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【発明の名称】 ワイヤーロープからの劣化ロープグリース除去装置及び劣化ロープグリース除去方法
【発明者】 【氏名】大場 頼雄

【要約】 【課題】ゲート吊り下げ用ワイヤーロープ表面からの劣化ロープグリースの除去を、ウエスなどを使用した手作業による拭き取りや、洗浄水噴射による除去に拠らずに確実に行い、除去したグリースを確実に捕集するようにした劣化ロープグリース除去装置及び除去方法を提供すること。

【構成】周壁及び底壁を有し、底壁中央にロープRに接合する口縁部を有するロープ挿通開口3bが形成された回収容器4と、ロープに対して圧接される弾性孔壁を有する挿通孔8aを有し、ロープに対し軸線方向移動される際、弾性孔壁によってロープ表面からグリースを掻き落すグリース掻落し部材8と、弾性孔壁をロープに圧接した状態でグリース掻落し部材を保持するように筒状容器の内周面に設けられ、保持したグリース掻落し部材と共同して容器の内部を上部回収室4cと下部回収室4dとに仕切る仕切壁を形成するグリース掻落し部材用保持部材9とを有するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーロープからの劣化ロープグリース除去装置であって、
筒状周壁及び底壁を有し、該底壁中央に前記ワイヤーロープに密接接合する口縁部を有するロープ挿通開口が形成された劣化ロープグリース回収容器と、
前記ワイヤーロープに対して圧接するように形成された弾性的孔壁を有するワイヤーロープ挿通孔を中央部に有し、前記ワイヤーロープに対しその軸線方向へ移動せしめられるときに前記弾性的孔壁によって前記ワイヤーロープ表面からロープグリースを掻き落すロープグリース掻落し部材と、
前記弾性的孔壁を前記ワイヤーロープに圧接した状態で前記ロープグリース掻落し部材を保持するように前記筒状周壁の内周面に設けられ、更に保持した前記ロープグリース掻落し部材と共同して前記容器の内部を上部回収室と下部回収室とに仕切る仕切壁を形成するロープグリース掻落し部材用保持部材と、
を有することを特徴とする劣化ロープグリース除去装置。
【請求項2】
前記ロープグリース掻落し部材は、前記筒状周壁の軸線に対して直交して配置される円盤体で形成され、
前記ロープグリース掻落し部材保持部材は、前記筒状周壁の内周面に該周壁と同一軸線的に間隔を置いて取り付けられ前記円盤体の外周側の一部を差し込むための保持周溝を形成する2枚のリング状板体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の劣化ロープグリース除去装置。
【請求項3】
前記ロープグリース掻落し部材は、そのワイヤーロープ挿通孔の軸線を含む面に沿って分割された2つの半割リング部材で形成されており、
前記劣化ロープグリース回収容器は、前記ロープグリース掻落し部材保持部材と共に、前記容器の筒状周壁の軸線を含む面に沿って分割されており、
前記容器の一方の分割部における対向縁部は蝶番によって相互に結合され、他方の分割部における対向縁部は止め具によって、互いに分離可能に結合されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の劣化ロープグリース除去装置。
【請求項4】
前記劣化ロープグリース回収容器の底壁は、回収容器底部から前記下部回収室内へ向け、前記ロープグリース掻落し部材保持部材に保持された前記ロープグリース掻落し部材のワイヤーロープ挿通孔と同軸的に突出して設けられた円錐形突起部を有しており、この突起部の頂部に当る部分に前記ロープ挿通開口が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の劣化ロープグリース除去装置。
【請求項5】
前記回収容器の筒状周壁は、下部から上部に向けて広がった形状の略逆円錐台形を呈していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の劣化ロープグリース除去装置。
【請求項6】
前記ロープグリース掻落し部材は準硬質ゴム製であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の劣化ロープグリース除去装置。
【請求項7】
前記底壁は前記周壁の下部周縁部と結合された硬質又は準硬質ゴムカバーで形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の劣化ロープグリース除去装置。
