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【発明の名称】 副生物の処理方法
【発明者】 【氏名】池崎 英二

【氏名】柳 正人

【氏名】濱田 正一朗

【氏名】横尾 正義

【要約】 【課題】副生物から溶出する6価クロム及びフッ素を長期間安定して土壌環境基準値以下にすることが可能な簡便かつ安価な副生物の処理方法を提供する。

【構成】副生物の処理方法は、クロムを含有するフライアッシュ、フッ素含有スラグ、及びクロム含有スラグのいずれか2又は3以上を有する第1の副生物と、フッ素含有石膏を有する第2の副生物と、高炉水砕スラグと、水酸化カルシウムを主成分とする硬化促進剤と、混練水とを混練して混練物を調製し、混練物を固化させることにより行ない、第2の副生物の添加量は、第1の副生物、高炉水砕スラグ、硬化促進剤、及び混練水の総量100重量部に対して二水石膏換算で2重量部以上で10重量部以下であることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄事業で発生する副生物の処理方法において、
クロムを含有するフライアッシュ、フッ素含有スラグ、及びクロム含有スラグのいずれか2又は3以上を有する第1の副生物と、フッ素含有石膏を有する第2の副生物と、高炉水砕スラグと、水酸化カルシウムを主成分とする硬化促進剤と、混練水とを混練して混練物を調製し、該混練物を固化させることを特徴とする副生物の処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の副生物の処理方法において、前記第2の副生物の添加量は、前記第1の副生物、前記高炉水砕スラグ、前記硬化促進剤、及び前記混練水の総量100重量部に対して二水石膏換算で2重量部以上で10重量部以下であることを特徴とする副生物の処理方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の副生物の処理方法において、前記混練水の添加量は、前記第1の副生物、前記高炉水砕スラグ、及び前記硬化促進剤の総量100重量部に対して14重量部以上で22重量部以下であることを特徴とする副生物の処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の副生物の処理方法において、前記フッ素含有スラグ及び前記クロム含有スラグは、予め熱水浸漬エージング処理することを特徴とする副生物の処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の副生物の処理方法において、前記硬化促進剤に石灰キルンの排ガス湿式集塵設備で発生する石灰スラリーを使用することを特徴とする副生物の処理方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の副生物の処理方法において、前記混練水に塩化物を加えることを特徴とする副生物の処理方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の副生物の処理方法において、前記混練水として海水を使用することを特徴とする副生物の処理方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄事業で発生し、6価クロムやフッ素を含有する副生物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄事業は多種多様な複合コンビナートを形成し、多くの副生物を生成すると共に、その副生物の大半をリサイクルする一つの循環型社会を形成している。しかし、その中においても、土壌環境基準を超える溶出性元素を含有する副生物はリサイクルすることが困難なため管理型埋立地等に処分している。ここで、土壌環境基準を超える溶出性元素を含む副産物とは、例えば、石炭火力自家発電で発生し6価クロムが含有される燃焼飛灰、普通鋼の精錬時に発生するフッ素を含有する普通鋼スラグ、ステンレス鋼や含クロム鋼等の特殊鋼の精錬時に発生し6価クロムを含有する特殊鋼スラグ等、産業廃棄物となっている、例えば、建屋解体時に発生しフッ素を含有する石膏ボードを主体とする廃石膏等を指し、環境庁告示第46号に基づく溶出試験を行なうと6価クロムやフッ素の溶出が検出されている。加えて、廃石膏は、有機物との混在下で埋め立てられると嫌気性細菌の作用により硫化水素を発生し、環境問題を惹起する難点を有している。
