トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般

【発明の名称】 チップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法。
【発明者】 【氏名】山川 貴紀

【氏名】盛島 泰正

【氏名】石渡 伸一

【要約】 【課題】レーザーマーキングの印字の目視による視認性に優れ、またダイシングテープに貼り付けた後およびピックアップした後でも印字の視認性が良好なチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法を提供する。

【構成】半導体チップ裏面に保護膜を形成する方法において、少なくとも2層の保護膜形成層からなり、最外層と最外層以外の層の色が異なるチップ用保護膜形成用シートが半導体裏面に貼り合わされ、レーザー照射で最外層が部分的に削り取られ、色の異なる最外層以外の層の露出部が形成され、この露出部によりマーキングすることを特徴とするチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ裏面に保護膜を形成する方法において、少なくとも2層の保護膜形成層からなり、最外層と最外層以外の層の色が異なるチップ用保護膜形成用シートが半導体裏面に貼り合わされ、レーザー照射で最外層が部分的に削り取られ、色の異なる最外層以外の層の露出部が形成され、この露出部によりマーキングすることを特徴とするチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法。
【請求項2】
前記チップ用保護膜形成用シートのチップに接する層が硬化性接着剤層であることを特徴とする請求項1に記載のチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法。
【請求項3】
前記チップ用保護膜形成用シートの最外層には顔料あるいは染料が含まれ、最外層以外の層には顔料あるいは染料が含まれていないことを特徴とする請求項1または2に記載のチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法。
【請求項4】
前記チップ用保護膜形成用シートの最外層の厚さは、最外層以外の層の厚さより薄く、かつ、0.1〜50μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ裏面に効率よく保護膜を形成でき、かつチップの製造効率の向上が可能なチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法に関し、特にいわゆるフェースダウン(face down)方式で実装される半導体チップの製造に用いられるチップ保護膜形成用シートによる保護膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式では、チップの回路面側に導通を確保するためのバンプと呼ばれる凸部が形成されてなるチップを用い、回路面側の凸部が基台に接続する構造となる。
【0003】
このような半導体装置は、一般的には次のような工程を経て製造されている。
(1)半導体ウエハの表面にエッチング法等により回路を形成し、回路面の所定位置にバンプを形成する。
(2)半導体ウエハ裏面を所定の厚さまで研削する。
(3)リングフレームに張設されたダイシングテープに半導体ウエハ裏面を固定し、ダイシングソーにより回路毎に切断分離し、半導体チップを得る。
(4)半導体チップをピックアップし、フェースダウン方式で所定の基台上に実装し、必要に応じチップを保護するために樹脂封止またはチップ裏面に樹脂コーティングを施し、半導体装置を得る。
【0004】
前記樹脂封止は、適量の樹脂をチップ上に滴下・硬化するポッティング(potting)法や、金型を用いたモールド法などにより行われる。しかし、ポッティング法では適量の樹脂を滴下することが難しく、またモールド法では金型の洗浄等が必要になり、設備、運転に費用がかかる。
また、樹脂コーティングは、適量の樹脂を均一に塗布することが難しいため、品質にばらつきがでることがある。したがって、均一性の高い保護膜を、チップ裏面に簡便に形成できる技術の開発が要望されている。
【0005】
さらに、上記(2)工程の裏面研削では、機械研削によってチップ裏面に微小な筋状の傷が形成されるが、この微小な傷は、(3)のダイシング工程やパッケージングの後に、クラック発生の原因となることがある。このため、従来は、機械研削後に、微小な傷を除くためのケミカルエッチングが必要になる場合があった。しかし、ケミカルエッチングには、もとより設備費、運転費が必要になり、コスト増の原因となる。
【0006】
したがって、機械研削によってチップ裏面に微小な傷が形成されたとしても、かかる傷に起因する悪影響を解消する技術の開発が要望されている。
この問題を解決するために、均一性の高い保護膜を、チップ裏面に簡便に形成でき、しかも機械研削によってチップ裏面に微小な傷が形成されたとしても、かかる傷に起因する悪影響を解消できるチップ用保護膜形成用シートが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2004−214288号公報