【請求項8】
筒状周壁及び底壁を有し、該底壁中央に前記ワイヤーロープに密接接合する口縁部を有するロープ挿通開口が形成された劣化ロープグリース回収容器と、
前記ワイヤーロープに対して圧接するように形成された弾性的孔壁を有するワイヤーロープ挿通孔を中央部に有するロープグリース掻落し部材と、
前記ロープグリース掻落し部材を保持するように前記筒状周壁の内周面に設けられ、更に保持した前記ロープグリース掻落し部材と共同して前記容器の内部を上部回収室と下部回収室とに仕切る仕切壁を形成するロープグリース掻落し部材用保持部材とを有し、
前記劣化ロープグリース回収容器、ロープグリース掻落し部材、及びロープグリース掻落し部材用保持部材がそのワイヤーロープ挿通孔の軸線を含む面に沿ってそれぞれ分割された2つの半体で形成され、前記容器の一方の分割部における対向縁部は蝶番によって相互に結合され、他方の分割部における対向縁部は止め具によって、互いに分離可能に結合されている劣化ロープグリース除去装置を使用し、
前記止め具を解除し、前記容器半体を前記ロープグリース掻落し部材用保持部材と共に前記蝶番に関して回転させることにより前記止め具側の分割部を開いて容器を開放状態にし、
前記ロープグリース掻落し部材用保持部材の各半体に前記ロープグリース掻落し部材の半体をそれぞれ装着し、
垂直方向に延伸する劣化ロープグリース付着ワイヤーロープに対し、開放状態の容器を、その開放側を該ワイヤーロープに向けた状態で移動させて該ワイヤーロープを容器半体の間に挟み、
前記ロープグリース掻落し部材の半体同士で形成される前記ワイヤーロープ挿通孔と前記底壁の半体同士で形成されるロープ挿通開口とが前記ワイヤーロープと同一軸線的になるような相対的位置で前記容器半体を閉鎖し、前記ロープ挿通開口の弾性的孔壁と前記ロープ挿通開口の口縁部を前記ワイヤーロープ表面に圧接した状態で前記止め具を掛止し、
このように前記劣化ロープグリース付着ワイヤーロープに装着した劣化ロープグリース除去装置を該ワイヤーロープに対して相対的に上昇移動させ、前記ロープグリース掻落し部材により前記ワイヤーロープ上の劣化ロープグリースを掻き落して前記上部回収室内に収集し、前記ロープグリース掻落し部材によって除去できなかった残余の劣化ロープグリースがある場合には前記ロープ挿通開口の口縁部で拭い落として前記下部回収室内に収集する、
ことを特徴とする劣化ロープグリース付着ワイヤーロープからの劣化ロープグリース除去方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばダムなどに設置してある放流量調整用ゲートを開閉操作するために、該ゲートを吊り下げている鋼製ワイヤーロープに係るものであり、特にロープグリースを塗布されている該ワイヤーロープの表面から劣化ロープグリースを除去する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記ワイヤーロープには腐食を防止しその耐久性を図るために、そしてワイヤーロープ吊り下げ用滑車との間の摩擦接触による摩滅を防止するためにロープグリースが塗布されているが、このロープグリースは次第に劣化しその効果を失うために、1〜2年に1回程度、劣化ロープグリースを除去し、新しいロープグリース(例えば、東京製綱株式会社製「ワイロール」)を塗布するという作業が行われている。
【0003】
従来、上記ロープグリースの除去は、ワイヤーロープに沿って上下動する吊り足場等を設置し、これに作業員が乗り、ウエスや紐を用いてワイヤーロープから劣化ロープグリースを拭い取り或いはこそぎ取るという手作業による方法が用いられているが、高所での手作業であるため作業性と安全性に問題があり、またウエスが多量に必要であり、更に作業中に拭き取った油カスを河川内へ落下させないよう十分な養生対策が必要であるため作業効率が悪く、更に作業員の衣服などが汚れるため敬遠されがちであった。
【0004】
下記特許文献1には、手作業によらずロープグリースを除去するために、ワイヤーロープの外周に筒型の清掃装置本体を嵌着し、移動装置を用いて清掃装置本体をワイヤーロープに沿って移動させつつ、該清掃装置本体の内部空間に設けられたノズルからワイヤーロープへ向けて洗浄液を噴射することにより、ワイヤーロープから自動的にロープグリースを落とすようにした装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−79242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の従来技術は、上記のようにワイヤーロープ表面に洗浄液を噴射して劣化ロープグリースの洗浄除去を行うものであるが、一般にワイヤーロープは内部に麻芯を有し、その麻芯にロープグリースを含浸させロープ内部からの腐蝕を防止している場合が多く、その場合には上記洗浄水が上記麻芯に浸入し、麻芯含浸ロープグリースの腐蝕防止作用を損ない、ワイヤーロープ内部から鋼線部の腐蝕を発生させる原因となる。
