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【発明の名称】 オイルスクラバー洗浄油の逆流防止タンクを備える真空加熱装置
【発明者】 【氏名】村上 吉明

【要約】 【課題】PCB等の有機塩素系化合物に汚染された廃棄物を、有機溶媒を用いる洗浄処理と真空加熱処理とを組み合わせて使用する場合に生じる上記問題点を解決する真空加熱処理装置を提供することを目的とする。

【構成】本発明は、有機溶媒を用いて粗洗浄した汚染廃棄物を真空加熱処理する粗洗浄済の汚染廃棄物加熱処理装置であって、真空加熱炉とオイルスクラバーとを接続する排ガス経路に設置された逆流防止タンクとを備え、前記逆流防止タンクの排ガス流入側配管端部をタンク上部に配置し、排ガス流出側配管端部をタンク底部に配置する。このような構造とすることにより、真空加熱炉から大量の有機溶媒が気体となってオイルスクラバーに流入し、洗浄油が泡立って排ガス経路に逆流しても、真空加熱炉まで逆流することがない。また、逆流した洗浄油を自律的にオイルスクラバーへと回収することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒を用いて洗浄した汚染廃棄物を減圧下で加熱処理する洗浄済の汚染廃棄物加熱処理装置であって、
真空加熱炉と、
真空加熱炉からの排ガスを洗浄するオイルスクラバーと、
オイルスクラバーの排気経路に設置された真空ポンプと、
真空加熱炉とオイルスクラバーとを接続する排ガス経路に設置された逆流防止タンクとを備え、
前記逆流防止タンクの排ガス流入側配管端部をタンク上部に配置し、排ガス流出側配管端部をタンク底部に配置することを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記汚染廃棄物がPCB汚染廃棄物である請求項1に記載の加熱処理装置。
【請求項3】
前記有機溶媒がノルマルパラフィン系有機溶媒である請求項1又は2に記載の加熱処理装置。
【請求項4】
前記オイルスクラバーで使用する洗浄油が、10℃における蒸気圧が500Pa未満であり、かつ、沸点が300℃以上の炭化水素油である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加熱処理装置。
【請求項5】
前記逆流防止タンクの排ガス流入側配管端部より下部の内容積が、運転時にオイルスクラバー底部に貯留される洗浄油の5容量%以上40容量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の加熱処理装置。
【請求項6】
前記排気経路に活性炭吸着装置を備える請求項1乃至5のいずれか1項に記載の加熱処理装置。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB(Polychlorinated biphenyl:ポリ塩化ビフェニル)等の脂溶性汚染物質に汚染され、有機溶媒を用いて洗浄した汚染廃棄物を加熱処理し、無害化するための加熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PCBは化学的にも熱的にも非常に安定であり、優れた電気絶縁特性を有するため、過去において電気機器の絶縁体として広く使用されていた。しかし、廃棄された後にも分解されず、人体に蓄積しやすい発ガン性有害物であるため、昭和49年に製造及び輸入等が禁止されている。
【0003】
製造、輸入等は禁止されたものの、PCB の適切な処分技術がなかったため、PCBを含有する廃棄物は、使用終了後も公的な処理方法が決定するまで使用者に保管が義務付けられた。ところが、我が国では約30年間、PCB及びPCBを有する廃棄物の公的な処理基準や処理施設は定められぬままであり、使用者の大きな負担となっている。このため、PCB及びPCBを有する廃棄物の処理方法の確立が期待されている。
【0004】
PCB自体の処理方法としては、脱塩素化分解法、水熱酸化分解法、還元熱化学分解法等が知られている。一方、PCBによって汚染された汚染物の処理方法としては、溶剤洗浄法、真空加熱による回収法等が知られている。
