トップ :: B 処理操作 運輸 :: B09 固体廃棄物の処理;汚染土壌の再生

【発明の名称】 六価クロムを含む汚染土壌の処理方法
【発明者】 【氏名】高本 泰

【氏名】三瓶 均

【要約】 【課題】六価クロムを含む汚染土壌の高炉スラグへの均一混合性を確保すると共に、溶融高炉スラグの顕熱を有効利用して、無害化した高炉スラグ製品を製造するための汚染土壌の処理方法を提供する。

【構成】六価クロムを含む汚染土壌を溶融高炉スラグに溶解する。又は、六価クロムを含む汚染土壌に、CaCO3若しくはCaOを含む副原料、酸化鉄を含む副原料の少なくともいずれかを混合した汚染土壌等混合原料を、溶融高炉スラグに溶解する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
六価クロムを含む汚染土壌を溶融高炉スラグに溶解することを特徴とする六価クロムを含む汚染土壌の処理方法。
【請求項2】
六価クロムを含む汚染土壌に、CaCO3若しくはCaOを含む副原料、酸化鉄を含む副原料の少なくともいずれかを混合し、得られた汚染土壌等混合原料を溶融高炉スラグに溶解することを特徴とする請求項1記載の六価クロムを含む汚染土壌の処理方法。
【請求項3】
六価クロムを含む汚染土壌に、酸化鉄を含む副原料と炭材とを混合し、得られた汚染土壌等混合原料を溶融高炉スラグに溶解することを特徴とする請求項1又は2記載の六価クロムを含む汚染土壌の処理方法。
【請求項4】
六価クロムを含む汚染土壌に、少なくとも酸化鉄を含む副原料と炭材とを混合して得られた汚染土壌等混合原料中の、三価の鉄の1モルに対して0.5モルの炭素と、前記混合原料中のCrの1モルに対して1.5モルの炭素との合計炭素モル量から、溶融高炉スラグ中に含まれる炭素モル量を差し引いたモル量以上の炭素と、
前記混合原料中の六価クロムの1モルに対して3モルの二価および三価の鉄から、溶融高炉スラグ中の二価および三価の鉄のモル量を差し引いたモル量以上の二価および三価の鉄とを、
前記混合原料中に含むように、六価クロムを含む汚染土壌に混合する酸化鉄を含む副原料と炭材の量をそれぞれ調整して溶融高炉スラグに溶解することを特徴とする請求項3記載の六価クロムを含む汚染土壌の処理方法。
【請求項5】
前記汚染土壌又は前記汚染土壌等混合原料を、1mm以上50mm以下に塊成化した後、溶融高炉スラグに溶解することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の六価クロムを含む汚染土壌の処理方法。
【請求項6】
前記溶融高炉スラグは、高炉の出銑口より排出された溶銑と溶融高炉スラグの混合物から、溶銑と比重分離した後の溶融高炉スラグを、流銑鉢または流銑鍋に投入した後の溶融高炉スラグであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の六価クロムを含む汚染土壌の処理方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
六価クロムを含む汚染土壌を溶融高炉スラグに溶解し、汚染土壌中の六価クロムを不溶性の三価クロムにすることにより、六価クロムを含む汚染土壌を無害化処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重金属等汚染土壌の恒久対策として、セメントあるいは固化材による固形化封じ込めがあるが、固化処理土からのセメントに由来する六価クロムが溶出するといった問題があり、固化処理土からの六価クロム溶出対策として高炉スラグ等の還元剤の添加が知られていることが特許文献1〜3に記載されている。
【0003】
高炉スラグには二価の鉄がFeOとして0.3〜1.0%含まれていることが非特許文献1に記載されている。六価クロム溶出対策として高炉スラグが用いられるのは高炉スラグ中のFeOが還元剤になるためと考えられる。
【0004】
汚染土壌中の六価クロムを三価クロムに還元し不溶化するとともに、三価クロムが酸化されて六価クロムを生成して六価クロムが溶出することを抑制するために、高炉スラグを原料とする高炉セメントを加えて処理土砂を固化することが特許文献4および特許文献5に記載されている。
