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【発明の名称】 振動方法、拡散接合方法およびそれらの装置
【発明者】 【氏名】岩崎 光政

【氏名】櫻中 雅文

【要約】 【課題】振動の精度、強度および安定性を向上できる拡散接合装置を提供する。

【解決手段】電磁コイル41に交流電流を供給する。一方の磁気回路Eの電磁コイル41と永久磁石52との間に反発作用が生じ、他方の磁気回路Fの電磁コイル41と永久磁石52との間に吸着作用が生じる。磁気回路E,Fの電磁コイル41と永久磁石52との間の反発作用と吸着作用とが交互に変化する。電磁コイル41への交流電流の供給にて生じる電磁波に共振スプリング47が共振する。磁気回路E,Fの交互に変化する反発作用および吸着作用と共振スプリング47の共振作用とにより、一方の接合用ワークAが水平に微小振動する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁コイルと永久磁石との間に反発作用および吸着作用を交互に生じさせて被振動体を振動させるとともに、
前記電磁コイルから生じる電磁波に共振体を共振させて前記被振動体を振動させる
ことを特徴とした振動方法。
【請求項2】
永久磁石として、ネオジム磁石を用いる
ことを特徴とした請求項1記載の振動方法。
【請求項3】
一対の被接合物の互いに接合する接合部を対向させて圧接し、
電磁コイルとネオジム磁石との間に反発作用および吸着作用を交互に生じさせて、前記一対の被接合物の少なくとも一方を前記圧接方向と異なる方向に振動させるとともに、前記電磁コイルから生じる電磁波に共振体を共振させて前記一対の被接合物の少なくとも一方を前記加圧の方向と異なる方向に振動させて、
前記一対の被接合物の接合部を互いに接合する
ことを特徴とした拡散接合方法。
【請求項4】
被振動体を振動させる振動装置であって、
前記被振動体の振動方向の両側部にそれぞれ取り付けた一対の永久磁石と、
前記被振動体の振動方向に沿って前記一対の永久磁石にそれぞれ対向させて設けた一対の電磁コイルと、
前記被振動体に取り付け前記一対の電磁コイルから生じる電磁波に共振可能な共振体と
を具備したことを特徴とした振動装置。
【請求項5】
永久磁石は、ネオジム磁石である
ことを特徴とした請求項4記載の振動装置。
【請求項6】
一対の被接合物の互いに接合する接合部を対向させて圧接し、これら一対の被接合物の少なくとも一方を前記加圧の方向と異なる方向に振動させて、前記一対の被接合物の接合部を互いに接合する拡散接合装置であって、
前記一対の被接合物の一方を保持する第1の治具と、
この第1の治具に対向して設けられ、前記一対の被接合物の他方の接合部を前記一対の被接合物の一方の接合部に対向させた状態で前記一対の被接合物の他方を保持する第2の治具と、
前記第1の治具と第2の治具とが対向する方向と異なる方向に前記第2の治具を振動させる振動装置とを具備し、
この振動装置は、前記第2の治具にこの第2の治具の振動方向の両側部にそれぞれ取り付けた一対のネオジム磁石と、前記第2の治具の両側部に前記一対のネオジム磁石に対向して設けた一対の電磁コイルと、前記第2の治具に取り付けられ前記一対の電磁コイルから生じる電磁波に共振可能な共振体とを備えている
ことを特徴とした拡散接合装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁コイルを備えた振動方法、拡散接合方法およびそれらの装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の拡散接合装置としては、電磁コイルを用いた電磁式、油圧を用いた油圧式、または電動モータで偏芯した軸を回転させるアンバランス式などがある。特に、電磁式の拡散接合装置は、電磁コイルに交流電流を供給して、この電磁コイルへの交流電流の供給により生じる電磁波に共振スプリングを共振させて被接合物を振動させて拡散接合する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−116220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記電磁式の拡散接合装置では、振動させる被接合物の振動力、振幅および周波数のそれぞれを大きくするために、電磁コイルのコアに巻く線材の巻き量を多くしたり、例えば昇圧トランスなどで電磁コイルに高電圧を印加したりして、この電磁コイルを大きくしなければならない。
【0004】
特に、電磁コイルを大きくせずに高電圧を印加した場合には、被接合物の振動および振幅が低下してしまう。このため、この被接合物を振動させる際の精度、強度および安定性にばらつきが生じてしまい、これら被接合物の接合の精度、強度および安定性にばらつきが生じてしまうおそれがあるという問題を有している。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、振動の精度、強度および安定性を向上できる振動方法、拡散接合方法およびそれらの装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の振動方法は、電磁コイルと永久磁石との間に反発作用および吸着作用を交互に生じさせて被振動体を振動させるとともに、前記電磁コイルから生じる電磁波に共振体を共振させて前記被振動体を振動させるものである。
【0007】
請求項2記載の振動方法は、請求項1記載の振動方法において、永久磁石として、ネオジム磁石を用いるものである。
【0008】
請求項3記載の拡散接合方法は、一対の被接合物の互いに接合する接合部を対向させて圧接し、電磁コイルとネオジム磁石との間に反発作用および吸着作用を交互に生じさせて、前記一対の被接合物の少なくとも一方を前記圧接方向と異なる方向に振動させるとともに、前記電磁コイルから生じる電磁波に共振体を共振させて前記一対の被接合物の少なくとも一方を前記加圧の方向と異なる方向に振動させて、前記一対の被接合物の接合部を互いに接合するものである。
【0009】
請求項4記載の振動装置は、被振動体を振動させる振動装置であって、前記被振動体の振動方向の両側部にそれぞれ取り付けた一対の永久磁石と、前記被振動体の振動方向に沿って前記一対の永久磁石にそれぞれ対向させて設けた一対の電磁コイルと、前記被振動体に取り付け前記一対の電磁コイルから生じる電磁波に共振可能な共振体とを具備したものである。
