トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般

【発明の名称】 塗布装置及び塗布方法
【発明者】 【氏名】大島 篤

【氏名】松本 悟

【氏名】成瀬 康人

【氏名】曽根 信幸

【要約】 【課題】表面に同伴エア膜が形成される程度の高速でウエブを走行させて塗布を行なった場合でも、塗布膜に膜切れなどの欠陥が生じることがなく、安定した塗布が行なえるとともに、塗布の開始時或いは終了時における厚塗りを防止することのできる塗布装置及び方法を提供する。

【構成】バーコータ10は、バー12の上流側に塗布液の供給流路24を有し、その供給流路24の上流側に堰板16を備える。堰板16は、上端16Aが鋭角なウェッジ形状に形成され、その上端16Aはバー12の最上端位置12Aよりも低い位置に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続走行するウエブ下面に接触して回転するバーと、該バーに対して前記ウエブの走行方向の上流側に塗布液を供給して塗布液溜まり部を形成する塗布液供給路と、前記塗布液溜まり部の上流側に設けられた堰板とを備え、前記塗布液溜まり部を介して前記ウエブに塗布液を塗布すると共に前記バーで過剰塗布液を掻き落とす塗布装置において、
前記塗布液供給路から前記ウエブ下面に向けて塗布液をカーテン状に噴出させることにより、前記塗布液供給路の出口と前記ウエブ下面との間に塗布液の流体壁を形成したことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布液供給路の出口から前記ウエブの下面に向けて噴出させる塗布液の噴出速度は2.5m/分以上、50m/分以下であることを特徴とする請求項1の塗布装置。
【請求項3】
前記流体壁が前記塗布液溜まり部における前記上流側端部を形成することを特徴とする請求項1又は2の塗布装置。
【請求項4】
連続走行するウエブ下面に接触して回転するバーと、該バーに対して前記ウエブの走行方向の上流側に塗布液を供給して塗布液溜まり部を形成する塗布液供給路と、前記塗布液溜まりの上流側に設けられた堰板とを備え、前記塗布液溜まり部を介して前記ウエブに塗布液を塗布すると共に前記バーで過剰塗布液を掻き落とす塗布装置において、
前記堰板の上端は、前記ウエブの幅方向に一直線状で、且つ、鋭角な楔形状に形成されることを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
前記堰板に楔形状を形成するためのテーパ面を該堰板のウエブ走行方向上流側の面に形成すると共に、前記テーパ面と前記ウエブとの成す角度αが、45°≦α<90°であることを特徴とする請求項4の塗布装置。
【請求項6】
前記堰板の上端は、前記バーを支持するバー支持部材の上流側上面よりも前記ウエブに近い位置に配置されることを特徴とする請求項5の塗布装置。
【請求項7】
前記堰板の上端を通りウエブに平行な平行線を基準にして、前記ウエブから平行線までの距離をC1とし、前記平行線から前記バー支持部材の上流側上端面までの距離をC2としたときに、0.2≦C1/C2≦5を満足することを特徴とする請求項6の塗布装置。
【請求項8】
前記バーの上端は、前記堰板の上端よりも高い位置に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1の塗布装置。
【請求項9】
前記ウエブが塗布開始前に前記バーに進入する進入角度を水平面に対してθ3とし、前記バーの上端と前記堰板の上端とを結ぶ線の成す角度を水平面に対してβとしたときに、θ3<βであることを特徴とする請求項1〜8の何れか1の塗布装置。
【請求項10】
前記ウエブの塗布中における前記バーへの侵入角度を水平面に対してθ1とし、バー支持部材の上流側上面が水平面に対して成す角度をγとしたときに、0.5≦θ1/γ≦2を満足することを特徴とする請求項9の塗布装置。
【請求項11】
前記ウエブに塗布される塗布液の塗布幅をLとし、前記ウエブと前記堰板と前記バー支持部材の上流側上端面と前記バーとで囲まれる前記塗布液溜まり部をウエブ走行方向で縦に切断した縦断面積をSとしたときに、S/L≦0.15mmであることを特徴とする請求項6〜10の何れか1の塗布装置。
【請求項12】
連続走行するウエブ下面に接触して回転するバーと、該バーに対して前記ウエブの走行方向の上流側に塗布液を供給して塗布液溜まり部を形成する塗布液供給路と、前記塗布液溜まり部の上流側に設けられ、前記ウエブとの間に該ウエブに沿って塗布液流れを発生させる堰板とを備え、前記塗布液溜まり部を介して前記ウエブに塗布液を塗布すると共に過剰塗布液を前記バーで掻き落とす塗布装置の塗布方法において、
前記塗布液供給路から前記ウエブに向けて塗布液をカーテン状に噴出させることにより、前記ウエブの走行に同伴される同伴エアを遮断する流体壁を形成しながら塗布することを特徴とする塗布方法。
【請求項13】
前記塗布液供給路の出口から前記ウエブの下面に向けて噴出する塗布液の噴出速度は2.5m/分以上、50m/分以下であることを特徴とする請求項12の塗布方法。
【請求項14】
前記塗布液供給路の出口における液圧をPとし、大気圧をPとしたときに、
P/P>1.1を満足することを特徴とする請求項12又は13の塗布方法。
【請求項15】
前記堰板の上端が、前記ウエブの幅方向で一直線で、且つ鋭角な楔形状に形成されていることを特徴とする請求項12〜14の何れか1の塗布方法。
【請求項16】
前記堰板に楔形状を形成するためのテーパ面を該堰板のウエブ走行方向上流側の面に形成すると共に、前記テーパ面と前記ウエブとの成す角度αが、45°≦α<90°であることを特徴とする請求項15の塗布方法。
【請求項17】
