トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般

【発明の名称】 絶縁被膜形成方法
【発明者】 【氏名】今井 順二

【氏名】正木 康史

【氏名】武藤 正英

【氏名】平山 健太郎

【要約】 【課題】対象物と絶縁材料の熱膨張係数の違いに起因した熱応力による絶縁被膜の密着性低下を防ぐ。

【構成】ノズル1内に形成される第2の流路表面には対象物の主成分である金属と同一の金属からなる金属被膜6が形成されている。高速で通過する絶縁材料の微粒子によって金属被膜6から削り取られた金属粒子が絶縁材料の微粒子とともに対象物の表面に成膜される。絶縁被膜における金属の混入量は界面近傍が最も多く、界面から離れるにつれて減少して界面から所定距離以上離れると金属が混入しなくなる。故に絶縁被膜と対象物との界面近傍における熱膨張係数が非常に近くなって両者の密着性を高めることができ、しかも、絶縁被膜の表面近傍には金属が混入しないことから絶縁被膜の絶縁特性(絶縁耐圧)の低下も抑制できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料の微粒子をガス中に分散させたエアロゾルをノズルから対象物に噴射し、当該対象物の表面に前記絶縁材料からなる絶縁被膜を形成する絶縁被膜形成方法において、
エアロゾルが流入する流入口と、エアロゾルを噴出する噴出口と、流入口から流入するエアロゾルを噴出口に導く流路とを有し、エアロゾルに接触する前記流路の表面に、対象物の主成分である金属と同一の金属を、対象物表面に形成される前記絶縁性被覆の面積に対応した所定の厚みで被覆したノズルを用いてエアロゾルを対象物に噴射することを特徴とする絶縁被膜形成方法。
【請求項2】
絶縁材料の微粒子をガス中に分散させたエアロゾルをノズルから対象物に噴射し、当該対象物の表面に前記絶縁材料からなる絶縁被膜を形成する絶縁被膜形成方法において、
エアロゾルが流入する流入口と、エアロゾルを噴出する噴出口と、流入口から流入するエアロゾルを噴出口に導く流路とをノズル本体に設けるとともに、噴出口の開口するノズル本体先端に、噴出口と連通した流路が設けられた金属ブロックを配置し、金属ブロックが、対象物の主成分である金属と同一の金属により、対象物表面に形成される前記絶縁性被覆の面積に対応した所定の寸法に形成されたノズルを用いてエアロゾルを対象物に噴射することを特徴とする絶縁被膜形成方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁材料の微粒子をガス中に分散させたエアロゾルをノズルから対象物に噴射し、当該対象物の表面に前記絶縁材料からなる絶縁被膜を形成する絶縁被膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属を主成分とする導電体(対象物)の表面に絶縁材料からなる絶縁被膜を形成するに当たって、絶縁材料の微粒子をガス中に分散させたエアロゾルをノズルから対象物に噴射する被膜形成方法、いわゆるエアロゾルデポジション法が採用される場合があった(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0003】
エアロゾルデポジション法とは、予め用意された微粒子原料をガスと混合してエアロゾル化し、減圧下の雰囲気でノズルを通して対象物に噴射して被膜を形成する被膜形成方法であり、ガス搬送により加速された原料粒子の運動エネルギが対象物に衝突することで局所的な熱エネルギに変換され、対象物と粒子間、粒子同士の結合を実現するものと考えられている。
【特許文献1】特開2001−181859号公報
【特許文献2】特開2002−20878号公報
【特許文献3】特開2002−320879号公報
【特許文献4】特開2003−247080号公報
