トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般

【発明の名称】 網状の薄膜部材の塗布装置
【発明者】 【氏名】宮松 宏樹

【氏名】吉田 貴美

【氏名】尾上 正明

【要約】 【課題】エアフィルタに対して網目を塞ぐことなく塗布できる塗布装置の提供。

【構成】網状の薄膜部材に直接的に接触する表層部に可撓性がある多孔質材料を採用することで、薄膜部材の網目が閉塞されることが防止できることを発見し、その知見に基づき発明を完成した。すなわち、厚み方向に貫通する多数の孔が形成されている薄膜部材Wの表面に塗膜を形成する塗布装置であり、薄膜部材Wを挟持し且つ薄膜部材Wに接する側の表面に付着させたインクを転写する第1転写部材11及び第2転写部材11を有し、第1転写部材11及び第2転写部材12の少なくとも一方の表層部は、可撓性がある多孔質材料から構成される多孔質層をもつ。インクの膜が網目に付着する際に薄膜部材の網目が閉塞される場合があるが、可撓性がある多孔質材料からなる表層部である多孔質層は薄膜部材の網目に接するときに形成されたインクの膜を破ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に貫通する多数の孔が形成されている薄膜部材の表面に塗膜を形成する塗布装置であって、
該薄膜部材を挟持し且つ該薄膜部材に接する側の表面に付着させたインクを転写する第1転写部材及び第2転写部材を有し、
前記第1転写部材及び前記第2転写部材の少なくとも一方の表層部は、可撓性がある多孔質材料から構成される多孔質層をもつことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記第1転写部材及び前記第2転写部材の双方が前記多孔質層をもつ請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記多孔質材料がもつ孔の大きさは、前記薄膜部材がもつ前記孔の大きさと概ね同じであるか又は小さい請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記多孔質材料はウレタン製のスポンジである請求項1〜3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
前記第1転写部材及び前記第2転写部材は、平行に並設された1組のロール、1組の無端ベルト、又は、ロール及び無端ベルトであって、
前記薄膜部材は、前記第1転写部材及び前記第2転写部材の間をそれらの表面に対して概ね滑ることなく通過する帯状の部材である請求項1〜4のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項6】
前記薄膜部材は網状部材である請求項1〜6のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項7】
厚み方向に貫通する多数の孔が形成されている薄膜部材の表面に塗膜を形成する塗布装置であって、
該薄膜部材の一面側からインクを噴霧する噴霧手段と、
該噴霧手段が該薄膜部材に該インクを噴霧する部位の他面側に配設され且つ該薄膜部材を通過した該インクを表面に付着させるロールと、該ロールの表面に当接し付着した該インクを剥ぎ落とす刃部をもつドクターとを備えるインク回収手段と、を有することを特徴とする塗布装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、網状の薄膜部材に対して孔を塞ぐことなくインクを塗布することができる塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の塵を確実に集塵できると共に水洗いが可能なエアフィルタとして、樹脂繊維の外表面にシリコーン樹脂又はフッ素樹脂をコーティングすると共に起毛したエアフィルタが開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−224414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、本発明者らが検討を行った結果、シリコーン樹脂やフッ素樹脂を繊維の外表面にコーティングする場合に、エアフィルタに形成された孔が閉塞される問題があることが判明した。エアフィルタは多数の孔をもつ網状の薄膜部材であるので、孔が閉塞すると空気抵抗が大きくなる。
【0004】
