔性膜を介在させて前記微生物を前記被処理領域から遮蔽し、前記被処理領域に存在している前記環境汚染物質を前記非多孔性膜に収着させると共に前記非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で前記微生物が棲息している領域に透過させて前記微生物に供給し、前記微生物により前記環境汚染物質を分解処理することを特徴とする環境汚染物質の分解処理方法。
【請求項2】
前記非多孔性膜は、ポリエチレン膜またはポリプロピレン膜である請求項1に記載の環境汚染物質の分解処理方法。
【請求項3】
前記非多孔性膜は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜である請求項1に記載の環境汚染物質の分解処理方法。
【請求項4】
非多孔性膜を少なくとも一部に備えると共に被処理対象となる環境汚染物質を分解する能力を有する微生物が収容されている容器を含み、前記容器の周辺に存在している前記環境汚染物質を前記容器の前記非多孔性膜部分に収着させると共に前記非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で前記環境汚染物質を前記容器内に透過させて前記微生物に緩やかに供給し、前記微生物により前記環境汚染物質を分解処理することを特徴とする環境汚染物質分解処理用バイオリアクター。
【請求項5】
前記非多孔性膜は、ポリエチレン膜またはポリプロピレン膜である請求項4に記載の環境汚染物質分解処理用バイオリアクター。
【請求項6】
前記非多孔性膜は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜である請求項4に記載の環境汚染物質分解処理用バイオリアクター。
【請求項7】
前記微生物は、前記微生物を担持しうる担体に担持されて前記容器内に収容されている
請求項4に記載の環境汚染物質分解処理用バイオリアクター。
【請求項8】
産業廃棄物からの環境汚染物質の拡散を防ぐ遮水シートが敷設されている産業廃棄物処分場において、前記遮水シートの裏面側近傍に請求項4に記載の環境汚染分解処理用バイオリアクターが敷設されている産業廃棄物処分場。
【請求項9】
産業廃棄物からの環境汚染物質の拡散を防ぐ遮水シートの少なくとも裏面側に、非多孔性膜が備えられていることを特徴とする遮水シート。
【請求項10】
排水処理槽に収容されている排水に含まれる環境汚染物質を請求項4に記載のバイオリアクターで分解処理する方法であり、前記バイオリアクターを複数個用意すると共に前記複数個のバイオリアクターはそれぞれ環境汚染物質透過速度を異なるものとし、前記排水の環境汚染物質濃度の低下に従って、前記環境汚染物質の分解処理に使用する前記バイオリアクターの環境汚染物質透過速度を大きくすることを特徴とする環境汚染物質含有排水の処理方法。
【請求項11】
排水処理槽に収容されている排水に含まれる環境汚染物質を請求項4に記載のバイオリアクターで分解処理する方法であり、前記排水処理槽を複数個備えて前記排水処理槽のそれぞれに前記バイオリアクターを配置し、前記バイオリアクターの環境汚染物質透過速度を前記排水処理槽の後段に向かうに従って大きくし、前段の前記排水処理槽で前記排水の環境汚染物質濃度を低減し、環境汚染物質濃度が低減された前記排水を次段の前記排水処理槽で処理することを特徴とする環境汚染物質含有排水処理方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を利用した環境汚染物質の処理方法及びバイオリアクターに関する。さらに詳述すると、本発明は、環境汚染物質が高濃度に存在している環境下においても、微生物の機能が阻害されることなく環境汚染物質を分解処理することができる方法及びバイオリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
自然界には、環境汚染物質を分解する能力を有する微生物が多数存在している。そして、このような微生物の機能を利用した環境汚染物質の分解処理方法が各種提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、排水中の難分解性化合物である有機塩素化合物などを分解する能力を有するミクロコッカス属、コリネバクテリウム属、アシネトバクター属、アルカリゲネス属、シュードモナス属、エンテロバクター属、モラキセラ属、フラボバクテリウム属に属する1または2以上の微生物を使用して、排水中の難分解性化合物の量を生物学的に低減する技術が提案されている。また、特許文献2では、フェノール性化合物をカンジタ属に属する微生物により分解処理する方法が提案されている。さらに、特許文献3では、アルスロバクター属に属する微生物を使用して、アミド、アミン、アンモニウム塩、アルデヒド及びフェノール類を分解処理する方法が提案されている。
【0004】
また、環境汚染物質を分解する能力を有する微生物が含まれている活性汚泥を利用して、排水を処理する技術も各種提案されている。
【特許文献1】特開平10−165983
【特許文献2】特開平8−24892
【特許文献3】特開平7−108298
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、排水中に環境汚染物質が高濃度に含まれている場合、微生物の機能が阻害される虞がある。例えばAcinetobacter sp.(ATCC-11171)の場合、排水中のフェノール濃度が1000mg/Lを超えると、フェノール分解能力が徐々に低下し、2000mg/Lでフェノールを分解することができなくなる。また、高濃度のフェノールが分解できるとされるカンジダ属の微生物においてもフェノール濃度が1000mg/Lを超えると、フェノール分解能力が徐々に低下する。したがって、環境汚染物質が高濃度に含まれている排水等を微生物処理する場合には、環境汚染物質の濃度を微生物の機能が阻害されない濃度に薄める必要がある。
【0006】
また、シアン化合物の様に、少量でも微生物の機能を阻害する毒性物質が排水中に存在する場合がある。したがって、このような毒性物質が含まれている排水等を微生物処理する場合には、毒性物質の濃度を極力低濃度に抑える処理が必要である。
【0007】
そこで、排水を微生物処理に供する前に、排水を希釈して環境汚染物質の濃度を薄める処理や、毒性物質を排水中から除去する処理を行うことが考えられるが、このような前処理を行うことは、手間やコストの観点から望ましいとは言えない。例えば、排水の希釈処理を行うと、処理に供される排水量が増大するため、貯留槽等の大型化が必要になる。
【0008】
本発明は、環境汚染物質が高濃度に存在している環境下においても、微生物の機能を阻害させることなく、簡易且つ低コストに環境汚染物質を分解処理する方法及びバイオリアクターを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、少量でも微生物の機能が阻害される毒性物質、例えばシアン化合物が存在している環境下においても、微生物の機能を阻害させることなく、簡易且つ低コストに環境汚染物質を分解処理する方法及びバイオリアクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明者等は、非多孔性膜であるポリエチレン膜の片面にフェノール水溶液を接触させると、他面からフェノール分子を緩やかに供給できる非多孔性膜の分子透過性に着目した。そして、非多孔性膜の分子透過性を利用することにより、被処理対象となる環境汚染物質を、環境汚染物質分解能力を有する微生物に緩やかに供給して分解処理することが可能であることを知見し、本願発明に至った。
【0011】
かかる知見に基づく本発明の環境汚染物質の分解処理方法は、環境汚染物質が存在している被処理領域と環境汚染物質を分解処理する能力を有する微生物(以下、単に環境汚染物質分解微生物と呼ぶこともある。)が棲息している領域との間に非多孔性膜を介在させて環境汚染物質分解微生物を被処理領域から遮蔽し、被処理領域に存在している環境汚染物質を非多孔性膜に収着させると共に非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で環境汚染物質分解微生物が棲息している領域に透過させて環境汚染物質分解微生物に供給し、環境汚染物質分解微生物により環境汚染物質を分解処理するようにしている。
【0012】
また、本発明の環境汚染物質分解処理用バイオリアクターは、非多孔性膜を少なくとも一部に備えると共に環境汚染物質分解微生物が収容されている容器を含み、容器の周辺に存在している環境汚染物質を容器の非多孔性膜部分に収着させると共に非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で環境汚染物質を容器内に透過させて環境汚染物質分解微生物に緩やかに供給し、環境汚染物質分解微生物により環境汚染物質を分解処理するものである。
【0013】
このように、環境汚染物質を非多孔性膜に収着させると共に非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で環境汚染物質分解微生物が棲息している領域に透過させることにより、環境汚染物質がその濃度を薄められて環境汚染物質分解微生物に供給される。したがって、被処理領域中の環境汚染物質濃度が恒常的に高い場合や、経時的にあるいは一時的に高まる場合であっても、環境汚染物質分解微生物の環境汚染物質処理能力が阻害されない濃度で環境汚染物質を供給することができ、環境汚染物質分解微生物の機能を阻害することなく環境汚染物質の分解処理を行うことができる。また、環境汚染物質分解微生物が棲息している領域が被処理領域から遮蔽されているので、被処理領域が環境汚染物質分解微生物の生存にとって過酷な環境、例えば、酸性あるいは塩基性の環境であっても、環境汚染物質分解微生物の生存にほとんど影響を与えることなく、環境汚染物質を分解処理することができる。
【0014】
尚、収着とは、吸収と吸着が同時に行われることを意味している。つまり、環境汚染物質が非多孔性膜に吸着されて、環境汚染物質の分子が膜に溶け込んで吸収されることを意味している。
【0015】
本発明の環境汚染物質の分解処理方法並びに環境汚染物質分解処理用バイオリアクターに用いられる非多孔性膜は、透過させたい環境汚染物質の性質に合わせて適宜選択することができる。つまり、疎水性の化学物質を透過させたい場合には疎水性の膜を用いることができるし、親水性の化学物質を透過させたい場合には親水性の膜を用いることができる。また、疎水性の化学物質と親水性の化学物質の双方を透過させたい場合には、親水性と疎水性の両方の性質を有する膜を用いることができる。
【0016】
ここで、非多孔性膜として疎水性の膜であるポリエチレン膜やポリプロピレン膜を用いることが好ましい。この場合には、少量で環境汚染物質分解微生物の機能を阻害する虞のあるシアン化合物が被処理領域である排水中などに溶け込んでいても、環境汚染物質分解微生物が棲息している領域にシアン化合物をほとんど透過させないので、シアン化合物により環境汚染物質分解微生物の機能が阻害されることがなく、被処理対象となる環境汚染物質の分解処理を行うことができる。つまり、疎水性の膜であるポリエチレン膜やポリプロピレン膜を用いることで、水溶性の毒性物質が環境汚染物質分解微生物が棲息している領域にほとんど透過しなくなるので、環境汚染物質分解微生物の機能が阻害されずに、所望の環境汚染物質を分解処理することができる。
【0017】
