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【発明の名称】 動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法
【発明者】 【氏名】篠原 亮太

【要約】 【課題】動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法を提供する。

【構成】動物の組織、または臓器をスラリー化した後、キレート剤を加え、更に常温で液体の高級脂肪酸エステルと強制混合することからなる動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)動物の組織、または臓器をスラリー化する工程、
(2)スラリー化された組織、または臓器にキレート剤を加え、強制混合する工程。
(3)該強制混合物に、更に常温で液体の高級脂肪酸エステルを混合する工程、
(4)高級脂肪酸エステル層と強制混合物を含む水層とを分離する工程
を含む動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法。
【請求項2】
動物が、魚介類であることを特徴とする請求項1に記載の動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法。
【請求項3】
魚介類が、ホタテ貝またはイカであることを特徴とする請求項2に記載の動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法。
【請求項4】
組織、または臓器がホタテ貝ウロ、またはイカゴロであることを特徴とする請求項3に記載の動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法。
【請求項5】
重金属が、カドミウムであることを特徴とする請求項1〜4に記載の動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法。
【請求項6】
キレート剤が、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜5に記載の動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法。
【請求項7】
キレート剤を混合する前に、動物の組織、または臓器のスラリーのpHを8〜10に調整する工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜6に記載の動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法。
【請求項8】
高級脂肪酸エステル層と強制混合物を含む水層とを分離する方法が遠心分離方法であることを特徴とする請求項1〜7に記載の動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法。
【請求項9】
高級脂肪酸エステルが、食用油であることを特徴とする請求項1〜8に記載の動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法。
【請求項10】
分離した高級脂肪酸エステル層に無機酸水溶液を添加した後に濾過して、高級脂肪酸エステルから重金属を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1〜9に記載の動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の組織、または臓器、特に魚介類の内臓から重金属を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古来人類は、様々な動物を、そのまま、あるいは加工して食していた。食用に供するには、必要な部位を取り出し、その残りの部分、残渣は不要であるので、焼却処分とするか、埋め立てるか、一部が海洋投棄されていた。最近は、地球環境の問題からこれらの残渣の再利用が検討されている。
【0003】
しかし、一部の動物では、食物連鎖等により重金属を胃、腸、肝臓等の内臓に蓄積する傾向がある。例えば、貝類、中でもホタテ貝は主に貝柱が食用となるが、貝柱等の有用部分を除去した内臓部分を主成分とした残渣、別名ウロは、重金属、特にカドミウムを大量に含有している。このウロは、我国において、年間3〜4万Tも発生するが、その有効利用は進んでいない。イカの内臓、特に肝臓においても同様の問題がある。
【0004】
以上の理由でウロは、埋土中への埋め立て処理がされていたが、ウロは水分含量が高く、腐敗・劣化しやすい。従って、ウロの埋め立ては、悪臭や地下水汚染を引き起こすという問題があった。そこで、最近は埋め立て処理に代わって、焼却処理が行われているが、現在行われている焼却処理では、ダイオキシンの発生、焼却時の臭い、カドミウムを含んだ飛灰の飛散の問題がある。
【0005】
