トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般

【発明の名称】 コーティング方法、該コーティング方法により得られる耐火・断熱・防錆膜および該コーティング方法により得られる耐火・断熱・防錆加工鉄材
【発明者】 【氏名】市川 好男

【要約】 【課題】不燃・無煙性で耐熱・耐火性および断熱性に優れ、クラックや傷ができても錆びない防錆力を有する耐火・断熱・防錆膜を提供することを目的とする。

【構成】基材の表面に(イ)無機結合剤および(ロ)亜鉛末を主成分とする下塗り用組成物を塗布し、乾燥膜厚30〜150μmの塗膜を形成した後、(イ)無機結合剤、(ハ)該無機結合剤の硬化剤、(ニ)平均粒径が20〜350μmの中空状または発泡状の無機材および(ホ)平均粒径または平均長さが0.1〜50μmの非中空状または非発泡状の無機材を主成分とする上塗り用組成物を塗布し、乾燥膜厚1〜8mmの塗膜を形成するコーティング方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に(イ)無機結合剤および(ロ)亜鉛末を主成分とする下塗り用組成物を塗布し、乾燥膜厚30〜150μmの塗膜を形成した後、(イ)無機結合剤、(ハ)該無機結合剤の硬化剤、(ニ)平均粒径が20〜350μmの中空状または発泡状の無機材および(ホ)平均粒径または平均長さが0.1〜50μmの非中空状または非発泡状の無機材を主成分とする上塗り用組成物を塗布し、乾燥膜厚1〜8mmの塗膜を形成することを特徴とするコーティング方法。
【請求項2】
(イ)無機結合剤が、SiO成分を15〜45重量%含有する第4級アンモニウムシリケートである請求項1記載のコーティング方法。
【請求項3】
硬化剤が、マグネシウム化合物、カルシウム化合物および亜鉛化合物の群から選ばれた少なくとも1種である請求項1または2記載のコーティング方法。
【請求項4】
(ニ)無機材が中空セラミックバルーン、シラスバルーン、中空ガラスおよび発泡セラミックスの群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3いずれかに記載のコーティング方法。
【請求項5】
(ホ)無機材が、不水溶性である、金属酸化物、金属水酸化物、金属チッ化物、金属炭化物、炭酸金属塩およびケイ酸塩の群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜4いずれかに記載のコーティング方法。
【請求項6】
下塗り用組成物において、(イ)成分が15〜35重量%、(ロ)成分が85〜65重量%(ただし、(イ)+(ロ)=100重量%)である請求項1〜5いずれかに記載のコーティング方法。
【請求項7】
上塗り用組成物において、(イ)成分が22〜30重量%、(ハ)成分が3〜10重量%、(ニ)成分が15〜30重量%、(ホ)成分が20〜35重量%(ただし、(イ)+(ハ)+(ニ)+(ホ)=100重量%)である請求項1〜5いずれかに記載のコーティング方法。
【請求項8】
基材が鉄材である請求項1〜7いずれかに記載のコーティング方法。
【請求項9】
請求項1〜8いずれかに記載のコーティング方法により得られる耐火・断熱・防錆膜
【請求項10】
請求項8記載のコーティング方法により得られる耐火・断熱・防錆加工鉄材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング方法、該コーティング方法により得られる耐火・断熱・防錆膜および該コーティング方法により得られる耐火・断熱・防錆加工鉄材に関する。さらに詳細には、基材の表面に耐熱性に優れた第4級アンモニウムシリケートと反応して硬化する防錆顔料の亜鉛末を主成分とする下塗り用組成物を塗布し、乾燥膜厚30〜150μmの耐水・耐熱・耐候性塗膜を形成し、この上に第4級アンモニウムシリケートと硬化剤、断熱性・耐熱性に優れた中空状または発泡状無機材および非中空状または非発泡状の無機材を主成分とする上塗り用組成物を塗布し、乾燥膜厚1〜8mmの親水性・呼吸性塗膜を形成することを特徴とするコーティング方法、該コーティング方法により得られる耐火・断熱・防錆膜および該コーティング方法により得られる耐火・断熱・防錆加工鉄材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄材の耐火・断熱被覆法として発泡樹脂の厚膜加工、セラミックファイバーシートやガラス繊維による被覆法などがあるが、いずれも防錆力がなく、また容積の増加や強度、耐久性、作業性、コストなどに問題を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