トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般

【発明の名称】 含浸剤の洗浄硬化方法
【発明者】 【氏名】渡部 孝紀

【氏名】武井 洋輔

【要約】 【課題】装置の小型化を可能にするとともに、含浸剤の洗浄硬化の処理時間を短縮することができる含浸剤の洗浄、硬化方法を提供することである。

【構成】硬化性樹脂を含んだ含浸剤を巣穴や細孔に充填した含浸対象物の表面を洗浄するとともに、含浸対象物に充填された含浸剤を硬化させる含浸剤の洗浄硬化方法において、洗浄時には水と水蒸気とを混合して含浸対象物に対して噴射し、硬化時には水蒸気を噴射して含浸対象物の温度を含浸剤の硬化温度以上に上昇させることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂を含んだ含浸剤を巣穴や細孔に充填した含浸対象物の表面の余分な含浸剤を洗浄するとともに、含浸対象物に充填された含浸剤を硬化させる含浸剤の洗浄硬化方法において、洗浄時には水と水蒸気とを混合して含浸対象物に対して噴射し、硬化時には水蒸気を噴射して含浸対象物の温度を含浸剤の硬化温度以上に上昇させる含浸剤の洗浄硬化方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、金属鋳物、粉末冶金、セラミックス、プラスチックなどの物体の巣穴や細孔を含浸剤で封止するための含浸剤の洗浄硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属鋳物、粉末冶金、セラミックス、プラスチックなどの、物体の巣穴や細孔を樹脂で封止する含浸処理が従来から行なわれている。このような含浸処理は、巣穴や細孔によって気体や液体の漏れが発生することを防止するために行なわれている。
このような含浸処理の具体的な方法を、図7を用いて簡単に説明する。この処理には、熱硬化性のモノマーを主成分とする含浸剤が用いられる。この含浸剤を満たした含浸タンク1の中に、上記巣穴や細孔を持った含浸対象物Wを浸し、その巣穴や細孔に含浸剤を充填する。この工程では、含浸対象物の巣穴や細孔に含浸剤が入り込みやすいように、含浸タンク1内を減圧したり加圧したりすることがある。
【0003】
次に、含浸剤を充填した含浸対象物Wを、洗浄水を入れた洗浄タンク2,3へ移し、その中で表面を洗浄して、表面に付着している余分な含浸剤を除く。含浸対象物表面の含浸剤を完全に取り除くために、洗浄タンク内の含浸対象物Wを洗浄水中で回転させたり、洗浄水を撹拌したりしながらの洗浄を数回行なう。そのために、少なくとも、大雑把に洗浄する第1洗浄タンク2と、仕上げ洗い用の第2洗浄タンク3とを設けている。
各洗浄タンク2,3の洗浄水には、含浸対象物Wから取り除いた含浸剤が溜まっていくが、その濃度が高くなると洗浄性が低下するので、洗浄タンク2,3内の洗浄水を定期的に交換するようにしている。
その後、含浸対象物Wを90℃以上の湯を満たした湯浸タンク4へ浸し、巣穴や細孔の含浸剤を硬化させて含浸処理を終了する。なお、図中矢印は、含浸対象物Wの移動プロセスを示している。
このような含浸処理工程は、通常行なわれていることであり、これに関する先行技術文献調査は行なっていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の含浸処理では、洗浄工程と硬化工程に、2つの洗浄タンク2,3と硬化用の湯浸タンク4とが必要であり、洗浄工程と硬化工程だけで3つの液体タンクが必要であった。そのため、これらのタンクを必要とする洗浄、硬化工程で、装置が大型化するという問題がある。
しかも、上記洗浄タンク2,3は、含浸対象物を洗浄して取り除いた余分な含浸剤により、含浸剤濃度が高くなると洗浄性が低下してしまうので、定期的に洗浄水の交換を行なわなければならない。このように、洗浄水の交換作業の手間がかかり、メンテナンスコストがかかるという問題や、廃水量が多くなって、廃水処理のためのコストが高くなってしまうという問題もあった。
【0005】
