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【発明の名称】 超音波輻射体および超音波輻射体の製造方法
【発明者】 【氏名】後藤 昭広

【氏名】柴 一彦

【要約】 【課題】コンポジット振動子等を用いた従来の超音波輻射体よりも高効率で均一な縦振動を発生させることができる超音波輻射体および超音波輻射体の製造方法を提供する。

【構成】圧電セラミック振動子と輻射板材とが接合された超音波輻射体であって、前記圧電セラミック振動子は前記輻射板材との接合面に溝を有し、かつ該圧電セラミック振動子の溝の内部が空隙となっているものである超音波輻射体、および圧電セラミック振動子と輻射板材とを接合して製造する超音波輻射体の製造方法であって、輻射板材との接合面に溝を有する圧電セラミック振動子を作製し、該圧電セラミック振動子と前記輻射板とを接合することによって、該圧電セラミック振動子の溝の内部が空隙となるようにして超音波輻射体を製造する超音波輻射体の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電セラミック振動子と輻射板材とが接合された超音波輻射体であって、前記圧電セラミック振動子は前記輻射板材との接合面に溝を有し、かつ該圧電セラミック振動子の溝の内部が空隙となっているものであることを特徴とする超音波輻射体。
【請求項2】
前記圧電セラミック振動子と前記輻射板材とがフィルム状接着剤で接合されたものであることを特徴とする請求項1に記載の超音波輻射体。
【請求項3】
前記超音波輻射体は超音波洗浄機用のものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波輻射体。
【請求項4】
圧電セラミック振動子と輻射板材とを接合して製造する超音波輻射体の製造方法であって、輻射板材との接合面に溝を有する圧電セラミック振動子を作製し、該圧電セラミック振動子と前記輻射板とを接合することによって、該圧電セラミック振動子の溝の内部が空隙となるようにして超音波輻射体を製造することを特徴とする超音波輻射体の製造方法。
【請求項5】
前記圧電セラミック振動子と前記輻射板材とをフィルム状接着剤で接合することを特徴とする請求項4に記載の超音波輻射体の製造方法。
【請求項6】
前記超音波輻射体を超音波洗浄機用のものとすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の超音波輻射体の製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を発生させる振動子と輻射板材とを接合した超音波輻射体および超音波輻射体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電セラミック振動子は例えば超音波洗浄機に用いられており、従来では、長方形のセラミック振動子を輻射板材に複数枚貼り付けて(超音波輻射体)、共振周波数または反共振周波数で駆動し、洗浄槽内の洗浄液中に超音波を発生させている。
【0003】
しかしながら、従来品においては、圧電セラミック振動子はその特性上、振動子面内で音圧分布にムラが生じ、輻射板材に貼り付けた振動子と振動子との間の部分における音圧が低下してしまい、従来の超音波輻射体を取り付けた超音波洗浄機の洗浄槽内では音圧が不均一な状態となり、被洗浄物に洗浄ムラが発生する要因となってしまう。
【0004】
このような不均一な音圧分布の対策として、振動子一枚のサイズを大型化する方法が挙げられているが、この方法では振動子面内の音圧ムラを改善することができないし、また製造コストが嵩んでしまうという問題があった。
【0005】
ここで、圧電セラミック振動子について簡単に述べる。
超音波洗浄機は、振動子の縦方向の振動により洗浄効果を得るものであるが、その縦振動は振動子における厚み方向の振動モードの電気機械結合係数ktに起因する。このkt値が高いほど縦方向への振動が効率良く伝播され、洗浄効果も高くなる。
【0006】
平板状の圧電セラミック振動子では、振動子の各方向の振動、すなわち、板の厚み方向の振動k33(分極方向と同方向)や、板の長さ方向および幅方向の振動k31、k32(分極方向と直交)等が重なる形で、板の厚み方向の上記振動ktが表される。つまり、このktの値が、ktと振動の方向が同じk33の値に近付くほど、効率良く縦振動を発生することができる振動子となる。
