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【発明の名称】 重金属含有原料の焼成方法
【発明者】 【氏名】水越 裕治

【氏名】柏木 佳行

【氏名】増井 芽

【要約】 【課題】重金属の除去率を向上させることを可能とする重金属含有原料の焼成方法を提供する。

【構成】重金属含有原料から塩化揮発法により重金属を除去する重金属含有原料の焼成方法であって、重金属含有原料に対して少なくとも1〜3質量%の塩素イオン化合物を水溶液の形態で添加して混合物を生成する混合物生成工程と、混合物の搬送方向に対向する方向に熱を通流させる向流方式のロータリーキルン2を使用して混合物を焼成する焼成工程とを有し、前記焼成工程において、重金属と塩素イオン化合物水溶液の塩素イオンとが塩化揮発し得る焼成温度で混合物を焼成することにより、重金属含有原料から重金属を析出させて塩素イオンと液相化学反応を行わせ、塩素イオンと結合した重金属を蒸発させて重金属含有原料から重金属を除去する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属含有原料から塩化揮発法により重金属を除去する重金属含有原料の焼成方法であって、
重金属含有原料に、重金属含有原料に対して少なくとも1〜3質量%の塩素イオン化合物を水溶液の形態で添加して混合物を生成する混合物生成工程と、
前記混合物の搬送方向に対向する方向に熱を通流させる向流方式の焼成炉を使用して前記混合物を焼成する焼成工程と、
を有することを特徴とする重金属含有原料の焼成方法。
【請求項2】
前記塩素イオン化合物水溶液は前記重金属含有原料に対して10〜40質量%であることを特徴とする請求項1記載の重金属含有原料の焼成方法。
【請求項3】
前記焼成温度は950〜1100℃であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の重金属含有原料の焼成方法。
【請求項4】
前記混合物生成工程において前記重金属含有原料に対して3〜12質量%の燃焼助剤を前記重金属含有原料に混合することを特徴とする請求項1〜請求項3いずれか一項に記載の重金属含有原料の焼成方法。
【請求項5】
前記重金属含有原料は焼却灰、飛灰又は土壌のいずれか一つ又は二つ以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれか一項に記載の重金属含有原料の焼成方法。
【請求項6】
前記重金属は鉛又はカドミウムであることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれか一項に記載の重金属含有原料の焼成方法。
【請求項7】
前記塩素イオン化合物はアルカリ土類金属の塩化物などの化学薬剤、塩素含有率の高い焼却灰若しくは溶融飛灰のいずれか一つ又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜請求項6いずれか一項に記載の重金属含有原料の焼成方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属含有原料の焼成方法に係り、特に、塩化揮発法により重金属を蒸発除去する重金属含有原料の焼成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、原料中の重金属を除去する技術として、塩素イオン化合物を導入して焼成することにより原料中の鉛などの重金属を蒸発除去する塩化揮発法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、重金属含有廃棄物と塩素含有廃棄物とを混合し、混合物中の塩素含有量が混合物重量基準で2%以上となるように調節して750℃以上の温度で高熱処理することにより、大部分の重金属を塩化揮発させて回収する重金属含有廃棄物の処理方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、重金属を含む土壌と、塩化カルシウムとをロータリーキルン内で加熱して、重金属が除去された焼成物と、塩化水素などを含む排ガスとを得る工程を有する重金属を含む土壌の処理方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、鉛などの重金属を含む土壌のCa/Si比を調整して、その土壌を800〜1,400℃の温度及び2〜10%の水分含有率の条件下で加熱して、重金属を塩化揮発させるとともに、重金属が除去されかつ塩素の含有率が小さい焼成物を得る工程を有する重金属を含む土壌の処理方法が開示されている。