しかし、固化処理土におけるセメント系固化材と高炉スラグ等の還元剤との均一混合性の確保の困難さが特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0005】
一方で、汚染土壌を篩分けし、篩上の大きい方の汚染土壌(塊)を高炉に直接装入し、篩下の小さい方の汚染土壌(粉)は焼結鉱の原料として、汚染土壌を焼結鉱に含有させて高炉に装入することによって、汚染土壌の無害化がなされることが特許文献6に記載されている。
すなわち、土壌に含まれた有機系物質、例えば、ベンゼンや重油系等の油類、シアン化合物やトリクロロエチレン等の油類以外の有機系物質は、炉内最高温度約2000℃以上の温度条件を有する高炉内におかれるので、全ての有機系物質は熱分解する。そして、炉内の上昇ガス流に混じって上昇し、炉頂から排出される高炉ガスの中に、CO2、H2O、N2等となって存在し、高炉通常操業時における高炉ガス中の無害ガス成分の一部を構成するに至る。
【0006】
この際、土壌に含まれた有害な重金属、例えば、Pb、Cd、Cr、Hg、Zn、及びAs等は、これらの内、沸点が比較的低いPb、Hg、Znは、その大部分が気化して、上記有機系物質と同様に炉内の上昇ガス流に混じって上昇し、炉頂から排出される高炉ガスの中に混入する。高炉ガスの温度低下に伴い、Pb、Znは固体微粉に、Hgは微粒液粒に変態し、除塵装置または集塵装置で高炉ガス中のダストと共に捕捉される。
当該ダスト中に占める上記重金属粒子の含有率は、実施例の項で後述するように著しく小さく、実際上、無害化される。
【0007】
上記有害な重金属の内、上記高沸点成分を除くCd、Cr、Asは、炉内で溶融し、それぞれその一部分は1480〜1520℃程度の温度を有する溶銑中にメタル成分として溶解し、また、それぞれの残部は酸化物となり、1480〜1520℃程度の温度を有する溶融スラグ中に移行して酸化物の形態で溶融スラグ化される。当該溶銑又は溶融スラグ中に占めるこれら各重金属成分の含有率は著しく小さく、実際上無害化される。このようにして汚染土壌の無害化がなされることが、特許文献6に記載されている。
【0008】
しかしながら、一般的に汚染土壌には直接高炉に装入できる強度を持った塊状ものが少なく、汚染土壌の大部分は焼結鉱の原料になり、焼結鉱中のスラグ成分となり、焼結鉱中のスラグ量を増加させる。一方、焼結鉱中のスラグ成分を低下することにより、高炉内通気抵抗が低減でき、微粉炭吹込み量が増加できたことが非特許文献2に記載されている。
【0009】
ところで、溶融高炉スラグは溶銑と混合した状態で高炉炉床部から高炉出銑口を通って大樋に排出され、比重2.8程度の溶融している高炉スラグ(以下、溶融高炉スラグと呼称する)が上層を形成し、比重7.0程度の溶銑は下層を形成し、上層の溶融高炉スラグが大樋の上部から溢流して排出されることにより、溶融高炉スラグは溶銑から分離される。
【0010】
大樋で溶銑から分離された溶融高炉スラグは、高炉鋳床に設置された溶滓樋を通って、非特許文献3に記載されているように、高炉鋳床端に設置された高炉スラグ処理設備にて徐冷処理または水砕急冷処理され、または高炉鋳床端に設置された溶滓鍋に注入されて高炉スラグ処理場まで移動されてのち徐冷処理または水砕急冷処理されて、高炉スラグ半製品になる。
【0011】
これらの高炉スラグ半製品はさらに加工処理されて、徐冷された高炉スラグ(高炉徐冷スラグ)は路盤材あるいはコンクリート粗骨材等として、水砕急冷された高炉スラグ(高炉水砕スラグ)は高炉セメント原料あるいはコンクリート細骨材等として利用される。
【0012】
大樋から高炉鋳床端の高炉スラグ処理設備または溶滓鍋までの間には、非特許文献4に記載されているように、大樋で比重分離された溶融高炉スラグに、分離しきれずになお混入する溶銑をさらに分離するために、流銑鉢または流銑鍋と呼ばれる、高炉スラグを暫時滞留させる設備が通常設置されている。高炉出銑口より排出される溶銑の温度は1500℃以上あり、比重分離された後の溶融高炉スラグは、流銑鉢または流銑鍋においても未だ1450℃程度の高温のまま存在する。一方、通常の高炉スラグ組成であれば、徐冷処理あるいは水砕急冷処理に必要な溶融高炉スラグ温度は1350℃程度あるため、現状の処理方法においては、溶融高炉スラグの顕熱は1450℃程度から1350℃程度までの100℃程度が無駄に捨てられているという問題があった。