【0010】
請求項5記載の振動装置は、請求項4記載の振動装置において、永久磁石は、ネオジム磁石であるものである。
【0011】
請求項6記載の拡散接合装置は、一対の被接合物の互いに接合する接合部を対向させて圧接し、これら一対の被接合物の少なくとも一方を前記加圧の方向と異なる方向に振動させて、前記一対の被接合物の接合部を互いに接合する拡散接合装置であって、前記一対の被接合物の一方を保持する第1の治具と、この第1の治具に対向して設けられ、前記一対の被接合物の他方の接合部を前記一対の被接合物の一方の接合部に対向させた状態で前記一対の被接合物の他方を保持する第2の治具と、前記第1の治具と第2の治具とが対向する方向と異なる方向に前記第2の治具を振動させる振動装置とを具備し、この振動装置は、前記第2の治具にこの第2の治具の振動方向の両側部にそれぞれ取り付けた一対のネオジム磁石と、前記第2の治具の両側部に前記一対のネオジム磁石に対向して設けた一対の電磁コイルと、前記第2の治具に取り付けられ前記一対の電磁コイルから生じる電磁波に共振可能な共振体とを備えているものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の振動方法によれば、電磁コイルと永久磁石との間に反発作用および吸着作用を交互に生じさせて被振動体を振動させるとともに、電磁コイルから生じる電磁波に共振体を共振させて被振動体を振動させるので、電磁コイルを大きくしたり、この電磁コイルに供給する電圧を高くしたりすることなく、被振動体の振動の強度を精度良く向上でき、この振動の精度、強度および安定性を向上できる。
【0013】
請求項2記載の振動方法によれば、請求項1記載の振動方法の効果に加え、永久磁石としてネオジム磁石を用いることにより、この永久磁石と電磁コイルとの間の反発作用および吸着作用を簡単な構成でより確実に強力にでき、被振動体の振動を精度良くより強力にできる。
【0014】
請求項3記載の拡散接合方法によれば、電磁コイルとネオジム磁石との間に反発作用および吸着作用を交互に生じさせて一対の被接合物の少なくとも一方を振動させるとともに、電磁コイルから生じる電磁波に共振体を共振させて一対の被接合物の少なくとも一方を振動させるので、電磁コイルを大きくしたり、この電磁コイルに供給する電圧を高くしたりすることなく、一対の被接合物の少なくとも一方の振動の強度を精度良く向上でき、この振動の精度、強度および安定性を向上でき、これら一対の被接合物の接合部の接合の精度、強度および安定性を向上できる。
【0015】
請求項4記載の振動装置によれば、一対の電磁コイルと一対の永久磁石との間の反発作用および吸着作用を交互に生じさせて被振動体を振動させるとともに、一対の電磁コイルから生じる電磁波に共振体を共振させて被振動体を振動させるので、電磁コイルを大きくしたり、この電磁コイルに供給する電圧を高くしたりすることなく、被振動体の振動の強度を精度良く向上でき、この振動の精度、強度および安定性を向上できる。
【0016】
請求項5記載の振動装置によれば、請求項4記載の振動装置の効果に加え、永久磁石がネオジム磁石であるので、この永久磁石と電磁コイルとの間の反発作用および吸着作用を簡単な構成でより確実に強力にでき、被振動体の振動を精度良くより強力にできる。
【0017】
請求項6記載の拡散接合装置によれば、振動装置の電磁コイルとネオジム磁石との間の反発作用および吸着作用と、電磁コイルから生じる電磁波による共振体の共振とのそれぞれで第2の治具を振動させるので、電磁コイルを大きくしたり、この電磁コイルに供給する電圧を高くしたりすることなく、第2の治具の振動の強度を精度良く向上でき、この振動の精度、強度および安定性を向上できるから、一対の被接合物の接合部の接合の精度、強度および安定性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の拡散接合装置の実施の一形態を図1ないし図8を参照して説明する。
【0019】
図1ないし図7において、1は振動溶着装置としての拡散接合装置で、この拡散接合装置1は超振動を用いた電磁式の溶着装置である。そして、この拡散接合装置1は、例えば熱可塑性を有するプラスチック製の一対の被接合物としての接合用ワークA,Bのそれぞれに形成され対応した形状の平坦な溶着部としての当接面である接合部A1,B1を互いに拡散接合する装置である。さらに、この拡散接合装置1は、一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1を互いに加圧しながら当接して圧接し、これら一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1の圧接方向とは異なる方向、すなわちこれら接合部A1,B1に沿った方向に一方の接合用ワークAを振動させて、これら一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1を互いに振動溶着させる。
【0020】
具体的に、この拡散接合装置1は、一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1を互いに水平な状態で圧接させてから、この状態で一方の接合用ワークAを水平に微小に振動させて、これら一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1間に摩擦熱を生じさせて、これら接合部A1,B1同士を拡散接合、すなわち振動溶着させる。
【0021】
さらに、この拡散接合装置1は、機枠としての略矩形枠状のフレーム2を備えており、このフレーム2は、防音パネル3で覆われている。また、フレーム2の正面側の両側部に位置して取り付けられた一対のガイドフレーム4は、背面側に向けて上方から下方に傾斜して取り付けられている。また、これら一対のガイドフレーム4の間には、これらガイドフレーム4に沿って上下方向に移動可能な矩形平板状の防音シャッタ5が取り付けられている。この防音シャッタ5は、一対のガイドフレーム4間を閉塞できる大きさに形成されており、これら一対のガイドフレーム4間を開閉可能に閉塞して作動時のフレーム2内からの音漏れなどを防止する。
【0022】