また、上記処理方法では、洗浄タンク2,3の洗浄水中に含浸対象物を浸し、含浸対象物表面の含浸剤を洗浄水中へ溶解させることによって、含浸剤を取り除いているので、洗浄水に含浸対象物を浸しておく時間が必要である。さらに、複数の洗浄タンクのそれぞれに、一定時間含浸対象物を浸す必要があるうえ、含浸対象物の移動時間もかかるので、洗浄工程における時間を短縮することも難しかった。
【0006】
この発明の目的は、装置の小型化を可能にし、しかも、廃水量を少なくできるとともに、含浸剤の洗浄および硬化の処理時間も短縮することができる含浸剤の洗浄硬化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、硬化性樹脂を含んだ含浸剤を巣穴や細孔に充填した含浸対象物の表面の余分な含浸剤を洗浄するとともに、含浸対象物に充填された含浸剤を硬化させる含浸剤の洗浄硬化方法において、洗浄時には水と水蒸気とを混合して含浸対象物に対して噴射し、硬化時には水蒸気を噴射して含浸対象物の温度を含浸剤の硬化温度以上に上昇させる点に特徴を有する。
なお、含浸対象物の上記表面の概念には、含浸対象物に組み付け用タップ穴などの加工穴が形成されている場合、その加工穴の内面も含まれる。従って、加工穴を有する含浸対象物の場合、洗浄時には、加工穴内も洗浄し、加工穴に残留している余分な含浸剤も取り除かれることになる。
また、硬化時には、水蒸気の噴射によって含浸対象物の温度を含浸剤の硬化温度以上に保つことができればよいので、必要な温度が保たれる範囲であれば、水蒸気とともに水が多少噴射されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、含浸対象物表面の余分な含浸剤の洗浄と、巣穴や細孔に充填された含浸剤の硬化とを、同一タンク内で行なうことができるようになる。従来のように洗浄と硬化とを別々のタンクで行なっていた場合と比べて、タンク数を減らし、装置を小型化することができる。
また、洗浄水を溜めた洗浄タンクを用いないため、洗浄水の交換の手間を省略でき、作業コストを下げることができるとともに、含浸剤を含んだ廃水量を少なくできるため、廃水処理のためのコストを下げることができる。
【0009】
また、洗浄時に、水と水蒸気とを混合して噴射するので、水蒸気によって流体の温度が高くなり、熱水で含浸対象物表面を洗浄することになる。洗浄に熱水を用いているので、水による洗浄よりも洗浄性を上げることができる。水蒸気だけでは含浸対象物の表面を洗浄する水分量が不足して十分に洗浄ができないことがあったが、水蒸気に水を混合することによって、このようなこともなくなる。
さらに、水蒸気と水とを含浸対象物に向かって噴射することにより、流体の噴射圧力で含浸対象物表面の含浸剤を吹き飛ばすこともできる。また、噴射される水は、水蒸気の噴射流に巻き込まれて細粒となるため、加工穴内にも入り込みやすく、加工穴内も洗浄しやすい。
このように、余分な含浸剤を吹き飛ばしながら、含浸対象物表面を熱水で洗浄することができるので、洗浄工程での時間を短縮することができる。
【0010】
また、硬化時には、水蒸気を噴射して、含浸対象物を含浸剤の硬化に必要な温度に保つことができる。
水蒸気は100℃以上の高温にし易いので、水蒸気を用いれば、含浸対象物を短時間で高温にすることができ、含浸剤の硬化時間を短縮できる。
しかも、洗浄時にも、含浸対象物へ向けて水とともに水蒸気を噴射しているため、洗浄中にも含浸対象物を加温することができる。そのため、洗浄が終了した時点で予熱されていることになり、含浸対象物が含浸剤の硬化に必要な温度に達するまでの時間を短縮できる。つまり、硬化処理にかかる時間も短縮できる。
さらに、含浸剤の硬化時に、水を止めて水蒸気だけを噴射するようにすれば、従来の湯浸タンクに浸して含浸剤を硬化させる場合と比べて、金属製の含浸対象物が錆び難いという効果も得られる。なぜなら、水中に含まれる塩化物イオンなどによって金属製の含浸対象物の腐食が促進される場合があるが、水蒸気中には上記イオンが少ないので、金属が錆び難くなるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図6を用いて、この発明の一実施形態を説明する。
図1〜図6は、この実施形態の洗浄硬化方法を行なうための洗浄硬化装置5を示している。この洗浄硬化装置5は、図1に示すように、ステンレス製のタンク6内に、含浸対象物Wを載置するための架台7を設けている。この架台7に、含浸タンク1によって含浸剤を充填された含浸対象物Wを載せて、含浸対象物W表面の洗浄と巣穴や細孔に充填された含浸剤の硬化とを行なう。