術の課題を背景になされたものであり、不燃・無煙性で耐熱・耐火性および断熱性に優れ、クラックや傷ができても錆びない防錆力を有し、高硬度で耐候性にも優れ、さらに水性で硬化が速く、薄膜加工で作業性が良いため、低コストが可能な耐火・断熱・防錆加工膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、基材の表面に、(イ)無機結合剤と(ロ)亜鉛末を主成分とする下塗り用組成物を塗布し、乾燥膜厚30〜150μmの塗膜を形成した後、(イ)無機結合剤、(ハ)該無機結合剤の硬化剤、(ニ)平均粒径が20〜350μmの中空状または発泡状の無機材および(ホ)平均粒径または平均長さが0.1〜50μmの非中空状または非発泡状の無機材を主成分とする上塗り用組成物を塗布し、乾燥膜厚1〜8mmの塗膜を形成することを特徴とするコーティング方法に関する。
ここで、上記(イ)無機結合剤は、SiO成分を15〜45重量%含有する第4級アンモニウムシリケートであることが好ましい。
さらに、上記(ハ)硬化剤は、マグネシウム化合物、カルシウム化合物および亜鉛化合物の群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記(ニ)無機材は中空セラミックバルーン、シラスバルーン、中空ガラスおよび発泡セラミックスの少なくとも1種であることが好ましい。
またさらに、上記(ホ)無機材は不水溶性である金属酸化物、金属水酸化物、金属チッ化物、金属炭化物、炭酸金属塩およびケイ酸塩の群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の下塗り用組成物は、(イ)成分が15〜35重量%、(ロ)成分が85〜65重量%(ただし、(イ)+(ロ)=100重量%)であることが好ましい。
本発明の上塗り用組成物は、(イ)成分が22〜30重量%、(ハ)成分が3〜10重量%、(ニ)成分が15〜30重量%、(ホ)成分が20〜35重量%(ただし、(イ)+(ハ)+(ニ)+(ホ)=100重量%)であることが好ましい。
上記基材としては、鉄材が好ましい。
次に、本発明は、上記コーティング方法により得られる耐火・断熱・防錆膜に関する。
また、本発明は、上記コーティング方法により得られる耐火・断熱・防錆加工鉄材に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明のコーティング方法によれば、塗膜に亀裂が入ったり、傷ができて3〜4mm幅の鉄地が露出しても赤錆が発生することがない強い防錆力を有し、しかも塗膜面に1〜2時間以上連続1,000℃以上の火炎を吹き付けても亜鉛が溶融することがない耐火・断熱・防錆膜を得ることができ、本発明の耐火・断熱・防錆膜を用いると、耐火・断熱・防錆性および耐水性、耐候性、乾燥性(結露防止性)に優れた加工鉄材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、基材の表面に(イ)無機結合剤および(ロ)亜鉛末を主成分とする下塗り用組成物を塗布し、乾燥膜厚30〜150μmの塗膜を形成した後、(イ)無機結合剤、(ハ)該無機結合剤の硬化剤、(ニ)平均粒径が20〜350μmの中空状または発泡状の無機材および(ホ)平均粒径または平均長さが0.1〜50μmの非中空状または非発泡状の無機材を主成分とする上塗り用組成物を塗布し、乾燥膜厚1〜8mmの塗膜を形成するコーティング方法に関する。
以下、本発明の組成物を構成する各成分ごとに以下に説明する。
【0007】
下塗り用組成物
下塗り用組成物は、(イ)無機結合剤と(ロ)亜鉛末を主成分とし、基材の表面に塗布される。下塗り用組成物は、卑な金属による犠牲防食性を生かした耐熱防錆の役目を果たす。
【0008】
(イ)無機結合剤
(イ)無機結合剤は、不燃・耐熱性を保持するものであり、好ましくは、SiO成分を15〜45重量%含有する第4級アンモニウムシリケートが好ましい。その他、無機結合剤としては、アルカリ金属塩などを使用することができる。
【0009】
第4級アンモニウムシリケート:
第4級アンモニウムシリケートは、SiO成分を15〜45重量%含有するもので、本発明の(イ)無機結合剤における主結合剤として使用されるもので、下記の一般式で表される。
(RN)・nSiO(ただし、Rは炭素数1以上のアルキル基であり、nは、1以上の整数である。)
この第4級アンモニウムシリケートは、アルカリ性を有し、下記式(1)〜(2)のように、硬化剤と反応して基材に強く密着する。そして、形成される塗膜に耐火性、耐熱性、耐水性、耐候性、親水性および通気性を与えるものである。
【0010】