【特許文献1】特開平8−182983号公報
【特許文献2】特開2004−290878号公報
【特許文献3】特開2004−306012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1又は特許文献2記載の発明のような、塩素イオン化合物を導入する一般的な塩化揮発法では、重金属の除去率に限界があった。
【0007】
また、特許文献3記載の発明のように、焼成炉内に水分を導入して重金属の塩化を促進することにより、重金属の除去率を向上させる方法においては、重金属の除去率の更なる向上が望まれていた。
【0008】
本発明は上述した実情に鑑みてなされたものであり、塩化揮発法により重金属を蒸発除去する重金属含有原料の焼成方法において、重金属の除去率を更に向上させることを可能とする重金属含有原料の焼成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、重金属含有原料から塩化揮発法により重金属を除去する重金属含有原料の焼成方法であって、重金属含有原料に、重金属含有原料に対して少なくとも1〜3質量%の塩素イオン化合物を水溶液の形態で添加して混合物を生成する混合物生成工程と、前記混合物の搬送方向に対向する方向に熱を通流させる向流方式の焼成炉を使用して前記混合物を焼成する焼成工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、重金属と塩素イオン化合物水溶液の塩素イオンとが塩化揮発し得る焼成温度で混合物を焼成することにより、重金属含有原料から重金属を析出させて塩素イオンと液相化学反応を行わせ、塩素イオンと結合した重金属を蒸発させて重金属含有原料から重金属を除去することが可能となる。
この際、塩素イオン化合物を重金属含有原料に対して1質量%未満とした場合は重金属の低減効果が少なく、また、重金属含有原料に対して3質量%より多くした場合は重金属の低減効果にほとんど変化がないことから、重金属含有原料に対して少なくとも1〜3質量%の塩素イオン化合物を添加することにより、重金属の除去率を向上させることが可能となる。
また、塩素イオン化合物を水溶液の形態で添加することにより、重金属と塩素イオンとの液相化学反応を促進して、鉛の除去率を向上させることが可能となる。
また、向流方式の焼成炉内部の入口付近における焼成温度は出口付近と比較すると低いが、液相反応により塩素イオンと結合した重金属は早期に蒸発除去されることから、焼成処理中の重金属含有原料に取り込むことなく、排ガスと共に焼成炉の外部に排出させることが可能となる。
また、向流方式の焼成炉では、入口付近の温度よりも出口付近の温度の方が高くなることから、水分などの揮発分が十分除去された状態の重金属含有原料について最も高温雰囲気下で焼成処理を行うことが可能となる。これにより、焼成物の品質維持、重金属の除去を確実に行うことができる。また、向流方式の焼成炉を使用することにより、並流方式の回転焼成炉と比較して、エネルギーコスト、装置の製造コストを低減することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の重金属含有原料の焼成方法であって、前記塩素イオン化合物水溶液は前記重金属含有原料に対して10〜40質量%であることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、塩素イオン化合物水溶液を重金属含有原料に対して10質量%未満とした場合は重金属と塩素イオンとの液相化学反応結合が充分でないため重金属の低減効果が少なく、また、40質量%より多くした場合は高い焼成温度を確保するのが難しいことから、重金属含有原料の含水率に応じ、重金属含有原料に対して10〜40質量%の塩素イオン化合物水溶液を混合することにより、高い焼成温度を確保しつつ重金属の除去率を向上させることが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の重金属含有原料の焼成方法であって、前記焼成温度は950〜1100℃であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、焼成温度950℃未満では液相化学反応の反応効率が低く、1100℃を超えると重金属含有原料が溶解して塊化するが、焼成温度を950〜1100℃とすることにより、重金属含有原料を塊化させることなく液相化学反応の反応を促進することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3いずれか一項に記載の重金属含有原料の焼成方法であって、前記混合物生成工程において前記重金属含有原料に対して3〜12質量%の燃焼助剤を前記重金属含有原料に混合することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、燃焼助剤を重金属含有原料の3質量%未満とした場合は燃焼効果にほとんど寄与せず、また、重金属含有原料の12質量%より多くした場合は温度制御が困難になると共に、高温のため重金属含有原料が塊化することから、重金属含有原料に対して3〜12質量%の燃焼助剤を混合することにより、温度制御を可能にしつつ、また重金属含有原料を塊化させることなく混合物の燃焼効果を高めることが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4いずれか一項に記載の重金属含有原料の焼成方法であって、前記重金属含有原料は焼却灰、飛灰又は土壌のいずれか一つ又は二つ以上の混合物であることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、重金属含有原料が焼却灰、飛灰又は土壌のいずれか一つ又は二つ以上の混合物である場合にも、請求項1〜請求項4と同様の作用を得ることが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5いずれか一項に記載の重金属含有原料の焼成方法であって、前記重金属は鉛又はカドミウムであることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、重金属が鉛又はカドミウムである場合にも、請求項1〜請求項5と同様の作用を得ることが可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6いずれか一項に記載の重金属含有原料の焼成方法であって、前記塩素イオン化合物はアルカリ土類金属の塩化物などの化学薬剤、塩素含有率の高い焼却灰、溶融飛灰のいずれか一つ又はこれらの混合物であることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、塩素イオン化合物がアルカリ土類金属の塩化物などの化学薬剤、塩素含有率の高い焼却灰、溶融飛灰のいずれか一つ又はこれらの混合物である場合にも、請求項1〜請求項6と同様の作用を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、重金属の含有量の低減により品質の安定した焼成灰を得ることができ、焼成灰の再利用を確実に行うことが可能となる。また、エネルギーコスト、装置の製造コストを低減することが可能となる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、高い焼成温度を確保しつつ重金属の除去率を向上させることが可能となる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、重金属含有原料を塊化させることなく液相化学反応の反応を促進することが可能となる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、温度制御を可能にしつつ、また重金属含有原料を塊化させることなく混合物の燃焼効果を高めることが可能となる。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜請求項4と同様の効果を得ることが可能となる。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜請求項5と同様の効果を得ることが可能となる。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜請求項6と同様の効果を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0031】
図1に、本発明の重金属含有原料の焼成方法に用いられる焼成システム1の全体構成を示す。
【0032】
焼成システム1は、重金属含有原料に塩素イオン化合物水溶液を導入して焼成することにより、重金属含有原料中の重金属を蒸発除去するシステムである。
【0033】