また、このフレーム2内の底部の中央部には、上下方向に向ってアーム6を進退させる油圧シリンダ7が取り付けられている。さらに、このフレーム2内の底部には、油圧シリンダ7のアーム6を進退駆動させる油圧ユニット8が設置されている。また、一対のガイドフレーム4の内側には、上下方向に支軸としての細長円柱状の一対のガイドシャフト11,12が、油圧シリンダ7のアーム6を中心とした線対称な位置に取り付けられている。
【0023】
さらに、この油圧シリンダ7のアーム6の上端部には、リフトテーブル13の下面中央部が取り付けられている。このリフトテーブル13の上面は、水平な平坦面状の下側の治具設置面14に形成されている。そして、このリフトテーブル13の下側の治具設置面14上の中央部には、第1の治具としての下治具(lower tooling)15がボルト止めされて取り付けられている。そして、この下治具15の上面には、一対の接合用ワークA,Bのうちの他方の接合用ワークBの外側面B2に対応した形状の下側取付面16が形成されている。すなわち、この下治具15の下側取付面16は、他方の接合用ワークBの外側面B2側が挿入されて保持されるように形成されている。
【0024】
また、リフトテーブル13の幅方向の両側支持部には、ガイドシャフト11,12が摺動可能にそれぞれ挿通される挿通孔21が上下方向に沿ってそれぞれ形成されている。さらに、これら挿通孔21には、前記ガイドシャフト11,12を円滑に進退移動させる略円筒状のガイドブッシュ22がそれぞれ取り付けられている。
【0025】
一方、フレーム2の一対のガイドフレーム4の上側には、このフレーム2の正面側から背面側に向けて一対の上部フレーム23,24が取り付けられている。そして、これら上部フレーム23,24の上面と下面とに制振ゴム25が当接され、上側の制振ゴム25に振動溶着ユニットとしての拡散接合ユニット31が載置されてボルトにて固定されている。
【0026】
この拡散接合ユニット31は、一方の接合用ワークAを振動させる振動装置である。さらに、この拡散接合ユニット31は、上面視矩形枠状のユニットフレーム32を備えており、このユニットフレーム32は、このユニットフレーム32の長手方向の両端部に一対のヘッドフレーム33が取り付けられている。さらに、このユニットフレーム32の幅方向の両側部には、一対のサイドフレーム34が一対のヘッドフレーム33の間に取り付けられている。
【0027】
また、ユニットフレーム32のうち一対のヘッドフレーム33の長手方向に沿って互いに対向する内側には、所定の間隔を介して保持フレームとしてのコイル用ヨーク35がそれぞれ取り付けられている。これらコイル用ヨーク35は、導電性を有する細長矩形平板状の板状体36を上下方向に重ね合わせて形成されている。さらに、これらコイル用ヨーク35の互いに向かい合った内側面には、電磁バイブレータとして機能する一対の電磁コイル41,42が所定の間隔を介して相対して取り付けられている。これら電磁コイル41,42は、細長円柱状のコア43をそれぞれ備えており、これらコア43に導電性を有する導線44を周方向に向けて単巻状に巻回して構成している。
【0028】
また、これら電磁コイル41,42は、これら各電磁コイル41,42のコア43の長手方向の一端の基端部が、前記コイル用ヨーク35の内側面にボルト止めにて取り付けられて固着されている。さらに、これら電磁コイル41,42は、各コイル用ヨーク35の長手方向の中心位置から、この長手方向の両端側に向けて等しい間隔を離間させた位置に取り付けられている。そして、各コイル用ヨーク35に取り付けられている一対の電磁コイル41,42は、一方の電磁コイル41の導線44の巻き付け方向Cと、他方の電磁コイル42の導線44の巻き付け方向Dとが逆方向となるように取り付けられている。すなわち、これら各コイル用ヨーク35に取り付けられている一対の電磁コイル41,42は、一方の電磁コイル41の先端部に電磁的にN極またはS極を形成させた場合に、他方の電磁コイル42の先端部に電磁的にS極またはN極が形成されるように構成されている。
【0029】
さらに、ユニットフレーム32のサイドフレーム34の上側には、このサイドフレーム34の長手方向に沿って細長矩形平板上の取付フレーム46がそれぞれ取り付けられている。そして、これら取付フレーム46それぞれの下面には、これら取付フレーム46の長手方向に沿って共振体としてのリーフスプリングである共振スプリング47がそれぞれボルトナットにて取り付けられている。これら共振スプリング47は、各取付フレーム46の長手方向に沿った長手方向を有する側面視矩形状に形成されており、これら共振スプリング47の幅方向の一側部である上側面が取付フレーム46の下面に長手方向に向けて等間隔に離間した位置のそれぞれがボルト止めにて固定されている。
【0030】
ここで、これら共振スプリング47は、図1、図4および図7に示すように、これら共振スプリング47の上下方向の複数の細長孔48が、これら共振スプリング47の長手方向に等間隔に並列に設けられ、上下方向に挫屈しにくい形状であるハニカム構造に形成されている。そして、これら細長孔48は、長手方向の中間部の幅が最も大きい。また、これら共振スプリング47の各細長孔48の間には、これら共振スプリング47の上端部と下端部とを連結させる細長棒状で上下方向に沿った長手方向の中間部が最も幅が小さい連結部49が形成されている。
【0031】
具体的に、これら共振スプリング47は、拡散接合ユニット31の各電磁コイル41,42へ商用交流電流を流して、これら各電磁コイル41,42を駆動させることにより、これら各電磁コイル41,42の駆動に応じて、これら各電磁コイル41,42から生じる電磁波に共振して長手方向に振動するように構成されている。そして、これら共振スプリング47は、これら共振スプリング47が電磁コイル41,42の駆動に共振している際に、これら共振スプリング47の下端側が、これら共振スプリング47の長手方向、すなわち水平方向に超振動するように構成されている。また、これら共振スプリング47は、これら共振スプリング47が有する図1において水平方向の弾性力、すなわち復元力によって、これら共振スプリング47の共振が停止した際に、これら共振スプリング47の長手方向の中心位置が拡散接合ユニット31の長手方向の中心位置となるように位置合わせ、すなわちセンタリングされるように構成されている。
【0032】
さらに、これら両共振スプリング47の下端部には、これら共振スプリング47間を橋渡すように配設された矩形平板状の上治具取付プレートとしてのプラテン51の長手方向の両端縁部にボルトナットにて取り付けられて固定されている。そして、このプラテン51は、電磁コイル41,42から生じる電磁波に伴う共振スプリング47の共振によって、これら共振スプリング47の長手方向に沿って水平に微小な振幅で振動するように、これら共振スプリング47間に取り付けられている。
