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汚染土壌の浄化方法 - 特開2008−29929 | j-tokkyo
トップ :: B 処理操作 運輸 :: B09 固体廃棄物の処理;汚染土壌の再生

【発明の名称】 汚染土壌の浄化方法
【発明者】 【氏名】清水 巧治

【要約】 【課題】浄化設備等の簡素化を図るとともに、汚染領域において、微生物自体に栄養塩を持続して無駄なく付与し、活性化、増殖させとともに、微生物の移動を活発にして汚染領域の土壌や地下水の汚染物質を効率的に分解して浄化する汚染土壌の浄化方法を提供する。

【構成】徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を備えた微粉状の多孔質粉体11を、有機塩素系化合物による汚染領域6の土壌粒子間へ地下水とともに移動させ、前記嫌気性微生物により有機塩素系化合物の分解を促進させることを特徴とする汚染土壌の浄化方法としたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を備えた微粉状の多孔質粉体を、有機塩素系化合物による汚染領域の土壌粒子間へ地下水とともに移動させ、前記嫌気性微生物により有機塩素系化合物の分解を促進させることを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
徐放性を有する栄養塩が、炭素数が6以上のカルボン酸を主成分または炭素数が12以上のアルコールを主成分とした固体栄養塩であることを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
加熱して溶融させた固体栄養塩を微粉状の多孔質粉体に含浸させて固化したことを特徴とする請求項2に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
微粉状の多孔質粉体を、金属シリコンとしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項5】
微粉状の多孔質粉体を、固体栄養塩としたことを特徴とする請求項2に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項6】
微粉状の多孔質粉体に、予め嫌気性微生物を移植することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項7】
帯水層の汚染領域の上流側に設けた井戸内に、徐放性を有する栄養塩を備えた微粉状の多孔質粉体を充填し、前記井戸内において多孔質粉体に嫌気性微生物を増殖させ、前記井戸から徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を備えた多孔質粉体を、汚染領域の土壌粒子間へ地下水とともに移動させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項8】
徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を備えた微粉状の多孔質粉体をゲル状として、注入穴から汚染領域に圧入して供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の汚染土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオレメディエーション法を用いて嫌気性微生物を活性化し、有機塩素系化合物で汚染された土壌及び地下水の浄化を促進して、汚染領域を原位置で短期間に浄化する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トリクロロエチレン等の有機塩素系化合物に汚染された土壌及び地下水の浄化設備とその浄化方法として、真空抽出法、揚水曝気法、石灰法、鉄粉法、土壌掘削置換法、土壌湿気式洗浄法、不溶化処理法、気・液混合井戸方法、エアースパージング方式、バイオレメディエーション法と、浄化に関して様々な方法が用いられるが、短期間かつ省エネルギーで、土壌及び地下水の汚染の浄化ができる方法は、鉄粉法とバイオレメディエーション法が上げられる。近年、省エネルギーと安価な費用の微生物を利用して汚染領域を浄化すること(バイオレメディエーション法)が注目を浴びている。
【0003】