また、非多孔性膜として、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜を用いることが好ましい。この場合にも、少量で環境汚染物質分解微生物の機能を阻害する虞のあるシアン化合物が被処理領域である排水中などに溶け込んでいても、環境汚染物質分解微生物が棲息している領域にシアン化合物をほとんど透過させないので、シアン化合物により環境汚染物質分解微生物の機能が阻害されることがなく、被処理対象となる環境汚染物質の分解処理を行うことができる。しかも、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜は、酢酸ビニルの含有率を高めることにより(エチレンの含有率を低下させることにより)、環境汚染物質の透過速度を高めることができる。また、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜は、ポリエチレン膜やポリプロピレン膜と比較して単位面積当たりの環境汚染物質透過速度が大きい。したがって、膜厚や酢酸ビニル含有率を変えることで、環境汚染物質透過速度を様々に制御できる。つまり、環境汚染物質透過速度の制御性に関する自由度が高まる。
【0018】
また、本発明の環境汚染物質分解処理用バイオリアクターにおいて、容器内に収容される環境汚染物質分解微生物は、水や液体培地に添加してから容器内に収容するようにしてもよいし、環境汚染物質分解微生物を含む活性汚泥をそのまま、あるいは水や液体培地で希釈してから容器内に収容するようにしても良いが、環境汚染物質分解微生物を担持しうる担体に担持されて容器内に収容されていることが好ましい。担体としては、多孔質体、繊維状物質、高分子ゲル等が挙げられるが、環境汚染物質分解微生物を担持しうる単体であれば、これらに限られるものではない。環境汚染物質分解微生物を担体に担持させることで、担体の厚みに応じてバイオリアクターの厚みを制御することができる。
【0019】
次に、本発明の産業廃棄物処分場は、産業廃棄物から放出される環境汚染物質の拡散を防ぐ遮水シートが敷設されている産業廃棄物処分場において、遮水シートの下面側近傍に本発明の環境汚染分解処理用バイオリアクターが敷設されているものである。ここで、裏面側近傍とは、遮水シートの破損等により、産業廃棄物から放出される環境汚染物質が遮水シートを通過して漏洩した場合に、環境汚染物質をバイオリアクターの非多孔性膜に収着させ得る位置のことを意味している。したがって、遮水シートの破損等が起こった場合にも、環境汚染物質をバイオリアクターの非多孔性膜に収着させると共に非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で環境汚染物質を容器内に透過させて環境汚染物質分解微生物に緩やかに供給し、環境汚染物質を分解処理することができるので、環境汚染物質の拡散を最小限に食い止めることができる。尚、本発明の環境汚染分解処理用バイオリアクターを、遮水シートの表面側近傍に敷設してもよい。この場合には、産業廃棄物から放出される環境汚染物質をバイオリアクターの非多孔性膜に直接収着し、容器内に透過させて分解処理することができる。
【0020】
また、本発明の遮水シートは、産業廃棄物からの環境汚染物質の拡散を防ぐ遮水シートの少なくとも裏面側に、非多孔性膜が備えられているものである。このように構成することで、遮水シートの破損等により、産業廃棄物から放出される環境汚染物質が遮水シートを通過して漏洩した場合でも、環境汚染物質が非多孔性膜に収着され、非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で環境汚染物質を遮水シートの裏面側に透過させることができる。したがって、遮水シートの裏面側領域に存在している土壌中の環境汚染物質分解微生物の機能を阻害することなく、漏洩した環境汚染物質の分解処理を行うことが可能となる。
【0021】
次に、本発明の環境汚染物質含有排水の処理方法は、排水処理槽に収容されている排水に含まれる環境汚染物質を本発明のバイオリアクターで分解処理する方法であり、バイオリアクターを複数個用意すると共にこの複数個のバイオリアクターはそれぞれ環境汚染物質透過速度を異なるものとし、排水の環境汚染物質濃度の低下に従って、環境汚染物質の分解処理に使用するバイオリアクターの環境汚染物質透過速度を大きくするようにしている。
【0022】
また、本発明の環境汚染物質含有排水の処理方法は、排水処理槽に収容されている排水に含まれる環境汚染物質を本発明のバイオリアクターで分解処理する方法であり、排水処理槽を複数個備えて排水処理槽のそれぞれにバイオリアクターを配置し、バイオリアクターの環境汚染物質透過速度を排水処理槽の後段に向かうに従って大きくし、前段の排水処理槽で排水の環境汚染物質濃度を低減し、環境汚染物質濃度が低減された排水を次段の排水処理槽で処理するようにしている。
【0023】
このように、排水の環境汚染物質濃度に合わせて、バイオリアクターの容器内に環境汚染物質が蓄積して環境汚染物質分解微生物の機能が阻害されることなく、且つこの微生物の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる量の環境汚染物質がバイオリアクターの容器内に供給されやすい状態とすることで、効率よく短時間で排水処理が行われる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の環境汚染物質の分解処理方法並びに請求項4に記載の環境汚染物質分解処理用バイオリアクターによれば、環境汚染物質を非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で微生物が棲息している領域に緩やかに供給できるので、被処理領域中の環境汚染物質濃度が恒常的に高い場合や、経時的にあるいは一時的に高まる場合であっても、環境汚染物質分解微生物の環境汚染物質処理能力が阻害されない濃度で環境汚染物質を供給することができ、環境汚染物質分解微生物の機能を阻害することなく環境汚染物質の分解処理を行うことができる。したがって、排水を希釈して環境汚染物質の濃度を薄めるための設備を備えたり、排水中の濃度を一定に管理する為の手間を省いて、簡易且つ低コストに環境汚染物質の分解処理を行うことができる。また、環境汚染物質分解微生物が棲息している領域が被処理領域から遮蔽されているので、被処理領域が環境汚染物質分解微生物の生存にとって過酷な環境、例えば、酸性あるいは塩基性の環境であっても、環境汚染物質分解微生物の生存にほとんど影響を与えることなく、環境汚染物質を分解処理することができる。
【0025】
また、請求項2に記載の環境汚染物質の分解処理方法並びに請求項5に記載の環境汚染物質分解処理用バイオリアクターによれば、非多孔性膜としてポリエチレン膜やポリプロピレン膜を用いているので、少量であっても環境汚染物質分解微生物の機能を阻害する虞のある水溶性の毒性物質、例えばシアン化合物が被処理領域である排水中などに溶け込んでいても、環境汚染物質分解微生物が収容されている容器内にシアン化合物をほとんど透過させないので、シアン化合物により環境汚染物質分解微生物の機能が阻害されることなく、被処理対象となる環境汚染物質の分解処理を行うことができる。
【0026】
また、請求項3に記載の環境汚染物質の分解処理方法並びに請求項6に記載の環境汚染物質分解処理用バイオリアクターによれば、非多孔性膜として、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜を用いているので、少量で環境汚染物質分解微生物の機能を阻害する虞のあるシアン化合物が被処理領域である排水中などに溶け込んでいても、環境汚染物質分解微生物が棲息している領域にシアン化合物をほとんど透過させないので、シアン化合物により環境汚染物質分解微生物の機能が阻害されることがなく、被処理対象となる環境汚染物質の分解処理を行うことができる。しかも、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜は、酢酸ビニルの含有率を高めることにより(エチレンの含有率を低下させることにより)、環境汚染物質の透過速度を高めることができる。また、ポリエチレン膜やポリプロピレン膜と比較して単位面積当たりの環境汚染物質透過速度が大きい。したがって、膜厚や酢酸ビニル含有率を変えることで、環境汚染物質透過速度を様々に制御することが可能となる。
【0027】
さらに、請求項7に記載の環境汚染物質分解処理用バイオリアクターによれば、容器内に収容される環境汚染物質分解微生物は、環境汚染物質分解微生物を担持しうる担体に担持されて容器内に収容されているので、担体の厚みに応じてバイオリアクターの厚みを制御することができる。したがって、バイオリアクターの厚みを薄くすることができ、複数のバイオリアクターを処理槽などに収容するときの集積密度を上げることができる。
【0028】
また、請求項8に記載の産業廃棄物処分場によれば、遮水シートの破損等により漏洩した環境汚染物質をバイオリアクターの非多孔性膜に収着させて分解処理することができるので、遮水シートの破損や劣化等により漏洩した環境汚染物質の拡散を最小限に食い止めることができる。
【0029】
さらに、請求項9に記載の遮水シートによれば、遮水シートの破損等により、産業廃棄物から放出される環境汚染物質が遮水シートを通過して漏洩した場合でも、環境汚染物質が非多孔性膜に収着されて、非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で環境汚染物質を遮水シートの裏面側に透過させることができるので、遮水シートの裏面側領域に存在している土壌中の環境汚染物質分解微生物の機能を阻害することなく、漏洩した環境汚染物質の分解処理を行って、その拡散を最小限に食い止めることが可能となる。
【0030】
請求項10に記載の環境汚染物質含有排水の処理方法によれば、排水の環境汚染物質濃度の低下に従って、環境汚染物質の分解処理に使用するバイオリアクターの環境汚染物質透過速度を大きくするようにしているので、排水の環境汚染物質濃度に合わせて、バイオリアクターの容器内に環境汚染物質が蓄積して環境汚染物質分解微生物の機能が阻害されることなく、且つこの微生物の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる量の環境汚染物質がバイオリアクターの容器内に供給されやすい状態とすることで、効率よく短時間で排水処理を行うことができる。しかも、この方法の場合、バッチ処理により排水処理ができるので、排水処理槽を1つだけ備えれば実施でき、省スペース化を図ることができる。
【0031】
請求項11に記載の本発明の環境汚染物質含有排水の処理方法によれば、バイオリアクターの環境汚染物質透過速度を排水処理槽の後段に向かうに従って大きくするようにしているので、排水の環境汚染物質濃度に合わせて、バイオリアクターの容器内に環境汚染物質が蓄積して環境汚染物質分解微生物の機能が阻害されることなく、且つこの微生物の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる量の環境汚染物質がバイオリアクターの容器内に供給されやすい状態とすることで、効率よく短時間で排水処理を行うことができる。しかも、この方法の場合、排水を連続処理することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0033】
本発明の環境汚染物質の処理方法は、環境汚染物質が存在している被処理領域と環境汚染物質分解微生物が棲息している領域との間に非多孔性膜を介在させて環境汚染物質分解微生物を被処理領域から遮蔽し、被処理領域に存在している環境汚染物質を非多孔性膜に収着させると共に非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で環境汚染物質分解微生物が棲息している領域に透過させて環境汚染物質分解微生物に供給し、環境汚染物質分解微生物により環境汚染物質を分解処理するようにしている。