そこで、ウロからカドミウムを除去する技術が検討されている。例えば、特許文献1には、硫酸溶液や塩酸溶液等の電解液にホタテ貝のウロを浸漬し、溶出液から電気分解によりカドミニウムを析出させる技術が開示されている。この方法は、大規模な装置を必要とし、しかも電解液中のカドミウムの濃度が低いため、所要エネルギーに対する効率が極めて低いという欠点がある。
【0006】
特許文献2には、魚介類の内臓を希硫酸に浸漬してから撹拌し、液中に重金属を溶出させた後に、溶出液をカチオン交換樹脂に接触させて重金属を除去する方法が開示されている。この方法も特許文献1の方法と同様に効率が低く実用的ではない。
【0007】
特許文献1、2はいずれも酸により重金属を可溶化させるため、無機酸水溶液を用いる。このため、これらの技術においては、酸性度が高く、かつ蛋白質が一部加水分解されCODやBODの高い廃水が副産物として生成され、廃水処理にコストがかさむという問題点がある。
【0008】
このような酸を用いないで重金属を除去する方法もいくつか提案されている。例えば、特許文献3には、魚介類の内臓をホモジナイズするか、蛋白質分解酵素で処理してアミノ酸化し、限外濾過を行う方法が開示されている。しかしながら、当該技術で用いる限外濾過膜は高価であり、重金属の抽出効率は低い水準にある。また、アミノ酸化した場合、副産物としてCODが高い廃液が生成され、その処理が必要であるという問題点がある。
【0009】
特許文献4には、ホタテ貝のウロに特殊薬剤を添加して有害物質を無害化する技術が開示されている。しかし、この技術でもウロは最終的には埋め立て処理するのであり、悪臭や地下水汚染の問題は根本的には解決されてはいない。
【0010】
特許文献5には、魚介類タンパク質にプロテアーゼを作用させて魚介類タンパク質をアミノ酸液まで分解し、次いで該アミノ酸液にキレート剤を添加して作用させ、魚介類アミノ酸に含まれる重金属類を吸着させる技術が開示されている。本技術は、工程が複雑で、長時間を要し、かつ生成されるアミノ酸を含む液をどう取り扱うのか、実施例でキレート剤の溶媒として使用されているMIBK、およびキレート剤をどう処理するのかという問題が残されている。
【0011】
【特許文献1】特開平8−99001
【特許文献2】特開平9−217131
【特許文献3】特開平7−16081
【特許文献4】特開平10−151438
【特許文献5】特開平6−106155
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記公知技術の問題点の解消された動物の組織、臓器から迅速に重金属を除去する方法を提供することを目的としている。本発明の目的は、動物の組織、臓器から新たな産業廃棄物を発生させることなしに重金属を除去する方法を提供することにある。本発明の他の目的は、特別の装置を用いないで動物の組織、臓器から重金属を除去する方法を提供することにある。本発明の他の目的は、工程で食品有害物を使用せず、食品安全性があり、処理物が飼料等に再利用可能な動物の組織、臓器から重金属を除去する方法を提供することにある。本発明の他の目的は、動物の組織、臓器から重金属を迅速に除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、
(1)動物の組織、または臓器をスラリー化する工程、
(2)スラリー化された組織、または臓器にキレート剤を加え、強制混合する工程。
(3)強制混合物に、更に常温で液体の高級脂肪酸エステルを混合する工程、
(4)高級脂肪酸エステル層と強制混合物を含む水層とを分離する工程
を含む動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法
である。
【0014】
動物は、魚介類であることが好ましい。更に、魚介類が、ホタテ貝またはイカであることが好ましい。
【0015】
組織、または臓器がホタテ貝ウロ、またはイカゴロであることが好ましい。重金属は、カドミウムであることが好ましい。
【0016】
キレート剤は、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムであることが好ましい。
【0017】
本発明の方法では、キレート剤を混合する前に、動物の組織、または臓器のスラリーのpHを8〜10に調整する工程を更に含んでいることが好ましい。
【0018】
高級脂肪酸エステル層と強制混合物を含む水層とを分離する方法は、遠心分離方法であることが好ましい。
【0019】
高級脂肪酸エステルは、食物油であることが好ましい。
【0020】
