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【発明の名称】 廃棄物の処理方法および処理装置
【発明者】 【氏名】井田 徹

【要約】 【課題】重金属を含有する廃棄物にカルシウム化合物と水を混合し、あるいは更にシリカを混合して得られる混合物を水熱処理するに際し、水熱処理の際に発生する重金属を含有する排水を、排水処理設備を設けることなく、処理することができる廃棄物の処理方法および処理装置を提供する。

【構成】(1) 重金属を含有する廃棄物にカルシウム化合物と水を混合し、あるいは更にシリカを混合して得られる混合物を水熱処理する水熱処理工程を有する廃棄物の処理方法であって、前記水熱処理工程を2回以上行う際に、先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生する重金属を含有する排水を、後行の水熱処理工程において混合する水もしくはその一部として用いることを特徴とする廃棄物の処理方法、(2) この廃棄物の処理方法を行うための廃棄物の処理装置等。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属を含有する廃棄物にカルシウム化合物と水を混合し、あるいは更にシリカを混合して得られる混合物を水熱処理する水熱処理工程を有する廃棄物の処理方法であって、前記水熱処理工程を2回以上行う際に、先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生する重金属を含有する排水を、後行の水熱処理工程において混合する水もしくはその一部として用いることを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記カルシウム化合物が消石灰、生石灰、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントの1種以上である請求項1記載の廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記廃棄物がシリカを含有している請求項1または2記載の廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記廃棄物が土壌、焼却灰の1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記混合物中のカルシウム化合物の量が前記混合物中のシリカの量に対して3〜40質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の廃棄物の処理方法。
【請求項6】
前記混合する水もしくはその一部として用いる重金属を含有する排水の量が前記混合物中のカルシウム化合物およびシリカの合計量に対して10〜60質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の廃棄物の処理方法。
【請求項7】
前記水熱処理工程での水熱処理を130 〜300 ℃の飽和蒸気の存在下において1〜48時間行う請求項1〜6のいずれかに記載の廃棄物の処理方法。
【請求項8】
前記重金属が鉛、ヒ素、セレン、クロム、水銀、鉛、カドミウム、ホウ素の1種以上である請求項1〜7のいずれかに記載の廃棄物の処理方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の廃棄物の処理方法を行うための廃棄物の処理装置であって、オートクレーブ内に水熱処理する混合物を充填した水熱処理容器が配され、このオートクレーブから排出される水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁を有する廃棄物の処理装置において、前記水熱処理容器から排出される水を受ける受器と、この受器で受けた水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁とを有することを特徴とする廃棄物の処理装置。
【請求項10】
前記オートクレーブ内の水熱処理容器の外側で発生する凝縮水が水熱処理容器内に入ることを防ぐ防護手段を有する請求項9記載の廃棄物の処理装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の処理方法および処理装置に関する技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
有害な重金属類が含有されている土壌や焼却灰は、雨水等の環境水と接触すると、重金属類の溶出が起こり、土壌や地下水、河川、海水等を汚染する。このため、セメント固化法、薬剤添加法、溶融固化法等によって処理して焼却飛灰中の重金属類を安定化させた後に埋め立て処分されている。