【特許文献1】特開2004−269821号公報
【特許文献2】特開2004−269822号公報
【特許文献3】特開2004−337677号公報
【特許文献4】特開2004−24970号公報
【特許文献5】特開2003−300047号公報
【特許文献6】特開2000−246232号公報
【非特許文献1】Fritz Keil(沼田晋一訳)、高炉スラグ、(株)セメントジャーナル社、平成13年、p.35
【非特許文献2】Advanced Approach to Intelligent Agglomeration、日本鉄鋼協会,平成11年、p.278−282
【非特許文献3】鉄鋼製造法、第1分冊、製銑・製鋼,日本鉄鋼協会編,丸善,昭和51年第4刷,p.366−367
【非特許文献4】鉄鋼製造法、第1分冊、製銑・製鋼,日本鉄鋼協会編,丸善,昭和51年第4刷,p.358
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
汚染土壌中の六価クロムの溶出対策として高炉スラグを混合して固化する場合、固体同士の混合であるために固化処理土における均一混合性を確保することが困難であり、六価クロムが溶出する可能性がある。
【0014】
そこで、本発明では、六価クロムを含む汚染土壌の高炉スラグへの均一混合性を確保して、六価クロムを不溶出性の三価クロムに無害化すると共に、溶融高炉スラグの顕熱を有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)六価クロムを含む汚染土壌の処理方法において、六価クロムを含む汚染土壌を溶融高炉スラグに溶解することを特徴とする。
(2)(1)記載の六価クロムを含む汚染土壌の処理方法において、六価クロムを含む汚染土壌に、CaCO3若しくはCaOを含む副原料、酸化鉄を含む副原料の少なくともいずれかを混合し、得られた汚染土壌等混合原料を溶融高炉スラグに溶解することを特徴とする。
(3)(1)又は(2)記載の六価クロムを含む汚染土壌の処理方法において、六価クロムを含む汚染土壌に、酸化鉄を含む副原料と炭材とを混合し、得られた汚染土壌等混合原料を溶融高炉スラグに溶解することを特徴とする。
(4)(3)記載の六価クロムを含む汚染土壌の処理方法において、六価クロムを含む汚染土壌に、少なくとも酸化鉄を含む副原料と炭材とを混合して得られた汚染土壌等混合原料中の、三価の鉄の1モルに対して0.5モルの炭素と、前記混合原料中のCrの1モルに対して1.5モルの炭素との合計炭素モル量から、溶融高炉スラグ中に含まれる炭素モル量を差し引いたモル量以上の炭素と、
前記混合原料中の六価クロムの1モルに対して3モルの二価および三価の鉄から、溶融高炉スラグ中の二価および三価の鉄のモル量を差し引いたモル量以上の二価および三価の鉄とを、
前記混合原料中に含むように、六価クロムを含む汚染土壌に混合する酸化鉄を含む副原料と炭材の量をそれぞれ調整して溶融高炉スラグに溶解することを特徴とする。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の六価クロムを含む汚染土壌の処理方法において、前記汚染土壌又は前記汚染土壌等混合原料を、1mm以上50mm以下に塊成化した後、溶融高炉スラグに溶解することを特徴とする。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の六価クロムを含む汚染土壌の処理方法において、前記溶融高炉スラグは、高炉の出銑口より排出された溶銑と溶融高炉スラグの混合物から、溶銑と比重分離した後の溶融高炉スラグを、流銑鉢または流銑鍋に投入した後の溶融高炉スラグであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
汚染土壌中の六価クロムの溶出対策として、従来技術のように汚染土壌を固体の高炉スラグと混合して固化する場合、固体同士の混合であるために固化処理土における均一混合性を確保することが困難であるが、本発明の方法により、汚染土壌を溶融高炉スラグに溶解することによって、汚染土壌中の六価クロムと溶融高炉スラグ中の二価の鉄とが混合され、混合された六価クロムと二価の鉄とを高炉スラグ中に均質に分散させ、六価クロムを三価クロムに還元して汚染土壌を無害化することができるようになる。