例えば、揚水ポンプで揚水した地下水に、微生物、酸素、栄養塩等を付与したリアクターを備え、リアクター内で有機塩素系化合物に汚染された地下水の浄化と、リアクター内の酸素、栄養塩等を付与した水溶液を地中に注入して有機塩素系化合物に汚染された地下水の浄化を併用する浄化方法がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、複数種類の有用微生物からなる有用微生物群、この有用微生物群の栄養塩、有用微生物群の繁殖を補助する基質を含有する透水性の処理層(成形体)を形成し、この地中に埋設した処理層中で、汚染された地下水の浄化を行う方法がある(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−253688号公報
【特許文献2】特開平11−333493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたものは、栄養塩の供給量のバラツキによる過剰栄養塩の恐れがあるとともに、特に地上のシステムの大型化、複雑化を招く課題があった。また微生物、栄養塩等を付与した水溶液を地中に注水することにより、水溶液中の栄養塩は地下汚染領域の地下水に沿って土壌粒子間を移動していくが、微生物は注水位置のごく限られた土壌粒子に付着して地下汚染領域の全体にわたって移動しない。さらに既に土壌粒子に付着して生息している微生物も、栄養塩が存在したとしてもごく限られた範囲しか移動しないことが実証試験により判明している。このため地下汚染領域の全体にわたって微生物を存在させ、且つ活性化、増殖をさせることができず、有機塩素系化合物に汚染された土壌、地下水の浄化に長期間を要するか、完全に浄化することが困難であった。
【0006】
また、特許文献2に記載されたものは、透水性の処理層(成形体)を形成し、地中に埋設した処理層中で、汚染された地下水の浄化を行うものであるが、地下水の流れを限定するための遮水壁、処理層である透水性バイオ壁等の大型要素が必要で、またその敷設工事、撤去工事が大掛かりとなる。また透水性バイオ壁部分での汚染物質の分解、浄化の負荷が大きく、汚染物質の濃度によっては、透水性バイオ壁部分から下流側へ汚染物質が流出することになる。透水性バイオ壁に生息する微生物は、透水性バイオ壁の下流側のごく限られた範囲しか移動しないため、汚染された土壌、地下水の浄化に長期間を要するか、完全に浄化すること困難であった。
【0007】
また、一般的に栄養塩としては、流動性に優れる液体状のものがあるが、土壌または地下水に注入しても、下方への浸透および地下水に溶け込み、汚染領域から流出してしまい、微生物の活性化、増殖による汚染物質の分解作用を促進させる効果の持続性が低く、比較的短い周期で栄養塩を再注入する必要性があることや、過剰栄養塩の恐れを生じる。したがって汚染領域において、微生物自体に栄養塩を持続して無駄なく付与し、活性化、増殖させるとともに、微生物の移動を活発にして汚染領域の土壌や地下水の汚染物質を効率的に分解して浄化することが求められている。
【0008】
本発明は、前記従来のような課題を解決するもので、浄化設備等の簡素化を図るとともに、汚染領域において、微生物自体に栄養塩を持続して無駄なく付与し、活性化、増殖させるとともに、微生物の移動を活発にして汚染領域の土壌や地下水の汚染物質を効率的に分解して浄化する汚染土壌の浄化方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を備えた微粉状の多孔質粉体を、有機塩素系化合物による汚染領域の土壌粒子間へ地下水とともに移動させ、前記嫌気性微生物により有機塩素系化合物の分解を促進させることを特徴とする汚染土壌の浄化方法としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の汚染土壌の浄化方法によれば、浄化設備等の簡素化を図るとともに、徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を一体に備えた多孔質粉体として、微生物自体に栄養塩を持続して無駄なく付与し、活性化、増殖させるとともに、微生物の移動を活発にして汚染領域全体の土壌や地下水の有機塩素化合物を効率的に分解して浄化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を備えた微粉状の多孔質粉体を、有機塩素系化合物による汚染領域の土壌粒子間へ地下水とともに移動させ、前記嫌気性微生物により有機塩素系化合物の分解を促進させることを特徴とする汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0012】
これによって浄化設備等の簡素化を図るとともに、徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を一体に備えた多孔質粉体として、微生物自体に栄養塩を持続して無駄なく付与し、活性化、増殖させるとともに、微生物の移動を活発にして汚染領域全体の土壌や地下水の有機塩素化合物を効率的に分解して浄化することができる。