【0034】
本発明において被処理対象となる環境汚染物質としては、有機化合物や窒素化合物等が挙げられる。より具体的には、フェノール、ベンゼン、トルエン、キシレン等の有機溶剤、ジクロロエタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、cis-1,2-トリクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の有機塩素系化合物、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、チオベンカルブ等の農薬系有機化合物、ガス状アンモニア、アンモニウムイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオンなどの窒素化合物が挙げられるが、非多孔性膜を透過することができ、環境汚染物質分解微生物により分解処理が可能な化学物質であればこれらに限定されない。
【0035】
また、環境汚染物質分解微生物としては、環境汚染物質を分解可能な公知あるいは新規の微生物を用いることができる。例えば、フェノールを分解処理する場合には、フェノール分解菌であるAcinetobacter sp.を用いればよい。尚、Acinetobacter sp.は、ベンゼンやトルエンを分解する能力も有しているので、Acinetobacter sp.を環境汚染物質分解微生物として用いた場合にはフェノールを分解するのと同時に、ベンゼンやトルエンを分解することもできる。また、ガス状アンモニアやアンモニウムイオンを分解処理する場合にはアンモニア酸化菌を用いればよいし、硝酸イオンや亜硝酸イオンを分解処理する場合には、脱窒菌を用いればよいが、これらの環境汚染物質分解微生物に限定されるものではない。
【0036】
本発明における被処理領域とは、環境汚染物質が存在している排水(廃水)に限らず、土壌、地下水、汚泥、河川及び海洋等も含んでいる。また、家畜舎内あるいはコンポスト化施設内等の高濃度アンモニアガス含有雰囲気中や、塗装現場等の高濃度有機溶剤揮散雰囲気、シックハウス症候群を引き起こすような建築物室内等の気相環境も含んでいる。
【0037】
ここで、本発明の環境汚染物質の処理方法において、被処理領域と環境汚染物質分解微生物が棲息している領域との間に非多孔性膜を介在させることにより、環境汚染物質分解微生物が棲息している領域が被処理領域から遮蔽されるようにしている。遮蔽の仕方としては、例えば、以下に説明する本発明の環境汚染物質分解処理用バイオリアクターが挙げられる。
【0038】
図1〜図5に本発明にかかる環境汚染物質分解処理用バイオリアクターの実施形態を示す。このバイオリアクター1は、非多孔性膜2を少なくとも一部に備えると共に環境汚染物質分解微生物3が収容されている容器4を含み、容器4の周辺に存在している環境汚染物質5を容器の非多孔性膜2の部分に収着させると共に非多孔性膜2の分子透過性能に支配される速度で環境汚染物質5を容器4内に透過させて環境汚染物質分解微生物3に緩やかに供給し、環境汚染物質分解微生物3により環境汚染物質5を分解処理するものである。
【0039】
図1に示すバイオリアクター1の容器4は全体が非多孔性膜2で構成される袋状を成し、全周縁をヒートシールで溶着したり、接着剤により接着したりするようにして、水や液体培地8に添加した環境汚染物質分解微生物3あるいは環境汚染物質分解微生物3を含む活性汚泥を密閉するようにしている。
【0040】
ここで、本発明のバイオリアクター1の容器4は、図2に示すように、容器の上辺部を溶着、接着等せずに、開放状態としても良いし、または、容器4の上辺部の縁の一部に孔を設けて容器4内を曝気処理するための空気供給管などを容器4内に挿入し易い形態にしても良い。
【0041】
また、図3に示すように、環境汚染物質分解微生物3を担持させた担体6を密閉するようにしてもよい。
【0042】
この場合も、図4に示すように、容器の上辺部を溶着、接着等せずに開放状態としても良いし、または、容器4の上辺部の縁の一部に孔を設けて容器4内を曝気処理するための空気供給管などを容器4内に挿入し易い形態にしても良い。
【0043】
さらに、図5に示すように、非多孔性膜2からなる容器4に環境汚染物質分解微生物3を担持させた担体6を収容し、担体6に内部空間7を設けるようにしてもよい。この場合には、容器4内を曝気処理するための空気供給管などを容器4内にさらに挿入し易い形態となる。また、内部空間7が空気に晒されるので、空気供給管を用いて容器4内を曝気処理しなくても好気性の環境汚染物質分解微生物3を活性化することができる場合がある。
【0044】
尚、容器4内の水分が減少すると、微生物が失活してしまう虞がある。特に図5の形態のバイオリアクターの場合、担体6が乾燥し易くなるので、定期的にあるいは随意に担体6に給水するようにする。
【0045】
ここで、本発明に用いられる担体6としては、環境汚染物質分解微生物3を担持し得るものを適宜用いることができる。例えば、多孔質体、繊維状物質などが挙げられる。より具体的には、例えば多孔質体であれば、セラミックス多孔質体であってもよいし、可撓性のプラスチック多孔質体などを用いてもよい。剛性の高いセラミックスなどの部材を用いれば、容器4が変形し難くなるし、可撓性の部材を用いれば、容器4を可撓性として、変形し易くすることができる。また、繊維状物質としては、濾紙等の紙、不織布、その他発泡体などが挙げられる。また、高分子ゲルを用いることができる。
【0046】
高分子ゲルとしては、コラーゲン、フィブリン、アルブミン、カゼイン、セルロースファイバー、セルローストリアセタート、寒天、アルギン酸カルシウム、カラギーナン、アガロース等の天然高分子、ポリアクリルアミド、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリル酸、ポリビニルクロリド、γ−メチルポリグルタミン酸、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリジメチルアクリルアミド、ポリウレタン、光硬化性樹脂(ポリビニルアルコール誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体、ポリブタジエン誘導体等)等の合成高分子、またはこれらの複合体、さらには吸水性ポリマーを用いることも可能である。吸水性ポリマーとしては、公知あるいは新規のものを使用することができるが、具体的には、ポリアクリル酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸やそれらの改変物、ポリエチレングリコール改変物等が挙げられる。尚、ここで言う改変物とは、イオン性基をもつ高分子を前記高分子の一部に架橋させた物である。吸水性ポリマーを用いた場合には、担体の保水力、吸水力が高まるため、給水の手間を非常に軽くでき、もしくは大気中に存在する水分のみで供給が足りる場合には給水は必要としなくなる。
【0047】
尚、図1〜図5に示すバイオリアクターにおいて、容器4は全体が非多孔性膜2で構成される袋状としているが、形態や構造は特に限定されない。例えば、容器4をチューブ状やシート状としてもよい。また、チューブ状の容器は直線状である必要は無く、曲線状としてもよいし、図6に示すように、螺旋状として容器4の大きさに対する表面積(比表面積)を大きくすることで、環境汚染物質3の収着面を広くしてもよい。また、シート状とは、例えば、家畜糞尿や産業廃棄物などの環境汚染物質発生源を覆い被せることが可能なフレキシブルなものであったり、高濃度の環境汚染物質が存在している雰囲気中にカーテンのように吊下げられるようなものであったり、あるいは家畜糞尿や産業廃棄物などの環境汚染物質発生源を収容する容器などを覆ったりするような柔軟性のものは勿論のこと、容器に載置する蓋のように比較的剛性のある板状のものも含むものである。また、非多孔性膜の片面に環境汚染物質分解微生物を担持した担体を貼着、接着等により貼り付け、他面側に環境汚染物質発生源を接触させるような形態も含んでいる。尚、袋状の容器(単に袋と呼ぶこともある)4は、全体を非多孔性膜で構成するものに特に限られず、片面だけを非多孔性膜で構成したり、1つの面のさらに一部分を非多孔性膜のみで構成するようにしても良い。部分的に非多孔性膜を用いる場合には、その他の部分は金属製やプラスチック製の剛体フレーム、環境汚染物質を透過しない膜を用いても良い。
【0048】
本発明に用いられる非多孔性膜2は、被処理領域に存在している環境汚染物質5を収着させ、その分子を容器4内に少しずつ透過させることによって環境汚染物質分解微生物3に緩やかに供給するものである。この非多孔性膜2は、膜材料、膜厚、環境汚染物質5の分子量や性質、被処理領域の温度、被処理領域中の環境汚染物質5の濃度により、単位面積当たりを透過する環境汚染物質5の分子の量を制御することが可能である。また、非多孔性膜2の表面積を増減させることで、環境汚染物質5の収着面を増減することができる。したがって、被処理領域の一部に非多孔性膜2を接触させて、被処理領域と非多孔性膜の接触面の表面積に応じて、環境汚染物質5の収着面を増減できる。したがって、非多孔性膜2の分子透過性能に支配される緩やかな速度、つまり、環境汚染物質分解微生物3による環境汚染物質5の分解処理機能を低下させない程度の量及び速度で環境汚染物質5を環境汚染物質分解微生物3に供給することができる。
【0049】
ここで、非多孔性膜2は、膜の密度や構造によっても分子透過量が変化する。ポリエチレンを例に挙げて説明すると、JISK6922‐2により分類される低密度ポリエチレン(密度910kg/m以上、930kg/m未満)を用いた場合と比較して、高密度ポリエチレン(密度942kg/m以上)を用いた場合には、環境汚染物質5の容器内への透過量が減少する。したがって、非多孔性膜2の膜厚と膜密度のバランスにより、環境汚染物質5の供給量及び供給速度を制御すればよい。また、膜内部のポリエチレン鎖の分子構造は、例えば延伸処理により変化させることができるので、延伸処理により所望の膜材料の膜密度や分子構造を変化させて、環境汚染物質5の供給量及び供給速度を制御することが可能である。
【0050】
非多孔性膜2の性質は、疎水性の膜、親水性の膜または親水性と疎水性の両方の性質を有する膜のいずれかを、被処理対象である環境汚染物質5の性質に合わせて用いることができる。疎水性の膜としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンその他のオレフィン系の膜を用いることができる。親水性の膜としては、分子構造中に親水基を有する膜、例えば、ポリエステル、ナイロン(ポリアミド)、ポリビニルアルコール、ビニロン、セロハン、ポリグルタミン酸などを用いることができる。親水性と疎水性の両方の性質を有する膜としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、つまり、疎水性のポリエチレン構造と親水性のポリビニルアルコール構造の両方を有する共重合体膜を用いることができる。親水性と疎水性の両方の性質を有する膜は、疎水性のポリエチレンと親水性のポリビニルアルコールの含有比率を変えることにより、疎水性を強めたり、親水性を強めたりすることができる。その他にも上記の非多孔性膜に比べ透過性が劣るが、極めて遅い透過性能が要求される時には、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、エチレンアクリル酸共重合体、ポリエチレンテレフタレート混合物系などの気液系膜、つまり、その分子構造中の親水基や極性基の状態によって透過性が変化する膜を用いることもできる。尚、非多孔性膜は、被処理対象となる環境汚染物質を透過させることができ、且つ、環境汚染物質の透過速度を膜材料、膜厚、膜密度などで制御できる膜であれば、これらに限定されない。