前記塗布装置を上昇させて塗布を開始する塗布開始時に、前記堰板の上端よりも前記バーの方が先に前記ウエブに接触することを特徴とする請求項12〜15の何れか1の塗布方法。
【請求項18】
前記塗布装置を下降させて塗布を終了する塗布終了時に、前記堰板の上端よりも前記バーの方が後に前記ウエブから離れることを特徴とする請求項12〜17の何れか1の塗布方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は塗布装置及び塗布方法に関し、特に、バーコータにおいて高速度でウエブを走行させて塗布液を塗布した場合にも安定して塗布を行なうことのできる塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版は通常、純アルミニウムまたはアルミニウム合金のウエブにおける少なくとも一方の面を目立てし、その面に必要に応じて陽極酸化皮膜を形成して支持体ウエブを形成し、次いで、目立てされた側の面に感光層形成液または感熱層形成液を塗布して乾燥し、感光性または感熱性の製版面を形成することにより、製造される。
【0003】
感光層形成液及び感熱層形成液などの塗布液を塗布する塗布装置としては一般的にバーコータが使用される。バーコータは、連続走行するウエブ下面に接触して回転するバーと、ウエブの走行方向に対してバーの上流側に塗布液を吐出して塗布液溜り部を形成し、ウエブの下面に塗布液を塗布する塗布部とを備える。また、バーの上流側に第1の堰板を設けたSLB型バーコータ(特許文献1参照)や、バーの下流側にも第2の堰板を設けたPBS型バーコータ(特許文献2参照)なども一般的に使用されている。
【0004】
しかし、これらの塗布装置では、ウエブの走行速度を高くすると、ウエブに追従して走行する空気(以下、同伴エア)の膜がウエブ表面に形成され、この同伴エアの膜が塗布液溜り部に持ち込まれ、塗布膜に膜切れなどの欠陥を生じさせ、塗布が安定に行なわれなくなるという問題があった。
【0005】
このような問題を解消するため、特許文献3では、塗布液溜まり部よりも上流側に堰板を設けることによって、ウエブに沿って塗布液の液体流を生じさせている。これにより、ウエブの表面に同伴される空気が塗布液溜まり部に持ち込まれるのを防止することができ、塗布を安定して行うことができる。
【特許文献1】実開平02−048167号公報
【特許文献2】特公昭58−004589号公報
【特許文献3】特開2002−192050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記塗布装置は、ウエブの走行速度をさらに増加させた際(例えば100m/分以上に増加させた際)、同伴エアの持ち込みを完全に防止することができなくなり、スジ故障や膜切れ等の塗布欠陥を発生する場合がある。
【0007】
また、従来の塗布装置は、塗布の開始時或いは終了時に、厚塗り部を生じるという問題があった。即ち、塗布の開始時には、塗布液を吐出しているバーコータを、走行中のウエブに相対的に近づけることによって塗布を開始するが、その際に規定量以上の塗布液がウエブに転移し、厚塗り部が形成されるという問題があった。同様に、塗布の終了時には、走行中のウエブからバーコータを相対的に離すことによって塗布を終了するが、その際にバーとウエブの隙間が拡がって多量の塗布液がウエブに転移し、厚塗りが発生するという問題があった。このようにウエブに厚塗りが発生すると、後段の乾燥工程で塗布液が十分に乾燥せず、ウエブをガイドするパスローラ等に塗布液が転移し、さらにその塗布液がウエブに転移して不良品を発生するという問題があった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ウエブ表面に同伴エア膜が形成されるような高速でウエブを走行させて塗布を行なった場合でも、塗布膜に膜切れなどの欠陥が生じることがなく、安定した塗布が行なえるとともに、塗布の開始時或いは終了時における厚塗りを防止することのできる塗布装置及び塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、連続走行するウエブ下面に接触して回転するバーと、該バーに対して前記ウエブの走行方向の上流側に塗布液を供給して塗布液溜まり部を形成する塗布液供給路と、前記塗布液溜まり部の上流側に設けられた堰板とを備え、前記塗布液溜まり部を介して前記ウエブに塗布液を塗布すると共に前記バーで過剰塗布液を掻き落とす塗布装置において、前記塗布液供給路から前記ウエブ下面に向けて塗布液をカーテン状に噴出させることにより、前記塗布液供給路の出口と前記ウエブ下面との間に塗布液の流体壁を形成したことを特徴とする塗布装置を提供する。
【0010】
本発明の請求項1によれば、塗布液供給路からウエブ下面に向けて塗布液をカーテン状に噴出させることにより、塗布液供給路の出口とウエブ下面との間に塗布液の流体壁を形成した状態で塗布するようにしたので、ウエブの走行に同伴される同伴エアを流体壁で遮断することができる。
【0011】
これにより、ウエブ表面に同伴エア膜が形成されるような高速でウエブを走行させて塗布を行なった場合でも、同伴エアを流体壁で遮断するので、塗布膜に膜切れなどの欠陥が生じることがなく、安定した塗布を行うことができる。
【0012】
請求項2は請求項1において、前記塗布液供給路の出口から前記ウエブの下面に向けて噴出させる塗布液の噴出速度は2.5m/分以上、50m/分以下であることを特徴とする。
【0013】
上記した流体壁を安定して形成するには、塗布液供給路の出口から噴出させる塗布液の噴出速度は2.5m/分以上にすることが好ましいからである。また、噴出速度が大き過ぎると噴出の勢いでウエブにバタツキを発生させてしまうので、噴出速度は50m/分以下であることが好ましい。