【0007】
また、上記特許文献1には、ワイヤーロープに付着している劣化ロープグリースを掻き落すスクレーパを使用することが提案されているが、これのみで十分な掻き落し効果をもたらすものではなく、洗浄液噴射による劣化ロープグリース除去を補完する補助的な作用を果たすように構成されている。
【0008】
更に、上記特許文献1に記載の従来技術によれば、洗浄後に生じる油混じりの廃液は清掃装置本体内に貯留されるが、洗浄廃液の処理に手間と費用が掛かり、また本体内から溢れ出したり或いはワイヤーロープ表面の撚り素線間に生じる細溝を通って漏れ出したりする洗浄廃液が河川を汚染する可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、ワイヤーロープ表面からの劣化ロープグリースの除去を、ウエスなどを使用した手作業による拭き取りや、洗浄水噴射による洗浄除去に拠らずに効率よく確実に行い、除去した油カスを確実に捕集することのできるロープグリース除去装置及び除去方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する請求項1に記載の発明は、ゲート吊り下げ用ワイヤーロープからの劣化ロープグリース除去装置であって、
筒状周壁及び底壁を有し、該底壁中央に上記ワイヤーロープに密接接合する口縁部を有するロープ挿通開口が形成された劣化ロープグリース回収容器と、
上記ワイヤーロープに対して圧接するように形成された弾性的孔壁を有するワイヤーロープ挿通孔を中央部に有し、上記ワイヤーロープに対しその軸線方向へ移動せしめられるときに上記弾性的孔壁によって上記ワイヤーロープ表面からロープグリースを掻き落すロープグリース掻落し部材と、
上記弾性的孔壁を上記ワイヤーロープに圧接した状態で上記ロープグリース掻落し部材を保持するように上記筒状周壁の内周面に設けられ、更に保持した上記ロープグリース掻落し部材と共同して上記容器の内部を上部回収室と下部回収室とに仕切る仕切壁を形成するロープグリース掻落し部材用保持部材と、
を有することを特徴とする。
【0011】
本発明によるロープグリース除去装置は、垂直方向へ延びているゲート吊り下げ用ワイヤーロープに対し、上記ロープグリース掻落し部材のワイヤーロープ挿通孔と上記筒状容器底部のロープ挿通開口を係合させることによって装着される。次いで、このように装着されたロープグリース除去装置はワイヤーロープに対して上昇移動せしめられるか、或いは静止位置に置かれた状態でワイヤーロープの方が下方へ垂直に引き下げられる。ロープグリース除去装置の上昇移動は機械的な吊り上げ装置を用いて行ってもよく、或いは昇降台に乗った作業員がロープグリース除去装置を保持し、昇降台を上昇させるようにしてもよい。また、ゲートを開閉させる機会を利用することができ、その場合には、滑車に掛けられたワイヤーロープの何れかの側のワイヤーロープが引き下げられるので、そのよう引き下げ側ワイヤーロープに対してロープグリース除去装置を装着し、ロープグリース除去装置自体は静止位置に定置しておく。
【0012】
何れの場合にも、ワイヤーロープは上記ロープグリース掻落し部材に対して相対的に下方へ移動する状態になり、このことによってワイヤーロープ表面に付着した劣化ロープグリースはワイヤーロープに圧接している上記弾性的孔壁によって掻き落とされ、掻き落とされた油カスは上記上部回収室内へ収集される。
【0013】
場合により、上部回収室内の油カスがワイヤーロープを伝って漏れ出した場合や、上記ロープグリース掻落し部材によって掻き落しきれず、ワイヤーロープ上に劣化ロープグリースの残滓がある場合には、上記筒状容器の底壁に設けられた上記口縁部によってワイヤーロープに付着した油カス若しくは残滓が擦り取られ、上記下部回収室内に捕集される。また、ワイヤーロープ以外の箇所で上部回収室から油カスが漏れ出した場合にも下部回収室内に捕集される。
【0014】