【0003】
これらを、例えば、道路用材料等の土木材料にリサイクルするには溶出性元素の溶出を基準値以下にする必要がある。そこで、溶出性元素の溶出を防止する方法として、特許文献1には、フッ素を含有する製鋼スラグにセメント物質と硫酸根を含む物質を添加混合して製鋼スラグを安定化する方法が開示されている。また、特許文献2には、フッ素を含有する製鋼スラグ等の副生物に結晶質カルシウムシリケートを形成させてフッ素を固定する方法が開示されている。更に、特許文献3には、6価クロム及び水に可溶なアルカリ成分を含む物質を硫酸第一鉄及び硫酸アルミニウムを含む溶液に浸漬して6価クロムを処理する方法が、特許文献4には、硫化ソーダ又は水硫化ソーダのいずれか1と水溶性第一鉄塩をクロム含有粉塵に混練し6価クロムを3価クロムに還元処理する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−316143号公報
【特許文献2】特開2004−41890号公報
【特許文献3】特開昭54−33294号公報
【特許文献4】特開昭53−102273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明は、フッ素の溶出防止効果のみを対象にしたもので、6価クロムの溶出防止も含む複合効果には一切言及されておらず、安定化処理した製鋼スラグの土木用材料としての適合性に関しても開示されていない。また、特許文献2の発明は、高温のオートクレーブ処理を必要とするため、大量処理には不向きで処理費も嵩むという問題があり、6価クロムの溶出防止も含む複合効果には一切言及されていない。更に、特許文献3及び4では、薬剤を多量に使用するため処理費が嵩むという問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、製鉄事業で発生する副生物から溶出する6価クロム及びフッ素を長期間安定して土壌環境基準値以下にすることが可能な簡便かつ安価な副生物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る副生物の処理方法は、製鉄事業で発生する副生物の処理方法において、
クロムを含有するフライアッシュ、フッ素含有スラグ、及びクロム含有スラグのいずれか2又は3以上を有する第1の副生物と、フッ素含有石膏を有する第2の副生物と、高炉水砕スラグと、水酸化カルシウム(消石灰)を主成分とする硬化促進剤と、混練水とを混練して混練物を調製し、該混練物を固化させる。
ここで、クロムを含有するフライアッシュとは、石炭火力発電所から発生しクロムを含有する石炭燃焼飛灰を指し、フッ素含有スラグとは、例えば、普通鋼転炉スラグを指し、クロム含有スラグとは、例えば、クロム含有鋼を精錬した際に発生する転炉スラグ、クロム含有鋼用の溶鋼鍋内に残留した造塊スラグ、及びクロム含有鋼の精錬時に転炉から吹きこぼれたスラグや使用済みのクロム含有耐火物の破片等が混入したスラグ等の雑スラグを指す。また、フッ素含有石膏を有する第2の副生物とは、例えば、建屋廃材から発生し一部にフッ素含有石膏が使用された石膏ボードの破砕品や排煙脱硫設備で発生するフッ素を含有する石膏等を指す。
【0008】
混練物中では高炉水砕スラグを主体とする水和固化反応が起こり、フライアッシュ及びクロム含有スラグから溶出する6価クロムは、水和固化反応の進行過程で固化体中に徐々に取り込まれ固定される。
