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【発明の名称】 燃料配管の洗浄方法
【発明者】 【氏名】関根 智一

【氏名】高森 毅

【氏名】桜井 裕

【要約】 【課題】燃料配管の点検・修理等のための溶断による爆発・発火等のリスクを確実に低減させることができる方法を提供すること。

【構成】次の工程(イ)〜(ロ)、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程(イ)〜(ロ)、
(イ)燃料配管から燃料を排出した後、当該燃料配管に水を張り込み、これを加熱下循
環させる工程
(ロ)前記燃料配管を、少なくとも1回以上、油分散剤および脱脂洗浄剤により洗浄す
る工程
(ハ)上記(ロ)で洗浄された前記燃料配管を窒素パージし、当該燃料配管中の可燃性
ガス濃度を計測する工程
を含むことを特徴とする燃料配管の洗浄方法。
【請求項2】
工程(イ)の水の循環時の温度を、30℃から80℃の範囲に管理する請求項第1項記載の燃料配管の洗浄方法。
【請求項3】
工程(ロ)で用いる油分散剤および脱脂洗浄剤の洗浄時の温度を、30℃から80℃の範囲に管理する請求項第1項または第2項記載の燃料配管の洗浄方法。
【請求項4】
工程(ロ)で用いる油分散剤および脱脂洗浄剤を、これらが含む油分またはそれらの濁度を測定し、この測定値に基づき洗浄液を排出することを特徴とする請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の燃料配管の洗浄方法。
【請求項5】
工程(ロ)で用いる油分散剤および脱脂洗浄剤に、少なくとも1種類以上の界面活性剤を含有せしめることを特徴とする請求項第1項ないし第4項の何れかの項記載の燃料配管の洗浄方法。
【請求項6】
工程(ハ)の可燃性ガス濃度の計測を、洗浄工程後、窒素パージした配管内の可燃性ガス濃度の測定または爆発下限(LEL)の測定で行うことを特徴とする請求項第1項ないし第5項の何れかの項記載の燃料配管の洗浄方法。
【請求項7】
工程(イ)に先立ち、燃料を排出した燃料配管に共洗い油を張り込み、循環および加熱下で共洗いすることを特徴とする請求項第1項ないし第6項の何れかの項記載の燃料配管の洗浄方法。
【請求項8】
循環および加熱下で燃料配管を共洗いした共洗い油について、その比重または粘度を測定し、この測定値に基づき当該共洗い油液を排出することを特徴とする請求項第7記載の燃料配管の洗浄方法。
【請求項9】
共洗い油の循環時の温度を30℃から80℃の範囲に管理する請求項第7項または第8項記載の燃料配管の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電力会社および民間の発電用または蒸気発生用ボイラの燃料配管を点検・修理等のために燃料を効率良く排出し、また洗浄後の溶断による爆発、発火等のリスクを確実に低減することができる燃料配管の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力会社や、民間の発電用または蒸気発生用ボイラの燃料配管は、消防法により定期的に開放し、内部表面の点検を行なわなければならない。この時には、配管内の燃料を抜き取って内部を空にしなければならないが、点検時に溶断作業が伴うので可燃成分を配管外へほぼ完全に排出することが必要になる。
【0003】
ところで、発電用や、蒸気発生用ボイラで使用される燃料には、原油、液化天然ガス(以下「LNG」という)、軽油、重油などがあるが、粘度の大きい原油、重油などは他の燃料と比較して排出の効率が悪く、特に原油は産出場所によって性状や成分が大きく異なり、常温で流動しないものすらある。例えば中国の大慶原油やインドネシアのミナス原油は、ろう分が多く、常温で固体である。
【0004】
このような粘度の高い原油を燃料として使用する場合には、燃料配管にコイルヒーターなどの熱源を常備させて流動性を保持するが、点検前の排出の際の温度調整は難しく、原油の残留をなるべく少なくするという目的には、熱源だけでは充分なものではなかった。
【0005】
従来、点検前の燃料排出方法は、次のような手順で行われていた。
【0006】
(a)窒素による原油排出:
この手順は、窒素で配管内を加圧し、ドレン管より原油をサービスタンクなどに排出する作業であり、排出箇所毎に燃料が出てこないことを確認する。