【特許文献5】特開2003−251227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、対象物を構成する金属材料と絶縁被膜を形成する絶縁材料とにおいては、一般に熱膨張係数が大きく異なっている。そのため、温度変化に伴って対象物と絶縁被膜との界面に熱応力が発生して絶縁被膜の密着性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、対象物と絶縁材料の熱膨張係数の違いに起因した熱応力による絶縁被膜の密着性低下を防いだ絶縁被膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、絶縁材料の微粒子をガス中に分散させたエアロゾルをノズルから対象物に噴射し、当該対象物の表面に前記絶縁材料からなる絶縁被膜を形成する絶縁被膜形成方法において、エアロゾルが流入する流入口と、エアロゾルを噴出する噴出口と、流入口から流入するエアロゾルを噴出口に導く流路とを有し、エアロゾルに接触する前記流路の表面に、対象物の主成分である金属と同一の金属を、対象物表面に形成される前記絶縁性被覆の面積に対応した所定の厚みで被覆したノズルを用いてエアロゾルを対象物に噴射することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、絶縁材料の微粒子をガス中に分散させたエアロゾルをノズルから対象物に噴射し、当該対象物の表面に前記絶縁材料からなる絶縁被膜を形成する絶縁被膜形成方法において、エアロゾルが流入する流入口と、エアロゾルを噴出する噴出口と、流入口から流入するエアロゾルを噴出口に導く流路とをノズル本体に設けるとともに、噴出口の開口するノズル本体先端に、噴出口と連通した流路が設けられた金属ブロックを配置し、金属ブロックが、対象物の主成分である金属と同一の金属により、対象物表面に形成される前記絶縁性被覆の面積に対応した所定の寸法に形成されたノズルを用いてエアロゾルを対象物に噴射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、高速で通過する絶縁材料の微粒子によってエアロゾルが通過するノズルの流路表面が削り取られ、削り取られた金属粒子が対象物に噴射されて絶縁材料の微粒子とともに対象物の表面に成膜されるが、時間の経過に従って削り取られる金属粒子が減少して対象物表面に成膜される金属粒子の割合も減少し、絶縁被膜における金属の混入量は界面近傍が最も多く、界面から離れるにつれて減少して界面から所定距離以上離れると金属が混入しなくなる。その結果、絶縁被膜の対象物表面との界面には対象物の主成分である金属と同一の金属が混入しているために絶縁被膜と対象物との界面近傍における熱膨張係数が非常に近くなって両者の密着性を高めることができ、しかも、絶縁被膜の表面近傍には金属が混入しないことから絶縁被膜の絶縁特性(絶縁耐圧)の低下も抑制できる。
【0009】
請求項2の発明によれば、高速で通過する絶縁材料の微粒子によってエアロゾルが通過するノズルの流路表面において金属ブロックが削り取られ、削り取られた金属粒子が対象物に噴射されて絶縁材料の微粒子とともに対象物の表面に成膜されるが、時間の経過に従って削り取られる金属粒子が減少して対象物表面に成膜される金属粒子の割合も減少し、絶縁被膜における金属の混入量は界面近傍が最も多く、界面から離れるにつれて減少して界面から所定距離以上離れると金属が混入しなくなる。その結果、絶縁被膜の対象物表面との界面には対象物の主成分である金属と同一の金属が混入しているために絶縁被膜と対象物との界面近傍における熱膨張係数が非常に近くなって両者の密着性を高めることができ、しかも、絶縁被膜の表面近傍には金属が混入しないことから絶縁被膜の絶縁特性(絶縁耐圧)の低下も抑制できる。さらに、絶縁被膜に混入する金属の混入量が金属ブロックの寸法によって調整できるから、対象物表面に形成される絶縁被膜の面積への対応可能範囲が拡大できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、エアロゾルデポジション法により対象物の表面に絶縁材料たる酸化アルミニウム(アルミナ)の被膜(絶縁被膜)を形成する絶縁被膜形成方法に本発明の技術思想を適用した実施形態について説明する。但し、本発明はエアロゾルを噴射するためのノズルに特徴があり、エアロゾルデポジション法の基本構成に関しては従来周知であるから詳細な説明並びに図示を省略する。