【0003】
しかし、これら従来法にはなお解決すべき課題が多い。例えば、セメント固化法では、固化剤として添加するセメントがクロムを含有する場合があるため、固化処理後の廃棄物から六価クロムが溶出する可能性がある。薬剤添加法では、添加するキレート薬剤のコストが高く、また、処理後の土壌や焼却灰に強度がなくなり、取り扱いが困難になる。溶融固化法では、高温で処理するための設備コストが高く、また、設備規模が複雑になってしまう。
【0004】
本発明者らは、既に、重金属類を含有する土壌や焼却灰に対し、効果的でかつ従来法より安価な溶出防止方法である水熱処理法を提案してきた〔特開2002-320952 号公報(汚染土壌の処理方法及び処理物)、特開2004-41890号公報(フッ素含有廃棄物の処理方法)、特開2003-286066 号公報(固化体の製造方法)〕。しかし、水熱処理法では、被処理物を水蒸気で加熱するため、結露した水蒸気がドレン水となり、このドレン水が被処理物に接触して被処理物を濡らすことが避けられない。水熱反応が充分に進んで重金属類の溶出が抑制された時点であれば、ドレン水が被処理物に接触しても被処理物から重金属類が溶出することはないが、反応が不十分なとき、具体的には反応温度までの昇温過程でドレン水が接触すると、被処理物から重金属類が溶出し、その結果、重金属を含有する水がオートクレーブから排出されるため、オートクレーブ以外に、この重金属を含有する水(排水)を処理するための設備を設置する必要のあることがわかった。
【特許文献1】特開2002-320952 号公報
【特許文献2】特開2004-41890号公報
【特許文献3】特開2003-286066 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、重金属を含有する廃棄物にカルシウム化合物と水を混合し、あるいは更にシリカを混合して得られる混合物を水熱処理するに際し、水熱処理の際に発生する重金属を含有する排水を、排水処理設備を設けることなく、処理することができる廃棄物の処理方法および処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意研究を行なった結果、本発明を完成するに至った。本発明によれば上記目的を達成することができる。
【0007】
このようにして完成され上記目的を達成することができた本発明は、廃棄物の処理方法および処理装置に係わり、特許請求の範囲の請求項1〜8記載の廃棄物の処理方法(第1〜8発明に係る廃棄物の処理方法)、請求項9〜10記載の廃棄物の処理装置であり、それは次のような構成としたものである。
【0008】
即ち、請求項1記載の廃棄物の処理方法は、重金属を含有する廃棄物にカルシウム化合物と水を混合し、あるいは更にシリカを混合して得られる混合物を水熱処理する水熱処理工程を有する廃棄物の処理方法であって、前記水熱処理工程を2回以上行う際に、先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生する重金属を含有する排水を、後行の水熱処理工程において混合する水もしくはその一部として用いることを特徴とする廃棄物の処理方法である〔第1発明〕。
【0009】
請求項2記載の廃棄物の処理方法は、前記カルシウム化合物が消石灰、生石灰、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントの1種以上である請求項1記載の廃棄物の処理方法である〔第2発明〕。
【0010】
請求項3記載の廃棄物の処理方法は、前記廃棄物がシリカを含有している請求項1または2記載の廃棄物の処理方法である〔第3発明〕。
【0011】
請求項4記載の廃棄物の処理方法は、前記廃棄物が土壌、焼却灰の1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の廃棄物の処理方法である〔第4発明〕。
【0012】
請求項5記載の廃棄物の処理方法は、前記混合物中のカルシウム化合物の量が前記混合物中のシリカの量に対して3〜40質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の廃棄物の処理方法である〔第5発明〕。
【0013】
請求項6記載の廃棄物の処理方法は、前記混合する水もしくはその一部として用いる重金属を含有する排水の量が前記混合物中のカルシウム化合物およびシリカの合計量に対して10〜60質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の廃棄物の処理方法である〔第6発明〕。
【0014】