このように、本発明によれば、ワイヤーロープ上の劣化ロープグリースは、ワイヤーロープに圧接された弾性的孔壁がワイヤーロープ表面に倣って変形することにより、ワイヤーロープ表面から確実に掻き落とされて上部回収室に捕集され、また上部回収室に捕集された油カスが漏れ出すことがあっても、その漏出油カスは下部回収室内に捕捉され筒状容器外への漏出が回避される。
【0015】
請求項2に記載のように、請求項1に記載の装置において、上記ロープグリース掻落し部材を上記筒状周壁の軸線に対して直交して配置される円盤体で形成し、上記ロープグリース掻落し部材保持部材を、上記筒状周壁の内周面に該周壁と同一軸線的に互いに平行に間隔を置いて取り付けられ上記円盤体の外周側の一部を差し込むための保持周溝を形成する2枚のリング状板体で形成されているようにすれば、ワイヤーロープの太さに応じたワイヤーロープ挿通孔を有する円盤体を上記保持周溝に差し込むことができ、本発明による装置を多様な太さのワイヤーロープに簡単に適用することができる。
【0016】
請求項3に記載のように、請求項1又は2に記載の装置において、上記ロープグリース掻落し部材を、そのワイヤーロープ挿通孔の軸線を含む面に沿って分割された2つの半割リング部材とし、上記劣化ロープグリース回収容器を、上記ロープグリース掻落し部材保持部材と共に、上記容器の筒状周壁の軸線を含む面に沿って分割し、上記容器の一方の分割部における対向縁部は蝶番によって相互に結合し、他方の分割部における対向縁部は止め具によって互いに分離可能に結合されているようにすれば、本発明による劣化ロープグリース除去装置をワイヤーロープへ装着する際、上記止め具を掛止解除して上記蝶番を中心に容器の半割り部を互いに開放し、次いで両者の間にワイヤーロープを挟み込み、ワイヤーロープを上記ワイヤーロープ挿通孔及びロープ挿通開口に合わせた後、両半割り部を閉鎖して容器を閉鎖し、上記止め具を掛止する作業を行うことで、装着が極めて簡単に達成される。
【0017】
請求項4に記載のように、請求項1〜3の何れかに記載の装置において、上記回収容器の底壁に、回収容器底部から上記下部回収室内へ向け、上記ロープグリース掻落し部材保持部材に保持された上記ロープグリース掻落し部材のワイヤーロープ挿通孔と同軸的に突出した円錐形突起部を設け、この突起部の頂部に当る部分に上記ロープ挿通開口を形成するようにすれば、上部回収室からワイヤーロープを伝って油カスが漏出してきたとしても、この漏出油カスは上記突起部の頂部によって円錐形突起部の斜面の方に誘導され、該斜面を伝って下部回収室の底の方へ流れ捕捉されるので、筒状容器外への油カスの流出が回避される。
【0018】
請求項5に記載のように、請求項1〜4の何れかに記載の装置において、上記回収容器の筒状周壁を、下部から上部に向けて広がった形状の略逆円錐台形を呈しているようにすれば、上部回収室の容量を大きくすることができ、比較的長いワイヤーロープの劣化ロープグリース除去を、一度の或いは少ない作業回数で達成することができる。
【0019】
上記ロープグリース掻落し部材は、固化している劣化ロープグリースにも対応し得るよう、硬質ゴム製であることが好ましいが、硬質ゴムであっても、金属に匹敵するような硬度を有し、劣化ロープグリースの掻落し時にワイヤーロープ表面のメッキをも剥がしてしまうような材質のものは適当ではない。請求項6に記載のように、請求項1〜5の何れかに記載の装置において、上記ロープグリース掻落し部材を準硬質ゴム製とすれば、ワイヤーロープの表面を損傷することなく、しかもワイヤーロープから劣化ロープグリースを効果的にこすり落とすことができる。使用される準硬質ゴムは、JIS Aの硬度が約70〜80のものであり、その種類は劣化ロープグリースに対して耐性を有していれば特に制限されないが、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンが好ましく、中でもクロロプレンゴム、ニトリルゴム、又は水素化ニトリルゴムは対油性、対摩耗性、機械的強度に優れており特に好ましい。
【0020】
同様に、請求項7に記載のように、請求項4又は5に記載の装置において、上記底壁を、上記周壁の下部周縁部と結合された硬質又は準硬質ゴムカバーで形成されているようにすれば、上記ロープ挿通開口と接触するワイヤーロープは摩擦的な損傷から保護され、このことは、ワイヤーロープが亜鉛メッキされている場合に特に有利である。使用できるゴムの種類は請求項6に関して上記したものと同様であり、硬度はJIS Aの値で約70〜95のものが好ましい。尚、上記ロープグリース掻落し部材及び底壁の材料として、強度が不足している準硬質ゴムを適用する場合には、例えば金属板を心材とするとか、或いは当て板として適用するなどして、金属による補強材を取り付け、強度を上げるようにしてもよい。