【0051】
ここで、ポリエチレンやポリプロピレンに代表される疎水性の膜を用いることで、分子構造中に親水基を有していない疎水性物質であるベンゼンやトルエンなどの有機化合物を透過させることができる。また、メタノール、エタノール、フェノールなど、分子構造中に親水基を有している一部の物質も疎水性の膜を透過することが本発明者等の実験により確かめられている。一方、水溶性の高い物質は疎水性の膜を透過することができない。この場合には、ポリビニルアルコールに代表される親水性の膜を用いることで、水溶性の高い物質を透過させることができる。メタノール、エタノール、フェノールも水に可溶な物質であるから、ポリビニルアルコール膜を透過することが可能である。尚、ガス状アンモニアがポリエチレン膜を透過することが本発明者等の実験により確認されている。したがって、疎水性の膜を非多孔性膜として用いることで、ガス状アンモニアを容器内に緩やかに透過させることができる。また、アンモニウムイオン、硝酸イオンがポリビニルアルコール膜を透過することが本発明者等の実験により確認されている。したがって、親水性の膜を非多孔性膜として用いることで、アンモニウムイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオンを容器内に緩やかに透過させることができる。つまり、ポリエチレン膜等の疎水性の膜、ポリビニルアルコール膜等の親水性の膜を、透過させたい環境汚染物質の性質に合わせて用いることにより、容器内に緩やかに環境汚染物質を透過させて、環境汚染物質分解微生物に供給することができる。したがって、環境汚染物質分解微生物の機能が阻害されることなく、環境汚染物質を分解処理できる。
【0052】
また、親水性と疎水性の両方の性質を有するエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を用いることで、親水性の環境汚染物質と疎水性の環境汚染物質の双方を同時に容器内に透過させることも可能である。また、共重合体を構成するエチレンとビニルアルコールの比により、環境汚染物質の容器4内への透過量を制御することが可能である。つまり、エチレンの含有量を増やすと疎水性の環境汚染物質の容器4内への透過量を増やすことができ、ポリビニルアルコールの含有量を増やすと親水性の環境汚染物質の容器4内への透過量を増やすことができる。
【0053】
尚、ポリエチレンやポリプロピレンは、容器内の環境汚染物質分解微生物と被処理領域となる水領域や土壌中、大気中とを良好に区画することが可能である。また、適度な物質の透過性、熱可逆性を有しており、柔軟で成形が容易であるという利点を有している。しかも、ポリエチレンやポリプロピレンは、耐薬品性に優れていると共に安価で入手しやすく、疎水性の膜としてポリエチレンやポリプロピレンを用いることはコスト面や性能面から考えて非常に優れている。
【0054】
ここで、環境汚染物質5が非多孔性膜2を透過する機構について説明する。被処理領域に存在している環境汚染物質5は、非多孔性膜2に収着される。次に、環境汚染物質5の分子が膜に溶け込み、その溶け込んだ分子が膜内部を拡散して反対側に達する。したがって、膜への溶け込みが起こらない程分子量の大きな物質である抗菌性物質のカテキンなどは非多孔性膜を透過しにくい。また、ポリエチレンやポリプロピレン等は水となじむ官能基が存在しない疎水性の強い膜であると共に低極性であるため、極性分子である水が膜に溶け込みにくい。したがって、水に溶けやすい極性の高い物質であるシアン化合物や塩化ナトリウム(NaCl)などもほとんど透過できない。また、水は水分子同士の水素結合が強いため、常温では水が当該膜を透過することはほとんど無い。したがって、ポリエチレンやポリプロピレンに代表される疎水性の非多孔性膜は、水や極性の高いシアン化合物、分子量の大きなカテキン等の不純物、塩分等はほとんど透過させずに、フェノールなどの有機化合物やガス状アンモニアを透過させる「分子ふるい」として機能する。したがって、非多孔性膜としてポリエチレンやポリプロピレンに代表される疎水性の膜を用いた場合には、少量で環境汚染物質分解微生物3の機能を阻害する虞のあるカテキンやシアン化合物のような微生物毒性物質または塩分等が混入している被処理領域、例えば、茶の精製工場や化学工場、石炭ガス化プラントなどから排出される排水、塩分を含む排水を、環境汚染物質分解微生物の機能を阻害させることなく分解処理できる。また、環境汚染物質5は、被処理領域に存在している状態が気体、液体のどちらであっても、非多孔性膜2に収着させて、容器内に透過させることができる。そして、環境汚染物質5は、非多孔性膜2を透過して、液体のように分子間の引力により凝集することのないガス(気体)の状態で容器内に供給される。
【0055】
また、アンモニウムイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオンなどの水溶性物質は親水性の非多孔性膜2を透過し、これらの水溶性物質が膜に溶け込み、その溶け込んだ水溶性物質が膜内部を拡散して反対側に達することにより起こる。ここで、水溶性物質のポリビニルアルコール膜透過メカニズムについてより詳細に説明する。ポリビニルアルコール膜は乾燥状態において膜内部で水素結合が形成されている。したがって、分子鎖の熱振動によるゆらぎが起こりにくい構造になっており、分子鎖の隙間が少ないため、分子が透過しにくい。しかし、分子鎖の間に水分子が侵入すると水素結合が切れ、分子鎖の熱振動によるゆらぎが起こりやすい構造となって、水分子がさらに膜内部に侵入する。その結果、水分子の通路が形成される。水溶性物質分子、例えばアンモニウムイオンなどは、この水分子の通路を通って拡散する。尚、親水性の非多孔性膜2はシアン化合物や塩分を透過させてしまうので、親水性の非多孔性膜2を使用する場合には、シアン化合物や塩分がほとんど含まれていない被処理領域を対象とすることが必要となる。
【0056】
ここで、非多孔性膜2として、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜を用いることが好ましい。この膜は、ポリエチレン膜やポリプロピレン膜と比較して単位面積当たりの環境汚染物質透過性能が高い。したがって、ポリエチレン膜やポリプロピレン膜を用いた場合よりもバイオリアクターの容器を小型化してコンパクトなものとできる。しかも、エチレンと酢酸ビニルの含有割合を変化させることで、環境汚染物質透過性能を変化させることができ、酢酸ビニルの含有率を高めるに従って、環境汚染物質透過速度が高まる。したがって、エチレンと酢酸ビニルの含有割合及び膜の厚さによって環境汚染物質透過速度を様々に変化させることができ、環境汚染物質透過速度の制御性に関する自由度が高まり、所望の環境汚染物質処理環境に合わせて、エチレンと酢酸ビニルの含有割合及び膜の厚さの組み合わせにより、環境汚染物質透過速度を様々に選択することが可能になる。
【0057】
ここで、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜における酢酸ビニルの含有率については、0重量%超〜20重量%の範囲内であれば、酢酸ビニルの含有率を高めることで、環境汚染物質の透過速度を確実に高めることができる。酢酸ビニルの含有率を20重量%超とすると、エチレンと酢酸ビニルの共重合体を膜として成形するのが難しくなる。
【0058】
また、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜は、水に溶けやすい極性の高い物質であるシアン化合物や塩化ナトリウム(NaCl)などをほとんど透過させることがない。また、水は水分子同士の水素結合が強いため、常温では水が当該膜を透過することはほとんど無い。したがって、水や極性の高いシアン化合物、分子量の大きなカテキン等の不純物、塩分等はほとんど透過させずに、フェノールなどの有機化合物やガス状アンモニアを透過させる「分子ふるい」として機能する。よって、少量で環境汚染物質分解微生物3の機能を阻害する虞のあるカテキンやシアン化合物のような微生物毒性物質または塩分等が混入している被処理領域、例えば、茶の精製工場や化学工場、石炭ガス化プラントなどから排出される排水、塩分を含む排水を、環境汚染物質分解微生物の機能を阻害させることなく分解処理できる。
【0059】
また、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜は、柔軟性に優れており、耐ピンホール性が高い。つまり、膜自体の柔軟性が高いことから、ピンホールが開きにくく、ピンホールがほとんど存在しない。したがって、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜を使用することで、バイオリアクター1の加工性を高めることができ、また製品としての信頼性を高めることができる。
【0060】
このように、非多孔性膜は、環境汚染物質3を膜に溶け込ませることにより透過させており、多孔質膜のように孔の大きさや数で環境汚染物質5の種類や量を制御するものではない。したがって、長期間の使用による孔の閉塞の問題も生じることが無く、定期的な逆洗浄の必要もない。したがって長期間メンテナンスを行うことなく使用でき、ランニングコストを低減できる。
【0061】
ここで、環境汚染分解微生物3が好気性微生物の場合には、容器4の内部を好気性雰囲気にする必要がある。また、環境汚染分解微生物3が嫌気性微生物の場合には、容器4の内部を嫌気性雰囲気にする必要がある。さらに、環境汚染分解微生物3にとって電子供与体となる物質を微量に供給して酵素代謝を誘導し、環境汚染分解微生物3による共代謝を利用して有機塩素化合物の分解処理を行うこともできる。そこで、例えば、以下に説明する微生物活性制御物質供給装置をバイオリアクター1の容器4内に収容して、容器4内の環境を制御することができる。
【0062】
図7に微生物活性制御物質供給装置の一実施形態を示す。この微生物活性制御物質供給装置11は、微生物活性制御物質13と、非多孔性膜12を少なくとも一部に備える密封構造の容器14とを含み、容器14内には微生物活性制御物質13が充填され、微生物活性制御物質13を容器14の非多孔性膜12の部分から非多孔性膜2の分子透過性能に支配される速度で容器14の周辺に供給し、容器14の周辺の微生物の活性を制御するものである。本実施形態では、容器14は全体が非多孔性膜12で構成される袋状を成し、周縁をヒートシールで溶着したり、接着剤により接着したりするようにして微生物活性制御物質13を密封するようにしているが、形態や構造は特に限定されない。例えば、容器14をチューブ状やシート状としてもよい。また、袋状の容器(単に袋と呼ぶこともある)4は、全体を非多孔性膜で構成するものに特に限られず、片面だけを非多孔性膜で構成したり、1つの面のさらに一部分を非多孔性膜のみで構成するようにしても良い。部分的に非多孔性膜を用いる場合には、その他の部分は金属製やプラスチック製の剛体フレーム、微生物活性制御物質を透過しない膜を用いても良い。
【0063】
また、図8及び図9に示すように、非多孔性膜12からなる容器14を完全密封された独立したものとはせずに、微生物活性制御物質13を導入する手段を有する密封構造の袋状とした容器とし、微生物活性制御物質13を外部から補充可能としてもよい。
【0064】