【0007】
しかしながら、従来品におけるセラミック振動子では、上記k33とk31、k32の重なりが大きく、その結果、小さなktしか示すことができない。これは、平板振動子の横方向の振動モードが縦方向の振動モードを阻害していることを示している。
【0008】
また、これによって振動子がベンディングモード(振動子の外周からその中心部をあおるように振動すること)を引き起こし、振動子面内の音圧分布ムラを発生させてしまう(図7)。それとともに、洗浄槽内の洗浄液中における音波の集束現象等につながる原因となる。結果として音波の集束が振動子同士間の音圧の落ち込みを発生させてしまう。
【0009】
一方、このような問題を解決するために、従来では、圧電セラミックスと有機高分子樹脂を一体化したコンポジット振動子が提案され、また実用化も進んでいる(特許文献1、2参照)。
図4にコンポジット振動子の例を示す。
図4(a)の形態では、コンポジット振動子101は圧電セラミックス102と有機高分子樹脂103とを有しており、板状の圧電セラミックス102と有機高分子樹脂103とが交互に配置された構造となっている。
また、図4(b)の形態ように、圧電セラミックス102の周りを囲うように、格子状に有機高分子樹脂103が配置された構造のコンポジット振動子101’も挙げられる。
【0010】
さらには、図5に示すように、圧電セラミックス102の一主面に溝104が形成されており、その溝の内部に有機高分子樹脂103が充填された構造のコンポジット振動子101”もある(図5(a))。ここで、図5(b)は、図5(a)の矢印Bの方向で見たコンポジット振動子101”の縦断面図である。
そして、例えば上記コンポジット振動子101”を用いた従来の超音波輻射体107は、ペースト状接着剤106によってコンポジット振動子101”と輻射板材105とを接合することによって得ることができる(図2(c))。
【0011】
これらのコンポジット振動子101、101’、101”は、図4、5に示すように、圧電セラミックス102のみではなく、有機高分子樹脂103をその構造に加えることにより、前述の従来問題となっていた振動子の横方向の振動モードを抑えることができ、比較的高いkt値を得ることが可能である。コンポジット振動子は、圧電セラミックス間に有機高分子樹脂を配置することで、構造的に振動子内の圧電セラミックスの横の結合を切り、振動子全体として横振動モードを抑制することができる。ベンディングモードの発生も抑制でき、面内の音圧分布も比較的均一にすることができる(図8)。
【0012】
【特許文献1】特開2003−319494号公報
【特許文献2】特開2003−309297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のような圧電セラミックス間に樹脂を配置したコンポジット振動子、そしてそれを用いた超音波輻射体によって、縦方向への振動が効率良く伝播されるようになり、洗浄効率を比較的改善することができる。
しかしながら、近年では、例えばより高い洗浄レベルが要求されており、それに伴い、横振動モードをさらに抑制してより高いkt値を得ることができ、音圧分布の均一性も一層優れた高品質の超音波輻射体が求められている。
【0014】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、コンポジット振動子等を用いた従来の超音波輻射体よりも高効率で均一な縦振動を発生させることができる超音波輻射体および超音波輻射体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、圧電セラミック振動子と輻射板材とが接合された超音波輻射体であって、前記圧電セラミック振動子は前記輻射板材との接合面に溝を有し、かつ該圧電セラミック振動子の溝の内部が空隙となっているものであることを特徴とする超音波輻射体を提供する(請求項1)。
【0016】
前述したように、例えばコンポジット振動子を用いた従来の超音波輻射体では、輻射板材との接合面に形成された圧電セラミックスの溝の内部には有機高分子樹脂が充填されている。そして、ペースト状の接着剤により、このコンポジット振動子と輻射板材とが接合されている。
