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【発明の名称】 圧力波発生装置
【発明者】 【氏名】林 聖人

【氏名】八壁 正巳

【氏名】越田 信義

【要約】 【課題】ヒーターの導電体が断線しにくく、最大発生音圧を大きくできる圧力波発生装置を提供する。

【解決手段】本発明の圧力波発生装置1は、熱伝導性の基板2と、基板2の一方の主面に形成された断熱層3と、断熱層3の上に形成された絶縁体層5と、絶縁体層5の上に形成され、交流成分を含む電流が印加されて発熱する発熱体4と、を備える。好ましくは、断熱層3は、ナノ結晶シリコンである。好ましくは、絶縁体層5は、窒化珪素(Si)、2酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンド結晶炭素(C)、窒化アルミニウム(AlN)又は炭化珪素(SiC)のいずれか1つを含んで形成される。また発熱体4は、例えば、金(Au)又はタングステン(W)を含んで形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性の基板と、
該基板の一方の主面に形成された断熱層と、
該断熱層の上に形成された絶縁体層と、
該絶縁体層の上に形成され、交流成分を含む電流が印加されて発熱する導体層と、
を備えることを特徴とする圧力波発生装置。
【請求項2】
前記断熱層は、ナノ結晶シリコンであることを特徴とする請求項1に記載の圧力波発生装置。
【請求項3】
前記絶縁体層は、窒化珪素(Si)、2酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンド結晶炭素(C)、窒化アルミニウム(AlN)又は炭化珪素(SiC)のいずれか1つを含んで形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧力波発生装置。
【請求項4】
前記導体層は、金(Au)又はタングステン(W)を含んで形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧力波発生装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、気体に熱を加えて粗密波を発生する圧力波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気に周期的に熱を加えることにより空気の粗密を作り、音波を発生する装置が提案されている(例えば、特許文献1乃至4参照)。特許文献1に記載の技術では、発熱体を薄膜状に形成し、発熱体と基板との間に熱伝導率のきわめて小さい多孔質層を形成するとともに、熱絶縁層を設けて発熱体を基板から熱的に絶縁することにより、発熱体表面の温度変化が大きくなるようにして、超音波発生効率を向上させている。
【0003】
また、特許文献2には、発熱体電極に印加する電流を、短い時間にパワーが集中している周期的あるいは非周期的パルス状あるいはバースト波状にすることによって、時間平均投入電力に対する発生音の時間平均パワーを高める技術が記載されている。
【0004】
特許文献3には、断熱層のナノ結晶シリコンに多数の孔を形成し、その多孔度を75%以上として音圧レベルを高めることが記載されている。また、特許文献4には、断熱層のナノ結晶シリコン層の厚みを、発振する超音波の周波数で規定される熱拡散長以上でかつ熱拡散長に5μm加えた厚み以下とすることによって、耐電力特性を向上し、最大発生音圧を大きくすることが記載されている。
【特許文献1】特開平11−300274号公報
【特許文献2】特開2003−154312号公報
【特許文献3】特開2005−73197号公報
【特許文献4】特開2005−269745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電体を電力で発熱させるヒーターで空気に熱を加えることによって音波を発生する装置では、ヒーターを形成する金属薄膜が場所によって変形したり、中空に浮いたりすることがある。金属薄膜が局所的に加熱される結果、過大な応力が生じたり、局所的に金属の融点以上の温度になる場合がある。発生させる音波の音圧を大きくするために印加電圧を高くすると、金属薄膜が短時間で断線してしまう。したがって、ヒーターの断線を避けるために、印加する電流が制限される。その結果、定常的には小さい音圧しか得られなかった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒーターの導電体が断線しにくく、最大発生音圧を大きくできる圧力波発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る圧力波発生装置は、熱伝導性の基板と、該基板の一方の主面に形成された断熱層と、該断熱層の上に形成された絶縁体層と、該絶縁体層の上に形成され、交流成分を含む電流が印加されて発熱する導体層と、を備えることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記断熱層は、ナノ結晶シリコンであることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記絶縁体層は、窒化珪素(Si)、2酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンド結晶炭素(C)、窒化アルミニウム(AlN)又は炭化珪素(SiC)のいずれか1つを含んで形成される。