図1に示すように、焼成システム1には、重金属含有原料と塩素イオン化合物水溶液との混合物について焼成処理を行うロータリーキルン2が設けられている。ロータリーキルン2は、混合物の搬送方向に対向する方向に熱ガスを通流させるバーナー3を備えた向流方式の回転焼成炉である。混合物は、ロータリーキルン2の内部でバーナー3により所定温度で加熱され、その一部が重金属の除去された焼成処理物にされると共に、残部が重金属の塩化物を含む排ガスとされるようになっている。
【0034】
バーナー3は、ロータリーキルン2の出口付近に設けられており、重金属含有原料と塩素イオン化合物水溶液との混合物の焼成処理時に、ロータリーキルン2の内部において混合物の搬送方向に対向する方向に熱ガスを通流させるようになっている。この際、焼成温度を950℃未満とすると重金属と塩素イオンとの反応効率が悪く、また、焼成温度が1100℃を超えると重金属含有原料が溶解して塊化することから、焼成温度は重金属と塩素イオンとが塩化揮発し得る950〜1100℃とされるようになっている。
【0035】
ロータリーキルン2の入口側には、重金属含有原料と塩素イオン化合物水溶液とを混合し、その混合物を水平搬送してロータリーキルン2の内部に供給するスクリューコンベア4が設けられている。また、ロータリーキルン2の内部で焼成処理により生成された焼成処理物は、ロータリーキルン2の出口側から排出されるようになっている。
【0036】
ここで、本発明の重金属含有原料の焼成方法に用いられる焼成システム1では、ロータリーキルン2として向流方式の回転焼成炉を採用している。以下、その理由について図2及び図3を参照して説明する。
【0037】
まず、ロータリーキルン2として並流方式を採用する場合について説明する。
【0038】
図2に示すように、並流方式の回転焼成炉を使用した場合、ロータリーキルン2の入口付近の温度は高いが、室温で投入された重金属含有原料を加熱するためにエネルギーが消費され、ロータリーキルン2の出口付近においては温度が低下していた。したがって、重金属の揮発除去を十分に行うため、ロータリーキルン2の出口付近の温度を焼成処理に適した950〜1100℃に維持するには、ロータリーキルン2の入口付近を1350〜1400℃に加熱する必要があった。このため、エネルギーコストや装置コストが高騰するという問題に加えて、高温処理のために重金属含有原料が溶融塊化し、焼成物の品質が損なわれるという問題があった。
【0039】
一方、図3に示すように、ロータリーキルン2として向流方式の回転焼成炉を使用した場合は、ロータリーキルン2の入口付近の温度よりも出口付近の温度の方が高くなる。また、重金属含有原料は、スクリューコンベア4によりロータリーキルン2の入口付近から出口付近に搬送されるにつれて、水分などの揮発分が除去され、出口付近の領域に到達するときには揮発分が十分除去された状態となる。したがって、向流方式の回転焼成炉を使用すると、水分などの揮発分が十分除去された状態の重金属含有原料について最も高温雰囲気下で焼成処理を行うことが可能となり、焼成物の品質維持、重金属の除去を確実に行うことができる。また、向流方式の回転焼成炉を使用する場合は、並流方式の回転焼成炉を使用する場合と比較して、エネルギーコスト、装置の製造コストを低減することができる。
【0040】
したがって、本発明の重金属含有原料の焼成方法では、焼成物の品質を維持しながら重金属の除去を確実に行い、かつ、エネルギーコスト及び装置の製造コストを低減するために、向流方式の回転焼成炉を採用している。
【0041】
本実施形態の重金属としては、鉛やカドミウムなどが挙げられる。また、重金属含有原料としては、焼却灰、飛灰、土壌のいずれか一つ又は二つ以上の混合物などが挙げられる。
【0042】
また、重金属含有原料には燃焼助剤として可燃成分が混合されるようになっている。この可燃成分としては、廃油、炭化物、廃木材及び廃プラスチックスなどが挙げられる。また、燃焼助剤としての可燃成分は、重金属含有原料の3質量%未満とした場合は燃焼効果にほとんど寄与せず、また、重金属含有原料の12質量%より多くした場合は温度制御が困難になると共に高温のため重金属含有原料が塊化することから、重金属含有原料の3〜12質量%とされるようになっている。
【0043】
また、塩素イオン化合物は、焼成処理により塩素イオンを重金属と化学反応結合させて鉛(Pb)を低減させるようになっている。この塩素イオン化合物としては、塩化カルシウムや塩化マグネシウムの如きアルカリ土類金属の塩化物などの化学薬剤、塩素含有率の高い焼却灰若しくは溶融飛灰のいずれか一つ又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0044】