【0011】


【0012】
第4級アンモニウムシリケートの具体例としては、ジメチルエタノールアンモニウムシリケート、モノメチルトリプロパノールアンモニウムシリケート、ジメチルジプロパノールアンモニウムシリケート、モノエチルトリプロパノールアンモニウムシリケートなどの液状のシリケートが挙げられる。これら第4級アンモニウムシリケートは(1)希釈したケイ酸ナトリウムを水素型陽イオン交換樹脂と接触させて得た活性シリカ溶液に第4級アンモニウム水酸化物を加え、所定の濃度まで濃縮する方法、または(2)第4級アンモニウム水酸化物とシリカヒドロゾルとを反応させる方法などにより容易に得られる。ここで、第4級アンモニウム水酸化物は、通常、アンモニアまたはアミン類にアルキレンオキサイドを付加する方法、または第4級アミン塩を陰イオン交換樹脂により脱イオンする方法などにより得られるが、生成物中に、第3級、第2級あるいは第1級のアミン類が少量含まれたものも使用することができ、それを用いて得られる第4級アンモニウムシリケートも本発明に用いられる(イ)無機結合剤に使用することができる。
【0013】
なお、第4級アンモニウムシリケート中には、SiOが15〜45重量%の範囲で含まれていることが必要で、好ましくは20〜30重量%である。15重量%未満では、第4級アンモニウムシリケートの必要量が多くなりすぎたり、水が増えて乾燥が遅くなったりし、一方、45重量%を超えると、逆に密着力が弱くなったり、また亀裂が入ったりして好ましくない。
【0014】
上記第4級アンモニウムシリケートの具体例としては、(株)日板研究所製の商品名NS−25(水溶液、SiO濃度=約25重量%)、NS−20(水溶液、SiO濃度=約20重量%)、日産化学工業(株)製の商品名キャス25(水溶液、SiO濃度=約25重量%)などであり、いずれもpHは11〜12である。これらの第4級アンモニウムシリケートは、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0015】
(ロ)亜鉛末
下塗り用組成物に使用される(ロ)亜鉛末は、防錆顔料として使用される。(イ)無機結合剤の成分の硬化剤としても使用され、耐熱性の強力な防錆膜を作る。(ロ)亜鉛末の防錆力は、卑な金属である亜鉛の犠牲防食性によるもので、(イ)無機結合剤とで作る下塗り用塗膜は、親水性になるため、犠牲防食性を活かす膜になる。
(ロ)亜鉛末の平均粒径は、1〜10μm、好ましくは、2〜5μmである。1μm未満であると、必要な膜厚が得られなかったり、結合剤が不足したりする。一方、10μmを超えると、防錆力が低下したりして好ましくない。
好ましい具体例としては、三井金属塗料化学(株)製(平均粒径 3μm)のLS 4などが挙げられる。
【0016】
下塗り用組成物に含まれる、(イ)無機結合剤と(ロ)亜鉛末の割合は(イ)成分が15〜35重量%、好ましくは18〜25重量%、(ロ)成分が85〜35重量%、好ましくは82〜75重量%(ただし、(イ)+(ロ)=100重量%)である。(イ)成分が15重量%未満では、結合力が不足し、一方、35重量%を超えると、塗膜に割れが生じたり、(ロ)成分が減少して好ましくない。
なお、下塗り用組成物の固形分濃度は、通常、70〜90重量%、好ましくは80〜85重量%であり、該固形分濃度は水またはグリコール類などで調整することができる。
下塗り用組成物を用いた塗膜の厚さは、30〜150μmであり、好ましくは、50〜120μmである。塗膜の厚さが、30μm未満では、防錆力が不足したり、耐久性が低下したりし、一方150μmを超えると、塗膜に割れが生じたり、上塗り性が悪化したりして好ましくない。
下塗り用組成物には、(イ)および(ロ)成分以外に、必要に応じて、水および/または親水性有機溶剤などが15〜35重量%程度含まれていても良い。
【0017】
上記水および/または親水性有機溶剤は、下塗り用組成物の粘度調整や乾燥時間、可使時間の調節の調節効果を有する。水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水を使用できる。また、水には、上記(イ)成分のシリケートに含まれる水なども包含される。
上記親水性有機溶剤は、水と相溶する有機溶剤であり、下塗り用組成物の固形分濃度および粘度の調整剤、さらに乾燥速度調整剤、あるいは不凍液剤として使用する。上記親水性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類などが挙げられる。
アルコール類としては、炭素数1〜8の脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、メチルカルビトールなどが挙げられる。グリコール類としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙られる。上記溶剤は、1種単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。好ましい親水性有機溶剤は、i−プロパノール、メチルカルビトール、エチレングリコールの単独またはそれらの2種以上の混合溶剤である。
