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【発明の名称】 洗浄装置、および該洗浄装置を含む洗浄ユニット
【発明者】 【氏名】小島 憲和

【氏名】岡田 善造

【氏名】▲桑▼山 裕將

【氏名】菊池 義治

【要約】 【課題】粉体アルカリ洗浄剤の性能を損なうことなく、作業性、生産性及び洗浄品質に係る問題点を解決する。

【構成】本発明の洗浄装置100は、液状の補給薬剤を補給しつつ洗浄処理を行う本槽部101を有する洗浄槽103と、洗浄液の循環ポンプユニット104と、補給薬剤の貯蔵用タンク105、106と、補給薬剤を補給する補給装置107、108と、補給装置107、108に補給の開始および停止の信号を出力する制御部110と、本槽部101内の洗浄液に補給薬剤を補給するための補給用ボックス111を備える。この補給用ボックス111は、貯蔵用タンク106からの補給薬剤が注がれる第一の流入部112と、ポンプユニット104からの洗浄液が注がれる第二の流入部113と、第一の流入部112から注がれた補給薬剤が第二の流入部11から注がれた洗浄液に希釈されつつともに本槽部101内へと流出する流出部114とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液に対して少なくとも一種類の液状の補給薬剤を補給しつつ洗浄処理を行う洗浄装置であって、
洗浄液を内在し洗浄対象の洗浄を行う本槽部を有する洗浄槽と、
前記本槽部内の洗浄液の一部を吸引して吐出することで該洗浄液を循環させるポンプユニットと、
前記補給薬剤を蓄積する貯蔵用タンクと、
前記貯蔵用タンクから前記洗浄槽内へと前記補給薬剤を補給する補給装置と、
前記補給装置に補給開始および補給停止の信号を出力する制御部とを備え、
前記本槽部は、該本槽部内の洗浄液に前記補給薬剤を補給するための補給用ボックスを備え、
該補給用ボックスは、
前記貯蔵用タンクからの補給薬剤が注がれる第一の流入部と、
前記ポンプユニットからの洗浄液が注がれる第二の流入部と、
前記第一の流入部から注がれた補給薬剤が前記第二の流入部から注がれた洗浄液に希釈されつつともに前記本槽部内へと流出する流出部とを有する
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
洗浄液に対して少なくとも一種類の液状の補給薬剤を補給しつつ洗浄処理を行う洗浄装置であって、
洗浄液を内在し洗浄対象の洗浄を行う本槽部を有する洗浄槽と、
前記本槽部内の洗浄液の一部を吸引して前記本槽部外に設けられた吐出部から該洗浄液を流出させることで前記本槽部内の洗浄液を循環させるポンプユニットと、
前記ポンプユニットの吐出部の後段に設置され、前記本槽部の容量の4〜50%の容量を有して該ポンプユニットからの洗浄液を一時的に貯留するクッションタンクと、
前記補給薬剤を蓄積する貯蔵用タンクと、
前記貯蔵用タンクから前記洗浄槽内へと前記補給薬剤を補給する補給装置と、
前記補給装置に補給開始および補給停止の信号を出力する制御部とを備え、
前記クッションタンクは、その内部の洗浄液の液面が前記本槽部内の洗浄液の液面よりも高くなるように設置されるとともに、該クッションタンク内部の洗浄液に前記補給薬剤を補給するための補給用ボックスを備え、
該補給用ボックスは、
前記貯蔵用タンクからの補給薬剤が注がれる第一の流入部と、
前記ポンプユニットの吐出部からの洗浄液が注がれる第二の流入部と、
前記第一の流入部から注がれた補給薬剤が前記第二の流入部から注がれた洗浄液に希釈されつつともに前記クッションタンク内へと流出する流出部とを有する
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄槽は、前記本槽部からオーバーフローした洗浄液を一時的に貯留するオーバーフロー部を有し、当該オーバーフロー部内の洗浄液が前記ポンプユニットへと吸引される請求項1または2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記本槽部内の液面を計測する手段からの信号、前記洗浄処理の処理時間を計測する手段からの信号、前記洗浄処理の処理量を計測する手段からの信号、および前記洗浄液の液状態を計測する手段からの信号の少なくとも一つを入力として、これらの信号に基づいて補給を開始すべきか停止すべきかを決定し、その決定に基づいて補給開始の信号または補給停止の信号を前記補給装置へと出力する
請求項1から3のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記洗浄液の液状態を計測する手段で測定された液状態指標に基づく信号を入力として補給を開始すべきか停止すべきかを決定することとし、
該液状態指標に基づいて規定される制御パラメータに第一の設定値S1と第二の設定値S2(ただし、S1<S2)とを設け、前記制御パラメータが前記第一の設定値S1以下となったことを条件として補給開始の制御信号を前記補給装置に対して出力し、前記第二の設定値S2以上となったことを条件として補給停止の制御信号を前記補給装置に出力する制御を行う
請求項4記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記洗浄液の液状態を計測する手段で測定された液状態指標に基づく信号を入力として補給を開始すべきか停止すべきかを決定することとし、
該液状態指標に基づいて規定される制御パラメータの変動が、所定の設定値未満となる、該設定値を超える、および該設定値と同一の数値を示す、の少なくとも一つの状態となったことを条件として、所定時間の第一の不感時間T1を設定し、当該第一の不感時間T1内については、前記制御パラメータが設定値以上になっても設定値未満となってもその信号に基づいて補給停止・開始の信号を出力しない制御を行う
請求項4または5記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記補給装置に補給開始の信号を出力したことを条件として当該制御部が備えるカウントダウンタイマーを始動させ、該カウントダウンタイマーの計時が終了するまでの間に補給停止の制御信号が一度も出力されていないことを条件として、補給停止の信号を前記補給装置へと出力する制御を行う
請求項4から6のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記補給装置によって前記貯蔵用タンクから流出する前記補給薬剤の流量を計測する補給薬剤流量計測手段および/または前記貯蔵用タンク内の前記補給薬剤の残液量を計測する補給薬剤残量計測手段を備え、
前記制御部は、前記補給薬剤流量計測手段および/または前記補給薬剤残量計測手段が出力する異常信号を入力したことを条件として、補給停止の信号を前記補給装置へと出力する
請求項1から7のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項9】
請求項1から8に記載される洗浄装置を用いた第一の洗浄処理と他の湿式処理とを行うための洗浄ユニットであって、
前記第一の洗浄処理を行うための洗浄装置が備える制御部は、前記他の湿式処理の液管理に係る制御を一部実行すること、前記他の湿式処理の処理状態および/または処理状況に係るデータに基づいて前記第一の洗浄処理に係る制御を実行すること、ならびに前記第一の洗浄処理を行うための洗浄装置が備える補給装置の少なくとも一つに対して前記他の湿式処理の液管理の目的で補給開始の信号を出力することの少なくとも一つを行うことを特徴とする洗浄ユニット。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本願発明は、前処理工程を備えた生産ラインにおいて、洗浄性能等各種性能の他、採算性を考慮することが可能な管理及び補給を実現しうる洗浄装置およびその洗浄装置を含む洗浄ユニットに関する。より詳細には、特に粉体状態の洗浄剤で問題となっている作業性、生産性および洗浄品質を改善し、しかも粉体洗浄剤にて得られる各種性能を維持、もしくは従来以上に向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金属用アルカリ洗浄剤は、商品価格、流通および保管等の経費を含め、コスト的側面が重視されていることから、性状として粉体である商品が最も一般的である。