【0017】
しかしながら、本発明では、圧電セラミック振動子の溝の内部が、有機高分子樹脂やペースト状接着剤等により充填または侵入されておらず空隙となっている。このため、溝を介して隣り合う圧電セラミックス同士の拘束が従来よりもさらに緩和されており、横方向の振動モードが抑制されてより高いkt値を有し、一層効果的に縦方向への振動を伝播することができる超音波輻射体となる。
【0018】
また、ベンディングモードが引き起こされるのが防止されて圧電セラミック振動子の面内における音圧分布が均一なものであり、輻射板材と接合した圧電セラミック振動子同士間における音圧落ち込みが防止されて超音波輻射体全体でも音圧分布が均一なものとすることが可能である。
【0019】
このとき、前記圧電セラミック振動子と前記輻射板材とがフィルム状接着剤で接合されたものであるのが望ましい(請求項2)。
このように、前記圧電セラミック振動子と前記輻射板材とがフィルム状接着剤で接合されたものであれば、溝の内部へペースト状接着剤が侵入しておらず、より確実に、より容易に、溝の内部への接着剤の介入が防がれ、溝の内部が空隙となっているものとすることができる。
【0020】
このとき、前記超音波輻射体は超音波洗浄機用のものとすることができる(請求項3)。
このように、前記超音波輻射体が超音波洗浄機用のものであれば、これを配設した超音波洗浄機は、洗浄槽内の洗浄液に従来品よりも効率良く均一に超音波を発生させることができ、洗浄液中の被洗浄物を一層ムラなく高効率で洗浄することが可能である。
【0021】
また、本発明は、圧電セラミック振動子と輻射板材とを接合して製造する超音波輻射体の製造方法であって、輻射板材との接合面に溝を有する圧電セラミック振動子を作製し、該圧電セラミック振動子と前記輻射板とを接合することによって、該圧電セラミック振動子の溝の内部が空隙となるようにして超音波輻射体を製造することを特徴とする超音波輻射体の製造方法を提供する(請求項4)。
【0022】
このように、まず、輻射板材との接合面に溝を有する圧電セラミック振動子を作製し、該圧電セラミック振動子と前記輻射板材とを接合することによって、空隙となるようにして超音波輻射体を製造する方法であるので、従来品とは異なり、圧電セラミック振動子の溝の内部が有機高分子樹脂やペースト状接着剤等により充填あるいは侵入されていないものを製造することが可能である。
【0023】
したがって、横方向の振動モードを極めて抑制し、高いkt値を有し、一層効果的に縦方向への振動を伝播することができる超音波輻射体を得ることが可能である。
さらには、ベンディングモードの発生を防止でき圧電セラミック振動子の面内での音圧分布が均一であり、輻射板材に接合した圧電セラミック振動子同士の間の音圧落ち込みを防止して超音波輻射体全体でも音圧分布が均一な超音波輻射体を得ることができる。
【0024】
このとき、前記圧電セラミック振動子と前記輻射板材とをフィルム状接着剤で接合するのが望ましい(請求項5)。
このように、圧電セラミック振動子と輻射板材とをフィルム状接着剤で接合すれば、溝の内部へペースト状接着剤を侵入させることもなく、より確実に、より容易に、溝の内部への接着剤の介入を防ぎ、溝の内部が空隙となっているものを得ることができる。
【0025】
そして、前記超音波輻射体を超音波洗浄機用のものとすることができる(請求項6)。
このように、前記超音波輻射体を超音波洗浄機用のものとすれば、洗浄槽内の洗浄液に従来品よりも効率良く均一に超音波を発生させることができ、洗浄液中の被洗浄物を一層ムラなく高効率で洗浄することができる超音波洗浄機を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の超音波輻射体および超音波輻射体の製造方法であれば、圧電セラミック振動子に形成された溝の内部は空隙となっているため、横方向の振動モードが一層効果的に抑制され、高いkt値を有することができ、縦方向への振動を均一かつ効率良く伝播することができる超音波輻射体を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前述したように、従来、圧電セラミック振動子面内の音圧分布ムラや、輻射板材と接合している振動子間における音圧の落ち込みを解消するため、圧電セラミックスと有機高分子樹脂(アクリル系、エポキシ系、シリコン系、ウレタン系等)を一体化したコンポジット振動子を用いた超音波輻射体が提案されている。