ここで、硬化促進剤を添加することで、高炉水砕スラグの水和固化反応を促進し硬化を速めることができると共に、得られる固化体の強度を向上させることができる。一方、第2の副生物からは硫酸根とフッ素が溶出し、溶出した硫酸根は混練物中で、例えば、エトリンガイトやモノサルフェートの如き硫酸根系の水和化合物を生成する。このとき、第2の副生物やフッ素含有スラグから溶出したフッ素は硫酸根系の水和化合物の生成過程で徐々に化合物中に取り込まれて固定される。そして、硫酸根系の水和化合物の生成により固化体の強度は向上する。
【0009】
本発明に係る副生物の処理方法において、前記第2の副生物の添加量は、前記第1の副生物、前記高炉水砕スラグ、前記硬化促進剤、及び前記混練水の総量100重量部に対して二水石膏(CaSO4・2H2O)換算の外掛けで2重量部以上で10重量部以下であることが好ましい。
ここで、第2の副生物の添加量が二水石膏換算で2重量部未満の場合は硫酸根の溶出量が少なく、硫酸根系の水和化合物の生成量が低下して固定できるフッ素量が少なくなるので好ましくない。また、第2の副生物の添加量が二水石膏換算で10重量部を超えると、硫酸根系の水和化合物で固定可能なフッ素量を超えるフッ素が第2の副生物から溶出するので好ましくない。
以下、廃石膏など第2の副生物の添加量は、二水石膏換算の外掛け重量部で示す。
【0010】
本発明に係る副生物の処理方法において、前記混練水の添加量は、前記第1の副生物、前記高炉水砕スラグ、及び前記硬化促進剤の総量100重量部に対して14重量部以上で22重量部以下であることが好ましい。
ここで、水の添加量が14重量部未満では、水が少なく混練が不均質となり、高炉水砕スラグを主体とする水和固化反応の進行及び硫酸根系の水和化合物の生成が抑えられて好ましくない。一方、水の添加量が22重量部を超えると、混練物の含水量が多くなって、固化に要する時間が長くなるので好ましくない。
【0011】
本発明に係る副生物の処理方法において、前記フッ素含有スラグ及び前記クロム含有スラグは、予め熱水浸漬エージング処理することが好ましい。これによって、フッ素含有スラグ及びクロム含有スラグ中の生石灰を消石灰に変化させ、スラグの残存膨張を極小化すると共にアルカリ刺激剤として作用し水和固化反応を促進することができる。
本発明に係る副生物の処理方法において、前記硬化促進剤に石灰キルンの排ガス湿式集塵設備で発生する石灰スラリーを使用することができる。これによって、石灰キルンの排ガス湿式集塵設備で発生する副生物を有効活用できる。
【0012】
本発明に係る副生物の処理方法において、前記混練水に塩化物を加えることが好ましい。塩化物を加えると塩化物から生成する塩素イオンがフライアッシュ及び高炉水砕スラグの有する潜在水硬性を活性化させることができ、フライアッシュ及び高炉水砕スラグの水硬性が促進される。ここで、塩化物としては、例えば、塩化ナトリウムを使用することができ、混練水に加える塩化物量は、フライアッシュ及び高炉水砕スラグの総量100重量部に対して、塩素換算で0.5〜1重量部とするのが好ましい。加える塩化物が塩素換算で0.5重量部未満では潜在水硬性を活性化させる効果が小さく、加える塩化物が塩素換算で1重量部を超えても塩素の潜在水硬性活性化効果が飽和し塩化物添加費用が嵩むため好ましくない。
また、前記混練水として海水を使用することができる。海水を使用することで、混練物の調製を容易に行なうことができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜7記載の副生物の処理方法においては、高炉水砕スラグを主体とする水和固化反応の進行過程で6価クロムを、硫酸根系の水和化合物の生成過程でフッ素をそれぞれ取り込んで固定するので、大量の副生物を簡便かつ安価に処理して6価クロム及びフッ素の溶出を同時に抑えることが可能になる。また、硬化促進剤を添加するので、高炉水砕スラグの硬化速度を速めることができ、混練物の固化処理を行なう養生場の回転率を高めることが可能になって、広い養生場を確保する必要がなくなり副生物の処理を行なう上での設備負担を低減できる。更に、硬化促進剤を添加することで固化体の強度を向上させることができ、固化体を路盤材や埋め戻し材等の道路土木用資源として利用することが可能になる。