また、本発明によれば、従来は無駄に捨てられていた、溶融高炉スラグが徐冷処理又は水砕急冷処理されるまでの顕熱を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の汚染土壌の処理方法は、高炉出銑口から排出され比重差により溶銑から分離される溶融高炉スラグに、(1)六価クロムを含む汚染土壌を単独で投入するか、(2)六価クロムを含む汚染土壌に、CaCO3若しくはCaOを含む副原料、又は酸化鉄を含む副原料の少なくともいずれかを混合した汚染土壌等混合原料を投入して、前記溶融高炉スラグの高温の顕熱を利用して、前記汚染土壌又は前記汚染土壌等混合原料を溶融高炉スラグに溶解し、汚染土壌中の六価クロムを不溶性の三価クロムにすることにより、六価クロムを含む汚染土壌を無害化することを特徴とする。
【0018】
六価クロムを含む汚染土壌としては、例えば、金属製品製造工場や化学工場の用地や跡地、廃棄物処分場跡地、土地造成における盛土材料に高濃度の汚染物質が混入していた造成地等があるが、これに限定されるものではなく、上述した六価クロムを含んでいる汚染土壌は殆どが処理可能である。
尚、六価クロムの形態としては、土壌の間隙水中に六価クロムイオンとして存在している形態の他、クロム酸(無水)、クロム酸鉛、二クロム酸カリウム、クロム酸ストロンチウム、二クロム酸ナトリウム、クロム酸亜鉛、クロム酸カルシウム等の六価クロム化合物の形態で存在しているものがある。
【0019】
図1の本発明に関わる汚染土壌を溶融高炉スラグに溶解して処理する方法の一例に基づき、本発明の実施形態について詳細説明を行う。
【0020】
図1において、高炉1の高炉炉床部に設置された高炉出銑口2より溶銑と溶融高炉スラグの混合物3が排出され、大樋4にて比重7.0程度の重い溶銑5と比重2.8程度の軽い溶融高炉スラグ6とに比重分離される。大樋4で溶銑5と分離された溶融高炉スラグ6は、高炉鋳床に設置された滓樋7を通り、高炉鋳床内に設置された流銑鉢または高炉鋳床端に設置された流銑鍋8に暫時滞留させて、大樋4で分離しきれずに流銑鍋8中の溶融高炉スラグ9に混入する溶銑10をさらに比重分離して、溶融高炉スラグ9と溶銑10に分ける。溶融高炉スラグ9と溶銑10を分離するプロセスは、出銑中は連続処理プロセスである。
【0021】
この流銑鉢又は流銑鍋8に、六価クロムを含む汚染土壌12、又は六価クロムを含む汚染土壌12にCaCO3若しくはCaOを含む副原料13又は酸化鉄を含む副原料14の少なくともいずれか一方を混合した汚染土壌等混合原料16を図示外の原料貯留ホッパーから切り出し、ベルトコンベア19を介して粉状のまま、または成型機18で塊成化して流銑鍋8中の溶融高炉スラグ9に連続的に投入する。粉状の原料を投入する際、局所的に投入速度が溶解速度を上回ると溶融高炉スラグ表面の一部に一時的に粉が堆積する現象が生じて、堆積部分表面の未溶解の粉が飛散することがあり、このような現象が生ずるときは塊成化することが望ましい。塊成化物は1mm以上であれば飛散することなく溶解可能である。大きくなると溶解速度が小さくなり溶け残りが生じるので50mm以下にすることが望ましい。溶け残りがあると、その中に残存する六価クロムが、溶融高炉スラグを後処理して高炉スラグ製品として利用する際に、溶出してしまう可能性があるからである。
【0022】
汚染土壌等混合原料16中のCaCO3若しくはCaOを含む副原料13としては、例えば、製鉄原料として用いられる石灰石、または製鉄所の製鋼工程で発生する製鋼スラグを使用することができる。
【0023】
汚染土壌等混合原料16中の酸化鉄を含む副原料14としては、例えば、製鉄原料として用いられる鉄鉱石、または製鉄所の焼結機、コークス炉、高炉などの製銑工程において排ガス処理プロセスや環境集塵プロセスで発生する製鉄ダストなど二価の酸化鉄(FeO、Fe(OH)2など)や三価の酸化鉄(Fe23など)を含む物質を使用することができる。
【0024】
