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【発明の名称】 有機性廃棄物の利用方法
【発明者】 【氏名】鈴木 貴彦

【氏名】齋藤 紳一郎

【要約】 【課題】廃プラスチック等の有機性廃棄物を利用してセメント焼成装置から排出される窒素酸化物の量を効率よく低減する。

【構成】有機性廃棄物を、熱分解炉11、超臨界水処理装置21又は亜臨界水処理装置等でガス化して還元性ガスを生成し、還元性ガスをセメント焼成装置18に投入して窒素酸化物の還元剤として利用する。ガス化して得られた還元性ガスを還元剤として利用するため、還元性ガスと窒素酸化物との反応速度が上昇し、脱硝効率が向上する。還元性ガスは、セメントキルンの原料入口端から仮焼炉までのプレヒータにおける燃焼ガス流路、仮焼炉本体、又は、仮焼炉から2段上のサイクロンまでの燃焼ガス流路に投入する。ガス化で生成される残渣をセメント原料として用いることができる。還元性ガスの一部を窒素酸化物の還元以外の目的で分離して利用してもよく、他の可燃物とともに利用してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物をガス化して還元性ガスを生成し、
該還元性ガスをセメント焼成装置に投入して窒素酸化物の還元剤として利用することを特徴とする有機性廃棄物の利用方法。
【請求項2】
前記有機性廃棄物のガス化を、熱分解炉、超臨界水処理装置又は亜臨界水処理装置を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の有機性廃棄物の利用方法。
【請求項3】
前記有機性廃棄物のガス化に伴って生成される残渣を、セメント原料として利用することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機性廃棄物の利用方法。
【請求項4】
前記有機性廃棄物のガス化によって生成されたガスを、セメントキルンの原料入口端から仮焼炉までのプレヒータにおける燃焼ガス流路、仮焼炉本体、又は、仮焼炉から2段上のサイクロンまでの燃焼ガス流路に投入することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の有機性廃棄物の利用方法。
【請求項5】
前記有機性廃棄物のガス化によって生成されたガスのうち、少なくとも一種類の還元性ガスを分離して利用することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機性廃棄物の利用方法。
【請求項6】
前記有機性廃棄物のガス化によって生成されたガスを、他の可燃物とともに利用することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の有機性廃棄物の利用方法。
【請求項7】
有機性廃棄物をガス化して還元性ガスを生成するガス化装置と、
該ガス化装置によって生成された還元性ガスをセメント焼成装置に投入する投入装置とを備えることを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。
【請求項8】
前記ガス化装置は、熱分解炉、超臨界水処理装置又は亜臨界水処理装置であることを特徴とする請求項7に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物の利用方法に関し、特に、廃プラスチック等の有機性廃棄物を利用してセメント焼成装置から排出される窒素酸化物の量を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントキルンの排ガスには、焼成帯の高温域に起因する窒素酸化物(以下「NOx」という)が含まれ、このNOxの濃度が高い場合には、尿素やアンモニア等の脱硝剤を投入したり、仮焼炉における燃焼による還元作用によってNOx濃度を低減している。しかしながら、環境への関心の高まりや、NOx規制の導入等により、より効率よくNOxを低減する技術が望まれている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、プラスチック等の廃棄合成樹脂類を、含塩素高分子樹脂による問題を生じさせることなく炉の燃料や鉄源の還元剤として大量処理する方法として、合成樹脂類を加熱して脱塩素処理する工程を有することを基本的な特徴とし、合成樹脂類を破砕し、合成樹脂類を加熱して脱塩素処理し、合成樹脂類を冷却しつつ、又は冷却後に粒状に粉砕し、気送供給に適した粒度に篩分けし、小粒径の粒状合成樹脂材を燃料、鉄源の還元剤等として炉に気送供給して炉内に吹き込む技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、NOxを含む排気ガスに可燃性廃棄物を投入し、排気ガスと酸化熱分解反応を起こさせて水素化窒素を生成し、この水素化窒素とNOxを選択的に還元反応させることにより、排気ガス中のNOxを低減する方法が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、窒素分と塩素分とを含む廃棄物、燃料等をガス化炉で部分燃焼させ、NH3及びHCNの少なくともいずれかを含む可燃性ガスとした後、この可燃性ガスの一部を完全燃焼炉で完全燃焼させるとともに、完全燃焼域の出口の近傍に前記部分燃焼によって得られたNH3及び/又はHCNを含む可燃性ガスの残部を供給し、燃焼排ガス中のNOxの還元及びダイオキシンの生成の抑制を行う燃焼排ガスのNOxの低減方法等が提案されている。