また、塩素イオン化合物は、重金属含有原料に対して少なくとも1〜3質量%とされるようになっている。
【0045】
ここで、本発明の重金属含有原料の焼成方法において、塩素イオン化合物を重金属含有原料に対して少なくとも1〜3質量%とする理由について説明する。
【0046】
発明者らは、焼却灰30gと、焼却灰に対して0〜7質量%の塩化カルシウム(CaCl2)及び水10gにより生成した塩化カルシウム水溶液とを混合して、焼成温度1100℃で10分間焼成し、鉛の除去率の向上を試みた。また、焼却灰30gとしてはPb溶出量0.024mg/l、Pb含有量270mg/kgのサンプル1及びサンプル2と、Pb溶出量0.013mg/l、Pb含有量1300mg/kgのサンプル3とを使用した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】


【0048】
表1の結果から明らかなように、混合物に塩化カルシウム(CaCl2)を添加しない場合は、焼成処理物中のPb溶出量及びPb含有量は法規制値(Pb溶出量0.01mg/l未満、Pb含有量150mg/kg未満)を下回らないことがわかった。一方、少なくとも焼却灰の1質量%の塩化カルシウム(CaCl2)を添加することで、鉛(Pb)の除去率が向上することがわかった。また、焼却灰の3質量%の塩化カルシウム(CaCl2)を添加すると、鉛(Pb)の除去率は更に向上することがわかった。また、塩化カルシウム(CaCl2)を3質量%より多く添加した場合の鉛(Pb)の除去率にほとんど変化はなかった。
【0049】
このように、塩素イオン化合物は、重金属含有原料に対して1質量%未満とした場合は鉛の低減効果が少なく、また、重金属含有原料に対して3質量%より多くした場合は鉛の低減効果にほとんど変化がないことから、重金属含有原料に対して少なくとも1〜3質量%とされるようになっている。
【0050】
また、本実施形態の塩素イオン化合物は水溶液として混合されるようになっている。また、塩素イオン化合物水溶液は、重金属含有原料に対して10質量%未満とした場合は重金属と塩素イオンとの液相化学反応結合が充分でないため鉛の低減効果が少なく、また、40質量%より多くした場合は、焼成温度を950℃以上に確保するのが難しいことから、重金属含有原料の含水率に応じ、重金属含有原料に対して10〜40質量%とされるようになっている。すなわち、塩素イオン化合物水溶液は、10〜40質量%の範囲内で、重金属含有原料の含水率が高い場合は比較的少なく、重金属含有原料の含水率が低い場合は比較的多くされるようになっている。
【0051】
ロータリーキルン2には、ロータリーキルン2から流出した排ガスからダストを捕集して、清浄された排ガスを排出するサイクロン5が接続されている。
【0052】
サイクロン5には、サイクロン5から排出された排ガスを急冷してダイオキシンの再合成を防止する減温器6が接続されている。減温器6の上方には、減温器6の内部上方において洗浄水を噴霧するための洗浄水配管6aが接続されており、減温器6の下方には、減温器6の内部下方において洗浄水を排水するための排水管6bが接続されている。
【0053】
減温器6には、減温器6から排出された排ガスから細粒分である重金属の塩化物を捕集して排ガスを浄化するバグフィルタ7が接続されている。
【0054】
バグフィルタ7には、バグフィルタ7で浄化された清浄ガスを煙突に排出する排ガスファン8が接続されており、清浄ガスは煙突から焼成システム1の外部に排出されるようになっている。
【0055】
ここで、本発明の重金属含有原料の焼成方法において、塩素イオン化合物を水溶液の形態で添加する理由について説明する。
【0056】
発明者らは、一般的な塩化揮発法により、酸化鉛(PbO,沸点1470℃)から塩化鉛(PbCl2,沸点950℃)を生成して、鉛の除去率の向上を試みた。
【0057】
まず、重金属と塩素イオン化合物とを固相反応させる場合について説明する。
【0058】
重金属含有原料としての焼却灰と、塩素イオン化合物としての固体の塩化カルシウム(CaCl2)との混合物について、焼成温度1050〜1100℃で10分間焼成処理を行ったところ、非塩化揮発法を用いた場合と比較して鉛の除去率の向上は軽微であった。
【0059】
この理由としては、混合物には他の物質も含まれていたことから、焼却灰中の固体の酸化鉛(PbO)と固体の塩化カルシウム(CaCl2)とが効果的に固相反応するには、1250℃以上の温度環境が必要であり、このため1100℃では塩化鉛(PbCl2)の生成率が低かったということが考えられる。