【0005】
溶剤洗浄法の技術として、C1〜C4のアルコール又は塩素化物からなる洗浄液中に被処理物を浸漬することにより、被処理物表面の微細な隙間に付着したPCBを洗浄する方法が、特許文献1に開示されている。
【0006】
また、真空加熱によるPCB回収の技術として、PCB含有絶縁油を使用したトランス部材から予め絶縁油を抜き取り、その後トランス部材を真空加熱炉に入れて加温及び減圧することにより、PCB及び絶縁油をトランス部材から蒸発除去し、トランス部材を有価物として利用することを特徴とする方法が、特許文献2に開示されている。
【0007】
また、PCB等の有機ハロゲン化物を分解処理する処理システムであって、真空加熱炉から排出される排ガスを水熱分解処理設備で処理するシステムが、特許文献3に開示されている。この特許文献3には、真空加熱炉から排出される排ガスを、冷却手段により冷却し、冷却したガスを水熱分解処理設備で処理することも開示されている。
【特許文献1】特開2003−24885号公報
【特許文献2】特開平9−192534号公報
【特許文献3】特開2003−62428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有機塩素系化合物のうち、PCBは揮発性が低いため、特許文献2に示されるように、真空加熱炉を用いて減圧下で加熱しないと、蒸発によりトランス部材等の廃棄物から回収することができない。このため、廃棄物内に残存するPCB量が多ければ、回収に長時間を要することになる。しかし、廃棄物内に残存するPCB量の予測は困難であり、処理が不十分となる場合がある。
【0009】
一方、特許文献1に開示されるような溶剤洗浄法は、廃棄物に残存するPCB量に拘わらず、廃棄物を洗浄することができる長所がある。しかし、廃棄物から完全にPCBを除去するために、何度も洗浄液で洗浄を繰り返す必要があり、大量の廃洗浄液が生じてしまう。さらに、廃棄物内部が複雑な構造であり、内部まで洗浄液が到達しにくい場合には、真空加熱により回収する処理方法と比較して、処理後の廃棄物にPCBが残存しやすいという問題もある。
【0010】
そこで、PCB等に汚染された廃棄物を、まず有機溶媒を用いて洗浄し、その後真空加熱炉、湿式スクラバー等から構成される一般的な真空加熱装置を用いて加熱処理することにより、上記従来技術の欠点を補うことが考えられる。
【0011】
この場合、真空加熱処理に際して被処理物(洗浄済み汚染廃棄物)から発生するPCB及び有機溶媒量を予測することができないため、オイルスクラバーを大きくする必要が生じ、使用する洗浄油量も多くなる。また、使用する真空ポンプも大型化せざるを得ず、設備費や運転コストが上昇する。
【0012】
逆にオイルスクラバーが小さければ、排ガスの冷却及び凝縮が不十分となり、オイルスクラバーからPCBが気体やミスト状態で排気されてしまう。仮に、オイルスクラバーの排気経路に活性炭吸着装置を設置しても、頻繁に活性炭を交換する必要が生じる。
【0013】
さらに、被処理物(洗浄済み汚染廃棄物)に残存する有機溶媒量が多ければ、真空加熱炉から排出された有機溶媒ガスは、オイルスクラバーで冷却されて液体となり、洗浄油に一旦溶け込んでしまうが、オイルスクラバー内は陰圧であるため、洗浄油に溶け込んだ有機溶媒はすぐに蒸発し、洗浄油を泡立たせてしまう。
【0014】
すると、泡だった洗浄油が、真空加熱炉からオイルスクラバーへと接続されている排ガス経路を逆流し、真空加熱炉内に到達する場合がある。オイルスクラバーの洗浄油は、揮発性が非常に低いため、真空加熱炉内で蒸発せずに炉内に蓄積してしまう。このような場合には、加熱処理装置全体を停止し、真空加熱炉内を清掃しなければならなくなる。
【0015】
オイルスクラバー内で洗浄油が泡だった場合、底部から洗浄油の一部を一時的に抜き取れば、洗浄油の逆流を防止することも可能であるが、真空ポンプによってオイルスクラバー内が陰圧になっている状態で洗浄油を引き抜くことは、現実には非常に困難である。