この様な有意性を考慮しても、粉体という性状である以上解決が困難な問題が作業性、および生産性の問題であり社会通念を考慮しても必ず解決されるべき問題である。
【0003】
<作業性>主成分として大量に含まれるアルカリ剤は空気中に飛散することにより作業者の皮膚粘膜に大きな損傷を与え、作業者が保護具等による十分な防衛策を施す場合でも、その作業性の悪さから、取り扱いに煩雑性が生じ、更には労働災害の誘因、洗浄品質のばらつき発生等の可能性については否定できない。
【0004】
<生産性、洗浄品質>アルカリ剤として一般的なアルカリ金属の水酸化物、珪酸のアルカリ金属塩等は潮解性が高く、空気中に放置した場合には水分を吸収して粒子の凝集を生じることから、ホッパー、フィーダーによる自動補給が困難である。よってバッチ式投入の上、溶解後ようやく使用が可能となることから、この間の歩留まりの発生は回避できない。場合によってはこの歩留まりを回避するため、補給を実施せずに洗浄性能の低下を了承しつつ日中の操業を続け、操業終了後補給を実施する場合も多い。
【0005】
この様な粉体アルカリ洗浄剤に対する問題に対し、洗浄剤を液体化すること、更には流通等のコストに見合う様な濃度での供給の為、その液体をより濃縮されたものとする努力がなされてきた。
【0006】
特許文献1では、珪酸塩・リン酸塩等の無機ビルダー成分及び/または界面活性剤等を十分に濃厚な状態で溶解または分散するための分散及び結晶化防止成分としてカチオン化糖類を用い、また特許文献2では一定範囲内の分子量をもつエチレン性不飽和有機モノマーの単独もしくは共重合体、またはその塩を分散剤として配合している。
【0007】
また作業性及び生産性を向上させる為、従来人手に頼っていた作業を自動化すること、更にその手法を確立することでより高い生産性を確保するための検討がなされた。
特許文献3では、洗浄浴の保守手段としてプログラム制御下にてアルカリ度を自動測定し、要求に応じて計量補給する装置を作動させる、という方法について記載されている。遠隔地操作による安全性向上も謳われている。
【0008】
特許文献4では、洗剤濃度を設定値から行き過ぎをもたらすことなく、設定値へ迅速に到達させるための洗浄濃度可変調節装置及び最適化方法について記載されており、この設定値には伝導度(以下、「導電率」と記す。)が用いられている。
【特許文献1】特開平6−184775(明細書3頁右2行目以降)
【特許文献2】特開平11−181587(明細書)
【特許文献3】特表2002−501119
【特許文献4】特表平7−504609
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に例示されるようなアルカリ洗浄剤の液体濃縮化技術によって、流通等のコスト増を最小限に抑制し、かつ従来の粉体アルカリ洗浄剤の作業性、生産性および洗浄品質を向上させるのに一定の効果が認められるものの、濃厚なアルカリを取り扱う必要から作業性を更に向上させる必要があり、また特許文献3及び特許文献4にある様な自動化技術をより具体化させ、少なくとも従来粉体洗浄剤において得られた洗浄性能を持ち合わせる、より高レベルの生産性の実現が要求されている。
【0010】
本願発明は、従来の粉体アルカリ洗浄剤によって得られる良好な性能を損なうことなく、更には粉体アルカリ洗浄剤による弊害とも言える作業性、生産性及び洗浄品質に係る問題点を解決しようとするものである。
【0011】
また、液体のアルカリ洗浄剤に用いられる補給液は保管スペース削減の観点などから液体の粘度が高い場合が多いため、他の湿式処理に比べて薬剤補給時にトラブルが発生しやすいので、本願発明はこうしたトラブル発生を抑制する手段を提供することも課題とする。
【0012】
さらに、本発明は、めっき、塗装、熱処理といった金属表面処理に対し、脱脂を含む前処理工程一式をトータル的に管理するという新たな発想を付加することにより、作業性、生産性及び洗浄品質に係る効果をより一層高めるものである。本願発明では、以上の様な性能を追求する他、これを生産ラインに応用した場合の採算性を含めた知見を併せて打ち出すことを特徴としており、最も現実的なライン設計を具体化することを可能とするものである。
【0013】
ここで、「従来の粉体アルカリ洗浄剤によって得られる良好な性能」とは、洗浄性能等、洗浄に際し通常要求される性能全般の他、生分解性等の環境規制の問題を考慮した場合、同等な洗浄力であっても、分離結晶化防止の為に有機成分が高い比率で添加された液体洗浄剤に比べて生分解性がよい、といった、粉体洗浄剤の使用では憂慮することを要しなかった環境負荷要因的な有効性を含む。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決すべく提供される本願発明に係る洗浄装置は、次の(1)から(3)のような装置構成を有する。
(1)洗浄液に対して少なくとも一種類の液状の補給薬剤を補給しつつ洗浄処理を行う洗浄装置であって、洗浄液を内在し洗浄対象の洗浄を行う本槽部を有する洗浄槽と、本槽部内の洗浄液の一部を吸引して吐出することでこの洗浄液を循環させるポンプユニットと、補給薬剤を蓄積する貯蔵用タンクと、貯蔵用タンクから洗浄槽内へと補給薬剤を補給する補給装置と、補給装置に補給開始および補給停止の信号を出力する制御部とを備え、本槽部は、この本槽部内の洗浄液に補給薬剤を補給するための補給用ボックスを備え、この補給用ボックスは、貯蔵用タンクからの補給薬剤が注がれる第一の流入部と、ポンプユニットからの洗浄液が注がれる第二の流入部と、第一の流入部から注がれた補給薬剤が第二の流入部から注がれた洗浄液に希釈されつつともに本槽部内へと流出する流出部とを有する。
【0015】
ここで、「補給装置」とは、貯蔵用タンク内の薬剤を洗浄槽に移送するためのポンプに加えて、このポンプを駆動するための制御電源や、ポンプの動作を直接的に制御する制御機構が含まれていてもよい。このように補給装置が制御の機能を有している場合には、制御部はその制御に所定の制御信号を出力することになる。
【0016】
「補給開始の信号」とは、補給装置が備えるポンプが貯蔵用タンク内の薬剤を洗浄槽に移送する動作を開始する、または動作を継続するために必要な信号であって、断続的な信号でも連続的な信号でもよい。例えばポンプがステッピングモーターにより駆動されている場合には、モータを直接駆動させるパルス電圧でもよいし、このパルス電圧を出力する制御電源の出力開始を指示する制御信号でもよい。また、補給装置になんらかの制御機構が付与されていて、所定電圧以上の電圧が入力されているときには補給を行い、この入力電圧が所定電圧に満たないときには補給を停止するような場合には、「補給開始の信号」とは、所定電圧以上の電圧を有する連続的な信号となる。
【0017】
「補給停止の信号」とは補給装置が備えるポンプが貯蔵用タンク内の薬剤を洗浄槽に移送を行わない状態を作り出すまたはその状態を維持するために必要な信号であって、断続的な信号でも連続的な信号でもよい。また、「補給停止の信号を出力する」とは、補給開始の信号を出力しない状態とする、またはその状態を維持するという意味をも含むものとする。したがって、上記のステッピングモーターの例をとると、駆動パルス電圧を出力しない状態や、制御電源の出力開始の制御信号を出力しない状態が、補給停止の信号を出力していることとなる。
【0018】
「制御部」とは、洗浄装置の各要素が適切に動作するために必要なデータを入力し、各要素の動作を決定する演算を行い、所定の信号を各要素に対して出力するものである。具体的には、洗浄処理を管理する者の意思を受け取る入力手段(例えばテンキー、タッチパネル)、洗浄装置の状態や状況を把握するための計測機器(例えばセンサーコントローラー、タイマー、カウンター)、入力部や計測機器から入力されたデータを格納する記憶手段(例えば半導体メモリー)、入力データや記憶手段に格納されたデータに基づいて演算を行う演算手段(例えばCPU)、演算手段の結果に基づいて各要素に信号を出力する出力手段(例えば制御電源、リレー)、さらに、洗浄処理の管理者に洗浄状態の状態や状況を報知する報知手段(例えば液晶ディスプレイ、警報器)を有する。