【0012】
この洗浄硬化装置5は、図1、図2に示すように、タンク6内に、それぞれ4本の配管を四辺形に接続して構成した第1環状部8aおよび第2環状部8bを備えている。これらの環状部8a,8bは、第1環状部8aを、第2環状部8bの外側に位置する大きさにし、タンク6内において、第1環状部8aの下方であって内側に第2環状部8bを位置させるようにしている。
また、第1環状部8aの、四辺形の2つの角には、一対の配管9a,9aを接続して、上記配管9a,9aおよび環状部8aの内部を連通させているとともに、これらの配管9a,9aを、タンク6から突出させている。タンク6の外部については、後で詳しく説明するが、タンク6から突出した配管9a、9aには、タンク6外部で水を流す配管を介して水道管など図示しない水供給源を接続し、矢印Aに示すように水の供給を可能にしている。
同様に、第2環状部8bには、一対の配管9b,9bを接続するとともに、これらの配管9b,9bを、タンク6の外部に突出させて、ボイラー装置などの図示しない水蒸気供給源に接続し、矢印Bに示すように、水蒸気の供給を可能にしている。
【0013】
一方、各環状部8a,8bには、それぞれ複数の開口を形成するとともに、第1環状部8aの開口と第2環状部8bの開口との間に、図2、図3に示すノズル13を設けている。
このノズル13は、外部混合型の2流体ノズルで、図3に示すように中央の第1通路14とその外周を囲む第2通路15とを備えた二重構造である。そして、第1通路14に連続する接続部14aを、第1環状部8aの開口に接続し、環状部8aに供給された水を、第1通路14の噴出口14bから噴射させる。
また、第2通路15に連続する接続部15aを、第2環状部8bの開口に接続しているが、この接続部15aは、上記第1通路14の軸線に直交する関係にしている。そして、第2環状部8bに供給された水蒸気を、第2通路15の噴出口15bから噴射させるようにしている。
【0014】
また、図4に示すように、水通路となる配管9a、9aをタンク6から突出させた部分を折り曲げて、配管9a,9bの端部には、それぞれフレキシブルなホース10a,10aを接続している。ただし、図4では、上記一対の配管9a,9aのうち、一方の配管9aのみを示し、他方の配管9a側は省略している。
上記一対の配管9a,9aのそれぞれに接続したホース10a,10aの他端を、1本の配管11aの両端に接続する。つまり、配管11aの両端には、ホース10a,10aを介して配管9a,9aを接続しているが、図4では、配管11aの他方の端部側を省略している。
【0015】
そして、上記の配管11aの中間には供給配管12aを接続し、この供給配管12aを図示しない水供給源に接続している。図4の矢印Aのように、供給配管12aに水を供給することによって、上記配管11a、ホース10a、配管9aを介して、タンク6内の環状部8aへ水を供給し、上記ノズル13から水を噴射させるようにしている。
【0016】
同様に、水蒸気通路となる一対の配管9b,9bも、タンク6の外部において、それぞれフレキシブルなホース10b,10bに接続し、このホース10b、10bを1本の配管11bに接続している。さらに、この配管11bの中間には供給配管12bを接続し、この供給配管12bを図示しない水蒸気供給源に接続している。但し、水蒸気通路となる配管9b,9bについても、図4では、一方のみを示し、供給配管12bの他端側を省略している。
そして、矢印Bのように、水蒸気の供給配管12bに水蒸気を供給することによって、上記配管11b、ホース10b、配管9bを介して、タンク6内の環状部8bへ水蒸気を供給し、ノズル13から水蒸気を噴射させるようにしている。
【0017】
なお、上記配管9aと配管11aとの間を連結するホース10a、配管9bと配管11bとの間を連結するホース10bは、両配管9aと配管11a間距離、配管9bと11b間距離よりも十分に長くして、後で説明する手段によって配管9a,9bが上下方向へ移動する際に、対応できるようにしている。つまり、配管9a、9bが上下して、配管9aと配管11aとの距離や、配管9bと配管11bとの距離が変化したとしても、十分な長さを有するフレキシブルなホース10a、10bが上記距離の変化に応じて延びたり弛んだりする。