請求項7記載の廃棄物の処理方法は、前記水熱処理工程での水熱処理を130 〜300 ℃の飽和蒸気の存在下において1〜48時間行う請求項1〜6のいずれかに記載の廃棄物の処理方法である〔第7発明〕。
【0015】
請求項8記載の廃棄物の処理方法は、前記重金属が鉛、ヒ素、セレン、クロム、水銀、鉛、カドミウム、ホウ素の1種以上である請求項1〜7のいずれかに記載の廃棄物の処理方法である〔第8発明〕。
【0016】
請求項9記載の廃棄物の処理装置は、請求項1〜8のいずれかに記載の廃棄物の処理方法を行うための廃棄物の処理装置であって、オートクレーブ内に水熱処理する混合物を充填した水熱処理容器が配され、このオートクレーブから排出される水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁を有する廃棄物の処理装置において、前記水熱処理容器から排出される水を受ける受器と、この受器で受けた水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁とを有することを特徴とする廃棄物の処理装置である〔第9発明〕。
【0017】
請求項10記載の廃棄物の処理装置は、前記オートクレーブ内の水熱処理容器の外側で発生する凝縮水が水熱処理容器内に入ることを防ぐ防護手段を有する請求項9記載の廃棄物の処理装置である〔第10発明〕。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る廃棄物の処理方法によれば、重金属を含有する廃棄物にカルシウム化合物と水を混合し、あるいは更にシリカを混合して得られる混合物を水熱処理するに際し、水熱処理の際に発生する重金属を含有する排水を、排水処理設備を設けることなく、処理することができる。
【0019】
本発明に係る廃棄物の処理装置によれば、本発明に係る廃棄物の処理方法を行うことができる。ひいては、水熱処理の際に発生する重金属を含有する排水を、排水処理設備を設けることなく、処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明者らは、前述の目的を達成するため、鋭意研究を行なった。その結果、重金属を含有する排水を被処理物と混合して水熱処理すると、被処理物中の重金属が水熱処理によって溶出抑制されるようになるのと同様に、被処理物に混合された排水中の重金属も水熱処理によって溶出抑制されるようになることを見出した。
【0021】
本発明は、かかる知見に基づき完成されたものであり、それは廃棄物の処理方法および処理装置に係わるものである。このようにして完成された本発明に係る廃棄物の処理方法および処理装置の中、先ず、本発明に係る廃棄物の処理方法は、重金属を含有する廃棄物にカルシウム化合物と水を混合し、あるいは更にシリカを混合して得られる混合物を水熱処理する水熱処理工程を有する廃棄物の処理方法であって、前記水熱処理工程を2回以上行う際に、先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生する重金属を含有する排水を、後行の水熱処理工程において混合する水もしくはその一部として用いることを特徴とする廃棄物の処理方法である〔第1発明〕。
【0022】
本発明に係る廃棄物の処理方法においては、先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生する重金属を含有する排水(以下、重金属含有排水ともいう)を、後行の水熱処理工程において混合する水もしくはその一部として用いる。即ち、先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生した重金属含有排水を、後行の水熱処理工程で水熱処理しようとする混合物に混合している。従って、前記知見からもわかるように、後行の水熱処理工程においては、混合物中の廃棄物中の重金属が水熱処理によって溶出抑制されるようになるのと同様に、上記混合物に混合された排水(先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生した重金属含有排水)中の重金属も水熱処理によって溶出抑制されるようになる。
【0023】
このように、先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生した重金属含有排水を後行の水熱処理工程において処理することができる。
【0024】
従って、本発明に係る廃棄物の処理方法によれば、水熱処理の際に発生する重金属含有排水を、排水処理設備を設けることなく、処理することができる。
【0025】