また、汚染土壌等混合原料16中に酸化鉄を含む副原料14が混合される場合は、必要に応じて、炭材15を投入するとよい。炭材は、酸化鉄中の3価の鉄を、六価クロムを三価クロムにするために必要且つ三価クロムの安定化のために必要な2価の鉄に、還元する還元剤として作用する。酸化鉄を含む副原料14として製鉄ダスト、特に高炉ダストを使用すると、高炉ダスト中にカーボンを多く含み、炭材15として作用するために好ましい。新たに炭材15を投入する場合は、コークスや石炭等、還元剤として働く炭素を含む炭材を使用することができ、特に粉状コークスを使用すると汚染土壌等混合原料16中に均一混合し易く、更に、還元能力も高いため好ましい。
【0025】
汚染土壌12が溶融高炉スラグ9に溶解すると、汚染土壌12に含まれる六価のクロムCr6+は、溶融高炉スラグ9に含まれる二価の鉄Fe2+(主にFeO)と式(1)に示す反応によって還元されて、溶出しにくい三価のクロムCr3+となって無害化される。
Cr6++3Fe2+→Cr3++3Fe3+・・・(1)
【0026】
ここで、二価の鉄Fe2+は六価クロムCr6+を還元する際に酸化されて三価の鉄Fe3+になる。この三価の鉄Fe3+が溶融高炉スラグ9に含まれる炭素Cと式(2)の反応によって二価の鉄Fe2+に還元されることにより、三価のクロムCr3+の安定性が増し、三価のクロムCr3+が六価のクロムCr6+へと再酸化しにくくなる。
Fe23 + C → 2FeO + CO・・・(2)
【0027】
ところで、汚染土壌12はSiO2とAl23を主成分とする酸化物が主体であることが多く、この場合は融点が通常1600℃程度と高いため、溶融高炉スラグ9に添加する汚染土壌12の量が微量であれば完全に溶解するが、大量に添加すると汚染土壌12が完全に溶融高炉スラグ9に溶解しない場合がある。その場合には、汚染土壌12にCaCO3若しくはCaOを含む副原料13、又は酸化鉄を含む副原料14の少なくともいずれかを混合することにより溶解が容易になる。
【0028】
汚染土壌12にCaCO3若しくはCaOを含む副原料13を混合する場合には、汚染土壌12中のSiO2、Al23およびMgOの含有割合によって最適値は変化するが、汚染土壌等混合原料16中のCaO(mass%)/SiO2(mass%)の比が0.9〜1.1程度になるようにすると融点が低くなり溶解性が向上する。CaCO3場合は、1モルのCaCO3を1モルのCaOとして換算して上記範囲になるようにする。
【0029】
汚染土壌12に酸化鉄を含む副原料14を混合する場合には、汚染土壌12中のSiO2、Al23およびMgOの含有割合によって最適値は変化するが、汚染土壌等混合原料15に由来するFeO(mass%)/SiO2(mass%)の比が0.25〜1程度になるようにすると融点が低くなり溶解性が向上する。汚染土壌12にCaCO3若しくはCaOを含む副原料13又は酸化鉄を含む副原料14の少なくともいずれか一方を混合した汚染土壌等混合原料16は溶解性が改善され、大量に添加することが可能であるが、溶解後の溶融高炉スラグの温度が1350℃よりも低くならない範囲の量で添加するようにする。
【0030】
酸化鉄を含む副原料14によって供給される酸化鉄の形態としては二価の鉄Fe2+からなるウスタイト(FeO)、三価の鉄Fe3+からなるヘマタイト(Fe23)、および二価の鉄Fe2+と三価の鉄Fe3+の結合体であるマグネタイト(Fe34=FeO・Fe23)がある。六価のクロムCr6+を式(1)に示す反応によって二価の鉄Fe2+で還元して溶出しにくい三価のクロムCr3+とするためには、三価の鉄Fe3+を式(2)に示す反応によって炭素Cで還元して二価の鉄Fe2+にしておく必要がある。式(2)に示す反応より、三価の鉄Fe3+を二価の鉄Fe2+にするためには、三価の鉄Fe3+の1モルに対して炭素Cが0.5モル必要である。
【0031】
一方、汚染土壌12中の六価のクロムCr6+を溶融高炉スラグ9中で二価の鉄Fe2+により溶出しにくい三価のクロムCr3+に還元するには、式(1)に示す反応より、六価のクロムCr6+の1モルに対して二価の鉄Fe2+の3モルが酸化されて三価の鉄Fe3+の3モルとなり、上述したように三価の鉄Fe3+を二価の鉄Fe2+に還元するためには、三価の鉄Fe3+の1モルに対して炭素Cが0.5モル必要であるから、汚染土壌等混合原料16中の六価のクロムCr6+の1モルに対して二価の鉄3モルかつ炭素1.5モル必要である。