【0019】
(2)洗浄液に対して少なくとも一種類の液状の補給薬剤を補給しつつ洗浄処理を行う洗浄装置であって、洗浄液を内在し洗浄対象の洗浄を行う本槽部を有する洗浄槽と、本槽部内の洗浄液の一部を吸引して本槽部外に設けられた吐出部からこの洗浄液を流出させることで本槽部内の洗浄液を循環させるポンプユニットと、ポンプユニットの吐出部の後段に設置され、本槽部の容量の4〜50%の容量を有してこのポンプユニットからの洗浄液を一時的に貯留するクッションタンクと、補給薬剤を蓄積する貯蔵用タンクと、貯蔵用タンクから洗浄槽内へと補給薬剤を補給する補給装置と、補給装置に補給開始および補給停止の信号を出力する制御部とを備え、クッションタンクは、その内部の洗浄液の液面が本槽部内の洗浄液の液面よりも高くなるように設置されるとともに、このクッションタンク内部の洗浄液に補給薬剤を補給するための補給用ボックスを備え、この補給用ボックスは、貯蔵用タンクからの補給薬剤が注がれる第一の流入部と、ポンプユニットの吐出部からの洗浄液が注がれる第二の流入部と、第一の流入部から注がれた補給薬剤が第二の流入部から注がれた洗浄液に希釈されつつともにクッションタンク内へと流出する流出部とを有する。
【0020】
クッションタンクの容量は本槽部の容量よりも小さいため、クッションタンク内の液流は本槽部よりも高くなる。このため、クッションタンク内の洗浄液は本槽部よりも激しく攪拌される。したがって、クッションタンクに補給用ボックスを設けることで、補給された薬剤が速やかにタンク内に拡散し、局所的な高濃度の領域が発生しにくくなる。この観点からはクッションタンクの容量は少ないほうが好ましいが、少なすぎるとクッションタンク内の液組成と本槽部内の液組成との差異が大きくなり、液組成の管理が困難となる。このため、クッションタンクの容量は本槽部の容量の4〜50%とする。好ましくは10〜30%であり、特に好ましいのは15〜25%である。
【0021】
なお、クッションタンクに貯留された洗浄液はオーバーフローした分が本槽部内に供給される構成とし、クッションタンクの液面が変動しないようにすることが好ましい。液面を一定とすることで貯留させた洗浄液量が安定し、結果として本槽部内に供給される洗浄液の組成が安定化しやすくなる。また、クッションタンクにセンサー等の液状態計測手段を設置する場合には、液面が一定であることによって計測環境が安定化し、計測結果の信頼性が高まる。
【0022】
(3) 上記(1)または(2)記載の洗浄装置であって、洗浄槽は、本槽部からオーバーフローした洗浄液を一時的に貯留するオーバーフロー部を有し、そのオーバーフロー部内の洗浄液がポンプユニットへと吸引される。
【0023】
上記(1)から(3)に記載される洗浄装置は、次の(4)から(8)に記載される制御を単独でまたは複数組み合わせて行ってもよい。
(4)制御部は、本槽部内の液面を計測する手段からの信号、洗浄処理の処理時間を計測する手段からの信号、洗浄処理の処理量を計測する手段からの信号、および洗浄液の液状態を計測する手段からの信号の少なくとも一つを入力として、これらの信号に基づいて補給を開始すべきか停止すべきかを決定し、その決定に基づいて補給開始の信号または補給停止の信号を補給装置へと出力する。
【0024】
ここで、洗浄液の液状態を計測する手段は、クッションタンクを有する構成の場合にはクッションタンクに、クッションタンクを有しない構成の場合には本槽部に設置することが好ましい。
【0025】
(5)制御部は、洗浄液の液状態を計測する手段で測定された液状態指標に基づく信号を入力として補給を開始すべきか停止すべきかを決定することとし、この液状態指標に基づいて規定される制御パラメータに第一の設定値S1と第二の設定値S2(ただし、S1<S2)とを設け、制御パラメータが第一の設定値S1以下となったことを条件として補給開始の制御信号を補給装置に対して出力し、第二の設定値S2以上となったことを条件として補給停止の制御信号を補給装置に出力する制御を行う。
【0026】
「液状態指標」とは、洗浄液の物理的、化学的状態を示す指標であって、例えば導電率、pH、特定のイオン濃度、温度、粘度、透過率、密度(比重)、液中の微粒子分布状態(具体例としては微粒子の液中分散率、粒子径の分布)などが挙げられる。
【0027】
また、「制御パラメータ」とは制御部が制御を行うに当たって直接的に使用するパラメータであり、液状態指標がそのまま適用されてもよいし、たとえば脱脂成分濃度のように、これらの指標から換算されたパラメータを用いてもよい。
【0028】
さらに、制御パラメータとして、またはその算出のために用いる液状態指標は一つでもよいし、複数であってもよい。複数の場合にはいずれか一方を採用することとしてもよいし、複数の指標に基づいて制御パラメータを算出してもよい。こうした制御パラメータに係る演算処理は制御部が行ってもよいし、洗浄液センサーが演算して結果を信号として制御部に出力してもよい。
【0029】
なお、第一の設定値S1については制御パラメータがS1未満となったことを制御上の条件としてもよいし、第二の設定値S2については制御パラメータがS2を超えたことを制御上の条件としてもよい。
【0030】
(6) 制御部は、洗浄液の液状態を計測する手段で測定された液状態指標に基づく信号を入力として補給を開始すべきか停止すべきかを決定することとし、この液状態指標に基づいて規定される制御パラメータの変動が、所定の設定値未満となる、この設定値を超える、およびこの設定値と同一の数値を示す、の少なくとも一つの状態となったことを条件として、所定時間の第一の不感時間T1を設定し、その第一の不感時間T1内については、制御パラメータが設定値以上になっても設定値未満となってもその信号に基づいて補給停止・開始の信号を出力しない制御を行う。
【0031】
このように不感時間を設定することで、チャタリングの影響を排除することが実現され、ポンプユニットへの負荷が緩和される。
ここで、(イ)「設定値未満となる」とは、制御パラメータの数値が所定の設定値以上であったものが、数値が減少して設定値未満となったときに条件満足と判定するという意味であり、(ロ)「設定値を超える」とは、制御パラメータの数値が所定の設定値以下であったものが、数値が増加して設定値を超えたときに条件満足と判定するという意味である。(ハ)「設定値と同一の数値を示す」とは、制御パラメータの数値が、所定の有効桁数で規定される所定値と同一となったときに、その前の数値の推移とは無関係に、条件を満足したと判定するという意味である。これらの(イ)、(ロ)、(ハ)に係る条件のいずれか一つを満足したときに計時を開始するとしてもよいし、(イ)もしくは(ロ)のいずれか一方、または(イ)もしくは(ハ)のいずれか一方を満足したときに計時を開始するとしてもよい。
【0032】
また、不感時間とポンプ動作の制御信号との関係は、補給開始または停止の信号を出力した後に不感時間の計時を開始してもよいし、不感時間の計時が終了した後に補給開始または停止の信号を出力してもよい。不感時間の計時が終了した後に補給開始または停止の信号を出力する場合には、計時終了後に制御パラメータと設定値との比較を再度行って、動作すべきか否かの判定を行うようにすれば、より信頼性の高い制御が可能である。
【0033】
さらに、この不感時間の開始を判定するための設定値は(5)のように複数設定してもよいし、ポンプの補給開始のための第一の不感時間(例えばT1)とポンプの補給停止のための第二の不感時間(例えばT2)とを独立に設定してもよい。
【0034】
(7)制御部は、補給装置に補給開始の信号を出力したことを条件としてその制御部が備えるカウントダウンタイマーを始動させ、このカウントダウンタイマーの計時が終了するまでの間に補給停止の制御信号が一度も出力されていないことを条件として、補給停止の信号を補給装置へと出力する制御を行う。
【0035】
(8)補給装置によって貯蔵用タンクから流出する補給薬剤の流量を計測する補給薬剤流量計測手段および/または貯蔵用タンク内の補給薬剤の残液量を計測する補給薬剤残量計測手段を備え、制御部は、補給薬剤流量計測手段および/または補給薬剤残量計測手段が出力する異常信号を入力したことを条件として、補給停止の信号を補給装置へと出力する。
【0036】