本発明の除去方法では、更に分離した高級脂肪酸エステル層に無機酸水溶液を添加した後に濾過して、高級脂肪酸エステルから重金属を除去する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の方法においては、組織、臓器から迅速に重金属を除去することができる。本発明の方法によれば、排水の発生が極めて少ないため、排水処理、その工程で発生する汚泥処理のコストが抑えられる。また、重金属の抽出に石油を原料とした溶媒でなく、植物を原料とした溶媒を用いるため、重金属を除去した組織、臓器から得られる蛋白質を家畜の飼料や、魚の餌として安全に使用することができる。本発明で重金属の抽出に用いた高級脂肪酸エステルは、再生可能であるため、廃棄物をほとんど発生させることなしに重金属を除去することができる。本発明ではまた、特別の装置を用いないで動物の組織、臓器から重金属を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明について詳しく説明する。本発明における動物とは、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類等の動物で、食用に供され得るものである。本発明では、特に重金属の蓄積が問題となっているホタテ貝、イカ、ズワイ蟹、アワビ、ケガニ、サザエ、アカニシ等の魚介類、中でも処理物が大量に発生し、蓄積重金属濃度の高いホタテ貝、イカを対象とする。
【0023】
本発明における臓器とは、脳、心臓、肺、胃、腸、膵臓、腎臓、脾臓、肝臓、膀胱、卵巣、精巣等をいう。本発明は、好ましくは、重金属が蓄積されやすい胃、腸、及び肝臓等の内臓、ホタテ貝にあってはウロを、イカにあっては肝臓(ゴロ)を対象とする。また本発明における組織とは、これらの臓器の一部をいう。臓器、および組織は、大部分が蛋白質で形成されている。
【0024】
本発明における重金属とは、動物細胞にとって有害な重金属で、例えば、カドミニウム、クロム、マンガン、水銀、亜鉛および鉛等をいう。本発明の方法は、特にカドミニウムに対して有効である。
【0025】
本発明におけるキレート剤とは、アミノカルボン酸塩の総称で、具体的には、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、1,3-プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA),ジヒドロキシエチルエチレンジアミンニ酢酸(DHEDDA)、CGEDTA,トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸(ASDA)、アミノトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ヒドロキシエタンホスホン酸(HEDP)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(DDTC)、ジエチルジチオカルバミン酸カリウム、ジブチルジチオカルバミン酸カルシウム等を挙げることができる。これらのうちでは、重金属との親和性の高いジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムが最も好ましい。
【0026】
本発明における高級脂肪酸とは、炭素数が12〜18の脂肪酸で、例えば、ラウリル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸等の1価の不飽和脂肪酸、リノール酸、リノレイン酸等の多価不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物等を挙げることができる。
【0027】
本発明における高級脂肪酸エステルとは、上記高級脂肪酸とアルコール、グリコール、3価以上の多価アルコール等とのエステルであって、常温で液体のものである。このようなアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等を挙げることができる。グリコールとしては、エチレングリコール、n−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールを挙げることができる。また、3価以上の多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンおよびグリセリンを挙げることができる。これらの中では、自然界に多く存在し安価であるグリセリンが好ましい。
【0028】
上記高級脂肪酸エステルの具体的な化合物としては、例えば、グリセリンパルミチン酸エステル、グリセリンステアリン酸エステル、グリセリンリノール酸エステル、グリセリンリノレイン酸エステル等を挙げることができる。グリセリン高級肪酸エステルは、モノ高級脂肪酸エステルでも、ジ高級脂肪酸エステルでもトリ高級脂肪酸エステル、これらの混合物であってもよい。また、グリセリン高級脂肪酸ジエステル、グリセリン高級脂肪酸トリエステルにおける高級脂肪酸は、同一であっても異なっていてもよい。このようなグリセリン高級脂肪酸エステル混合物の代表として、植物油、特に食用油を挙げることができる。
【0029】
