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【発明の名称】 塗布方法及び装置
【発明者】 【氏名】大島 篤

【氏名】松本 悟

【要約】 【課題】塗布開始時の厚塗りそのものを抑制でき、製造効率を向上できる。

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドビードコータの吐出スリットから塗布液を帯状に吐出し、該塗布液を前記スライドビードコータのスライド面に流下させ、走行中のウエブと前記スライドビードコータとの間に塗布液架橋を形成して塗布を行う塗布方法において、
塗布開始時に、前記スライド面を流下する塗布液及び/又は前記ウエブと前記スライドビードコータとの間に液滴を噴射することにより前記塗布液架橋のための架橋点を形成することを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記スライド面の上方から前記ウエブと前記スライドビードコータとの間に向けて、前記液滴を噴射することを特徴とする請求項1の塗布方法。
【請求項3】
前記1滴あたりの液滴量をM、前記液滴の噴射時間をTとすると、T<8Mを満たし且つT<−1.6M+192を満たすように前記液滴を噴射することを特徴とする請求項1又は2の塗布方法。
【請求項4】
塗布開始後に、前記液滴の噴射を停止することを特徴とする請求項1〜3の何れか1の塗布方法。
【請求項5】
前記塗布液架橋を、前記ウエブの巾方向の両端を含む複数の位置に形成することを特徴とする請求項1〜4の何れか1の塗布方法。
【請求項6】
前記液滴は、塗布液又は該塗布液に不活性且つ親和性の液体であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1の塗布方法。
【請求項7】
塗布液を帯状に吐出する吐出スリットと、該吐出した塗布液を流下させるスライド面とを有するスライドビードコータを用い、該スライドビードコータと走行中のウエブとの間に塗布液架橋を形成して塗布する塗布装置において、
前記スライドビードコータと前記ウエブとの間に前記塗布液架橋の架橋点を形成する液滴を噴射する液滴噴射手段を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項8】
前記液滴噴射手段の噴射口の開口面積が、1mm以下であることを特徴とする請求項7の塗布装置。
【請求項9】
前記液滴噴射手段の噴射口が、前記スライド面の上方から前記スライドビードコータと前記ウエブとの間に向けられ、且つ前記スライド面を流下する塗布液と非接触となるように配置されることを特徴とする請求項7又は8の塗布装置。
【請求項10】
前記液滴噴射手段の噴射口が、少なくとも前記ウエブの巾方向の両端に対応する位置に配置されることを特徴とする請求項9の塗布装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は塗布方法及び装置に係り、特に、塗布開始時において、薄い金属板、紙、フイルム等のシート状或いはウエブ状の被塗工基材に各種の液状物質を塗り付ける塗布方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷原版の感光層の表面にポリビニルアルコールなどの酸素非透過性樹脂の薄膜からなる酸化保護層を形成し、感光層を空気中の酸素から保護することが現在広く行なわれている。
【0003】
酸化保護層の形成にはスライドビード型塗布装置が使用される。スライドビード型塗布装置は一般的に、酸素非透過性樹脂の溶液などの塗布液を吐出する吐出スリットとこの吐出スリットから吐出された塗布液が流下するスライド面とが形成されたスライドビードコータと、このスライドビードコータのスライド面の先端近傍に設けられ、平版印刷原版を巻き掛けて一定方向に搬送するバックアップローラとを備える。このようなスライドビード型塗布装置においては、バックアップローラによって平版印刷原版を感光層が外側を向くように搬送しつつ、前記吐出スリットから溶液を吐出してスライド面に沿って流下させ、スライド面の先端部と平版印刷原版の感光層表面との間に塗布液架橋(塗布ビード)を形成し、溶液を塗布している。
【0004】