【0014】
請求項3は請求項1又は2において、前記流体壁が前記塗布液溜まり部における前記上流側の面を成すことを特徴とする。
【0015】
請求項3によれば、流体壁が塗布液溜まり部における上流側端部を形成するようにしたので、1つの塗布液供給路からの塗布液で、流体壁の形成による同伴エアの遮断と、塗布液溜まり部を介しての塗布との両方を兼ねることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は前記目的を達成するために、連続走行するウエブ下面に接触して回転するバーと、該バーに対して前記ウエブの走行方向の上流側に塗布液を供給して塗布液溜まり部を形成する塗布液供給路と、前記塗布液溜まりの上流側に設けられた堰板とを備え、前記塗布液溜まり部を介して前記ウエブに塗布液を塗布すると共に前記バーで過剰塗布液を掻き落とす塗布装置において、前記堰板の上端は、前記ウエブの幅方向に一直線状で、且つ、鋭角な楔形状に形成されることを特徴とする塗布装置を提供する。
【0017】
請求項4の発明によれば、堰板の先端が鋭角な楔形状(ウェッジ形状)に形成され、且つウエブの幅方向に一直線状になっているので、ウエブが塗布液に最初に接触するコンタクトラインがウエブの幅方向に一直線状に形成され、このコンタクトラインにおいて、ウエブと堰板上端との隙間を通過する塗布液が加圧される。したがって、ウエブ表面の同伴エアがコンタクトラインを通って塗布液溜まり部に持ち込まれることを効果的に防止することができる。これにより、ウエブのライン速度(ウエブの走行速度)を増加させた際にも、同伴エアの塗布液溜まり部への持ち込みを防止できるので、安定した塗布を行うことができる。
【0018】
請求項5は請求項4において、前記堰板に楔形状を形成するためのテーパ面を該堰板のウエブ走行方向上流側の面に形成すると共に、前記テーパ面と前記ウエブとの成す角度αが、45°≦α<90°であることを特徴とする。
【0019】
請求項5のように、テーパ面とウエブとの成す角度αを、45°≦α<90°の範囲にすることで、コンタクトラインによって遮断された同伴エアがテーパ面に沿って下方に逃げ易くなり、コンタクトラインによる同伴エアの遮断効果を一層向上させることができる。また、ウエブ下面からテーパ面に沿って下方に逃げるL字状の同伴エア流を形成することで、ウエブと堰板上端との隙間に塗布液の安定したビードが形成され易くなる。これにより、ウエブと堰板上端との隙間を通過する塗布液の流れの安定化に伴って塗布液溜まり部の圧力も安定化するので、安定塗布を行うことができる。
【0020】
尚、請求項1の流体壁を形成して同伴エアの遮断する場合にも、テーパ面とウエブとの成す角度αを、45°≦α<90°の範囲にすることで、ウエブと堰板上端との隙間に塗布液の安定したビードが形成され易くなるので、有効である。
【0021】
請求項6は請求項1〜5のいずれか1において、前記堰板の上端は、前記バーを支持するバー支持部材の上流側上面よりも前記ウエブに近い位置に配置されることを特徴とする。
【0022】
請求項6によれば、堰板の上端を、バー支持部材の上流側上面よりもウエブに近い位置に配置することで、塗布液供給流路から供給された塗布液が塗布液溜まり部に溜まり易くなる。これにより、塗布液溜まり部に圧力がかかり易くなるので、同伴エアの塗布液溜まり部への持ち込みを抑制できる。
【0023】
請求項7は請求項6において、前記堰板の上端を通りウエブに平行な平行線を基準にして、前記ウエブから平行線までの距離をC1とし、前記平行線から前記バー支持部材の上流側上面までの距離をC2としたときに、0.2≦C1/C2≦5を満足することを特徴とする。
【0024】
請求項7によれば、0.2≦C1/C2≦5を満足することにより、同伴エアの塗布液溜まり部への持ち込みを一層確実に防止でき、高速塗布における塗布結果の発現を防止できる。この場合、堰板の上端とウエブとの隙間であるC1を狭くし過ぎると、ウエブの微妙な振動等によりウエブが堰板の上端に接触してスリキズを発現する恐れがあるので、C1は0.1mmを下回らないことが好ましい。尚、0.2≦C1/C2≦5の関係は、堰板及びバー支持部材の上流側上面の全体において満足することが必要である。
【0025】
請求項8は請求項1〜7のいずれか1において、前記バーの上端は、前記堰板の上端よりも高い位置に配置されることを特徴とする。
【0026】
請求項8によれば、バーの上端を堰板の上端よりも高い位置に配置するようにした。即ち、バーの上端位置から堰板の上端までの高さの差Hが正であるようにする。これにより、バーにより掻き落とされた過剰塗布液は、同伴エアの流れとは逆向きに流れるので、同伴エアの塗布液溜まり部への持ち込みを一層効果的に防止できる。
【0027】
請求項9は請求項1〜8の何れか1において、前記ウエブが塗布開始前に前記バーに進入する進入角度を水平面に対してθ3とし、前記バーの上端と前記堰板の上端とを結ぶ線の成す角度を水平面に対してβとしたときに、θ3<βであることを特徴とする。
【0028】
請求項9によれば、θ3<βを満足するようにしたので、塗布開始のために塗布装置をウエブに向けて上昇させたときに、塗布液溜まり部よりもバーが先にウエブに接触する。また、塗布を終了するために塗布装置を下降させてウエブから離すときに、塗布液溜まり部よりもバーが後にウエブから離れる。これにより、塗布開始時及び塗布終了時の厚塗りを防止できる。
【0029】
請求項10は請求項9において、前記ウエブの塗布中におけるバーへの侵入角度を水平面に対してθ1とし、バー支持部材の上流側上面が水平面に対して成す角度をγとしたときに、0.5≦θ1/γ≦2を満足することを特徴とする。
【0030】