【0028】
しかしながら、近年では、このコンポジット振動子を用いたものよりも音圧分布ムラがより一層抑制され、例えば超音波洗浄機に組み込んで、さらにムラなく高効率で被洗浄物を洗浄することができる超音波輻射体が望まれている。
【0029】
ここで、上記コンポジット振動子について述べると、図4に示すように、有機高分子樹脂103を圧電セラミックス102間に配置したり、図5のように圧電セラミックス102に溝104を形成し、その溝104の内部に有機高分子樹脂103を充填することで、隣り合う圧電セラミックス102’、102”の拘束を緩和することができる。すなわち、振動子内の横の結合を切って、横方向の振動モードを抑制することができる。そのため、コンポジット振動子の溝等に充填される樹脂は、隣り合う圧電セラミックス同士を拘束してしまうような密度の高いものではなく、低密度のものが良いとされる。
【0030】
本発明者らは、この隣り合う圧電セラミックス同士の拘束を緩和して横方向の振動モードを抑制するための理想的な形態として、圧電セラミックス間に空気の層を設けた超音波輻射体を考えた。すなわち、圧電セラミックスに形成した溝に従来のように樹脂等を充填するのではなく、溝の内部を空隙として空気の層を設ける。溝の内部を空隙にして樹脂よりも低密度な空気の層とするため、従来のように樹脂が充填されたものよりもさらに高いkt値を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0031】
そして、本発明者らは、特には、輻射板材との接合面に溝が形成された圧電セラミック振動子と輻射板材とを、従来のようなペースト状接着剤ではなく、例えばフィルム状接着剤によって接合すれば、溝の内部への接着剤の介入を容易に防ぐことが可能となることを見出した。
【0032】
従来では、一般に、上記のように溝を圧電セラミックスに形成した上で、そのまま輻射板材と接合する場合、高品質の超音波輻射体を得ることは困難であった。
すなわち、図6のように、溝204を接合面に有する圧電セラミック振動子201と、輻射板材205とをペースト状接着剤206により接合した超音波輻射体207の場合、溝204の内部にペースト状接着剤206が侵入してしまう。このように、溝204の内部にペースト状接着剤206が侵入して硬化してしまうため、溝204の内部を空隙にするどころか、ペースト状接着剤206で埋められ、圧電セラミック振動子201内の横の結合を切ることができずに拘束してしまい、横方向の振動モードを改善することができず、kt値が著しく低下してしまうからである。
【0033】
以下では、本発明の実施の形態について、図を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明の超音波輻射体の一例を示す概略図である。本発明の超音波輻射体7では、図1に示すように、圧電セラミックス2に溝4が形成された圧電セラミック振動子1と、輻射板材5とが、溝4を有する面を接合面として、フィルム状接着剤6により接合されている。溝4の内部は、樹脂や接着剤等により埋められていることはなく、空隙3となっている。
【0034】
ここで、圧電セラミック振動子1(圧電セラミックス2)は、セラミックスに対し、電極の形成や分極処理等を施したものであり、材料となるセラミックスとしては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックス(PZT)、チタン酸鉛系セラミックス等が挙げられる。
本発明に用いることができるセラミックスはこれらに限定されず、超音波輻射体の用途等に合わせて適宜選択することができる。電気機械結合係数ktが高いものを選択すると良い。
当然、従来と同様のものを準備して用いることができる。
【0035】
この圧電セラミック振動子1の形状の例を図2に示す。図2(a)は斜視図であり、図2(b)は、矢印Aの方向で見た縦断面図である。
図2に示すように、圧電セラミックス2には溝4が形成されており、その溝4の内部には樹脂等は充填されていない。この溝4の形状、数、幅、深さ、また、圧電セラミックス2自体の形状等は特に限定されず、自由に設定することができる。目的に応じた形状のものとすることができる。