【0018】
本発明の下塗り用組成物の調製方法は、(イ)成分に粉末状の(ロ)成分を混ぜて簡単に撹拌すればよい。
【0019】
上塗り用組成物
上塗り用組成物は、(イ)無機結合剤、(ハ)該無機結合剤の硬化剤、(ニ)平均粒径が20〜350μmの中空状または発泡状の無機材および(ホ)平均粒径または平均長さが0.1〜50μmの非中空状または非発泡状の無機材を主成分とし、下塗り用組成物による塗膜の上に塗膜を形成する。この上塗り用組成物は、耐火・断熱・耐候性の膜および上塗り膜の役目を果たす。
【0020】
(ハ)硬化剤
上塗り用組成物に含まれる(ハ)硬化剤は、上塗り用組成物中の(イ)無機結合剤の第4級アンモニウムシリケートと一対をなすもので、混合されると短時間で反応して耐水性に優れた強固な塗膜を形成するものであり、さらに得られた塗膜の耐火性、耐熱性、耐候性に優れたものにする効果がある。
成分としては、マグネシウム化合物、カルシウム化合物および亜鉛化合物の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。具体的には、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛などであり、この成分を1種単独でも2種以上組み合わせて用いても良い。
【0021】
なお、(ハ)硬化剤成分の平均粒径は0.1〜20μm、好ましくは0.5〜5μmである。0.1μm未満であると、第4級アンモニウムシリケートとの反応が早すぎたり、また粘度が上昇したりする。一方、20μmを超えると、上塗り用組成物の安定性が損なわれたり、反応が遅すぎたりして好ましくない。
【0022】
(ハ)硬化剤の含有量は、第4級アンモニウムシリケートのSiO成分に対し、60〜120重量%が好ましく、さらに好ましくは、80〜100重量%である。60重量%未満であると、第4級アンモニウムシリケートとの反応が遅すぎたり、不十分であったりする。一方、120重量%を超えると反応が速すぎたり、また塗膜に亀裂が入ったりして好ましくない。
【0023】
(ニ)中空状または発泡状の無機材
(ニ)中空状または発泡状の無機材は、耐火断熱性の付与、軽量化、厚膜の収縮による割れ防止を目的として上塗り用組成物に使用されるものである。
(ニ)中空状または発泡状の無機材としては、平均粒径が20〜350μm、好ましくは、かさ比重が0.2〜0.6の中空セラミックバルーン、シラスバルーン、中空ガラスおよび発泡セラミックスの少なくとも1種が挙げられ、平均粒径が大きいものと小さいものを使用することにより、膜の収縮による割れを防止することができる。(ニ)中空状または発泡状の無機材の平均粒径は、好ましくは60〜350μmである。
(ニ)無機材としては、好ましくは閉鎖型中空体であり、例えば、強度も優れている(株)日板研究所製の中空セラミックバルーンが挙げられる。
【0024】
(ホ)非中空状または非発泡状の無機材
(ホ)非中空状または非発泡状の無機材は、耐火性、断熱性、高耐熱性および通気性に優れた塗膜を作るため、また、(ニ)無機材の間隙を埋めるため、さらに塗膜への着色、化粧性などを与えるために上塗り用組成物中に用いられるものである。
(ホ)非中空状または非発泡状の無機材としては、中空または発泡状でなく、平均粒径または平均長さが0.1〜50μm、好ましくは0.3〜50μmであり、かつ不水溶性である、金属酸化物、金属水酸化物、金属チッ化物、金属炭化物、炭酸金属塩、ケイ酸塩およびその他の鉱物などの群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。具体的には、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー、ケイ酸マグネシウム、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、チッ化ケイ素、酸化鉄などが挙げられる。
【0025】
本発明に用いられる上塗り用組成物は、(イ)無機結合剤、(ハ)硬化剤、(ニ)中空状または発泡状の無機材、(ホ)非中空状または非発泡状の無機材、上記水および/または親水性有機溶剤のほかに必要に応じて各種界面活性剤、分散剤、樹脂エマルジョン、合成ゴムエマルジョン、防カビ材、防水剤、染料や顔料、その他の添加剤を含むことができる。
【0026】
上塗り用組成物において、(イ)成分は22〜30重量%、(ハ)成分は3〜10重量%、(ニ)成分は15〜30重量%、(ホ)成分は20〜35重量%(ただし、(イ)+(ハ)+(ニ)+(ホ)=100重量%)である。