エアフィルタを用いた装置としてはエアコンなどがあるが、エアコン内部の清掃を簡便にする目的でエアフィルタに形成する孔の大きさを小さくしてエアコン内部に塵埃が侵入することを防止しようとしている。このように形成された孔の大きさが小さいエアフィルタにおいて、フッ素樹脂などをコーティングする時に孔が閉塞される問題は顕著である。
【0005】
本発明は上記実情に鑑み完成された発明であり、エアフィルタのような多数の孔をもつ網状部材などの薄膜部材に対して網目を塞ぐことなく塗布できる塗布装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
(1)上記課題を解決する目的で本発明者らは鋭意検討を行った結果、網状の薄膜部材に直接的に接触する表層部として可撓性がある多孔質材料を採用することで、薄膜部材の網目が閉塞されることが防止できることを発見し、その知見に基づき以下の発明を完成した。すなわち、本発明の塗布装置は、厚み方向に貫通する多数の孔が形成されている薄膜部材の表面に塗膜を形成する塗布装置であって、
該薄膜部材を挟持し且つ該薄膜部材に接する側の表面に付着させたインクを転写する第1転写部材及び第2転写部材を有し、
前記第1転写部材及び前記第2転写部材の少なくとも一方の表層部は、可撓性がある多孔質材料から構成される多孔質層をもつことを特徴とする。
【0007】
インクの膜が網目に付着する際に薄膜部材の網目が閉塞される場合があるが、可撓性がある多孔質材料からなる表層部である多孔質層は薄膜部材の網目に接するときに形成されたインクの膜を破ることが可能になる。つまり、インクの膜が形成されて網目が塞がれることがあったとしても、多孔質層が当接することで、孔内の空気が吹き付けられたり吸引されたりして形成された膜が吹き破られたり、孔の縁の部分によって突き破られたりすることで網目の閉塞が防止される。また、多孔質材料は孔の部分を除いた部分で薄膜部材の表面にインクを転写するので、多孔質材料ではない一様な平面からのインクの転写と比べて網目を閉塞するおそれが少なくなる。
【0008】
そこで、前記第1転写部材及び前記第2転写部材の双方が前記多孔質層をもつことが望ましい。また、前記多孔質材料がもつ孔の大きさは、前記薄膜部材がもつ前記孔の大きさと概ね同じであるか又は小さいことが望ましい。具体的に多孔質層を構成する多孔質材料として好ましい材料としては、ウレタン製のスポンジが挙げられる。
【0009】
更に、具体的に望ましい前記第1転写部材及び前記第2転写部材としては、平行に並設された1組のロール、1組の無端ベルト、又は、ロール及び無端ベルトが挙げられる。その場合に、前記薄膜部材は、前記第1転写部材及び前記第2転写部材の間をそれらの表面に対して概ね滑ることなく通過する帯状の部材として供給されることが望ましい。
【0010】
なお、薄膜部材としては網状部材が例示される。
【0011】
(2)薄膜部材の網目を閉塞しないようにするためには、網目の大きさよりもインクの粒子を小さくして噴霧することでも実現可能である。しかしながら、小さな粒子として噴霧すると、噴霧されたインク粒子は網目を透過して飛散して無駄になってしまい、充分な実用性が達成できないことになる。そこで、本発明者らは飛散するインク粒子を効率的に回収する機構を付加することで実用性を向上した塗布装置を完成した。
【0012】
すなわち、上記課題を解決する本発明の他の塗布装置は、厚み方向に貫通する多数の孔が形成されている薄膜部材の表面に塗膜を形成する塗布装置であって、
該薄膜部材の一面側からインクを噴霧する噴霧手段と、
該噴霧手段が該薄膜部材に該インクを噴霧する部位の他面側に配設され且つ該薄膜部材を通過した該インクを表面に付着させるロールと、該ロールの表面に当接し付着した該インクを剥ぎ落とす刃部をもつドクターとを備えるインク回収手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
つまり、薄膜部材の一面側からインクを噴霧する噴霧手段から噴霧されるインクを回収するために、薄膜部材の他面側にインク回収手段を配設する構成を採用している。薄膜部材は多数の孔をもつ部材なので噴霧されたインク粒子のうち、薄膜部材に付着しないものは薄膜部材の孔を通じて一面側から他面側に行くことになる。
【0014】