【0032】
ここで、溶融高炉スラグとの反応を効率的に進めて汚染土壌中の六価のクロムCr6+を三価のクロムCr3+にするためには、好適には、必要に応じて、反応系で必要な炭素および二価の鉄を、炭材と酸化鉄を含む副原料とによって補うようにするのがよい。すなわち、反応系内に存在する六価のクロムCr6+を三価のクロムCr3+に還元するのに必要な二価の鉄の理論量と比べて、溶融高炉スラグに含まれる二価の鉄の量が不足する場合には、少なくともその差分が酸化鉄を含む副原料によって調整されるようにするのが好ましい。また、反応系内に存在する三価の鉄を二価の鉄に還元するのに必要な理論炭素量と比べて、溶融高炉スラグに含まれる炭素の量が不足している場合には、少なくともその差分が炭材によって調整されるようにするのが好ましい。
【0033】
具体的には、汚染土壌等混合原料16を溶融高炉スラグ9に溶解する際に、三価の鉄Fe3+の1モルに対してその還元に必要な炭素Cの0.5モルと、六価のクロムCr6+の1モルに対して生じる鉄Fe3+の還元に必要な炭素Cの1.5モルとの合計モル量以上の炭素Cとなるように、かつ六価のクロムCr6+の1モルに対して二価の鉄および三価の鉄の合計が3モル以上となるように、溶融高炉スラグ9に含まれる二価の鉄および炭素の量に応じて、六価クロムを含む汚染土壌中に混合する酸化鉄を含む副原料と炭材との量をそれぞれ調整することによって、六価のクロムCr6+を溶出しにくい三価のクロムCr3+へと無害化することが効率的に行なえるようになる。
【0034】
なお、汚染土壌中のクロムの分析は全クロムの分析が簡便であり、また酸化が進んで、クロムの大部分が六価クロムとなることも考えられるため、六価のクロムCr6+の分析値に換えて全クロムの分析値を使用してCrを含む汚染土壌中に混合する酸化鉄を含む副原料と炭材の量を調整するのが簡便でありかつ安全性がより高い。
【0035】
流銑鉢または流銑鍋8にて比重分離された無害化溶解された汚染土壌成分を含む溶融高炉スラグ11は、流銑鉢または流銑鍋8の上部から排出される。その後、鋳床端に設置された図示外の高炉スラグ処理設備にて徐冷または水砕急冷処理され、または別の溶滓鍋に注入されてスラグ処理場まで移動されたのち高炉スラグ処理設備にて徐冷または水砕急冷処理されて路盤材、高炉セメント原料またはコンクリート細骨材といった高炉スラグ製品に加工される。
【実施例】
【0036】
図1の設備を用いて、試験した実施例について以下に述べる。
溶銑と溶融高炉スラグの混合物3の排出量が13,000トン/日の高炉1で、高炉出銑口2から溶融高炉スラグ6としては毎分2トンで排出され、その温度は出銑口2直後で1530℃である。
【0037】
出銑口2から溶銑とともに排出された溶融高炉スラグは大樋4で溶銑から分離され、溶融高炉スラグ6として鋳床を、滓樋7を通って流れ、鋳床端に設置された流銑鍋8に注入されている。また、分離された溶銑5は製鋼工程へ搬送される。
本発明の処理を行う前には、流銑鍋8における溶融高炉スラグ9の温度は1450℃であった。
【0038】
表1に高炉スラグ、Crを含む汚染土壌、CaOを含む副原料として使用した石灰石粉、酸化鉄を含む副原料として使用した鉄鉱石粉、炭材として使用したコークス粉、および混合原料の塊成化の際に結合材として使用したベントナイトの組成を示す。表1の成分合計で100%に足りない分は微量元素である。石灰石中のCaCO3は溶融高炉スラグに投入されて(3)式に示す熱分解反応によりCaOとなる。
CaCO3→CaO+CO2・・・(3)
【0039】
【表1】


【0040】
(実施例1)
実施例1について以下説明する(表2参照)。
六価クロムを含む汚染土壌(組成を表1に示す)の質量1000kgにバインダーとしてベントナイトを52kg混合し、水分を添加して水分7%に調整した汚染土壌等混合原料16をブリケットマシン(成型機)17で加圧成形して塊成化した塊状溶解原料18を流銑鍋8に毎分0.02トンで連続的に投入した。
【0041】