【0033】
また、このプラテン51の長手方向の両端縁には、磁性体としての一対の永久磁石52,53がそれぞれ取り付けられている。これら永久磁石52,53は、例えば希土類磁石であるネオジウム鉄ボロン系磁石(Nd−Fe−B系磁石:ネオジム磁石)であって、例えば1.4テスラ(T)程度の強力な磁束密度を有するネオジム磁石(商品名:ネオマックス(登録商標),株式会社ネオマックス製)などが用いられる。具体的に、これらネオジウム鉄ボロン系磁石は、フェライト磁石の10倍以上、アルニコ磁石の6倍以上の磁力を有している。なお、これら永久磁石52,53としては、比較的強力な磁束密度を有する希土類磁石であるサマリュウム・コバルト磁石(Sm・Co系磁石)を用いることもできる。
【0034】
そして、各永久磁石52,53は、それぞれ円柱状に形成されており、これら永久磁石52,53の軸方向の一端面が、前記各電磁コイル41,42のコア43の先端面に対して軸方向が一致するように同心状に対向させた状態で、プラテン51の長手方向の両端縁に沿って設けた保持部材54上に取り付けられ、これら保持部材54によってプラテン51の長手方向の両端縁の幅方向の中心部から等しい間隔を離間した位置に位置決め固定される。
【0035】
さらに、プラテン51の長手方向の一端縁および他端縁に取り付けられている一対の永久磁石52,53の軸方向の他端面である内面には、これら一対の永久磁石52,53の内面間を橋渡連結するように、導電性を有する磁石用ヨーク55が取り付けられて磁気的に連結され、これら一対の永久磁石52,53は、これら一対の永久磁石52,53の磁極が異なるように構成され、一方の永久磁石52の磁極がN極またはS極の場合に、他方の永久磁石53の磁極がS極またはN極となる。
【0036】
そして、これら磁石用ヨーク55にて磁気的に接続された一対の永久磁石52,53は、図1、図2、図4および図7に示すように、これら一対の永久磁石52,53とそれぞれが対向して取り付けられている一対の電磁コイル41,42がコイル用ヨーク35にて電磁的に接続されていることから、これら一対の永久磁石52,53、磁石用ヨーク55、一対の電磁コイル41,42およびコイル用ヨーク35によって、閉鎖的に直列接続されたクローズドループの磁気回路E,Fが形成される。
【0037】
そして、これら各磁気回路E,Fを構成する一対の永久磁石52,53および一対の電磁コイル41,42は、これら一対の電磁コイル41,42に所定の周半数の交流電流を流して駆動させることにより、この交流電流の周波数に対応して、一対の電磁コイル41,42と一対の永久磁石52,53との間に磁気的な磁力による反発作用および吸着作用が交互に生じる。
【0038】
さらに、これら一対の永久磁石52,53および一対の電磁コイル41,42は、これら一対の永久磁石52,53と一対の電磁コイル41,42との間に交互に生じる磁気的な磁力による反発作用および吸着作用によって、一対の永久磁石52,53が取り付けられているプラテン51に、長手方向、すなわち水平方向に沿った微小な周波数および振幅を有する振動を生じさせる。
【0039】
よって、このプラテン51は、各磁気回路E,Fを構成する一対の永久磁石52,53と一対の電磁コイル41,42との間に交互に生じる磁気的な反発作用および吸着作用と、これら磁気回路E,Fの各電磁コイル41,42の駆動に伴って、これら各電磁コイル41,42から生じる電磁波に伴う各共振スプリング47の共振作用とのそれぞれにより、このプラテン51が長手方向に向けて、例えば4mmほどの振幅で微小振動する。
【0040】
一方、このプラテン51の下面には、水平な平坦面状の上側の治具設置面56が形成されている。そして、このプラテン51の治具設置面56上の中央部には、被振動体としての第2の治具である上治具(Upper tooling)57がボルト止めされて取り付けられている。そして、この上治具57の下治具15に対向する側である下面には、一対の接合用ワークA,Bのうちの一方の接合用ワークAの外側面A2に対応した形状の上側取付面58が形成されている。すなわち、この上治具57の上側取付面58には、一方の接合用ワークAの外側面A2側が挿入されて保持されるように形成されている。
【0041】
ここで、この上治具57は、この上治具57の上側取付面58が、リフトテーブル13の治具設置面14上に設置されている下治具15の下側取付面16に上下方向に沿って対向するように取り付けられている。すなわち、この上治具57は、この上治具57の上側取付面58に保持させた一方の接合用ワークAの接合部A1と、下治具15の下側取付面16に保持させた他方の接合用ワークBの接合部B1とが、上下方向に水平に対向するようにプラテン51の下面に取り付けられている。
【0042】
そして、これら上治具57の上側取付面58に保持された一方の接合用ワークAの接合部A1と、下治具15の下側取付面16に保持された他方の接合用ワークBの接合部B1とは、油圧シリンダ7のアーム6の進退駆動によるリフトテーブル13の上方への移動によって、これら一方の接合用ワークAの接合部A1と他方の接合用ワークBの接合部B1とが加圧されながら当接され、この状態で、各磁気回路E,Fの電磁コイル41,42を駆動させてプラテン51を長手方向に微小振動させることによって、これら一方の接合用ワークAの接合部A1と他方の接合用ワークBの接合部B1とが溶着される。
【0043】
ここで、これら各磁気回路E,Fの電磁コイル41,42は、図8に示すように、スコットT結線(Scott T connection)されている。具体的に、正面視右側に位置している磁気回路Fの電磁コイル41,42は、これら電磁コイル41,42のコア43に導線44が、例えば1000ターンほど巻いた状態で中間タップT,Tを取り、これら中間タップT,Tからさらに1000ターンほど巻いて合計して2000ターンほど巻き付けられている。さらに、正面視左側に位置している磁気回路Eの電磁コイル41,42のコア43には、正面視右側の磁気回路Fの電磁コイル41,42のコア43に巻き付けられた導線44のターン数の√3/2≒0.866倍、すなわち2000×0.866=1732ターンほど導線44が巻き付けられている。
【0044】
