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【発明の名称】 超音波振動子及びそれを備える超音波機器
【発明者】 【氏名】木村 亘

【氏名】滝 英晃

【要約】 【課題】超音波振動子の側面部分を前面部材とは別体の側面部材により構成した超音波振動子、及びこの超音波振動子を備える超音波機器を提供する。

【解決手段】本発明の超音波振動子101は、超音波放射面11を有する前面部材1と、側面部材2と、裏打部材3と、圧電セラミック体4とを、軸線方向に一体に備え、側面部材2の一端側が前面部材1の超音波放射面11とは反対側に取り付けられ、裏打部材3の一端側が側面部材2の他端側に取り付けられ、圧電セラミック体4は前面部材1と裏打部材3との間に介装されていることを特徴とする。また、本発明の超音波機器は、この超音波振動子を備えることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波放射面を有する前面部材と、側面部材と、裏打部材と、圧電セラミック体とを、軸線方向に一体に備える超音波振動子であって、
上記側面部材の一端側が上記前面部材の上記超音波放射面とは反対側に取り付けられ、上記裏打部材の一端側が該側面部材の他端側に取り付けられ、上記圧電セラミック体は該前面部材と該裏打部材との間に介装されていることを特徴とする超音波振動子。
【請求項2】
上記前面部材の上記圧電セラミック体の一端面が当接する当接面の表面粗さ(Ra)が12.5μm以下である請求項1に記載の超音波振動子。
【請求項3】
上記当接面に、上記圧電セラミック体の一端面側を嵌装するための嵌装用凹部が設けられている請求項2に記載の超音波振動子。
【請求項4】
上記側面部材の内側面と、上記圧電セラミック体の外側面との間に絶縁材層が介装されている請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項5】
上記圧電セラミック体に設けられた電極のうちの一方の電極は、上記裏打部材を導電経路として該裏打部材に取り付けられた電極端子に接続され、
他方の電極には、該裏打部材を貫通して設けられたリード線挿通孔に装通された電極リード線の一端部が接続され、且つ該電極リード線の他端部が該裏打部材の他端側から取り出されている請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項6】
上記前面部材の構成材料は、上記裏打部材の構成材料よりも、振動の内部損失が小さくなる材料が適用されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項7】
上記前面部材を伝わる音速が、上記裏打部材を伝わる音速よりも速くなるように、上記前面部材及び上記裏打部材を構成する材料が選ばれていることを特徴とする請求項6に記載の超音波振動子。
【請求項8】
上記前面部材は、上記裏打部材の構成材料よりも、密度が小さい材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項9】
上記側面部材の熱膨張係数は、上記前面部材及び上記裏打部材の各熱膨張係数よりも、上記圧電セラミック体の熱膨張係数に近い値を有することを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項10】
上記圧電セラミック体は、第1圧電セラミック板と、第2圧電セラミック板とを備え、
上記第1圧電セラミック板は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する第1圧電セラミック成形体と、該第1圧電セラミック成形体の該貫通孔に充填された導電体と、一面側の該貫通孔の周縁部を除く部分に設けられた第1一面側導電層と、他面側の周縁部の一部を除く部分に設けられた第1他面側導電層と、側面に設けられ、且つ該第1一面側導電層に導通し、該第1他面側導電層に導通しない第1側面側導電層とを有し、
奇数枚の上記第1圧電セラミック板が、各々の上記一面側同士又は上記他面側同士が交互に当接されて積層体とされ、該積層体の上記前面部材側となる面が該第1圧電セラミック成形体の該他面側と該第1他面側導電層とにより構成されており、
上記第2圧電セラミック板は、第2圧電セラミック成形体と、該第2圧電セラミック成形体の一面側に設けられた第2一面側導電層と、他面側の周縁部の一部を除く部分に設けられた第2他面側導電層と、側面に設けられ、且つ上記第1側面側導電層及び該第2一面側導電層に導通し、該第2他面側導電層に導通しない第2側面側導電層とを有し、
上記第2圧電セラミック板は、上記積層体の上記前面部材側となる上記面と、上記前面部材の上記当接面との間に、上記第2一面側導電層と該当接面とが当接するようにして介装されて積層されている請求項2乃至9のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項11】
上記圧電セラミック体は、第1圧電セラミック板を備え、
上記第1圧電セラミック板は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する第1圧電セラミック成形体と、該第1圧電セラミック成形体の該貫通孔に充填された導電体と、一面側の該貫通孔の周縁部を除く部分に設けられた第1一面側導電層と、他面側の周縁部の一部を除く部分に設けられた第1他面側導電層と、側面に設けられ、且つ該第1一面側導電層に導通し、該第1他面側導電層に導通しない第1側面側導電層とを有し、
偶数枚の上記第1圧電セラミック板が、各々の上記一面側同士又は上記他面側同士が交互に当接されて積層体とされ、該積層体の一面及び他面がともに該第1圧電セラミック成形体と該第1一面側導電層とにより構成されており、
上記前面部材の上記当接面のうちの上記導電体の端面と対向する位置に、該端面より径大の絶縁用凹部が設けられている請求項2乃至9のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項12】
上記圧電セラミック体は、第1圧電セラミック板を備え、
上記第1圧電セラミック板は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する第1圧電セラミック成形体と、該第1圧電セラミック成形体の該貫通孔に充填された導電体と、一面側の該貫通孔の周縁部を除く部分に設けられた第1一面側導電層と、他面側の周縁部の一部を除く部分に設けられた第1他面側導電層と、側面に設けられ、且つ該第1一面側導電層に導通し、該第1他面側導電層に導通しない第1側面側導電層とを有し、