【0018】
また、タンク6の外部には、図4に示すように、図示しないベースに起立させた一対の支柱16を設け、この支柱16に、上記配管11aおよび配管11bを固定している。さらに、上記配管9a,9bを棒状の支持部材17に固定するとともに、この支持部材17には、板部材18を固定し、この板部材18を、上記支柱16に沿って上下に移動可能に連結している。例えば、図5に示すように、支柱16に、軸方向に沿った棒状のガイド凸部16aを設けるとともに、板部材18に、上記ガイド凸部16aにかみ合う凹部を備えたガイド部材19を設けて、両者を摺動自在に連結している。
【0019】
さらに、上記板部材18の中央には、固定部20を設けて、そこにエアシリンダ21のロッド21aを取り付けるとともに、このエアシリンダ21のシリンダ本体21bを、図示しないベースに固定している。
そこで、上記エアシリンダ21を伸縮させると、上記板部材18が支柱16に沿って上下し、この板部材18に固定された支持部材17と、支持部材17に固定された配管9a,9bが上下する。その結果、第1環状部8aおよび第2環状部8bがタンク6内で上下し、上記ノズル13が上下することになる。
このように構成することによって、上記洗浄硬化装置5では、ノズル13を上下させ、流体の噴射位置を上下に移動させながら、タンク6内に水および水蒸気を噴射することができる。
【0020】
以下に、上記洗浄硬化装置5を用いて、含浸対象物Wの洗浄と硬化処理を行なう方法を説明する。
まず、含浸タンク1で、巣穴や細孔に含浸剤を充填した含浸対象物Wを、タンク6内の架台7上にセットする。このとき、含浸対象物Wを、水蒸気の供給路となる第2環状部8bの内側に位置するようセットし、タンク6の図示しない蓋を閉じる。
【0021】
次に、水供給源および水蒸気供給源を制御して、水と水蒸気とを供給し、ノズル13から、水と水蒸気とを同時に噴射させ、その混合流体からなる噴流を含浸対象物Wの表面に吹き付ける。そのため、含浸対象物W表面は、水と水蒸気の混合流体によって洗浄され、余分な含浸剤が洗い流される。このように、水と水蒸気との混合流体による洗浄では、水蒸気によって水の温度が高くなるので、含浸剤の洗浄性が上がり、水だけの噴射と比べて洗浄時間を短縮できる。例えば、供給源において常温の水と、約140℃以上の水蒸気とを用いた場合、混合流体の温度は、ノズル13の噴出口からの噴出直後で80℃〜90℃となり、常温の水洗浄と比べて洗浄性は高くなる。
また、水蒸気のみの噴射では、含浸対象物表面を洗浄する水分量が不足して十分に洗浄ができないことがあったが、水蒸気に水を混合することによって、必要な水分量を確保できる。
【0022】
さらに、この洗浄時に、上記エアシリンダ21を駆動して、ノズル13の位置を上下させれば、上記流体が含浸対象物Wの表面や加工穴に直接衝突する面積を大きくすることができる。従って、含浸対象物の表面および加工穴の余分な含浸剤をより速やかに洗い流すことができる。
また、水および水蒸気の噴出圧力によって、含浸対象物Wの表面に付着している余分な含浸剤を吹き飛ばすことができるので、その噴出圧力を高めれば、洗浄時間をさらに短縮することができる。
【0023】
含浸対象物W表面の含浸剤が取り除かれたら、含浸剤の硬化工程に入るが、硬化時には、水の供給を止めて、水蒸気を噴射させる。
この実施形態では、硬化時に水蒸気が含浸対象物Wの表面へ向かって噴射されるが、水蒸気は含浸対象物表面に対し直接噴射されなくてもかまわない。水蒸気によってタンク6内の温度を上昇させ、含浸対象物Wの温度を含浸剤の硬化温度以上にできればよい。但し、タンク6内をムラなく高温に保つよりも、含浸対象物表面に直接水蒸気を当てるようにした方が、短時間で含浸対象物Wの温度を上昇させることができる。なお、この実施形態では、硬化時には、水の供給を止めて水蒸気のみを噴射させるようにしているが、タンク6内の温度を上げて、含浸対象物Wを硬化温度以上に保つことができれば、必ずしも水の供給を完全に止めなくてもよい。