請求項10によれば、バー支持部材の上流側上面とウエブの侵入角度とは平行、即ちθ1/γ=1であることが良いが、0.5≦θ1/γ≦2の範囲内であれば問題ない。また、この範囲を外れると、高速塗布が難しくなる。
【0031】
請求項11は請求項6〜10の何れか1において、前記ウエブに塗布される塗布液の塗布幅をLとし、前記ウエブと前記堰板と前記バー支持部材の上流側上面と前記バーとで囲まれる前記塗布液溜まり部をウエブ走行方向で縦に切断した縦断面積をSとしたときに、S/L≦0.15mmであることを特徴とする。
【0032】
請求項11によれば、塗布幅Lに対して塗布液溜まり部の縦断面積Sが大きくなり過ぎると、塗布液溜まり部にかかる圧力がかかり難くなるだけでなく不均一になるからである。これにより、高速塗布が難しくなる。
【0033】
請求項12の発明は前記目的を達成するために、連続走行するウエブ下面に接触して回転するバーと、該バーに対して前記ウエブの走行方向の上流側に塗布液を供給して塗布液溜まり部を形成する塗布液供給路と、前記塗布液溜まりの上流側に設けられ、前記ウエブとの間に該ウエブに沿って塗布液流れを発生させる堰板とを備え、前記塗布液溜まり部を介して前記ウエブに塗布液を塗布すると共に過剰塗布液を前記バーで掻き落とす塗布装置の塗布方法において、前記塗布液供給路から前記ウエブに向けて塗布液をカーテン状に噴出させることにより、前記ウエブの走行に同伴される同伴エアを遮断する流体壁を形成しながら塗布することを特徴とする塗布方法を提供する。
【0034】
請求項12は本発明を方法発明として構成したもので、塗布液供給路からウエブに向けて塗布液をカーテン状に噴出させることにより、ウエブの走行に同伴される同伴エアを遮断する流体壁を形成しながら塗布するようにした。これにより、ウエブ表面に同伴エア膜が形成されるような高速でウエブを走行させて塗布を行なった場合でも、塗布膜に膜切れなどの欠陥が生じることがなく、安定した塗布を行うことができる。
【0035】
請求項13は請求項12において、前記塗布液供給路の出口から前記ウエブの下面に向けて噴出する塗布液の噴出速度は2.5m/分以上、50m/分以下であることを特徴とする。
【0036】
上記した流体壁を安定して形成するには、塗布液供給路の出口から噴出させる塗布液の噴出速度は2.5m/分以上にすることが好ましいからである。また、噴出速度が大き過ぎると噴出の勢いでウエブにバタツキを発生させてしまうので、噴出流速は50m/分以下であることが好ましい。
【0037】
請求項14は請求項12又は13において、前記塗布液供給路の出口における液圧をPとし、大気圧をPとしたときに、P/P>1.1を満足することを特徴とする。
【0038】
請求項14によれば、大気圧Pに対する塗布液供給路の出口の液圧Pが1.1を超えるようにして塗布液溜まり部の圧力を高めたので、同伴エアが塗布液溜まり部に持ち込まれるのを効果的に防止できる。
【0039】
請求項15は請求項12〜14の何れか1において、前記堰板の上端が、前記ウエブの幅方向で一直線で、且つ鋭角な楔形状に形成されていることを特徴とする。
【0040】
請求項15によれば、堰板の先端が鋭角な楔形状(或いはウェッジ形状)に形成され、且つウエブの幅方向に一直線状になっているので、ウエブが塗布液に最初に接触するコンタクトラインがウエブの幅方向に一直線状に形成され、このコンタクトラインにおいて、ウエブと堰板との隙間を通過する塗布液が加圧される。したがって、ウエブ表面の同伴エアがコンタクトラインを通って塗布液溜まり部に持ち込まれることを効果的に防止することができる。これにより、ウエブのライン速度(ウエブの走行速度)を増加させた際にも、安定した塗布を行うことができる。
【0041】
請求項16は請求項15において、前記堰板に楔形状を形成するためのテーパ面を該堰板のウエブ走行方向上流側の面に形成すると共に、前記テーパ面と前記ウエブとの成す角度αが、45°≦α<90°であることを特徴とする。
【0042】
請求項16によれば、テーパ面とウエブとの成す角度αを、45°≦α<90°の範囲にすることで、コンタクトラインによって遮断された同伴エアがテーパ面に沿って下方に逃げ易くなり、コンタクトラインによる同伴エアの遮断効果を一層向上させることができるからである。また、ウエブ下面〜テーパ面に沿って下方に逃げるL字状の同伴エア流を形成することで、ウエブと堰板との隙間に塗布液の安定したビードが形成され易くなる。これにより、ウエブと堰板との隙間を通過する塗布液の流れの安定化に伴って塗布液溜まり部の圧力も安定化するので、安定塗布を行うことができる。
【0043】
尚、請求項1の流体壁を形成して同伴エアの遮断する場合にも、テーパ面とウエブとの成す角度αを、45°≦α<90°の範囲にすることで、ウエブと堰板上端との隙間に塗布液の安定したビードが形成され易くなるので、有効である。
【0044】
請求項17は請求項12〜15の何れか1において、前記塗布装置を上昇させて塗布を開始する塗布開始時に、前記堰板の上端よりも前記バーの方が先に前記ウエブに接触することを特徴とする。これにより、塗布開始時の厚塗りを防止できる。
【0045】
請求項18は請求項12〜17の何れか1において前記塗布装置を下降させて塗布を終了する塗布終了時に、前記堰板の上端よりも前記バーの方が後に前記ウエブから離れることを特徴とする。これにより、塗布終了時の厚塗りを防止できる。
【0046】