【特許文献2】特開2004−260190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまで、樹脂封止されたチップを含む半導体装置では、封止樹脂の表面に品番等がレーザーマーキング法などにより印字されることがある。レーザーマーキング法とは、レーザー光により樹脂表面に印字を行う技術である。特許文献1のチップ保護膜形成用シートでは、レーザーマーキングの印字の認識性が良好である旨を開示している。しかしながら、この場合の認識性はコントラストと光の反射率の差を顕微鏡搭載のCCDカメラを用い認識するもので、目視による視認性は十分ではなく、また、レーザーマーキングで印字した後、(1)ダイシングテープに貼り付け、(2)チップに個片化(ダイシング)し、(3)チップをピックアップする工程を行う間に、印字が劣化しピックアップ後の視認性がさらに低下するといった問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、レーザーマーキングの印字の目視による視認性に優れ、またダイシングテープに貼り付けた後およびピックアップした後でも印字の視認性が良好なチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために鋭意検討した結果、少なくとも2層からなり最外層とそれに接した色が異なる内層とを含むチップ用保護膜形成用シートを用い、レーザー光により最外層を削り取り色の異なるそれ以外の層を露出させることによって、マーキングの印字の視認性を向上させることができ、その後の加工工程でも印字の劣化を生じず、視認性の低下を招かないことを見出した。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)半導体チップ裏面に保護膜を形成する方法において、少なくとも2層の保護膜形成層からなり、最外層と最外層以外の層の色が異なるチップ用保護膜形成用シートが半導体裏面に貼り合わされ、レーザー照射で最外層が部分的に削り取られ、色の異なる最外層以外の層の露出部が形成され、この露出部によりマーキングすることを特徴とするチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法、
(2)前記チップ用保護膜形成用シートのチップに接する層が硬化性接着剤層であることを特徴とする(1)に記載のチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法、
(3)前記チップ用保護膜形成用シートの最外層には顔料あるいは染料が含まれ、最外層以外の層には顔料あるいは染料が含まれていないことを特徴とする(1)または(2)に記載のチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法、および、
(4)前記チップ用保護膜形成用シートの最外層の厚さは、最外層以外の層の厚さより薄く、かつ、0.1〜50μmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のチップ用保護膜形成用シートによる保護膜形成方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保護膜のチップへの接着力が充分であり、レーザーマーキングの印字の視認性に優れ、ダイシングテープに貼り付けた後でも視認性に優れている良好な保護膜を形成することができる。また、ダイシング、ピックアップ工程の後でも印字の劣化が少なく視認性が低下しない保護膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の保護膜形成方法で使用するチップ用保護膜形成用シートは、少なくとも2層以上の保護膜形成層からなり、最外層とそれ以外の層の色が異なるものからなる。以下、本発明で使用するチップ用保護膜形成用シートについて、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
図1に示すように、本発明で使用するチップ用保護膜形成用シート1は、少なくとも2層の保護膜形成層2、3からなり、必要に応じて片面または両面に剥離シート4が仮着されていてもよい。したがって、本発明で使用するチップ用保護膜形成用シート1を構成する保護膜形成層の最外層以外の層3は、単層のみではなく複数の層から構成されていてもよい。
【0013】
本発明のチップ用保護膜形成用シート1は、その使用の前に最外層2およびそれ以外の層3を保護する目的で、片面または両面に剥離シート4を仮着させていてもよい。
剥離シート4としては、たとえばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢ビフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってよい。
【0014】
さらに剥離シートの表面張力は、好ましくは40mN/m以下、特に好ましくは35mN/m以下であることが望ましい。このような表面張力の低い剥離シートは、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、またシートの表面にシリコーン樹脂等を塗布して離型処理を施すことで得ることもできる。
剥離シートの膜厚は、通常は5〜300μm、好ましくは10〜200μm、特に好ましくは20〜150μm程度である。
【0015】
本発明で使用するチップ用保護膜形成用シート1の保護膜形成層は、最外層2とそれ以外の層3の色が異なる状態であればその性質、材質等は特に限定されないが、チップに接する層はチップと接着する機能を有するものである。製造工程やコスト、印字処理等の点から熱硬化性成分等を含んだ硬化性保護膜形成層であることが好ましい。
【0016】
保護膜形成層の最外層2およびそれ以外の層3を構成する熱硬化性成分としては、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等およびこれらの混合物が挙げられる。特に本発明では、エポキシ樹脂、フェノール樹脂ならびにこれらの混合物が用いられるのが好ましい。
【0017】
本発明のシートで使用されるエポキシ樹脂は、硬化して接着作用を呈するものであれば特に制限はないが、二官能基以上で、好ましくは分子量が5000未満、より好ましくは3000未満のエポキシ樹脂が使用できる。また、好ましくは分子量が500以上、より好ましくは800以上のエポキシ樹脂が使用できる。