【特許文献1】特開平10−110931号公報
【特許文献2】特開2004−298707号公報
【特許文献3】特開平11−76752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2に記載のNOxの低減方法では、NOxを含む排気ガスに直接固体又は液体の可燃性廃棄物を投入して排気ガスと酸化熱分解反応を起こさせるため、この反応にある程度の時間を要し、脱硝効率の面で改善の余地があった。
【0007】
また、特許文献3に記載のNOxの低減方法等では、燃焼排ガス中のNOxの還元及びダイオキシンの生成の抑制を行うにあたって、NH3及びHCNの少なくともいずれかを含む可燃性ガスを完全燃焼域の出口の近傍に供給する必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来のNOxの低減方法等における問題点に鑑みてなされたものであって、廃プラスチック等の有機性廃棄物を利用してセメント焼成装置から排出される窒素酸化物の量を効率よく低減することのできる有機性廃棄物の利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、有機性廃棄物の利用方法であって、有機性廃棄物をガス化して還元性ガスを生成し、該還元性ガスをセメント焼成装置に投入して窒素酸化物の還元剤として利用することを特徴とする。尚、有機性廃棄物には、有機性のリサイクル資源も含むものとする。
【0010】
そして、本発明によれば、有機性廃棄物のガス化によって得られた還元性ガスをセメント焼成装置に投入し、窒素酸化物の還元剤として利用するため、尿素やアンモニア等の脱硝剤を用いることなく、省エネルギーの観点から廃プラスチック等の有機性廃棄物を利用しながら、還元性ガスと窒素酸化物との反応を迅速に行い、脱硝効率を向上させることができる。
【0011】
前記有機性廃棄物の利用方法において、前記有機性廃棄物のガス化を、熱分解炉、超臨界水処理装置又は亜臨界水処理装置を用いて行うことができる。
【0012】
また、前記有機性廃棄物の利用方法において、前記有機性廃棄物のガス化に伴って生成される残渣を、セメント原料として利用することができる。これによって、有機性廃棄物全体をセメント製造設備において有効利用することができる。
【0013】
さらに、前記有機性廃棄物の利用方法において、前記有機性廃棄物のガス化によって生成されたガスを、セメントキルンの原料入口端から仮焼炉までのプレヒータにおける燃焼ガス流路、仮焼炉本体、又は、仮焼炉から2段上のサイクロンまでの燃焼ガス流路に投入することができる。
【0014】
前記有機性廃棄物の利用方法において、前記有機性廃棄物のガス化によって生成されたガスのうち、少なくとも一種類の還元性ガスを分離して利用してもよく、前記有機性廃棄物のガス化によって生成されたガスを、他の可燃物とともに利用してもよい。
【0015】
また、本発明は、有機性廃棄物の処理装置であって、有機性廃棄物をガス化して還元性ガスを生成するガス化装置と、該ガス化装置によって生成された還元性ガスをセメント焼成装置に投入する投入装置とを備えることを特徴とする。
【0016】
そして、本発明によれば、ガス化装置で有機性廃棄物をガス化して還元性ガスを生成し、投入装置によってこの還元性ガスをセメント焼成装置に投入することにより、還元性ガスを窒素酸化物の還元剤として利用することができるため、尿素やアンモニア等の脱硝剤を用いることなく、省エネルギーの観点から廃プラスチック等の有機性廃棄物を利用しながら、脱硝効率を向上させることができる。
【0017】
前記有機性廃棄物の処理装置において、前記ガス化装置を、熱分解炉、超臨界水処理装置又は亜臨界水処理装置とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、省エネルギーの観点から廃プラスチック等の有機性廃棄物を利用し、セメント焼成装置から排出される窒素酸化物の量を効率よく低減することなどが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
本発明は、上述のように、有機性廃棄物をガス化して還元性ガスを生成し、この還元性ガスをセメント焼成装置に投入して窒素酸化物の還元剤として利用することを特徴とする。
【0021】
ここで、有機性廃棄物として、廃プラスチック、木屑、廃タイヤ、汚泥等を用いることができる。そして、これらの有機性廃棄物をガス化することによって、水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素等のガスを含む還元性ガスを得て、セメント焼成装置に投入して窒素酸化物の還元剤として利用する。