【0021】
請求項8に記載の発明は、劣化ロープグリース付着ワイヤーロープからの劣化ロープグリース除去方法に関するものであり、この方法は、
筒状周壁及び底壁を有し、該底壁中央に上記ワイヤーロープに密接接合する口縁部を有するロープ挿通開口が形成された劣化ロープグリース回収容器と、
上記ワイヤーロープに対して圧接するように形成された弾性的孔壁を有するワイヤーロープ挿通孔を中央部に有するロープグリース掻落し部材と、
上記ロープグリース掻落し部材を保持するように上記筒状周壁の内周面に設けられ、更に保持した上記ロープグリース掻落し部材と共同して上記容器の内部を上部回収室と下部回収室とに仕切る仕切壁を形成するロープグリース掻落し部材用保持部材とを有し、
上記劣化ロープグリース回収容器、ロープグリース掻落し部材、及びロープグリース掻落し部材用保持部材がそのワイヤーロープ挿通孔の軸線を含む面に沿ってそれぞれ分割された2つの半体で形成され、上記容器の一方の分割部における対向縁部は蝶番によって相互に結合され、他方の分割部における対向縁部は止め具によって、互いに分離可能に結合されている劣化ロープグリース除去装置を使用し、
上記止め具を解除し、上記容器半体を上記ロープグリース掻落し部材用保持部材と共に上記蝶番に関して回転させることにより上記止め具側の分割部を開いて容器を開放状態にし、
上記ロープグリース掻落し部材用保持部材の各半体に上記ロープグリース掻落し部材の半体をそれぞれ装着し、
垂直方向に延伸する劣化ロープグリース付着ワイヤーロープに対し、開放状態の容器を、その開放側を該ワイヤーロープに向けた状態で移動させて該ワイヤーロープを容器半体の間に挟み、
上記ロープグリース掻落し部材の半体同士で形成される上記ワイヤーロープ挿通孔と上記底壁の半体同士で形成されるロープ挿通開口とが上記ワイヤーロープと同一軸線的になるような相対的位置で上記容器半体を閉鎖し、上記ロープ挿通開口の弾性的孔壁と上記ロープ挿通開口の口縁部を上記ワイヤーロープ表面に圧接した状態で上記止め具を掛止し、
このように上記劣化ロープグリース付着ワイヤーロープに装着した劣化ロープグリース除去装置を該ワイヤーロープに対して相対的に上昇移動させ、上記ロープグリース掻落し部材により上記ワイヤーロープ上の劣化ロープグリースを掻き落して上記上部回収室内に収集し、上記ロープグリース掻落し部材によって除去できなかった残余の劣化ロープグリースがある場合には上記ロープ挿通開口の口縁部で拭い落として上記下部回収室内に収集することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の方法によれば、ワイワーロープへの劣化ロープグリース除去装置の装着を、回収容器の開放閉鎖操作により簡単に行ことができ、また、装着した劣化ロープグリース除去装置をワイヤーロープに対して相対的に上昇移動させる操作を行うだけで劣化ロープグリースの除去が十分に行われ、更に、必要に応じて上記ロープグリース掻落し部材の交換を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ダムの放流量調整用ゲート吊り下げ用等のワイヤーロープからの劣化グリースの除去を、比較的軽度の作業で、作業者への劣化グリースの付着や周囲環境の汚染を防止しつつ効率よく達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明による劣化ロープグリース除去装置1の正面図、図2は同装置の中央縦断面図、図3は図2中のIII−III線に沿う断面図である。
【0026】
劣化ロープグリース除去装置1は逆円錐台で筒状の金属製、例えばステンレス製周壁2と、この周壁の小径側の下部に結合され底壁を形成している硬質ゴムカバー3とを有する劣化ロープグリース回収容器4を備えており、上記ゴムカバー3は周壁2の下端部に対して一部が重複しており、この重複部を鋲やボルト・ナット等の固着具5により固定することにより、周壁2とゴムカバー3との相互結合が行われている。
【0027】
上記回収容器4はその中心軸線を含む面に沿って2つの半体4a,4bに分割されており、図1には手前側の一方の分割部が線分6によって示されている。他方の分割部は反対側にあり図示されていないが、この他方の分割部は双方の縁部が互いに蝶番によって結合されており、従って両容器半体4a,4bは該蝶番に関して互いに回動可能であるので、回収容器4は、手前側に見える分割部6の両縁部が図示の接触状態から矢印6a,6bにて示す分離方向へ、そしてその逆の接近方向へ回動することによって開閉可能である。