ところで、スライドビード型塗布装置において塗布を開始する際、スライドビードコータの先端と平版印刷原版などのウエブとの間に、塗布液架橋を確実に形成する必要があるが、塗布開始時に塗布液がウエブに過剰に付着し、塗り始めの部分が他の部分よりも塗布厚さが厚い厚塗り部が形成されることがある。厚塗り部が形成されると、未乾部が残ってしまうという問題が発生する。このため、厚塗り部の不具合を解消する様々な方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、塗布開始時に発生する過剰厚塗り部に吸収ローラを当接させ、過剰な塗布液を吸収する方法が提案されている。また、特許文献2には、ウエブに除去ローラを押し当てることによって、塗布液の一部を除去する方法が提案されている。特許文献3には、バックアップローラをスライドビードコータに向かって接近させることによって、スライドビードコータの先端とバックアップローラ上の平版印刷原版との間のクリアランスを狭め、塗布液架橋を形成する方法が提案されている。また、特許文献4には、ウエブの塗布面に電荷を与えた状態で、スライドビードコータをバックアップローラに向かって接近させることによって、スライドビードコータの先端とバックアップローラ上の平版印刷原版との間のクリアランスを狭め、塗布液架橋を形成する方法が提案されている。特許文献5には、スライドビードコータをバックアップローラに向かって接近させることによって、スライドビードコータの先端とバックアップローラ上の平版印刷原版との間のクリアランスを狭めるとともに、その際のビード上下にかける圧力差を強くする方法が提案されている。更に、特許文献6には、塗布工程後、ウエブ上の塗り始めの部分にエアを吹き付けることによって、厚塗り部を均す方法が提案されている。
【特許文献1】特開2000−271531号公報
【特許文献2】特開平8−294663号公報
【特許文献3】特開昭63−80872号公報
【特許文献4】特開平3−123669号公報
【特許文献5】特開平1−213641号公報
【特許文献6】特開2002−273299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2、及び6の方法は、塗布工程後に、吸収ローラ、除去ローラ或いはエアの吹付け手段等を用いた別工程が必要となるため、装置が大型化するという問題があった。また、これらの方法では、塗布開始時の塗布液の過剰厚塗り自体を防止できなかった。
【0007】
また、上記特許文献3、4及び5の方法でも、スライドビードコータ又はバックアップローラを移動させる複雑な機構が必要となり、上記したのと同様に装置が大型化するという問題があった。その他、特許文献3では、バックアップローラを汚すおそれがあること、特許文献4は、アルミ製のウエブには適用できないこと、特許文献5は圧力制御が困難であること等、操作上の制限や問題も多くあった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、塗布開始時の厚塗りそのものを抑制でき、製造効率を向上できる塗布方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、スライドビードコータの吐出スリットから塗布液を帯状に吐出し、該塗布液を前記スライドビードコータのスライド面に流下させ、走行中のウエブと前記スライドビードコータとの間に塗布液架橋を形成して塗布を行う塗布方法において、塗布開始時に、前記スライド面を流下する塗布液及び/又は前記ウエブと前記スライドビードコータとの間に液滴を噴射することにより前記塗布液架橋のための架橋点を形成することを特徴とする塗布方法を提供する。
【0010】
本発明の請求項1によれば、ウエブを損傷させることなく、塗布開始時に塗布液がウエブに過剰に転移することを防止し、塗布開始時の厚塗りそのものを抑制できる。これにより、厚塗りによる故障等の発生を抑制し、製造効率を向上できる。
【0011】
請求項2は請求項1において、前記スライド面の上方から前記ウエブと前記スライドビードコータとの間に向けて、前記液滴を噴射することを特徴とする。
【0012】
これにより、スライド面を流下する塗布液とウエブとの間に、塗布液の架橋点を安定に形成できる。
【0013】
請求項3は請求項1又は2において、前記1滴あたりの液滴量をM、前記液滴の噴射時間をTとすると、T<8Mを満たし且つT<−1.6M+192を満たすように前記液滴を噴射することを特徴とする。
【0014】
請求項3によれば、塗布開始時に、ウエブとスライドビードコータとの間に塗布液の架橋点を安定に形成でき、且つ塗布開始時の厚塗りをより確実に防止できる。
【0015】
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、塗布開始後に、前記液滴の噴射を停止することを特徴とする。
【0016】
請求項4によれば、液滴の使用量を最小限に抑えることができ、効率的に塗布開始時の厚塗りを抑制できる。
【0017】
請求項5は請求項1〜4の何れか1において、前記塗布液架橋を、前記ウエブの巾方向の両端を含む複数の位置に形成することを特徴とする。
【0018】
請求項5によれば、各塗布液架橋によって形成される各塗布開始点と、各塗布開始点から塗れ拡がって合流した合流点における厚塗りを効果的に防止できる。尚、ウエブの巾方向の両端にそれぞれ1点ずつ塗布液架橋を形成してもよいし、両端を含めて3〜5点塗布液架橋を形成してもよい。