【0014】
特に、請求項2記載の副生物の処理方法においては、第2の副生物の添加量を石膏換算で規定するので、6価クロムとフッ素の溶出値を同時に土壌環境基準値以下にすることが可能になる。
【0015】
請求項3記載の副生物の処理方法においては、混練水の添加量を規定するので、混練物中での高炉水砕スラグを主体とする水和固化反応、硫酸根系の水和化合物の生成を確実に進行させることが可能になる。また、混練物中での自由水量が低下するので、緻密な固化物を得ることが可能になる。
【0016】
請求項4記載の副生物の処理方法においては、フッ素含有スラグ及びクロム含有スラグを予め熱水浸漬エージング処理するので、フッ素含有スラグ及びクロム含有スラグの体積安定性を図ることができ、得られた固化体の体積安定性を容易に確保することが可能になる。その結果、固化体の道路土木用資源としての利用が促進できる。
請求項5記載の副生物の処理方法においては、硬化促進剤に石灰キルンの排ガス湿式集塵設備で発生する石灰スラリーを使用するので、副生物のリサイクル比率を向上させることができると共に、より安価に副生物の処理を行なうことが可能になる。
【0017】
請求項6記載の副生物の処理方法においては、塩素イオンによりフライアッシュ及び高炉水砕スラグの潜在水硬性を活性化させてフライアッシュ及び高炉水砕スラグの水硬性を促進することができ、固化体の強度を更に大きくすることが可能になる。
請求項7記載の副生物の処理方法においては、海水を使用するので混練物の調製が容易になり、固化体を安価に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る副生物の処理方法の工程説明図である。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る副生物の処理方法に使用する副生物の処理設備10は、フッ素含有スラグの一例である普通鋼転炉スラグと、クロム含有スラグの一例であるステンレス鋼転炉スラグ、ステンレス鋼造塊スラグ、及びステンレス鋼雑スラグに熱水浸漬エージング処理を行なう熱水浸漬槽11を有している。また、副生物の処理設備10は、クロムを含有するフライアッシュ(石炭火力発電所から発生しクロムを含有する微粉炭燃焼飛灰)、エージング処理済普通鋼転炉スラグ、エージング処理済ステンレス鋼転炉スラグ、エージング処理済ステンレス鋼造塊スラグ、及びエージング処理済ステンレス鋼雑スラグを有する第1の副生物と、第2の副生物の一例である、フッ素含有石膏が使用された石膏ボードの破砕品(以下、単に廃石膏という)と、高炉水砕スラグと、水酸化カルシウムを主成分とする硬化促進剤の一例であり石灰キルンの排ガス湿式集塵設備で発生する石灰スラリーと、海水とを混練して混練物を調製する混練装置12とを有している。
【0019】
ここで、熱水浸漬槽11としては、例えば、幅5m、奥行4m、深さ5m程度のプールを使用することができる。普通鋼転炉スラグと、ステンレス鋼転炉スラグ、ステンレス鋼造塊スラグ、及びステンレス鋼雑スラグをそれぞれ重機にて熱水浸漬槽11内に投入し200〜600℃のスラグ残熱で70〜95℃、望ましくは80〜95℃の熱水を製造し、その熱水中に6時間以上浸漬させ、望ましくは熱水浸漬前のスラグの粒径の25mm以下が75質量%以上にすることによりスラグに残留する生石灰(CaO)分を水和させ水和膨張を促進し残存膨張代を減じることができる。なお、熱水浸漬後にスラグの粒径の25mm以下が75質量%以上としても、残存膨張代を減じたスラグを得ることができる。
また、混練装置12としては、例えば、シリンダ内に平行に隙間を設けて配置され、外周側に撹拌羽根が設けられて相互に逆回転する回転軸を有する2軸混練機を使用することができる。第1の副生物、廃石膏、高炉水砕スラグ、石灰スラリー、及び海水を混練装置12内に投入して混練することにより、第1の副生物−廃石膏−高炉水砕スラグ−石灰スラリー−水系の均一な混練物を調製することができる。