微生物活性制御物質13の補給するための機構は、容器14の縁の一部に微生物活性制御物質13を注入する供給部15を設けてノズルないしパイプ17を装着する構造でも良いし、予め容器14と一体となったノズルないしパイプ17のようなものでも良い。図9に示す微生物活性制御物質供給装置11は、容器14の縁に設けられた供給部15に着脱可能に装着された供給ノズル17あるいは容器14と一体となった供給ノズル17と、液体の微生物活性制御物質、例えば、電子供与体物質であるメタノールやエタノール等のアルコールを貯留するタンク16とをチューブ18などで連結し、必要に応じて微生物活性制御物質13を補充可能としている。この場合、タンク16と容器14とはチューブ8を介して連通されているので、タンク6内に微生物活性制御物質13’を貯留しておけば、袋4内の微生物活性制御物質3が減少してきたときに、チューブ両端での圧力の差を利用して微生物活性制御物質13’をタンクから補充できる。尚、容器14は供給部15あるいはノズル17を設けているので厳密な意味での密封構造ではないが、供給ノズル17内がタンクから供給される微生物活性制御物質13’で満たされている状態では、液面がシールとなって容器内は事実上密封状態にある。このため、液状あるいはガス化した微生物活性制御物質13が供給部15やノズル17を通って容器14外に漏れ出ることはない。
【0065】
微生物活性制御物質供給装置11は、容器14内に充填される微生物活性制御物質13の徐放により、容器14内の環境制御を行うことができる。微生物活性制御物質13としては、電子供与体物質、酸素放出物質、酸素吸収物質が挙げられる。これら微生物活性制御物質13は、単独で用いてもよいし、互いにその効果を相殺することのない関係にある物質を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
微生物活性制御物質13として環境汚染物質分解微生物のエネルギー源となる電子供与体物質を用いれば、環境汚染物質分解微生物3の酵素代謝を誘導して、共代謝による有機塩素化合物の分解処理を効率よく行うことができる。ここで、共代謝とは、微生物が代謝する酵素の基質特異性が広い場合に、当該微生物にとっての本来の分解対象物質以外の物質を分解してしまう現象のことをいう。例えばメタン分解菌を例に挙げて説明すると、メタン分解菌が代謝するメタンモノオキシゲナーゼは、本来メタンを分解するための酵素であるが、この酵素は基質特異性が広く、トリクロロエチレンの脱塩素化も促進する酵素である。しかし、電子供与体物質であるメタンが供給されなければ、酵素代謝が誘導されなくなり、メタン分解菌はやがて死滅する。一方、電子供与体物質であるメタンの供給量が多い場合には、トリクロロエチレンの脱塩素化反応が起こり難くなる。つまり、メタン分解菌にとって本来のエネルギー源物質であるメタンの分解反応と、メタン分解菌にとって電子供与体物質ではないトリクロロエチレン等の物質の分解反応は競争関係にある。したがって、有機系塩素化合物を共代謝により分解しうる微生物であるメタン分解菌やトルエン分解菌、フェノール分解菌、アンモニア酸化菌に対して、非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で、生存の維持に最低限必要な電子供与体物質を与えてこれらの微生物を刺激することにより酵素代謝を誘導して、トリクロロエチレン等の有機系塩素化合物の分解処理を効率よく行うことができる。
【0067】
また、微生物活性制御物質13として環境汚染物質分解微生物3のエネルギー源となる電子供与体物質を用いることで、硝酸イオンや亜硝酸イオンを窒素ガスに還元して無害化する微生物である脱窒菌を機能させることができる。
【0068】
電子供与体物質としては、メタン分解菌やトルエン分解菌、フェノール分解菌、アンモニア酸化菌、脱窒菌のエネルギー源となる電子供与体物質であればよい。例えば、メタン、トルエン、フェノール、アンモニア等や、エタノールなどのアルコール全般、酢酸、乳酸、グルコース、スクロースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
電子供与体物質の非多孔性膜の透過は、前述した環境汚染物質の非多孔性膜の透過と同様にして起こるので、ここでは説明を省略する。
【0070】
また、微生物活性制御物質13として酸素放出物質を用いれば、バイオリアクター1の容器4内に非多孔性膜12の酸素透過性能に支配される速度で酸素を供給して、バイオリアクター1の容器4内を好気性雰囲気に制御し、好気性微生物である環境汚染物質分解微生物3を機能させて、環境汚染物質の分解処理を行うことができる。
【0071】
酸素放出物質としては、酸素や空気が挙げられる。また、過酸化水素水、過炭酸ナトリウム・過酸化水素付与物、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムなどの酸素を発生する物質が挙げられる。また、過酸化水素水を用いる場合には、酸素生成触媒として二酸化マンガンや過マンガン酸カリウムを併用しても良い。
【0072】
さらに、微生物活性制御物質13として酸素吸収物質を用いれば、バイオリアクター1の容器4内から非多孔性膜12の酸素透過性能に支配される速度で酸素を吸収して、容器4内を嫌気性雰囲気に制御し、嫌気性微生物である環境汚染物質分解微生物3を機能させて、環境汚染物質の分解処理を行うことができる。
【0073】
酸素吸収物質としては、還元鉄のような固体還元剤や、還元剤を入れた溶液、例えば亜硫酸ナトリウム溶液が挙げられる。
【0074】
微生物活性制御物質供給装置13に用いられる非多孔性膜12は、前述したバイオリアクター1の非多孔性膜2と同様のものを用いることができる。つまり、疎水性の膜、親水性の膜または親水性と疎水性の両方の性質を有する膜のいずれかを、微生物活性制御物質13の性質に合わせて用いることができる。
【0075】
ここで、酸素放出物質または酸素吸収物質を用いた場合の酸素の非多孔性膜12の透過について説明する。ポリエチレン膜に代表される疎水性膜では、酸素はポリエチレン膜の分子鎖の隙間を通って拡散する。この場合、分子鎖に隙間があって分子鎖が熱振動によってゆらぎやすい構造をしている低密度ポリエチレン膜の方が酸素透過性が高い。一方、ポリビニルアルコール膜に代表される親水性膜は、前述した様に、水分子の膜内部への侵入により、水分子の通路が形成される。水中における酸素の拡散速度は、ポリエチレン膜中における拡散速度よりも高いため、ポリビニルアルコール膜内部の水分子の通路の大きさに依存して、酸素の透過性が高くなる。つまり、バイオリアクター1の容器4内の微生物棲息環境に含まれる水分と接触することで、水分子の通路が形成されて、微生物棲息環境に酸素が供給され、または、微生物棲息環境から酸素が吸収される。
【0076】
尚、バイオリアクター1の容器4内の環境を制御するための手段は、上述した微生物活性制御装置11を容器4内に収容する方法に限られるものではない。例えば、容器4内に配管を通して、ポンプなどの制御装置により、容器4内に空気を供給して容器4内の好気性雰囲気を維持してもよい。また、被処理領域が気相中の場合、容器4の片面を酸素透過性の高いシリコン膜やポリジメチルシロキサン膜等で構成して容器4内が好気性になりやすい構造にしてもよい。また、片面に膜を設けずに空気にさらすようにしてもよい。また、容器4内を嫌気性雰囲気にする場合には、直接酸素吸収物質を投入しても良い。
【0077】
また、電子供与体物質も、容器4内に配管を通して、ポンプなどの制御装置により供給制御してもよい。尚、被処理環境中に電子供与体物質が存在すれば、この電子供与体物質が非多孔性膜に収着されると共に非多孔性膜の分子透過性能に支配される速度で容器内に透過して環境汚染物質分解微生物に供給され、環境汚染物質を分解処理できる。この場合には、電子供与体供給手段を特に設ける必要は無い。しかも、被処理領域中に存在する電子供与体物質が環境汚染物質であれば、環境汚染物質をエネルギー源として、別の環境汚染物質を分解処理するという効率の良い微生物分解処理系が形成されることになる。
【0078】
ここで、本発明の環境汚染物質の処理方法において、環境汚染物質分解微生物が棲息している領域の被処理領域からの遮蔽の仕方は、前述のバイオリアクターの形態に限られるものではない。例えば、図20に示すように、処理槽30を非多孔性膜2により2領域に区画し、一方の領域30aに被処理液31を収容し、他方の領域30bには水あるいは培地8中に添加した環境汚染物質分解微生物3を棲息させて、被処理液31中の環境汚染物質5を非多孔性膜2の分子透過性能に支配される速度で透過して処理するようにしても良い。
【0079】
また、非多孔性膜の片面に環境汚染物質分解微生物を担持させた担体を貼着して壁等に貼り付け、もう一方の面に環境汚染物質が存在している被処理領域が接触するようにしてもよい。
【0080】
さらに、土壌等において環境汚染物質が高濃度で存在する領域が局所的に存在する場合、当該高濃度領域を非多孔性膜で遮蔽し、周辺に存在している環境汚染物質分解微生物により、環境汚染物質を分解処理してもよい。つまり、土壌に存在している環境汚染物質分解微生物に高濃度環境汚染物質領域から非多孔性膜を介して環境汚染物質を緩やかに供給することで、周辺の環境汚染物質分解微生物の機能を阻害することなく、環境汚染物質の分解処理を行うことができる。
【0081】
また、図10に示すように、バイオリアクター1は、産業廃棄物22からの環境汚染物質5の拡散を防ぐ遮水シート21が敷設されている産業廃棄物処分場20において、遮水シート21の裏面側近傍に敷設して用いることができる。この場合には、遮水シートの破損等により漏洩した環境汚染物質5の分解処理を行うことができるので、環境汚染物質5環境中への拡散を最小限に食い止めることができる。尚、バイオリアクター1を遮水シート21の表面側近傍に敷設してもよい。この場合には、産業廃棄物22から放出される環境汚染物質5をバイオリアクター1の非多孔性膜2に直接収着し、容器4内に透過させて分解処理することができる。また、遮水シート21を敷設する前に非多孔性膜2を敷設するようにしてもよい。この場合には、遮水シートの破損等により漏洩した環境汚染物質5が非多孔性膜2の分子透過性能に支配される緩やかな速度で透過するので、非多孔性膜2の裏面側の土壌に棲息している環境汚染物質分解微生物3に緩やかに環境汚染物質を供給して分解処理することができる。
【0082】
また、図11に示すように、産業廃棄物22からの環境汚染物質5の拡散を防ぐ遮水シート21の少なくとも裏面側に、非多孔性膜2を接着あるいは溶着等により備えた遮水シートを形成することもできる。このように構成することで、遮水シート21の破損等により、産業廃棄物22から放出される環境汚染物質5が遮水シート21を通過して漏洩した場合でも、環境汚染物質5が非多孔性膜2に収着され、非多孔性膜2の分子透過性能に支配される速度で環境汚染物質5を遮水シートの裏面側に透過させることができる。したがって、遮水シートの裏面側領域に棲息している土壌中の環境汚染物質分解微生物3の機能を阻害することなく、漏洩した環境汚染物質の分解処理を行うことが可能となる。
【0083】
次に、本発明の環境汚染物質含有排水処理方法について説明する。本発明の環境汚染物質含有排水処理方法は、排水の環境汚染物質濃度に合わせて、バイオリアクター1の容器4内に環境汚染物質5が蓄積して環境汚染物質分解微生物3の機能が阻害されることなく、且つこの微生物3の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる量の環境汚染物質5がバイオリアクター1の容器4内に供給されやすい状態とすることで、効率よく短時間で排水処理を行うものである。つまり、バイオリアクター1の作用により排水の環境汚染物質濃度が低下するにつれて、バイオリアクター1の容器4内の環境汚染物質濃度と排水の環境汚染物質濃度の差、即ち濃度勾配が小さくなる。そうすると、バイオリアクター1の容器4内に供給される環境汚染物質の単位時間当たりの量が低下し、環境汚染物質分解微生物3の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用することができなくなって、処理効率が低下してしまう。その対策案として、本発明の環境汚染物質含有排水処理方法が挙げられる。