また、先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生する重金属含有排水を後行の水熱処理工程において混合する水もしくはその一部として用いるので、後行の水熱処理工程においては、その分だけ新たに混合する上水の量を減らすことができる。従って、水熱処理工程での水の混合に際し、上水の必要量を減少させることができ、それにより経済性の向上がはかれるという効果もある。
【0026】
ここで、後行の水熱処理工程とは、先行の水熱処理工程の後に行われる水熱処理工程のことである。この後行の水熱処理工程は、先行の水熱処理工程の次に行われる水熱処理工程に限定されず、この水熱処理工程以降に行われる水熱処理工程も含まれる。先行の水熱処理工程とは、後行の水熱処理工程よりも前に行われる水熱処理工程のことである。この先行の水熱処理工程は、最も先に行われる水熱処理工程に限定されず、この水熱処理工程以降に行われる水熱処理工程である場合もある。
【0027】
本発明に係る廃棄物の処理方法において、水熱処理工程は、重金属を含有する廃棄物にカルシウム化合物と水を混合し、あるいは更にシリカを混合して得られる混合物を水熱処理する工程である。このとき、重金属を含有する廃棄物(以下、重金属含有廃棄物ともいう)は、シリカを含有する場合と、シリカを含有しない場合とがある。重金属含有廃棄物がシリカを含有し、そのシリカ含有量が充分(水熱処理による重金属溶出抑制をはかるに充分)な量である場合には、この廃棄物にカルシウム化合物と水を混合して得られる混合物を水熱処理する。重金属含有廃棄物がシリカを含有しない場合や、シリカを含有してもシリカ含有量が不充分(水熱処理による重金属溶出抑制をはかるに不充分)な量である場合には、この廃棄物にカルシウム化合物と水を混合するだけでなく、シリカを混合して得られる混合物を水熱処理する。これらより、本発明に係る廃棄物の処理方法での水熱処理工程は、重金属含有廃棄物にカルシウム化合物と水を混合し、あるいは更にシリカを混合して得られる混合物を水熱処理する工程であることとしたのである。
【0028】
本発明に係る廃棄物の処理方法において、カルシウム化合物としては例えば、消石灰、生石灰、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントの1種以上を用いることができる〔第2発明〕。
【0029】
前述のように、重金属含有廃棄物がシリカを含有する場合とシリカを含有しない場合とがある。重金属含有廃棄物がシリカを含有する場合において、そのシリカ含有量が充分な量である場合には、この廃棄物にカルシウム化合物と水を混合して得られる混合物を水熱処理すればよく、シリカ含有量が不充分な量である場合には、この廃棄物にカルシウム化合物と水を混合するだけでなく、シリカを混合して得られる混合物を水熱処理する〔第3発明〕。
【0030】
重金属含有廃棄物としては、例えば、土壌、焼却灰があり、これらの1種以上を用いることができる〔第4発明〕。
【0031】
水熱処理工程では、水熱処理により、重金属含有廃棄物中のシリカ(SiO2)あるいは添加混合されたシリカとカルシウム化合物とを反応させ、トバモライトなどの結晶性カルシウムシリケート(ケイ酸カルシウム)を生成させる。この結晶性カルシウムシリケートによって重金属含有廃棄物中の重金属、および、重金属含有廃棄物に混合された排水(先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生した重金属含有排水)中の重金属は、内部に閉じこめられ(固定化され)、外部への溶出が抑制されるようになる。
【0032】
このような溶出抑制の効果を高水準なものとするために、水熱処理に供する混合物でのカルシウム化合物の量がシリカの量に対して3〜40質量%となるようにすることが望ましい〔第5発明〕。この量が3質量%未満の場合も、40質量%超の場合も、重金属の固定化の効果が低下する。この量が3〜40質量%の場合、重金属の固定化の効果が高水準なものとなる。かかる重金属の固定化効果の点から、更にはこの量が5〜25質量%となるようにすることが望ましい。
【0033】
本発明に係る廃棄物の処理方法においては、先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生する重金属含有排水を、後行の水熱処理工程において混合する水もしくはその一部として用いる。この混合する水もしくはその一部として用いる重金属含有排水の量が水熱処理に供する混合物中のカルシウム化合物およびシリカの合計量に対して10〜60質量%であることが望ましい〔第6発明〕。これは重金属を含有する土壌や焼却灰が一般に微粒子の成分を含むことが多いためであり、水を結合材として用いることにより、微粒子成分が水熱処理中に反応容器外へ出ることを防ぐため、水分量を規定することが望ましい。即ち、水添加量が10質量%未満の場合、微粒子成分がダスト状になって反応容器から散逸したり、反応中に発生するドレン水に同伴して反応容器下部の重金属排水配管へ洩れ出てしまう。一方、水添加量が60質量%超の場合、重金属含有廃棄物がスラリー状となり、反応容器下部の重金属排水配管へ洩れ出てしまう。かかる点から、この量が10〜60質量%であることが望ましく、更にはこの量が20〜45質量%であることが望ましい。
