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【発明の名称】 有機塩素化合物汚染物質の浄化方法
【発明者】 【氏名】高岡 一栄

【氏名】二瓶 裕之

【氏名】遠山 正幸

【要約】 【課題】汚染物質中の有機塩素化合物が分解しやすい状態か否かを判断するために着目すべき指標であって、かつ、迅速に判断できる指標を提示し、この指標がある範囲となるように調整することで、有機塩素化合物に汚染された汚染物質を効果的に浄化する有機塩素化合物汚染物質の浄化方法の提供。

【構成】有機塩素化合物に汚染された汚染物質を生物学的に処理して、前記汚染物質中の前記有機塩素化合物を分解し前記汚染物質を浄化する、有機塩素化合物汚染物質の浄化方法であって、前記汚染物質の可溶性総有機炭素量を指標とし、この可溶性総有機炭素量が5mg/g-dry compost以上となるように前記汚染物質に有機物を添加することを特徴とする有機塩素化合物汚染物質の浄化方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機塩素化合物に汚染された汚染物質を生物学的に処理して、前記汚染物質中の前記有機塩素化合物を分解し前記汚染物質を浄化する、有機塩素化合物汚染物質の浄化方法であって、
前記汚染物質の可溶性総有機炭素量を指標とし、この可溶性総有機炭素量が5mg/g-dry compost以上となるように前記汚染物質に有機物を添加することを特徴とする有機塩素化合物汚染物質の浄化方法。
【請求項2】
前記可溶性総有機炭素量が5〜20mg/g-dry compostとなるようにする請求項1に記載の有機塩素化合物汚染物質の浄化方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は有機塩素化合物汚染物質の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、社会問題となっているダイオキシン類等の有機塩素化合物に汚染された土壌、底質、焼却灰、地下水等を浄化する方法として、いくつかの方法が提案されているが、経済性、安全性、浄化後の再利用性等を考慮した場合、生物学的浄化方法が有効である。
【0003】
この生物学的浄化方法として、従来においていくつかの方法が提案されている。
例えば好気性細菌、嫌気性細菌、担子菌などを用いる技術として、特許文献1には、至適温度を85℃とする好気性コンポストによるダイオキシン類の分解処理について記載されている。また、特許文献2には、ダイオキシン類の分解を想定した微生物が多数列挙され、複合有効微生物群含有資材として土壌等へ散布することが記載されている。
【0004】
また、担子菌を用い、前処理を取り入れたダイオキシン類の分解法として、特許文献3には、担子菌により木材をコンポスト化したものを用いたダイオキシン類分解法が記載されている。また、特許文献4には、ダイオキシン類汚染土壌中の土着菌の増殖を抑制処理した後、担子菌を添加するダイオキシン類分解法が記載されている。
【0005】
また、特許文献5、特許文献6には、いずれも嫌気性処理後、好気性処理を行うことにより、テトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物で汚染された土壌を浄化する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2001−29915号公報
【特許文献2】特開2000−232876号公報
【特許文献3】特開2000−107742号公報
【特許文献4】特開2001−162263号公報
【特許文献5】特開2000−102377号公報
【特許文献6】特開平10−34128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような従来の生物学的浄化方法を適用しても、汚染物質中の有機塩素化合物の分解が進行しない、又は進行してもその速度が遅く実用に耐えられない場合があった。
そして、この対策の1つとして、前記汚染物質に添加した微生物を活性化させる方法が知られているが、どのような条件の場合に、微生物が前記汚染物質中の有機塩素化合物を分解する程度に活性化するのかが不明であった。
【0007】
また、前記汚染物質の浄化を行っている過程において、有機塩素化合物の分解速度が変化するので、通常、浄化処理中の汚染物質を定期的にサンプリングし、前記有機塩素化合物の含有量の測定が行われる。そして、その結果、分解速度が低下している場合は、例えば上記と同様に、前記汚染物質中の微生物を活性化させる等の対策をとるが、上記と同様の問題点があった。
更に、ここでサンプリングした汚染物質中の前記有機塩素化合物の含有量の測定には、非常に長期間を要するのが通常であった。例えば代表的な有機塩素化合物であるダイオキシン類の含有量を求めるには、通常、数週間から1ヶ月程度の期間を要した。この場合、浄化している汚染物質を常に有機塩素化合物が分解しやすい状態に維持することは困難である。
【0008】
従って、本発明の目的は、汚染物質中の有機塩素化合物が分解しやすい状態か否かを判断するために着目すべき指標であって、かつ、迅速に判断できる指標を提示し、この指標が特定値以上となるように調整することで、有機塩素化合物に汚染された汚染物質を効果的に浄化する有機塩素化合物汚染物質の浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は次の(1)及び(2)である。
(1)有機塩素化合物に汚染された汚染物質を生物学的に処理して、前記汚染物質中の前記有機塩素化合物を分解し前記汚染物質を浄化する、有機塩素化合物汚染物質の浄化方法であって、前記汚染物質の可溶性総有機炭素量を指標とし、この可溶性総有機炭素量が5mg/g-dry compost以上となるように前記汚染物質に有機物を添加することを特徴とする有機塩素化合物汚染物質の浄化方法。