【0028】
手前側に見えている分割部6には容器半体4a,4b間に止め具7a,7bが架け渡して設けてあり、これら止め具の掛止操作により容器を閉鎖状態に維持し、或いは掛止解除操作により容器を開放可能にする。分割部で互いに突き合わされる端縁部にはシール措置が施されており、閉鎖状態の容器4内から回収された油カスが漏れ出さないよう密封されている。
【0029】
図2に示すように、回収容器4内にはゴムカバー3に近接してロープグリース掻き落し部材8が水平に、即ち筒状周壁2の軸線に対して直角に配置されている。このロープグリース掻き落し部材8は準硬質ゴム製の円盤体で構成されており、中心部にワイヤーロープWを挿通するためのワイヤーロープ挿通孔8a(図3)を有している。この挿通孔8aの直径は、この挿通孔にワイヤーロープWが挿通されたとき、挿通孔の孔壁がワイヤーロープ表面に圧接され、ワイヤーロープ表面の凹凸に倣って変形するような寸法になされている。更に、上記ロープグリース掻き落し部材8はその挿通孔8aの軸線を含む面で2つの半円盤体8b,8cに分割されており、図2及び図3には分割部が線分8dにて示されている。
【0030】
上記ロープグリース掻き落し部材、即ち準硬質ゴム製円盤体8を容器4内に確固に保持するために、上記筒状周壁2の内周面にはロープグリース掻落し部材用保持部材9が設けてあり、この保持部材9は筒状周壁2の軸線に対して直角方向に延びる平行に配置された2枚のリング状板体9a,9bで形成されており、それぞれのリング状板体の外周側は筒状周壁2の内周面に溶接などにより固着され、これによって両リング状板体9a,9b間にはゴム製円盤体8の外周側部分が嵌め込まれる環状溝9cが形成される。
【0031】
上記リング状板体9a,9bは上記回収容器4と共に共通の面上で分割されており、従って容器半体4a,4bに対して環状溝9cのそれぞれの半分が形成されることになり、回収容器4が閉鎖されたときに完全な円環状になる。
【0032】
この環状溝9cの幅、即ちリング状板体9a,9b間の間隔はゴム製円盤体8の幅又は厚みより僅かに大きくしてあり、また環状溝9cの直径はゴム製円盤体8の外径と実質的に同じか、或いはゴム製円盤体8の外径より僅かに小さくしてあり、従って、上記回収容器4を開放した状態で、上記ゴム製円盤体8の半体を容器半体4a,4bのそれぞれの環状溝半部に嵌め込み、次いで回収容器4を閉鎖し、止め具7a,7bによって掛止した場合、上記ゴム製円盤体8の半体はそれらの分割端面が互いに密着するか、或いは互いに圧接された状態になる。このことにより、ゴム製円盤体8の分割部を通って、除去された油カスが漏出することが防止され、また、ゴム製円盤体8の挿通孔8aにワイヤーロープWが挿通されている場合に、挿通孔形成壁面はワイヤーロープに圧接され、ワイヤーロープの表面に倣って変形し、同表面に密着するので、ワイヤーロープ表面を伝っての油カスの漏洩も防止される。
【0033】
上記から明らかなように、上記回収容器4が閉鎖された状態で上記リング状板体9a,9bとゴム製円盤体8は仕切り部材となり、回収容器4内に上部回収室4cと下部回収室4dを形成する。
【0034】
下部回収室4の底壁を形成する上記硬質ゴムカバー3はその中央部に、上記下部回収室4d内へ向けて突入し、上記ロープグリース掻落し部材保持部材9に保持された上記ロープグリース掻落し部材8のワイヤーロープ挿通孔8aと同軸的な円錐形突起部3aを有しており、この突起部3aの頂部に当る部分にロープ挿通開口3bが形成されている。このロープ挿通開口3bはその口縁部がワイヤーロープに密接接合する寸法形状になされている。
【0035】
劣化ロープグリース除去装置1の寸法の例としては、ワイヤーロープWの太さが例えば16mmである場合、上記回収容器4の最大径は約30cm、高さは約40cm、ロープグリース掻落し部材8の直径は約10cm、厚さは約20mm、リング状板体9a,9bの内径は約50mmである。
【0036】
次に、上記のように構成された劣化ロープグリース除去装置1によるワイヤーロープW表面からの劣化ロープグリース除去について説明する。
【0037】