偶数枚の上記第1圧電セラミック板が、各々の上記一面側同士又は上記他面側同士が交互に当接されて積層体とされ、該積層体の一面及び他面がともに該第1圧電セラミック成形体と該第1一面側導電層とにより構成されており、
上記積層体と、上記前面部材の上記当接面との間に、未分極セラミック板が介装されている請求項2乃至9のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子を備えることを特徴とする超音波機器。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子及びそれを備える超音波機器に関する。更に詳しくは、本発明は、振動子の側面部分を前面部材とは別体の側面部材により構成することで、前面部材の圧電セラミック体が当接される面の加工が容易となり、例えば、当接面の表面粗度を向上させ、それによって圧電素子の振動の前面部材への伝播損失を低減させることができる超音波振動子、及びこの超音波振動子を備える超音波機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の超音波振動子が提供されており、例えば、金属製振動ブロックの後端面に開口溝を形成し、この開口溝に圧電振動素子を装着して保持するようにしたランジュバン型超音波振動子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この超音波振動子では、圧電振動素子及び接続電極が振動ブロックの内部に収納され、外表面に露出しない。従って、接続電極が汚損されることがなく、且つ短絡が防止される。また、外周面の略全面が振動ブロックにより形成されるため、ハンドツールとして用いた場合に、振動ブロックの全周面を保持することができ、取り扱いが容易である等と説明されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−199195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来の超音波振動子では、振動伝達部である前面部材と、圧電振動素子が収納された側面部材とが一体であるため、前面部材の圧電振動素子が当接される面の加工が容易ではなく、当接面の表面粗度の向上には限界がある。従って、圧電振動素子から前面部材への振動の伝播効率を十分に向上させることができない場合がある。
【0005】
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、振動子の側面部分を前面部材とは別体の側面部材により構成することで、前面部材の圧電セラミック体が当接される面の加工が容易となり、例えば、当接面の表面粗度を向上させ、それによって圧電素子の振動の前面部材への伝播損失を低減させることができる超音波振動子、及びこの超音波振動子を備える超音波機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
1.超音波放射面を有する前面部材と、側面部材と、裏打部材と、圧電セラミック体とを、軸線方向に一体に備える超音波振動子であって、上記側面部材の一端側が上記前面部材の上記超音波放射面とは反対側に取り付けられ、上記裏打部材の一端側が該側面部材の他端側に取り付けられ、上記圧電セラミック体は該前面部材と該裏打部材との間に介装されていることを特徴とする超音波振動子。
2.上記前面部材の上記圧電セラミック体の一端面が当接する当接面の表面粗さ(Ra)が12.5μm以下である上記1.に記載の超音波振動子。
3.上記当接面に、上記圧電セラミック体の一端面側を嵌装するための嵌装用凹部が設けられている上記2.に記載の超音波振動子。
4.上記側面部材の内側面と、上記圧電セラミック体の外側面との間に絶縁材層が介装されている上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
5.上記圧電セラミック体に設けられた電極のうちの一方の電極は、上記裏打部材を導電経路として該裏打部材に取り付けられた電極端子に接続され、他方の電極には、該裏打部材を貫通して設けられたリード線挿通孔に装通された電極リード線の一端部が接続され、且つ該電極リード線の他端部が該裏打部材の他端側から取り出されている請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
6.上記前面部材の構成材料は、上記裏打部材の構成材料よりも、振動の内部損失が小さくなる材料が適用されている上記2.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
7.上記前面部材を伝わる音速が、上記裏打部材を伝わる音速よりも速くなるように、上記前面部材及び上記裏打部材を構成する材料が選ばれている上記6.に記載の超音波振動子。
8.上記前面部材は、上記裏打部材の構成材料よりも、密度が小さい材料で構成されている上記2.乃至7.のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
9.上記側面部材の熱膨張係数は、上記前面部材及び上記裏打部材の各熱膨張係数よりも、上記圧電セラミック体の熱膨張係数に近い値を有する上記2.乃至8.のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
10.上記圧電セラミック体は、第1圧電セラミック板と、第2圧電セラミック板とを備え、上記第1圧電セラミック板は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する第1圧電セラミック成形体と、該第1圧電セラミック成形体の該貫通孔に充填された導電体と、一面側の該貫通孔の周縁部を除く部分に設けられた第1一面側導電層と、他面側の周縁部の一部を除く部分に設けられた第1他面側導電層と、側面に設けられ、且つ該第1一面側導電層に導通し、該第1他面側導電層に導通しない第1側面側導電層とを有し、奇数枚の上記第1圧電セラミック板が、各々の上記一面側同士又は上記他面側同士が交互に当接されて積層体とされ、該積層体の上記前面部材側となる面が該第1圧電セラミック成形体の該他面側と該第1他面側導電層とにより構成されており、上記第2圧電セラミック板は、第2圧電セラミック成形体と、該第2圧電セラミック成形体の一面側に設けられた第2一面側導電層と、他面側の周縁部の一部を除く部分に設けられた第2他面側導電層と、側面に設けられ、且つ上記第1側面側導電層及び該第2一面側導電層に導通し、該第2他面側導電層に導通しない第2側面側導電層とを有し、上記第2圧電セラミック板は、上記積層体の上記前面部材側となる上記面と、上記前面部材の上記当接面との間に、上記第2一面側導電層と該当接面とが当接するようにして介装されて積層されている上記2.乃至9.のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