【0036】
また、輻射板材5の例としては、ステンレス、石英、タンタル等が挙げられる。この輻射板材5も、従来と同様の材質や形状のものを用いることができ、用途に合わせてその都度選択することができる。
【0037】
そして、これらの圧電セラミック振動子1と輻射板材5とを接合するフィルム状接着剤6は、例えば、成分がエポキシ系樹脂のものとすることができる。具体的には、商品名 CF3350 導電性フィルム状接着剤(日本エイブルスティック株式会社製)や、商品名 STAYSTIK 熱可塑性接着剤フィルムタイプ 571(テクノアルファ株式会社製)などが挙げられる。
当然これらの成分等に限定されず、上述したような圧電セラミック振動子1と輻射板材5とを確実に接合することができれば良く、かつフィルム状のものであれば良い。圧電セラミック振動子1等の形状に合わせて加工しやすいものであると好ましい。
【0038】
そして、本発明の超音波輻射体7は、圧電セラミック振動子1と輻射板材5とが、上記のようなフィルム状接着剤6で接合されているため、図6に示した超音波輻射体とは異なり、圧電セラミック振動子1の溝4の内部に接着剤が侵入して硬化し、溝4が接着剤で埋められてしまうことはない。したがって、溝4の内部は空隙3が設けられたものとすることができ、隣り合う圧電セラミックス2’、2”間に空気の層が形成されている。すなわち、溝4の内部は極めて低密度であり、隣り合う圧電セラミックス2’、2”をほとんど拘束することがなく、横方向の振動モードを著しく抑制することができる。
【0039】
そのため、本発明の超音波輻射体7における圧電セラミック振動子1では、図4等に示すような圧電セラミック振動子101等よりも、圧電セラミック振動子1の厚さ方向(矢印C)の振動モードの電気機械結合係数ktの値が向上されて、縦方向への振動が効率良く伝播できるものとなる。ベンディングモードの発生も一層抑制することができ、面内において均一性の高い音圧分布を得ることができる圧電セラミック振動子1となる。
【0040】
また、このように、圧電セラミック振動子1の面内で音圧分布がムラなく均一であることから、輻射板材5に複数枚圧電セラミック振動子1が接合されている場合、その圧電セラミック振動子1同士の間における音圧の落ち込みを極めて抑制することができる。すなわち、超音波輻射体7の全体(輻射板材5の面内)において、均一な音圧分布を得ることができる。
【0041】
以上のような本発明の超音波輻射体7は、例えば超音波洗浄機に用いることができる。
図3に、本発明の超音波輻射体7を備えた超音波洗浄機の一例を示す。
この超音波洗浄機10は、洗浄槽12の内部に洗浄液13が貯留されており、またその底部には、本発明の超音波輻射体7が配設されている。この超音波輻射体7には超音波発振器11が接続されている。この超音波発振器11から超音波が与えられ、超音波輻射体7を通じて、洗浄液13中に超音波を発生させ、洗浄液13中に配置された被洗浄物14を超音波洗浄できるようになっている。
【0042】
このような本発明の超音波輻射体7を用いた超音波洗浄機10であれば、圧電セラミック振動子1の厚み方向のkt値が極めて高く、縦方向への振動を効率良く、かつ圧電セラミック振動子1の面内、さらには超音波輻射体1の面内で均一に伝播することができるので、洗浄液13中に超音波を効率良く均一に発生させることができ、被洗浄物14を洗浄ムラなく高い洗浄レベルで洗浄することが可能である。
【0043】
なお、ここでは用途として超音波洗浄機を例に挙げたが、当然、本発明の超音波輻射体7は超音波洗浄機に限定されず、種々の用途に利用することができるものである。
例えば、超音波センサー、超音波ソナー、超音波エコー等が挙げられ、特に医療機器関係に応用することができる。
【0044】
次に、上記のような本発明の超音波輻射体7を製造する方法について述べる。
まず、溝入の圧電セラミック振動子1を作製する。
上述したような、用途に適した材質のセラミックスを用意し、例えば機械加工等を施して所望の形状や厚さに整える。そして、セラミックスの所定位置に電極を形成し、分極処理することにより圧電セラミックスを作製する。次に、輻射板材5との接合面となる面の所定位置に溝4を形成する。前述したように、この溝4の形状や深さ、幅、数等は特に限定されるものではなく、用途に合わせて自由に形成することができる。また、その形成方法も特に限定されなく、例えば機械加工により形成することができる。