【0022】
次に、本発明にかかる有機性廃棄物の処理装置において、廃プラスチック、木屑等の有機性廃棄物をガス化して還元性ガスを得るにあたり、熱分解炉を用いる場合を例にとって、図1を参照しながら説明する。
【0023】
この熱分解炉11は、大別して、有機性廃棄物を加熱分解して混合ガスを生成させる加熱分解ガス化炉12と、加熱分解ガス化炉12において熱分解したガスの一部を燃焼するための改質炉13と、熱分解したガスの大部分を除去して改質ガスを生成するためのガス冷却塔14と、改質ガスから硫化水素を除去するための吸着塔16等で構成される。
【0024】
次に、上記構成を有する熱分解炉11の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0025】
加熱分解ガス化炉12に供給された有機性廃棄物は、炉底から供給された水蒸気及び酸素又は酸素富化空気とともに加熱され、分解して熱分解ガスが生成される。尚、加熱分解ガス化炉12から排出された灰分は、セメント原料として利用することもできる。
【0026】
加熱分解ガス化炉12の炉頂部より取り出された熱分解ガスは、酸素又は酸素富化空気とともに改質炉13に導入され、タール及び熱分解ガスの一部が燃焼する。尚、炉内温度は、900℃〜1000℃に維持され、燃え残ったタールは、無触媒水蒸気改質反応により、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気を主成分とする無機ガスに変換される。改質ガス中のメタン以上の炭化水素の濃度は3〜5%である。
【0027】
改質炉13から排出された改質ガスは、ガス冷却塔14での水の噴霧によって150℃以下まで急冷され、さらに凝縮等で50℃以下まで冷却されて水蒸気の大部分が除去される。尚、有機性廃棄物に塩素が含まれており、塩素分を除去又は中和する必要がある場合には、ガス凝縮塔15のスプレー水に苛性ソーダを加えて噴霧し、改質ガス中の塩化水素を中和する。また、有機性廃棄物に硫黄成分が含まれ、硫黄成分を除去する必要がある場合には、次の吸着塔16で改質ガスより硫黄成分を除去する。
【0028】
吸着塔16より排出された水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素を含む還元性ガスは、誘引ファン17及び図示しない投入装置を介してセメント焼成装置18に投入され、NOxの還元剤として利用される。尚、還元剤としての還元性ガスは、セメント焼成装置18のセメントキルンの原料入口端から仮焼炉までのプレヒータにおける燃焼ガス流路、仮焼炉本体、又は、仮焼炉から2段上のサイクロンまでの燃焼ガス流路に投入する。
【0029】
次に、本発明にかかる有機性廃棄物の処理装置において、有機性廃棄物をガス化して還元性ガスを得るにあたり、超臨界水ガス化炉を用いる場合を例にとって、図2を参照しながら説明する。
【0030】
この超臨界水ガス化炉21は、大別して、有機性廃棄物を分解・ガス化する超臨界水ガス化槽22と、超臨界水ガス化槽22に高圧水を供給する高圧ポンプ23と、超臨界水ガス化水槽22で生成された混合ガスを分離するためのガス分離塔24とで構成される。
【0031】
次に、上記構成を有する超臨界水ガス化炉21の動作について、図2を参照しながら説明する。
【0032】
超臨界水ガス化槽22の内部を超臨界状態を達成する高温、高圧条件に維持し、この超臨界水ガス化槽22に、有機性廃棄物と、高圧ポンプ23を介して高圧水と、触媒とを供給し、適切な反応時間、分解・ガス化することにより、水素を主成分とし、その他にメタン、二酸化炭素を含む混合ガスが生成される。尚、超臨界水ガス化槽22から排出された灰分は、セメント原料として利用することもできる。
【0033】
次に、超臨界水ガス化槽22から排出された混合ガスを、ガス分離塔24に導入し、PSA(pressure swing adsorption)等で分解して水素、メタン等に分離し、図示しない投入装置を介してセメント焼成装置25に投入してNOxの還元剤として利用する。尚、有機性廃棄物のガス化に用いた水と、反応中に生成した水は、超臨界水ガス化槽22に戻して繰り返し使用することができる。
【0034】
また、上記超臨界水ガス化炉21に代えて、超臨界水よりも僅かに温度と圧力の低い亜臨界状態の亜臨界水を使用する亜臨界水ガス化炉を用いることもできる。
【0035】
尚、上記実施の形態において、有機性廃棄物のガス化によって生成された水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素を含む還元性ガスの一部をセメント焼成装置におけるNOxの還元剤以外の用途に使用してもよい。また、有機性廃棄物のガス化によって生成された水素等を、微粉炭や廃油、廃溶剤等の他の可燃物とともに利用してもよい。
【0036】
次に、本発明にかかる有機性廃棄物の利用方法の実験例について説明する。
【0037】
表1は、有機性廃棄物としての木屑チップを800℃で熱分解し、発生したガスの組成を示す。同表より、NOxの還元ガスとなるCO、H2が生成されていることが判る。
【0038】
【表1】