従って、薄膜部材の他面側にインク粒子を受けることができるロールを配設し、付着するインク粒子を剥ぎ落とすドクターを配設することでインクを速やかに回収することができる。本装置はインクの固化が遅いものに好適に適用することができる。例えば、光硬化性のインクや高沸点溶媒をビヒクルとして含有するインクなどであり、特に光硬化性のインクに適用することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の塗布装置について実施形態に基づき詳細に説明する。本実施形態の塗布装置は厚み方向に貫通する多数の孔が形成されている薄膜部材の表面にインクからなる塗膜を形成する装置であり、エアコン、空気清浄機などにフィルタとして採用されている網状部材などの表面にコーティングや印刷を行う場合に好適に使用できる。例えば、フィルタに付着した空気中の塵埃を速やかに除去する目的でフッ素樹脂のコーティングを行うときに用いることができる。薄膜部材は厚さよりも孔の大きさが大きい網状部材が例示され、本実施形態の塗布装置は網状部材に対しての孔閉塞防止効果が高い。ここで、インクとしては印刷用の他、塗料なども含む概念である。フッ素塗料、シリコン塗料、通常の着色用の塗料、UV吸収用塗料などである。また、インクの組成は適用する薄膜部材の種類、孔の大きさなどにより適正に制御することが望ましい。例えば、一般的には、インクの粘度が小さかったり、インクが乾き難い方が、孔の閉塞が生起しがたい。インクの粘度や乾き易さの制御は溶媒などの組成を変化させることで行うことができる。
【0016】
(第1実施形態)
本実施形態の塗布装置は第1転写部材及び第2転写部材と必要に応じて採用されるその他の部材とを有する。
【0017】
第1転写部材及び第2転写部材は表面に付着させたインクを間に挟持した薄膜部材に転写する部材である。第1転写部材及び第2転写部材の少なくとも一方の表層部は多孔質層をもつ。多孔質層は可撓性がある多孔質材料から構成される。
【0018】
ここで多孔質層が備える可撓性の程度は薄膜部材を挟持したときに撓む程度であることが必須であり、挟持した薄膜部材が備える孔の内部にまで多孔質層が進入する程度であることが望ましい。多孔質層が孔の内部にまで進入する程度の可撓性をもつか否かの判断は挟持した薄膜部材により多孔質層の表面が変形するかどうかで判断できる。多孔質材料としては樹脂から形成されるスポンジが例示できる。樹脂としては特に限定されないが、インクに対して安定性が高い材料であることが望ましい。特に、可撓性の程度や孔の大きさが制御し易いことからウレタン樹脂が望ましい。スポンジは発泡など常法により製造したものが例示できる。
【0019】
多孔質材料がもつ孔の大きさは特に限定しないが、塗布対象である薄膜部材がもつ孔の大きさと同程度か小さいものが望ましい。また、多孔質材料が孔をもつ程度としては、表層部における空隙率で表すと、下限としては20%以上とすることが望ましく、30%以上とすることが更に望ましく、上限としては90%以下とすることが望ましく、80%以下とすることが更に望ましい。
【0020】
第1転写部材及び第2転写部材の形状は特に限定しない。例えば、1組のロール(図1)、1組の無端ベルト(図2(a))、ロール及び無端ベルトの組み合わせ(図2(b))が挙げられる。図2(a)に示す装置は1組の無端ベルト51、52を当接させるように配置し、その間に薄膜部材Wを通過させる形式である。図2(b)に示す装置は無端ベルト53とその無端ベルト53に当接するロール43とから構成され、その間に薄膜部材Wを通過させる形式である。
【0021】
特に1以上のロール(更には1組のロール)を採用することが望ましい。塗布の対象である薄膜部材は、第1転写部材及び第2転写部材の間をそれらの表面に対して概ね滑ることなく通過する帯状の部材にすることで容易にインクの塗布を行うことができる。
【0022】
第1転写部材及び第2転写部材の表面にインクを付着させる方法としては特に限定されない。例えば、1以上のロールを用いて順にインクを転写していったり、コーターなどによって直接インクを付着させても良い。ロールを用いてインクを転写する場合には、2以上の表面(望ましくは全体)が硬質な材料から形成されたロールを採用することが望ましい。表面が硬質な1対のロールを採用すると、それらの隙間を調節することで、第1転写部材及び第2転写部材に付着するインクの量を制御することができる。
【0023】
図2に示すような、第1転写部材11及び第2転写部材12と、第1転写部材11に隣接して配設される第1ロール21と第1ロール21に隣接して配設される第2ロール22とを有する塗布装置を例に挙げ、以下、具体的に説明する。第1ロール21と第2ロール22との間にインク30が配設され、そのインクが第1ロール21、第1転写部材11、そして第2転写部材12の順に移動していき、第1転写部材11及び第2転写部材12の間に挟持された部分Bにて薄膜部材Wの表面に転写される。第1ロール21の表面に移行するインク31の量は、第1ロール21及び第2ロール22との間の隙間の大きさを調節することで変化する。
【0024】