【0034】
水熱処理工程での水熱処理を130 〜300 ℃の飽和蒸気の存在下において1〜48時間行うことが望ましい〔第7発明〕。この理由は下記の点にある。水熱処理では、カルシウムシリケートの中でも、130 〜300 ℃程度の比較的低温で結晶が成長し強度の高いトバモライトを生成させることがよい。このため、水熱処理条件としては、反応温度:130 〜300 ℃、反応時間:1〜48時間が適切である。反応温度が130 ℃より低い場合、トバモライトの結晶成長が十分行われず、重金属の溶出の抑制効果を高水準にすることが難しくなる。反応温度が300 ℃を越える場合、トバモライトの結晶成長が行われ、溶出抑制効果は期待できるが、処理費が高くなりすぎ、経済性の観点から好ましくない。
【0035】
重金属を含有する廃棄物や重金属を含有する排水での重金属としては、例えば、鉛、ヒ素、セレン、クロム、水銀、鉛、カドミウム、ホウ素がある。これらの1種を含有する場合と、2種以上を含有する場合とがある〔第8発明〕。
【0036】
本発明に係る廃棄物の処理装置は、本発明(第1〜第8発明)に係る廃棄物の処理方法のいずれかを行うための廃棄物の処理装置であって、オートクレーブ内に水熱処理する混合物を充填した水熱処理容器が配され、このオートクレーブから排出される水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁を有する廃棄物の処理装置において、前記水熱処理容器から排出される水を受ける受器と、この受器で受けた水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁とを有することを特徴とする廃棄物の処理装置である〔第9発明〕。
【0037】
ここで、水熱処理容器に充填された混合物は、重金属を含有する廃棄物にカルシウム化合物と上水を混合し、あるいは更にシリカを混合したものであるとする。上記オートクレーブ内に水蒸気を入れた後、加熱すると、水熱処理容器に充填された混合物が水熱処理される。この水熱処理の際に結露した水蒸気がドレン水となり、このドレン水の一部が混合物に接触し、この混合物から重金属が溶出し、この結果、重金属含有排水(重金属を含有する排水)が発生し、この重金属含有排水は受器で受けられ、配管および減圧弁を介してオートクレーブ外に排出され、重金属含有排水用容器に入る。ドレン水の残部(混合物に接触しなかったドレン水)は上記とは別の配管および減圧弁を介してオートクレーブ外に排出され、上記とは別の容器(重金属非含有排水用容器)に入る。
【0038】
上記水熱処理の終了の後、オートクレーブ内から水蒸気を排気すると共にオートクレーブ内の温度を低下させ、しかる後、オートクレーブ内から水熱処理された混合物と共に水熱処理容器を取り出す。上記水熱処理の工程を先行の水熱処理工程とする。
【0039】
上記先行の水熱処理工程においては、混合物中の廃棄物中の重金属が水熱処理によって溶出抑制されるようになる。即ち、かかる溶出抑制された混合物が得られる。
【0040】
後行の水熱処理工程で水熱処理する混合物を準備する。この混合物は、重金属を含有する廃棄物にカルシウム化合物と水を混合し、あるいは更にシリカを混合して得る。このとき、混合する水もしくはその一部として、先行の水熱処理工程において重金属含有排水用容器に入れられた重金属含有排水を用いる。即ち、この重金属含有排水を混合する。この重金属含有排水を混合するだけでは水の量が不足する場合は、この重金属含有排水以外の水も混合する。この重金属含有排水以外の水としては、例えば、工業用水や上水等が利用可能である。
【0041】
このようにして得られた混合物を水熱処理容器に充填し、これをオートクレーブ内に配し、オートクレーブ内に水蒸気を入れた後、加熱する。そうすると、水熱処理容器に充填された混合物が水熱処理される。この水熱処理の際に結露した水蒸気がドレン水となり、このドレン水の一部が混合物に接触し、この混合物から重金属が溶出し、この結果、重金属含有排水が発生し、この重金属含有排水は受器で受けられ、配管および減圧弁を介してオートクレーブ外に排出され、重金属含有排水用容器に入る。ドレン水の残部(混合物に接触しなかったドレン水)は上記とは別の配管および減圧弁を介してオートクレーブ外に排出され、上記とは別の容器(重金属非含有排水用容器)に入る。