(2)前記可溶性総有機炭素量が5〜20mg/g-dry compostとなるようにする上記(1)に記載の有機塩素化合物汚染物質の浄化方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の浄化方法によれば、汚染物質中の有機塩素化合物が分解しやすい状態か否かを判断するために着目すべき指標であって、かつ、迅速に判断できる指標を提示できる。そして、この指標が特定値以上となるように調整することで、有機塩素化合物に汚染された汚染物質を迅速に浄化する有機塩素化合物汚染物質の浄化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、有機塩素化合物に汚染された汚染物質を生物学的に処理して、前記汚染物質中の前記有機塩素化合物を分解し前記汚染物質を浄化する、有機塩素化合物汚染物質の浄化方法であって、前記汚染物質の可溶性総有機炭素量を指標とし、この可溶性総有機炭素量が5mg/g-dry compost以上となるように前記汚染物質に有機物を添加する有機塩素化合物汚染物質の浄化方法である。
【0012】
このような本発明の浄化方法において、有機塩素化合物は塩素を含む有機化合物であれば特に限定されず、例えばダイオキシン類であるポリ塩化ジベンゾパラダイオキシン及びポリ塩化ジベンゾフランが挙げられる。更に、このポリ塩化ジベンゾパラダイオキシン及びポリ塩化ジベンゾフランには、それぞれ75種および135種の化合物が存在するが、本発明においてはこれらの全てを包含する。
その他にも、例えば、PCB類、洗浄剤等として用いられる多塩素化エチレン類、農薬等に用いられる多塩素化フェノール、多塩素化ベンゼン等が挙げられる。
【0013】
また、前記汚染物質は、このような有機塩素化合物を1pg/g以上含有する土壌、底質、焼却灰、地下水等を意味する。
【0014】
本発明では、このような有機塩素化合物に汚染された汚染物質を生物学的に処理する。
この処理方法は特に限定されず、例えば従来公知の生物学的な処理方法を適用することができる。例えば嫌気性微生物及び/又は好気性微生物を含有する分解コンポストを適宜前記汚染物質に添加し、前記汚染物質が存在する系を嫌気性状態及び/又は好気性状態とすることで、前記汚染物質中の前記有機塩素化合物を分解する方法が挙げられる。
また、後により本発明の浄化方法の具体的な方法を示したが、そのような方法を適用することもできる。
【0015】
また、このような生物学的処理において用いる微生物としては、有機塩素化合物に対する分解能を有するものであれば特に限定されず、例えば、ダイオキシン類等に対する分解活性を有することが知られている従来公知の微生物種、菌株、菌群等を用いることができる。有機塩素化合物の分解能を有する嫌気性又は好気性微生物としては、単一種に限らず、複数の種や菌株を含む微生物群を用いることができる。これらの微生物群は、有機塩素化合物に汚染された土壌等から既知のスクリーニング方法により採取することができるので、それを培養して種菌として使用できる。更に、この微生物群としては、嫌気的条件及び好気的条件を例えば交互に繰り返して製造した複合微生物剤を用いることができる。
【0016】
このような嫌気性微生物、好気性微生物及び酸発酵菌を以下に具体的に例示する。
【0017】
前記嫌気性微生物としては、例えば、メタノバクテリウム(Methanobacterium)属、メタノサルシナ(Methanosarcina)属、メタノロブス(Methanolobus)属等の嫌気性古細菌、アセトバクテリウム(Acetobacterium)属、デスルフォバクテリウム(Desulfobacterium)属、デスルフォモニル(Desulfomonile)属、デハロスピリルム(Dehalospirillum)属、デハロバクター(Dehalobacter)属、デハロバクテリウム(Dehalobacterium)属、デハロコッコイデス(Dehalococcoides)group、クロストリジウム(Clostridium)属等の嫌気性細菌のほか、シトロバクター(Citrobacter)属、エシェリキア(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、セラチア(Serratia)属、プロテウス(Proteus)属、シュワネラ(Shewanella)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属等の通性嫌気性細菌を挙げることができる。
【0018】
また、前記好気性微生物としては、例えば、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属、バークホリデリア(Burkholderia)属、ラルストニア(Ralstonia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ノカルジオイデス(Nocardioides)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、テラバクター(Terrabacter)属等を挙げることができる。
【0019】
更に、酸発酵菌としては、例えば、エシェリキア属、エンテロバクター属、シトロバクター属、クロストリジウム属等のグルコース等の有機酸から酸を生成するものを挙げることができる。
【0020】
本発明では、このような生物学的処理方法により前記有機塩素化合物に汚染された前記汚染物質を処理するが、その処理過程において、定期的又は不定期的に前記汚染物質の可溶性総有機炭素量を測定する。