【0013】
第2の記載の発明は、第1の発明において、徐放性を有する栄養塩が、炭素数が6以上のカルボン酸を主成分または炭素数が12以上のアルコールを主成分とした固体栄養塩であることを特徴とする汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0014】
これによって多孔質粉体の嫌気性微生物に長期間にわたって栄養塩を付与して活性化、増殖を促進させることができる。さらに徐放性を有する栄養塩を用いたことによって過剰栄養塩の供給による様々な悪影響を防止することができる。
【0015】
第3の記載の発明は、第2の発明において、加熱して溶融させた固体栄養塩を微粉状の多孔質粉体に含浸させて冷却固化したことを特徴とする汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0016】
これによって個々の多孔質粉体に徐放性の栄養塩を確実に一体化して固定化することができ、長期間安定して多孔質粉体に生息する嫌気性微生物に栄養塩を効率的に付与して活性化、増殖を促進させることができる。
【0017】
第4の記載の発明は、第1〜第3の発明のいずれかにおいて、微粉状の多孔質粉体を、金属シリコンとしたことを特徴とする汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0018】
これによって、酸化時に発生する水素イオンにより有機塩素化合物の脱塩素化反応および還元化を促進させて汚染領域全体の土壌および地下水の有機塩素化合物をより短期間に効率的に浄化することができる。
【0019】
第5の記載の発明は、第2の発明において、微粉状の多孔質粉体を、固体栄養塩としたことを特徴とする汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0020】
これによって多孔質粉体の作成を簡素化できるとともに、徐放性を有する栄養塩量が増加し、より長期間、嫌気性微生物に栄養塩を付与することができる。
【0021】
第6の記載の発明は、第1〜5のいずれかの発明において、微粉状の多孔質粉体に、予め嫌気性微生物を移植することを特徴とする汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0022】
これによって汚染領域に生息する嫌気性微生物が少ない状況においても、汚染領域全体の土壌および地下水の有機塩素化合物をより短期間に効率的に分解し、浄化することができる。
【0023】
第7の記載の発明は、第1〜6のいずれかの発明において、帯水層の汚染領域の上流側に設けた井戸内に、徐放性を有する栄養塩を備えた微粉状の多孔質粉体を充填し、前記井戸内において多孔質粉体に嫌気性微生物を増殖させ、前記井戸から徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を備えた多孔質粉体を、汚染領域の土壌粒子間へ地下水とともに移動させることを特徴とする汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0024】
これによって浄化設備等の簡素化を図るとともに、徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を一体に備えた多孔質粉体として、微生物自体に栄養塩を持続して無駄なく付与し、活性化、増殖させとともに、微生物の移動を活発にして汚染領域全体の土壌や地下水の有機塩素化合物を効率的に分解して浄化することができる。
【0025】
第8の記載の発明は、第1〜6のいずれかの発明において、徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を備えた微粉状の多孔質粉体をゲル状として、注入穴から汚染領域に圧入して供給することを特徴とする汚染土壌の浄化方法としたものである。
【0026】
これによって注入穴から圧入する多孔質粉体を汚染領域に広く拡散させることができる。したがって汚染領域全体の土壌および地下水の有機塩素化合物をより効率的に浄化することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の一実施例を、図1〜図3を参照しながら説明する。図1は一実施例に係る汚染土壌の浄化方法を実施するための基本構成断面図、図2は多孔質粉体の概略断面図、図3は他の例の汚染土壌の浄化方法を実施するための基本構成断面図である。
【0028】