植物油としは、例えば、アマニ油、ヒマシ油、桐油、オリーブ油、カカオ油、キャノーラ油、ゴマ油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油、サラダ油、大豆油、ナタネ油、パーム油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ヤシ油、綿実油等をいう。食用油とはこれらのうち食用に供しうる油で、例えば、オリーブ油、カカオ油、キャノーラ油、ゴマ油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油、サラダ油、大豆油、ナタネ油、パーム油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ヤシ油等を挙げることができる。
【0030】
本発明では、使用済みで、廃棄された廃食用油を使用することができるが、抽出に使用する油が酸化劣化していると抽出効果が低下する恐れがあるため、抽出用溶媒として食用油を使用する場合は、未使用の食用油を使用することが好ましい。ただし、廃食用油を用いれば、処理費用が削減できるという利点がある。
【0031】
本発明の方法の、好ましい態様においてpH調整に用いるアルカリとは、水酸化アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等を挙げることができる。
【0032】
次に本発明の方法につき工程を追って説明する。本発明の方法では、好ましくは、予備工程として、原料である動物の組織、または臓器から蛋白質と油脂とからなる成分以外の、固形の異物、例えば、骨、貝殻、砂、土、プラスチック、木等を除去し、清浄化する。この作業は、例えば、市販の異物除去清浄機等を用いて行うことができる。
【0033】
本発明の動物の組織、または臓器から重金属を除去する方法においては、まず動物の組織、または臓器をスラリー化する。ここでスラリーとは、組織、または臓器の細片が液体に混ざって泥状になっている状態をいう。ウロは含水率が高いため、スラリー化が容易であるが、含水率が低い動物の組織、または臓器を細片にし、スラリー化する際は、後の工程での作業性を良くするために、水等を添加してスラリーの粘度を低下させる等の操作を行ってもよい。組織、または臓器のスラリー化は、一般にミンチチョッパー、ミキサー、ミートグラインダー等のミンチ機を用いて行うことができる。
【0034】
本発明の重金属を除去する方法では、好ましくは、上記方法で得たスラリーにアルカリ水溶液を添加して系のpHを7.5から10.0、好ましくは8から10の間に調整する。この際使用するアルカリ水溶液は、pH調整工程で系に混入する水分の量を減らすため、強アルカリ性の水溶液を用いることが好ましい。スラリー全体のpH調整は、例えば、pH試験紙等で確認しながら行うことができる。
【0035】
次に本発明の方法では、上記スラリーにキレート剤水溶液を添加後、強制混合してキレート剤の水溶液をスラリー中に均一に混合する。本発明では、これらのキレート剤は1〜10%程度の水溶液としてスラリーに添加される。キレート剤の配合量は、通常スラリー中に存在すると予想される重金属の含有量の1.5〜50モル当量、好ましく2〜20モル当量程度の量を目安に配合することが好ましい。強制混合は、ミキサー、リボンブレンダー、振盪機等の装置を用いて行うことができる。強制混合は通常30秒間〜1時間、好ましくは3〜10分間程度行うことが望ましい。
【0036】
本発明の重金属を除去する方法においては、次いでスラリー/キレート剤混合物に高級脂肪酸エステル、好ましくは食用油を添加し、更に強制混合する。この強制混合も前工程と同様に、ミキサー、リボンブレンダー、振盪機等の装置を用いて行うことができる。この強制混合工程において要する時間は通常1分間〜2時間、好ましくは5〜20分間程度が望ましい。
【0037】
本発明の重金属を除去する方法においては、スラリーの重量(kg)Aと高級脂肪酸エステルの容量(L)Bとの比は、A/Bが、10/1〜1/10、好ましくは3/1〜1/3の範囲にあることが望ましい。
【0038】
上記スラリー/キレート剤/高級脂肪酸エステル強制混合物は、ついで、好ましくは静置し、キレート化を促進させる。静置時間は通常5分〜10時間、好ましくは10分間〜5時間、特に好ましくは、20分間〜1時間の範囲である。
【0039】
上記工程の後、スラリー/キレート剤/高級脂肪酸エステル混合物を分離機で水層と油層とに分離する。この分離には、通常は遠心分離装置を用いる。遠心分離した場合、油層は上部に、水層は下方に位置する。動物由来の蛋白質は水層側に、カドミウム等の重金属を吸蔵したキレート剤は油層側に移動する。かくして動物由来の蛋白質から重金属を分離することができる。
【0040】
上記方法で得た蛋白質スラリー成分からは金属キレートがほとんど除去されているが、なお、除去率を上げるために、蛋白質スラリー成分に再度未使用高級脂肪酸エステルを添加し、強制混合し、分離する工程を繰り返してスラリーからのキレート剤、および重金属の除去を行うことができる。
【0041】