【0011】
(実施形態1)
本実施形態の絶縁被膜形成方法で使用するノズル1は、図1に示すように金属材料(例えば、SUS316Lのステンレス鋼)で形成された2枚の板状部材2,3を貼り合わせて構成されている。
【0012】
板状部材2,3は何れも扁平な六角形状であって、厚み方向に重ね合わせて接合される。片側の板状部材2は、図2(a)〜(d)に示すように接合面に第1の溝部2aと第2の溝部2bとが凹設されている。第1の溝部2aは、幅寸法並びに深さ寸法が均一であり且つ一方の端部が板状部材2における幅広の側端面に開口している(図2(c)参照)。第2の溝部2bは、幅寸法並びに深さ寸法が第1の溝部2aよりも小さく且つ均一であり、さらに一方の端部が板状部材2における幅狭の側端面に開口している(図2(b)参照)。ここで、板状部材2の接合面における第1の溝部2aと第2の溝部2bとの間には両溝部2a,2bを繋ぐ緩衝溝部2cが凹設されている。この緩衝溝部2cは、一端側の幅寸法並びに深さ寸法が第1の溝部2aと同一で第1の溝部2aに連通するとともに、他端側の幅寸法並びに深さ寸法が第2の溝部2bと同一で第2の溝部2bに連通し、且つ一端から他端にかけて幅寸法と深さ寸法が直線的に変化する形状に形成されている。
【0013】
一方、もう片側の板状部材3は、図2(e)〜(h)に示すように幅寸法並びに長さ寸法が板状部材2の第1の溝部2aと同寸法であり且つ一方の端部が板状部材3における幅広の側端面に開口する第3の溝部3aと(図2(g)参照)、幅寸法並びに長さ寸法が板状部材2の緩衝溝部2cと同寸法であり且つ第3の溝部3aと連通する緩衝溝部3bとが接合面に凹設されている。
【0014】
而して、2枚の板状部材2,3を互いの接合面で接合してノズル1を構成すれば、図1に示すように第1の溝部2aと第3の溝部3aからなる第1の流路と、板状部材2の第2の溝部2bと板状部材3の接合面からなる第2の流路と、緩衝溝部2cと板状部材3の接合面からなる緩衝用流路とがノズル1内に形成されるとともに、第1の流路への入り口であってエアロゾルが流入する流入口がノズル1における幅広の側端面に開口し(図1(c)参照)、さらに第2の流路からの出口であってエアロゾルを噴出する噴出口がノズル1における幅狭の側端面に開口することになる(図1(b)参照)。
【0015】
ここで、第2の流路となる板状部材2の第2の溝部2bの内側面及び内底面と板状部材3の接合面には、炭化チタンの被膜4とアルミナ(酸化アルミニウム)の被膜5とを介して対象物の主成分である金属と同一の金属からなる金属被膜6が形成されている(図1(e)参照)。
【0016】
次に、全長20mm、噴出口の寸法0.5mm×10mmのノズル1を作成し、このノズル1を用いたエアロゾルデポジション法により、対象物(タフピッチ銅製基板)の表面にアルミナの絶縁被膜を形成する方法について説明する。なお、ノズル1の第2の流路表面には、プラズマCVD法によって膜厚5μmの炭化チタンの被膜4が形成されるとともに被膜4上に膜厚10μmのアルミナの被膜5が形成され、さらに被膜5上には銅を真空蒸着してなる膜厚1μmの金属被膜6が形成されている。
【0017】