図1において、地表面1から順に、表土2、上部シルト層3、砂質土層4および下部シルト層5が累積した地層構造を有している。前記砂質土層4は、地下水を含む層、すなわち帯水層であり、ここに有機塩素化合物に汚染された汚染領域6の土壌および地下水が存在している。
【0029】
汚染領域6の上流側に、地表面1から細長状に掘削して砂質土層4に達する井戸7を形成し、この井戸7に、井戸7の形状を保持する仕切体8を埋設している。仕切体8の少なくとも砂質土層4に位置する部分は地下水および微粉状の多孔質粉体11が出入り可能な多数の小孔8aを有している。また仕切体8の上端部には、蓋10を着脱自在に備え、前記井戸7の上端部からに微粉状の多孔質粉体を充填、補給するものである。微粉状の多孔質粉体11は、少なくとも砂質土層4の高さ方向に相当する部分には、有機塩素化合物の分解終了時点まで、多孔質粉体11が常に存在するよう、定期的な目視または補給装置(図示なし)を用いて補給する。なお図中の実線矢印は地下水の流れ方向を示す。
【0030】
次に、本発明の一実施例における栄養塩を備えた微粉状の多孔質粉体11の構成を図2で説明する。まず栄養塩としては、種々のものがあるが、本実施例においては、一時的な過剰な栄養塩の付与を防止し、さらに長期的な安定した栄養塩の付与を可能とするため、徐放性を有する下記のものを用いている。
【0031】
固体状の栄養塩は、炭素数が6以上のカルボン酸を主成分または炭素数が12以上のアルコールを主成分とした材料組成のものである。カルボン酸としては、炭素数が6以上であることが必須であり、炭素数が6未満では水に対する溶解度が大きすぎ、短期間でその形状をとどめなくなり、一時的な過剰な栄養塩の付与と、さらに長期的な安定した栄養塩の付与ができないことから好ましくない。
【0032】
また、炭素数の上限は特に設ける必要はないが、工業的に大量に入手可能な材料としては炭素数18程度と考えられるが、炭素数が18以下のものに限られるものではないことはいうまでもない。また、本実施の形態に用いるカルボン酸は直鎖状構造を有し、さらには飽和モノカルボン酸であることが好ましい。
【0033】
また、アルコールとしては、炭素数が12以上であることが必須であり、炭素数が12未満では水に対する溶解度が大きすぎ、短期間でその形状をとどめなくなり、一時的な過剰な栄養塩の付与と、さらに長期的な安定した栄養塩の付与ができないことから好ましくない。炭素数の上限は特に設ける必要はないが、工業的に大量に入手可能な材料としては炭素数20程度と考えられる。ただ、本発明におけるアルコールは炭素数20以下のものに限定されるものではない。前記主成分であるカルボン酸やアルコールからなる栄養塩は、常温において固体であるが、物質の融点以上に加熱すると溶融状態となる。
【0034】
また、微粉状の多孔質粉体11は、多孔質のセラミック、金属シリコン等の材料からなる微粉状とし、この多孔質粉体11の多孔部および表面部に、加熱して溶融させた固体栄養塩を含浸させて、その後冷却固化させたものである。また微粉状の多孔質粉体11自体を、固体栄養塩を微粉状に成形または粉砕して構成してもよい。さらに、微粉状の多孔質粉体11に、嫌気性微生物をバイオリアクター等の手段により予め付着させて移植し、栄養塩とともに一体に備えるようにすることもできる。
【0035】
また、微粉状の多孔質粉体11は、嫌気性微生物を生殖させるための最小限の大きさを有し、汚染領域6の土壌粒子間を地下水とともに通過可能な大きさに設定するもので、例えば粒径は1μm〜300μmの微粉状とするものである。
【0036】
なお、井戸7の数、間隔等の配置構成は、有機塩素化合物に汚染された汚染領域6の状況に応じて適宜設定すればよい。また汚染領域6およびこの周辺に観測井戸(図示なし)を設け、有機塩素化合物の汚染および浄化状況を観察すればよい。
【0037】
次に、前記図1の汚染土壌の浄化方法を実施するための基本構成断面図において、有機塩素化合物の分解作用について説明する。井戸7内において、多孔質粉体11に備えた栄養塩が溶出し、多孔質粉体11を核として、井戸7内とこの近傍に存在する嫌気性微生物および井戸7の地下水上流側からの嫌気性微生物を捕捉し、これを活性化して増殖させる。なお必要に応じて嫌気性微生物を井戸7内に供給することによって、多孔質粉体11に嫌気性微生物をより短時間に増殖させることができる。
【0038】
活性化して増殖させた嫌気性微生物を備えた多孔質粉体11は、井戸7のから地下水流に沿って徐々に汚染領域6に流動、拡散していく。さらに流動する多孔質粉体11は、汚染領域6を移動する過程で、既に汚染領域6に存在する嫌気性微生物も捕捉し、これらにも栄養塩を付与して活性化して増殖させる。このように嫌気性微生物は、汚染領域6を移動する過程で多孔質粉体11から継続して栄養塩を得て活性化して増殖を持続し、汚染領域6の地下水および土壌粒子に存在する有機塩素系化合物の分解を促進させることができる。