【0045】
このようにして、溝4を有する圧電セラミック振動子1を作製することができる。この圧電セラミック振動子1の作製は、従来と同様の方法により行うことができ、溝を有する所望の形状の圧電セラミック振動子を得ることができれば良い。
【0046】
次に、この圧電セラミック振動子1の溝4を有する側の面と、別に用意した輻射板材5とを接着剤を介して接合する。このとき、本発明の製造方法では、従来のようにペースト状の接着剤を用いるのではなく、例えば、フィルム状の接着剤6を用いて接合を行う。用いるフィルム状接着剤の成分等は特に限定されず、前述したような接着剤を用いることができる。
このように、フィルム状接着剤6で接合することにより、圧電セラミック振動子1と輻射板材5とを確実に接合するとともに、溝4の内部が空隙3となるように容易にすることができる。
【0047】
したがって、本発明の製造方法では、隣り合う圧電セラミックス2’、2”との間に(図1)、図5に示す従来の超音波輻射体107のように樹脂103が充填されているものでもなく、また、図6に示す超音波輻射体207のようにペースト状接着剤206が侵入して硬化してしまっているものでもなく、図1に示す本発明の超音波輻射体7のように、樹脂103やペースト状接着剤206よりも著しく低密度の空気の層を設けたものを製造することができる。これにより、圧電セラミック振動子1内での横方向の振動モードを極めて抑制することができ、その結果、圧電セラミック振動子1の厚み方向の振動モードのkt値を向上することができる。
【0048】
このように、本発明の製造方法により、溝4の内部が空隙3となっている本発明の超音波輻射体7を製造することができ、従来の樹脂入りのものよりもさらに高いkt値を得ることができる。より高効率で縦方向の振動を伝播することができ、かつ圧電セラミック振動子1の面内、輻射板材5の面内(超音波輻射体7の全体)でより均一な音圧分布を有する超音波輻射体7を得ることができる。そして、このような本発明の製造方法によって製造された超音波輻射体7を例えば超音波洗浄機に用いれば、均一かつ高効率で超音波による縦振動を洗浄槽内の洗浄液に与えることができ、被洗浄物を高い洗浄レベルで均一に洗浄することができ、洗浄ムラをなくすことが可能になる。
【0049】
なお、上記では、フィルム状接着剤6を用いた本発明の超音波輻射体について述べたが、本発明はこれに限定されない。例えば、従来に比べて薄くて粘度が高い接着剤で接合したり、接着剤をスクリーン印刷で塗布して接合して、溝の内部を空隙となるようにして輻射体を製造しても良い。溝の内部が、接着剤等により埋められておらず空隙となっていれば良い。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1)
上述した本発明の製造方法により、本発明の超音波輻射体を製造してkt値を測定した。
まず、圧電セラミックス振動子を作製する。セラミックスとしてPZTのものを用意し、研削、研磨工程を施して、130×30mm、厚さ1.2mmのセラミックス板を得た。このセラミックス板に電極を形成し、分極処理を施して圧電セラミックス板を得た。この後、ダイシングマシーンを用いて、図2に示すような幅0.1mm、深さ0.6mmの溝を形成し、本発明の超音波輻射体に用いる圧電セラミック振動子を作製した。
【0051】
次に、ステンレスの輻射板材を用意し、この輻射板材と上記圧電セラミック振動子とをフィルム状接着剤で接合した。このとき、圧電セラミック振動子の溝を形成した側の面を接合面として接合した。
また、フィルム状接着剤としては、前述した商品名CF3350 導電性フィルム状接着剤(日本エイブルスティック株式会社製)を用いた。
【0052】
このようにして、図1に示すように、圧電セラミック振動子に形成された溝の内部が空隙となっている本発明の超音波輻射体を製造した。
そして、上記超音波輻射体の周波数−インピーダンス特性を測定して、超音波輻射体の厚み方向の共振周波数と反共振周波数を求め、厚み方向の電気機械結合係数ktを算出した。このkt値を表1に示す。
【0053】