まず、純度99.9%のアルミナ粒子(粒径1μm以下)を容器(以下、エアロゾル化チャンバと呼ぶ。)内に収容し、当該エアロゾル化チャンバ内を200Paまで減圧した後に窒素ガスを毎分7リットルの流量で導入し且つ撹拌してエアロゾル化させる。エアロゾル化チャンバには細径の搬送管の一端が接続され、成膜チャンバ内に導入された搬送管の他端にノズル1の流入口が接続される。成膜チャンバ内に設けられた台(以下、X−Y−Zステージと呼ぶ。)の上に対象物が載置され、X−Y−Zステージの上方に配置されたノズル1の噴出口が対象物に対向させてある。X−Y−Zステージは水平面内並びに鉛直面内で移動可能であって、対象物表面に形成する絶縁被膜の膜厚が均一になるように対象物を水平面内で往復移動させる。
【0018】
成膜チャンバ内は真空ポンプ(例えば、ロータリポンプとブースタポンプ)によってエアロゾル化チャンバ内よりも低圧となるように減圧されており、両チャンバ内の圧力差によって生じるガスの流れでエアロゾルが搬送管を通して成膜チャンバへ搬送される。さらに、ガス搬送された絶縁材料(アルミナ)の微粒子は微少な径のノズル1の流路(第2の流路)を通すことで加速され、ノズル1の噴出口から対象物に噴射されて対象物表面に絶縁材料の被膜(絶縁被膜)を形成する。このとき、加速された微粒子によってノズル1の第2の流路表面を覆っている金属被膜6が削り取られ、削り取られた金属粒子の一部が絶縁材料の微粒子とともに噴出口から噴射されるから、対象物の表面には金属(銅)が混入した絶縁被膜が成膜される。
【0019】
而して、高速で通過する絶縁材料(アルミナ)の微粒子によってエアロゾルが通過するノズル1の第2の流路表面(金属被膜6)が削り取られ、削り取られた金属粒子が対象物に噴射されて絶縁材料の微粒子とともに対象物の表面に成膜されるが、時間の経過に従って削り取られる金属粒子が減少して対象物表面に成膜される金属粒子の割合も減少し、絶縁被膜における金属の混入量は界面近傍が最も多く、界面から離れるにつれて減少して界面から所定距離以上離れると金属が混入しなくなる。例えば、本実施形態では金属被膜6の膜厚を1μm、対象物表面に形成される絶縁被膜の膜厚を10μmとしており、対象物表面(界面)から2μm以上離れると絶縁被膜に金属は混入していなかった。従って、絶縁被膜の対象物表面との界面には対象物の主成分である金属(銅)と同一の金属(銅)が混入しているために絶縁被膜と対象物との界面近傍における熱膨張係数が非常に近くなって両者の密着性を高めることができる。
【0020】
ここで、絶縁被膜全体に導電体である金属が混入していると絶縁被膜の絶縁特性(絶縁耐圧)が低下してしまう虞があるが、上述のように金属が混入しているのは絶縁被膜における対象物表面との界面近傍のみ、言い換えると、対象物表面との界面近傍にのみ混入する程度の量の金属がノズル1から噴射されるように金属被膜6の膜厚を設定しているから、絶縁被膜の表面近傍には金属が混入せず、その結果、絶縁被膜の絶縁特性(絶縁耐圧)の低下も抑制できる。
【0021】
(実施形態2)
本実施形態の絶縁被膜形成方法で使用するノズル1は、基本的な構成が実施形態1におけるノズル1と共通であるから共通の構成要素には同一の符号を付して図示並びに説明を省略する。
【0022】
以下、全長20mm、噴出口の寸法0.5mm×10mmのノズル1を作成し、このノズル1を用いたエアロゾルデポジション法により、対象物(黄銅製基板)の表面にアルミナの絶縁被膜を形成する方法について説明する。なお、ノズル1の第2の流路表面には、実施形態1と同様にプラズマCVD法によって膜厚5μmの炭化チタンの被膜4が形成されるとともに被膜4上に膜厚10μmのアルミナの被膜5が形成され、さらに被膜5上には銅を真空蒸着してなる膜厚0.5μmの金属被膜6が形成されている。
【0023】
まず、純度99.9%のアルミナ粒子(粒径1μm以下)をエアロゾル化チャンバ内に収容し、当該エアロゾル化チャンバ内を200Paまで減圧した後にヘリウムガスを毎分10リットルの流量で導入し且つ撹拌してエアロゾル化させる。成膜チャンバ内に設けられたX−Y−Zステージの上に対象物が載置され、X−Y−Zステージの上方に配置されたノズル1の噴出口が対象物に対向させてある。