【0019】
請求項6は請求項1〜5の何れか1において、前記液滴は、塗布液又は該塗布液に不活性且つ親和性の液体であることを特徴とする。
【0020】
請求項6によれば、塗布液の性能に影響を及ぼすことなく、ウエブとスライドビードコータとの間に塗布液の架橋点を形成し易くなる。このような液体としては、特に限定されないが、水や一般的な有機溶媒、塗布液と相溶性がある塗布液それ自体、塗布液に含まれる溶媒、乾燥負荷を低減するメタノール等の低沸点溶媒等が好ましい。
【0021】
本発明の請求項7は前記目的を達成するために、塗布液を帯状に吐出する吐出スリットと、該吐出した塗布液を流下させるスライド面とを有するスライドビードコータを用い、該スライドビードコータと走行中のウエブとの間に塗布液架橋を形成して塗布する塗布装置において、前記スライドビードコータと前記ウエブとの間に前記塗布液架橋の架橋点を形成する液滴を噴射する液滴噴射手段を備えたことを特徴とする塗布装置を提供する。
【0022】
本発明の請求項7によれば、塗布開始時に塗布液が過剰に転移することを防止でき、塗布開始時の厚塗りそのものを減少させることができる。また、最小限の液滴を噴射するので、吸収ローラや除去ローラ等を用いた後工程を付与する必要がなく、更にスライドビードコータやバックアップローラの移動機構等の複雑な機構が不要になるので、装置を小型化することができる。ここで、液滴噴射手段としては、公知公用のものを使用でき、例えば、各種ディスペンサ、液体噴射ノズル、注射器等が使用できる。
【0023】
請求項8は請求項7において、前記液滴噴射手段の噴射口の開口面積が、1mm以下であることを特徴とする。
【0024】
請求項8によれば、スライドビードコータとウエブとの間に、塗布液の架橋点を安定に形成でき、塗布開始時の厚塗りを抑制できる。尚、噴射口の開口面積が、0.1mm以下であることがより好ましい。
【0025】
請求項9は請求項7又は8において、前記液滴噴射手段の噴射口が、前記スライド面の上方から前記スライドビードコータと前記ウエブとの間に向けられ、且つ前記スライド面を流下する塗布液と非接触となるように配置されることを特徴とする。
【0026】
請求項9によれば、非接触でスライドビードコータとウエブとの間に塗布液の架橋点を形成できる。従って、塗布開始時に塗布液がウエブに過剰に転移することを防止でき、塗布開始時の厚塗りそのものを抑制できる。
【0027】
請求項10は請求項9において、前記液滴噴射手段の噴射口が、少なくとも前記ウエブの巾方向の両端に対応する位置に配置されることを特徴とする。
【0028】
請求項10によれば、各塗布開始点と、各塗布開始点から塗れ拡がって合流した合流点における厚塗りを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、塗布開始時の厚塗りそのものを抑制でき、製造効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下添付図面に従って本発明に係る塗布方法及び装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0031】
図1には本発明に係る塗布装置としてスライドビード型塗布装置を用いた、フォトポリマ型平版印刷版の製造ライン10を示す構成図である。
【0032】
図1に示すように、製造ライン10の最も上流側(図1の左側)には送出装置16が配置されており、この送出装置16には、例えば厚さ0.1〜0.5mmのアルミウエブ12がロール状に巻き取られたアルミコイル14が装填されている。送出装置16は製造ライン10全体での製造速度に対応する速さでアルミウエブ12を下流側へ送り出している。ここで、平版印刷版用支持体の素材としてのアルミニウム板は、例えば、JIS1050材、JIS1100材、JIS1070材、Al−Mg系合金、Al−Mn系合金、Al−Mn−Mg系合金、Al−Zr系合金、Al−Mg−Si系合金等を適用し得る。メーカにおけるアルミニウム板の製造過程では、上記規格に適合するアルミニウムの鋳塊を製造し、このアルミニウム鋳塊を熱間圧延した後、必要に応じて焼鈍と呼ぶ熱処理を施し、冷間圧延により所定の厚さとされた帯状のアルミニウム板に仕上げる。このアルミニウム板はロール状に巻き取られてアルミコイルとされる。
【0033】
製造ライン10では、先ず、送出装置16により下流側へ送り出されたアルミウエブ12を、平坦性を改善するためにローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置(図示省略)によって形状を矯正して必要な平坦性を得る。
【0034】