そして、正面視左側に位置している磁気回路Eの一方の前側の電磁コイル41は、この電磁コイル41のコア43に導線44が左巻きに1732ターン巻き付けられており、この電磁コイル41のコア43に巻き付けられている導線44の両端間にコンデンサCが並列接続されて、この電磁コイル41の導線44の一端に端子Wが設けられている。また、正面視左側の磁気回路Eの他方の後側の電磁コイル42は、この電磁コイル42のコア43に導線44が右巻きに1732ターン巻き付けられており、この電磁コイル42のコア43に巻き付けられている導線44の両端間にコンデンサCが並列接続されて、この電磁コイル42の導線44の一端が前側の電磁コイル41の他端に一体的に接続されている。
【0045】
さらに、正面視右側の磁気回路Fの一方の前側の電磁コイル41は、この電磁コイル41のコア43に導線44が右巻きに1000ターン巻いた状態で中間タップTを取り、この中間タップTからさらに右巻きに1000ターン導線44が巻かれて、合計2000ターン導線44が巻き付けられている。そして、この前側の電磁コイル41の導線44の一端と中間タップTとの間にコンデンサCが並列に接続されているとともに、この導線44の他端と中間タップTとの間にコンデンサCが並列に接続されている。さらに、この前側の電磁コイル41の導線44の一端には、端子Uが設けられており、この前側の電磁コイル44の中間タップTは、正面視左側の後側の電磁コイル42の導線44の他端に接続されている。そして、この前側の電磁コイル41の導線44の他端には、端子Vが設けられている。
【0046】
また、正面視右側に位置している磁気回路Fの他方の後側の電磁コイル42は、この電磁コイル42のコア43に導線44が左巻きに1000ターン巻いた状態で中間タップTを取り、この中間タップTからさらに左巻きに1000ターン導線44が巻かれて、合計2000ターン導線44が巻き付けられている。そして、この後側の電磁コイル42の導線44の一端と中間タップTとの間にコンデンサCが並列に接続されているとともに、この導線44の他端と中間タップTとの間にコンデンサCが並列に接続されている。さらに、この後側の電磁コイル42の導線44の一端は、前側の電磁コイル41の導線44の一端に接続されている。また、この後側の電磁コイル42の導線44の中間タップTは、正面視左側に位置している磁気回路Eの後側の電磁コイル42の導線44の他端に接続されている。さらに、正面視右側に位置している磁気回路Fの後側の電磁コイル42の導線44の他端は、端子Vに接続されている。
【0047】
よって、これら一対の磁気回路E,Fそれぞれの各電磁コイル41,42の導線44の接続によって、図8に示すように、スコットT結線回路Sが構成されている。そして、このスコットT結線回路Sは、各磁気回路E,Fの電磁コイル41,42のそれぞれとコンデンサC,C,……,CとをLC共振させるために、これら各電磁コイル41,42それぞれのインダクタンスを定めることによって、各コンデンサC,C,……,Cそれぞれの容量が決定される。さらに、これら一対の磁気回路E,Fの端子W,U,Tは、図示しない商用交流電源の各端子に接続されて、この商用交流電源から三相交流である商用交流電流が供給される。
【0048】
ここで、上記一対の磁気回路の動作について説明する。
【0049】
まず、これら一対の磁気回路E,Fそれぞれの起電力の正方向を図9に示すように定めると、これら磁気回路E,Fの電位ベクトル(Ex1,Ey1)は、図10に示す状態となる。
【0050】
ここで、図10に示すVuv=Ex1であることから、Vvw=(−Ex1/2)−Eとなるとともに、Vwu=Ey1−(Ex1/2)となる。
【0051】
そして、これらVvwおよびVwuの大きさは、Ex1の電圧の大きさをEとした場合に、Ey1の巻線が√3/2であることから、これらVvwおよびVwuの起電力の大きさも√3/2倍となるため、√{(E/2)+(√3・E/2)}=Eとなる。
【0052】
このため、対称三相交流電圧Vuv,Vvw,Vwuを一対の磁気回路E,FのスコットT結線回路Sの端子W,U,Vに印加することにより、これら一対の磁気回路E,FにE=Vuv=Eの起電力が生じる。
【0053】
次に、上記拡散接合装置の電磁コイルの作用について説明する。
【0054】
まず、図8に示すように、図示しない商用交流電源から入力される三相交流電流を一対の磁気回路E,Fの端子W,U,Vに供給する。このとき、これら各磁気回路E,Fの一方の電磁コイル41には、例えば図11中のグラフAにて示すsin波、すなわち正弦波の位相を有する交流電流が供給され、これら各磁気回路E,Fの他方の電磁コイル42には、例えば図11中のグラフBにて示すcos波、すなわち余弦波の位相を有する交流電流が供給される。
【0055】
このため、これら各磁気回路E,Fの一対の電磁コイル41,42には、図11中のグラフCに示すように、例えば位相が90°ずれた波形の交流電流が供給される。
【0056】
そして、これら各磁気回路E,Fの一対の電磁コイル41,42に位相が90°ずれた交流電流が供給されることにより、この交流電流の位相の変化に対応して、これら一対の電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に電磁的な反発作用と吸着作用とが交互に生じる。
【0057】
このとき、これら磁気回路E,Fのうちの一方の磁気回路Eの一対の電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に生じる反発作用と吸着作用とは、図11中のグラフDに示すように、これら電磁コイル41,42に供給される交流電流の周波数の2倍の周波数で変位する。
【0058】
さらに、これら磁気回路E,Fのうちの他方の磁気回路Fの一対の電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に生じる反発作用と吸着作用とは、図11中のグラフEに示すように、一方の磁気回路Eの一対の電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に生じる反発作用と吸着作用との変位に対して90°位相がずれた状態で、これら電磁コイル41,42に供給される交流電流の周波数の2倍の周波数で変位する。
【0059】