【0024】
エアロゾル化チャンバから成膜チャンバへガス搬送された絶縁材料(アルミナ)の微粒子は微少な径のノズル1の流路(第2の流路)を通すことで加速され、ノズル1の噴出口から対象物に噴射されて対象物表面に絶縁材料の被膜(絶縁被膜)を形成する。このとき、加速された微粒子によってノズル1の第2の流路表面を覆っている金属被膜6が削り取られ、削り取られた金属粒子の一部が絶縁材料の微粒子とともに噴出口から噴射されるから、対象物の表面には金属(銅)が混入した絶縁被膜が成膜される。
【0025】
ここで、金属被膜6の膜厚を0.5μm、対象物表面に形成される絶縁被膜の膜厚を15μmとしたとき、金属が混入している割合は界面近傍で最も高く、対象物表面(界面)から2μm以上離れると絶縁被膜に金属は混入していなかった。
【0026】
(実施形態3)
本実施形態の絶縁被膜形成方法で使用するノズル1は、基本的な構成が実施形態1におけるノズル1と共通であるから共通の構成要素には同一の符号を付して図示並びに説明を省略する。
【0027】
以下、全長20mm、噴出口の寸法0.5mm×10mmのノズル1を作成し、このノズル1を用いたエアロゾルデポジション法により、対象物(アルミニウム製基板)の表面にアルミナの絶縁被膜を形成する方法について説明する。なお、ノズル1の第2の流路表面には、実施形態1と同様にプラズマCVD法によって膜厚5μmの炭化チタンの被膜4が形成されるとともに被膜4上に膜厚10μmのアルミナの被膜5が形成され、さらに被膜5上にはアルミニウムを真空蒸着してなる膜厚0.5μmの金属被膜6が形成されている。
【0028】
まず、純度99.9%のアルミナ粒子(粒径1μm以下)をエアロゾル化チャンバ内に収容し、当該エアロゾル化チャンバ内を200Paまで減圧した後に窒素ガスを毎分7リットルの流量で導入し且つ撹拌してエアロゾル化させる。成膜チャンバ内に設けられたX−Y−Zステージの上に対象物が載置され、X−Y−Zステージの上方に配置されたノズル1の噴出口が対象物に対向させてある。
【0029】
エアロゾル化チャンバから成膜チャンバへガス搬送された絶縁材料(アルミナ)の微粒子は微少な径のノズル1の流路(第2の流路)を通すことで加速され、ノズル1の噴出口から対象物に噴射されて対象物表面に絶縁材料の被膜(絶縁被膜)を形成する。このとき、加速された微粒子によってノズル1の第2の流路表面を覆っている金属被膜6が削り取られ、削り取られた金属粒子の一部が絶縁材料の微粒子とともに噴出口から噴射されるから、対象物の表面には金属(アルミニウム)が混入した絶縁被膜が成膜される。
【0030】
ここで、金属被膜6の膜厚を0.5μm、対象物表面に形成される絶縁被膜の膜厚を12μmとしたとき、金属が混入している割合は界面近傍で最も高く、対象物表面(界面)から1μm以上離れると絶縁被膜に金属は混入していなかった。
【0031】
(実施形態4)
本実施形態の絶縁被膜形成方法で使用するノズル10は、図3に示すように金属材料(例えば、ステンレス鋼)で形成された2枚の板状部材12,13を貼り合わせてなるノズル本体11と、対象物を構成する金属材料の主成分と同一の金属で形成されて噴出口を含むノズル本体11の表面を覆う金属ブロック14とで構成されている。
【0032】