【0007】
(b)テストポンプまたは蒸気による排出:
上記手順(a)において、ドレン管が詰まっていた場合には、テストポンプまたは蒸気を使用して固化した原油などの燃料を除去する方法をとっているが、閉塞部に蒸気を使用するという点での危険度は大きい。
【0008】
(c)燃料排出中の判断:
排出用仮設配管のバイパス弁を微開にして燃料が出てこないことを確認した後、本設燃料配管と仮設配管とを切り離してブロー弁を微開にし、燃料が出てこないことを確認する。
【0009】
(d)燃料排出終了の判断:
排出終了2時間経過後及び翌日に、本設原油配管末端部の燃料排出箇所にて燃料の排出がないこと及び酸素濃度5%以下を確認する。(その後、溶断作業へ続く。)
【0010】
以上のように、従来法は燃料の排出を確認する作業のみで、その後の点検を実施していたが、この方法では、何らかの理由で燃料の排出が認められなくても、原油が残存しているケースがあり、実際に溶断時に火災事故を起こした設備もあった。
【0011】
このように、電力会社や、民間の発電用あるいは蒸気発生用ボイラの燃料配管燃料配管の定期点検にあたっては、確実に原油を排出し、点検・修理等のための溶断による爆発、発火等のリスクを低減することができる手段の開発が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、点検・修理等のための溶断による爆発・発火等のリスクを確実に低減させることができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、加熱された水による循環洗浄(温水洗浄)および必要によりこれに先立って共洗い油による共洗いを行うことにより効率よく油分を除去することができ、その後、油分散剤による洗浄、脱脂洗浄剤による洗浄を1回以上行い、最終的に窒素パージした配管内の可燃性ガス濃度の確認を行うことで爆発・発火等のリスクを確実に低減することができることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち本発明は、次の工程(イ)〜(ロ)、
(イ)燃料配管から燃料を排出した後、当該燃料配管に水を張り込み、これを加熱下循
環させる工程
(ロ)前記燃料配管を、少なくとも1回以上、油分散剤および脱脂洗浄剤により洗浄す
る工程
(ハ)上記(ロ)で洗浄された前記燃料配管を窒素パージし、当該燃料配管中の可燃性
ガス濃度を計測する工程
を含むことを特徴とする燃料配管の洗浄方法である。
【0015】
また本発明は、前記工程(イ)に先立ち、燃料を排出した燃料配管に共洗い油を張り込み、循環および加熱下で共洗いする前記燃料配管の洗浄方法である。
【0016】
更に本発明は、上記の循環洗浄中の管理を温度、pH、油分濃度、濁度、比重、粘度等の測定で実施し、また洗浄後の最終確認として可燃性ガス濃度を測定する工程を含む前記燃料配管の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明方法によれば、燃料配管中の油分を効率良く系外に排出することができ、可燃性ガスの除去を確実に行うことができる。従って、従来の方法と比較して安全性を大幅に高めることが可能となる。
【0018】
従って、本発明方法は、現状で広く行われている燃料排出のみの工法より安全性が高いので、電力会社および民間の発電用または蒸気発生用ボイラの定期点検時の安全性を大幅に高めることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明方法で対象とする燃料配管は、主に、電力会社や、民間の発電用または蒸気発生用ボイラの燃料配管など、消防法により定期的に開放し、内部表面の点検を行なわなければならないものであるが、これに限らず、他の燃料配管であっても改良工事や解体工事などで安全に溶断作業を行う必要があるものも含まれる。また、本発明方法で対象とする燃料は、前記したように、原油、LNG、軽油、重油等であり、このうち原油については、産出場所によるその性状の相違を問題としない。
【0020】
本発明方法は基本的に、燃料を排出した燃料配管に水を張り込み、これを加熱下循環させることにより燃料配管を洗浄する工程(工程(イ))、この燃料配管を、油分散剤および脱脂洗浄剤で少なくとも1回以上洗浄する工程(工程(ロ))および洗浄した燃料配管を窒素パージし、当該燃料配管中の可燃性ガス濃度を計測する工程(工程(ハ))よりなるものである。