【0020】
次に、本発明の一実施の形態に係る副生物の処理方法について説明する。
製鉄事業で発生する副生物の処理方法は、熱水浸漬エージング処理工程と、混練物調製工程と、混練物を土間に流し養生固化する土間流し養生工程と、混練物を養生固化した後に破砕する粉砕工程と、破砕した固化体を分級する分級工程とを有している。以下詳細に説明する。
【0021】
熱水浸漬エージング処理工程では、200〜600℃程度の残熱を有する普通鋼転炉スラグ、ステンレス鋼転炉スラグ、ステンレス鋼造塊スラグ、ステンレス鋼雑スラグをそれぞれ熱水浸漬槽11内に投入し、熱水浸漬槽11内に堆積したスラグの残熱で、例えば、70〜95℃にして6〜7時間保持する。これによって、各スラグは加温され、熱水がスラグ表層及びスラグ内に進入し、スラグに残存する生石灰と反応して消石灰が生成する。
【0022】
混練物調製工程では、熱水浸漬エージング処理された各スラグとフライアッシュをそれぞれ所定量だけ配合した第1の副生物に対して高炉水砕スラグ、石灰スラリー、廃石膏、及び海水をそれぞれ混練装置12内に投入し、1〜1.5分間混練して混練物を調製する。高炉水砕スラグは第1の副生物及び廃石膏を固化する固化材として使用し、石灰スラリーは高炉水砕スラグの有する潜在水硬性を活性化させるアルカリ刺激剤として使用する。なお、石灰スラリーは含水率が大きく変動するため、第1の副生物に対して添加する際の添加量は、水分を除去した消石灰(水酸化カルシウム)換算で行なう。
【0023】
ここで、高炉水砕スラグは、粒径が5mm以下となるように篩分けした分級品と、3000〜5000ブレーン(比表面積が3000〜5000cm2/g)の微粉末品を組み合わせて使用する。これによって、第1の副生物及び廃石膏を保持する均一な結合組織を形成することができる。混練水は、第1の副生物、高炉水砕スラグ、及び石灰スラリーの消石灰からなる総固形分の総量100重量部に対して14重量部以上で22重量部以下となるように添加する。すなわち、混練水を構成する石灰スラリーから持ち込まれる水分量と海水の総重量が、総固形分の総量100重量部に対して14重量部以上で22重量部以下となるようにする。また、廃石膏の添加量は、第1の副生物、高炉水砕スラグ、石灰スラリー、及び海水の総量100重量部に対して二水石膏換算で2重量部以上で10重量部以下となるようにする。
【0024】
土間流し養生工程では、調製された混練物を、例えば、土間に、厚さ150〜200mmとなるように敷き詰め、例えば、約1週間静置する。養生処理中に、混練物中では高炉水砕スラグを主体とする水和固化反応が進行し、フライアッシュ及びクロム含有スラグから溶出する6価クロムは、水和固化反応の進行過程で固化体結晶組織中に徐々に取り込まれ固定される。また、廃石膏からは硫酸根が溶出し、硫酸根は混練物中の高炉水砕スラグを構成している、例えば、CaO及びSiO2との間で硫酸根系の水和化合物(CaO−SiO2−H2O−SO4)を生成し、このとき普通鋼転炉スラグ及び廃石膏から溶出したフッ素は上記硫酸根系の水和物以外にもエトリンガイトやモノサルフェートの如き硫酸根系の水和化合物中に取り込まれて固定される。
次に、土間に岩盤状に固化した混練物を重機を用いて粗破砕し、その塊状品をクラッシャーに装入し、例えば、25mm以下に破砕し分級した後、路盤材等の土木用材として提供される。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
平成3年環境庁告示第46号試験に従い計測したフッ素と6価クロムの溶出量をがそれぞれ表1に記載される値となる普通鋼転炉スラグ、ステンレス鋼転炉スラグ、ステンレス鋼造塊スラグ、及びステンレス鋼雑スラグをそれぞれ熱水浸漬槽11に投入し、スラグ残熱にて75〜85℃の熱水を製造すると共に、スラグをその熱水中に6時間保定した。
【0026】
【表1】