「補給薬剤流量計測手段」の具体例としてはフローメーターが挙げられる。また、この手段の具体的な動作例としては、補給装置であるポンプの下流に設置し、液流が所定時間不適切な状態、例えば液流なし、にあるときに異常信号を発するようにすればよい。
【0037】
「補給薬剤残量計測手段」の具体例としては液面のレベルセンサーや重量計が挙げられる。また、この手段の具体的な動作例としては、液面レベルや液重量の変動が所定時間不適切な状態、例えば変動なし、にあるときに異常信号を発するようにすればよい。
【0038】
上記の(1)から(8)に記載される洗浄装置を用いた第一の洗浄処理と他の湿式処理とを行うための洗浄ユニットは次の特徴を有する。
(9)第一の洗浄処理を行うための洗浄装置が備える制御部は、他の湿式処理の液管理に係る制御を一部実行すること、他の湿式処理の処理状態および/または処理状況に係るデータに基づいて第一の洗浄処理に係る制御を実行すること、ならびに第一の洗浄処理を行うための洗浄装置が備える補給装置の少なくとも一つに対して他の湿式処理の液管理の目的で補給開始の信号を出力することの少なくとも一つを行う。
【0039】
ここで、「他の湿式処理」とは、第一の洗浄処理の洗浄対象に対して第一の洗浄処理に先立ってまたは引き続いて行われる湿式処理をいう。具体的には、本願に係る洗浄装置を用いて行う第一の洗浄処理以外の洗浄処理や、水洗処理、活性化処理、酸洗浄処理、めっき処理、陽極酸化処理、化成処理、封孔処理、着色処理、塗装処理などが挙げられる。
【0040】
「他の湿式処理の液管理に係る制御を一部実行する」の一例として、無電解めっき処理におけるニッケル成分を補給するポンプに対して、無電解めっき処理槽に付設されたニッケルセンサーから入力したデータに基づいて、駆動のための制御信号を出力することが挙げられる。
【0041】
「他の湿式処理の処理状態および/または処理状況に係るデータ」における「処理状態」とは、例えば処理槽における液組成や処理槽内の液面の状態などをいい、「処理状況」とは、例えば処理開始からの経過時間、処理対象の処理数などをいう。「処理状態および/または処理状況に係るデータ」は、各処理に付設された各種センサーやその処理のための処理装置が備えるタイマーやカウンターから本発明に係る制御装置へと入力される。
【発明の効果】
【0042】
一方、(1)から(3)に記載される洗浄装置は、例えばアルカリビルダーのように高粘度の補給薬剤であっても本槽部内で局所的に高濃度の状態となることが抑制される。この局所的な高濃度の領域が洗浄対象に接触すると、補給薬剤と洗浄対象とが表面で反応して「やけ」と呼ばれるような表面状態になる恐れがある。また、導電率センサーなどの計測部位に接触すると、異常信号を発生させたり、最悪の場合にはセンサーを破壊してしまったりする場合もある。したがって、本発明に係る洗浄装置によれば、洗浄能力の安定維持が実現される。
【0043】
また、(4)から(8)に記載される制御を行うことで、補給薬剤が異常補給されることが抑制される。このため、本発明に係る洗浄装置によれば、洗浄能力のさらなる安定維持が実現される。
【0044】
上記の(1)から(8)に記載される洗浄装置を用いた第一の洗浄処理と他の湿式処理とを行うための(9)に係る洗浄ユニットは設備の一部共通化を実現しており、経済的な観点で有利である。また、他の湿式処理における管理情報(例えば、処理数のカウントや液状態を計測するセンサーからのデータなどが挙げられる。)をも考慮して制御を行うことで、制御の精度を高めたり、誤動作の発生を高度に防止したりすることが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下に本願発明に係る洗浄装置および洗浄ユニットについて、具体的な構成例も含めて説明する。なお、これらの記載の形態は、任意の生産ラインにおいてより効果の高い形態を示す一例であり、全ての形態を反映させるものではなく、かつ当該形態に本願発明を制限するものでもない。
【0046】
(第一の実施形態に係る洗浄装置)
〔全体構成〕
図1は、本願発明の第一の実施形態に係る洗浄装置の構成と動作とを概念的に示したブロック図である。本実施形態では、活性剤成分とアルカリビルダー成分との二種類の補給薬剤を適宜補給しつつ洗浄を行う洗浄処理を行う場合を例示的に示しているが、補給が一種類であっても三種類以上であっても本質的には相違しない。
【0047】
第一の実施形態にかかる洗浄装置100は、洗浄対象の洗浄処理を行う本槽部101およびオーバーフロー部102を有する洗浄槽103と、オーバーフロー部102内の洗浄液の一部を吸引して本槽部101内へと移送することで洗浄液の循環を行うポンプユニット104と、活性剤を蓄積する第一の貯蔵用タンク105と、アルカリビルダーを蓄積する第二の貯蔵用タンク106と、各貯蔵用タンクから洗浄槽内へと活性剤、アルカリビルダーをそれぞれ補給する二つの補給装置107,108と、洗浄槽103内の洗浄液の導電率を計測する洗浄液センサー109と、この洗浄液センサー109からの信号に基づいて補給装置107,108に補給開始および補給停止の信号を出力する制御部110とを備える。
【0048】
〔補給用ボックス〕
本槽部101はアルカリビルダーを洗浄液に効率的に補給するための補給用ボックス111を備え、補給用ボックス111は、第二の貯蔵用タンク106からのアルカリビルダーが注がれる第一の流入部112と、ポンプユニット104からの洗浄液が注がれる第二の流入部113と、第一の流入部112から注がれたアルカリビルダーが第二の流入部113から注がれた洗浄液に希釈されつつともに本槽部101内へと流出する流出部114を有する。
【0049】
このように、補給用ボックス111においては、ポンプユニット104からの洗浄液によってアルカリビルダーが希釈される。このため、本槽部内において、アルカリビルダーが高濃度に存在する領域は局所的にであっても発生しにくくなる。
【0050】
第一、及び第二の流入部112,113は図3に示されるように一つの開口部を共有する構造であってもよいし、個別の開口部を有する構造でもよい。ただし、洗浄液が流れ込む第二の流入部113と流出部114との間に第一の流入部112を設けることが好ましい。第二の流入部113から流出部114へと向かう洗浄液の流れにアルカリビルダーが補給されることになり、アルカリビルダーの速やかな希釈が実現されるからである。
【0051】
また、流出部114は図3のように単独ではなく、複数あってもよい。この場合には、洗浄能力が回復した洗浄液が複数の場所から本槽部101に補給されることとなり、本槽部101内部の洗浄能力の均一化が図れ、好ましい。ただし、この場合であっても、上記のようにポンプユニット104からの洗浄液の流れにアルカリビルダーが補給されるように補給用ボックス111を構成することが好ましい。複数の流出部114を有する補給用ボックス111具体的な構造の例としては、複数の穴を有する「かご」が挙げられる。
【0052】
本願実施形態で例として示すアルカリビルダーは一般に高濃縮であるから、上記のような構成で希釈しながら補給することが好ましい。活性剤についても、その粘度が高い場合には、補給装置は同様の希釈機構を有することが好ましく、アルカリビルダーと希釈機構を共用していてもよい。ただし、アルカリビルダーを補給する第一の流入部112と活性剤を補給するための第三の流入部とは可能な限り離間させて、補給用ボックス内で双方が高濃度のまま接触することがないようにすることが好ましい。高濃度のまま接触すると洗浄能力を有さない難溶性の物質が形成される恐れがあるためである。一方、活性剤の粘度が高くない場合には、本槽部101および/またはオーバーフロー部102に直接補給してもよい。この場合も、アルカリビルダーの補給部からは可能な限り離間させて、難溶性の物質の生成を抑制することが好ましい。図3では、一例として本槽部101に補給する構成が示されている。
【0053】
なお、補給用ボックス111の設置位置は、上記の説明では本槽部101に設けたが、オーバーフロー部102に設けてもよい。この場合には、本槽部101からオーバーフローする洗浄液が第二の流入部に注がれることとなる。また、本槽部101に補給用ボックス111が設けられている場合にはオーバーフロー部102が設けられていなくても構わない。ただし、オーバーフロー部102があることによって本槽部101内の液容量が安定化しやすくなり、薬剤補給による液組成の変動が発生しにくくなり、洗浄能力の安定の観点では好適である。また、液面に浮上する油脂分はオーバーフローとして本槽部101から除去されるので、液劣化が起こりにくいという利点も有する。