【0060】
なお、固相反応式PbO+CaCl2→PbCl2+CaOが成立する熱平衡条件温度は理論値で1030℃以上必要である。
【0061】
そこで、発明者らは、固相反応と比較して反応温度が低い液相反応に着目し、塩素イオン化合物に水分を導入して液相反応を惹起させることにより、塩化鉛(PbCl2)を生成することを考えた。
【0062】
すなわち、塩化カルシウム(CaCl2)を水に溶かして塩化カルシウム水溶液を生成し、この水溶液中で塩化カルシウム(CaCl2)と水溶性の酸化鉛(PbO)を反応させることで、塩化鉛(PbCl2)の生成が促進され、鉛の除去率が向上するものと推察した。
【0063】
このように重金属と塩素イオン化合物とを液相反応させることにより、ロータリーキルン2への混合物の導入時にはロータリーキルン2の内部の焼成温度は600〜650℃程度と比較的低いが、水溶液中の塩化カルシウム(CaCl2)と酸化鉛(PbO)との反応により生成された塩化鉛(PbCl2)は早期に蒸発除去されることから、焼成処理中の重金属含有原料に取り込まれることなく、排ガスと共にロータリーキルン2の外部に排出することができる。
【0064】
なお、液相反応式PbO+CaCl2+H2O→PbCl2+Ca(OH)2が成立する熱平衡条件温度は、理論値で380℃以下であるという知見を得た。
【0065】
次に、本実施形態の重金属含有原料の焼成方法について説明する。
【0066】
スクリューコンベア4により、重金属含有原料と塩素イオン化合物水溶液とを混合し、その混合物を水平搬送してロータリーキルン2の入口側から内部に供給する。
【0067】
次に、ロータリーキルン2の駆動により、重金属含有原料と塩素イオン化合物水溶液との混合物の焼成処理を行う。この際、バーナー3によりスクリューコンベア4の搬送方向と対向する方向に熱ガスを通流させて、ロータリーキルン2の内部の焼成温度を950〜1100℃とする。この焼成処理により、混合物の一部が重金属の除去された焼成処理物になると共に、残部が重金属の塩化物を含む排ガスとなる。また、焼成処理物はロータリーキルン2の出口側から排出される。
【0068】
一方、ロータリーキルン2からの排ガスがサイクロン5に流入すると、サイクロン5はダストを捕集し、清浄された排ガスを減温器6に排出する。続いて、減温器6の駆動によりサイクロン5から流入した清浄ガスを水噴霧により急冷し、バグフィルタ7により細粒分を捕集した後、排ガスファン8により清浄ガスを煙突に排出し、排ガスを煙突から焼成システム1の外部に排出する。
【0069】
このように、本実施形態の重金属含有原料の焼成方法によれば、重金属と塩素イオン化合物水溶液の塩素イオンとが塩化揮発し得る焼成温度で混合物を焼成することにより、重金属含有原料から重金属を析出させて塩素イオンと液相化学反応を行わせ、塩素イオンと結合した重金属を蒸発させて重金属含有原料から重金属を除去することが可能となる。
【0070】
この際、塩素イオン化合物を重金属含有原料に対して1質量%未満とした場合は重金属の低減効果が少なく、また、重金属含有原料に対して3質量%より多くした場合は重金属の低減効果にほとんど変化がないことから、重金属含有原料に対して少なくとも1〜3質量%の塩素イオン化合物を添加することにより、重金属の除去率を向上させることが可能となる。
【0071】
また、塩素イオン化合物を水溶液の形態で添加することにより、重金属と塩素イオンとの液相化学反応を促進して、鉛の除去率を向上させることが可能となる。
【0072】
また、向流方式の焼成炉内部の入口付近における焼成温度は出口付近と比較すると低いが、液相反応により塩素イオンと結合した重金属は早期に蒸発除去されることから、焼成処理中の重金属含有原料に取り込むことなく、排ガスと共に焼成炉の外部に排出させることが可能となる。
【0073】
また、向流方式の焼成炉では、入口付近の温度よりも出口付近の温度の方が高くなることから、水分などの揮発分が十分除去された状態の重金属含有原料について最も高温雰囲気下で焼成処理を行うことが可能となる。これにより、焼成物の品質維持、重金属の除去を確実に行うことができる。また、向流方式の焼成炉を使用することにより、並流方式の回転焼成炉と比較して、エネルギーコスト、装置の製造コストを低減することが可能となる。
【0074】