【0016】
本発明は、PCB等の有機塩素系化合物に汚染された廃棄物を、有機溶媒を用いる洗浄処理と真空加熱処理とを組み合わせて使用する場合に生じる上記問題点を解決する真空加熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、有機溶媒を用いて洗浄した汚染廃棄物を減圧下で加熱処理する洗浄済の汚染廃棄物加熱処理装置であって、真空加熱炉とオイルスクラバーとを接続する排ガス経路に逆流防止タンクを備えることにより、上記問題点を解決した。
【0018】
具体的に、本発明は、
有機溶媒を用いて洗浄した汚染廃棄物を減圧加熱下で加熱処理する洗浄済の汚染廃棄物加熱処理装置であって、
真空加熱炉と、
真空加熱炉からの排ガスを洗浄するオイルスクラバーと、
オイルスクラバーの排気経路に設置された真空ポンプと、
真空加熱炉とオイルスクラバーとを接続する排ガス経路に設置された逆流防止タンクとを備え、
前記逆流防止タンクの排ガス流入側配管端部をタンク上部に配置し、排ガス流出側配管端部をタンク底部に配置することを特徴とする処理装置に関する(請求項1)。
【0019】
真空加熱炉の排ガス出口とオイルスクラバーとを接続する排ガス経路に、逆流防止タンクを設置することにより、オイルスクラバー内で洗浄油が泡だった場合でも、逆流防止タンク内に洗浄油が溜まるだけで真空加熱炉には洗浄油が浸入しない。
【0020】
また、逆流防止タンク内に溜まった洗浄油は、通常のトラップとは異なり、復圧時又は、再び真空加熱装置を減圧する際に、特別な装置を用いずともオイルスクラバーへと返送される。
【0021】
前記汚染廃棄物としては、PCB汚染廃棄物が挙げられる(請求項2)。本発明の真空加熱処理装置は、有機塩素系化合物のうち、揮発性が低く、毒性が強いために適切な廃棄処理が必要なPCBの処理装置として適している。
【0022】
前記有機溶媒は、ノルマルパラフィン系有機溶媒であってよい(請求項3)。
【0023】
ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン等のノルマルパラフィン系有機溶媒は、PCB等の有機塩素系化合物を溶解させやすく、点粘度、安価であるため、汚染廃棄物の洗浄に適している。さらに、沸点が低く揮発性が高いため、減圧下での加熱処理により有機溶媒が揮発する際に一部の有機塩素系化合物を随伴して揮発するため、減圧加熱処理時に洗浄性が高くなる。
【0024】
しかし、その一方で汚染廃棄物中に有機溶媒が多量に残存したまま減圧加熱処理を行うと、減圧と加熱により揮発し、オイルスクラバーでの冷却によって洗浄油に一旦溶け込んだノルマルパラフィン系有機溶媒が、真空加熱炉及びオイルスクラバーの減圧がさらに進むことによって、50℃程度の低温でも急激に気化し、洗浄油を泡立たせやすい。
【0025】
オイルスクラバーの洗浄油としては、10℃における蒸気圧が500Pa未満で、かつ、沸点が300℃以上の炭化水素油を使用することが好ましい(請求項4)。
【0026】
オイルスクラバーは加熱炉から排出されるPCB等の有機塩素系化合物捕集のために20℃以下で運転することが好ましく、特に10℃以下で運転することが好ましい。そのため、オイルスクラバーで使用する洗浄油は、10℃における蒸気圧が500Pa未満であれば、洗浄油が揮発して排ガスと共にオイルスクラバーから出ていくことを抑制しうる。
【0027】
また、沸点が300℃以上であれば、オイルスクラバーで捕集したPCB等の有機塩素系化合物と洗浄油とを減圧蒸留により蒸留分離する際に分離しやすいため、オイルスクラバーで捕集した有機塩素系化合物の無害化を行うにあたって、減圧蒸留を行うことで処理すべき洗浄油の量を低減することができる。このような洗浄油としてバーレルプロセス油が挙げられる。
【0028】
前記逆流防止タンクの排ガス流入側配管端部より下部の内容積は、運転時にオイルスクラバー底部に貯留される洗浄油の5容量%以上40容量%以下であることが好ましい(請求項5)。
【0029】