11.上記圧電セラミック体は、第1圧電セラミック板を備え、上記第1圧電セラミック板は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する第1圧電セラミック成形体と、該第1圧電セラミック成形体の該貫通孔に充填された導電体と、一面側の該貫通孔の周縁部を除く部分に設けられた第1一面側導電層と、他面側の周縁部の一部を除く部分に設けられた第1他面側導電層と、側面に設けられ、且つ該第1一面側導電層に導通し、該第1他面側導電層に導通しない第1側面側導電層とを有し、偶数枚の上記第1圧電セラミック板が、各々の上記一面側同士又は上記他面側同士が交互に当接されて積層体とされ、該積層体の一面及び他面がともに該第1圧電セラミック成形体と該第1一面側導電層とにより構成されており、上記前面部材の上記当接面のうちの上記導電体の端面と対向する位置に、該端面より径大の絶縁用凹部が設けられている上記2.乃至9.のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
12.上記圧電セラミック体は、第1圧電セラミック板を備え、上記第1圧電セラミック板は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する第1圧電セラミック成形体と、該第1圧電セラミック成形体の該貫通孔に充填された導電体と、一面側の該貫通孔の周縁部を除く部分に設けられた第1一面側導電層と、他面側の周縁部の一部を除く部分に設けられた第1他面側導電層と、側面に設けられ、且つ該第1一面側導電層に導通し、該第1他面側導電層に導通しない第1側面側導電層とを有し、偶数枚の上記第1圧電セラミック板が、各々の上記一面側同士又は上記他面側同士が交互に当接されて積層体とされ、該積層体の一面及び他面がともに該第1圧電セラミック成形体と該第1一面側導電層とにより構成されており、上記積層体と、上記前面部材の上記当接面との間に、未分極セラミック板が介装されている上記2.乃至9.のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子。
13.請求項1乃至12のうちのいずれか1項に記載の超音波振動子を備えることを特徴とする超音波機器。
【発明の効果】
【0007】
本発明の超音波振動子は、前面部材に別体として形成された側面部材が取り付けられているため、圧電セラミック体の一端面が当接する当接面の加工が容易であり、例えば、当接面の表面粗度を向上させ、それによって圧電素子の振動の前面部材への伝播損失を低減させることができる。
また、本発明では、前述したように超音波振動子の側面部分を、前面部材及び裏打部材とは別体の側面部材により構成したことで、製品として要求される所望の機能的要素を、より細かく分けて部材ごとに割り当てることができ、これにより、各部材にとってより適した構成材料を選択することが可能となる。つまり、本発明によれば、選択した材料の特性を生かしたかたちで個々の部材を構成することができる。
さらに、本発明では、前面部材及び裏打部材とは別体で側面部材を構成し、上記したように構成部品のさらなる分割化を図ったことで、部品単体の加工性を向上させることができ、これにより、例えば製品としての機能を高めるために部品単体の構造に、複雑な部品形状を適用することなどが可能となる。したがって、本発明によれば、超音波振動子を構成する部品の形状選択の自由度を高めることができる。
また、前面部材の圧電セラミック体の一端面が当接する当接面の表面粗さ(Ra)が12.5μm以下である場合は、圧電素子の振動の前面部材への伝播損失を十分に低減させることができる。
更に、当接面に、圧電セラミック体の一端面側を嵌装するための嵌装用凹部が設けられている場合は、当接面における圧電セラミック体の位置ずれを抑えることができ、圧電セラミック体と側面部材との接触により振動が阻害されることを防止することができる。
また、側面部材の内側面と、圧電セラミック体の外側面との間に絶縁材層が介装されている場合は、圧電セラミック体の絶縁性、特に圧電セラミック体の側面に導電層が設けられたときに、この導電層と側面部材の内面との間の絶縁性を向上させることができる。
更に、圧電セラミック体に設けられた電極のうちの一方の電極は、裏打部材を導電経路として裏打部材に取り付けられた電極端子に接続され、他方の電極には、裏打部材を貫通して設けられたリード線挿通孔に装通された電極リード線の一端部が接続され、且つ電極リード線の他端部が裏打部材の他端側から取り出されている場合は、電極を外部へ導出するための電極リード線が1本のみであるため、電極導出構造が簡易なものとなり、素子全体の構造も簡易なものとすることができる。
また、前面部材が裏打部材よりも振動の伝播ロスの少ない材料(例えば材料自体を伝わる音速の速い材料)で構成されていることで、圧電セラミック体の発生させる振動を、前面部材先端の超音波放射面側に効率良く伝播することができる。
更に、裏打部材よりも前面部材を軽量にした構造の場合、圧電セラミック体の発生させる振動を基に、裏打部材側よりも、前面部材側をより大きく変位させることができ、これにより超音波放射面側で、振幅の大きな安定した振動を得ることができる。
また、熱膨張係数が、圧電セラミック体に近似する材料で側面部材を構成することで、使用環境の温度変化により伸縮する側面部材の伸縮量と圧電セラミック体の伸縮量との差を極力抑えることができ、超音波振動子の温度特性を向上させることができる。
また、奇数枚の第1圧電セラミック板と、第2圧電セラミック板とが積層された圧電セラミック体を有する場合は、電極導出構造を容易に簡易なものとすることができ、素子全体の構造も簡易なものとすることができる。