【0010】
また、前記導体層は、金(Au)又はタングステン(W)を含んで形成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧力波発生装置によれば、発熱する導体層の温度が均一になるので、導体層の寿命が延びる。そして、大電圧(大電流)を印加できるので、出力の最大音圧を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。図1は、本発明の一実施の形態に係る圧力波発生装置の構成を示す。図1(a)は、駆動回路の接続を含む平面図、図1(b)は、(a)のX−X線断面図である。
【0013】
図1に示すように、圧力波発生装置1は、基板2、断熱層3、発熱体4、絶縁体層5から構成される。発熱体4の両端部に駆動回路6が電気的に接続される。基板2はバルクシリコンなどから形成される。基板2の一方の主面に、多孔質であるナノ結晶シリコン(以下、nc−Siという)の断熱層3が形成されている。基板2の断熱層3が形成されている面に、断熱層3の上に接して絶縁体層5が形成されている。絶縁体層5は、例えば、窒化珪素(Si)、2酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)等の絶縁体の薄膜で形成される。そして、絶縁体層5の上に接して発熱体4が、導電性の金属、例えば、金(Au)又はタングステン(W)などの薄膜で形成されている。
【0014】
駆動回路6は、発熱体4の両端に所定の周波数ωで間欠するパルス電圧、又は交流電圧を印加する。断熱層3の厚さが、発熱体4に印加される電圧の交流成分に対して、断熱層3の熱伝導率と単位体積当たりの熱容量で決まる熱拡散長と同程度とすると、発熱の交流成分は基板2側へは断熱し、発熱体4の熱容量のため発生する直流成分の熱は、大きな熱伝導性の基板2へ効率良く逃がすことができる。断熱層3の厚さは、nc−Siの場合、発生させる音波の周波数にもよるが、例えば、5μm〜200μm程度とする。
【0015】
絶縁体層5の厚さは熱拡散長より充分小さく、発熱体4の発熱の交流成分は断熱層3で厚さ方向に断熱される。絶縁体層5は面の方向には熱を伝導する。発熱体4は絶縁体層5に密着しているので、絶縁体層5は発熱体4の温度を均一にするように作用する。
【0016】
絶縁体層5がない従来の構造では、発熱体4は断熱層3に直に接している。断熱層3は多孔質のnc−Siで形成されているので、微細に見ると、発熱体4がnc−Siの結晶粒に接している部分と接していない部分がある。nc−Siの結晶粒に接している部分では温度の上昇が遅く、nc−Siの結晶粒に接触していない部分では温度の上昇が早い。その結果、発熱体4の温度にムラが生じて、発熱体4の変形、剥離、さらには断線に到る。
【0017】
本発明の圧力波発生装置1では、絶縁体層5は電気を通さないので、それ自体は発熱せず、発熱体4の温度を均一にして発熱体4の局部的な熱応力を緩和する。従って、従来の圧力波発生装置では断線に到るような電圧でも、発熱体4の変形や断線が発生しにくくなる。その結果、圧力波発生装置1の発生する音波の音圧を大きくすることが可能になる。
【0018】
絶縁体層5は、面内方向には熱伝導度が高く、厚さ方向には熱を吸収しないことが望ましい。そこで、熱伝導度が高く比熱の小さい物質で、薄く形成することが望ましい。絶縁体層5の材質としては、例えば、前述の窒化珪素(Si)、2酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)以外に、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンド結晶炭素(C)、窒化アルミニウム(AlN)又は炭化珪素(SiC)等を用いてもよい。絶縁体層5の厚さは、例えば、50nm〜200nm程度とする。
【0019】
発熱体4としては、金属膜であれば材質は特に限定されない。たとえばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、イリジウム(Ir)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)などの金属単体や、それらの積層構造などを用いることができる。発熱体4は、真空蒸着、スパッタなどで成膜することができる。また膜厚は、熱容量を小さくするためにできるだけ薄くするのが好ましいが、適当な抵抗とするために10nm〜300nmの範囲で選択することができる。
【0020】
次に、圧力波発生装置1を形成する工程を説明する。図2A乃至図2Cは、圧力波発生装置1の製造工程を説明する図である。まず、シリコンウエハの基板2を用意し、裏面に例えばアルミニウムの薄膜から形成される電極層7を真空蒸着などで形成する。そして、フッ酸(HF)とエタノールの混合溶液を用いて、白金(Pt)を対向電極として断熱層3を形成する部分に陽極酸化処理を施す。溶液の成分比、電流密度及び処理時間を所定の値に制御して、所望の厚さと粒度に多孔質化したnc−Siの断熱層3を形成する(図2A参照)。
【0021】
図2Bは、断熱層3の上に絶縁体層5を形成した基板2の断面図である。基板2の断熱層3を形成した面に絶縁体層5を形成する。基板2の上に、例えば、プラズマCVDによってノンドープ・ケイ酸ガラス(NSG)等を堆積させて、絶縁体層5とする。