なお、本発明に係る塗布装置及び塗布方法の用途は、平版印刷版の製造に限定されず、写真フィルムなどの感光材料の製造、録音テープなどの磁気記録材料の製造、及びカラー鉄板などの塗装金属薄板の製造など、バーを用いて塗布を行う場合に使用できる。したがって、ウエブとしては、従来技術の欄で述べた支持体ウエブのほか、支持体ウエブの目立てした側の面に感光性又は感熱性の製版面を形成した平版印刷原版ウエブ、写真フィルム用基材、印画紙用バライタ紙、録音テープ用基材、ビデオテープ用基材、フロッピー(登録商標)ディスク用基材など、金属、プラスチック、または紙などからなり、連続した帯状で、可撓性を有する基材などが挙げられる。また、塗布液としては、ウエブに塗布し、乾燥させて皮膜を形成するのに使用される溶液が挙げられ、具体的には、感光層形成液及び感熱層形成液のほか、ウエブの表面に中間層を形成して製版層の接着を改善する中間層形成液、平版印刷原版ウエブの製版面を酸化から保護する陽極酸化皮膜を形成するのに使用されるポリビニルアルコール水溶液、写真フィルムにおける感光層を形成するのに使用される写真フィルム用感光剤コロイド液、印画紙の感光層を形成するのに使用される印画紙用感光剤コロイド液、録音テープ、ビデオテープ、フロッピーディスクの磁性層を形成するのに使用される磁性層形成液、および金属の塗装に使用される各種塗料などが挙げられる。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係る塗布装置及び塗布方法によれば、ウエブ表面に同伴エア膜が形成されるような高速でウエブを走行させて塗布を行なった場合でも、塗布膜に膜切れなどの欠陥が生じることがなく、安定した塗布が行なえるとともに、塗布の開始時或いは終了時における厚塗りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下添付図面に従って本発明に係る塗布装置及び塗布方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0049】
図1及び図2に、本発明に係る塗布装置の実施形態の構成を示す。また、図3に塗布部の構成を示す。これらの図に示すように、バー塗布タイプの塗布装置10は、走行するウエブWの下面に塗布を行う装置であり、主としてバー12、バー支持部材14、堰板16、及び基台18で構成される。尚、ウエブWはパスローラ20、22に巻きかけられており、矢印a方向に走行するようになっている。
【0050】
バー12は、円柱状に形成され、バー支持部材14によって回動自在に支持される。そして、走行中のウエブWの下面に接触しながら、軸線の周りに回転するようになっている。バー12の回転方向は、ウエブWの走行方向aに対して反対の方向が好ましく、バー12の周速度はウエブWの走行速度の1%以内になるように設定される。なお、バー12の回転方向は、走行方向aと同方向であってもよい。
【0051】
バー12の表面は、平滑に仕上げられていてもよいが、円周方向に一定間隔で溝が設けられていてもよく、またワイヤが密に巻回されていてもよい。バー12に巻回するワイヤの直径は、0.07〜1mmが好ましく、特に0.07〜0.4mmが好ましい。なお、溝が設けられたバー及びワイヤが巻回されたバーにおいては、溝の深さまたはワイヤの太さを小さくすることにより、感光層形成液の塗り付けを薄くでき、前記溝の深さまたは前記ワイヤの太さを大きくすることにより、感光層形成液の塗り付けを厚くできる。
【0052】
バー12の直径は、6〜25mmの範囲が作製の面で好ましく、しかもウエブWに形成された感光層形成液の塗膜に縦筋が発生し難いことから好ましい。また、バー12は、通常、ウエブWの幅よりも長いが、ウエブWの幅と同一の長さであっても良い。
【0053】
ウエブWは、張力を加えた状態でバー12に接触し、所定のラップ角で接触するようになっている。上流側のウエブWと水平面との成す進入角度θ1(図3参照)は、3°〜30°、特に5°〜10°の範囲が好ましい。進入角度θ1をこのような範囲に設定すると、後述するように、塗布開始時及び塗布終了時における厚塗りを防止でき、且つ、バー12の摩耗を抑制することができる。下流側のウエブWと水平面との成す角度(排出角度)θ2は、特に限定されるものではないが、θ1とθ2で求められるラップ角度が所定の値になるように設定される。
【0054】
バー支持部材14は複数のブロックを組み合わせて形成されており、上面に円弧状の溝14Aが形成されている。この溝14Aにバー12が係合され、回転自在に支持される。溝14Aに対してウエブWの走行方向aの上流側(以下、単に上流側という)には、水平面に対して傾斜した上流側上面14Bが形成されている。この上流側上面14Bが水平面に対して成す角度をγ(図3参照)としたときに、ウエブWの侵入角度θ1との関係が、0.5≦θ1/γ≦2を満足することが好ましい。これは、上流側上面14Bとウエブとは平行、即ちθ1/γ=1であることが安定塗布にとって好ましいが、0.5≦θ1/γ≦2の範囲内であればスジ故障や膜切れ等の塗布欠陥(以下、単に塗布欠陥という)がないように高速塗布を行うことができるからである。
【0055】
溝14Aに対してウエブWの走行方向aの下流側(以下、単に下流側という)には、水平な下流側上面14Cが形成されている。この下流側上面14Cは上流側上面14Bよりも低い高さ位置に形成される。バー支持部材14の上流側の壁面14Dは垂直に形成されており、その上流側に堰板16が壁面14Dに対向して配置される。
【0056】
堰板16は、垂直に設けられた板状部材であり、下端が基台18に固定される。また、図3のように、堰板16は上端(先端)16Aが鋭角な楔形状(ウェッジ形状)に形成されている。即ち、堰板16には、縦断面形状が上端16Aにいくに従って細くなる楔形状を形成するためのテーパ面16Bが該堰板16のウエブ走行方向上流側の面に形成される。
【0057】