更に、偶数枚の第1圧電セラミック板が積層された圧電セラミック体を有し、且つ前面部材の圧電セラミック体が当接する面のうちの導電体の端面と対向する位置に、端面より径大の絶縁用凹部が設けられている場合、及び偶数枚の第1圧電セラミック板が積層された積層体と、前面部材の圧電セラミック体の当接面との間に、未分極セラミック板が介装されている場合は、圧電セラミック体を同一の構成の複数の圧電セラミック板により作製することができるため、圧電セラミック体を容易に作製することができる。
【0008】
本発明の超音波機器は、本発明の超音波振動子を備えるため、特に歯石除去等の小型ハンディ型の超音波機器として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図1〜図13を参照しつつ詳しく説明する。
本発明の超音波振動子101は、図2のように、前面部材1と、一端側が前面部材1の超音波放射面11とは反対側に取り付けられた側面部材2と、一端側が側面部材2の他端側に取り付けられた裏打部材3と、前面部材1の超音波放射面11とは反対側の端面と裏打部材3の一端側の端面との間に介装された圧電セラミック体4とを、軸線方向に一体に備える。
この超音波振動子101は、所謂、ランジュバン型超音波振動子であり、従来は前面部材1と一体であった側面部材2が、別体として前面部材1に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
上記「前面部材1」は、超音波放射面11を有し、この超音波放射面11から媒体に向けて超音波が放射される。他の物品等と接触しても欠損等し難い十分な強度を有する前面部材1であることがより好ましいため、前面部材1は金属製である。この金属の種類は特に限定されず、各種の金属を用いることができる。金属としては、金属のうちでは圧電セラミック体4とρC(密度×音速)が大きく相違しない、所謂、軽金属が好ましい。この軽金属としては、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、チタン、及びそれらの合金等の軽金属が挙げられるが、材料強度、ρC、材料入手の容易性等に鑑み、チタン、アルミニウム、及びこれらの軽金属を含有する合金等を使用することが多い。また、ρCが小さいと、振動子を小型化することができるという利点もある。更に、クロムめっきが施されたステンレス鋼等からなる前面部材1とすることもできる。
【0011】
また、前面部材1の形状も特に限定されないが、円柱、円錐台、円柱又は円板の一面側に円錐台又は径小の円柱が延設された形状等とすることができる。更に、前面部材1の超音波放射面11とは反対側の端面には、圧電セラミック体4の一端面が当接されるが、この当接面12(前面部材1の端面である。)は表面粗さが小さい面であることが好ましい。当接面12の表面粗さ(Ra)は12.5μm以下であることが好ましく、6.4μm以下(通常、0.01μm以上)であることがより好ましい。このように表面粗さが小さい当接面12であれば、圧電セラミック体4の振動の前面部材1への伝播損失を十分に低減させることができる。
【0012】
当接面12の表面粗さを測定する方法は特に限定されず、例えば、JIS B 0601(1994)に準拠して測定することができる。具体的には、原子間力顕微鏡(AFM、測定装置としてはセイコーインストルメンツ株式会社製、型式「SPA400」等を用いることができる。)により当接面12を観察し、得られたデータから算出する方法等が挙げられる。
【0013】
前面部材1の軸線方向の寸法は特に限定されないが、前面部材1の軸線方向の長さのうちの側面部材2との境界より超音波放射面側の寸法Mは、超音波振動子101(図2参照)、102(図3の絶縁材層5を有する超音波振動子である。)を伝播する超音波の1/4波長の自然数倍にほぼ等しい寸法であることが好ましい。このようにすれば、超音波放射面11の振幅を最大にすることができるため、媒体に振幅の大きい超音波を放射することができる。前面部材1の軸線方向の寸法を超音波の1/4波長の何倍とするかは特に限定されないが、この倍数が大きくなるとともに共振周波数が高くなり、不要振動モードも増加してくる。そのため、可能な限り低倍数とすることが好ましく、1倍、即ち、超音波の1/4波長にほぼ等しい寸法であることが多い。
【0014】
上記の超音波の1/4波長の自然数倍にほぼ等しい寸法とは、本発明の超音波振動子101、102の場合、振動ノード部が、前面部材1と側面部材2との取り付け部の範囲内に位置するという意味であり、通常、1/4波長の自然数倍の80〜120%の範囲の寸法である。このようにすれば、超音波放射面11の振幅を最大にすることができるとともに、他の部分に比べて強度が低い取り付け部に負荷される応力を低減させることができ、超音波振動子101、102の変形等を抑えることができる。
【0015】
前面部材1の圧電セラミック体4の一端面が当接される当接面12には、圧電セラミック体4の一端面側を嵌装するための嵌装用凹部121が設けられていることが好ましい(図4、8、10参照)。この嵌装用凹部121の径方向の寸法は、圧電セラミック体4の一端面側を嵌装用凹部121に容易に嵌め込むことができ、且つ圧電セラミック体4の一端面側が嵌装用凹部121内で径方向に大きくずれない寸法であることが好ましく、圧電セラミック体4の一端面側の外径と略同一であることが好ましい。これにより、側面部材2の内側面と圧電セラミック体4の外側面との接触を防止することができ、これらが接触することにより圧電セラミック体4の振動が阻害されることを防止することができる。更に、このような嵌装用凹部121を設けた場合は、後記のように絶縁材層を介装させることなく、側面部材2の内側面と圧電セラミック体4が有する導電層との接触による導通を十分に防止することもできる。
【0016】
上記「側面部材2」は、一端側が前面部材1の超音波放射面11とは反対側に取り付けられ、内部に圧電セラミック体4が収納されている。側面部材2は、通常、前面部材1の超音波放射面11とは反対側の外側面に螺設された螺旋と、側面部材2の一端側の内側面に螺設された螺旋とを螺合させることにより前面部材1に取り付けられている。また、側面部材2の内径と圧電セラミック体4の外径とは、側面部材2の内側面と圧電セラミック体4の外側面とが離間するような寸法となっており、側面部材2の内側面と圧電セラミック体4の外側面との接触が防止されるとともに、側面部材2の内側面と圧電セラミック体4が有する導電層との接触による導通が防止される。