【0027】
次いで、熱水浸漬槽11から重機にて掬い出した熱水浸漬エージング処理後の普通鋼転炉スラグ、ステンレス鋼転炉スラグ、ステンレス鋼造塊スラグ、及びステンレス鋼雑スラグを山積みにして静置し水を切った後に、スラグ粒径の25mm以下が75質量%以上となるよう、分級処理し、その後に表1に記載されたフライアッシュ、高炉水砕スラグ、消石灰、及び混練水として淡水を添加して表2に記載されたA群配合を調製した。そして、A群配合100重量部に対して表1に記載された廃石膏(石膏ボード破砕品と脱硫石膏各50重量部の混合物)を外掛けで2〜10重量部加え混練水と共に2軸混練機により1分間混練した。得られた混練物を直径100mm、高さ200mmの有底円筒型枠に流し込んで28日間養生し水和固化体を製造した。なお、比較例として、A群配合のみで混練物を調製し、実施例1と同様の方法で水和固化体を製造した。
【0028】
【表2】


【0029】
恒温室内における養生が終了した後に型枠から固化体を取り出し、環境庁告示第46号試験によりフッ素と6価クロムの溶出量を測定した。その結果を表3に示す。また、一軸圧縮試験を実施すると共に一軸圧縮試験に供した円筒形固化体を25mm以下に破砕しロサンゼルスすりへり試験、及び80℃水浸膨張試験に供した。更に、25mm以下に破砕した水和固化体を屋外に11か月間放置した後(型枠内流し込みから1年後)、再度フッ素と6価クロムの溶出量を環境庁告示第46号試験により測定した。その結果を表3に合わせて示す。
【0030】
【表3】


【0031】
表3に示すように、フッ素の溶出値は廃石膏をA群配合100重量部に対して外掛けで2〜10重量部添加することで、フッ素の溶出量を長期間安定的に土壌環境基準0.8mg/リットル以下に保持できることが確認できた。また、6価クロムの溶出量は、廃石膏の有無にかかわらず検出限界値0.02mg/リットル未満であり、6価クロムの溶出量を長期間安定的に土壌環境基準0.05mg/リットル以下に保持できることが確認できた。更に、一軸圧縮強度は11〜13N/mm2、ロサンゼルスすりへり試験は35〜40%、及び80℃水浸膨張比は0.06〜0.08%となり、路盤材あるいは埋め戻し材として十分に使用可能であることが確認できた。
【0032】
(実施例2)
環境庁告示第46号試験に従い計測したフッ素と6価クロムの溶出量がそれぞれ表4に記載される値となる普通鋼転炉スラグ、ステンレス鋼転炉スラグ、ステンレス鋼造塊スラグ、及びステンレス鋼雑スラグを熱水浸漬槽11に投入し、スラグ残熱で80〜90℃の熱水を製造すると共に6時間浸漬した。
【0033】
【表4】


【0034】
次いで、熱水浸漬エージング処理後に実施例1と同様に分級処理した普通鋼転炉スラグ、ステンレス鋼転炉スラグ、ステンレス鋼造塊スラグ、及びステンレス鋼雑スラグに、表4に記載されたフライアッシュ、高炉水砕スラグ、消石灰、及び混練水として淡水を添加して表2に記載されたB群配合を調製した。そして、B群配合100重量部に対して表2に記載された廃石膏(石膏ボード破砕品と脱硫石膏各50重量部の混合物)を外掛けで2〜10重量部加え2軸混練機により1分間混練した。得られた混練物を直径100mm、高さ200mmの有底円筒型枠内に流し込み、20℃に調整した恒温室内に装入し28日間養生し固化体を製造した。なお、比較例として、B群配合のみで混練物を調製し、実施例2と同様の方法で固化体を製造した。
【0035】
恒温室内における養生が終了した後に固化体を型枠から取り出し、環境庁告示第46号試験によりフッ素と6価クロムの溶出量を測定した。その結果を表5に示す。また、一軸圧縮試験を実施すると共に、一軸圧縮試験に供した水和固化体を25mm以下に破砕しロサンゼルスすりへり試験、及び80℃水浸膨張試験に供した。更に、25mm以下に破砕した水和固化体を屋外に11か月間放置した後(型枠内流し込みから1年後)、再度フッ素と6価クロムの溶出量を環境庁告示第46号試験により測定した。その結果を表5に合わせて示す。