そして、この値が5mg/g-dry compost以上でない場合は前記汚染物質に有機物を添加し、この値が5mg/g-dry compost以上となるようにする。
【0021】
この可溶性総有機炭素量は、前記汚染物質の単位質量(乾燥質量)中に含まれる全有機物中の炭素量である。
この可溶性総有機炭素量は、通常用いられる可溶性総有機炭素量測定装置を用いて通常の測定条件で測定した値である。島津製作所社製、TOC−5000Aを用いて好ましく測定することができる。
【0022】
ここで、前記可溶性総有機炭素量は5〜20mg/g-dry compostであることが好ましく、10〜18mg/g-dry compostであることが好ましい。前記可溶性総有機炭素量が5mg/g-dry compost以上であると前記汚染物質中の前記有機塩素化合物の分解が進行しやすい。前記可溶性総有機炭素量が高すぎるとpHの低下を招く傾向がある。
【0023】
また、上記のように可溶性総有機炭素量が5mg/g-dry compost以上ではない場合に添加する有機物は、その汚染物質中の前記微生物を活性化させるものであればよい。例えば有機酸、ドッグフード、厨芥、廃食品が挙げられる。より具体的には、例えば有機酸であれば、蟻酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸が挙げられる。
【0024】
本発明の浄化方法を例を用いてより具体的に説明する。
まず、上記のような有機塩素化合物汚染物質と前記微生物とを単一槽または複数に分割された槽で構成された環境修復装置に投入して混合する。ここで、前記微生物の添加量は、例えば、種コンポスト1に対し、木チップ1、汚染土壌1である。
【0025】
また、前記汚染物質が焼却灰である場合は、添加前にpH9以下、好ましくはpH7.5〜8.5に調整しておくことが望ましい。
【0026】
そして、環境修復装置内の雰囲気を例えば交互に嫌気性状態と好気性状態にして、嫌気性微生物と好気性微生物の両方を増殖させるとともに活発化させる。嫌気性状態にするためには、例えば脱気を行えばよい。一方、好気性状態は、攪拌やエアレーション等の操作によって作り出すことができる。また、適宜温風を吹き込んで水分を飛ばし、含水率を維持するように調整することが好ましい。
環境修復装置内で処理する前記汚染物質の含水率は、30〜60質量%となるように設定することが好ましく、最適範囲は35〜45質量%である。また、処理中は環境修復装置内の温度が、10〜70℃となるようにすることが好ましく、最適範囲は25〜55℃である。さらに、環境修復装置で処理する汚染物質のpHは、pH6〜9となるように調整することが好ましく、最適範囲はpH7.5〜8.5である。
【0027】
そして、好ましくは定期的(例えば数日に1回程度)に環境修復装置内の前記汚染物質をサンプリングし、これに含有される可溶性有機炭素量を測定する。測定方法は上記の通りである。
そして、この値が5mg/g-dry compost以上でない場合は前記汚染物質に前記有機物を添加し、この値が5mg/g-dry compost以上となるようにする。上限は限定されないが、5mg/g-dry compost以下となるように添加することが好ましい。
更に、この値が5mg/g-dry compost以上の場合は前記有機物を添加する必要はないが、10mg/g-dry compost以上であることが好ましく、更に20mg/g-dry compost以下であることが好ましいので、この範囲内となるように前記有機物を添加することが更に好ましい。
【実施例】
【0028】
以下に本発明の実施例を示す。
有機塩素化合物であるDXN類を含有する土壌を0.5kg程度用意し、ここに微生物として種コンポストを0.5kg、木チップ0.5kgを添加した。
そして、これを生物学的に処理した。具体的な方法は、含水率30〜50%、攪拌サイクル:10分運転/50分停止(12h)、停止12h、吸排気サイクル:15分運転/45分停止(12h)である。
【0029】
更に、このような土壌に数日ごとに有機物として0.27wt%ドッグフード/コンポストを添加した。ここで添加量は試験開始から20日間経過までは可溶性総有機炭素量が5mg/g-dry compost未満となるようにした。そして、それ以降は5mg/g-dry compost以上となるように0.8wt%ドッグフード/コンポストを添加した。
【0030】
このような試験を2ヶ月程度継続し、この土壌から数日ごとに50g程度サンプリングを行い、含有される有機塩素化合物量及び可溶性総有機塩素化合物量を測定した。
その結果を図1に示す。
【0031】
この図1から、可溶性総有機炭素量が5mg/g-dry compost以上となるように前記汚染物質に有機物を添加すると、土壌中の有機塩素化合物が分解していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、実施例における汚染物質中の総有機酸素量と有機塩素化合物量との関係を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
【出願日】 平成18年3月31日(2006.3.31)
【代理人】 【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔

【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子


【公開番号】 特開2008−49209(P2008−49209A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−98981(P2006−98981)