【0039】
また、多孔質粉体11を、例えば1μm〜300μmの微粉状の小粒径としたことによって、汚染領域6の長い距離を流動することができるとともに、土壌粒子の隙間に容易に進入することができる。さらに被表面の増加による有機塩素系化合物との接触促進作用により、地下水および土壌粒子に付着した有機塩素化合物の分解を促進することができる。
【0040】
また、多孔質粉体11を微粉状の小粒径としたことに加え、多孔質粉体11に徐放性を有する栄養塩を備えたことによって、多孔質粉体11に増殖した嫌気性微生物に長期間にわたって持続して栄養塩を付与して、活性化、増殖を促進させることができる。さらに過剰栄養塩の供給による様々な悪影響を防止することができる。
【0041】
従来は汚染領域6の全体にわたって十分な栄養塩を供給しても、嫌気性微生物の移動距離が短く、井戸7近傍の汚染領域6に存在する有機塩素系化合物の分解を促進できても、汚染領域6全体の分解を促進させることができず、完全な浄化が困難であった。
【0042】
これに対して本実施例においては、汚染領域6の上流側に設けた井戸7内に、徐放性を有する栄養塩を備えた微粉状の多孔質粉体11を充填し、前記井戸7内において多孔質粉体11に嫌気性微生物を増殖させる。さらに増殖させた嫌気性微生物および嫌気性微生物へ付与する徐放性の栄養塩を備えた多孔質粉体11を、前記井戸7から汚染領域6全体に流動、拡散させ、土壌粒子間へ地下水とともに移動させる。したがって活性化した嫌気性微生物の移動距離を著しく長くすることができ、汚染領域6全体の土壌および地下水の有機塩素化合物をより短期間に効率的に分解し、浄化することができる。
【0043】
前記したように、多孔質粉体11の多孔部および表面部に、加熱して溶融させた固体栄養塩を含浸させて、その後冷却固化させ、多孔質粉体11に栄養塩を備えるようにしたものである。これによって個々の多孔質粉体11に徐放性の栄養塩を確実に一体化して固定化することができ、長期間安定して多孔質粉体11に生息する嫌気性微生物に栄養塩を効率的に付与して活性化、増殖を促進させることができる。
【0044】
また、微粉状の多孔質粉体11自体を、固体栄養塩を微粉状に成形または粉砕して構成してもよい。これによって多孔質粉体11の作成を簡素化できるとともに、栄養塩量が増加することによってより長期間、嫌気性微生物に栄養塩を付与することができる。
【0045】
さらに、微粉状の多孔質粉体11に、嫌気性微生物をバイオリアクター等の手段により予め付着させて固定化し、栄養塩とともに一体に備えるようにすることもできる。これによって汚染領域6に生息する嫌気性微生物が少ない状況においても、汚染領域6全体の土壌および地下水の有機塩素化合物をより短期間に効率的に分解し、浄化することができる。
【0046】
また、微粉状の多孔質粉体を、金属シリコンを用いることによって、酸化時に発生する水素イオンにより有機塩素化合物の脱塩素化反応および還元化を促進させて汚染領域6全体の土壌および地下水の有機塩素化合物をより短期間に効率的に浄化することができる。
【0047】
また、前記したように井戸7内に、徐放性を有する栄養塩を備えた微粉状の多孔質粉体11を充填し、前記井戸7内において多孔質粉体11に嫌気性微生物を増殖させる。この際に井戸7内に、井戸7に埋設した仕切体8の多数の小孔8aから流出できないサイズの例えば、砂、小石、繊維体、その他の小片よりなる拡散体9を多孔質粉体11とともに井戸7内に充填してもよい。これによって多孔質粉体11の井戸7内における分散と地下水の通水抵抗を減少させ、さらに嫌気性微生物の増殖をより促進させることができる。したがって活性化、増殖した嫌気性微生物を備えた多孔質粉体11を、仕切体8の多数の小孔8aから汚染領域6全体に流動、拡散させ、土壌粒子間へ地下水とともに移動させることができる。
【0048】
特に炭素数が6以上のカルボン酸を主成分または炭素数が12以上のアルコールを主成分とした材料組成の固体状の栄養塩の成形物からなる拡散体9を、小孔8aから流出できないサイズの棒状、板状、球状等として多孔質粉体11とともに井戸7内に充填してもよい。前記固体状の栄養塩が徐放性を有することから、地下水全体に、一時的な過剰な栄養塩の付与を防止するとともに長期的に安定した栄養塩の付与をさせることができる。したがって汚染領域6に生息する嫌気性微生物も活性化し増殖させ、汚染領域6全体の土壌および地下水の有機塩素化合物をより効率的に浄化することができる。
【0049】