【0042】
上記水熱処理の終了の後、オートクレーブ内から水蒸気を排気すると共にオートクレーブ内の温度を低下させ、しかる後、オートクレーブ内から水熱処理された混合物と共に水熱処理容器を取り出す。
【0043】
上記後行の水熱処理工程では、混合物中の廃棄物中の重金属が水熱処理によって溶出抑制されると共に、混合された重金属含有排水中の重金属も水熱処理によって溶出抑制されるようになる。即ち、かかる溶出抑制された混合物が得られる。
【0044】
以上のことからわかるように、本発明に係る廃棄物の処理装置によれば、本発明に係る廃棄物の処理方法を行うことができる。ひいては、水熱処理の際に発生する重金属を含有する排水を、排水処理設備を設けることなく、処理することができる。
【0045】
なお、オートクレーブ内に水熱処理する混合物を充填した水熱処理容器が配され、このオートクレーブから排出される水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁を有する廃棄物の処理装置であって、水熱処理容器から排出される水(重金属含有排水)を受ける受器を設けていない装置の場合には、水熱処理容器から排出される重金属含有排水は混合物に接触しなかったドレン水(重金属非含有排水)と混ざった状態でオートクレーブ外に排出され、容器に入る。この容器に入った排水は、重金属含有排水(先行の水熱処理工程での重金属含有排水)である。しかしながら、この先行の水熱処理工程での重金属含有排水の量は、後行の水熱処理工程で混合物を得る際に必要な水の量よりも著しく多い〔例えば、後述の比較例の場合、(12.4トン/4.9 トン)倍=2.53倍多い〕ので、この先行の水熱処理工程での重金属含有排水の一部は後行の水熱処理工程で混合物を得る際に用いることはできるが、残部は用いることができず、従って、先行の水熱処理工程での重金属含有排水のほとんどは水熱処理をすることができず、残ってしまう。その結果、この重金属含有排水の処理のための設備が別途必要になる。
【0046】
これに対し、本発明に係る廃棄物の処理装置の場合には、水熱処理容器から排出される重金属含有排水と、混合物に接触しなかったドレン水(重金属非含有排水)とを、別々に分けた状態でオートクレーブ外に排出し、別々の容器に入れることができる。この重金属含有排水(先行の水熱処理工程での重金属含有排水)の量は、後行の水熱処理工程で混合物を得る際に必要な水の量よりも少ない(例えば、後述の実施例の場合、4.9 トン−4トン=0.9 トン少ない)ので、この先行の水熱処理工程での重金属含有排水の全てを後行の水熱処理工程で混合物を得る際に用いることができ、ひいては、水熱処理することができる。従って、別途排水処理設備を設ける必要はない。
【0047】
かかる点から、本発明に係る廃棄物の処理装置は、水熱処理容器から排出される水を受ける受器をも有するようにし、更に、この受器で受けた水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁をも有するようにしているのである。即ち、上記のように、水熱処理容器から排出される重金属含有排水と混合物に接触しなかったドレン水(重金属非含有排水)とを別々に分けた状態でオートクレーブ外に排出し、別々の容器に入れることができるようにするために、オートクレーブ内に水熱処理する混合物を充填した水熱処理容器が配され、このオートクレーブから排出される水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁を有する廃棄物の処理装置において、前記水熱処理容器から排出される水を受ける受器と、この受器で受けた水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁とを有することとしているのである。
【0048】
本発明に係る廃棄物の処理装置において、オートクレーブ内の水熱処理容器の外側で発生する凝縮水が水熱処理容器内に入ることを防ぐ防護手段を有するようにすると、水熱処理容器に充填された混合物に接触する水の量が減少する。従って、この混合物からの重金属の溶出量が減少すると共に、重金属含有排水の発生量が減少する。ひいては、後行の水熱処理工程で混合して水熱処理する必要のある重金属含有排水の量が減少する〔第10発明〕。
【0049】
本発明において、混合物の水熱処理とは、混合物を水蒸気中で加熱する処理のこと、即ち、混合物を高温(通常、100℃以上)の水蒸気中に曝す処理のことである。
【実施例】
【0050】
本発明の実施例および比較例について、以下説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