【0039】
次に、CO及びH2の脱硝能力を確認するため、実験炉においてセメントを焼成し、窯尻部から2段サイクロン出口部(1100〜700℃)までの間に、NOに対するモル比を1〜5倍とした量の還元性ガス(CO、H2)を添加して脱硝率を測定した。
【0040】
【表2】


【0041】
同表より、CO及びH2ともにNOに対するモル比が大きくなるに従って脱硝率が高くなることが判る。特に、仮焼炉から窯尻部を想定した800〜100℃の温度域において脱硝率が高い。
【0042】
次に、NH3の脱硝能力を確認するため、セメントキルンの窯尻部から2段サイクロン出口部(1070〜780℃)までの区間に、NOに対するモル比を0.8〜2.8倍とした量の還元性ガス(NH3)を実際に添加して脱硝率を測定した。尚、この試験は、アンモニア臭を含む下水汚泥をガス化した場合のNH3による脱硝を想定したものである。この試験結果を表3に示す。
【0043】
【表3】


【0044】
同表より、NOに対するNH3のモル比が大きくなるに従って脱硝率が高くなり、特に、仮焼後から窯尻部において脱硝率が高くなっていることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明にかかる有機性廃棄物の処理装置において熱分解炉を使用した場合のフローチャートである。
【図2】本発明にかかる有機性廃棄物の処理装置において超臨界水ガス化炉を使用した場合のフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
11 熱分解炉
12 加熱分解ガス化炉
13 改質炉
14 ガス冷却塔
15 ガス凝縮塔
16 吸着塔
17 誘引ファン
18 セメント焼成装置
21 超臨界水ガス化炉
22 超臨界水ガス化槽
23 高圧ポンプ
24 ガス分離塔
25 セメント焼成装置
【出願人】 【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
【出願日】 平成18年7月14日(2006.7.14)
【代理人】 【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤


【公開番号】 特開2008−18371(P2008−18371A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−193726(P2006−193726)