流銑鍋8内の溶融高炉スラグ9の温度は30℃低下し1420℃になったが、流銑鍋8の上部から排出された溶融高炉スラグ11は水砕処理が可能であった。塊状溶解原料18中のSiO2、CaO、Al23やMgO等の酸化物は溶融高炉スラグ9中に溶解し溶融スラグとなった。従来無駄に棄てられていた溶融高炉スラグ温度30℃低下に相当する高温の溶融高炉スラグ顕熱が有効に熱源として利用され、27トン/日に相当する量の六価クロムを含む汚染土壌を流銑鍋で処理し、高炉スラグ11を28トン/日増量し高炉スラグ製品を増量することが可能であった。製造した水砕スラグについて環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行ったところ、六価クロムの溶出基準値である0.05mg/L未満の溶出量であった。
【0042】
(参考例1)
しかしながら、表2の参考例1に示すように、前記実施例1と同様に製造した塊状溶解原料18を流銑鍋8に毎分0.03トンで連続的に投入すると、溶融高炉スラグ11中に一部未溶解の塊状溶解原料18由来の酸化物が残留した。未溶解物の混合した水砕スラグについて環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行ったところ、六価クロムの溶出基準値である0.05mg/Lを超える溶出量であった。六価クロムの溶出を基準値以下に抑えるには、塊状溶解原料18を溶融高炉スラグに完全に溶解する必要があることが判った。
【0043】
【表2】


【0044】
(実施例2)
汚染土壌にCaOを含む副原料として石灰石粉を混合して溶解性を向上させた塊状溶解原料18を用いた実施例2について以下説明する(表2参照)。
六価クロムを含む汚染土壌1000kgに対して石灰石粉を1327kgとバインダーとしてベントナイトを122kg混合し、水分を添加して水分7%に調整した汚染土壌等混合原料16をブリケットマシン(成型機)17で加圧成形して塊成化した塊状溶解原料18を製造した。塊状溶解原料18中に含まれるCaCO3が溶融高炉スラグ中で熱分解して生成するCaO量は757kgとなり、塊状溶解原料18中に含まれるSiO2量が757kgとなり、塊状溶解原料18中のCaO(mass%)/SiO2(mass%)の比が1.0になった。
【0045】
この塊状溶解原料18を流銑鍋8に毎分0.1トンで連続的に投入した。流銑鍋8内の溶融高炉スラグ9の温度は100℃低下し1350℃になったが、流銑鍋8の上部から排出された溶融高炉スラグ11は水砕処理が可能であった。塊状溶解原料18中のSiO2、CaO、Al23やMgO等の酸化物は溶融高炉スラグ9中に溶解し溶融スラグとなった。従来無駄に棄てられていた溶融高炉スラグ温度100℃低下に相当する高温の溶融高炉スラグ顕熱が有効に熱源として利用され、55トン/日に相当する量の六価クロム含む汚染土壌を流銑鍋で処理し、高炉スラグ11を101トン/日増量し高炉スラグ製品を増量することが可能であった。
【0046】
(実施例3)
汚染土壌に酸化鉄を含む副原料として鉄鉱石粉を混合して溶解性を向上させた塊状溶解原料18を用いた実施例3について以下説明する(表2参照)。
六価クロムを含む汚染土壌1000kgに対して鉄鉱石粉を214kgとバインダーとしてベントナイトを64kg混合し、水分を添加して水分7%に調整した汚染土壌等混合原料16をブリケットマシン(成型機)17で加圧成形して塊成化した塊状溶解原料18を製造した。塊状溶解原料18に含まれるFe23が溶融高炉スラグ中に含まれる炭素と反応して生成するFeOは215kgとなり、塊状溶解原料18中に含まれるSiO2量は716kgとなり、塊状溶解原料18中のFeO(mass%)/SiO2(mass%)の比は0.3になった。
【0047】
この塊状溶解原料18を流銑鍋8に毎分0.05トンで連続的に投入した。流銑鍋8内の溶融高炉スラグ9の温度は50℃低下し1400℃になったが、流銑鍋8の上部から排出された溶融高炉スラグ11は水砕処理が可能であった。塊状溶解原料18中のSiO2、CaO、Al23やMgO等の酸化物は溶融高炉スラグ9中に溶解し溶融スラグとなった。従来無駄に棄てられていた溶融高炉スラグ温度50℃低下に相当する高温の溶融高炉スラグ顕熱が有効に熱源として利用され、52トン/日に相当する量の六価クロムを含む汚染土壌を流銑鍋で処理し、高炉スラグ11を64トン/日増量し高炉スラグ製品とすることが可能であった。製造した水砕スラグについて環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行ったところ、六価クロムの溶出基準値である0.05mg/L未満の溶出量であった。