【0017】
側面部材2の材質は特に限定されないが、他の物品等と接触しても欠損等し難い十分な強度を有することが好ましく、従って、側面部材2は金属製である。この金属の種類は特に限定されず、前面部材1と同様の各種の金属を用いることができ、チタン、アルミニウム、及びこれらの軽金属を含有する合金等が好ましい。更に、側面部材2の形状は円筒形であり、その内側面には、前面部材1の超音波放射面11とは反対側の外側面に螺設された螺旋、及び裏打部材3の一端側の外側面に螺設された螺旋と螺合される螺旋が設けられている。また、側面部材2の内径は圧電セラミック体4の外径より大きく、側面部材2の内側面と、圧電セラミック体4の外側面とは離間しているが、この離間距離(L)は印加電圧(V)に基づき以下の式により算出される値以上とする。
L(mm)=V(kV)/3
【0018】
更に、側面部材2の内側面と、圧電セラミック体4の外側面との間に、図3の超音波振動子102のように、絶縁材層5が介装されていることが好ましい。このように絶縁材層5を介装させることにより、圧電セラミック体4に設けられた導電層と側面部材2の内側面との間の電気的な絶縁性を向上させることができる。この絶縁材層5を介装させる方法は特に限定されず、例えば、圧電セラミック体4の外側面に絶縁材料からなる熱収縮チューブを嵌装させる方法、圧電セラミック体4の外側面にポリイミド等からなる絶縁性テープを捲回する方法等が挙げられる。また、絶縁材層5は、圧電セラミック体4の外側面及び側面部材2の内側面のうちの少なくとも一方に絶縁材料からなる皮膜を形成して設けることもできる。このような絶縁材層5を設けた場合は、前記のように、前面部材1の圧電セラミック体4の一端面が当接される当接面12に、圧電セラミック体4の一端面側を嵌装するための嵌装用凹部121を設けることなく、圧電セラミック体4が有する導電層と側面部材2の内側面との間を電気的に確実に絶縁することができる。
【0019】
上記「裏打部材3」は、一端側が側面部材2の他端側に取り付けられ、前面部材1に圧電セラミック体4を圧接させるための部材である。裏打部材3は、通常、側面部材2の他端側の内側面に螺設された螺旋と、裏打部材3の一端側の外側面に螺設された螺旋とを螺合させることにより側面部材2に取り付けられている。更に、裏打部材3には軸線方向に貫通する貫通孔31が設けられており、この貫通孔31に、圧電セラミック体4が有する導電体及び導電層からなる一方の電極と接続された電極リード線7が挿通される。また、裏打部材3の他端側の端面又は側面には、圧電セラミック体4に設けられた他方の電極と導通された電極端子6が付設されている(図2、3参照)。
【0020】
裏打部材3の材質は特に限定されないが、他の物品等と接触しても欠損等し難い十分な強度を有することが好ましく、従って、裏打部材3は金属製である。この金属の種類は特に限定されず、前面部材1と同様の各種の金属を用いることができ、チタン、アルミニウム、及びこれらの軽金属を含有する合金等が好ましい。更に、裏打部材3の形状も特に限定されないが、前面部材1と同様に、円柱、円錐台、円柱又は円板の一端面に円錐台又は径小の円柱が延設された形状等とすることができる。
【0021】
このように、上述した態様の超音波振動子101、102では、前面部材1及び裏打部材3とは別体で側面部材2を構成し、構成部品のさらなる分割化を図ったことで、部品単体の加工性を向上させることができ、これにより、例えば製品としての機能を高めるために部品単体の構造に、複雑な部品形状を適用することなどが可能となる。したがって、本実施形態の超音波振動子101、102によれば、超音波振動子本体を構成する各部品(前面部材1、側面部材2及び裏打部材3)の形状選択の自由度を高めることができる。
【0022】
また、超音波振動子では、圧電セラミック体4が有する電極が外部の電極端子に接続され、この電極端子を用いて圧電セラミック体4に給電される。電極は各種の方法により外部の電極端子に接続することができる。本発明の超音波振動子101、102では、圧電セラミック体4に設けられた電極のうちの一方の電極(圧電セラミック体4が有する導電層により構成される。)は、裏打部材3を導電経路として裏打部材3に取り付けられた電極端子6に接続され、他方の電極には、裏打部材3を貫通して設けられたリード線挿通孔31に装通された電極リード線7の一端部が接続され、且つ電極リード線7の他端部が裏打部材3の他端側から取り出され、この電極リード線7の他端部が電極端子(図示せず)に接続されている態様とすることができる。このように電極リード線が1本のみであれば、構造が簡易なものとなり、その結果、素子全体の構造も簡易なものとすることができる。
【0023】
上記「圧電セラミック体4」は、交流電圧を印加することにより、振動し、超音波を発生させる部材である。この圧電セラミック体4を構成する圧電セラミック成形体の形成に用いられる圧電セラミックは特に限定されず、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられる。また、圧電セラミック体4の形状は特に限定されず、円柱形、円板形、断面が正方形の角柱、断面が正方形の板状体等とすることができる。更に、圧電セラミック体4は、通常、複数の圧電セラミック板(圧電セラミック成形体と導電層等の電極とを備える。)が積層されてなる積層体が、前面部材1と裏打部材3との間に挟持され、圧接されて形成される。このように複数の圧電セラミック板を用いるのは、実用的に十分な出力を得ようとして高電圧を印加した場合に、過大な引張応力には耐えられない圧電セラミック体に亀裂が発生することを防止するためである。複数の圧電セラミック板が挟持され、圧接される場合、その枚数は特に限定されず、圧電セラミック成形体を構成する圧電セラミックの種類、並びに超音波振動子の用途及び所要出力等により設定することが好ましい。この枚数は2〜10枚とすることができ、2〜8枚、特に2〜6枚とすることが好ましい。
【0024】
圧電セラミック体4の構造は特に限定されないが、前記のように電極と外部の電極端子との接続を簡易な構造とするためには、圧電セラミック体4は、図4、5のように、以下のような構造であることが好ましい。
即ち、圧電セラミック体4は、第1圧電セラミック板と、第2圧電セラミック板とを備える。