また、塩素イオン化合物水溶液を重金属含有原料に対して10質量%未満とした場合は重金属と塩素イオンとの液相化学反応結合が充分でないため重金属の低減効果が少なく、また、40質量%より多くした場合は高い焼成温度を確保するのが難しいことから、重金属含有原料の含水率に応じ、重金属含有原料に対して10〜40質量%の塩素イオン化合物水溶液を混合することにより、高い焼成温度を確保しつつ重金属の除去率を向上させることが可能となる。
【0075】
また、焼成温度950℃未満では液相化学反応の反応効率が低く、1100℃を超えると重金属含有原料が溶解して塊化するが、焼成温度を950〜1100℃とすることにより、重金属含有原料を塊化させることなく液相化学反応の反応を促進することが可能となる。
【0076】
また、燃焼助剤を重金属含有原料の3質量%未満とした場合は燃焼効果にほとんど寄与せず、また、重金属含有原料の12質量%より多くした場合は温度制御が困難になると共に高温のため重金属含有原料が塊化することから、重金属含有原料に対して3〜12質量%の燃焼助剤を混合することにより、温度制御を可能にしつつ、また重金属含有原料を塊化させることなく混合物の燃焼効果を高めることが可能となる。
【0077】
また、重金属含有原料が焼却灰、飛灰又は土壌のいずれか一つ又は二つ以上の混合物である場合に、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0078】
また、重金属が鉛又はカドミウムである場合に、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0079】
また、塩素イオン化合物がアルカリ土類金属の塩化物などの化学薬剤、塩素含有率の高い焼却灰、溶融飛灰のいずれか一つ又はこれらの混合物である場合に、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0080】
本実施形態の焼成システム1により、内径1.1m、長さ寸法11m、混合物の滞留時間60分、処理能力1000kg/時間のロータリーキルン2を24時間運転して、A重油を燃料とし1100℃の焼成温度で焼成処理を行った。混合物中の焼却灰はPb溶出量0.019mg/l、Pb含有量1180mg/kg、塩化カルシウム(CaCl2)は焼却灰の3質量%、塩化カルシウム水溶液は焼却灰の30質量%とし、燃焼助剤として廃木材チップを焼却灰の5質量%添加して焼成処理を行った。そして、2時間毎に処理灰からサンプル(12サンプル)を取得し、Pb溶出量及びPb含有量を測定した。その結果、Pb溶出量は0.004〜0.009mg/l、Pb含有量は138〜143mg/kgとなり、処理灰中のPb量が大幅に低減され、処理灰の再利用に必要な法規制値(Pb溶出量0.01mg/l未満、Pb含有量150mg/kg未満)をクリアすることができた。
【0081】
また、塩化カルシウムや、塩化マグネシウムの如きアルカリ土類金属の塩化物などの化学薬剤、塩素含有率の高い焼却灰若しくは溶融飛灰のいずれか一つ又はこれらの混合物など、他の塩素イオン化合物を水溶液の形態で使用した場合にも、同様の効果を得ることができた。
【0082】
以上詳述したように本発明の重金属含有原料の焼成方法によれば、塩化揮発法により重金属を蒸発除去する重金属含有原料の焼成方法において、重金属の除去率を更に向上させて、焼成灰の再利用を確実に行うことが可能となる。また、エネルギーコスト、装置の製造コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態に係る焼成システムの全体構造を示す概略図である。
【図2】ロータリーキルンの構成例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るロータリーキルンの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 焼成システム
2 ロータリーキルン
3 バーナー
4 スクリューコンベア
5 サイクロン
6 減温器
7 バグフィルタ
8 排ガスファン
【出願人】 【識別番号】392019857
【氏名又は名称】株式会社アクトリー
【出願日】 平成18年3月30日(2006.3.30)
【代理人】 【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司

【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男


【公開番号】 特開2008−49204(P2008−49204A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−93804(P2006−93804)