| 【発明の名称】 |
木質系バイオマスの前処理方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】塚本 晃
【氏名】仲亀 誠司
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| 【要約】 |
【課題】木質系バイオマスを微生物で前処理し、混焼やガス化によるバイオマスエネルギー製造時や硫酸加水分解等による糖化の前処理における木質系バイオマスの粉砕エネルギーを削減することを可能にする木質バイオマスの前処理方法を提供することである。
【構成】リグニン分解能を有する白色腐朽菌を用いた粉砕処理を要する木質バイオマスの前処理方法である。前処理方法においては、前記白色腐朽菌がアラゲカワラタケであり、アラゲカワラタケがセルロース分解酵素活性を抑制したアラゲカワラタケ株であるのが好ましい。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 リグニン分解能を有する白色腐朽菌を用いた粉砕処理を要する木質バイオマスの前処理方法。 【請求項2】 前記白色腐朽菌が、アラゲカワラタケである請求項1記載のバイオマスの前処理方法。 【請求項3】 前記アラゲカワラタケが、セルロース分解酵素活性を抑制したアラゲカワラタケ株である請求項2記載のバイオマスの前処理方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 木質系バイオマスを微生物で前処理し、混焼やガス化によるバイオマスエネルギー製造時や硫酸加水分解等による糖化の前処理における木質系バイオマスの粉砕エネルギーを削減する技術に関する。 【背景技術】 【0002】 間伐材や林地残材または建築廃材などの木質系バイオマス材料を用いて石炭との混焼による火力発電を行い、化石資源である石炭の使用量を削減し、再生可能かつカーボーンニュートラルな資源である木質系バイオマスを有効利用しようとする機運が高まっている。また、同じ試みとしてガス化発電システムやガス化メタノール製造システム、さらにエタノール製造システムにおいても木質系バイオマス資源の利用が期待されている。 しかしながら、これらの技術における課題として木質系バイオマスの前処理技術、すなわち如何に効率よく粉砕するかが大きな課題となっている。 具体的には微粉炭焚きボイラでは、石炭を微粉炭機で微細な粒子にして空気中に浮遊させながら燃焼させる。この時、微粉炭の粒度は、200メッシュ(75μm)通過割合が70〜80%、100メッシュ(150μm)通過割合が90%程度である。このため、微粉炭焚きボイラでバイオマスを混焼するために、バイオマスも細かく粉砕する必要がある(非特許文献1)。 【非特許文献1】新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)バイオマスエネルギー高効率転換技術開発 石炭・木質バイオマス混焼技術の研究開発 平成14年度成果報告書157〜158,(2002) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 しかしながら、通常の火力発電所の石炭焚きボイラで使用される石炭に要する粉砕動力と比較すると、同じ粒度を得るためには10倍以上の動力が必要であることが知られている。例えば、石炭ではローラミルを粉砕機として使用した場合、10〜20kWh/tであるのに対して、木質バイオマスをインパクトミルなどの粉砕機にて粉砕した場合、材による違いはあるが、通常100〜200kWh/tとなる。本発明は、木質バイオマスの粉砕動力を削減することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0004】 上記技術的課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、粉砕処理を行う前に予め木質バイオマスに多量に含まれるフェニルプロパン構造を基本単位とするマトリックス構造の分解に有効なリグニン分解酵素活性を有する微生物で前処理することにより、ミルなどによる粉砕動力を削減できることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0005】 さらに、セルロース分解酵素活性を抑制することにバイオマスの収量減少も抑えることができ、効率的にバイオマスの前処理を行うことが容易になった。 【0006】 すなわち、本発明は、1)リグニン分解能を有する白色腐朽菌を用いた粉砕処理を必要する木質バイオマスの前処理方法を提供する。