【0084】
具体的に説明すると、1つの排水処理槽を用意し、バイオリアクター1を複数個用意すると共にこの複数個のバイオリアクター1はそれぞれ環境汚染物質透過速度を異なるものとする。そして、排水処理槽に初期に投入される排水の環境汚染物質濃度に合わせて、容器4内に環境汚染物質5が蓄積して環境汚染物質分解微生物3の機能が阻害されることなく、且つこの微生物3の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる量の環境汚染物質5が容器4内に供給される環境汚染物質透過速度を有するバイオリアクターを選択して、排水処理槽に投入する。排水の環境汚染物質濃度の低下に伴い、微生物3の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる量の環境汚染物質5を容器4内に供給できなくなって、処理効率が低下する。そこで、排水処理槽の排水の環境汚染物質濃度に合わせて、容器4内に環境汚染物質5が蓄積して環境汚染物質分解微生物3の機能が阻害されることなく、且つこの微生物3の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる量の環境汚染物質5が容器4内に供給される環境汚染物質透過速度を有するバイオリアクターを選択して、排水処理槽に投入する。つまり、2回目に投入したバイオリアクターの環境汚染物質透過速度は、1回目に投入したバイオリアクターの環境汚染物質透過速度よりも大きい。そして、この処理を繰り返し行って、バイオリアクター1の容器4内に環境汚染物質5が蓄積して環境汚染物質分解微生物3の機能が阻害されることなく、且つこの微生物3の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる量の環境汚染物質5がバイオリアクター1の容器4内に供給される状態を常時維持することで、効率よく短時間で排水処理を行うことができる。
【0085】
上記の方法はバッチ処理方式であるが、連続処理方式としてもよい。即ち、排水処理槽を複数個備えて排水処理槽のそれぞれにバイオリアクターを配置し、バイオリアクターの環境汚染物質透過速度を排水処理槽の後段に向かうに従って大きくし、前段の排水処理槽で排水の環境汚染物質濃度を低減し、環境汚染物質濃度が低減された排水を次段の排水処理槽で処理するようにしてもよい。
【0086】
排水の環境汚染物質濃度は、バイオリアクター1の作用により徐々に低下する。一方で、排水の環境汚染物質濃度の低下に伴い、バイオリアクター1の容器4内に単位時間当たりに供給される環境汚染物質の量は低下する。そうすると、バイオリアクター1の容器4内に供給される環境汚染物質の単位時間当たりの量に対し、バイオリアクター1の容器4内に棲息する微生物の環境汚染物質分解処理能が余剰な状態となり、微生物3の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる量の環境汚染物質5を容器4内に供給できなくなって、処理効率が低下する。そこで、各排水処理槽に送られる排水の環境汚染物質濃度に合わせて、容器4内に環境汚染物質5が蓄積して環境汚染物質分解微生物3の機能が阻害されることなく、且つこの微生物3の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる量の環境汚染物質5が容器4内に供給される環境汚染物質透過速度を有するバイオリアクターを配置することで、効率よく短時間で排水処理を行うことができる。
【0087】
バイオリアクター1の容器4内への環境汚染物質透過速度の制御は、容器4を構成する非多孔性膜2の膜厚、表面積(容器の大きさ)、膜材料、膜密度等により適宜制御することができる。ここで、膜材料として、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜を用いることが好ましい。この場合には、共重合体を構成するエチレンと酢酸ビニルの含有割合により環境汚染物質透過速度を制御でき、酢酸ビニル含有率を高めることで、環境汚染物質透過速度を高めることができる。また、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜は、ポリエチレン膜やポリプロピレン膜と比較して単位面積当たりの環境汚染物質透過速度が大きい。したがって、膜厚や酢酸ビニル含有率を変えることで、環境汚染物質透過速度を様々に制御できる。以上のことから、エチレンと酢酸ビニルの共重合体膜を使用することで、環境汚染物質透過速度を段階的に制御しやすく、上記の様に、バイオリアクター1の容器4内に環境汚染物質5が蓄積して環境汚染物質分解微生物3の機能が阻害されることなく、且つこの微生物3の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる量の環境汚染物質5がバイオリアクター1の容器4内に供給される環境汚染物質透過速度に制御し易くなる。
【0088】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、バイオリアクター1の容器4の表面に、保護材を備えるようにしてもよい。保護材を備えることにより非多孔性膜2を摩擦等の外部衝撃による損傷から防ぐことが可能となる。また、保護材は容器4の補強材としても機能し、容器4の収容物の重みにより容器4がちぎれたり、破れたりするのを防止できる。尚、保護材には、非多孔性膜2からの環境汚染物質5の透過を阻害しないものを用いる。例えば、繊維状の素材である不織布などを用いてもよいし、金属や樹脂をネット状にしたり、微細孔を多数形成して用いてもよい。また、この保護材を剛性の高い部材により筒状、鞘状に形成すれば、袋状の容器4が膨らむことなく、その厚さを制限して袋4の厚さが薄くなり、処理槽などの閉鎖空間に収めるときの充填密度を高められると共に、摩擦等の外部衝撃からも保護することが可能となる。
【0089】
また、上述の形態では、排水処理槽を複数個備えて排水処理槽のそれぞれにバイオリアクターを配置し、バイオリアクターの環境汚染物質透過速度を排水処理槽の後段に向かうに従って大きくし、前段の排水処理槽で排水の環境汚染物質濃度を低減し、環境汚染物質濃度が低減された排水を次段の排水処理槽で処理するようにしていたが、この方法に限定されるものではなく、例えば、排水の初期環境汚染物質濃度に応じて、最適な環境汚染物質透過速度を有するバイオリアクターが配置されている排水処理槽を適宜選択し、当該排水処理槽に排水を流入させて処理を行うようにしてもよい。
【実施例】
【0090】
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
供試菌株であるフェノール分解菌Acinetobacter sp.(ATCC-11171)の培養には、JCM Medium List No.22(Nutrient agarNo.2)を基本とした液体培地を用いた。培地の組成を表1に示す。尚、JCM培地No.22からは寒天を除き、液体培地として用いた。そして、30℃で振とう(110rpm)培養を行った後、遠心分離により集菌し、リン酸緩衝液(9g/l NaHPO・12HO、1.5g/l KHPO、pH=7.5)により3回洗浄した。洗浄菌体は、Acinetobacter sp.に10mg dry wt./mlになるようそれぞれリン酸緩衝液に懸濁した。
【0092】
【表1】



【0093】
(実施例2)
厚さ0.05mmのポリエチレン膜(商品名:ミポロンフィルム、ミツワ(株)製)を用いて、大きさが50mm×100mmの袋A及び袋Bを作製した。袋Aには、無機培地100mLのみを封入した。袋Bには無機培地100mLとAcinetobacter sp.を封入した。無機培地の組成を表2に示す。尚、Acinetobactersp.は、実施例1のリン酸緩衝液0.2mLに懸濁したものを無機培地100mLに添加して混合した。
【0094】
【表2】


【0095】
(実施例3)
フェノール濃度を50000mg/L、KCN濃度を100mg/Lとした溶液500mL(以下、フェノール溶液と呼ぶ)をビーカー内に入れ、この溶液中に袋A、袋Bをそれぞれ浸漬し、経過日数に対して袋内の無機培地のフェノール濃度を測定して、袋内へのフェノールの透過量を評価した。フェノール濃度は4−アミノアンチピリン吸光光度法を用いて、510nmの吸光度を測定することにより求めた。また、実験中は、袋に空気供給管を差し込んで、空気を袋内に送り込み続けた。尚、実験中のフェノール溶液の温度は30℃とし、マグネチックスターラーにより撹拌し続けた。結果を図12に示す。袋Aを浸漬した場合は、日数の経過に伴って、フェノール濃度が増加し、7日目には4000mg/L程度まで増加した。つまり、本実施例では、50000mg/Lの高濃度なフェノール溶液を、28.6g・m−2・日−1で徐々に容器内に透過させることが可能であることが確認された。また、袋Bを浸漬した場合は、1日目まではフェノール濃度の増加が見られたが、それ以降は減少し続け、2日目以降は検出限界(0.05mg/L)以下となった。
【0096】
ここで、フェノール分解菌であるAcinetobacter sp.は、フェノール濃度が1000mg/Lを超えると、フェノールの分解処理能力が低下し始め、フェノール濃度が2000mg/Lになると、フェノールの分解処理をほとんど行えなくなることが分かっている。しかしながら、本実施例により、Acinetobacter sp.やカンジダ属などのフェノールを分解できる微生物などによって到底処理できない50000mg/Lという高濃度なフェノール溶液であっても、Acinetobacter sp.が分解処理できる濃度にフェノールが薄められて袋内に透過されることで、十分に分解処理可能であることが明らかとなった。したがって、フェノール以外にも、非多孔性膜を透過し、且つ環境汚染物質分解微生物により分解処理可能な環境汚染物質であれば、本発明を適用可能である。
【0097】
また、50mg/Lという低濃度でAcinetobacter sp.の機能を完全に阻害することが分かっているKCNが100mg/L濃度で溶液中に含まれていたにも関わらず、フェノールの分解処理は十分に行われていた。したがって、ポリエチレン膜に代表される疎水性の非多孔性膜を用いた場合、バイオリアクターの容器内にシアン化合物のような水溶性の微生物毒性物質をほとんど透過させることなく、容器内の微生物を機能させて、所望の環境汚染物質の分解処理を行うことが可能であることが明らかとなった。
【0098】
(実施例4)
ビーカー内に、フェノール原液を15mL、フェノールの凍結を防止するためのエタノール原液1mLをビーカー内に入れ、袋A、袋Bをビーカー内の溶液と接触しないようにそれぞれビーカー内に配置し、このビーカーを密閉状態として、ビーカー内にフェノール蒸気を充満させた。そして、袋A、袋Bの配置からの経過日数に対して袋内の無機培地のフェノール濃度を測定して、袋内へのフェノールの透過量を評価した。フェノール濃度は4−アミノアンチピリン吸光光度法により測定した。また、実験中は、袋に空気供給管を差し込んで、空気を袋内に送り込み続けた。尚、実験中のビーカー内の温度は30℃とした。結果を図13に示す。袋Aを配置した場合は、日数の経過に伴って、フェノール濃度が増加し、7日目には約700mg/L程度まで増加した。また、袋Bを配置した場合は、5時間後まではフェノール濃度の増加が見られたが、それ以降は減少し続け、2日目以降は検出限界(0.05mg/L)以下となった。