先ず、止め具7a,7bの掛止解除操作により開放された回収容器4に対し、保持部材9の環状溝半部にワイヤーロープ径に合ったワイヤーロープ挿通孔8aを有するゴム製円盤体8の半体をそれぞれ差し込み、次いでこの開放回収容器4を、劣化ロープグリースを除去すべきワイヤーロープWに対して、円盤体半体のワイヤーロープ挿通孔8aにワイヤーロープが対応位置するよう配置し、次いで回収容器4を閉鎖し、止め具7a,7bの掛止操作を行う。この結果、回収容器4は、ワイヤーロープ挿通孔8aの孔壁及びロープ挿通開口3bの口縁部がワイヤーロープに圧着され、またロープグリース掻落し部材8と保持部材9とによる仕切りによって上部回収室4cと下部回収室4dが形成されるよう、ワイヤーロープWを包囲して取り付けられ回収準備が完了する。
【0038】
次に、このように装着された回収容器4は垂直方向に延伸するワイヤーロープWに対し相対的に上方へ移動せしめられる。このような相対移動は、例えば静止状態にあるワイヤーロープに対しては、このワイヤーロープに対して上昇可能に設置された昇降台に乗った作業員が、図1に示すような容器半体4a,4bに取り付けられた把手10a,10bを持った状態で昇降台を上昇させることによって、或いはワイヤーロープに近接して回収容器吊り上げ装置(図示せず)を設置し、上記把手10a,10bに結合した吊り上げ紐11a,11bを上記吊り上げ装置に連結して引き上げることにより、或いはダムのゲート開閉の際のように上下動するワイヤーロープに対しては、下降動するワイヤーロープに対して、回収容器4を定位置に固定的に配置することによって行われる。
【0039】
上記のようなワイヤーロープWに対する回収容器4の相対移動を行うことによって、ワイヤーロープの外表面に付着している劣化ロープグリースは上記ロープグリース掻落し部材8によって掻き落され、掻き落されたロープグリースは図2に示すように上部回収室4c内に貯留される。
【0040】
上記ロープグリース掻落し部材8のワイヤーロープ挿通孔8aの孔壁はワイヤーロープWの表面に圧接され密着した状態にあり、従って大部分のロープグリースはロープグリース掻落し部材8によって除去され、上部回収室4c内に回収されるが、ロープグリース掻落し部材8を通り抜けたロープグリースがある場合には、上記硬質ゴムカバー3のロープ挿通開口3bの口縁部がワイヤーロープに密接接合していることによってワイヤーロープから掻き落され、更にロープ挿通開口3bの口縁部が円錐形突起部3aの先端部に設けられていることによって、該口縁部で掻き落されたロープグリースは円錐形突起部3aの傾斜面方向へ誘導され、該傾斜面に沿って流下せしめられ、下部回収室4d内へ導入される。従って、ワイヤーロープからは劣化ロープグリースがほぼ完全に拭い取られ、また除去されたロープグリースは回収容器4内に確実に収容されるので作業員を汚すことも、周囲環境を汚染することもない。
【0041】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本体部の材料はアルミ製でもよく、プラスチック材料で製作されていてもよい。
【0042】
また、底壁を形成する上記硬質ゴムカバー3には上記のような円錐形突起部を設けることなく、扁平な底面とし、この底面にロープ挿通開口を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による劣化ロープグリース除去装置の正面図である。
【図2】図1に示す装置の中央縦断面図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 劣化ロープグリース除去装置
2 筒状周壁
3 ゴムカバー
3a 円錐形突起部
3b ロープ挿通開口
4 回収容器
4a,4b 回収容器半体
4c 上部回収室
4d 下部回収室
5 固着具
6 分割部
7a,7b 止め具
8 ロープグリース掻き落し部材
8a ワイヤーロープ挿通孔
8b 分割部
9 ロープグリース掻落し部材用保持部材
9a,9b リング状板体
9c 環状溝
10a,10b 把手
11a,11b 吊り上げ紐
【出願人】 【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
【出願日】 平成18年7月20日(2006.7.20)
【代理人】 【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明


【公開番号】 特開2008−23446(P2008−23446A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−198306(P2006−198306)