【0022】
図2Cは、絶縁体層5の上に発熱体4を形成した基板2の断面図である。例えば、発熱体4の形状にパターニングしたステンシルマスクSを絶縁体層5の上に保持して、金(Au)のスパッタによって、絶縁体層5の上に発熱体4を所定のパターンで形成する。
【0023】
その後、発熱体4に駆動回路6を接続するための電極などを形成し、必要に応じて裏面の電極層7の除去、研磨などを行う(図示せず)。以上、説明したとおり、圧力波発生装置1は、nc−Si層と一般の半導体装置の製造プロセスを用いて形成することができる。
【0024】
(実施例)
本発明の圧力波発生装置1と従来の絶縁体層5のない圧力波発生装置とを比較した例を示す。いずれも、基板抵抗が5Ω・cmのp型Siウエハを用い、nc−Siの断熱層3の厚さを100μmとした。従来の圧力波発生装置は、断熱層3の上にアルミニウムで発熱体4を形成した。本発明の圧力波発生装置1は、断熱層3の上にプラズマCVDによって、ノンドープ・ケイ酸ガラス(NSG)を200nmの厚さに形成し、その上に従来例と同じくアルミニウムで発熱体4を形成した。そして、いずれも発熱体4に間欠するパルス電圧を印加して音波を発生させた。
【0025】
絶縁体層5のない圧力波発生装置では、印加電力が1Wの入力で発熱体4が断線した。本発明の圧力波発生装置1は、印加電力が100Wまで入力することができた。それぞれの、入力周波数に対する音圧レベルを図3に示す。
【0026】
図3の上の黒丸に太い実線Aが絶縁体層5を有する場合を示す。図3の下の三角に細い実線Bが絶縁体層5のない従来例の場合を示す。太い実線Aの「絶縁体層あり」は、印加電力が100Wである。細い実線Bの「絶縁体層なし」は、印加電力が1Wである。「絶縁体層なし」は1Wで断線するので、1W以上入力することができない。
【0027】
「絶縁体層あり」では100Wまで入力できるのに対して、「絶縁体層なし」では1Wまでしか入力できない。最大出力可能音圧の差は、1kHz〜20kHzにわたって、35dB以上である。連続動作させるためには、どちらもディレーティングしなければならないが、連続動作の最大音圧の差は35dB以上あるとみてよい。
【0028】
さらに、本発明の圧力波発生装置1では、音波の指向特性にムラがなく波面がそろうという効果がある。
【0029】
絶縁体層5がない場合は、図4に示すように、発熱体4の屈曲部の内側の角部Hで発熱量が大きく、屈曲部の外側の角部Lで発熱量が小さい。発熱体4の場所によって発熱量が異なると、発熱量の大きい部分から発生する粗密波の振幅が発熱量の小さい部分から発生する粗密波の振幅より大きく、発熱量の大きい部分を中心に音波が発生するのと似たような現象を生じる。
【0030】
その結果、発熱量の大きい部分から発生する音波同士が干渉し、圧力波発生装置からの距離と方位角の違う場所によって、一種の干渉縞のような音波の強弱ができる。図5は、発熱量の差によって音波の広がる様子を模式的に示す。発生する音波が拡がり、しかも、干渉縞のような強弱ができると、例えば、超音波センシングの音源として用いるのに不都合である。
【0031】
それに対して、本発明の圧力波発生装置1では、絶縁体層5によって発熱体4の温度が均一になるので、発熱体4全体からほぼ同じ強さで音波が発生する。図6に示すように、波面は発熱体4にほぼ平行に進行し、発熱体4の面の法線方向に単一の指向特性を有する音波が得られる。
【0032】
本発明の圧力波発生装置1によれば、発熱する導体層4の温度が均一になるので、導体層4の寿命が延びる。そして、大電圧(大電流)を印加できるので、出力の最大音圧を大きくすることができる。さらに、単一の指向特性を有する音波が得られる。
【0033】
なお、実施の形態で説明した圧力波発生装置1の構成は一例であり、任意に変更及び修正が可能である。例えば発熱体4は、図1に限定されず、様々な形状、パターン、大きさとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る圧力波発生装置の構成を示す図である。
【図2A】本発明の実施の形態に係る圧力波発生装置の製造工程を説明する図である。
【図2B】断熱層の上に絶縁体層を形成した基板の断面図である。
【図2C】絶縁体層の上に発熱体を形成した基板の断面図である。
【図3】絶縁体層の効果を示すグラフである。
【図4】発熱体の部分によって発熱量が異なることを説明する図である。
【図5】絶縁体層がない場合の音波の広がる様子を模式的に示す図である。
【図6】絶縁体層がある場合の音波の伝播を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 圧力波発生装置
2 基板
3 断熱層
4 発熱体(導体層)
5 絶縁体層
6 駆動回路
7 電極層
【出願人】 【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
【出願日】 平成18年12月28日(2006.12.28)
【代理人】 【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満


【公開番号】 特開2008−161816(P2008−161816A)
【公開日】 平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願番号】 特願2006−355625(P2006−355625)