上記方法で得られた蛋白質スラリーは重金属が除去されており、しかも抽出工程において有害な物質の混入がほとんどないため、豚、犬、魚等の飼料、あるいは発酵させて肥料化する等の用途に、好適に再使用することができる。
【0042】
以上の操作の結果、高級脂肪酸エステル、好ましくは食用油中にはキレート剤、およびそれと反応している重金属が存在している。この高級脂肪酸エステル層に含まれている重金属は、例えば、高級脂肪酸エステルを酸性の水と混合し、振盪することにより水層側に移行させ、高級脂肪酸エステル中から除去することができる。この工程で用いることの出来る酸としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等を挙げることができる。これらの中では硝酸が最も好ましい。
【0043】
本発明の方法において抽出溶媒として用いた高級脂肪酸エステルは、上記の方法で処理することにより重金属がほとんど除去されるため、抽出溶媒として再度使用することができる。また、最後には燃料として使用することができる。
【実施例】
【0044】
次に実施例を挙げて本発明の方法につき更に詳しく説明するが、本発明がこれらの実施例になんら制約されるものではない。なお、本発明の実施例は、下記の原料、装置、および分析方法で行った。
【0045】
(重金属の含有量)
試料に濃硝酸と過塩素酸との混酸を添加した後、ホットプレートで加熱して蛋白質を分解した。固体成分を濾過して除去した後、濾液を濃縮し、次いで蒸留水で希釈した後、偏光ゼーマン原子吸光光度計(Z−5310 日立製作所製)でカドミウムの濃度の分析を行った。
【0046】
(実施例1)
半解凍状態のウロをミキサーにかけてスラリー状にした。スラリー状になったウロ50gに5N水酸化ナトリウム水溶液をpH9になるまで加えた。次ぎに5%DDTC水溶液2mlを加え、5分間振盪機にかけた。振盪後、新鮮な食用調合油(サラダ油)10gを加え、更に10分間振盪機にかけた後、30分間静置した。その後、3000rpmで20分間遠心分離した。分離した油層を回収した。更に上記の新食用調合油を加えてから油層回収までの工程を4回繰り返した。5回抽出操作後、ウロを除去し、処理済ウロ中の重金属の含有量を定量した。結果を表1に示す。
【0047】
(実施例2)
実施例1において、食用油の配合量を10gから20gに変更する以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0048】
(比較例1)
対照品として、処理していないウロについて重金属の含有量を定量した。結果を表1に併記する。
【0049】
(表1)


【0050】
(実施例3)
実施例2において、食用油による抽出操作を5回から1回とする以外は実施例2と同様に行った。結果を表2に示す。
【0051】
(実施例4)
分液ロートに重金属抽出に使用した油80gと0.1N硝酸20mlを入れ、5分間振盪した。静置して分離した0.1N硝酸を濾紙No.5Cを用いて濾過した。もう1度この工程を繰り返した。その後、この使用済み油に蒸留水20mlを加え、5分間振盪し、3000rpmで20分間遠心分離にかけた。分離した油層と水層を分液ロートに戻し、水層部分を除去した。油層に5%炭酸水素ナトリウム水溶液20mlを加え、5分間振盪し、3000rpmで20分間遠心分離にかけた。分離した油層と炭酸水素ナトリウム水溶液を分液ロートに戻し、炭酸水素ナトリウム水溶液層部分を除去した。もう一度蒸留水20mlを加え、5分間振盪し、静置した後水層を除去した。その後、芒硝を適宜加え、振盪し、濾紙No.5Bを用いて濾過し、採取した油を再生油として冷蔵保存した。
【0052】
(実施例5)
実施例3において、重金属抽出に用いる食用油を、新鮮な食用油から実施例4で得た再生油に変更する以外は、実施例3と同様に行った。結果を表2に示す。
【0053】
(表2)


【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の方法は、現在廃棄物処理で問題となっているホタテ貝のウロ、イカのゴロから重金属を除去し、飼料、魚餌として再使用するための方法として特に優れている。本発明の重金属を除去する方法は、ズワイ蟹、アワビ、ケガニ、サザエ、アカニシ等の内臓に含有されている重金属の除去にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の方法の一例の工程を示した図である。
【図2】図2は、本発明の方法の一例において、食用油中の重金属を除去するための工程を示した図である。
【出願人】 【識別番号】801000050
【氏名又は名称】財団法人くまもとテクノ産業財団
【出願日】 平成18年7月3日(2006.7.3)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−12372(P2008−12372A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−183000(P2006−183000)