また、井戸7内において多孔質粉体11を連続または間欠的に水流形成手段、回転体等による機械的手段(図示なし)により攪拌してもよく、これによって多孔質粉体11の塊状化を防止するとともに井戸7からの汚染領域6への流動を促進することができる。
【0050】
図3は他の汚染水の浄化方法を実施するための装置の基本構成図である。図1と同一箇所は同一番号を付し、構成、作用効果の説明を省略する。図1と異なるところは、汚染領域6に、地表面1から細長状に掘削して砂質土層4に達する注入穴12を形成し、徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を備えた微粉状の多孔質粉体11をゲル状として、ゲル状とした多孔質粉体11をタンク13に貯留し、コンプレッサー14により前記注入穴12から圧入し、汚染領域6に供給するものである。
【0051】
嫌気性微生物をバイオリアクター等の手段により予め付着させて固定化し、栄養塩とともに一体に備えるようにした微粉状の多孔質粉体11と、ゲル化材とを混合して流動性を与えたゲル状とし、これを注入穴12から圧入し、汚染領域6に供給する。ゲル化材としては、水、グリセリン、その他の一般的に用いられる物質でよいが、特に前記した固体状の栄養塩よりも炭素数の少ないカルボン酸またはアルコールを主成分としたゲル状体または液体を用いてもよい。ゲル状体または液体の栄養塩は徐放性が減少するが、汚染領域6に栄養塩が不足している状況においては即効ある栄養塩の付与を行うことができる。したがって汚染領域6に生息する嫌気性微生物も活性化し増殖させ、汚染領域6全体の土壌および地下水の有機塩素化合物をより効率的に浄化することができる。
【0052】
図3に示す構成においては、注入穴12は井戸7よりも小径でよく構成および掘削工事の簡素化が図れるとともに、注入穴12から圧入することによって、圧入時において汚染領域6に多孔質粉体11を広く拡散させることができる。したがって汚染領域6全体の土壌および地下水の有機塩素化合物をより効率的に浄化することができる。なお汚染領域6に、注入穴12を設けたが、汚染領域6の地下水上流側に設けてもよく、さらに注入穴12の数、間隔等の配置構成、多孔質粉体11の注入頻度は、有機塩素化合物に汚染された汚染領域6の状況に応じて適宜設定すればよい。また汚染領域6およびこの周辺に観測井戸(図示なし)を設け、有機塩素化合物の汚染および浄化状況を観察すればよい。
【0053】
以上のように、本発明の汚染土壌の浄化方法によれば、徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を備えた微粉状の多孔質粉体を、有機塩素系化合物による汚染領域の土壌粒子間へ地下水とともに移動させ、前記嫌気性微生物により有機塩素系化合物の分解を促進させることを特徴とする汚染土壌の浄化方法としたものである。これによって浄化設備等の簡素化を図るとともに、徐放性を有する栄養塩および嫌気性微生物を一体に備えた多孔質粉体として、微生物自体に栄養塩を持続して無駄なく付与し、活性化、増殖させとともに、微生物の移動を活発にして汚染領域全体の土壌や地下水の有機塩素化合物を効率的に分解して浄化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
有害物質を含有する汚染土壌、汚染水の浄化の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例の汚染土壌の浄化方法を実施するための基本構成断面図
【図2】多孔質粉体の概略断面図
【図3】本発明の他の例の汚染土壌の浄化方法を実施するための基本構成断面図
【符号の説明】
【0056】
1 地表面
2 表土
3 上部シルト層
4 砂質土層
5 下部シルト層
6 汚染領域
7 井戸
8 仕切体
8a 小孔
9 拡散体
10 蓋
11 多孔質粉体
12 注入穴
13 タンク
14 コンプレッサー
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成18年7月27日(2006.7.27)
【代理人】 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄

【識別番号】100109667
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 浩樹

【識別番号】100109151
【弁理士】
【氏名又は名称】永野 大介


【公開番号】 特開2008−29929(P2008−29929A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−204384(P2006−204384)