また、これら各磁気回路E,Fを構成する一方の電磁コイル41と他方の電磁コイル42とは、180°ほど位相がずれた交流電流が供給されることから、これら電磁コイル41,42によって形成される磁力波形もまた、互いに180°ほど位相が離れた波形となる。
【0060】
この結果、一方の磁気回路Eの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に反発作用が生じた場合には、他方の磁気回路Fの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に吸着作用が生じる。さらに、一方の磁気回路Eの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に吸着作用が生じた場合には、他方の磁気回路Fの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に反発作用が生じる。
【0061】
よって、一方の磁気回路Eの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に働く反発作用または吸着作用とは反対の作用が、他方の磁気回路Fの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に働く。
【0062】
さらに、これら各磁気回路E,Fの電磁コイル41,42に交流電流を供給することにより、この交流電流の2倍の振動周波数のLC共振が各電磁コイル41,42とコンデンサC,C,……,Cとの間に生じ、このLC共振によって生じる電磁波に共振スプリング47が音叉の原理にて共振する。
【0063】
よって、これら共振スプリング47の共振作用と、各磁気回路E,Fの一対の電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に交互に生じる反発作用および吸着作用とによって、プラテン51が長手方向に微小振動することにより、このプラテン51の微小振動に伴って上治具57が水平方向に微小振動する。
【0064】
次に、上記実施の一形態の拡散接合装置を用いた振動方法および振動溶着方法について説明する。
【0065】
まず、拡散接合装置1の油圧ユニット8を駆動させて油圧シリンダ7のアーム6を縮退動作させ、リフトテーブル13を下方へ移動させる。そして、防音シャッタ5を下方に移動させて、拡散接合装置1のリフトテーブル13に対向する位置を開放する。
【0066】
この状態で、この拡散接合装置1の防音シャッタ5にて開放させた部分から一方の接合用ワークAを拡散接合装置1内に入れて、この一方の接合用ワークAの外側面A2を上治具57の上側取付面58に嵌合させて保持させる。
【0067】
さらに、この拡散接合装置1の防音シャッタ5にて開放させた部分から他方の接合用ワークBを拡散接合装置1内に入れて、この他方の接合用ワークBの外側面B2を下治具15の下側取付面16に嵌合させて保持させて、この他方の接合用ワークBの接合部B1が一方の接合用ワークAの接合部A1上下方向に対向するように設置する。
【0068】
この後、防音シャッタ5を上方に移動させて、拡散接合装置1のリフトテーブル13に対向する位置を閉塞する。
【0069】
次いで、油圧ユニット8を駆動させて油圧シリンダ7のアーム6を進出動作させ、リフトテーブル13を上方へ移動させて、このリフトテーブル13上の下治具15にて保持している他方の接合用ワークBの接合部B1を、上治具57にて保持されている一方の接合用ワークAの接合部A1に静圧力を加えて加圧しながら当接させ、この他方の接合用ワークBの接合部B1を一方の接合用ワークAの接合部A1に所定の圧力で上下方向に押し付けた状態とする。
【0070】
この状態で、商用交流電流源から供給され変圧器61にて三相交流から二相交流に変換された交流電流を、拡散接合ユニット31の各磁気回路E,Fを構成する電磁コイル41,42のそれぞれに供給して、これら各電磁コイル41,42のそれぞれを駆動させる。
【0071】
このとき、一方の磁気回路Eの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に磁気的な反発作用または吸着作用が生じると同時に、他方の磁気回路Fの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に磁気的な吸着作用または反発作用が生じる。
【0072】
そして、これら一方の磁気回路Eの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に生じる磁気的な反発作用および吸着作用と、他方の磁気回路Fの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に生じる磁気的な吸着作用および反発作用とが、これら各電磁コイル41,42に供給される交流電流の周波数の2倍の周期数で交互に入れ替わる。
【0073】
また同時に、これら各磁気回路E,Fの電磁コイル41,42に交流電流を供給して駆動させたことにより、この交流電流の周波数の2倍の振動周波数のLC共振が各電磁コイル41,42とコンデンサC,C,……,Cとの間で生じ、これらLC共振にて生じる電磁波に共振スプリング47がそれぞれ共振する。
【0074】
よって、これら共振スプリング47の共振作用と、各磁気回路E,Fの一対の電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に交互に生じる反発作用および吸着作用とによって、プラテン51が長手方向となる水平方向に微小振動する。
【0075】
このため、このプラテン51の微小振動に伴って上治具57に保持されている一方の接合用ワークAが、この一方の接合用ワークAの接合部A1を他方の接合用ワークBの接合部B1に加圧されて押し付けられた状態で水平に微小振動する。
【0076】
このとき、この一方の接合用ワークAの接合部A1を他方の接合用ワークBの接合部B1に加圧しながら当接させた状態で、この一方の接合用ワークAを水平に微小振動させることにより、これら一方の接合用ワークAの接合部A1と他方の接合用ワークBの接合部B1との間に摩擦熱が生じる。
【0077】
そして、この摩擦熱によって、これら接合用ワークA,Bそれぞれの接合部A1,B1が溶融して、これら接合用ワークA,Bの接合部A1,B1が拡散接合されて溶着される。
【0078】