表1に示すように、kt値は60%であり優れた値を得ることができた。
また、超音波輻射体の面内の音圧分布を測定したところ、ムラがほとんどなく、極めて均一な分布を得ることができた。
これらのkt値、音圧分布の均一性は、後述する比較例1、2の従来の超音波輻射体よりも優れていた。
【0054】
【表1】


【0055】
(比較例1)
実施例1と同様の手順で圧電セラミックス板を作製し、その圧電セラミックス板(圧電セラミック振動子)と、実施例1と同様の輻射板材とをペースト状接着剤で接合した。このとき、ペースト状接着剤としては、商品名XNR5310 エポキシ系導電性接着剤(ペースト)(ナガセケムテックス株式会社製)を用いた。
このようにして得られた従来の超音波輻射体に関して、実施例1と同様にして電気機械結合係数ktを算出した(表1)。
【0056】
表1に示すように、kt値は48%であり低い値となった。
また、超音波輻射体の面内の音圧分布を測定したところ、ベンディングモードが引き起こされて、音圧分布に極めて大きなムラが生じた。
【0057】
(比較例2)
実施例1と同様の手順で溝入の圧電セラミックス板を作製し、この圧電セラミックス板の溝の内部に、エポキシ系樹脂を充填してコンポジット振動子を作製した。
このコンポジット振動子と、実施例1と同様の輻射板材とをペースト状接着剤で接合した。このとき、ペースト状接着剤としては、比較例1と同様のものを用いた。
このようにして得られた従来の超音波輻射体に関して、実施例1と同様にして電気機械結合係数ktを算出した(表1)。
【0058】
表1に示すように、kt値は57%であり、また、超音波輻射体の面内の音圧分布を測定したところ、比較的均一な分布を得ることができたが、いずれも、実施例1の本発明の超音波輻射体よりも劣った結果となった。
【0059】
本発明の超音波輻射体および超音波輻射体の製造方法によって、例えば従来のコンポジット振動子を用いた超音波輻射体(あるいはこのコンポジット振動子自体)よりも、kt値が高く、面内の音圧分布が極めて均一である優れた品質の超音波輻射体を得ることができる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の超音波輻射体の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の超音波輻射体に用いられる溝入り圧電セラミック振動子の一例を示す概略図である。(a)斜視図であり、(b)矢印Aの方向で見た側面図である。
【図3】本発明の超音波輻射体を備えた超音波洗浄機の一例を示す概略図である。
【図4】(a)従来のコンポジット振動子の一例を示す概略図である。(b)従来のコンポジット振動子の他の一例を示す概略図である。
【図5】(a)従来のコンポジット振動子の他の一例を示す概略図である。(b)矢印Bの方向で見た側面図である。(c)従来の超音波輻射体の一例を示す概略図である。
【図6】溝入り圧電セラミック振動子の溝にペースト状接着剤が侵入している超音波輻射体の一例を示す説明図である。
【図7】振動子面内の音圧分布の一例を示す測定図である。
【図8】コンポジット振動子面内の音圧分布の一例を示す測定図である。
【符号の説明】
【0062】
1、201…溝入り圧電セラミック振動子、
2、2’、2”、102…圧電セラミックス、3…空隙、
4、104、204…溝、 5、105、205…輻射板材、
6…フィルム状接着剤、 7…本発明の超音波輻射体、 10…超音波洗浄機、
11…超音波発振器、 12…洗浄槽、 13…洗浄液、 14…被洗浄物、
101、101’、101”…コンポジット振動子、 103…有機高分子樹脂、
106、206…ペースト状接着剤、 107、207…従来の超音波輻射体。
【出願人】 【識別番号】590002172
【氏名又は名称】株式会社プレテック
【出願日】 平成18年9月13日(2006.9.13)
【代理人】 【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫


【公開番号】 特開2008−68191(P2008−68191A)
【公開日】 平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願番号】 特願2006−248374(P2006−248374)