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジリエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジリエーテル化物、フェノール類のジグリシジリエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物などの二官能エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。また、多官能エポキシ樹脂や複素環含有エポキシ樹脂等、一般に知られているものを適用することもできる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。さらに、特性を損なわない範囲でエポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもよい。
【0018】
より具体的には、例えば市販のものでは、エピコート807,エピコート815),エピコート825,エピコート827,エピコート828,エピコート834,エピコート1001,エピコート1002,エピコート1003,エピコート1055,エピコート1004,エピコート1004AF,エピコート1007,エピコート1009,エピコート1003F,エピコート1004F(以上、商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、DER−330,DER−301,DER−361,DER−661,DER−662,DER−663U,DER−664,DER−664U,DER−667,DER−642U,DER−672U,DER−673MF,DER−668,DER−669(以上、ダウケミカル社製、商品名)、YD8125,YDF8170(以上、商品名、東都化成株式会社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、YDF−2004(商品名、東都化成株式会社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、エピコート152,エピコート154(以上、商品名ジャパンエポキシレジン株式会社製)、EPPN−201(商品名、日本化薬株式会社製)、DEN−438(商品名、ダウケミカル社製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピコート180S65(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、アラルダイトECN1273,アラルダイトECN1280,アラルダイトECN1299(以上、商品名、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、YDCN−701,YDCN−702,YDCN−703,YDCN−704(以上、商品名、東都化成株式会社製)、EOCN−102S,EOCN−103S,EOCN−104S,EOCN−1012,EOCN−1020,EOCN−1025,EOCN−1027(以上、商品名、日本化薬株式会社製)、ESCN−195X,ESCN−200L,ESCN−220(以上、商品名、住友化学工業株式会社製)等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポン1031S,エピコート1032H60,エピコート157S70(以上、商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、アラルダイト0163(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、デナコールEX−611,デナコールEX−614,デナコールEX−614B,デナコールEX−622,デナコールEX−512,デナコールEX−521,デナコールEX−421,デナコールEX−411,デナコールEX−321(以上、商品名、ナガセ化成株式会社製)、EPPN501H,EPPN502H(以上、商品名、日本化薬株式会社製)等の多官能エポキシ樹脂、エピコート604(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、YH−434(商品名、東都化成株式会社製)、TETRAD−X,TETRAD−C(以上、商品名、三菱ガス化学株式会社製)、ELM−120(商品名、住友化学株式会社製)等のアミン型エポキシ樹脂、アラルダイトPT810(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ社製)等の複素環含有エポキシ樹脂、ERL4234,ERL4299,ERL4221,ERL4206(以上、商品名、UCC社製)等の脂環式エポキシ樹脂などを使用することができ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
熱硬化性成分であるフェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであれば特に制限は無いが、吸湿時の耐電食性に優れることから、ノボラック型あるいはレゾール型の樹脂を用いることが好ましい。水酸基当量は、好ましくは150〜400g/eq、より好ましくは180〜300g/eq、さらに好ましくは180〜250g/eqである。水酸基当量が150g/eq未満であると、吸水率が増大し、耐リフロー性が悪化する傾向があり、400g/eqを超えると、Tgが低下し、耐熱性が悪化する傾向がある。
このようなフェノール樹脂の具体例として、例えば、次記一般式(I):
【0020】
【化1】