また、本発明は、2)アラゲカワラタケを用いた木質バイオマスの前処理方法を提供する。さらに、本発明は、3)セルロース分解酵素活性を抑制したアラゲカワラタケを用いた木質バイオマスの前処理方法を提供するものである。 【発明の効果】 【0007】 木質系バイオマスを微生物で前処理し、混焼やガス化によるバイオマスエネルギー製造時や硫酸加水分解等による糖化の前処理における木質系バイオマスの粉砕エネルギーを削減する技術に利用できる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0008】 以下、本発明について詳細に説明する。 先ず、本発明に使用する木質バイオマスとしては、樹木の全部、またはその一部、林地残材、間伐材、もしくは建築廃材など用いることができ、リグニンを1〜30%程度含有するリグノセルロース材料を使用することができる。また、本発明において使用する微生物はリグニン分解能力を有するものであればいずれも用いることができるが、リグニン分解菌としてはアラゲカワラタケ(Trametes hirsuta)、フレビア・トレメローザ(Phlebia tremellosa)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、カイガラタケ(Lenzites betuluna)、比較的リグニン分解能に優れるといわれる従来公知のファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)や選択的リグニン分解菌であるセリポリオプシス・サバーミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)等の白色腐朽菌等を用いることができる。 【0009】 この技術で用いられる菌を含め、生物前処理に用いられるリグニン分解菌の多くは、バイオマスの分解の際に、リグニンと共にセルロース等バイオマスの他の成分も消費してしまうため、結果的にバイオマスの収量を下げてしまうため、さらに好ましくは遺伝子組換え技術を利用し、セルロース分解酵素活性を抑制した白色腐朽菌を用いることが効果的な省エネルギーに繋がり、本発明者らが開発したセルロース分解酵素活性抑制株を用いることも選択肢の一つである(特願2005−297869「薬剤耐性遺伝子の利用」)。 【0010】 本発明では、上記のバイオマスにあらかじめそれぞれの菌に適した条件で増殖せしめた上記リグニン分解白色腐朽菌やセルロース分解酵素活性を抑制したリグニン分解白色腐朽菌を接種し、一定期間バイオマスと共に培養することにより処理を行う。リグニン分解菌の接種と同時あるいはその前後に下記培地を添加すると効果的である。 【0011】 培地は、リグニン分解白色腐朽菌やセルロース分解酵素活性抑制宿主細胞が生育できるのであればいずれの培地をも用いることができるが、例えば、炭素源としては、廃糖蜜やグルコース、セロビオース、非晶性セルロース等の他、パルプ、紙、綿等を使用することができる。また、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、各種アミノ酸、大豆粕、コーンスティープリカー、各種無機窒素などの窒素化合物を用いることができる。さらに、必要に応じて、各種塩類やビタミン、ミネラル等を適宜用いることができる。 【0012】 培養温度及びpHは、リグニン分解白色腐朽菌やセルロース分解酵素活性抑制リグニン分解白色腐朽菌が増殖可能な範囲において適宜設定可能であるが、例えば、培養温度は20〜60℃、好ましくは25〜37℃であり、pHは3〜9、好ましくは4〜6である。また、通気は0.001〜1.0vvm、好ましくは0.05〜0.2vvmである。さらに、菌処理の期間は適宜設定可能であるが、工業利用を考え5〜20日間が好ましい。菌処理後は、バイオマスを直接あるいは乾燥させてからその後の粉砕処理に用いることができる。以上の操作により粉砕エネルギーを削減することができた。 【実施例】 【0013】 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの具体例に限定されない。 【0014】 〔実施例1〕 「白色腐朽菌アラゲカワラタケNBRC4917株で処理した広葉樹木材チップの粉砕処理」 白色腐朽菌アラゲカワラタケNBRC4917株をポテトデキストロース寒天培地上で28℃にて培養した後、4℃で保存した。このプレートから直径5mmのコルクボーラーで打ち抜いた切片を5つずつ、グルコース・ペプトン培地(グルコース3%、ポリペプトン1%、KH2PO40.15%、MgSO40.05%、リン酸でpH5.0に調製)を100mlずつ含む300ml容三角フラスコに植菌し、28℃、100rpmで1週間振盪培養した。