図1に、重金属含有土壌や焼却灰を水熱処理する工程での昇温パターンを示す。常温で消石灰などの添加剤と混合された被処理物はオートクレーブ内で加圧水蒸気により加熱される。図1における昇温時間(T1)は、被処理物が水蒸気と同じ温度に到達するまでの時間であり、この間は凝縮した水蒸気(凝縮水)が被処理物を濡らし、重金属類を含有するドレン水となる。図1における保持時間(T2)は、被処理物が水蒸気と同じ温度まで加熱された後である。この間はオートクレーブが外気へ放熱するための水蒸気結露が起こるのみであり、ドレン水はオートクレーブの内壁を濡らすため、被処理物から重金属類を溶出させることはない。図1の降温時間(T3)は、被処理物の水熱処理を終了した後である。この間は、すでに被処理物の重金属類は溶出抑制された後であるので、ドレン水が接触しても被処理物から重金属類が溶出することはない。従って、図1における昇温時間の間に結露して発生するドレン水のみが重金属類を含有する可能性がある。
【0052】
図2に、実施例1に係る廃棄物の処理方法での処理フローを示す。原料1(被処理物)はシリカを含有する焼却灰であり、この被処理物を上水及び添加剤(消石灰)と混合し、直径約5mm以下の造粒品に成型した後、水熱処理(以下、No.1の水熱処理ともいう)を行なった(以下、この工程をNo.1の水熱処理工程ともいう)。No.1の水熱処理により、水熱処理品1、昇温中に排出した重金属含有のドレン水1および保持時間中と降温時間中に排出した重金属を含有しないドレン水2を得た。原料(被処理物)の乾燥重量10トンあたり、昇温(T1)時間中に発生する重金属含有ドレン水1の重量は4トンで、重金属非含有のドレン水2の重量は8.4 トンであった。
【0053】
次に、上記No.1の水熱処理工程の場合と同様の原料1(シリカを含有する焼却灰)と添加剤(消石灰)と上記重金属含有のドレン水1と上水を混合し、No.1の水熱処理工程の場合と同様に造粒および水熱処理(以下、No.2の水熱処理ともいう)して水熱処理品2を得た(以下、この工程をNo.2の水熱処理工程ともいう)。このとき、混合・造粒の際に必要な水重量が4.9 トンであったため、水としては上記重金属含有のドレン水1の全部(4トン)を添加すると共に、不足分の水として上水0.9 トンを添加した。
【0054】
図3に、比較例1に係る廃棄物の処理方法での処理フローを示す。原料1(被処理物)は実施例1の場合と同様のシリカを含有する焼却灰であり、この被処理物を上水及び添加剤(消石灰)と混合し、上記実施例1の場合と同様に直径約5mm以下の造粒品に成型した後、水熱処理(比較例1)を行なった。水熱処理により、水熱処理品3、昇温中、保持時間中および降温時間中に排出した重金属含有のドレン水3を得た。この重金属含有のドレン水3の重量は12.4トンであった。
【0055】
表1に、原料1、実施例1のNo.1の水熱処理工程およびNo.2の水熱処理工程で得られた水熱処理品1および水熱処理品2、比較例1の場合に得られた水熱処理品3のそれぞれについての重金属溶出量を示す。また、実施例1のNo.1の水熱処理工程で排出した重金属含有のドレン水1、重金属非含有のドレン水2、比較例1の場合に排出した重金属含有のドレン水3のそれぞれについての重金属濃度も合わせて示す。
【0056】
原料1の場合、ヒ素(As)とセレン(Se)の溶出量が環境基準(いずれも0.01mg/L)を超えていた。実施例1のNo.1の水熱処理工程の場合、水としては上水のみを用いており、得られた水熱処理品1の重金属溶出量は環境基準以下だった。実施例1のNo.1の水熱処理工程の場合、昇温中に発生した重金属含有のドレン水1は、ヒ素およびセレンとも環境基準を超えたが、保持および降温中に発生したドレン水2は、重金属濃度が環境基準以下だった。
【0057】
実施例1のNo.2の水熱処理工程の場合、水としては重金属含有のドレン水1の全量(4トン)と上水(0.9 トン)を用いており、得られた水熱処理品2の重金属溶出量は環境基準以下であった。従って、原料に添加する水が表1のように重金属類を含有していても、その後の水熱処理において充分な反応を進めれば、得られる水熱処理品の重金属溶出は抑制できる。
【0058】
これは、原料中の重金属類が水熱処理によって溶出抑制されるようになるのと同様に、この原料に添加され混合された重金属含有のドレン水中の重金属も水熱処理によって溶出抑制されるようになるからである。このように、先行の水熱処理工程(No.1の水熱処理工程)での水熱処理の際に発生した重金属含有排水を後行の水熱処理工程(No.2の水熱処理工程)において処理することができる。従って、先行の水熱処理工程での水熱処理の際に発生する重金属含有排水を、排水処理設備を設けることなく、処理することができる。
【0059】