【0036】
【表5】


【0037】
表5に示すように、フッ素の溶出値は廃石膏をB群配合中の固体物質100重量部に対して外掛けで2〜10重量部添加することで、フッ素の溶出量を長期間安定的に土壌環境基準0.8mg/リットル以下に保持できることが確認できた。また、6価クロムの溶出量は、廃石膏の有無にかかわらず検出限界値0.02mg/リットル未満であり、6価クロムの溶出量を長期間安定的に土壌環境基準0.05mg/リットル以下に保持できることが確認できた。更に、一軸圧縮強度は12〜15N/mm2、ロサンゼルスすりへり試験は32〜36%、及び80℃水浸膨張比は0.05〜0.07%となり、路盤材あるいは埋め戻し材として十分に使用可能であることが確認できた。
【0038】
また、表3、表5より、廃石膏の添加量が6重量部までの範囲では、廃石膏の添加量に応じて固化体からのフッ素溶出値を低減できるが、廃石膏を10重量部添加すると、固化体からのフッ素溶出値は増加することが判った。これは、廃石膏中に含まれるフッ素が溶出するためと解される。従って、廃石膏を10重量部を超えて添加すると、廃石膏中に含まれるフッ素の溶出が顕著となって、フッ素溶出値は更に増加することが考えられる。このため、廃石膏添加量の上限は、10重量部とした。一方、廃石膏の添加量が2重量部未満の条件ではフッ素溶出値が土壌環境基準を満足できないため、廃石膏添加量の下限は、2重量部程度とするのがよい。
【0039】
(実施例3)
固化体強度に及ぼす廃石膏添加の影響を調査するため、A群配合において淡水の代りに海水を使用してC群配合を調製し、調製したC群配合100重量部に対して廃石膏を外掛けで3、6、9、10、11、及び12重量部それぞれ加えて混練物を調製し、各混練物を直径100mm、高さ200mmの有底円筒型枠内に流し込み20℃恒温室にて28日間養生した。そして、養生完了後離型して得られた固化体の一軸圧縮強度を求めた。また、比較例として、C群配合物のみで実施例3と同様の方法で固化体を作製し、その一軸圧縮強度を求めた。図2に、廃石膏添加量と固化物の一軸圧縮強度の関係を示す。なお、図2では、各固化体の一軸圧縮強度を、比較例の固化体の一軸圧縮強度を1として正規化して示している。
図2に示されるように、廃石膏添加率の増加と共に固化体内でエトリンガイト等の鉱物組織が形成され易くなるため強度の増加がみられる。しかし、廃石膏自体の強度は低いため、廃石膏の添加量が多くなり過ぎると固化体の強度は低下する。図2から、廃石膏添加率は、C群配合の総量100重量部に対して2重量部以上で10重量部以下の範囲が望ましいことが判る。
【0040】
(実施例4)
固化体強度に及ぼす混練水の種類の影響を調査するため、A群配合及びC群配合をそれぞれ調製し、各配合を直径100mm、高さ200mmの有底円筒型枠内に流し込んで28日養生して固化体を作製した。また、A群配合及びC群配合それぞれ100重量部に対して廃石膏を外掛けで3重量部加えて混練物を調製し、各混練物を直径100mm、高さ200mmの有底円筒型枠内に流し込み20℃恒温室にて28日間養生して固化体を作製した。そして、得られた各固化体の一軸圧縮強度を求めた。その結果を、図3に示す。なお、図3では、各固化体の一軸圧縮強度を、A群配合のみで作製した固化体(廃石膏無添加)の一軸圧縮強度を1として正規化して示している。
図3から、混練水に海水を使用することで、海水中の塩素イオンがフライアッシュ及び高炉水砕スラグの潜在水硬性を刺激するため、一軸圧縮強度の向上が図れることが確認できた。更に、この強度向上効果は、廃石膏添加でより大きく発現することも確認できた。
【0041】
(実施例5)
固化体強度に及ぼす石膏の種類の影響を調査した。使用した石膏は、微粉状の試薬二水石膏(CaSO4・2H2O、以下試薬石膏という)、石膏ボードを破砕し紙を除去した5mm未満の粒径の廃石膏(以下、廃石膏Aという)、排煙脱硫設備で生成された粒径が5mm未満の脱硫石膏(以下、廃石膏Bという)の3種類である。