板状部材12,13は何れも扁平な六角形状であって、厚み方向に重ね合わせて接合される。片側の板状部材12は、接合面に第1の溝部12aと第2の溝部12bとが凹設されている。第1の溝部12aは、幅寸法並びに深さ寸法が均一であり且つ一方の端部が板状部材12における幅広の側端面に開口している(図3(c)参照)。第2の溝部12bは、幅寸法並びに深さ寸法が第1の溝部12aよりも小さく且つ均一であり、さらに一方の端部が板状部材12における幅狭の側端面に開口している(図3(b)参照)。ここで、板状部材12の接合面における第1の溝部12aと第2の溝部12bとの間には両溝部12a,12bを繋ぐ緩衝溝部12cが凹設されている。この緩衝溝部12cは、一端側の幅寸法並びに深さ寸法が第1の溝部12aと同一で第1の溝部12aに連通するとともに、他端側の幅寸法並びに深さ寸法が第2の溝部12bと同一で第2の溝部12bに連通し、且つ一端から他端にかけて幅寸法と深さ寸法が直線的に変化する形状に形成されている。
【0033】
一方、もう片側の板状部材13は、幅寸法並びに長さ寸法が板状部材12の第1の溝部12aと同寸法であり且つ一方の端部が板状部材13における幅広の側端面に開口する第3の溝部13aと(図3(c)参照)、幅寸法並びに長さ寸法が板状部材12の緩衝溝部12cと同寸法であり且つ第3の溝部13aと連通する緩衝溝部13bとが接合面に凹設されている。
【0034】
而して、2枚の板状部材12,13を互いの接合面で接合してノズル本体11を構成すれば、図3に示すように第1の溝部12aと第3の溝部13aからなる第1の流路と、板状部材12の第2の溝部12bと板状部材13の接合面からなる第2の流路と、緩衝溝部12cと板状部材13の接合面からなる緩衝用流路とがノズル本体11内に形成されるとともに、第1の流路への入り口であってエアロゾルが流入する流入口がノズル本体11における幅広の側端面に開口し(図3(c)参照)、さらに第2の流路からの出口であってエアロゾルを噴出する噴出口がノズル本体11における幅狭の側端面に開口することになる(図3(b)参照)。
【0035】
ここで、第2の流路となる板状部材12の第2の溝部12bの内側面及び内底面と板状部材13の接合面には、それぞれ炭化チタンの被膜(図示せず)とアルミナ(酸化アルミニウム)の被膜(図示せず)が積層されている。
【0036】
金属ブロック14は、扁平な六角形状に形成された2枚の板状金属部材15,16からなり、これら2枚の板状金属部材15,16を、その間にノズル本体11を挟む形で厚み方向に重ね合わせてノズル本体11と接合することによって構成される。板状金属部材15,16は、各々噴出口が開口したノズル本体11の先端より前方へ突出した突出部15a,16aと、流入口が開口した底面及び幅狭の側面を除いてノズル本体11の表面を覆う本体部15b,16bとが一体に形成されてなり、本体部15b,16bが各々板状部材12,13の表面に接合される。ここで、板状金属部材15,16の突出部15a,16aの間に形成される隙間(流路)がノズル本体11先端の噴出口と連通している。
【0037】
次に、全長20mm、噴出口の寸法0.5mm×10mmのノズル本体11を作成し、噴出口が開口するノズル本体11の先端から前方(図3(a)における上方)へ突出部15a,16aが10mmだけ突出するとともに、突出部15a,16aにおける対向面が前記アルミナ被膜の表面よりも内向き(隙間(流路)を狭める向き)に突出した金属ブロック14をノズル本体11と組み合わせてノズル10を構成し、このノズル10を用いたエアロゾルデポジション法により、対象物(アルミニウム−マグネシウム系合金基板)の表面にアルミナの絶縁被膜を形成する方法について説明する。なお、ノズル本体11の第2の流路表面には、プラズマCVD法によって膜厚5μmの炭化チタンの被膜が形成されるとともにその被膜上に膜厚10μmのアルミナの被膜が形成されている。また、突出部15a,16aにおける対向面はアルミナ被膜の表面から5μm内向きに突出している。
【0038】
まず、純度99.9%のアルミナ粒子(粒径1μm以下)をエアロゾル化チャンバ内に収容し、当該エアロゾル化チャンバ内を200Paまで減圧した後に窒素ガスを毎分7リットルの流量で導入し且つ撹拌してエアロゾル化させる。成膜チャンバ内に設けられたX−Y−Zステージの上に対象物が載置され、X−Y−Zステージの上方に配置されたノズル10の噴出口が対象物に対向させてある。X−Y−Zステージは毎秒1mm以上の速度で100mmの範囲を往復移動する。