上記の第1圧電セラミック板は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する第1圧電セラミック成形体41と、貫通孔に充填された導電体424と、一面側の貫通孔の周縁部(図5、6の導電層421が設けられていない部分45)を除く部分に設けられた第1一面側導電層421と、他面側の周縁部の一部(図5、6の導電層422が設けられていない部分46)を除く部分に設けられた第1他面側導電層422と、側面に設けられ、且つ第1一面側導電層421に導通し、第1他面側導電層422に導通しない第1側面側導電層423とを有する。
また、奇数枚の第1圧電セラミック板41が、各々の一面側同士又は他面側同士が交互に当接されて積層体とされ、この積層体の前面部材側となる面が第1圧電セラミック成形体41と第1他面側導電層422とにより構成されている。
更に、上記の第2圧電セラミック板43は、一面側に設けられた第2一面側導電層441と、他面側の周縁部の一部を除く部分(図5、7の導電層442が設けられていない部分46)に設けられた第2他面側導電層442と、側面に設けられ、且つ第1側面側導電層423及び第2一面側導電層441に導通し、第2他面側導電層442に導通しない第2側面側導電層443とを有する。
また、第2圧電セラミック板43は、積層体の前面部材側となる面と、前面部材1の当接面12との間に、第2一面側導電層441と当接面12とが当接すようにして介装されている。
このような圧電セラミック体4であれば、前記のように、電極リード線7が1本のみの簡易な構造を有する超音波振動子101(図2参照)、102(図3参照)とすることができる。
【0025】
電極リード線7が1本のみの簡易な構造とすることができる圧電セラミック体4の他の態様としては、図8、9のように、第1圧電セラミック板を備える、以下の構造を有するものが挙げられる。
即ち、上記の第1圧電セラミック板は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する第1圧電セラミック成形体41と、貫通孔に充填された導電体424と、一面側の貫通孔の周縁部(図9の導電層421が設けられていない部分45)を除く部分に設けられた第1一面側導電層421と、他面側の周縁部の一部(図9の導電層422が設けられていない部分46)を除く部分に設けられた第1他面側導電層422と、側面に設けられ、且つ第1一面側導電層421に導通し、第1他面側導電層422に導通しない第1側面側導電層423とを有する。
また、偶数枚の第1圧電セラミック板が、各々の一面側同士又は他面側同士が交互に当接されて積層体とされ、この積層体の一面及び他面がともに第1圧電セラミック成形体41と第1一面側導電層421とにより構成されている。
更に、前面部材1の当接面12のうちの導電体424の端面と対向する位置に、この端面より径大の絶縁用凹部122が設けられている(図8参照)。
このような圧電セラミック体4であれば、前記のように、電極リード線7が1本のみの簡易な構造を有する超音波振動子とすることができる。
【0026】
簡易な電極導出構造とすることができる圧電セラミック体4の更に他の態様としては、図10、11のように、第1圧電セラミック板を備える、以下の構造を有するものが挙げられる。
即ち、上記の第1圧電セラミック板は、厚さ方向に貫通する貫通孔を有する第1圧電セラミック成形体41と、貫通孔に充填された導電体424と、一面側の貫通孔の周縁部(図11の導電層421が設けられていない部分45)を除く部分に設けられた第1一面側導電層421と、他面側の周縁部の一部(図11の導電層422が設けられていない部分46)を除く部分に設けられた第1他面側導電層422と、側面に設けられ、且つ第1一面側導電層421に導通し、第1他面側導電層422に導通しない第1側面側導電層423とを有する。
また、偶数枚の第1圧電セラミック板が、各々の一面側同士又は他面側同士が交互に当接されて積層体とされ、この積層体の一面及び他面がともに第1圧電セラミック成形体41と第1一面側導電層421とにより構成されている。
更に、積層体と、前面部材1の当接面12との間に、未分極セラミック板8が介装されている。
このような圧電セラミック体4であれば、前記のように、電極リード線7が1本のみの簡易な構造を有する超音波振動子とすることができる。
【0027】
また、本発明のさらに他の実施態様としては、図12及び図13に示す超音波振動子103を例示することができる。
すなわち、この超音波振動子103では、図12に示すように、前面部材1aの構成材料は、裏打部材3aの構成材料よりも、振動の内部損失(振動の伝播ロス)の小さい材料が適用されている。具体的には、前面部材1aは、当該前面部材(媒質)1a中を伝わる音速cが、6260m/sec程度になる例えばアルミニウム材料(例えばA5052Pなどのアルミニウム合金)で構成されている。一方、裏打部材3aは、当該裏打部材(媒質)3a中を伝わる音速cが、5790m/sec程度になる例えばSUS304などのステンレス鋼で形成されている。
【0028】
したがって、超音波振動子103では、上記のように前面部材1aが裏打部材3aよりも振動の伝播ロスの少ない材料(例えば上記音速cの速い材料)で構成されていることで、図12に示すように、圧電セラミック体4の発生させる振動を、前面部材1a先端の超音波放射面11側に効率良く伝播することができる。これにより、超音波振動子103によれば、裏打部材3aの後端側に生じる振動エネルギV2よりも実質的に大きな振動エネルギV1を所望の超音波放射面11側に発生させることができる。
【0029】
また、超音波振動子103では、裏打部材3aの構成材料である上記ステンレス鋼よりも、密度(比重)が小さい材料である上記のアルミニウム材料を前面部材1aの構成材料として積極的に適用している。具体的には、前面部材1aを構成するアルミニウム材料の密度ρは、約2.7g/cm3であり、一方、裏打部材3aを構成するステンレス鋼(SUS304など)の密度ρは、7.93g/cm3程度である。したがって、超音波振動子103によれば、容易に、裏打部材3aよりも前面部材1aを軽量にすることが可能なので、この構造の場合、図12に示すように、圧電セラミック体4の発生させる振動を基に、裏打部材3a側よりも、前面部材1a側をより大きく変位させることができ、超音波放射面11で、振幅の大きな安定した振動を得ることができる。