【0021】
(式中、Rは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、環状アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、nは、1〜3の整数を表し、そしてmは、0〜50の整数を表す)
で示されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0022】
上記フェノール樹脂は、耐湿性の観点から、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に48時間投入後の吸水率が2質量%以下であることが好ましい。また、熱重量分析計(TGA)で測定した350℃での加熱質量減少率(昇温速度:5℃/分、雰囲気:窒素)が5質量%未満のものを使用することは、加熱加工時などにおいて揮発分が抑制されることで、耐熱性、耐湿性などの諸特性の信頼性が高くなり、また、加熱加工などの作業時の揮発分による機器の汚染を低減することができるために、好ましい。
上記一般式(I)で示される本発明で使用するシートを構成するフェノール樹脂は、例えば、フェノール化合物と2価の連結基であるキシリレン化合物を、無触媒又は酸触媒の存在下に反応させて得ることができる。また市販品としては、例えば、ミレックスXLC−シリーズ,ミレックスXLシリーズ(以上、商品名、三井化学株式会社製)などを挙げることができる。
【0023】
エポキシ樹脂を用いる場合には助剤として熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤を併用することもできる。
熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤とは、室温ではエポキシ樹脂と反応せず、ある温度以上の加熱により活性化し、エポキシ樹脂と反応するタイプの硬化剤である。
熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の活性化方法には、加熱による化学反応で活性種(アニオン、カチオン)を生成する方法;室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法;モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤で高温で溶出して硬化反応を開始する方法;マイクロカプセルによる方法等が存在する。
【0024】
熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、各種オニウム塩や、二塩基酸ジヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、アミンアダクト硬化剤、イミダゾール化合物等の高融点活性水素化合物等を挙げることができる。本発明において好ましく使用されるイミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用することもできる。イミダゾール類は、例えば、四国化成工業(株)から、2E4MZ、2PZ−CN、2PZ−CNSという商品名で市販されている。
【0025】
上記のような熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂との総量に対して0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.05〜3質量%とすることがより好ましく、更には0.2〜3質量%とすることがより好ましい。硬化剤の配合量が0.01質量%未満であると、エポキシ樹脂の架橋が不充分であり、耐熱性が低下する傾向があり、5質量%を超えると、保存安定性が低下し、ポットライフが不充分となる傾向がある。
【0026】
本発明では、更に、シートとしての可とう性や操作性、印字性を向上させるために、熱硬化性成分以外のポリマー成分を使用することができる。このポリマーの重量平均分子量は、通常は3万〜200万、好ましくは10万〜150万、特に好ましくは20万〜100万の範囲にある。分子量が低過ぎるとシート形成が不十分となり、高過ぎると他の成分との相溶性が悪くなり、結果としてシート形成が妨げられる。
このようなポリマーとしては、たとえばアクリル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系ポリマー等が用いられ、特にアクリル共重合体が好ましく用いられる。
【0027】
このアクリル共重合体の中でも、エポキシ樹脂との相溶性を向上させるためにエポキシ基含有アクリル共重合体を使用することが好ましい。このエポキシ基含有アクリル共重合体は、エポキシ基を有するグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートを0.5〜6質量%含む。ウエハとの高い接着力を得るためには、0.5質量%以上が好ましく、6質量%以下であればゲル化を抑制できる。上記エポキシ基含有アクリル共重合体のガラス転移点(Tg)としては、−10℃以上30℃以下であることが好ましい。
【0028】
官能基モノマーとして用いるグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートの量は0.5〜6質量%の共重合体比であるが、その残部はメチルアクリレート、メチルメタクリレートなどの炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、およびスチレンやアクリロニトリルなどの混合物を用いることができる。これらの中でもエチル(メタ)アクリレート及び/又はブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。混合比率は、共重合体のTgを考慮して調整することが好ましい。重合方法は特に制限が無く、例えば、パール重合、溶液重合等が挙げられ、これらの方法により共重合体が得られる。このようなエポキシ基含有アクリル共重合体としては、例えば、SG−P3(商品名、ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
【0029】
さらに、シートの保護膜形成層の構成には、フィラーが配合されていてもよい。フィラーとしては、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカや、アルミナ、ガラスバルーン等の無機フィラーがあげられる。保護膜形成層に無機フィラーを添加することにより、硬化後の層の熱膨張係数をウエハの熱膨張係数に近づけることができ、これによって加工途中のウエハの反りを低減することができるようになる。フィラーとしては合成シリカが好ましく、特に半導体装置の誤作動の要因となるα線の線源を極力除去したタイプの合成シリカが最適である。フィラーの形状としては、球形、針状、無定型タイプのものいずれも使用可能であるが、特に最密充填の可能な球形のフィラーが好ましい。