矯正装置の下流側には、アルミウエブ12の搬送経路に沿って上面研磨装置18及び下面研磨装置20が順次配置されている。
【0035】
上面研磨装置18には、アルミウエブ12の上面に接するように支持された研磨ローラ22が設けられると共に、アルミウエブ12の下面に接するように一対のテンションローラ24が設けられている。研磨ローラ22は、そのローラ面が、例えば不織布により構成されており、研磨時にはローラ面の線速度がアルミウエブ12の搬送速度に対して十分大きくなるように高速回転される。このとき、研磨ローラ22の回転方向は、アルミウエブ12との接触部でのローラ面の移動方向がアルミウエブ12の搬送方向と同一となる順回転方向でも、またローラ面の移動方向がアルミウエブ12の搬送方向と反対となる逆回転方向の何れでもよい。また一対のテンションローラ24は、アルミウエブ12の搬送方向に沿って研磨ローラ22を挟むように配置され、アルミウエブ12を上方へ付勢し、アルミウエブ12の上面を所定の接触圧で研磨ローラ22のローラ面へ圧接させている。
【0036】
上面研磨装置18には、セラミック粒子等を含む研磨剤を水に分散させたスラリーを研磨ローラ22とアルミウエブ12との接触部へ供給するスラリー供給部(図示省略)が設けられており、このスラリー供給部はアルミウエブ12の研磨時に単位時間当たりに所定量のスラリーを供給する。このスラリー中の研磨材が研磨ローラ22によりアルミウエブ12の上面へ擦り付けられることにより、アルミウエブ12上面のミクロ的な凹凸が平均化されるように研磨されて表面粗さが小さくなっていく。
【0037】
尚、上面研磨装置18による研磨の研磨条件は、メーカから供給されるアルミウエブ12の初期表面粗さ、製造ライン10によるアルミウエブ12の搬送速度等により変化する。従って、アルミウエブ12の初期表面粗さ、搬送速度等に応じて研磨ローラ22の回転速度、研磨材の種類及び粒径等を設定すればよい。また、本実施形態では、1台の上面研磨装置18によってアルミウエブ12の上面を研磨しているが、複数台の上面研磨装置18をアルミウエブ12の搬送経路に沿って配置し、それぞれの上面研磨装置18により段階的にアルミウエブ12の上面を表面粗さが所定値以下となるまで研磨するようにしてもよい。
【0038】
上面が研磨されたアルミウエブ12は、上面研磨装置18の下流側に配置された下面研磨装置20により下面の表面粗さ(JIS中心線平均粗さ)が一定値以下となるように研磨される。ここで、下面研磨装置20の構造は、研磨ローラ22と一対のテンションローラ24がアルミウエブ12を介して上下逆に配置されている点を除いて、上面研磨装置18と同一であるので説明を省略する。尚、アルミウエブ12の下面の表面粗さは、0.25〜0.75μm以下とすることが好ましく、このための研磨条件(研磨ローラ22の回転速度、研磨材の種類及び粒径等)も上面の場合と同様、アルミウエブ12の初期表面粗さ、搬送速度等に応じて設定すればよい。
【0039】
研磨装置18、20により研磨されたアルミウエブ12は、研磨装置18、20の下流側で機械的又は電気化学的にその表面が粗面化される。このような粗面化方法としては、機械的な砂目立て法,電気化学的な砂目立て法などがあり、それらを単独で、あるいは適宜組合わせて粗面化を行うことができる。機械的な砂目立て法としては、例えば、ボールグレイン、ワイヤーグレイン、ブラシグレイン、液体ホーニング法などがある。また電気化学的砂目立て方法としては、交流電解エッチング法が一般的に採用されており、電解電流としては、普通の正弦波交流電流あるいは矩形波や、特殊交番電流などが用いられている。またこの電気化学的砂目立ての前処理として、アルミニウム板を苛性ソーダなどでエッチング処理をしても良い。
【0040】
製造ライン10には、粗面化処理が完了したアルミウエブ12に対して公知の陽極酸化処理を行う陽極酸化装置(図示省略)が設けられている。この陽極酸化装置は、アルミウエブ12の表面を公知の液中給電方式により陽極酸化してアルミウエブ12の表面に高い硬度を有する陽極酸化皮膜を形成する。このとき、アルミウエブ12の表面には、0.1〜10g/mの陽極酸化皮膜、より好ましくは0.3〜5g/mの陽極酸化皮膜が形成される。また陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって設定を変更する必要があるので一概には決定されないが、一般的には、電解液の濃度は1〜80質量%、液温は5〜70℃、電流密度は0.5〜60A/dm、電圧は1〜100V、電解時間は1sec〜5minの範囲内でそれぞれ設定される。
【0041】