表1に記載された普通鋼転炉スラグ、ステンレス鋼転炉スラグ、ステンレス鋼造塊スラグ、及びステンレス鋼雑スラグをそれぞれ熱水浸漬エージング処理(熱水及びスラグ温度を約80℃にして6時間浸漬静置)して、表1に記載されたフライアッシュ、高炉水砕スラグ、消石灰、及び混練水として海水を添加して表6に記載されたC群配合を調製した。
【0042】
【表6】


【0043】
次いで、C群配合100重量部に対して試薬石膏、廃石膏A、廃石膏Bをそれぞれ外掛けで3重量部加えて2軸混練機により1分間混練して混練物を調製した。得られた各混練物を、直径100mm、高さ200mmの有底円筒型枠内に流し込み20℃恒温室にて28日間養生して固化体を作製した。そして、得られた各固化体の一軸圧縮強度を求めた。その結果を、図4に示す。なお、比較例として、C群配合のみで混練物を調製し、実施例5と同様の方法で固化体を製造し、固化体の一軸圧縮強度を求めた。その結果を、図4に合わせて示す。
図4から、試薬石膏を使用してもエトリンガイト等の水和鉱物組織の形成が促進されるため、強度改善効果が認められるが、廃石膏A、廃石膏Bを使用した方がより強度改善効果が優れることが判った。廃石膏Aには、石膏ボードの強度向上用に練り込まれた繊維分や、石膏ボードの破砕時に混入した紙の繊維分が2〜6重量部含有されるため、廃石膏Aを加えることで、これらの繊維分が固化体の強度改善に寄与していると考えられる。また、廃石膏Bにはウイスカー状の二水石膏結晶が大量に存在し、ウイスカー状の二水石膏結晶が廃石膏Aの繊維分と同様の作用で固化体の強度改善に寄与していると考えられる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の副生物の処理方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、普通鋼転炉スラグ、ステンレス鋼転炉スラグ、ステンレス鋼造塊スラグ、及びステンレス鋼雑スラグはそれぞれ熱水浸漬エージング処理してから使用したが、普通鋼転炉スラグ、ステンレス鋼転炉スラグ、ステンレス鋼造塊スラグ、及びステンレス鋼雑スラグを所定重量ずつ配合したものを一括して熱水浸漬エージング処理するようにしてもよい。また、混練水として、海水又は淡水使用したが、淡水に塩化物(例えば、塩化ナトリウム)を加えて調製した塩化物溶解水を混練水として使用することもできる。前記実施の形態において、第1の副生物は、クロムを含有するフライアッシュ、フッ素含有スラグ、及びクロム含有スラグを有していたが、これらのいずれか2を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態に係る副生物の処理方法の工程説明図である。
【図2】実施例3における廃石膏添加率と固化体の一軸圧縮強度の関係を示すグラフである。
【図3】実施例4における混練水の種類と固化体の一軸圧縮強度の関係を示すグラフである。
【図4】実施例5における石膏の種類と固化体の一軸圧縮強度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
10:副生物の処理設備、11:熱水浸漬槽、12:混練装置
【出願人】 【識別番号】000203977
【氏名又は名称】太平工業株式会社
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成18年7月27日(2006.7.27)
【代理人】 【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男

【識別番号】100139262
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 和昭


【公開番号】 特開2008−29937(P2008−29937A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−205021(P2006−205021)