【0030】
また、保護膜形成層に添加するフィラーとしては、上述した無機フィラーの他にも、下記のような機能性のフィラーが配合されていてもよい。たとえば、導電性の付与を目的として、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、またはセラミック、あるいはニッケル、アルミニウム等を銀で被覆したもののような導電性フィラーを添加してもよく、また熱伝導性の付与を目的として、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、シリコン、ゲルマニウム等の金属材料やそれらの合金等の熱伝導性物質を添加してもよい。
【0031】
保護膜形成層に配合されるフィラーの添加量は、フィラーの種類により様々であるが、一般的には保護膜形成層を形成する全成分の30〜90質量%、好ましくは50〜85質量%が適当である。硬化後の保護膜の熱膨張係数をウエハの熱膨張係数に近づけることができ、これによって加工途中において熱膨張係数の違いにより発生するウエハの反りを低減することができるようになる。ウエハに反りが発生すると破損しやすく、また搬送が困難となる。
【0032】
さらに、硬化後における最外層とそれ以外の層である接着剤層との接着性・密着性を向上させる目的で、保護膜形成層にカップリング剤を添加することもできる。カップリング剤は、硬化被膜の耐熱性を損なわずに、接着剤層との接着性、密着性を向上させることができ、さらに耐水性(耐湿熱性)も向上する。カップリング剤としては、その汎用性とコストメリットなどからシラン系(シランカップリング剤)が好ましい。
【0033】
保護膜形成層を構成する顔料、染料は主として硬化被膜(保護膜)に形成されるレーザーマーキングの印字の認識性を向上させるために添加される。このような顔料としては、カーボンブラックや、各種の無機顔料が例示できる。またアゾ系、インダスレン系、インドフェノール系、フタロシアニン系、インジゴイド系、ニトロソ系、ザンセン系、オキシケトン系などの各種有機顔料があげられる。
顔料、染料の添加量もその種類により様々であるが、一般的には保護膜形成層を形成する全成分の0.3〜20%、好ましくは1〜15%程度が適当である。また、硬化前の凝集力を調節するために、有機多価イソシアナート化合物、有機多価イミン化合物、有機金属キレート化合物等の架橋剤を添加することもできる。
【0034】
例えば、保護膜形成層のうち最外層に顔料を添加し、チップと接着する最外層以外の層に顔料を添加しないようにし、最外層とチップに接着する層で色が異なるように設定することで、レーザー照射で最外層のみを部分的に削り取り、色の異なるチップに接着する層を露出させることができ、印字の視認性を向上させることができる。その他、最外層に顔料を添加しないようにし、チップと接着する層に顔料を添加する、あるいは最外層とチップに接着する層で異なる色の顔料を添加する等でもよい。
【0035】
また、最外層に関しては特にチップとの接着性が必要ではないため、硬化性成分からなる硬化性保護膜形成層でなくても良い。例えば、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。最外層の厚さはレーザーマーキングで削り取れる程度の厚さが好ましく、最外層以外の層より薄く、通常は0.1〜50μm、好ましくは1〜20μmである。
さらに、保護膜形成層には、リン酸化合物、ブロム化合物、リン系化合物等を加え難燃性能を付加することでパッケージとしての信頼性を向上させることができる。
【0036】
本発明で使用するチップ用保護膜形成用シートは、剥離シートの剥離面上に上記成分からなる組成物をロールナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーターなど一般に公知の方法にしたがって直接または転写によって塗工し、乾燥させて得ることができる。なお、上記の組成物は、必要に応じ、溶剤に溶解し、若しくは分散させて塗布することができる。
保護膜形成層の総厚は、通常は、3〜200μm、好ましくは10〜60μmである。
【0037】
本発明の保護膜形成方法は、図2に示すように、チップ用保護膜形成用シート1を、表面に回路が形成され、回路面の所定位置にバンプが形成され、裏面が所定の厚さまで研削された半導体ウエハ6の裏面に、チップ用保護膜形成用シート1の最外層以外の層3側を貼り合わせ、剥離シートを取り除く。そして、保護膜形成層を150〜180℃、1〜3時間で加熱硬化させ保護膜を半導体ウエハに蜜着する。保護膜形成層の加熱硬化は、半導体ウエハに貼り合わせる前に行うこともできる。密着された保護膜面へTEAレーザーやYAGレーザー等周知のレーザー照射によって、最外層を部分的にその厚さ以上削り取り、マーキングした保護膜を形成する。
その後、保護膜を形成した半導体ウエハを、リングフレームに張設されたダイシングテープに保護膜面を貼り合わせ、ダイシングソーにより回路毎に切断分離し、半導体チップを得る。得られた半導体チップをピックアップし、フェースダウン方式で所定の基台上に実装する。
半導体チップを保護するために樹脂封止またはチップ裏面に樹脂コーティングを施す必要は殆どない。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下に示した各成分からなる熱硬化性保護膜形成層用の塗布剤を表1記載の混合量で調製し、各保護膜1〜5の膜形成塗布剤とした。なお、表1における数値の単位はいずれも質量部である。
A:エポキシ樹脂
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180〜200)
B:エポキシ樹脂
o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量210〜230)
C:フェノール樹脂
フェノールノボラック樹脂(水酸基当量110〜140)
D:潜在性エポキシ樹脂硬化剤
イミダゾール化合物(2−フェニル4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール)
E:ポリマー成分
アクリル酸エステル共重合体(エポキシ基含有、分子量80万、Tg10℃)
F:フィラー
合成シリカフィラー(平均粒径0.5μm)
G:顔料・染料
カーボンブラック(平均粒径28nm)
H:顔料・染料
フタロシアニンブルー(平均粒径50nm)
【0039】
【表1】