陽極酸化装置の下流側には、図1に示すように、アルミウエブ12に対する感光性材料(フォトポリマー)の塗布装置26及び乾燥装置28がそれぞれ設置されている。図2に示すように、塗布装置26は、軸受部材62に回転可能に、且つアルミウエブ12に接触するように支持されたロッド64を有している。軸受部材62に隣接して堰部材66が設けられており、これらの間には塗布液供給路68が構成されている。この塗布液供給路68から供給された塗布液70(フォトポリマー)が、アルミウエブ12に接触して液溜まり72を形成する。そして、ロッド64が回転することにより、液溜まり72の塗布液70が掻き上げられてアルミウエブ12に転移される。このような構成とされた塗布装置26は、いわゆるバー塗布(あるいはロッド塗布)を行う塗布装置である。
【0042】
塗布装置26の下流側に配置された乾燥装置28には、防爆及び断熱構造とされた乾燥槽46が設けられると共に、この乾燥槽46内に複数本の案内ローラ48が配置されている。フォトポリマが転移されたアルミウエブ12は、案内ローラ48により上面側から案内されつつ乾燥槽46内を移動する。このとき、乾燥槽46内へ熱風50が供給されることにより、アルミウエブ12上のフォトポリマが乾燥されて感光層が形成される。
【0043】
フォトポリマの乾燥装置28の下流側には、本発明が適用されたポリビニルアルコール(PVA)の塗布装置30、及び乾燥装置32がそれぞれ設置されている。
【0044】
図3に示すように、塗布装置30は、アルミウエブ12が巻きかけられるバックアップローラ82と、このバックアップローラ82に隣接配置されたスライドビードコータ84と、で構成されている。スライドビードコータ84の上面は、バックアップローラ82に向かって下降し、下端がアルミウエブ12との間にわずかな隙間を構成するように形成された傾斜面(スライド面)86とされている。また、スライドビードコータ84の内部には、塗布液88(PVA)を貯留する貯留部90が設けられており、吐出スリット92に連通されている。図示しない流出装置によって、貯留部90内の塗布液88が吐出スリット92からスライド面86に流出され、スライド面86を流れて(スライドして)、アルミウエブ12に転移される。このような構成とされた塗布装置30は、いわゆるスライド塗布を行う塗布装置である。尚、本実施形態では、塗布液88が1種類のみ(PVA)であるため、貯留部90は図3に実線で示すように1つのみ設けられていれば十分であるが、複数の塗布液を多層に塗布する場合には、これに対応して、図3に二点鎖線で示すように貯留部90が複数設けられたものが使用される。
【0045】
塗布装置30の下流側に配置された乾燥装置32は、基本的にフォトポリマの乾燥装置28と同一構造とされており、その加熱槽56内を移動するアルミウエブ12を複数本の案内ローラ58により案内しつつ、アルミウエブ12上のPVAを熱風50によって乾燥する。これにより、アルミウエブ12上には、感光層を覆うように酸素遮断層としてのオーバーコート層が形成される。ただし、感光層とオーバーコート層とではそれぞれ適正な乾燥条件が異なるため、それぞれの乾燥条件に応じて乾燥槽46、56へ供給される熱風温度や乾燥槽46、56の搬送方向に沿った長さ等が設定されている。
【0046】
このようにして、本実施形態の製造ライン10では、感光層上にオーバーコート層が形成されることにより、フォトポリマ型平版印刷版の素材としてのウエブの製造が完了する。製造されたウエブはウエブ巻取装置38によりロール状に巻き取られてウエブロール36とされる。このウエブロール36は、フォトポリマ型平版印刷版の加工ライン(図示省略)のウエブ供給装置へ供給され、このウエブ供給装置により巻き出されて加工ラインの加工速度に対応する速度でラインの下流側へ供給される。
【0047】
ところで、本発明に係る塗布装置30は、塗布開始時に塗布液架橋(ビード)の架橋点を形成するための液滴噴射手段が設けられている。以下、液滴噴射手段について実施形態をあげて説明する。
【0048】
図4は、本実施形態の液滴噴射手段の一例としての液滴噴射ノズル100を設けた塗布装置30を示す平面図であり、図5はその側面図である。
【0049】
これらの図に示す液滴噴射ノズル100、100は、塗布液と同一又は塗布液に対して不活性な液体を供給する液体供給手段(不図示)に接続されており、液滴噴射ノズル100の先端から液滴を噴射できるようになっている。図4に示されるように、液滴噴射ノズル100は、アルミウエブ12の巾方向の両端部に対応するスライド面の上方に一つずつ配置されており、リップ94に対して斜めに配置され、若干内側に向けて液滴を噴射するようになっている。
【0050】
また、図5に示されるように、スライド面86は水平線に対して若干の角度α(例えば5°〜10°)を持って斜めに配置されており、塗布液88がスライド面86上をアルミウエブ12側に流下するようになっている。また、液滴噴射ノズル100は水平面に対して斜めに配置されており、その傾斜角度はスライド面86よりも大きくなるように配置されている。更に、液滴噴射ノズル100の先端は、リップ94とアルミウエブ12との隙間に向けて配置されており、液滴噴射ノズル100から噴射された液滴が、リップ94付近の塗布液88に吹き付けられるようになっている。