【0030】
さらに、超音波振動子103では、図13に示すように、側面部材2aの熱膨張係数は、前面部材1a及び裏打部材3aの各熱膨張係数よりも、圧電セラミック体4の熱膨張係数に近い値を有する。詳細には、これらの熱膨張係数は、超音波振動子103の軸方向における線膨張係数を特定するものである。つまり、前面部材1aを構成する上記アルミニウム材料の熱膨張係数は約23×10-6/℃であり、裏打部材3aを構成するステンレス鋼(SUS304など)の熱膨張係数は、17×10-6/℃程度である。また、圧電セラミック体4の主要部分を構成する上記圧電セラミック成形体(圧電セラミック板41、43の導体層部分を除いた圧電素子本体)は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)で構成されており、その熱膨張係数は、約5.2×10-6(5.2ppm)/℃(室温〜200℃)である。
【0031】
さらに、側面部材2aは、チタン(チタン合金など)で構成されており、その熱膨張係数は、8.4×10-6/℃程度である。ここで、図13に示すように、側面部材2aは、前面部材1a及び裏打部材3aの各々にねじ止めされたかたちで圧電セラミック体4を挟持し、当該圧電セラミック体4に静圧を付与している。つまり、超音波振動子103では、前面部材1aや裏打部材3aを構成する材料の熱膨張係数と比べて、圧電セラミック体4の熱膨張係数に近似する値の熱膨張係数を持つ材料で側面部材2aを構成したことで、図13に示すように、使用環境の温度変化により、矢印X1−X2方向に伸縮する側面部材2aの伸縮量と、矢印X3−X4方向に伸縮する圧電セラミック体4の伸縮量と、の差を極力小さい量に抑えることができる。
【0032】
したがって、超音波振動子103によれば、温度変化による上記静圧の変動を抑えることができ、これにより、温度変化に起因する振動発生のばらつきの抑制、すなわち、当該超音波振動子103本体の温度特性を向上させることができる。
【0033】
既述したように、超音波振動子103は、この超音波振動子本体の側面部分を、前述したように前面部材1a及び裏打部材3aとは別体の側面部材2aにより構成したことで、製品として要求される所望の機能的要素を、より細かく分けて部材ごとに割り当てることができる。これにより、各部材(前面部材1a、側面部材2a及び裏打部材3a)にとってより適した構成材料を選択することが可能となり、選択した材料の特性を生かしたかたちで個々の部材を構成することができる。
【0034】
なお、既述した構造の超音波振動子103では、主に、図2に示した超音波振動子101の前面部材1、側面部材2及び裏打部材3に代えて、前面部材1a、側面部材2a及び裏打部材3aを適用した態様を図12、図13を用いて図示しているが、無論、図3、図8、図10に示した超音波振動子が備える前面部材1、側面部材2及び裏打部材3を、上記した前面部材1a、側面部材2a及び裏打部材3aに代えた態様の超音波振動子を構成することもできる。
【0035】
本発明の超音波振動子の製造方法は特に限定されない。
超音波振動子は、例えば、前面部材1(又は1a)の当接面12に圧電セラミック体4の一端面を当接させ(図4等参照)、又は前面部材1(又は1a)の当接面12に未分極セラミック板8の一面を当接させ(図10参照)、その後、側面部材2(又は2a)の一端側の内側面に螺設された螺旋と、前面部材1(又は1a)の超音波放射面11とは反対側の外側面に螺設された螺旋とを螺合させ、次いで、一端側が導電体424の端面に接続された電極リード線7を、裏打部材3(又は3a)に設けられたリード線挿通孔31に挿通させて電極リード線7の他端部を裏打部材3(又は3a)の他端側から取り出し(図2参照)、その後、側面部材2(又は2a)の他端側の内側面に螺設された螺旋と、裏打部材3(又は3a)の一端側の外側面に設けられた螺旋とを螺合させ、次いで、裏打部材3(又は3a)の他端側の端面に電極端子6を取り付ける(図2参照)ことにより製造することができる。
【0036】
本発明の超音波機器は、本発明の超音波振動子を備える。この超音波機器は特に限定されず、例えば、歯石除去、超音波カッター、超音波溶着等の医療関連の用途に用いられる超音波機器として有用である。
【実施例】
【0037】
実施例1
以下のようにして、図2及び4〜6のような超音波振動子101を製造した。
[1]前面部材、側面部材及び裏打部材の作製
(1)前面部材
径4mm、厚さ1mmの円板部と、円板部の一面側に同心円状に延設された延設部(円板部の一面側に同心円状に延設された曲面部と、この曲面部に同心円状に延設された円柱部とからなり、円柱部の径が2mm、曲面部と円柱部との合計長さが10mmであり、円柱部の端面が超音波放射面11となる。)と、円板部の他面側に同心円状に延設され、径3.5mm、長さ3.0mmであり、外側面のうちの端面から2.5mmの位置まで螺旋が螺設され、端面の圧電セラミック体が当接する当接面に径2.8mm、深さ0.5mmの嵌装用凹部121が設けられた延設部とを有するチタン合金製の前面部材1を作製した。
(2)側面部材
外径4mm、内径2.62mm、長さ10mmであり、内側面の全面に螺旋が螺設された円筒形のチタン合金製の側面部材2を作製した。
(3)裏打部材
径4mm、長さ9.5mmであり、外側面のうちの端面から0.5〜5.0mmの位置に螺旋が螺設された円柱形の径小の円柱部と、径小の円柱部に同心円状に延設され、径4mm、長さ3.5mmの径大の円柱部とを有し、径小の円柱部及び径大の円柱部のそれぞれの径方向の中心部に、径0.8mmのリード線挿通孔31が軸線方向に貫通して設けられたチタン合金製の裏打部材3を作製した。また、裏打部材3の他端面に電極端子6を取り付けた。
尚、前面部材1の軸線方向の長さのうちの側面部材2との境界より超音波放射面側の寸法は、共振周波数100kHzに基づき、SONIC社製、型式「R220」により測定した音速値及び文献での音速値をもとに、下式より算出される波長λの1/4となる11mmとした。
λ=V/f
λ;波長、V;音速、f;共振周波数
また、超音波振動子の全長は25.0mmである。
【0038】
[2]圧電セラミック体の作製
(1)未焼成第1セラミック板