また、含浸対象物Wには、洗浄時に高温の混合流体が吹き付けられるので、それが予熱となって、含浸対象物Wは、洗浄時にもある程度温められている。そのため、水の供給を停止して、ノズル13から水蒸気のみを噴射する硬化処理の開始時点で予熱済みということになる。従って、予熱のない場合と比べて短時間で含浸対象物Wの温度を硬化温度に到達させることができ、その分、硬化工程での時間を短縮できる。
【0024】
なお、この実施形態では、水と水蒸気とからなる高温の混合流体を含浸対象物Wに吹き付けることによって含浸対象物W表面の洗浄を行なっているが、洗浄時に含浸対象物W表面に付着している余分な含浸剤が硬化してしまうことがないのは、次の理由による。
含浸剤は、硬化開始温度に達したからといって瞬時に硬化するのではなく、含浸剤が硬化するためには、硬化開始温度以上の状態に一定時間おかれることが必要である。
そして、硬化時間は、温度が高いほど短くなる。反対に、温度が低ければ硬化に時間がかかる。例えば、100℃では3分間で硬化する含浸剤を用いた場合、70℃では硬化に10分間以上かかる。
また、洗浄時に高温の流体を吹き付けていたとしても、含浸対象物W全体の温度がすぐに流体と同温になるわけではなく、含浸対象物Wが含浸剤の硬化温度に達するまでには時間がかかる。そのため、上記のように、水と水蒸気とを吹き付けて短時間で洗浄が終了すれば、洗浄中に含浸剤が硬化することはない。
【0025】
次に、この実施形態の洗浄硬化方法と従来の洗浄、硬化方法とを対比した結果を説明する。両方を対比するために、それぞれの方法によって同じ含浸対象物の洗浄と硬化処理をする実験を行なった。
{実験}
この実験では、約7kgのミッションケースを含浸対象物として用いた。そして、同様の2個の含浸対象物に対し、図7に示す従来例の含浸タンク1を用いて含浸剤を充填してから、この実施形態の洗浄硬化方法と、従来の洗浄、硬化方法とを用いて、別々に、洗浄、硬化処理を行なった。そして、以下では、上記洗浄硬化装置5を用いた実施形態の方法を「本発明の方法」ということにする。
【0026】
{本発明の方法}
本発明の洗浄硬化方法を用いた実験の実施条件は以下の通りである。
この方法を実施するために、上記実施形態の洗浄硬化装置5を用い、洗浄時には、20℃の水と、140℃以上の水蒸気とを同時に噴射させ、洗浄後の硬化時には、水の供給を停止して、水蒸気のみを噴射させる。なお、上記タンク容量は含浸対象物の大きさと、ノズル13の移動を考慮して、600L(リットル)としている。
また、上記洗浄時の終了は、混合流体の噴射時間で管理しているが、その時間は、同様の含浸対象物を用いた予備実験で決定した。具体的には、含浸剤に蛍光剤を混入して含浸させてから、水と水蒸気の混合流体の噴射によって洗浄し、表面に蛍光剤が残っているか否かをUV(紫外線)ランプによって確認した。そして、洗い残しがなくなる洗浄時間を特定した。この実験では、100秒間で洗い残しなく洗浄できることが分かった。
含浸剤の硬化時間も、上記洗浄硬化装置5を用いた予備実験によって確認した。
【0027】
{従来方法}
従来方法は、図7に示す工程における、第1洗浄タンク2、第2洗浄タンク3および湯浸タンク4を用いる方法である。上記第1洗浄タンク2および第2洗浄タンク3では、常温の水を洗浄水として用い、湯浸タンク4内の水温は90℃とした。
また、洗浄時間は、上記した本発明の方法のための予備実験と同様にして、洗い残しがない時間とし、硬化時間も実験的に確認した。
【0028】
上記の2つの方法を、装置容量、処理時間および使用水量について対比し、その結果を、図6に示している。
すなわち、本発明の方法では、装置としてのタンク6の容量が600Lであるのに対し、従来方法では、第1、第2洗浄タンク2,3および湯浸タンク4とも、タンク内に含浸対象物を固定し、上下動や回転させるための機構を設けるため、1800L必要となり、総タンク容量が5400Lとなる。本発明では、洗浄と硬化工程において、一つのタンク6のみで処理を行なうことができるとともに、含浸対象物Wを漬け洗いするための洗浄水が不要なので、1つのタンクの容量を小さくできる。そのため、従来方法と比べて、総タンク容量を圧倒的に小さくできる。
【0029】
なお、上記実施形態の洗浄硬化装置5は、タンク6外部にも、配管やエアシリンダ21などの部品が必要であるが、これらを考慮しても、上記タンク容量の差は大きい。従って、上記実施形態の方法を用いる場合には、装置を小型化でき、従来方法と比べて設備コストを抑えることができる。さらに、装置の設置面積を小さくできるので、設置場所の自由度も上がる。