(イ)成分が22重量%未満では、結合力が不足し、一方35重量%を超えると、塗膜が割れたり、厚膜ができなかったりする。
(ハ)成分が3重量%未満では、強度が不足したり、耐水性が低下し、一方10重量%を超えると、硬化が早くなりすぎ、作業性が低下したりして好ましくない。
(ニ)成分が15重量%未満では、耐火性・断熱性が不足し、一方30重量%を超えると、結合力が低下したり、硬度が低すぎたりして好ましくない。
(ホ)成分が20重量%未満では、割れやすくなったり、造膜性が悪くなったりし、一方35重量%を超えると、結合力が低下し、硬度が低すぎたりして好ましくない。
上塗り用組成物の固形分濃度は、通常、55〜75重量%、好ましくは60〜70重量%であり、該固形分濃度は、水または親水性有機溶剤で調整することができる。
上塗り用組成物による塗膜の厚さは、1〜8mmであり、好ましくは、2〜6mmである。塗膜の厚さが、1mm未満では、耐火性、断熱性が不足し、一方、8mmを超えると塗膜に割れが生じたり、加工が困難になったりし好ましくない。
【0027】
本発明の上塗り用組成物は、例えば(イ)成分に(ホ)成分および水または親水性有機溶剤を加えて撹拌して均一な分散液を作製し、これに(ニ)成分を加えて軽く撹拌したのち、(ハ)成分を加えて軽く撹拌して調製すればよい。
【0028】
次に、基材の表面への本発明の耐火・断熱・防錆膜の形成方法について説明する。
基材の表面に上記下塗り用組成物を塗布し、常温硬化または低温加熱させて厚さ30〜150μm、好ましくは50〜100μmの塗膜を形成した後、上記上塗り用組成物を塗布し、常温硬化または低温加熱硬化させて厚さ1〜8mm、好ましくは2〜6mmの通気性のある塗膜を形成する。
本発明に用いられる下塗りおよび上塗り用組成物は、水性で取り扱いやすく、塗布後、常温下でも短時間で硬化し、作業性に優れている。したがって、基材に塗布し、60〜100℃、好ましくは70〜80℃で、5〜20分、好ましくは10〜15分加熱乾燥、または常温下で3〜6時間、好ましくは4〜5時間程度、乾燥して硬化させる。基材面への組成物の塗布には、エアスプレー、ヘラ、コテ、ローラーなどの塗装手段を用いることができる。本発明に用いられる組成物により得られる塗膜は通気性であるため、塗装に際しては、従来のようにピンホールに注意することなく、通常、1回塗りで仕上げることができるが、2回以上塗布することもできる。
【0029】
ここで、上記組成物を基材の表面に塗布する量は、1回あたり、固形分換算で下塗り用組成物が250〜1,200g/m、好ましくは400〜1,000g/m、上塗り用組成物が1.5〜6.5kg/m、好ましくは2〜5kg/mである。通常、総計塗布量は、固形分換算で1.8〜7.7kg/m、好ましくは2〜5kg/mである。総計塗布量が、固形分換算で1.8kg/m未満であると、膜が薄すぎて本発明の塗膜の性能が発現し難い。一方、7.7kg/mを超えると、割れやすくなったりして好ましくない。
【0030】
本発明の対象となる基材は、鉄材のほか、ステンレス、合金鉄などが挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、特許請求の範囲を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中、部および%は、特に断らない限り重量基準である。
【0032】
組成物1,2の調製
表1に示す1,2の2種類の組成物を作成した。
組成物1(下塗り用組成物)は、攪拌タンクに(a)および(f−2)、(g−2)成分をいれ、軽く攪拌した後、(b)成分を加えて5分間低速攪拌して調製した。
組成物2(上塗り用組成物)は、(c−1)および(f−1)、(f−2)、(g−1)、(g−2)成分を入れ、軽く攪拌しながら(e−1)、(e−2)成分、次に(d)成分を加え、最後に(c−2)成分を入れて10分間低速攪拌して調製した。
【0033】
なお、表1中の記号は以下のものを表す。
(a)水性無機結合剤1:第4級アンモニウムシリケート(株)日板研究所製 NS−20(水溶液 SiO濃度=約25%)
(b)亜鉛末:三井金属塗料化学(株)製(平均粒径 3μm)
(c)水性無機結合剤2
(c−1)第4級アンモニウムシリケート:(株)日板研究所製 NS−25(水溶液 SiO濃度=約25%)
(c−2)炭酸マグネシウム:(平均粒径 1.5μm)
(d)無機材1 中空セラミックス:(株)日板研究所製(平均粒径 50〜250μm)
(e)無機材2
(e−1)ケイ酸カルシウム:(平均長さ=15μm 針状)
(e−2)チタン酸カリウム:(平均径=0.2〜0.5μm ウィスカー)
(f)溶剤
(f−1)イオン交換水
(f−2)プロピレングリコール
(g)その他の添加剤成分
(g−1)アクリル樹脂エマルジョン:大日本インキ化学工業(株)製(固形分約50%)
(g−2)分散剤:楠本化成(株)製 ディスパロン
【0034】
【表1】