【0040】
次に、チップ用保護膜形成用シートの作製と保護膜形成方法について示す。
表2に示す実施例1〜5、比較例1〜4の組み合わせとなるように、ポリエチレンフィルムからなる剥離シート上に、表1の保護膜を形成する各塗布剤を最外層およびウエハと接する層(最外層以外の層)が表示の厚さとなるように塗布製膜することで、実施例1〜5、比較例1〜4の各チップ用保護膜形成用シートを作製した。
このようにして作製されたチップ用保護膜形成用シートを表面に回路が形成された厚さ500μmのシリコンウエハに貼り合わせ、熱硬化性保護膜形成層を180℃、2時間で加熱硬化した。硬化被膜(保護膜)にレーザーマーカ(ML−G9320、商品名、キーエンス(株)製)で縦700μm、横800μm、深さ12μm、線幅10μmの文字をレーザーマーキングしてからその保護膜側にダイシングテープ(UC−3010M−110、商品名、古河電気工業(株)製)を貼り合わせ、10mm×10mmにダイシングした。
【0041】
このようにして形成された保護膜について、「接着信頼性(レベル2)」、「接着信頼性(レベル1)」、「レーザーマーキング視認性」、「レーザーマーキングの劣化」の各特性の評価試験を行った。各特性は次のように試験評価し、その得られた結果を表2に示した。
【0042】
(1)接着信頼性(レベル2)
分割された個々のシリコンチップを85℃/60%RHの恒温恒湿槽で168時間処理した後、IRリフロー炉で265℃30秒加熱した。その後、得られたシリコンチップと形成された保護膜との剥離の有無をSAT(超音波映像装置:日立建機ファインテック株式会社製)で観察した。20個のサンプルのうち、剥離が発生したものをカウントした。
【0043】
(2)接着信頼性(レベル1)
分割された個々のシリコンチップを85℃/85%RHの恒温恒湿槽で168時間処理した後、IRリフロー炉で265℃30秒加熱した。その後、得られたシリコンチップと形成された保護膜との剥離の有無をSAT(超音波映像装置:日立建機ファインテック株式会社製)で観察した。20個のサンプルのうち、剥離が発生したものをカウントした。
【0044】
(3)レーザーマーキング視認性
上記と同様シリコンウエハに貼り合わせた硬化性保護膜形成層を180℃、2時間で加熱硬化し、硬化被膜(保護膜)に同様にレーザーマーキングをしてからその保護膜側にダイシングテープを貼り合わせた後、レーザーマーキングの印字の視認性を蛍光灯下で目視確認した。視認性について、10人のパネラーが50cmの距離から見て、読み取れる印字数の平均が、85%以上、半数以上、20%以上、20%未満の4段階に分け、良い順に◎、○、△、×とした。
【0045】
(4)レーザーマーキングの劣化
上記と同様に、シリコンウエハに貼合した硬化性保護膜形成層を180℃、2時間で加熱硬化し、硬化被膜(保護膜)にレーザーマーキングをしてからその保護膜側にダイシングテープを貼り合わせ、10mm×10mmにダイシングした後、チップをピックアップした。得られたチップのレーザーマーキングの印字の視認性を上記(3)に記載したと同様のテストにより、目視確認した。ダイシング前に比べ、ピックアップ後に印字の視認性が低下していないものを○、視認性が低下したものを×とした。
【0046】
【表2】


【0047】
これらの結果から、本発明の方法は、保護膜をチップ裏面に充分な密着力で形成することができている。しかも、目視による印字の視認性がきわめて優れ、また、ダイシング、ピックアップ工程の後でも視認性が低下せず、印字の劣化が殆どない保護膜が形成されていることが分る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に使用するチップ用保護膜形成用シートの断面図である。
【図2】本発明の方法で形成した保護膜を有する半導体チップの断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 チップ用保護膜形成用シート
2 最外層
3 最外層以外の層
4 剥離シート
5 レーザーマーキングによって最外層が削り取られた部分
6 半導体ウエハ
【出願人】 【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三

【識別番号】100118131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 渉

【識別番号】100131288
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 尚祐


【公開番号】 特開2008−6386(P2008−6386A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180441(P2006−180441)