【0054】
〔制御部の構成〕
制御部110は、本槽部101内の液面を計測する手段からの信号、洗浄処理の処理時間を計測する手段からの信号、洗浄処理の処理量を計測する手段からの信号、および本槽部101内の洗浄液の液状態を計測する手段からの信号の少なくとも一つを入力として、これらの信号に基づいて補給を開始すべきか停止すべきかを決定し、その決定に基づいて、補給開始の信号または補給停止の信号を補給装置107,108へと出力する。ここで、信号の出力とは、出力されていた信号が停止する態様も含むこととする。
【0055】
制御部110の具体的を以下にいくつか示す。まず、本槽部101内の液面を計測する手段としては、リミットスイッチや近接スイッチが例示される。このようなスイッチは液面が所定のレベルに達したことを条件として所定の信号を出力するので、これを入力した制御部110はその信号に基づいて開始または停止の信号を出力し、補給装置107,108のポンプの動作を開始したり停止したりする。
【0056】
洗浄対象(例えば小部品)を有するバレルを本槽部101内に入れることで洗浄を行う場合には、バレル投入によって液面が上昇し、バレル引き上げによって液面が低下するので、上記のように液面を管理することで洗浄の開始・終了を検知することが実現される。投入される洗浄対象の汚れの程度がほぼ一定である場合には、一回のバレル洗浄で低下する洗浄能力をおおよそ見積もることが可能であるから、その見積に基づいて補給すべきアルカリビルダーと活性剤との量を決定しておき、液面が低下した時点、すなわち洗浄が終了した時点でこれらを所定量補給して洗浄能力を回復させればよい。あるいは、液面が上昇した時点で補給を開始し、洗浄能力の低下を防いでもよい。
【0057】
次に、洗浄処理の処理時間を計測する手段としてはタイマーが例示される。タイマーからの信号によって所定の時間になったと判定してポンプの動作を開始すべき信号を送り、所定時間経過後に停止の信号を出力したり、動作信号を停止したりすることで補給量の制御が可能である。
【0058】
洗浄対象がフープ材であったり、ワイヤに所定間隔で同一の部品が保持されたライン状であったりする場合には、単位時間当たりの洗浄能力の低下(洗浄能力低下率)がほぼ一定であるから、上記のような時間管理で所定量アルカリビルダーや活性剤を補給することで洗浄能力をほぼ一定に保つことが実現される。
【0059】
洗浄処理の処理量を計測する手段としては、例えば、バレル制御系のバレル位置決めセンサーや、フープ材の移送距離計測センサーを利用することが挙げられる。バレル位置決めセンサーの場合には投入または引き上げの信号を用いて補給を開始すればよく、移送距離計測センサーの場合には、フープ材が所定の距離だけ送られたことを条件として補給するようにすればよい。
【0060】
なお、制御部110は、各種センサーから信号に基づいて所定の信号を出力するコントローラーと、これらの信号の入力としてあらかじめ設定されたシーケンスに基づいて補給装置107,108などの動作を開始または停止する制御信号を出力するシーケンサーと、各種センサーの状態を表示する表示手段と、シーケンサーやコントローラーの設定を行うためのデータの入力手段を備える。なお、表示手段および入力手段は、双方の機能を兼ね備えるタッチパネルを用いてもよい。このほか、洗浄処理に係る異常や薬液補給が必要であることを報知するための報知手段を備えてもよい。
【0061】
また、制御部110が行う信号処理の一部を補給装置107,108が行ってもよい。この場合には、上記のスイッチやタイマー、センサーなどからの信号は制御部を介して、または直接補給装置107,108に入力されることとなる。
【0062】
〔液状態センサーを用いた場合の制御部の構成〕
続いて、液状態を計測するセンサーを用いる場合について説明する。
洗浄処理すべき対象物がバッチ間でほぼ同じであり、毎日同じような処理を繰り返す場合には、上記のような液面や時間、処理量の計測結果に基づいてアルカリビルダーの補給を制御すれば、ほぼ安定した洗浄品質を得ることが可能である。
【0063】
しかしながら、処理量がバレルごとに異なっていたり、様々な汚染状態の処理対象が混在していたりする場合には、液状態が変化してしまい処理品質を安定化させることが困難となる。
【0064】
そこで、このような場合には、図3にも示されるような洗浄液センサー109により液状態を計測し、制御部110はその洗浄液センサー109からの情報に基づいて補給を開始すべきか補給を停止すべきかを判定する演算を行い、その結果に応じて補給開始または補給停止の信号を出力する。洗浄液センサー109が計測する液状態としては、例えば導電率、pH、特定のイオン濃度、温度、粘度、透過率、密度(比重)、液中の微粒子分布状態(具体例としては濃度、粒子径の分布)が挙げられる。
【0065】
〔洗浄液センサーおよび制御部〕
洗浄液センサー109からの出力信号に基づく制御部110の動作について、洗浄液センサー109が導電率を計測した場合を例として以下に説明する。
【0066】
第一の方法:高濃度(すなわち高粘度)の薬剤は補給されてから溶解するまである程度の時間を要する。このため、補給するタイミングと導電率の変動として計測されるタイミングとには差が必然的に生じる。この時間差によって必要以上に薬剤が補給されてしまい、オーバーシュートとして測定される。このオーバーシュートは単位時間当たりの補給量を少なくすることで抑制することは可能であるが、薬剤の消費量が多い場合には補給が追いつかず、慢性的な濃度低下を招く恐れがある。
【0067】
そこで、制御部110は、導電率に第一の設定値S1と第二の設定値S2(S1<S2とする。)とを設け、洗浄液センサー109で測定された導電率が第一の設定値S1以下となったことを条件として補給開始の信号を補給装置107,108に対して出力し、第二の設定値S2以上となったことを条件として補給停止の制御信号を補給装置107,108に出力する。このような制御を行うことで、オーバーシュートを最小限に抑えることが実現される。
【0068】
第二の方法:設定値を一つにして、その導電率未満であれば補給開始の信号を出力し、その導電率以上であれば補給停止の信号を出力することとすると、設定値を跨ぐように導電率が短時間で変動(チャタリング)すると、その都度、補給装置107,108のポンプがON/OFFすることとなり、制御系の接点に負担がかかり、短期間での故障の原因となってしまう。高粘度の薬剤の場合には均一に溶解しにくいことから、導電率の変動に遅れが発生しやすい。このため、特にこのチャタリングが発生しやすい。
【0069】
そこで、ひとたび導電率が設定値未満となって補給開始の信号を出力したら、その後、所定時間の第一の不感時間T1を設定し、この第一の不感時間T1内については、導電率が設定値以上になっても設定値未満となってもその信号に基づいて補給停止・開始の信号を出力しないようにする。そして、第一の不感時間T1経過後に導電率が設定値以上となったら補給停止の信号を出力し、その後第二の不感時間T2(T2=T1であってもよい。)を設定して、この時間内は補給開始・停止の信号を出力しないようにする。このようにチャタリングが発生しやすい時間を不感時間として設定しておくことで、不必要なポンプのON/OFFが抑制され、装置の故障が抑制される。
【0070】
なお、上記の制御では不感時間の計時前に信号の出力を行うこととしているが、不感時間の計時後に信号の出力を行なうようにしてもよい。このとき、不感時間の計時後に、再度導電率を計測し、制御信号を出力すべきか否かの判定を行うようにすることが制御の信頼性を高める観点からは好ましい。
【0071】
また、上記の第一の方法および第二の方法は単独で用いても高い効果を有するが、両方法を併用することでさらに高い効果が得られる。また、クッションタンク201を用いると特に高い効果が得られ、好ましい態様である。
【0072】
〔薬剤補給における安全対策〕