また、堰板16の上端16Aは、ウエブWの幅方向に一直線状に形成され、その平行度は0.01mm以上0.2mm以下に設定される。尚、平行度が小さい方が、後述の効果が大きくなるが、加工費用がかさむため、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましい。
【0058】
このように、堰板16の上端16Aが鋭角な楔形状(ウェッジ形状)に形成され、且つウエブWの幅方向に一直線状になっているので、ウエブWが塗布液に最初に接触するコンタクトラインがウエブWの幅方向に一直線状に形成され、このコンタクトラインにおいて、ウエブWと堰板上端16Aとの隙間を通過する塗布液が加圧される。したがって、ウエブ表面の同伴エアがコンタクトラインを通って塗布液溜まり部A(詳細は後述する)に持ち込まれることを効果的に防止することができる。これにより、高速塗布のためにウエブWのライン速度(ウエブの走行速度)を増加させた際にも、塗布欠陥のない安定した塗布を行うことができる。
【0059】
また、堰板16に形成されたテーパ面16BとウエブWとの成す角度αが、45°≦α<90°の範囲に形成されることが好ましい。角度αを変えるには、堰板16の頂角δを変えればよい。このように、テーパ面16BとウエブWとの成す角度αを、45°≦α<90°の範囲にすることで、コンタクトラインによって遮断された同伴エアがテーパ面16Bに沿って下方に逃げ易くなり、コンタクトラインによる同伴エアの遮断効果を一層向上させることができるからである。また、ウエブWの下面からテーパ面16Bに沿って下方に逃げるL字状の同伴エア流を形成することで、ウエブWと堰板16の上端16Aとの隙間に塗布液の安定したビードが形成され易くなる。これにより、ウエブWと堰板16の上端16Aとの隙間を通過する塗布液の流れの安定化に伴って塗布液溜まり部Aの圧力も安定化する。
【0060】
また、図3のように、堰板16の上端16Aを通りウエブWに平行な平行線17を基準にして、ウエブWから平行線17までの距離をC1とし、平行線17からバー支持部材14の上流側上面14Bまでの距離をC2としたときに、0.2≦C1/C2≦5を満足することが好ましい。0.2≦C1/C2≦5を満足することにより、同伴エアの塗布液溜まり部Aへの持ち込みを一層確実に防止でき、高速塗布における塗布欠陥の発現を防止できる。この場合、C1を狭くし過ぎると、ウエブWの微妙な振動等によりウエブWが堰板16の上端16Aに接触して、ウエブWにスリキズを発現する恐れがあるので、C1は0.1mmを下回らないことが好ましい。尚、0.2≦C1/C2≦5の関係は、堰板16及びバー支持部材14の上流側上面14Bの全体において満足することが必要である。
【0061】
バー12の上端12Aは、堰板16の上端16Aよりも高い位置に配置されることが好ましい。即ち、バー12の上端12Aから堰板16の上端16Aまでの高さの差Hが正であるようにする。このように、バー12の上端12Aを堰板16の上端16Aよりも高い位置に配置することで、バー12により塗布膜面から掻き落とされた過剰塗布液は、バー12から堰板16の方向に流れる。これにより、過剰塗布液は同伴エアが持ち込まれる方向とは逆向きに流れるので、同伴エアの塗布液溜まり部Aへの持ち込みを一層効果的に防止できる。
【0062】
更には、堰板16の上端16Aは、バー支持部材14の上流側上面14Bの上流側上端14Eよりも高い位置に配置される。換言すると、堰板16の上端16Aは、バー12を支持するバー支持部材14の上流側上面14BよりもウエブWに近い位置に配置される。これにより、ウエブW、バー12、堰板16、及び上流側上面14Bによって囲まれる塗布液溜まり部Aに圧力がかかり易くなるので、塗布欠陥がないように高速塗布を行うことができる。
【0063】
堰板16は、バー支持部材14の壁面14Dに対して平行に、且つ、所定の隙間を持って設けられ、両者の間にスリット状の供給流路24が形成される。尚、供給流路24のスリット幅C3は、塗布液(感光層形成液)の供給量を変えずに吐出圧力を高められるという点で狭いことが好ましい。
【0064】
図1及び図2のように、供給流路24は、基台18の内部に設けられた一時貯留室26に連通されている。一時貯留室26は、感光層形成液(以下、塗布液という)の貯留タンク(不図示)から塗布液を供給するポンプPの吐出側に接続されており、このポンプPを駆動することによって塗布液が一時貯留室26に供給される。
【0065】
一時貯留室26は、供給された塗布液を一時的に貯留するとともに、ポンプPの吐出量が変動した際に供給流路24から供給される塗布液の流量の変動を押える機能を有する。この一時貯留室26に供給された塗布液は、供給流路24を下端から上端に向かって流れ、供給流路24の上端の出口からウエブWの下面に向かって吐出される。これにより、ウエブWの下面、バー支持部材14の上流側上面14B、バー12、及び堰板16で囲まれる空間に塗布液溜まり部Aが形成される。この塗布液溜まり部Aの塗布液がウエブWの表面に付着することによって塗布が行われる。この場合、ウエブWに塗布される塗布液の塗布幅をLとし、塗布液溜まり部Aをウエブ走行方向で縦に切断した縦断面積をSとしたときに、S/L≦0.15mmであることが好ましい。塗布幅Lに対して塗布液溜まり部Aの縦断面積Sが大きくなり過ぎると、塗布液溜まり部Aに圧力がかかり難くなるだけでなく不均一になるからである。
【0066】
塗布液の供給量は、ウエブWの走行速度L(m/min)に応じて設定される。また、供給流路24の出口からカーテン状にウエブWの下面に向けて噴出させる塗布液の噴出速度は2.5m/分以上、50m/分以下であることが好ましい。これにより、供給流路24の出口とウエブWの下面との間に、噴出された塗布液の流体壁が形成され、この流体壁で同伴エアを遮断できる。この流体壁の形成の場合にも、堰板16に形成されたテーパ面16BとウエブWとの成す角度αが、45°≦α<90°の範囲に形成されることが好ましい。