【0035】
耐火・断熱・防錆加工鉄材の作成
本発明の性能を評価するために耐火・断熱・防錆加工鉄材の試験片作成を行なった。
まず、300×200×1,2mmおよび300×200×2mmの普通鋼板を用意し、両面をアルカリ脱脂した後、両面に上記のとおり調製した組成物1(下塗り用組成物)を、エアスプレーにてコートし、室温で3時間乾燥した後、片面に組成物2(上塗り用組成物)をヘラにてコートし、室温で72時間乾燥して試験片を作成した。この内容を表2に示す。
【0036】
【表2】


【0037】
次に各種物性試験を行なうため、150×75×1.2mmの普通鋼板を用意し、両面をアルカリ脱脂した後、両面に組成物1を、エアスプレーにてコートし、室温で3時間乾燥した後、両面に組成物2をヘラにてコートし、室温で72時間乾燥して試験片を作成した。この内容を表3に示す。
【0038】
【表3】


【0039】
実施例1
表2の試験片TP−1およびTP−2を用いて、耐火構造性能(建築基準法第2条第7号)に必要な耐火性能試験に準ずる試験を行なった。試験方法を図1および図2に示す。図1に示すように試験片TP−1およびTP−2を450×100×5mmのステンレス板で挟み、両端を棒ネジで締め、圧力を加えて固定した。図1の状態に図2のように2台のガスバーナーで90分間、900〜1,000℃で加熱し、試験片の状態を観察し、図2に示す非加熱面4ヶ所の温度を熱電対により測定した。また加熱終了後24時間放置して試験片の状態を観察した。加熱面および非加熱面の状態を表4に示す。
【0040】
【表4】


【0041】
実施例2
試験片TP−3を用いて物性試験を実施した。
【0042】
密着性:JIS K−5400 基盤目試験に準拠した。
硬度:JIS K−5400 鉛筆引っかき試験に準拠した。
耐衝撃性:JIS K−5400 (1/2インチ、500g/20cm落下)に準拠した。
耐熱性:電気炉内で500℃、8時間保持した後、塗膜の外観を観察した。
耐温水性:60℃の温水中に7日間浸漬した後、塗膜の硬度を測定した。
促進耐候性:QUV試験(UV照射70℃/8時間結露50℃/4時間繰返し)200時間終了後の塗膜の式差を測定した。式差が5以下であると耐候性に優れると評価できる。
防錆性:テストピースの両面に焼く2mm幅のクロスカット(鋼板露出)を入れ、塩水噴霧480時間した後、外観を観察した。
【0043】
物性試験結果を表5に示す。










【0044】
【表5】


【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のコーティング方法によれば、不燃・無煙性で耐熱・耐火性および断熱性に優れ、クラックや傷ができても錆びない防錆力を有し、高硬度で耐候性にも優れ、さらに水性で硬化が速く、薄膜加工で作業性の良い塗膜を形成することができるので、該塗膜は鉄材の他、ステンレス、合金鉄などにも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】試験片をステンレス板で挟み、両端を棒ネジで固定した状態の説明図である(実施例1)。
【図2】図1の試験片を、ガスバーナーを用いて加熱する方法の説明図である(実施例1)。
【符号の説明】
【0047】
a ステンレス加圧板
b 棒ネジ
c ボルト
d 試験片
e ガスバーナー
3〜6 熱電対温度測定場所
【出願人】 【識別番号】506228319
【氏名又は名称】藤井 次郎
【出願日】 平成18年7月3日(2006.7.3)
【代理人】 【識別番号】100085224
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 重隆


【公開番号】 特開2008−12376(P2008−12376A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−183187(P2006−183187)