【0039】
成膜チャンバ内が真空ポンプによってエアロゾル化チャンバ内よりも低圧となるように減圧され、両チャンバ内の圧力差によって生じるガスの流れでエアロゾルが搬送管を通して成膜チャンバへ搬送される。そして、ノズル本体11の第2の流路を通して加速された絶縁材料(アルミナ)の微粒子がノズル本体11の噴出口から金属ブロック14の突出部15a,16a間に形成されている隙間(流路)を通過して対象物に噴射され、対象物表面に絶縁被膜を形成する。このとき、加速された微粒子によって金属ブロック14の突出部15a,16aが削り取られ、削り取られた金属粒子の一部が絶縁材料の微粒子とともに噴出口から噴射されるから、対象物の表面には金属ブロック14を構成している金属(アルミニウム)が混入した絶縁被膜が成膜される。
【0040】
而して、高速で通過する絶縁材料(アルミナ)の微粒子によってエアロゾルが通過するノズル10の金属ブロック14が削り取られ、削り取られた金属粒子が対象物に噴射されて絶縁材料の微粒子とともに対象物の表面に成膜されるが、時間の経過に従って削り取られる金属粒子が減少して対象物表面に成膜される金属粒子の割合も減少し、絶縁被膜における金属の混入量は界面近傍が最も多く、界面から離れるにつれて減少して界面から所定距離以上離れると金属が混入しなくなる。例えば、本実施形態では対象物表面に形成される絶縁被膜の膜厚を20μmとしており、対象物表面(界面)から5μm以上離れると絶縁被膜に金属は混入していなかった。従って、絶縁被膜の対象物表面との界面には対象物の主成分である金属(アルミニウム)と同一の金属(アルミニウム)が混入しているために絶縁被膜と対象物との界面近傍における熱膨張係数が非常に近くなって両者の密着性を高めることができ、しかも、絶縁被膜の表面近傍には金属が混入しないから、絶縁被膜の絶縁特性(絶縁耐圧)の低下も抑制できる。さらに、絶縁被膜に混入する金属の混入量が金属ブロック14の突出部15a,16aの寸法、具体的には、突出部15a,16aがノズル本体11の先端から前方へ突出する突出量(流路の長さ)と、突出部15a,16aにおける対向面がアルミナ被膜の表面から対向向きへ突出する突出量(流路の幅)とによって調整できるから、対象物表面に形成される絶縁被膜の面積への対応可能範囲が拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1におけるノズルを示し、(a)は、平面図、(b)は上面図、(c)は下面図、(d)は右断面図、(e)は第2の流路の要部断面図である。
【図2】同上のノズルを構成する板状部材を示し、(a)〜(d)は片側の板状部材の平面図、上面図、下面図、右断面図であり、(e)〜(h)はもう片側の板状部材の平面図、上面図、下面図、右断面図である。
【図3】本発明の実施形態4におけるノズルを示し、(a)は、平面図、(b)は上面図、(c)は下面図、(d)は右断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ノズル
2 板状部材
2a 第1の溝部
2b 第2の溝部
3 板状部材
3a 第3の溝部
6 金属被膜
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】 【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清

【識別番号】100085604
【弁理士】
【氏名又は名称】森 厚夫


【公開番号】 特開2008−6342(P2008−6342A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177064(P2006−177064)