【0067】
図2に示すように基台18は、堰板16の上流側にオーバーフロー液溜め28を備えており、堰板16の上端16Aを越えて上流側にオーバーフローした塗布液をオーバーフロー液溜め28で受けることができる。また、基台18は、バー支持部材14の下流側にオーバーフロー液溜め30を備えており、塗布液溜り部Aにおける塗布液のうちウエブWに付着せずに下流側にオーバーフローした塗布液を受けることができる。なお、オーバーフロー液溜め28、30で受けた塗布液は戻し配管(不図示)によって前記貯留タンク(不図示)に戻すことが好ましい。
【0068】
図1に示すように基台18の両端縁には側板32、34が設けられており、この側板32、34によって、オーバーフロー液溜め28、30、供給流路24、及び一時貯留室26の側壁が形成される。
【0069】
上述した基台18は、不図示の昇降手段によって支持されており、高さ方向に移動できるようになっている。したがって、バー12をウエブW側(すなわち上方)に進出させてウエブWに接触させたり、バー12をウエブWから退避させて(すなわち下方に移動させて)ウエブWから離したりすることができる。なお、基台18を移動させる代わりに、パスローラ20、22を昇降させることによって、ウエブWの走行位置を変えるようにしてもよい。
【0070】
次に上記の如く構成された本発明の塗布装置10の作用について図4(a)〜図4(c)に基づいて説明する。
【0071】
塗布開始前は図4(a)に示すように、ウエブWとバー12が離れて配置されている。
【0072】
この塗布開始前においては、ウエブWの塗布開始前の侵入角度θ3と、バー12の上端12Aと堰板16の上端16Aとを結ぶ線の水平面に対する角度βとの関係で見た場合には、θ3<βを満足していることが好ましい。
【0073】
この状態で、ウエブWを走行方向aに走行させるとともに、バー12を矢印方向に回転させ、さらに供給流路24から塗布液を吐出させる。その際、堰板16の上端16Aが、バー支持部材14の上流側上面14Bにおける上流側上端14Eよりも高い位置に配置されているので、供給流路24から吐出された塗布液は、供給流路24の出口に貯留される。また、バー12の上端12Aが堰板16の上端16Aよりも高い位置に配置されているので、供給された塗布液は、堰板16の上端16Aを越えて上流側にオーバーフローする。よって、バー12を越えて下流側にオーバーフローすることがない。
【0074】
塗布を開始する際は、まず、基台18(図2参照)を上昇させていく。これにより、バー12に対するウエブWのラップ角が徐々に大きくなり、最終的には、図4(a)に二点鎖線19で示すようにウエブWがバー12にラップする。このとき、ウエブWと堰板16の上端16Aとの距離が非常に小さいので、供給流路24から供給された塗布液は、堰板16、バー支持部材14、バー12、ウエブWで囲まれた空間に溜まり、図4(b)に示すように、塗布液溜まり部Aを形成する。そして、前記空間が塗布液で満たされると、塗布液溜まり部Aの内圧が上昇し、ウエブWへの塗布が行われる。具体的には、塗布液溜まり部Aを形成する塗布液の大部分がウエブWに付着してウエブWの走行方向aに沿って移動した後、バー12によって掻き落とされる。これにより、計量された塗布液がウエブWに残るので、所定厚みの塗布液がウエブWに塗布される。
【0075】
かかる塗布液のウエブWへの塗布において、供給流路24の出口から噴出させる塗布液の噴出速度を2.5m/分以上、50m/分以下にして、供給流路24からウエブWの下面に向けて塗布液をカーテン状に噴出させることが好ましい。これにより、供給流路24の出口とウエブWの下面との間に塗布液の流体壁を形成することができるので、この流体壁によっても同伴エアを遮断することができるからである。
【0076】
この場合、流体壁が塗布液溜まり部Aにおける上流側端部を形成することで、1つの供給流路24からの塗布液で、流体壁の形成と、塗布液溜まり部Aを介しての塗布との両方を兼ねることができる。
【0077】
一方、バー12によって掻き落とされた過剰塗布液は、バー12の上端12Aが堰板16の上端16Aよりも高い位置にあるので、走行方向aの反対方向に流れ、堰板16の上端16Aを越えて流下する。この塗布液の流れによって、走行方向aと反対方向の動圧が生じるので、ウエブWに同伴して走行方向aに持ち運ばれた同伴エアの膜は、堰板16の上端16Aの位置において上流側に押し出される。これにより、同伴エアの膜が塗布液溜まり部Aに持ち込まれることを抑制することができる。
【0078】
ところで、本実施の形態では、堰板16の上端16Aが鋭角な楔形状(ウェッジ形状)に形成されているので、ウエブWが塗布液に最初に接触する部分であるコンタクトラインがウエブWの幅方向に一直線状に形成され、このコンタクトラインにおいて、ウエブWと堰板16との隙間を通過する塗布液が大きく加圧される。したがって、ウエブWの表面に同伴するエアがコンタクトラインを通過して塗布液溜まり部Aに持ち込まれることを効果的に防止することができる。また、このような構成にすると、塗布液溜まり部Aの内圧を高めることが可能となる。即ち、従来のように堰板16の上端をフラット、或いは円弧状に形成した場合には、塗布液溜まり部Aの内圧を高めると、堰板16とウエブWとの隙間において圧力が幅方向に不均一になり、同伴エアがかえって持ち込まれ易くなるという不具合が発生するが、本実施の形態ではこれを防止できる。
【0079】