続いて、本実施形態に係る制御部110が備える過剰な薬剤補給を防止するための制御方法を説明する。
【0073】
方法1:本実施形態に係る制御装置100は、貯蔵用タンク105,106から流れ出るアルカリビルダーおよび活性剤の流れを計測するフローセンサーを備え、制御部110は、洗浄液センサー109で測定された導電率に基づいて補給開始の制御信号を出力した場合でも、フローセンサーからのデータに基づいて貯蔵用タンクからのアルカリビルダーおよび活性剤の少なくとも一方の流出について異常が発生したと判定したこととを条件として、補給停止の信号を出力する(図2)。
【0074】
方法2:また、貯蔵用タンク105,106はそれぞれの貯蔵量を計測する貯蔵量計測センサーを備え、制御部110は、洗浄液センサー109で測定された導電率が設定値以下であることと、貯蔵量計測センサーからのデータに基づいて貯蔵用タンク105,106からのアルカリビルダーおよび活性剤双方の流出について異常が発生していないと判定したこととを条件として、アルカリビルダーおよび活性剤の補給開始の信号を補給装置107,108へと出力する(図3)。
【0075】
方法3:さらに、補給装置107,108に補給開始の信号を出力したら、制御部110が備えるカウントダウンタイマーを始動させ、続いて補給停止の信号を出力したか否かの判断をカウントダウンのループ内で実行する。そして、カウントダウンタイマーのカウントが終了したときに、補給停止の信号が一度も出力されていないことを条件として、制御部110は補給停止の信号を補給装置107,108へと出力する(図4)。このようにすることで、何らかの異常で薬剤の補給がある程度過剰に行われても、その補給を洗浄液全体が致命的な状態に至る前に停止することが実現される。なお、この制御におけるカウントダウンタイマーの設定時間は上記の不感時間よりも長く、たとえばその5倍程度に設定する。なお、上記の方法は一つでも十分過剰補給防止対策として機能するため、全ての制御を備えていることは必須ではない。
【0076】
なお、上記のような制御部110が行う制御の一部を、補給装置107,108が個別に有する補給装置付帯制御部が実行するようにしてもよい。このようにすることで、制御部110の制御負荷を緩和することができ、洗浄装置としての動作安定性が高まる。
【0077】
(第二の実施形態に係る洗浄装置)
図5は、本願発明の第二の実施形態に係る洗浄装置の構成と動作とを概念的に示したブロック図である。図5においては、図1と重複する符号について省略しているが、以下の説明においては、適宜図1の符号を付することとする。
【0078】
〔第二の全体構成〕
第二の実施形態にかかる洗浄装置200について、第一の実施形態に係る洗浄装置100との相違点を中心に説明する。洗浄装置200は、洗浄対象の洗浄処理を行う洗浄槽103と、内部の洗浄液を洗浄槽103へと流出させる流出部202を有するクッションタンク201と、洗浄槽103内の洗浄液をクッションタンク201内へと移送するポンプユニットと、アルカリビルダーを蓄積する第一の貯蔵用タンクと、活性剤を蓄積する第二の貯蔵用タンクと、各貯蔵用タンクから洗浄槽内へとアルカリビルダーを補給する二つの補給装置と、クッションタンク201内の洗浄液の導電率を計測する洗浄液センサー109と、この洗浄液センサー109からの信号に基づいて補給装置に補給開始および補給停止の信号を出力する制御部110とを備える。
【0079】
〔クッションタンクの構成〕
クッションタンク201は洗浄槽103よりも容積が小さく、クッションタンク103内の洗浄液容量は、洗浄槽103内の洗浄液容量の4〜50%以下、好ましくは10〜30%、特に好ましくは15〜25%である。また、クッションタンク201の液面が洗浄槽103よりも高くなるように設置され、ポンプユニットからの洗浄液が流入する第一の流入部と、各補給装置からの薬剤が流入する第二、第三の流入部とを有する。好ましい形態としては、第一の流入部と流出部202との間に、第一の流入部側に第二、第三の流入部が、流出部202側に洗浄液センサー109が設けられている。
【0080】
クッションタンク201は洗浄槽103よりも容積が小さいため、その内部は洗浄槽103よりも液流が速く、洗浄液は強く攪拌されている。このため、アルカリビルダーのように粘度が高い薬剤であっても、クッションタンク201内に補給されると速やかに攪拌され、局所的に濃度が高い領域が残留しにくい。したがって、クッションタンク201の流出部202から洗浄槽103へと補給される洗浄液の濃度は均一性が高い。
【0081】
このようにクッションタンク201内の洗浄液の濃度は均一性が高いため、洗浄槽103の洗浄液の状態を洗浄液センサー109で検出するよりも、このクッションタンク201内の洗浄液の状態を計測する方が検出結果のばらつきが少なく、結果としてオーバーシュートなどの過剰な薬剤補充が行われにくい。
【0082】
また、クッションタンク201の流出部202からの洗浄剤は落差を利用して洗浄槽103に補給されるため、クッションタンク201の液面は常に一定である。したがって洗浄液センサー109をクッションタンク201に設置している場合には、その検知部が液面上に露出してしまうことはない。これに対し、洗浄槽103に洗浄液センサー109を設置する場合は、バレル洗浄のように洗浄槽103の液面が洗浄作業中に大きく変動することがあるため、洗浄液センサー109の検知部よりも液面が低下して検知部が液面上に露出してしまう危険性がある。このとき、正常な計測ができないのはもちろん、導電率が低くなったと誤認して薬剤を継続的に補給してしまい、洗浄液の組成が好適な範囲を大きく超え、回復不能な致命的な状態になるおそれもある。
【0083】
また、クッションタンク201内の容量が一定となるため、洗浄槽103に供給される洗浄液の液組成に変動が起こりにくい。このため、洗浄槽103内の液組成の変動も発生しにくくなり、洗浄能力の安定性のさらなる向上が実現される。
【0084】
なお、クッションタンク201を用いた場合の特に好ましい制御上の形態としては、前述の不感時間を長めに設定し、かつ、補給ポンプの単位時間当たりの補給量を低めに設定して、薬剤を補給する時間を長くする。
また、クッションタンク201を設け、さらにオーバーフロー部を設けるようにしてもよい。
【0085】
(第三の実施形態に係る洗浄ユニット)
上記のような第一または第二の実施形態に係る洗浄装置の構成を含む洗浄ユニットについて、第三の実施形態として以下に説明する。
【0086】
第一および第二の実施形態として説明した洗浄装置は、洗浄液の状態に応じて液状の薬剤を補給することで、長期にわたって安定した洗浄能力を維持する。第三の実施形態に係る洗浄ユニットは、薬剤補給を行うための制御部の一部を、他の洗浄工程や表面処理に係る他の湿式処理(酸洗浴、めっき浴、りん酸浴、水洗浴などが例示される。)における制御のための設備と共通化させる。また、その制御の一態様として洗浄装置の補給装置を他の処理の薬剤補給のために動作させることも可能であり、結果的に補給装置などの設備の共通化も実現される。このような制御部を含む設備要素の共通化は、本願発明のように濃縮液体状の薬剤を必要に応じて補給する方式の洗浄装置であるから実現することができるのであって、粉体の洗浄組成物を補給する方式では共通化することはできない。設備の一部共通化は経済的な観点で有利であることはもちろん、他の処理における管理情報(例えば、処理数のカウントや液状態を計測するセンサーからのデータなどが挙げられる。)をも考慮して制御を行うことで、制御の精度を高めたり、誤動作の発生を高度に防止したりすることが実現されるという新たな効果が得られる。処理対象がプリント基板など半導体関連部品や、デジタルカメラなどの精密機構部品を洗浄対象とする場合には、洗浄能力の高さとその能力の安定化とを厳密に要求される。本実施形態に係る洗浄ユニットは、そのような洗浄対象の厳しい要求に応えることが可能である。
【0087】
第三の実施形態に係る洗浄ユニットとは、前処理工程の管理及び補給のためのものであって、金属表面の化工工程のうち、めっき、塗装、熱処理等の本処理前の工程(以降、前処理工程と記載)に含まれる全処理浴の少なくとも1以上に対し、それぞれに要求される性能を維持する為に必要な事項を一括に制御することを特徴とする。より詳細には、ユニットを設けるべき前処理工程の処理浴は、脱脂浴、酸洗浴、電解浴および水洗浴のうちの少なくとも1つを含み、複数の場合、それぞれ別な浴種であってもよいし同じ浴種の複数の浴であってもよい。