【0099】
したがって、排水などの液相中に溶け込んでいるフェノールだけでなく、気相中に揮散しているフェノールを非多孔性膜に収着させて、非多孔性膜を透過させることにより、分解処理可能であることが明らかとなった。よって、フェノール以外にも、ベンゼン、トルエン、キシレン等の揮発性有機化合物や、ガス状アンモニアなどを、非多孔性膜に収着させて、非多孔性膜を透過させることにより、分解処理可能である。
【0100】
(実施例5)
以下、非多孔性膜を用いて形成した袋の内部に各種物質を密封したときの非多孔性膜透過性について検証した実験例について説明する。尚、以下に示す実験例では、袋の内側から外側に物質を透過させているが、これらの結果から導かれる傾向は、袋の外側から内側に物質を透過させる場合にも適用できるものである。
【0101】
(1)ポリエチレン膜を用いて袋を形成し、その中にメタノール、エタノールを密封した場合の有機物の透過量を測定して、ポリエチレン膜に対するメタノール及びエタノールの透過性について確認試験を行った。
厚さ0.05mm、0.1mm、0.3mm、0.5mmのポリエチレン膜(商品名:ミポロンフィルム、ミツワ(株)製)を袋状として、その中にメタノール(和光純薬工業製、99.8%)、エタノール(和光純薬工業製、99.5%)をそれぞれ密封した。密封した溶液量は全て5mLとした。これを水の中に浸漬し、経過日数に対して分子透過量をTOC濃度を測定することによりメタノールおよびエタノールの透過量を評価した。TOC濃度は燃焼−赤外線式全有機炭素分析計(TOC−650、東レエンジニアリング製)により測定した。この結果を図14の(A)並びに(B)に示す。図中において、Bはバックグラウンド、MeOHはメタノール、EtOHはエタノール、0.05、0.1、0.3、0.5等の数値はポリエチレン膜厚(単位;mm)を表している。この実験から、メタノール、エタノール共に、ポリエチレン膜厚が薄くなるにつれて、TOC濃度も増加していくことが確認された。したがって、非多孔性膜の膜厚により、環境汚染物質の透過速度の制御が可能であることが確認された。
【0102】
(2)ポリエチレン膜に対する酢酸、乳酸及びグルコースの透過性について確認試験をおこなった。
厚さ0.05mmのポリエチレン膜(商品名:ミポロンフィルム、ミツワ(株)製)を袋状として、その中に酢酸(和光純薬工業製、99.7%)を密封した。また、厚さ0.01mmのポリエチレン膜(商品名:ポリエチレンラップ、(株)ダイエー製)を袋状として、その中に乳酸(和光純薬工業製、DL‐乳酸85〜92%溶液)、グルコース(和光純薬工業製、10%水溶液)をそれぞれ密封した。密封した溶液量はすべて5mLとした。これらをそれぞれ水の中に浸漬し、経過時間に対してTOC濃度を測定して、酢酸、乳酸及びグルコースの透過量を評価した。また、ポリエチレン膜中にエタノール(和光純薬工業製、99.5%)を密封して袋状としたものについても同様にTOC濃度濃度を測定し、酢酸、乳酸及びグルコースのポリエチレン膜透過性との比較を行った。この結果を図15に示す。図中において、EtOHはエタノール、Aceは酢酸、Lacは乳酸、Gluはグルコースを表している。この実験から、酢酸はエタノールよりもポリエチレン膜の透過速度が速いことが確認された。一方、乳酸とグルコースはポリエチレン膜をほとんど透過しないことが確認された。したがって、メタノールやエタノール等のアルコールに加えて、酢酸もポリエチレン膜を透過することが明らかとなった。また、乳酸やグルコース等の水に良く溶ける物質はポリエチレン膜を透過し難いことが明らかとなった。
【0103】
(3)ポリビニルアルコール(PVA)膜に対するグルコースと、単糖類であるグルコースより分子量の大きい二糖類のスクロースの透過性について確認試験を行った。
厚さ0.025mmのポリビニルアルコール膜(商品名:ビニロンフィルムDX−N#25、東セロ株式会社製)を袋状として、その中にグルコース(和光純薬工業製、10%水溶液)、スクロース(和光純薬工業製、10%水溶液)をそれぞれ密封した。密封した溶液量はすべて5mLとした。これらをそれぞれ水の中に浸漬し、経過時間に対してTOC濃度を測定して、グルコース及びスクロースの透過量を評価した。この結果を図16に示す。図中において、Gluはグルコース、Sucはスクロースを表している。この実験から、グルコースとスクロースはPVA膜を透過していることが確認された。また、TOC濃度が平衡状態に達する時間は、グルコースが約15時間後であるのに対し、スクロースは約50時間後であり、スクロースの方がグルコースと比較して遅いことが確認された。したがって、分子量の大きいグルコースやスクロース等の糖類もPVA膜のような親水性の膜を用いることで透過させることが可能であることが明らかとなった。また、単糖類であるグルコースよりも分子量の大きい二糖類のスクロースの方がTOC濃度の平衡状態に達する時間が遅かったことから、分子量によりPVA膜の分子透過速度を制御することが可能であることが明らかとなった。尚、本実験では、グルコースやスクロースのPVA膜透過速度が、メタノールやエタノール、酢酸のポリエチレン膜透過速度に比べて速い傾向が見られた。これは、使用したPVA膜の膜厚が0.025mmと薄かったことに起因しており、PVA膜厚を厚くすることやポリエチレン膜とPVA膜の中間の性質を持つエチレンビニルアルコール共重合体膜を用いることにより、グルコースやスクロースの透過速度を抑えることが可能である。
【0104】
(4)ポリエチレン膜に対するアンモニウムイオン(NH)、硝酸イオン(NO)、リン酸イオン(PO3−)及び硫酸イオン(SO2−)の透過性について確認試験を行った。
厚さ0.01mmのポリエチレン膜(商品名:ポリエチレンラップ、(株)ダイエー製)を袋状として、その中にアンモニウムイオンと硫酸イオンを含む溶液、硝酸イオンを含む溶液、リン酸イオンを含む溶液をそれぞれ密封した。アンモニウムイオンと硫酸イオンを含む溶液は、硫酸アンモニウム0.047gを蒸留水10mLに溶解して、濃度を1000mg−N/Lとした。硝酸イオンを含む溶液は、硝酸カリウム0.072gを蒸留水10mLに溶解して、濃度を1000mg−N/Lとした。リン酸イオンを含む溶液は、リン酸カリウム0.056gを蒸留水10mLに溶解して、濃度を1000mg−P/Lした。溶液を密封した袋は、それぞれ水の中に浸漬し、経過時間に対してイオン濃度を測定し、アンモニウムイオン、硝酸イオン、リン酸イオン及び硫酸イオンの透過量を評価した。アンモニウムイオン濃度はインドフェノール青吸光光度法により測定した。その他のイオン濃度は、イオンクロマトアナライザー(DX−AQ、ダイオネックス社製)により測定した。この結果を図17に示す。図中において、図中において、NH−Nはアンモニウムイオンを、NO−Nは硝酸イオンを、PO3−−Pはリン酸イオンを、SO2−−Sは硫酸イオンを表している。この実験から、アンモニウムイオン、硝酸イオン、リン酸イオン及び硫酸イオンはポリエチレン膜をほとんど透過しないことが確認された。したがって、ポリエチレン膜を用いてもイオンをほとんど透過性させることができないことが明らかとなった。
【0105】
(5)ポリビニルアルコール(PVA)膜に対するアンモニウムイオン(NH)、硝酸イオン(NO)、リン酸イオン(PO3−)及び硫酸イオン(SO2−)の透過性を調査した。
厚さ0.025mmのPVA膜(商品名:ビニロンフィルムDX−N#25、東セロ株式会社製)を袋状として、その中にアンモニウムイオンと硫酸イオンを含む溶液、硝酸イオンを含む溶液、リン酸イオンを含む溶液をそれぞれ密封した。これらの溶液は上記(4)の実験と同じものとした。これらをそれぞれ水の中に浸漬し、上記(4)の実験と同様の手法により、経過時間に対してイオン濃度を測定し、アンモニウムイオン、硝酸イオン、リン酸イオン及び硫酸イオンの透過量を評価した。この結果を図18に示す。この実験から、アンモニウムイオン、硝酸イオン、リン酸イオン及び硫酸イオンはPVA膜を透過していることが確認された。また、各種イオン濃度が平衡状態に達する時間は、アンモニウムイオンと硝酸イオンが約50時間後であるのに対し、リン酸イオンと硫酸イオンは約100時間後であり、リン酸イオン及び硫酸イオンの方がアンモニウムイオン及び硝酸イオンと比較して遅いことが確認された。したがって、アンモニウムイオン、硝酸イオン、リン酸イオン及び硫酸イオン等の水に可溶なイオンをPVA膜のような親水性の膜を用いることで透過させることが可能であることが明らかとなった。また、アンモニウムイオンや硝酸イオンよりも分子量の大きいリン酸イオンや硫酸イオンの方が各種イオン濃度の平衡状態に達する時間が遅かったことから、イオンの分子量によりPVA膜のイオン透過速度を制御することが可能であることが明らかとなった。尚、本実験では、各種イオンのPVA膜透過速度が、メタノールやエタノール、酢酸のポリエチレン膜透過速度に比べて速い傾向が見られた。これは、使用したPVA膜の膜厚が0.025mmと薄かったことに起因しており、PVA膜厚を厚くすることやポリエチレン膜とPVA膜の中間の性質を持つエチレンビニルアルコール共重合体膜を用いることにより、各種イオンの透過速度を抑えることが可能である。
【0106】
以上(1)〜(5)の実験結果から、非多孔性膜の性質と物質分子の性質、物質の分子量、非多孔性膜の膜厚により、非多孔性膜透過速度を制御できることが明らかとなった。
【0107】
また、ポリエチレン膜の様な疎水性の膜であっても、親水基を有する分子であるメタノールやエタノール、酢酸を透過させることが可能であることが明らかとなった。したがって、メタノールやエタノール、酢酸分子よりも炭素数の多い疎水性の高い分子は、疎水性の膜を透過しやすくなる。また、親水基を有していない分子、例えば、ベンゼンやトルエン等は疎水性の膜と非常になじみやすく、これらの分子を透過させやすい。また、ポリエチレン膜とポリビニルアルコール膜の中間の性質を有するエチレンビニルアルコール(EVOH)膜を用いることで、分子の親水性、疎水性に関わらず、環境汚染物質を透過させることが可能である。
【0108】
(6)酸性物質である塩酸や酢酸、塩基性物質である水酸化ナトリウムやアンモニアのポリエチレン膜及びPVA膜透過性について確認試験を行った。
厚さ0.01mmのポリエチレン膜(商品名:ポリエチレンラップ、(株)ダイエー製)に、HCl溶液(和光純薬工業製、1N)、酢酸(和光純薬工業製、99.7%)、NaOH溶液(和光純薬工業製、1N)、アンモニア溶液(和光純薬工業製、25%)をそれぞれ密封して袋状とした。また、厚さ0.025mmのPVA膜(商品名:ビニロンフィルムDX‐N#25、東セロ株式会社製)中に、HCl溶液(和光純薬工業製、1N)、NaOH溶液(和光純薬工業製、1N)をそれぞれ密封して袋状とした。溶液を密封した袋は、それぞれ水の中に浸漬し、経過時間に対してpHを測定し、ポリエチレン膜またはPVA膜による酸性物質や塩基性物質の透過性の評価を行った。この結果を図19に示す。この実験から、酸性物質である酢酸、塩基性物質であるアンモニア溶液がポリエチレン膜を透過して、袋の周辺環境のpHの制御が可能であることが確認され、酸性物質である塩酸、塩基性物質である水酸化ナトリウムはポリエチレン膜は透過しにくいがPVA膜を透過することが確認された。ここで、上記(3)の実験例により、アンモニウムイオンはポリエチレン膜を透過しなかったことから、アンモニア溶液から発生したアンモニアガスがポリエチレン膜を透過していると考えられた。したがって、アンモニアガスがポリエチレン膜を透過することが明らかとなった。尚、本実験でアンモニア溶液から発生したアンモニアガスのポリエチレン膜の透過性について、pHが実験開始から2時間後まで急激に上昇したが、これは、使用したポリエチレン膜の膜厚が0.01mmと薄かったことに起因しており、ポリエチレン膜厚を厚くすることやポリエチレン膜とPVA膜の中間の性質を持つエチレンビニルアルコール共重合体膜を用いることにより、アンモニアガスの透過速度を抑えることが可能である。