排ガス経路を逆流するのは、オイルスクラバーの底部に貯留している洗浄油等に限られ、しかも逆流するときには泡立った状態であるため、オイルスクラバーで使用される洗浄油を全量貯留できる必要はない。排ガス流入側配管端部より下部に、オイルスクラバー底部に貯留される洗浄油の5容量%以上40容量%以下、より好ましくは10容量%以上30容量%以下を貯留することができれば足りる。
【0030】
前記排気経路に活性炭吸着装置を備えることが好ましい(請求項6)。
【0031】
オイルスクラバーから排気される微量の有機塩素系化合物、有機溶媒及び/又は洗浄油を吸着処理し、系外への排出を防止するためである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の汚染廃棄物加熱処理装置は、非常に簡単な構造の逆流防止タンクを備えることにより、オイルスクラバー洗浄油が真空加熱炉へと逆流することを防止できる。また、通常の運転操作によって逆流した洗浄油をオイルスクラバーへと返送することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、これらに限定されない。
【0034】
本発明の汚染廃棄物加熱処理装置の基本的構成の一例を、図1に示す。図1に示す汚染廃棄物加熱処理装置は、真空加熱炉1、逆流防止タンク3、オイルスクラバー5、真空ポンプ11及び活性炭吸着塔12(活性炭吸着装置)を備える。
【0035】
なお、活性炭吸着塔の負荷を低減するためには、真空ポンプの後段に冷却コンデンサを備え、オイルスクラバー5によってPCB等の有機塩素系化合物が除去された後の排ガスを10℃以下に冷却することによって、排ガス中に残存する洗浄油や微量のPCB等を分離除去する構成とすることが好ましい。
【0036】
真空加熱炉1の排気口は、排ガス経路2によって逆流防止タンク3と接続されている。また、逆流防止タンク3は、排ガス経路4によってオイルスクラバー5と接続されている。そして、真空加熱炉1、逆流防止タンク3及びオイルスクラバー5は、それぞれ気密構造となっている。
【0037】
オイルスクラバー5は、シャワー6を上部に備えており、洗浄油7を内部で噴霧する。噴霧された洗浄油7は、真空加熱炉1から逆流防止タンク3を経てオイルスクラバー5に供給された排ガス中の有機溶媒及びPCB等の有機塩素系化合物を吸収すると共に、排ガスを冷却する。そして、底部に貯留された洗浄油7は、循環経路8に設置されたオイルポンプ9によって、再びシャワー6へと供給される。
【0038】
一定期間使用した洗浄油7は、運転休止時又は後述する復圧時に廃油経路14から排出し、別途処理することが好ましい。また、循環経路8には、洗浄油7の冷却装置を設置し、洗浄油を50℃以下、好ましくは10℃以下となるように冷却する構成としてもよい。
【0039】
オイルスクラバー7の最上部には、排気経路10が接続されている。この排気経路10には、真空ポンプ11と活性炭吸着装置12が設置されている。一定温度まで真空加熱炉1内を加熱し、真空ポンプ11を作動させると、真空加熱炉1、逆流防止タンク3及びオイルスクラバー5内の空気が排気経路10を通じて系外に排気され、真空加熱装置内部が減圧状態となる。この状態で真空加熱装置1内をさらに加熱すると、被処理物(洗浄済の汚染廃棄物)中に残存するPCB等の有機塩素系化合物及び有機溶媒が蒸発し、被処理物から分離する。
【0040】
真空ポンプ11の後段に冷却コンデンサ(図示せず)を設置すれば、オイルスクラバー5から排出される気体中に含まれる微量の有機塩素系化合物及び有機溶媒は、冷却コンデンサにより冷却され、排ガス中から分離除去することができる。
【0041】
また、冷却コンデンサから気体状態の有機塩素系化合物及び/又は有機溶媒が排出された場合であっても、それらは活性炭吸着装置12によって除去されるため、排気出口13から系外に排出されることを防止できる。
【0042】
PCB等の有機塩素系化合物によって汚染された容器、機材等の被処理物(廃棄物)は、前処理としてPCB等を抜き取り、解体された後、ノルマルヘキサン等の有機溶媒を用いて洗浄する。抜き取ったPCB等の有機塩素系化合物は、別途分解処理等に付される。洗浄に使用した有機溶媒は、蒸留操作等によって、PCB等の有機塩素系化合物と有機溶媒を分離した後、再利用することが好ましい。