【0021】
このうち、工程(イ)は、例えば、燃料配管に循環戻りの仮設配管を取り付けた後、当該配管中に水を注入し、加熱した後、0.5〜3m/sec程度、好ましくは、1〜2m/sec程度の速度で循環させ、洗浄を行う。この際、洗浄効率を上げるため、純水中にアルカリを加えても良い。洗浄にあたっての循環方法には特に制約はないが、本設配管を利用し、循環させることが好ましく、また、流速を小さくして油水分離を行うために、循環戻りの仮設配管にバッファタンクを設置することが望ましい。
【0022】
工程(イ)での加熱温度は、30〜80℃程度、好ましくは、50〜70℃程度である。また、洗浄時間は、3〜10時間程度、好ましくは、4〜8時間程度である。
この工程の終了は、目視により判断すればよく、一般には油分量が容量比で1%未満になった時点で終了と判断すればよい。
【0023】
次の工程(ロ)は、油分散剤および脱脂洗浄剤による燃料配管の洗浄工程である。この工程で使用する油分散剤は、界面活性剤を含有するものであり、油を液中に可溶化させる作用を有する。
【0024】
この油分散剤に含まれる界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤のいずれものもの使用することができるが、アミンオキサイド系の界面活性剤が特に好ましい。この界面活性剤は洗浄液量に対し、0.3から1.0質量%(以下、単に「%」で示す)の界面活性剤を添加することにより調製される。また、液の乳化を促進するために油分散剤のpHを弱アルカリ側に調整することもできる。
【0025】
また、工程(ロ)においては、油分散剤を使用する洗浄の後に脱脂洗浄剤を使用する循環洗浄を行なう。この脱脂洗浄剤は1種以上の無機アルカリ塩および界面活性剤を含有する。この脱脂洗浄剤は、乳化作用を有するものであり、併用した場合は、前述の油分散剤とあいまって効果的に油分を排出する。
【0026】
工程(ロ)の洗浄では、油分散剤や脱脂洗浄剤は加熱した状態とし、循環洗浄として実施することが好ましい。その場合の加熱温度は、30から80℃程度、特に50から70℃程度であることが好ましい。更に、この工程(ロ)においても、燃料配管に循環戻りの仮設配管を設け、更にこれに、流速を小さくして油水分離を行うためのバッファタンクを設置することが望ましい。
【0027】
上記工程(ロ)は、1回のみであっても良いが、複数回繰り返し行い、残存油分を完全に除去することが望ましい。また、工程(ロ)の洗浄では、油分散剤や脱脂洗浄剤を含有する洗浄剤が含む油分またはそれらの濁度を測定し、この測定値に基づき洗浄の程度を判定することができる。例えば、油分を測定する場合は、洗浄液中の油分が、一定となった場合に、洗浄が完了したと判断すれば良いし、濁度を測定する場合は、これが一定となった場合に、洗浄が完了したと判断すれば良い。
【0028】
なお、上記工程(ロ)で、油分散剤および脱脂洗浄剤による洗浄工程を使用する理由は次の通りである。すなわち、油分散剤による洗浄では、油分は可溶化し、水中に溶解するが、この可溶化能力には限界があるため、一部の油分は残存する。この残存した油分を、燃料配管から除去するために、脱脂洗浄剤によって、油分を乳化し、これを除去するのである。
【0029】
最後に、工程(ハ)で、前記の洗浄により空になった配管を窒素でパージしながら配管内の可燃性ガスを測定して、燃料が残存していないことを最終的に確認する。確認のための濃度基準は、各事業所において定めればよいが、その一例としては、可燃性ガス濃度で0.03%以下、爆発下限(LEL)値で1.7%以下(いずれもイソブタン校正)を挙げることができる。
【0030】
本発明の洗浄方法は、上記の工程(イ)ないし(ハ)で実施することができるが、必要により、工程(イ)の前に、流動性の低い燃料を除去するために共洗い油を使用する共洗い工程を加えても良い。この共洗い工程で使用する共洗い油としては、粗軽油(LGO)、軽油、フレッシュ原油等を挙げることができる。このうち、LGOとは脱硫前の軽油であり、石油精製プラントの常圧蒸留塔(CDU)によって得られるものである。またフレッシュ原油とは、原油タンクからスラッジ等を除去して比較的粘度の小さな原油である。
【0031】
この共洗い工程により、残留燃料が流動化したかどうかは、実験的あるいは経験的にも判断できるが、循環液の比重あるいは粘度を経時的に測定し、これが所定の値に達したときに流動化したと判断することが好ましい。