培養後、菌体をろ別し、菌体に残存した培地を滅菌水で洗浄した。菌体は滅菌水と共に、ワーリングブレンダーで45秒間粉砕し、絶乾重量1kgの広葉樹ユーカリ・グロブラスチップに対し、菌体の乾燥重量が5mgになるように植菌した。植菌後は菌が全体に行き渡るようによく撹拌した。培養は28℃で通気をしながら2週間静置培養を行った。チップ含水率が40〜65%になるように随時飽和水蒸気を通気させた。通気する際の通気量は対チップ当り、0.01vvmになるように行った。 処理前後のチップ絶乾重量を測定し、以下の式を用いてチップ収率を算出した。 (処理後の絶乾重量)/(処理前の絶乾重量)×100 結果を表1に示した。 菌処理後の木材チップ絶乾重量20gを木粉作成用のラボ用ウイレー型粉砕機(吉田製作所、東京、日本)を用いて粉砕し、同時に使用電力量はワットメーター(Hiokidenki model 3133)と積分計(model 3141)を用いて測定を行った。 結果を表5に示す。 また、得られた木粉を篩い分け機を用いて粒度分布も併せて測定した。 結果を表2に示す。 【0015】 〔実施例2〕 セルロース分解酵素活性を抑制した形質転換株で処理した広葉樹木材チップの粉砕処理 セルロース分解酵素活性抑制リグニン分解菌として、アラゲカワラタケから「薬剤耐性遺伝子の利用」(特願2005−297869)に準拠して作製したカルボキシン耐性セルロース分解酵素活性抑制株を用いた。 上記セルロース分解酵素活性抑制株をポテトデキストロース寒天培地上で28℃にて培養した後、4℃で保存した。このプレートから直径5mmのコルクボーラーで打ち抜いた切片を5つずつ、グルコース・ペプトン培地(グルコース3%、ポリペプトン1%、KH2PO40.15%、MgSO40.05%、リン酸でpH5.0に調製)を100mlずつ含む300ml容三角フラスコに植菌し、28℃、100rpmで1週間振盪培養した。培養後、菌体をろ別し、菌体に残存した培地を滅菌水で洗浄した。菌体は滅菌水と共に、ワーリングブレンダーで45秒間粉砕し、絶乾重量1kgの広葉樹ユーカリ・グロブラスチップに対し、菌体の乾燥重量が5mgになるように植菌した。植菌後は菌が全体に行き渡るようによく撹拌した。培養は28℃で通気をしながら2週間静置培養を行った。チップ含水率が40〜65%になるように随時飽和水蒸気を通気させた。通気する際の通気量は対チップ当り、0.01vvmになるように行った。 処理前後のチップ絶乾重量を測定し、以下の式を用いてチップ収率を算出した。 (処理後の絶乾重量)/(処理前の絶乾重量)×100 結果を表1に示した。 菌処理後の木材チップ絶乾重量20gを木粉作成用のラボ用ウイレー型粉砕機(吉田製作所、東京、日本)を用いて粉砕し、同時に使用電力量はワットメーター(Hiokidenki model 3133)と積分計(model 3141)を用いて測定を行った。 結果を表5に示す。 また、得られた木粉を篩い分け機を用いて粒度分布も併せて測定した。 結果を表2に示す。 【0016】 〔実施例3〕 白色腐朽菌Ceriporiopsis subvermispora CZ−3株(ATCC 96608)で処理した針葉樹木材チップの粉砕処理 白色腐朽菌Ceriporiopsis subvermispora CZ−3株をポテトデキストロース寒天培地上で28℃にて培養した後、4℃で保存した。このプレートから直径5mmのコルクボーラーで打ち抜いた切片を5つずつ、グルコース・ペプトン培地(グルコース3%、ポリペプトン1%、KH2PO40.15%、MgSO40.05%、リン酸でpH5.0に調製)を100mlずつ含む300ml容三角フラスコに植菌し、28℃、100rpmで1週間振盪培養した。培養後、菌体をろ別し、菌体に残存した培地を滅菌水で洗浄した。菌体は滅菌水と共に、ワーリングブレンダーで45秒間粉砕し、絶乾重量1kgの針葉樹カラマツチップに対し、菌体の乾燥重量が5mgになるように植菌した。植菌後は菌が全体に行き渡るようによく撹拌した。培養は28℃で通気をしながら2週間静置培養を行った。チップ含水率が40〜65%になるように随時飽和水蒸気を通気させた。通気する際の通気量は対チップ当り、0.01vvmになるように行った。 処理前後のチップ絶乾重量を測定し、以下の式を用いてチップ収率を算出した。 (処理後の絶乾重量)/(処理前の絶乾重量)×100 結果を表3に示した。 