この後、拡散接合ユニット31の各磁気回路E,Fを構成する電磁コイル41,42への交流電流の供給を停止させて、これら各磁気回路E,Fの一対の電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に生じる反発作用または吸着作用を消失させるとともに、これら電磁コイル41,42とコンデンサC,C,……,CとのLC共振に伴う共振スプリング47の共振作用を停止させる。
【0079】
このとき、これら共振スプリング47が有する水平方向に沿った弾性力、すなわち復元力により、これら共振スプリング47の水平方向の中心位置が拡散接合ユニット31の水平方向の中心位置である初期位置となるように自動的に位置合わせされてセンタリングされる。
【0080】
このため、上治具57に保持されている一方の接合用ワークAの接合部A1と、下治具15に保持されている他方の接合用ワークBの接合部B1とも同様にセンタリングされ、これら接合用ワークA,Bの接合部A1,B1同士も正確に中心位置合わせされてセンタリングされた状態で溶着される。
【0081】
この状態で、油圧ユニット8を駆動させて油圧シリンダ7のアーム6を縮退動作させ、リフトテーブル13を下方へ移動させてから、防音シャッタ5を下方に移動させて、拡散接合装置1のリフトテーブル13に対向する位置を開放する。
【0082】
この状態で、この拡散接合装置1の防音シャッタ5にて開放させた部分から、リフトテーブル13上の下治具15に保持され接合部A1,B1同士が溶着された一対の接合用ワークA,Bを取り出して、これら接合用ワークA,Bの振動溶着、すなわち拡散接合が完了する。
【0083】
上述したように、上記実施の一形態によれば、拡散接合装置1の拡散接合ユニット31の各磁気回路E,Fを構成する一対の電磁コイル41,42に交流電流を供給させて、一方の磁気回路Eの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に磁気的な反発作用または吸着作用を生じさせると同時に、これら一方の磁気回路Eの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に生じる磁気的な反発作用または吸着作用とは逆の吸着作用または反発作用を、他方の磁気回路Fの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に生じさせる。
【0084】
そして、これら磁気回路E,Fの電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間に生じる磁気的な反発作用または吸着作用を、これら電磁コイル41,42に供給する交流電流の周波数の2倍の周波数で交互に変化させるとともに、拡散接合ユニット31の各磁気回路E,Fの電磁コイル41,42に交流電流を供給して駆動させることにより、これら電磁コイル41,42とコンデンサC,C,……,Cとの間のLC共振に各共振スプリング47が水平方向に共振する構成とした。
【0085】
この結果、上記構成から、拡散接合ユニット31の各磁気回路E,Fの一対の電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間の交互に変化する磁気的な反発作用および吸着作用と、これら電磁コイル41,42とコンデンサC,C,……,Cとの間のLC共振に伴う各共振スプリング47の共振作用とのそれぞれで、拡散接合装置1の上治具57に保持されている一方の接合用ワークAの接合部A1を水平に微小振動できる。
【0086】
このため、電磁コイル41,42のみを用いた電磁式や、油圧を用いた油圧式、図示しない電動モータで偏芯した軸を回転させるアンバランス式などを用いたの従来の拡散接合装置に比べ、電磁コイル41,42のコア43に巻く導線44の巻き量を多くしたりして、これら電磁コイル41,42を大きくしたり、例えば昇圧トランスなどを用いて電磁コイル41,42に印加する電圧を大幅に高くしたりすることなく、一方の接合用ワークAの接合部A1を精度良く強力に微小振動させることができる。
【0087】
よって、一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1同士を加圧しながら当接させた状態で、一方の接合用ワークAの接合部A1を水平方向に微小振動させる際の精度、強度および安定性のそれぞれを向上できるから、これら一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1同士の溶着の精度、強度および安定性のそれぞれを向上できる。また同時に、これら一対の接合用ワークA,Bの一方の接合用ワークAの接合部A1を水平方向に微小な振幅で振動させることができるので、この一方の接合用ワークAを水平方向に大きな振幅で振動させる際に生じるおそれのある強度や安定性のばらつきを防止できる。
【0088】
ここで、拡散接合ユニット31の永久磁石52,53として、例えば1.4テスラ(T)程度の強力な磁束密度を有するネオジム磁石を用いたことにより、これら永久磁石52,53と電磁コイル41,42との間に生じさせる磁気的な反発作用および吸着作用を簡単な構成でより確実に強力にできる。したがって、これら永久磁石52,53としてネオジム磁石を用いることにより、一方の接合用ワークAの微小振動を簡単な構成で精度良くより強力にできる。よって、従来は振動溶着できないとされていた材料であっても溶着できる。
【0089】
また、これら永久磁石52,53として磁束密度の高いネオジム磁石を用いたことにより、例えば大きな質量の積層鋼板などを用いることなく、共振スプリング47のばね定数、すなわち乗数を小さくできるから、これら共振スプリング47を軽量化できる。
【0090】
さらに、拡散接合ユニット31の各磁気回路E,Fの一対の電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間の交互に変化する磁気的な反発作用および吸着作用と、共振スプリング47の共振作用とを兼ね合わせたことにより、一方の接合用ワークAの微小振動の振動力を、従来の拡散接合装置の4倍以上にできるとともに、一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1同士の加圧を開放した際に共振スプリング47から生じる金属音を少なくできる。
【0091】