【0043】
洗浄の方法として、例えば、ノルマルヘキサン等の有機溶媒に被処理物を浸漬する浸漬洗浄やこれに超音波を組み合わせた超音波洗浄が挙げられる。また、被処理物の表面が平滑かつ平坦である場合には、有機溶媒をしみ込ませた布等で表面を拭き取ってもよい。
【0044】
被処理物としては、トランス、コンデンサ等の電気機器が好ましい。
【0045】
次に、PCBが使用されているコンデンサの処理を例に挙げ、本発明の廃棄物加熱処理装置の操作を説明しつつ、逆流防止タンクの機能について、通常のトラップと対比して説明する。
【0046】
まず、前処理としてコンデンサ内のPCB油を抜油し、抜油後のコンデンサの蓋を切断し、内部部品(例えば、素子)を取り出し、コンデンサ容器については、有機溶媒で洗浄する。また、内部部品については、解体し、切断した後容器に入れ、有機溶媒で洗浄し、被処理物から有機溶媒を一部除去した後、真空加熱炉1に投入する。PCBの非含浸物である容器は、洗浄が簡単であるため、上述した通り有機溶媒による洗浄のみであっても構わないが、これに限定されず、内部部品同様に洗浄後、減圧加熱による処理を行ってもよい。
【0047】
そして、真空加熱炉1を密閉し、真空加熱炉内の空気を不活性ガス(例えば窒素ガス)に置換する。置換方法としては、例えば、真空ポンプ11及びオイルスクラバー5を作動させ、復圧経路16から不活性ガスを真空加熱炉1内に供給すればよい。
【0048】
このとき、真空ポンプ11は、必ずしも運転させる必要はなく、真空加熱炉1内の空気を不活性ガスにより置換できれば充分である。
【0049】
真空加熱炉1内が充分に不活性ガスに置換された後、真空加熱炉1内を200〜250℃に加熱する。真空加熱炉1内の被処理物の温度が130〜160℃に達した時点で真空ポンプ11を作動させ、装置内部の空気を排気して減圧状態にする。
【0050】
装置内部(真空加熱炉1を含む)の圧力は、10Pa以上1000Pa、好ましくは50Pa以上200Pa以下とし、真空加熱炉1内の被処理物の温度は170℃以上200℃以下とすることが好ましい。
【0051】
真空加熱炉1内では、被処理物(洗浄済の汚染廃棄物)からPCB等の有機塩素系化合物及び有機溶媒が気化し、排ガス出口から排気経路2へと排気される。さらに、真空加熱炉1からの排ガスは、逆流防止タンク3を経て、オイルスクラバー5へと供給される。ここでは、シャワー6から噴霧される洗浄油21によって、気体状態の有機塩素系化合物及び有機溶媒が吸収され、または凝集して捕集される。
【0052】
ここで、真空加熱炉1に投入された被処理物中に大量の有機溶媒が残存していた場合、気体状態の有機溶媒は、洗浄油7による冷却によってオイルスクラバー5内で凝縮し、洗浄油7に一旦溶解する(図2(a)を参照)。しかし、オイルスクラバー5内は減圧されていくため、オイルスクラバー5内がある一定値以下にまで減圧されると、有機溶媒はすぐに気化して洗浄油7を泡立たせてしまう(図2(b)を参照)。すると、泡立った洗浄油23は、排ガス経路4の末端から逆流防止タンク方向へ逆流する(図2(c)を参照)。
【0053】
逆流防止タンク3には、排ガス経路2及び排ガス経路4が接続されているが、図1に示したように、真空加熱炉1側の配管(排ガス流入側配管)の端部aはタンク上部に配置され、オイルスクラバー5側の配管(排ガス流出側配管)の端部bはタンク底部に配置されている。
【0054】
このため、図3(a)に示すように、オイルスクラバー5から排ガス経路4へと逆流した洗浄油は、排ガス流出側配管33の端部から逆流防止タンク3へと浸入し、内部に貯留される。しかし、真空加熱炉1へと接続されている排ガス流入側配管32の端部aがタンク上部に配置されているため、逆流した洗浄油31が排ガス流入側配管32の端部aから排気経路2に浸入し、真空加熱炉1へと逆流することはない。
【0055】