【0032】
流動化を判断するための所定の値としては、例えば、比重では、0.85以上、特に0.9以上、粘度では、1000mPa・s以下の値を目安にすればよい。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0034】
実 施 例 1
(1)500mlのビーカー2つを用い、この中に実際に使用されている燃料(ミナス原油)、25g、50gをそれぞれに添加した。次いで、温水475g、450gをそれぞれに添加し、温水洗浄前のモデルを作成した。温度を60±5℃に保ち、スターラによる撹拌を行いながら、浮上油のスキミングを駒込ピペットにてできるだけ行った。8時間経過後、温水を短時間(10秒程度)でそれぞれ排出した。直後にそれぞれのビーカーにラップをして、密閉容器中の爆発下限(LEL)を測定した結果、それぞれ5%であった。
【0035】
(2)続いて温水500mlをそれぞれのビーカーに添加した後、温度を60±5℃に保ち、スターラによる撹拌を行いながら最終濃度が1.0%となる量の界面活性剤(アミンオキサイド系界面活性剤;United675;ユナイテッド・ラボラトリー・インターナショナル社製)をそれぞれに添加した。1.5時間撹拌した後、液をそれぞれ排出した。
【0036】
(3)更に、あらかじめ調製して加温した脱脂洗浄剤(無機アルカリ塩0.5%およびノニオン系界面活性剤(ライオミックスMH;ライオン製)0.1%)500mlをそれぞれのビーカーに添加した後、温度を60±5℃に保ち、スターラによる撹拌を6時間行った。その後、液をそれぞれ排出した。直後にそれぞれのビーカーにラップをして、密閉容器中のLELを測定した結果、いずれも1%未満であった。
【0037】
実 施 例 2
(1)500mlのビーカー2つを用い、この中に実施例1と同じ燃料(ミナス原油)25g、50gをそれぞれに添加した。次いで、pHを弱アルカリに調製した温水475g、450gをそれぞれに添加し、温水洗浄前のモデルを作成した。温度を60±5℃に保ち、スターラによる撹拌を行いながら、浮上油のスキミングを駒込ピペットにてできるだけ行った。8時間経過後、温水をそれぞれ排出した。直後にそれぞれのビーカーにラップをして、密閉容器中のLELを測定した結果、それぞれ1%未満および1%であった。
【0038】
(2)続いて、弱アルカリに調製した温水500mlをそれぞれのビーカーに添加した後、温度を60±5℃に保ち、スターラによる撹拌を行いながら1.0%の界面活性剤(アミンオキサイド系界面活性剤;United675;ユナイテッド・ラボラトリー・インターナショナル社製)をそれぞれに添加した。1.5時間撹拌した後、液をそれぞれ排出した。直後にそれぞれのビーカーにラップをして、密閉容器中のLELを測定した結果、それぞれ1%未満であった。
【0039】
(3)更に、実施例1と同様に脱脂洗浄を行った後、密閉容器中のLELを測定した結果、いずれも1%未満であった。
【0040】
実施例2結果は、目視ではあるが実施例1よりも温水洗浄後の原油除去効果が高く、また次の工程の油分散剤による撹拌でも乳化力が大きかったので、この方法での条件メリットは大きい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明方法は、燃料配管中の残存油分を効率良く系外に排出することができ、可燃性ガスの除去を確実に行うことができるものであり、従来の方法と比較して安全性を大幅に高めることが可能となるものである。
【0042】
従って、本発明方法は、現状で行われている燃料排出のみの工法より安全性が高い方法として、電力会社や、民間の発電用または蒸気発生用ボイラの定期点検や修理時の燃料配管の溶断を安全に行うことができるものである。
以 上
【出願人】 【識別番号】591172663
【氏名又は名称】荏原工業洗浄株式会社
【出願日】 平成18年8月7日(2006.8.7)
【代理人】 【識別番号】100086324
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 信夫


【公開番号】 特開2008−36537(P2008−36537A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−214328(P2006−214328)