【0048】
(参考例2)
しかしながら、表2の参考例2に示すように、前記実施例3と同様に製造した塊状溶解原料18を流銑鍋8に毎分0.06トンで連続的に投入すると、三価の鉄を二価の鉄に還元するのに必要なC量に対して、溶融高炉スラグから供給されるC量が不足し、溶融高炉スラグ中に三価の鉄が残ったまま水砕スラグが製造される。そのため、この水砕スラグについて環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行ったところ、六価クロムの溶出基準値である0.05mg/Lを超える溶出量であった。塊状溶解原料18に炭材を添加してC量を補う必要がある。
【0049】
(実施例4)
汚染土壌に酸化鉄を含む副原料として鉄鉱石粉および炭材としてコークス粉を混合して溶解性を向上させC量を補った塊状溶解原料18を用いた実施例4について以下説明する(表2参照)。
六価クロムを含む汚染土壌1000kgに対して鉄鉱石粉を214kg、コークス粉を18kgおよびバインダーとしてベントナイトを64kg混合し、水分を添加して水分7%に調整した汚染土壌等混合原料16を成形機(ブリケットマシン)17で加圧成形して塊成化した塊状溶解原料18を製造した。塊状溶解原料18中に含まれるFe23が溶融高炉スラグ中に含まれる炭素と反応して生成するFeOが215kgとなり、塊状溶解原料18中に含まれるSiO2量が717kgとなり、塊状溶解原料18中のFeO(mass%)/SiO2(mass%)の比が0.3になった。
【0050】
この塊状溶解原料18を流銑鍋8に毎分0.1トンで連続的に投入した。流銑鍋8内の溶融高炉スラグ9の温度は100℃低下し1350℃になったが、流銑鍋8の上部から排出された溶融高炉スラグ11は水砕処理が可能であった。塊状溶解原料17中のSiO2、CaO、Al23やMgO等の酸化物は溶融高炉スラグ9中に溶解し溶融スラグとなった。従来無駄に棄てられていた溶融高炉スラグ温度100℃低下に相当する高温の溶融高炉スラグ顕熱が有効に熱源として利用され、104トン/日に相当する量のCrを含む汚染土壌を流銑鍋で処理し、高炉スラグ11を127トン/日増量し高炉スラグ製品とすることが可能であった。製造した水砕スラグについて環境庁告示第46号で規定された溶出試験を行ったところ、六価クロムの溶出基準値である0.05mg/L未満の溶出量であった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係わる汚染土壌の処理プロセスの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1:高炉
2:出銑口
3:溶銑と溶融高炉スラグの混合物
4:大樋
5:溶銑
6:溶融高炉スラグ
7:滓樋
8:流銑鍋
9:溶融高炉スラグ
10:溶銑
11:溶融高炉スラグ
12:汚染土壌
13:CaCO3若しくはCaOを含む副原料
14:酸化鉄を含む副原料
15:炭材
16:汚染土壌等混合原料
17:成型機
18:塊状溶解原料
19:ベルトコンベア
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成18年4月12日(2006.4.12)
【代理人】 【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫

【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣

【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司

【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也


【公開番号】 特開2008−49214(P2008−49214A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−110146(P2006−110146)