また、オイルスクラバー5内で洗浄油の泡立ちが収まれば、逆流した洗浄油31は、真空ポンプ11の吸引力によって、排ガス流出側配管33の端部bから排ガス経路4を経てオイルスクラバー5へと自律的に返送される。
【0056】
さらに、真空ポンプ11の吸引力によって、逆流した洗浄油31を運転中に一部しかオイルスクラバー5へと返送できない場合であっても、運転終了後、不活性ガス供給装置15から復圧経路16を通じて真空加熱炉1に不活性ガスを供給して復圧するため、排ガス流入側配管32から浸入する不活性ガスの圧力によって、逆流した洗浄油31をほとんど排ガス流出側配管33の端部bから排ガス経路4を経てオイルスクラバー5へと自律的に返送することが可能である。
【0057】
特に、真空加熱炉1を利用して効率よくPCBを除去する場合、減圧下で加熱するだけではなく、加熱下で減圧と復圧を繰り返すことが好ましい。これは、復圧された真空加熱炉1を減圧する際の不活性ガスの移動に伴い、真空加熱炉1内又は被処理物に付着したPCBが不活性ガスに同伴して移動するため、より効果的にPCBを除去することができるためである。
【0058】
このように、減圧と復圧を繰り返した場合も、減圧時に発泡し逆流防止タンク3へ逆流した洗浄油は、復圧時に不活性ガスによる圧力によってオイルスクラバー5へと返送することができ、次の減圧工程前に廃油経路14を通じて洗浄油の一部を除去することにより発泡を防止することができ、もし発泡しても大量に洗浄油が逆流することを防止できる。
【0059】
廃油経路14から取り出した洗浄油は、蒸留することによって、有機溶媒、PCB油及び洗浄油に分離することができる。分離されたPCB油は別途分解処理され、有機溶媒及び洗浄油は、再利用される。
【0060】
また、必要に応じて洗浄油供給経路(図示せず)から新しい洗浄油を追加することが好ましい。これによってオイルスクラバー5内の洗浄油中の有機溶媒濃度を低下させ、発泡を抑えることができる。
【0061】
不活性ガスは窒素、ヘリウム、アルゴン等であればその種類を問わない。また、不活性ガス供給装置15は、例えば、ガスボンベである。また、不活性ガスが窒素である場合、不活性ガス供給装置としてPSA(Pressure Swing Adsorption)式窒素発生装置や膜式窒素発生装置を利用してもよい。
【0062】
なお、オイルスクラバー5内の洗浄油の全量が排ガス経路4へと逆流することはあり得ないため、逆流防止タンク3の内容積は、排ガス流入側配管32の端部aから下部が、オイルスクラバー5の底部に貯留される洗浄油(図2(a)で符号7aを付した部分)の体積の5容量%以上40容量%以下であることが好ましく、10容量%以上30容量%以下であることがより好ましい。内容積が5容量%未満では、逆流した洗浄油の貯留能力が不足して真空加熱炉1への逆流を防止できない恐れがあるためであり、40容量%を超えると真空ポンプ11の作用によって貯留された洗浄油をオイルスクラバーへと返送しにくくなるためである。
【0063】
図3(a)及び図3(b)では、排ガス流入側配管32の端部aが、逆流防止タンク3の天井面より下部に位置している例を示したが、排ガス流入側配管32の端部aは、逆流防止タンク3の天井面と一致してもよい。また、逆流防止タンク3は、加熱炉1からの排ガスに含まれる有機溶媒やPCBが、内部で凝縮することを防止するため、外部から加熱するように構成してもよい。
【0064】
一方、通常、従来の廃棄物加熱処理装置の排ガス経路に設置されるトラップは、図4(a)に示すような構造をしている(例えば、特開2003−299903号公報の図2を参照)。すなわち、トラップ41には逆流防止タンク3と同様、排ガス経路2及び排ガス経路4が接続されているが、真空加熱炉1側の配管(排ガス流入側配管42)の端部cはタンク底部に配置され、オイルスクラバー5側の配管(排ガス流出側配管43)の端部dはタンク上部に配置されている。
【0065】