【0051】
液滴噴射手段としては、公知公用の液滴噴射手段が使用でき、例えば、各種ディスペンサ、液体噴射ノズル、注液器等が使用できる。また、液滴噴射ノズル100の噴射口の開口面積が、1mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。また、液滴噴射ノズル100の噴射口の形状は、特に限定されない。
【0052】
リップ94とアルミウエブ12との隙間に塗布液の架橋点を安定に形成させるためには、液滴噴射条件として、1滴当たりの液滴量をM(単位:mg)、液滴の噴射時間をT(単位:msec)とすると、T<8Mを満たすことが好ましい。
【0053】
更に、塗布開始時に、アルミウエブ12への厚塗りをより確実に抑制するための条件として、T<−1.6M+192を満たすことがより好ましい。
【0054】
液滴噴射ノズル100から噴射する液滴としては、特に限定されないが、水や一般的な有機溶媒、塗布液と相溶性がある塗布液それ自体、塗布液に含まれる溶媒、乾燥負荷を低減するメタノール等の低沸点溶媒等が好ましい。具体的には、水、メタノールが好ましい。
【0055】
また、液滴噴射方向は、塗布液が流下するスライド面86の上方からでも下方からでもよいが、特に、厚塗りを効果的に抑制するためには、スライド面86の上方から噴射することが好ましい。また、リップ94とアルミウエブ12との隙間に向けて噴射することがより好ましい。また、スライド面86の上方から噴射するのと、リップ94とアルミウエブ12との隙間に向けて噴射するのとを同時に行ってもよい。
【0056】
上記したような液滴噴射ノズル100は、不図示の退避手段によって矢印A方向(すなわち、バックアップローラ82に対して退避する側の斜め上方)に退避移動できるように構成することが好ましい。
【0057】
このような退避手段としては、例えば、矢印方向に配置された送りねじと、この送りねじを回転させるモータを設ける構成が挙げられる。上記の構成では、送りねじを液滴噴射ノズル100に螺合連結させ、モータを駆動させることによって、液滴噴射ノズル100を矢印A方向に駆動させて退避移動させることができる。尚、この構成に限定されることはない。
【0058】
液滴噴射ノズル100の退避位置としては、スライド面86上を流れる塗布液88に非接触であり、且つ、アルミウエブ12から離れた位置に設定されればよく、上記に限定されない。例えば、スライド面86上を流れる塗布液88の巾方向(ウエブの巾方向)から外れた位置に退避させてもよい。
【0059】
液滴噴射ノズル100の退避移動は、塗布開始後、所定時間内、例えば5秒以内に退避位置まで退避させることが好ましい。これにより、液滴噴射ノズル100から液滴が誤って塗布液に滴下される等の不具合も生じないので、定常状態での塗布を行うことができる。
【0060】
次に上記の如く構成された液滴噴射ノズル100の作用について説明する。
【0061】
塗布開始前、液滴噴射ノズル100は退避位置に配置される。この状態で、スライドビードコータ84の吐出スリット92から塗布液88を吐出すると、塗布液88はスライド面86上を流下し、リップ94とアルミウエブ12との隙間を通って落下する。この状態では、塗布液88はアルミウエブ12に接触することなく流れるので、アルミウエブ12に塗布液88は転移しない。
【0062】
次いで、塗布を開始する際に、液滴噴射ノズル100をリップ94に対して斜めの所定位置に配置する。所定位置に配置された液滴噴射ノズル100は、図5に示されるように、液滴噴射ノズル100から液滴を噴射する。
【0063】
そして、液滴が噴射されると、リップ94とアルミウエブ12との間で塗布液88の流れが変化し、液盛り上がり部96が形成される(図4参照)。そして、リップ94とアルミウエブ12との間に架橋点が形成され、塗布が開始される。
【0064】
この架橋点は、液滴噴射ノズル100の噴射口が配置された位置、即ち、アルミウエブ12の巾方向の両端部に形成され、この位置で塗布が開始される。
【0065】
架橋点を形成して塗布を開始した後は、液滴の噴射を停止するだけで、すぐに定常運転を行うことができる。
【0066】
図6(A)〜図6(C)は、塗布開始時におけるアルミウエブ12の塗布状況を示している。
【0067】
先ず、図6(A)に示すように、アルミウエブ12の巾方向の両端部で架橋点が形成され、塗布が開始される。以下、この点を塗布開始点Aという。両端部に塗布開始点A、Aが形成されると、アルミウエブ12が走行しているために、塗布液88は図6(B)に示す如く斜めに塗れ拡がる。そして、両側から塗れ拡がった部分が中間部で合流し、アルミウエブ12の全面で塗布が開始される。以下、塗れ拡がった部分を拡がり部B、合流した点を合流点Cとする。