【0088】
更には、当該ユニットの前処理工程の処理浴には、その性能を維持する為に必要な事項を管理するのに必要なセンサーをそれぞれに設けることで、当該センサーから得られる測定情報を特定の1検出器にて解析した結果に基づいて前処理工程を一括管理することを特徴とするシステムを付帯させる。特定の1検出器にて解析した結果としては特に限定すべきものではなく、優先すべき性能を考慮し任意に決定することができる。一般に洗浄性能が優先されるため、特定の1検出器にて解析した結果としては、導電率、水素イオン濃度、屈折率、吸光度、色の群より選ばれることが好ましい。また当該システムにコントローラーを付帯させることで、前記解析結果に基づき、それぞれに要求される性能に到達する為に要する操作を行うことも可能である。
【0089】
当該ユニットにて洗浄性能を求める場合のうち、アルカリ度のみに性能が依存するような場合においては、脱脂浴に苛性ソーダ、その他のアルカリ成分を補給すればよく、例えばアルカリ成分が1単体薬剤から構成される場合、およびアルカリ成分が混合物であっても補給比率が一定であれば薬剤貯蔵用タンクを1とすることもできるし、アルカリ成分の補給比率を変更する必要がある場合は2以上とすることも可能である。以上アルカリ成分だけでなく、必要に応じて前処理工程に添加すべき薬剤を入れたタンクを1ないし複数設けることで要求性能に到達させる操作がコントローラーを用いてなされる。
【0090】
場合によっては、洗浄性能のみならず、生産ラインの設計上省スペース化が要求されることも多いが、その場合薬剤貯蔵用タンク数を最小限にする必要がある。その為には1タンクに貯蔵される薬剤を前処理工程の複数浴に使用することも可能である。薬剤の補給量は補給される処理浴毎に要求される性能に到達するよう、コントローラーにて操作される。
【0091】
例えば脱脂浴、電解浴はどちらもアルカリ洗浄であるが、特に電解浴において高い伝導性を確保する必要があることから、アルカリ成分補給量を脱脂浴に比べ多く設定する。逆に補給量を変動させるだけで脱脂浴にも使用することが可能である。このように2以上の処理浴に対し、補給される薬剤を同じくすれば、一定の洗浄性能を維持しながら補給タンクを最小限に抑えることができる。
【0092】
他の例では、石鹸成分の生成及び洗浄力強化の為に含まれる界面活性剤による発泡対策、洗浄によって除去された油の乳化による洗浄力低下と浮上油による再汚染対策等、使用により発生する各種トラブルに対し、必要に応じて添加剤を入れた薬剤貯蔵用タンクを用意する。これらは前処理工程に含まれる処理浴に対し2以上に補給しても良い。具体的には、脱脂がスプレー洗浄によってなされ、電解浴を当該ユニットに含む場合は、泡発生が各処理浴の稼働を妨げる原因になることから、原因に応じた添加剤を含む薬剤補給用タンクを1ずつ設け、ここでは電解浴並びに脱脂浴のそれぞれに補給することも可能である。以上のように必要な補給タンクを少数に抑制することで、先に述べた省スペース化の他、薬剤の発注管理の煩雑性も改善することができる。
【0093】
当該ユニットに含まれる前処理工程を一括管理するにあたり、それぞれの性能を維持する為に設けられたセンサーから得られる測定情報を、1検出器にて解析し、結果をコントローラーに入力する。前処理工程の管理及び補給に関して言えば、本来全処理浴のそれぞれに各種検出器を設ける必要があるものの、本願発明においては、得られる測定情報を解析する検出器はセンサー毎にそれぞれに設ける必要はなく、1検出器にて足りる。ただしこれを実現するには、シーケンサーもしくはハードリレーの様な、使用タイミングを事前に設定したとおり、自動的に送り出す装置を設置する必要がある。また、設定する使用タイミングは1つのパネルにおいて設定できるよう集約させ、前処理工程の一切を当該パネル操作により実施する様にすることで、当該ユニットに付帯させるシステムとしてより特徴付けられる。これにより、複数の検出器を設置する為の設備投資を大幅に削減でき、また、前処理工程をトータル的に1パネルの操作にて管理することが可能になる。
【0094】
前記の通り、粉体洗浄剤における作業性、生産性、洗浄品質における問題を考慮すれば、薬剤貯蔵用補給タンクより補給される薬剤は流動性状であることが好ましく、また流動性状であれば、粉体性状では実施できなかった各種ポンプによる補給量操作を実施できる。
【0095】
更に、補給される薬剤はポンプで補給するのに充分な流動性を備えることにより、前処理工程に含まれる各処理浴に要求される性能に到達する為の補給に要する当該薬剤の量を可及的少とすることができる。ここでいう流動性とは、例えば、泥状流動体用スラリーポンプの設置による補給を可能とするレベルの場合もあれば、一般的な容積式ポンプでも補給が可能なレベルに溶媒量を調整する場合もある。補給する薬剤の流動性は一定の数値とするものではなく、設備投資上の可能性、及び生産ライン設計における設置スペースの大小に併せ、最も適切なレベルを設定することができる。溶媒量の調整の他、補給する薬剤をより濃厚な状態にする手段として、通常知られる分散剤及び結晶化防止成分等を添加する場合もあるが、過度に生分解性が向上する程の有機成分を添加することは結果的に環境負荷的な効果を低下させることになり、好適な様態とは言えない。
【0096】
通常、前処理工程においては、脱脂浴が最も厳密な管理を必要とする場合が多く、またその補給についても量的に最も多いことが知られている。よって、少なくとも脱脂浴に補給する為の薬剤量を可及的少とすることで、当該薬剤貯蔵用タンクをより小さいものとし、結果、ユニットとしての省スペース化に大きく貢献することができる。
【0097】
本願発明により提示される前処理工程に管理及び補給の為のユニットにより、前処理工程において通常要求される洗浄性能を追求しつつ、かつ、特に生産ラインにおいて重大な課題である作業性、生産性、及び洗浄品質を大きく改善し、結果、生産ラインにおける量産化をより現実的な形で提示し、また従来実現し得なかった高い生産性を確保することを可能とした。特筆すべきは、洗浄性能の他、薬剤タンク設置スペースの大小、薬剤による環境影響、薬剤発注等の管理維持にかかる人手の量等々、前処理工程で考慮すべき各種要素を全て考慮した上、生産ラインにおいて最も重要視される設備投資的要素を最大限に考慮した採算性を追求したユニット設計が可能な点である。
【0098】
以下に記載の形態は、任意の生産ラインにおいて高い効果が得られる第三の実施形態の一例である。
脱脂浴、酸洗浴、電解浴をそれぞれ1浴、それぞれの間に水洗浴を備えた前処理工程について説明する。検出器としては電磁導電率計を選定し、性能維持の必要性を考慮しここでは水洗浴については制御対象外とする。制御対象とする3浴には、それぞれの導電率を検知する最適なセンサーを設け検出器に接続する。別に設置された薬剤補給用タンクにはコントローラーを接続し、電磁導電率計にて解析された結果に基づいて処理浴への補給を行うものである。これを稼働させるためにシーケンサーを設置することで、全処理浴に対し制御を要する全ての項目は、接続のタッチパネル操作にて行うことができる。
【0099】
ここでは薬剤補給用タンクを5つ設け、タンク内には任意の流動性状薬剤を入れる。具体的には、アルカリビルダー、活性剤、酸、苛性ソーダ水溶液及び電解用添加剤が入っており、これをコントローラーに接続するポンプにて取り出し処理浴に補給する。アルカリビルダーおよび活性剤は1つのコントローラーに接続し、シーケンサーによる制御指令に基づいた比率で薬剤を取り出し脱脂浴に補給する。同様に、苛性ソーダ水溶液及び電解用添加剤を1コントローラーに接続し電解浴に補給を行い、酸は単独で1コントローラーに接続、酸洗浴に補給を行う。よって、ここではコントローラーを3機用意する。
【0100】