菌処理後の木材チップ絶乾重量20gを木粉作成用のラボ用ウイレー型粉砕機(吉田製作所、東京、日本)を用いて粉砕し、同時に使用電力量はワットメーター(Hiokidenki model 3133)と積分計(model 3141)を用いて測定を行った。 結果を表6に示す。 また、得られた木粉を篩い分け機を用いて粒度分布も併せて測定した。 結果を表4に示す。 【0017】 〔実施例4〕 セルロース分解酵素活性を抑制した形質転換株で処理した針葉樹木材チップの粉砕処理 セルロース分解酵素活性抑制リグニン分解菌として、アラゲカワラタケから「薬剤耐性遺伝子の利用」(特願2005−297869)に準拠して作製したカルボキシン耐性セルロース分解酵素活性抑制株を用いた。 上記セルロース分解酵素活性抑制株をポテトデキストロース寒天培地上で28℃にて培養した後、4℃で保存した。このプレートから直径5mmのコルクボーラーで打ち抜いた切片を5つずつ、グルコース・ペプトン培地(グルコース3%、ポリペプトン1%、KH2PO40.15%、MgSO40.05%、リン酸でpH5.0に調製)を100mlずつ含む300ml容三角フラスコに植菌し、28℃、100rpmで1週間振盪培養した。培養後、菌体をろ別し、菌体に残存した培地を滅菌水で洗浄した。菌体は滅菌水と共に、ワーリングブレンダーで45秒間粉砕し、絶乾重量1kgの針葉樹カラマツチップに対し、菌体の乾燥重量が5mgになるように植菌した。植菌後は菌が全体に行き渡るようによく撹拌した。培養は28℃で通気をしながら2週間静置培養を行った。チップ含水率が40〜65%になるように随時飽和水蒸気を通気させた。通気する際の通気量は対チップ当り、0.01vvmになるように行った。 処理前後のチップ絶乾重量を測定し、以下の式を用いてチップ収率を算出した。 (処理後の絶乾重量)/(処理前の絶乾重量)×100 結果を表3に示した。 菌処理後の木材チップ絶乾重量20gを木粉作成用のラボ用ウイレー型粉砕機(吉田製作所、東京、日本)を用いて粉砕し、同時に使用電力量はワットメーター(Hiokidenki model 3133)と積分計(model 3141)を用いて測定を行った。 結果を表6に示す。 また、得られた木粉を篩い分け機を用いて粒度分布も併せて測定した。 結果を表4に示す。 【0018】 〔比較例1〕 菌処理していないユーカリ・グロブラスチップの粉砕処理 菌処理していないユーカリ・グロブラスチップを2週間0.01vvmとなるように通気処理のみを行い、実施例1と同様にウィーレーミルを用いて破砕を行い、電力量と粒度分布を測定した。結果を表5ならびに表2に示す。 以上のようにバイオマスの混焼火力発電に要求されるサイズのバイオマスを得るのに20%程度削減することが可能となる。また、セルロース分解酵素活性抑制株を用いることによりバイオマスの収率低下を抑制することもできた。 【0019】 〔比較例2〕 菌処理していないカラマツチップの粉砕処理 菌処理していないカラマツチップを2週間0.01vvmとなるように通気処理のみを行い、実施例3と同様にウイレー型粉砕機を用いて破砕を行い、電力量と粒度分布を測定した。結果を表6ならびに表4に示す。 【0020】 以上のように広葉樹のみならず針葉樹に対しても粉砕エネルギーを削減することができた。 【0021】 【表1】
【0022】 【表2】
【0023】 【表3】
【0024】 【表4】
【0025】 【表5】
【0026】 【表6】
【産業上の利用可能性】 【0027】 木質系バイオマスを微生物で前処理し、混焼やガス化によるバイオマスエネルギー製造時や硫酸加水分解等による糖化の前処理における木質系バイオマスの粉砕エネルギーを削減する技術に利用できる。
特許の図
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| 【出願人】 |
【識別番号】000122298 【氏名又は名称】王子製紙株式会社
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| 【出願日】 |
平成18年6月29日(2006.6.29) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2008−6372(P2008−6372A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月17日(2008.1.17) |
| 【出願番号】 |
特願2006−179172(P2006−179172) |
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