【0068】
本実施形態によれば、スライド面86上の塗布液88を利用し、特定点に塗布液架橋を形成するので、塗布開始点Aでの塗布液88が過剰となることを抑制でき、塗布開始点Aでの厚塗りを抑制することができる。更に、塗布開始点Aでの厚塗りが抑制されることによって、拡がり部Bや合流点Cにおける厚塗りも抑制することができる。
【0069】
従って、厚塗りによる未乾の発生がなくなり、故障によるライン停止が減少するので、工程を安定化させることができる。また、乾燥の負荷を軽減することができるので、ライン速度を向上させることができ、効率を向上させることができる。
【0070】
ここで、液滴の代わりに、ウエブとスライド面との隙間に固体部材を介在させる方法もあるが、ウエブを損傷させる危険性があった。また、エアの吹き付けを利用して塗布液架橋を形成する方法では、エアにより塗布液が飛散する可能性もあった。
【0071】
これに対して、本実施の形態では、スライド面86上の塗布液88又はこれに不活性な液体からなる液滴を利用して、特定点で塗布液架橋を形成して塗布を開始するので、上述した危険性を回避できる。
【0072】
また、塗布開始後に液滴噴射ノズル100を退避位置に退避させることにより、スライド面86上の塗布液88に対して液滴噴射ノズル100が誤って接触したり、噴出口から液滴が垂れたりすることを防止でき、アルミウエブ12に一定の膜厚で塗布液88を塗布できる。
【0073】
本実施形態では、アルミウエブ12の巾方向の両端部に塗布開始点Aを形成したが、塗布開始点Aの個数や位置はこれに限定するものではない。例えば、図7(A)に示すように、巾方向の中央部に一つの液滴噴射ノズル100を設け、この液滴噴射ノズル100によって中央部に液盛り上がり部96を形成してもよい。この場合、巾方向の中央の一点で塗布開始点Aが形成され、この塗布開始点Aから両外側に向かって拡がり部Bが形成され、塗れ終わり点(合流点Cに相当)が巾方向の両端部に形成される。
【0074】
また、図7(B)は、巾方向の両端部を含む三点で塗布を開始する例である。この場合、三つの液滴噴射ノズル100…が設けられており、三点の塗布開始点Aが形成されるようになっている。尚、三点以上の塗布開始点Aを設ける場合には、巾方向において一定の間隔で塗布開始点Aを形成することが好ましい。これにより、各拡がり部Bや各合流点Cの厚さの偏りを防止できる。また、三点以上の塗布開始点Aを設ける場合には、全ての塗布開始点Aが同じ条件、同じタイミングで形成されるように、各液滴噴射ノズル100の噴射口の形状、サイズや取付け位置を等しくすることが好ましい。
【0075】
また、塗布開始点Aの個数は、液滴噴射ノズル100が増え過ぎると液盛り上がり部がかえって形成されにくくなることから、アルミウエブ12の巾が1000mm程度の場合には、塗布開始点Aの数が3〜5個になるように設定することが好ましい。
【0076】
以上、本発明に係る塗布方法及び装置の一例として平版印刷版原版の感光層上にオーバーコート層(PVA)を塗布する塗布方法及び装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0077】
例えば、本実施形態では、スライドビードコータに本発明を適用する例について説明したが、エクストルージョンコータにおいても本発明が適用できる。特に図示しないが、バックアップローラの側面に向かって開口した吐出スリットを備えたエクストルージョンコータと、バックアップローラに沿って搬送されるウエブとの間に塗布液架橋を形成する場合である。
【0078】
また本発明は、平版印刷版原版の製造分野に限らず、各種技術分野における塗布技術(電極材料、機能性フイルム、光学フイルム、磁性材料の塗布工程等)に適用することができる。
【実施例】
【0079】
次に、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下、図5の塗布乾燥機で、塗布テストを実施した。
【0080】
塗布液としては、水系酸化防止膜層形成液(液粘度10cp)を用いた。また、支持体は、陽極酸化皮膜を形成したアルミウエブ(ウエブ巾1000mm)を使用した。塗布条件は、L.S.(ライン速度)50〜150m/分、塗布量50cc/mで行った。
【0081】
塗布乾燥機において、送液巾1600mmでチャンバー内圧力300Paとし、リップ先端とウエブとの距離を0.3mmに設定して塗布した後、上下垂直風(ノズルスリット隙間2mm、ピッチ150mm、ノズル風速10m/sec、ノズル風温度150℃)で乾燥させた。
【0082】
以上の条件において、以下、1)及び2)のテストを実施した。
【0083】