パネル操作にて設定入力すべき項目としては、処理浴毎に維持すべき導電率、コントローラーに接続した薬剤の補給比率、処理浴毎の解析スパン(切替時間)が挙げられる。これらの設定値は、補給薬剤の成分濃度、洗浄対象物に付着する汚染種等を踏まえ、生産ラインにおける最適な処理条件を設定する段階で事前に決定することができる。例えば脱脂浴において、予備試験において、得られる洗浄性能のうち品質を満たすレベルでの導電率を下限値とし、処理量に対する時間毎の導電率変動を踏まえ、界面活性剤及びキレート剤を主体とする活性剤と、アルカリ成分を主体としたアルカリビルダーの補給比率を決定した上、処理を継続しながら安定した導電率が得られることが確認できる解析時間を定めておき、その結果をパネルに入力すればよい。
【0101】
他の酸洗浴、電解浴においても同様に設定値を決定の上パネルに入力する。
以上設定操作の上、前処理工程の生産ライン稼働を開始すれば、作業者は、薬剤による危険有害性を憂慮することなく、補給用タンク内に薬剤が満たされているかどうかを確認するだけで一定の品質を維持した前処理を行うことができる。
【0102】
ここで、第三の実施形態に係る洗浄ユニットの特徴をまとめると次のようになる。
(ア)金属表面の化工工程のうち、めっき、塗装、熱処理等の本処理前の工程(以降、
「前処理工程」と記載する。)に含まれる全処理浴の少なくとも1以上に対し、それぞれに要求される性能を維持する為に必要な事項を一括に制御することを特徴とする、前処理工程の管理及び補給のためのユニット。
【0103】
(イ)前処理工程に含まれる全処理浴に、脱脂浴、酸洗浴、電解浴、水洗浴のうちの少なくとも1以上を含むことを特徴とする、上記(ア)に記載の前処理工程の管理及び補給のためのユニット。
【0104】
(ウ)前処理工程に含まれる全処理浴の少なくとも1以上に対し、その性能を維持する為に必要な事項を管理するのに必要なセンサーをそれぞれに設け、当該センサーから得られる測定情報を特定の1検出器にて解析した結果に基づき、前処理工程を一括管理することを特徴とする、上記(ア)または(イ)に記載のユニットに付帯する為のシステム。
【0105】
(エ)各処理浴に設置されたセンサーから得られる測定情報を特定の1検出器にて解析した結果が、伝導度、水素イオン濃度、屈折率、吸光度、色の群より選ばれた1つであることを特徴とする、上記(ウ)に記載のシステム。
【0106】
(オ)各処理浴に設置されたセンサーから得られる測定情報を特定の1検出器にて解析した結果に基づき、それぞれに要求される性能に到達する為に要する操作がコントローラーを用いてなされることを特徴とする、上記(ウ)または(エ)に記載のシステム。
【0107】
(カ)各処理浴に設置されたセンサーから得られる測定情報を特定の1検出器にて解析した結果に基づき、それぞれに要求される性能に到達する為に要する操作がコントローラーを用いてなされ、これを薬剤の補給によって行うにあたり、少なくとも1以上の薬剤貯蔵用タンクを設けることを特徴とする上記(オ)に記載のユニットに付帯するためのシステム。
【0108】
(キ)少なくとも1以上の薬剤貯蔵用タンクから補給される薬剤が、前処理工程に含まれる全処理浴のうちの少なくとも2以上に補給されることにより、必要な補給タンク数を最小限とすることを可能とする、上記(カ)に記載のユニットに付帯するためのシステム。
【0109】
(ク)前処理工程に含まれる全処理浴の少なくとも1以上に対し、その性能を維持する為に必要な事項を管理するのに必要なセンサーをそれぞれに設け、当該センサーから得られる測定情報を特定の1検出器にて解析した結果に基づいて前処理工程を一括管理するにあたり、管理一切を1つのパネル操作に集約させることを特徴とする、上記(ウ)に記載のシステム。
【0110】
(ケ)各処理浴に要求される性能に到達する為に要する操作が、流動性状の薬剤を補給することによって行われることを特徴とする、上記(キ)または(ク)に記載のシステム稼働方法。
【0111】
(コ)補給する薬剤が、濃厚でありかつ補給するに充分な流動性を備えることにより、各処理浴に要求される性能に到達する為の補給に要する当該薬剤の量を可及的少とする、上記(ケ)に記載のシステム稼働方法。
【0112】
(サ)前処理工程のうち、脱脂浴に要求される性能に到達する為の補給に要する当該薬剤の量を可及的少とするため、補給する薬剤を少なくとも1以上の濃厚な流動体とする、上記(ケ)または(コ)に記載のシステム稼働方法。
【実施例】
【0113】
1.実施例1:洗浄装置による洗浄機能の安定化
前述の第一の実施態様の洗浄装置(図1)を用い、界面活性剤5g/Lと、キレート剤を含み、活性剤粘度が37mPas(20℃)であるアルカリビルダー20g/Lとで建浴した洗浄液について適宜薬剤補給を行いながら、プレス油が塗布されたSPCC−SD鋼板を洗浄対象として連続的に処理を行った場合の具体的な結果について以下に記す。
【0114】
導電率を計測する方式の洗浄液センサーから換算して得られる洗浄液中の脱脂成分の濃度として2.5%を管理目標値とした。この管理目標値を達成するために、上記の第一の設定値S1を2.45%、第二の設定値S2を2.55%として第一の方法による制御をアルカリビルダー、活性剤の双方に対して行った。また、あわせて第二の方法による制御も行い、アルカリビルダー、活性剤の双方に対して、補給開始後の不感時間T1を10秒、補給停止後の不感時間T2を3秒に設定した。
【0115】
この条件での洗浄液センサーから換算された脱脂成分濃度の推移を図6に示す。脱脂成分濃度の安定した制御が長時間にわたって実現されていることがわかる。
2.実施例2:洗浄ユニット
実施例1に記載される洗浄装置を含む洗浄ユニットについての具体的な事例について記載する。
【0116】
前処理工程の生産ライン設計を行うにあたり、要因解析の結果、脱脂浴(すなわち第一の洗浄処理)及び電解浴(他の処理の一つである第二の洗浄処理)それぞれ1浴を管理するものとした。併せて各処理浴に導電率を検知するセンサーを設置し、そのデータを電磁導電率計にて解析させた。補給薬剤はアルカリビルダー、活性剤を脱脂浴用にそれぞれ1種、電解浴用にそれぞれ1種、計4タンク用意し主剤、副剤の組み合わせに対し1つのコントローラーを計2機接続することとした。シーケンサーに接続した操作パネルには、各処理浴におけるアルカリビルダーと活性剤との補給比率を入力(脱脂浴にて4:1,電解浴にて2:1)、解析スパンを10分に設定した。また設定導電率については、新液濃度換算にして脱脂浴で20g/L、電解浴で60g/Lとして一括制御した。
【0117】
処理浴の洗浄性能判定のため、10分毎の各処理浴における導電率を記録しその維持安定性を確認しながら、同時に洗浄処理物の仕上がり(汚れ、水はじきの有無等)を目視観察した。
【0118】
稼働日から起算して30日間のうち、ラインが実質稼働した計20日(1日あたりの稼働平均時間8時間)の推移によれば、脱脂浴、電解浴ともに安定しており、全日における洗浄処理物の仕上がりについても目視上問題なく、また後工程においてめっき剥離等の不良は一切見られなかった。更に当該ユニットを設置するに要するコスト試算の結果についても、当該ラインにて充分な採算性が見込めた。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本願発明の第一の実施形態に係る洗浄装置の構成を概念的に示した図である。
【図2】本願発明の第一の実施形態に係る洗浄装置が備える制御の一例の動作を示すフロー図である。
【図3】本願発明の第一の実施形態に係る洗浄装置が備える制御の他の一例の動作を示すフロー図である。
【図4】本願発明の第一の実施形態に係る洗浄装置が備える制御の別の一例の動作を示すフロー図である。
【図5】本願発明の第二の実施形態に係る洗浄装置の構成を概念的に示した図である。
【図6】本願発明の実施例1に係る濃度管理の状態を示す測定濃度推移グラフである。
【出願人】 【識別番号】000115072
【氏名又は名称】ユケン工業株式会社
【出願日】 平成19年5月1日(2007.5.1)
【代理人】 【識別番号】100081352
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一


【公開番号】 特開2008−30022(P2008−30022A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2007−120755(P2007−120755)