【0030】
また、洗浄と硬化処理にかかる時間は、本発明の6分40秒に対し、従来方法では13分30秒と、2倍以上かかっている。硬化処理にかかる時間には差がないが、洗浄処理時間は、この発明の方法が100秒であるのに対し、従来方法では540秒と、5倍以上である。
この発明の方法では、上記したように、洗浄しながら予熱ができるので、洗浄時間と硬化時間との区切りをつけ難いが、総処理時間において、6分40秒と13分30秒となり、従来方法の方が約2倍の時間を必要とする。
【0031】
さらに、使用水量も、本発明の方法で3.5L、従来の方法で7.3Lとなり、従来方法の方が2倍以上の水を使用する。
なお、本発明の使用水量は、1回の洗浄および硬化処理のためにノズルから噴射される水量を直接測ったものである。この方法では、洗浄時の水と水蒸気との合計で2L〜1.5L、硬化時の水蒸気が1.5L〜2Lである。
従来方法では、タンク容量1800Lの洗浄水で、複数回の処理が可能であるが、洗浄水や湯中の含浸剤濃度が一定値以上にならないように、定期的に交換している。そこで、図6に示す使用水量は、タンクの交換サイクルから算出した、1回の処理に必要な使用水量であり、洗浄に5L、硬化に2.3Lである。
【0032】
以上のように、この実施形態の方法を用いれば、洗浄と硬化とを一つのタンク内で処理することができるため、装置を大幅に小型化することが可能である。また、処理時間が短縮し、使用水量を減らすこともできる。特に、使用水量が少ないということは、廃水量が少ないと同じことなので、廃水処理の負荷が軽くなり、廃水処理の低コスト化が実現できる。
なお、上記実施形態では、含浸剤の洗浄と硬化を行なうために、図1〜図5に示す装置を用いているが、この発明の洗浄硬化方法を実施するための装置は、上記したものに限らない。洗浄時に、洗浄したい部分に対して水と水蒸気とを噴射し、硬化時には水蒸気を噴射できる装置であればよい。例えば、水と水蒸気を噴射するノズルも、上記ノズル13のような外部混合型の二流体ノズルに限らない。内部混合型の二流体ノズルでもかまわない。但し、ノズル内で水と水蒸気とを混合した場合には、水蒸気の凝縮が起こりやすく、温度の低下と、噴射圧力の低下を招き易いという欠点がある。
また、水と水蒸気とを別々のノズルから噴射させて噴射後に混合するようにしてもかまわない。
【0033】
また、含浸対象物に対する流体の噴射位置を変化させるために、上記のようにノズル13を上下させる必要もなく、必要箇所に向かって流体が噴射されるように含浸対象物側を移動させるようにしても良いし、含浸対象物形状によっては、特に噴射位置を移動させる必要がない場合もある。要するに、洗浄時には、必要な箇所に対して水と水蒸気とを混合して噴射でき、硬化時には水蒸気を噴射できる機構を備えていれば、どのような装置でも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の処理方法を用いた含浸処理工程を示した図である。
【図2】実施形態のタンク内の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】実施形態のタンク外部の斜視図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】実施形態の方法と従来方法との対比実験の結果を示した表である。
【図7】従来の含浸処理工程を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
5 洗浄硬化装置
6 タンク
8a (水供給用の)環状部
8b (水蒸気供給用の)環状部
13 ノズル
【出願人】 【識別番号】390008958
【氏名又は名称】株式会社中央発明研究所
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之


【公開番号】 特開2008−708(P2008−708A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173978(P2006−173978)