比較例1の場合、水熱処理の昇温・保持および降温の間に発生する重金属含有のドレン水3は、重金属類を含んでおり、セレン濃度が環境基準を超えていた。比較例1の場合、この重金属含有のドレン水3は後行の水熱処理工程での混合水として用いるというプロセスを採用するものではない。従って、オートクレーブ以外に、この重金属含有のドレン水3(排水)を処理するための排水処理設備を別途設置する必要がある。
【0060】
図4〜5に、本発明に係る廃棄物の処理装置の例を示す。この図4〜5に示す装置は、いずれの場合も、オートクレーブ内に水熱処理する混合物を充填した水熱処理容器が配され、このオートクレーブから排出される水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁を有すると共に、上記水熱処理容器から排出される水を受ける受器と、この受器で受けた水をオートクレーブ外に排出するための配管および減圧弁とを有する。なお、上記水熱処理容器の底部には、ドレン水排出のための口(孔)がある。この装置によれば、混合物(被処理物)と接触したドレン水と接触しないドレン水を別々に排出できる。本発明に係る廃棄物の処理装置は、図4〜5に示す構造のものに限定されず、被処理物と接触したドレン水と接触しないドレン水を別々に排出できる構造であればよい。
【0061】
図6に、本発明の第10発明に係る廃棄物の処理装置の例を示す。この図6に示す装置においては、水熱処理容器にフタを設けている。このフタにより、オートクレーブ内の天井部で凝縮したドレン水が被処理物に接触するのを防止できる。従って、さらに重金属含有ドレン水を分離する効果が高い。即ち、水熱処理容器に充填された混合物に接触する水の量が減少するので、この混合物からの重金属の溶出量が減少すると共に、重金属含有排水の発生量が減少し、ひいては、後行の水熱処理工程で混合して水熱処理する必要のある重金属含有排水の量が減少する。
【0062】
図7に、前述の比較例1に係る廃棄物の処理のための設備フローを示す。図8に、前述の実施例1に係る廃棄物の処理のための設備フローを示す。比較例1の場合、オートクレーブから排出される重金属含有ドレン水はオートクレーブ外に配置された容器に入り、排水処理設備に供給されて排水処理される。実施例1の場合は、重金属含有ドレン水を配管(b) および(d) で混合工程へ戻し再利用できる。混合工程において、この重金属含有ドレン水だけでは水が不足の場合は、上水や工業用水などを追加することができるようにするために、上水や工業用水などを供給するための配管(a) を設けている。なお、図8において符号(c) は重金属非含有ドレン水の排水流路を示すものである。
【0063】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る廃棄物の処理方法によれば、重金属を含有する廃棄物にカルシウム化合物と水を混合し、あるいは更にシリカを混合して得られる混合物を水熱処理するに際し、水熱処理の際に発生する重金属を含有する排水を、排水処理設備を設けることなく、処理することができるので、本発明に係る廃棄物の処理方法は所要設備が少なく経済性に優れていて、重金属を含有する廃棄物の処理方法として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】水熱処理工程での温度変化を示す図である。
【図2】実施例1に係る廃棄物の処理方法での処理フローを示す図である。
【図3】比較例1に係る廃棄物の処理方法での処理フローを示す図である。
【図4】本発明に係る廃棄物の処理装置の例を示す図である。
【図5】本発明に係る廃棄物の処理装置の例であって、図4に示すものとは別の例を示す図である。
【図6】本発明に係る廃棄物の処理装置の例であって、図4〜5に示すものとは別の例を示す図である。
【図7】比較例1に係る廃棄物の処理方法を行うための設備的フローを示す模式図である。
【図8】実施例1に係る廃棄物の処理方法を行うための設備的フローを示す模式図である。
【符号の説明】
【0066】
(a) --配管、(b) --配管、(c) --排水流路、(d) --配管。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之

【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠

【識別番号】100131750
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 芳通


【公開番号】 特開2008−689(P2008−689A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172862(P2006−172862)