圧電セラミックとしてチタン酸ジルコン酸鉛を用いて、径2.5mm、厚さ0.5mmであり、径方向の中心部に径0.07mmの貫通孔が設けられた焼成により第1セラミック成形体となる未焼成第1セラミック成形体を作製し、未焼成第1セラミック成形体の一面側の径方向の中心部の径0.65mmの部分を除く他の全面、及び他面側の周縁部の一部を除く全面に、銀及びパラジウムを含有する導電ペーストを塗布し、焼成により第1一面側導電層となる未焼成第1一面側導電塗膜、及び焼成により第1他面側導電層となる未焼成第1他面側導電塗膜を形成した。
尚、未焼成第1他面側導電塗膜を形成するときに、導電ペーストが貫通孔に流入し、焼成により導電体となる未焼成導電体が形成された。
(2)未焼成第2セラミック板
上記の圧電セラミックを用いて、径2.5mm、厚さ0.5mmの焼成により第2セラミック成形体となる未焼成第2セラミック成形体を作製し、未焼成第2セラミック成形体の一面側の全面、及び他面側の周縁部の一部を除く全面に、上記の導電ペーストを塗布し、焼成により第2一面側導電層となる未焼成第2一面側導電塗膜、及び焼成により第2他面側導電層となる未焼成第2他面側導電塗膜を形成した。
(3)積層体
上記(1)で作製した未焼成第1セラミック板3枚を、1枚目の未焼成第1一面側導電塗膜と、2枚目の未焼成第1一面側導電塗膜とが当接し、2枚目の未焼成第1他面側導電塗膜と、3枚目の未焼成第1一面側導電塗膜とが当接するようにして積層体とし、その後、この積層体の3枚目の未焼成第1セラミック板の未焼成第1他面側導電塗膜と、上記(2)で作製した未焼成第2セラミック板の未焼成第2他面側導電塗膜とが当接するように未焼成第2セラミック板を積層させた。
(4)未焼成第1側面側導電塗膜及び未焼成第2側面側導電塗膜
上記(3)で作成した積層体の側面に、上記の導電ペーストを、上記の各々の未焼成第1一面側導電塗膜及び上記の未焼成第2一面側導電塗膜と接触し、上記のそれぞれの未焼成第1他面側導電塗膜及び上記の未焼成第2他面側導電塗膜と接触せず、且つ互いに接触するように未焼成第1側面側導電塗膜及び未焼成第2側面側導電塗膜を形成した。
(5)焼成
上記(4)で作製した積層体、未焼成第2セラミック板並びに未焼成第1側面側導電塗膜及び未焼成第2側面側導電塗膜を、大気雰囲気下、900℃で2時間保持して、各々の未焼成セラミック成形体と、未焼成導電層及び未焼成導電体とを同時焼成し、圧電セラミック体4を作製した。また、圧電セラミック体4の第1圧電セラミック板の一面側における導電体424の端部に、絶縁被覆が施された電極リード線7の一端部を接合した。
尚、焼成後の圧電セラミック体4の径は2.5mm、長さは2mmであった。
【0039】
[3]超音波振動子の製造
上記[1]、(1)で作製した前面部材1の当接面12[表面粗さ(Ra)は3.2μmである。]に、上記[2]、(5)で作製した圧電セラミック体4の一端面を当接させ、その後、側面部材2の一端側の内側面に螺設された螺旋と、前面部材1の超音波放射面11とは反対側の外側面に螺設された螺旋とを螺合させ、次いで、電極リード線7を裏打部材3に設けられたリード線挿通孔31に挿通させ、その他端部を裏打部材3の他端側から取り出し、その後、側面部材2の他端側の内側面に螺設された螺旋と、裏打部材3の一端側の外側面に螺設された螺旋とを螺合させ、圧電セラミック体3を圧接させて超音波振動子101を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の超音波振動子は、特に小型の超音波機器に組み込まれて用いられる用途において有用な構造を有し、前記のように医療関連の各種の超音波機器に組み込んで用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】前面部材、側面部材及び裏打部材の分解斜視図である。
【図2】本発明の超音波振動子の模式的な断面図である。
【図3】圧電セラミック体の外周面に絶縁材層が設けられた他の態様の超音波振動子の断面図である。
【図4】図2の超音波振動子の圧電セラミック体及びその周辺を拡大して説明するための拡大断面図である。
【図5】図4の超音波振動子の圧電セラミック体を分解し、各々の圧電セラミック板の構造の詳細を説明するための斜視図である。
【図6】図5の圧電セラミック体を構成する第1圧電セラミック板の詳細を説明するための断面図である。
【図7】図5の圧電セラミック体を構成する第2圧電セラミック板の詳細を説明するための断面図である。
【図8】図2の超音波振動子とは構造の異なる他の態様の超音波振動子の圧電セラミック体及びその周辺を拡大して説明するための拡大断面図である。
【図9】図8の超音波振動子の圧電セラミック体を分解し、各々の圧電セラミック板の構造の詳細を説明するための斜視図である。
【図10】図2の超音波振動子とは構造の異なる更に他の態様の超音波振動子の圧電セラミック体及びその周辺を拡大して説明するための拡大断面図である。
【図11】図10の超音波振動子の圧電セラミック体を分解し、各々の圧電セラミック板及び未分極セラミック板の構造の詳細を説明するための斜視図である。
【図12】図2、図8、図10の超音波振動子と構造が異なる他の態様の超音波振動子を模式的に示す断面図である。
【図13】図12の超音波振動子の温度特性を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0042】
101,102,103;超音波振動子、1,1a;前面部材、11;超音波放射面、12;当接面、121;嵌装用凹部、122;絶縁用凹部、2,2a;側面部材、3,3a;裏打部材、31;リード線挿通孔、4;圧電セラミック体、41;第1圧電セラミック板、421;第1一面側導電層、422;第1他面側導電層、423;第1側面側導電層、424;導電体、43;第2圧電セラミック板、441;第2一面側導電層、442;第2他面側導電層、443;第2側面側導電層、45,46;導電層が設けられていない部分、5;絶縁材層、6;電極端子、7;電極リード線、8;未分極セラミック板。
【出願人】 【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
【出願日】 平成20年3月24日(2008.3.24)
【代理人】 【識別番号】100077849
【弁理士】
【氏名又は名称】須山 佐一


【公開番号】 特開2008−264773(P2008−264773A)
【公開日】 平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願番号】 特願2008−75896(P2008−75896)