【0109】
(実施例6)
酢酸ビニル含有率が5重量%、10重量%、15重量%及び20重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体膜(EVA膜)を用いて袋を形成し、その中にフェノールを密封した場合のフェノールの透過量を測定して、EVA膜に対するフェノールの透過性について確認試験を行った。
酢酸ビニル含有率を上記割合としたEVA膜(昭和パックス社製、厚さ0.1mm)を50mm×50mmの袋状として、その中にフェノール濃度50000mg/Lのフェノール水溶液をそれぞれ密封した。密封した溶液量は5mLとした。これをビーカー内に入れた水300mLの中に浸漬し、経過日数に対して水のフェノール濃度を測定し、袋からのフェノール透過量を評価した。フェノール濃度は4−アミノアンチピリン吸光光度法を用いて、510nmの吸光度を測定することにより求めた。実験中のビーカー内の温度は30℃とし、実験中はビーカー内の水をマグネチックスターラーで撹拌し続けた。
【0110】
この結果を図21に示す。図中において、■は酢酸ビニル含有率が5重量%のEVA膜の結果を示し、▲は酢酸ビニル含有率が10重量%のEVA膜の結果を示し、◆は酢酸ビニル含有率が15重量%のEVA膜の結果を示し、▼は酢酸ビニル含有率が20重量%のEVA膜の結果を示している。また、参考のため、0.05mm厚のポリエチレン膜についても同様の実験を行った結果を図中の●に示す。0.05mm厚のポリエチレン膜を用いた場合と比較すると、0.1mm厚のEVA膜を用いた方がフェノールの透過が起こりやすいことが確認された。また、EVA膜中の酢酸ビニル含有率が大きくなるにつれて、フェノールの透過が起こりやすくなることが確認された。尚、酢酸ビニル含有率が20重量%のEVA膜の場合は、実験開始から1日経過以降には袋を浸漬した水のフェノール濃度がほぼ一定となり、酢酸ビニル含有率が15重量%のEVA膜の場合は、実験開始から2日経過以降には袋を浸漬した水のフェノール濃度がほぼ一定となる傾向が見られたが、これは、袋に密封したフェノール水溶液のフェノール濃度と袋を浸漬した水のフェノール濃度がほぼ同程度となって、袋の内外でのフェノール濃度の勾配がなくなったことに起因している。
【0111】
この結果から、EVA膜を用いることで、ポリエチレン膜よりも膜の単位面積当たりのフェノール透過速度を増加できることが明らかとなった。また、EVA膜の酢酸ビニル含有率を増やすことで、EVA膜の単位面積当たりのフェノール透過速度を増加できることが明らかとなった。
【0112】
(実施例7)
酢酸ビニル含有率が10重量%及び20重量%であるEVA膜を用いて袋を形成し、その中にフェノールを密封し、無機培地とAcinetobacter sp.を入れたビーカー内に当該袋を浸漬して、Acinetobactersp.のフェノール分解能の確認試験を行った。
実施例6と同様、酢酸ビニル含有率を上記割合としたEVA膜を50mm×50mmの袋状として、その中にフェノール濃度50000mg/Lのフェノール水溶液をそれぞれ密封した。密封した溶液量は5mLとした。そして、ビーカー内に表2に示した無機培地300mLと実施例1で調製したAcinetobacter sp.入りのリン酸緩衝液0.2mLとを入れ、袋を浸漬し、経過日数に対してビーカー内の無機培地のフェノール濃度を測定し、Acinetobacter sp.のフェノール分解能を評価した。フェノール濃度は4−アミノアンチピリン吸光光度法を用いて、510nmの吸光度を測定することにより求めた。実験中のビーカー内の温度は30℃とし、無機培地はエアレーションを行って好気性雰囲気を維持した。尚、比較実験として、ビーカー内に無機培地300mLのみを入れた場合についても同様の実験を行った。つまり、この実験系においては、袋内に密封されたフェノール水溶液が被処理環境であり、ビーカー内の無機培地が微生物棲息領域である。
【0113】
この結果を図22に示す。図中において、▲は酢酸ビニル含有率が10重量%のEVA膜の袋を用い、ビーカー内を無機培地のみとした場合の結果を示し、△は、酢酸ビニル含有率が10重量%のEVA膜の袋を用い、ビーカー内に無機培地とAcinetobacter sp.を入れた場合の結果を示し、▼は酢酸ビニル含有率が20重量%のEVA膜の袋を用い、ビーカー内を無機培地のみとした場合の結果を示し、▽は、酢酸ビニル含有率が20重量%のEVA膜の袋を用い、ビーカー内に無機培地とAcinetobacter sp.を入れた場合の結果を示している。
【0114】
酢酸ビニル含有率が10重量%のEVA膜の袋を用い、ビーカー内を無機培地のみとした場合には、無機培地のフェノール濃度は徐々に増加していく傾向がみられ、実験開始から3日経過後には、Acinetobacter sp.のフェノール分解能を阻害しうる1600mg/Lに到達することが確認された。しかしながら、酢酸ビニル含有率が10重量%のEVA膜の袋を用い、ビーカー内に無機培地とAcinetobacter sp.を入れた場合、実験開始初期には無機培地のフェノール濃度が若干増加したものの、実験開始から1日経過後には、無機培地のフェノール濃度は検出限界(0.05mg/L)以下となった。このことから、酢酸ビニル含有率が10重量%のEVA膜の袋を用いた場合には、実験開始から1日経過後には、袋から放出されたフェノールの全量がAcinetobacter sp.により常に分解処理される状態となることが明らかとなった。
【0115】
酢酸ビニル含有率が20重量%のEVA膜の袋を用い、ビーカー内を無機培地のみとした場合には、実験開始から1日目でフェノール濃度が1700mg/Lとなり、それ以降は無機培地のフェノール濃度がほぼ一定となることが確認された。つまり、袋に密封したフェノール水溶液のフェノール濃度と袋を浸漬した無機培地のフェノール濃度がほぼ同程度となって、袋の内外でのフェノール濃度の勾配がなくなることが確認された。一方、酢酸ビニル含有率が20重量%のEVA膜の袋を用い、ビーカー内に無機培地とAcinetobacter sp.を入れた場合、実験開始から1日目までは無機培地のフェノール濃度が増加し続け、その後、徐々に減少して3日目には検出限界(0.05mg/L)以下となった。この実験では、実験開始から1日目でフェノール濃度が1700mg/Lとなり、それ以降は無機培地のフェノール濃度がほぼ一定となったことから、実験開始から一日経過後には袋からフェノールがほとんど放出されなくなったため、実験開始から1日経過後から無機培地のフェノール濃度が徐々に減少するに至ったが、ビーカー内を無機培地のみとした場合にフェノール濃度が増加し続けていた期間においては、ビーカー内に無機培地とAcinetobacter sp.を入れた場合においてもフェノール濃度が増加し続けていたことから、酢酸ビニル含有率が20重量%のEVA膜の袋を使用した場合には、微生物棲息領域にフェノールが蓄積し、Acinetobacter sp.の機能を阻害する虞があることがわかった。つまり、この実験系においては、酢酸ビニル含有率が10重量%のEVA膜の袋を用いた場合に、微生物棲息領域内に環境汚染物質が蓄積してAcinetobacter sp.の機能が阻害されることなく、且つAcinetobactersp.のフェノール分解処理能を最大限に活用しうる状態とすることができると考えられる。
【0116】
以上の結果から、排水の環境汚染物質濃度に合わせて、バイオリアクターの容器内(微生物棲息領域内)に環境汚染物質が蓄積して環境汚染物質分解微生物の機能が阻害されることがなく、且つこの微生物の環境汚染物質分解処理能を最大限に活用しうる状態を形成可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】環境汚染物質分解微生物を液体に添加して容器に収容した本発明のバイオリアクターの一実施形態を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
【図2】環境汚染物質分解微生物を液体に添加して容器に収容した本発明のバイオリアクターの他の実施形態を示す縦断面図である。
【図3】環境汚染物質分解微生物を担体に担持させて容器に収容した本発明のバイオリアクターの一実施形態を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
【図4】環境汚染物質分解微生物を担体に担持させて容器に収容した本発明のバイオリアクターの他の実施形態を示す図である。
【図5】環境汚染物質分解微生物を担体に担持させて容器に収容した本発明のバイオリアクターのさらに他の実施形態を示す図である。
【図6】チューブを螺旋状として表面積を増大させた本発明のバイオリアクターの実施形態を示す図である。
【図7】バイオリアクターの容器内の環境を制御する微生物活性制御物質供給装置の一実施形態を示す図である。
【図8】図7に示す微生物活性制御物質供給装置の他の実施形態を示す図である。
【図9】図8の実施形態の微生物活性制御物質供給装置の全体構成を示す概略説明図である。
【図10】本発明のバイオリアクターを産業廃棄物処分場に敷設して用いた場合の概念図である。
【図11】本発明の遮水シートを示す図である。
【図12】本発明のバイオリアクターをフェノール溶液に浸漬した際のフェノール処理能力を示す図である。
【図13】本発明のバイオリアクターをフェノール蒸気中に配置した際のフェノール処理能力を示す図である。
【図14】ポリエチレン膜からの有機物の透過量測定結果を示す図で、(A)はメタノール、(B)はエタノールのそれぞれの測定結果を示す。
【図15】ポリエチレン膜からのエタノール、酢酸、乳酸およびグルコースの透過量測定結果を示す図である。
【図16】ポリビニルアルコール膜からのグルコースおよびスクロースの透過量測定結果を示す図である。
【図17】ポリエチレン膜からの各種イオンの透過量測定結果を示す図である。
【図18】ポリビニルアルコール膜からの各種イオンの透過量測定結果を示す図である。
【図19】ポリエチレン膜及びポリビニルアルコール膜から酸性物質や塩基性物質を放出させて周辺環境のpH値を測定した結果を示す図である。
【図20】本発明の環境汚染物質の分解処理方法の一実施形態を示す図である。
【図21】ポリエチレン膜及びエチレン−酢酸ビニル共重合体膜からのフェノール透過量測定結果を示す図である。
【図22】エチレン−酢酸ビニル共重合体膜を用いてた本発明のバイオリアクターをフェノール溶液に浸漬した際のフェノール処理能力を示す図である。
【符号の説明】
【0118】
1 バイオリアクター
2 非多孔性膜
3 環境汚染物質分解微生物
4 容器
5 環境汚染物質
6 担体
20 産業廃棄物処分場
21 遮水シート
22 産業廃棄物
【出願人】 【識別番号】000173809
【氏名又は名称】財団法人電力中央研究所
【出願日】 平成19年7月24日(2007.7.24)
【代理人】 【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美


【公開番号】 特開2008−49334(P2008−49334A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2007−191757(P2007−191757)