トラップ41では、運転初期に真空加熱炉1から大量の有機溶媒が液体と気体が混合した状態で流入したような場合、トラップ41内に液体状態の有機溶媒を貯留することができる。また、排ガス流出側配管43の端部dがタンク上部に配置されているため、貯留された有機溶媒44は、排ガス経路4を通じてオイルスクラバー5へは移動しない(図2(a)を参照)。このため、トラップ41によって、大量の有機溶媒の混入によるオイルスクラバー5の洗浄油の泡立ちを軽減することはできる。
【0066】
しかし、大量の有機溶媒が気体状態でトラップ41に流入した場合、有機溶媒はトラップ41を通過してオイルスクラバー5へと供給される。そして、オイルスクラバー5内で冷却されて凝縮し、上述したように洗浄油の泡立ちを生じ、逆流した洗浄油45が排ガス経路4を経てトラップ41内に貯留されることとなる。
【0067】
ところが、トラップ41へと急激な逆流が発生すれば、排ガス流入側配管42の端部cがトラップ41の底部に配置されているため、トラップ41内の貯留された洗浄油が、排ガス流入側配管42の端部cから排ガス経路2へと押し上げられ、さらに真空加熱炉1へと逆流する危険性がある(図4(b)を参照)。
【0068】
また、トラップ41への洗浄油の逆流が収まったとしても、排ガス流出側配管43の端部が上部に配置されているため、逆流した洗浄油45をオイルスクラバー5へと返送することはできない(図4(c)を参照)。このため、逆流した洗浄油45は、トラップ41の底部から抜き取るしかない。
【0069】
以上説明したように、本発明の汚染廃棄物加熱処理装置は、非常に簡単な構造の逆流防止タンクを備えることにより、真空加熱炉への洗浄油逆流防止と逆流した洗浄油の自律的回収という、汚染廃棄物加熱処理装置では得られなかった特有の効果を有している。
【0070】
なお、本実施の形態においては、加熱効率を高めるために、真空加熱炉1内を不活性ガスで充満させ、真空加熱炉内を加熱した後、減圧しつつ加熱する構成としたが、これに限定されず、加熱と同時に減圧させたり、減圧後、加熱を行うように運転してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の汚染廃棄物加熱処理装置は、PCB等の有機塩素系化合物によって汚染された廃棄物の無害化処理を目的とする環境保全分野や廃棄物処理分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の汚染廃棄物加熱処理装置の一例を示す構成図である。
【図2】オイルスクラバー内の洗浄油の泡立ち及び逆流を説明する概念図である。
【図3】逆流防止タンクにおける洗浄油の動きを説明する図である。
【図4】トラップにおける洗浄油の動きを説明する図である。
【符号の説明】
【0073】
1:真空加熱炉
2:排ガス経路(逆流防止タンク上流)
3:逆流防止タンク
4:排ガス経路(逆流防止タンク下流)
5:オイルスクラバー
6:シャワー
7:洗浄油
8:循環経路
9:オイルポンプ
10:排気経路
11:真空ポンプ
12:活性炭吸着装置
13:排気出口
14:廃油経路
15:不活性ガス供給装置
16:復圧経路
21:噴霧された洗浄油
22:凝縮した有機溶媒
23:泡立った洗浄油
31:逆流した洗浄油
32,42:排ガス流入側配管
33,43:排ガス流出側配管
41:トラップ
44:貯留された有機溶媒
45:逆流した洗浄油
a:逆流防止タンクの排ガス流入側配管の端部
b:逆流防止タンクの排ガス流出側配管の端部
c:トラップの排ガス流入側配管の端部
d:トラップの排ガス流出側配管の端部
【出願人】 【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100065868
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 嘉宏

【識別番号】100106242
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 安航


【公開番号】 特開2008−716(P2008−716A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−174228(P2006−174228)