1)液滴噴射位置
塗り付け時の厚塗りの有無について、本発明に係る塗り付け方法と従来の塗り付け方法とを比較した。更に、図8に示されるように、本発明を適用した場合の、適切な液滴噴射位置について検討した。
【0084】
同図において、アルミウエブ12上の位置Aから液滴を噴射させた場合を実施例1とした。また、リップ94とアルミウエブ12との隙間に、下方位置Bから液滴を噴射させた場合を実施例2とした。また、リップ94とアルミウエブ12との隙間に、上方位置Cから液滴を噴射させた場合を実施例3とした。また、スライド面86を流下する塗布液の上方位置Dから液滴を噴射した場合を実施例4とした。また、比較例として、従来のチャンバー内圧力を制御する方法を採用し、チャンバー85内の圧力を300Pa→0Paに変化させた。尚、図8において、チャンバー85は、リップ94とアルミウエブ12との隙間より下方の領域である。
【0085】
上記の各実施例1〜4、及び比較例について、厚塗りの有無及び塗り付けに必要な液滴使用量を測定した。厚塗りの評価は、厚塗りが多かったものを×、少なかったものを△、なかったものを○、で示した。この結果を表1に示す。
【表1】


表1に示されるように、従来の方法では、厚塗りが頻繁に発生したのに対して、本発明を適用した実施例1〜4では、いずれも厚塗りを大幅に抑制できた。
【0086】
中でも、本発明を適用した実施例1〜4において、塗り付けに必要な液滴量は、リップ94とアルミウエブ12との隙間に上方位置Cから噴射する実施例3が最少量であった。これにより、噴射位置Cから液滴を噴射することが好ましいことがわかった。
【0087】
一方、下方から液滴を噴射する実施例1、2においては、必要液適量がやや多くなる傾向がみられた。中でも、実施例1では、実用上問題ないレベルではあるが、やや厚塗りが発生することがあった。
【0088】
2)液滴噴射条件
液滴噴射ノズル100、100を、ウエブの巾方向の両端に対応する位置に設置し、液滴噴射条件(1滴あたりの液適量、噴射時間)を検討した。
【0089】
液滴噴射ノズル100としては、武蔵エンジニアリング製のディスペンサを使用した。1滴あたりの液適量を5〜110mgの範囲で変え、噴射時間を20〜160msecの範囲で変えて、塗布した場合の塗り付け状態を評価した。
【0090】
塗り付け状態の評価は、塗り付け不可能であったものを×、やや塗り付け不可能な場合もあったが実用上問題ないレベルのものを△、厚塗りがやや発生したが、実用上問題ないレベルのものを▽、厚塗りがなく安定して塗り付け可能であったものを○とした。この結果を図9のグラフに示す。
【0091】
図9に示されるように、1滴あたりの液滴量をM(単位:mg)、噴射時間をT(単位:msec)とすると、T<8の範囲であれば、塗布液架橋を形成でき、安定して塗り付けが可能であった。一方、T≧8Mの範囲あれば、塗布液架橋が安定して形成できないことがあり、やや塗り付けが不安定であった。
【0092】
更に、T<−1.6M+192の範囲であれば、厚塗りをほぼ完全に抑制できたが、T≧−1.6M+192の範囲であれば、一部で厚塗りが発生することがあった。
【0093】
以上から、T<8M且つT<−1.6M+192を満たす範囲であれば、ほぼ安定して塗り付けが可能であり、且つ厚塗りを抑制できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る塗布装置としてスライドビード型塗布装置を用いたウエブの製造ラインを示す構成図である。
【図2】ロッド塗布装置を示す構成図である。
【図3】スライドビード塗布装置を示す構成図である。
【図4】液滴噴射ノズルを用いた塗布装置を示す平面図である。
【図5】図4の塗布装置の側面図である。
【図6】塗布開示時の状態を説明する説明図である。
【図7】別の塗布開始方法を説明する説明図である。
【図8】本実施例の液滴噴射位置を説明する説明図である。
【図9】本実施例の結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0095】
10…製造ライン、12…アルミウエブ、30…塗布装置、82…バックアップローラ、84…スライドビードコータ、86…スライド面、88…塗布液、90…貯留部、92…吐出スリット、94…リップ、100…液滴噴射ノズル
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】 【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三


【公開番号】 特開2008−12428(P2008−12428A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−185728(P2006−185728)