また、拡散接合ユニット31の各磁気回路E,Fの各電磁コイル41,42への交流電流の供給を停止させて、これら電磁コイル41,42と永久磁石52,53との間の反発作用または吸着作用を消失させるとともに共振スプリング47の共振作用を停止させた際に、これら共振スプリング47の復元力により上治具57の位置が水平方向の中心位置にセンタリングされる。
【0092】
この結果、拡散接合ユニット31の駆動の停止に伴って、上治具57に保持されている一方の接合用ワークAの接合部A1と、下治具15に保持されている他方の接合用ワークBの接合部B1とがセンタリングされるから、これら接合用ワークA,Bの接合部A1,B1同士を正確に中心位置合わさせてセンタリングした状態で溶着できる。
【0093】
同時に、リフトテーブル13を下げて、上治具57および下治具15のそれぞれに新たに接合用ワークA,Bを保持させた場合でも、この上治具57が共振スプリング47の復元力でセンタリングされていることから、これら一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1同士をセンタリングさせる作業を新たにすることなどなく、リフトテーブル13を上げることにより一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1をセンタリングさせた状態で当接できる。
【0094】
したがって、これら一対の接合用ワークA,Bを上治具57および下治具15へ保持させる作業を簡略化できるとともに、これら一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1同士を正確に位置合わせさせた状態で当接させる作業を簡略化できるから、拡散接合装置1の操作性および作業性をそれぞれ向上できる。
【0095】
さらに、一対の磁気回路E,Fの構成をスコットT結線回路Sとしたことにより、例えば50Hzの振動周波数の三相交流電流を一対の磁気回路E,Fの端子W,U,Vに供給することで、これら各磁気回路E,Fの各電磁コイル41,42とコンデンサC,C,……,Cとの間のLC共振を2倍の100Hzの振動周波数にできる。そして、これら磁気回路E,Fに供給される三相交流電流をインバータ制御することにより、この三相交流電流を一対の磁気回路E,Fに供給して共振スプリング47を共振させた際の、これら共振スプリング47の共振点の調整、すなわちチューニングが容易にできる。
【0096】
なお、上記実施の一形態では、拡散接合ユニット31の一方の磁気回路Eの電磁コイル41,42の導線44のコア43への巻き方を単巻状とし、他方の磁気回路Fの電磁コイル41,42の導線44のコア43への巻き方を二重に巻回させた複巻状にしたが、これら一方の磁気回路Eの電磁コイル41,42の導線44の巻き方を複巻状とし、他方の磁気回路Fの電磁コイル41,42の導線44の巻き方を単巻状にすることもできる。また、これら一対の磁気回路E,Fの電磁コイル41,42の導線44の巻き方は、各電磁コイル41,42それぞれの導線44の巻き方を単巻状または複巻状としたり、その他の巻き方にしたりすることもできる。
【0097】
さらに、拡散接合装置1にて溶着させるワークとして、熱可塑性を有するプラスチック製の接合用ワークA,Bを説明したが、アルミニウム製や、例えばポリテトラフルオロエチレン(商品名:テフロン(登録商標),デュポン株式会社製)製などのその他の接合用ワークA,Bであっても、対向させて用いることができる。
【0098】
また、拡散接合装置1にて溶着する一対の接合用ワークA,Bの一方の接合用ワークBのみを拡散接合ユニット31で水平方向に振動させ、他方の接合用ワークBを固定する構成としたが、この一方の接合用ワークBのみを振動させる構成に限らず、他方の接合用ワークBを振動させる構成や、これら一対の接合用ワークA,Bのそれぞれを振動させる構成であってもよい。したがって、これら一対の接合用ワークA,Bのうちの少なくとも一方を拡散接合ユニット31で振動させる構成であれば対応させて用いることができる。
【0099】
さらに、上記実施の一形態では、一対の接合用ワークA,Bの接合部A1,B1同士を拡散接合させる拡散接合装置1について説明したが、上記一対の磁気回路E,Fおよび共振スプリング47の構成を応用することにより、例えば加振器、電磁ふるい機、アスファルト攪拌機、低周波吸収機、建物の振動吸収機などの振動装置として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の拡散接合装置の実施の一形態の一部を示す説明正面図である。
【図2】同上拡散接合装置の一部を示す説明平面図である。
【図3】同上拡散接合装置の一部を示す説明側面図である。
【図4】同上拡散接合装置を示す一部を切り欠いた説明側面図である。
【図5】同上拡散接合装置を示す一部を切り欠いた説明側面図である。
【図6】同上拡散接合装置のユニットフレームを示す斜視図である。
【図7】同上拡散接合装置の拡散接合ユニットを示す斜視図である。
【図8】同上拡散接合装置の磁気回路を示す説明構成図である。
【図9】同上磁気回路の起電力ベクトルの正方向を示す説明構成図である。
【図10】同上磁気回路の起電力ベクトルを示す説明構成図である。
【図11】同上拡散接合装置に供給する交流電流と振動との波形を示すグラフである。
【符号の説明】
【0101】
1 拡散接合装置
15 第1の治具としての下治具
31 振動装置である拡散接合ユニット
41,42 電磁コイル
47 共振体としての共振スプリング
52,53 永久磁石としてのネオジム磁石
57 被振動体としての第2の治具である上治具
A,B 被接合物としての接合用ワーク
A1,B1 接合部
【出願人】 【識別番号】303014818
【氏名又は名称】株式会社岩崎製作所
【出願日】 平成19年3月28日(2007.3.28)
【代理人】 【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄

【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡

【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也


【公開番号】 特開2008−238111(P2008−238111A)
【公開日】 平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願番号】 特願2007−85294(P2007−85294)