第1転写部材11及び第2転写部材12から薄膜部材Wの表面への転写は、第1転写部材11及び第2転写部材12のうちの少なくとも一方の表層部に形成された多孔質層により転写時における薄膜部材の孔が閉塞するおそれが少ない上に、孔を閉塞したとしても多孔質層によって閉塞するように形成された膜が破られる。従って、インクの転写によって薄膜部材の孔が塞がれることが防止できる。
【0025】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態の塗布装置は、噴霧手段とインク回収手段とを有する。
【0026】
噴霧手段は薄膜部材の一面側からインクを噴霧する手段である。インクの噴霧は適正なノズルなどにより行うことができる。ここで、噴霧されたインクの大きさは薄膜部材がもつ孔の大きさよりも小さくすることで薄膜部材がもつ孔を閉塞するおそれが小さくなる。噴霧手段61は並列に形成された複数のノズルを組み合わせて構成し、薄膜部材の流れに応じてノズルを選択してインクを噴射することで任意のパターンを薄膜部材上に形成することができる。
【0027】
インク回収手段はロールとドクターとをもつ。ロールは薄膜部材の他面側に配設されている。インクの回収率を向上するためには薄膜部材に近接させることが望ましい。ドクターはロールの表面に付着しているインクを剥ぎ落とす刃部をもつ。インク回収手段はその他にロールを洗浄する洗浄手段をもつことができる。
【0028】
噴霧手段により噴霧されたインクは薄膜部材に付着する。薄膜部材に付着しなかったインクは殆どが薄膜部材がもつ孔を通過する。薄膜部材を通過したインクはロールに到達し、ロールの表面に付着する。ロールの表面に付着したインクはドクターにより剥ぎ落とされて回収される。
【0029】
図3に示す塗布装置に基づき説明する。図3に示す塗布装置は噴霧手段61と、インク回収手段とを有する。インク回収手段はロール71とドクター72と回収路73と洗浄手段74とをもつ。
【0030】
噴霧手段61は薄膜部材Wの一面側からインクを噴霧する手段である。ロール71は薄膜部材Wの他面側に近接するように配設され、薄膜部材Wの移動に同期するように回転する。ドクター72は刃部がロール71の表面に当接するように配設されている。刃部によりロール71の表面から回収したインクは図では省略されているポンプなどによって回収路73を通じて噴霧手段61に送られて回収される。洗浄手段74は内部に洗浄液が貯留されている。回転するロール71の下部が洗浄手段74中を通過するように配設されており、ロール71の表面に付着したインクをドクター72により回収した後に、ロール71の表面に僅かに残るインクを洗浄する手段である。
【0031】
薄膜部材Wの一面側から噴霧手段61により噴霧されたインクにより薄膜部材Wの表面にインクの層が形成される。噴霧したインクの粒子の大きさを制御することで薄膜部材Wの孔を塞ぐことなく薄膜部材Wの表面にインクを付着することができる。そして、噴霧されたインクのうちの大部分は薄膜部材Wの孔を通過する。薄膜部材Wの孔を通過したインクは、薄膜部材Wの他面側に配設されるロール71の表面に付着する。ロールは図面上で時計回りに回転しており(逆方向でも同じ作用効果が得られる)、付着したインクはドクター72により剥ぎ落とされる。
【0032】
剥ぎ落とされたインクは回収路73を通じて噴霧手段61に送られて回収される。ロール71は回転しており、洗浄手段74中の洗浄液中を通過して、ドクター72にて完全に回収できなかったインクが洗浄される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態で説明した塗布装置を示す概略図である。
【図2】第1実施形態の変形例で説明した塗布装置を示す概略図である。
【図3】第2実施形態で説明した塗布装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0034】
11…第1転写部材 12…第2転写部材
21…第1ロール 22…第2ロール
30、31、32、33、34、35、36…インク
W…薄膜部材
【出願人】 【識別番号】596087812
【氏名又は名称】株式会社エルブ
【識別番号】506229707
【氏名又は名称】有限会社セントラルスクリーン
【出願日】 平成18年7月4日(2006.7.4)
【代理人】 【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏


【公開番号】 特開2008−12411(P2008−12411A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−184771(P2006−184771)