また、本実施の形態では、ウエブWに塗布される塗布液の塗布幅をLとし、塗布液溜まり部をウエブ走行方向で縦に切断した縦断面積をSとしたときに、S/L≦0.15mmとなるようにしたので、塗布液溜まり部の内圧を高めることができ、同伴エアが塗布液溜まり部Aに持ち込まれるのを効果的に防止できる。よってウエブWの走行速度Lを増加させて同伴エア膜が持ち込まれやすくなった場合にも、確実に同伴エアの持ち込みを防止することができる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、塗布開始時における厚塗りを防止することができる。
【0081】
即ち、塗布開始前においては、θ3<βを満足し、しかもバー12の上端12Aは、堰板16の上端16Aよりも高い位置にあるので、図4(a)に示したように、先ずバー12の上端12AがウエブWに接触した後、堰板16の上端16AがウエブWに接近して、塗布液溜まり部Aが形成され、これにより塗布が開始される。これにより、バー12による過剰塗布液の掻き落としが不十分になることがないので、塗布開始時の厚塗りを防止できる。
【0082】
また、塗布開始前は、塗布液が堰板16の上端16Aを越えて上流側に流下しており、ウエブWを規定の位置(すなわち二点鎖線19の位置)を走行させることによって塗布液溜まり部Aの内圧が上昇し、塗布が開始される。したがって、塗布液溜まり部Aの内圧が上昇する前に塗布が開始されることがないので、塗布開始時の厚塗りを防止することができる。即ち、塗布液溜まり部Aの内圧が上昇する前に塗布が開始された場合には、ウエブWに付着した塗布液がバー12によって十分に掻き落とされずに通過し、厚塗りが形成されるおそれがあるが、本実施の形態では、これを防止することができる。よって、後段の乾燥装置においてウエブWに塗布した塗布液を確実に乾燥させることができるので、厚塗りが発生した時のような未乾燥の塗布液の転写による不具合の発生を防止できる。このように本実施の形態によれば、塗布開始時における厚塗りを防止することができる。
【0083】
また、塗布終了時には、先ず、基台18(図1参照)を降下させる。これにより、図4(c)に示す如く、バー12に対するウエブWのラップ角度が小さくなり、ウエブWと堰板16の上端16Aとの隙間が大きくなる。この場合も塗布開始時と同様に、バー12の上端12Aは、堰板16の上端16Aよりも高い位置にあるので、塗布液溜まり部Aの塗布液のうち、堰板16の上端16Aを越えてオーバーフローする塗布液の流量が徐々に大きくなり、ウエブWに付着して運ばれる塗布液が徐々に少なくなる。そして、塗布液溜まり部AからウエブWが離れ、付着して運ばれる塗布液が無くなった後、ウエブWがバー12から離れる。したがって、ウエブWに厚塗りを発生することなく、塗布を終了することができる。即ち、従来の場合には、基台18を降下させるのと略同時にバー12とウエブWとの隙間が大きくなるため、塗布終了時に多量の塗布液がウエブWに付着して運ばれ、厚塗りが生じるという欠点があったが、本実施の形態では、これを防止することができる。
【実施例】
【0084】
(実施例1)
幅1mのアルミニウムウエブにおける一方の面を粗面化し、次いで、陽極酸化処理を施して支持体ウエブWを作製した。感光性物質、バインダ、活性剤、染料、及び増粘剤を有機溶剤に溶解させて感光層形成液を調製した。前記感光層形成液としては、粘度が25cpのものと50cpのものとを調製した。次いで、図1及び図2に示すバーコータ10を用い、ウエブWに100kg/mの張力を加えて、バー12を、ウエブWの走行方向aと反対の方向に5rpmの速度で回転させて前記感光層形成液を塗布した。感光層形成液は液粘度1〜25mPa・sとし、塗布量は15〜22cc /m2 とした。この条件は、以下の全ての実施例において同様である。
【0085】
(実施例1)
実施例1は、堰板16のテーパ面16BとウエブWとの成す角度αが、スジ故障や膜切れ等の塗布欠陥が発生しない速度(塗布限界速度)に対してどのように影響するかを調べた。角度αは、ウエブWの侵入角度θ1を一定とし、堰板16の頂角δを変えることによって変化させた。また、供給流路24のウエブ幅方向のスリット幅を1mとし、スリット隙間を0.5mmとした。試験結果を表1に示す。
【0086】
その結果、試験1〜試験5から分かるように、角度αを5°から大きくしていくと、塗布限界速度も大きくなる。具体的には、試験1の角度αが5°のときの塗布限界速度は70m/分であったものが、試験3のαが45°において最大の150m/分(min)になり、試験5のαが80°まで最大を維持した。尚、角度αが80°を超えるところまでは試験していないが、試験1〜試験5の傾向から推測して、堰板製作上の限界である90°近傍までは最大を維持すると考えられる。従って、角度αの好ましい範囲は45°≦α<90°であることが好ましい。
【0087】
【表1】


【0088】
実施例2は、堰板16の上端16Aを通りウエブWに平行な平行線17を基準にして、ウエブWから平行線17までの距離をC1とし、平行線17からバー支持部材14の上流側上面14Bまでの距離をC2としたときに、C1/C2と塗布速度限界との関係を調べた。また、供給流路24のウエブ幅方向のスリット幅を1mとし、スリット隙間を0.5mmとした。試験結果を表2に示す。
【0089】
【表2】


【0090】
表2のうち、試験6〜11は、C1/C2と塗布限界速度との関係を示すものであり、試験12〜14は、ウエブWと堰板16の上端16Aとの隙間距離C1をどの程度まで狭くできるかを調べたものである。
【0091】
表2の結果から、C1/C2を小さくしていくと、塗布限界速度が次第に大きくなるが、小さくし過ぎると塗布限界速度が再び小さくなる傾向がある。具体的には、C1/C2が0.17〜5の範囲内においては150〜200m/分の塗布限界速度であり、高速塗布が可能であった。このことから、0.2≦C1/C2≦5の範囲であれば、塗布欠陥が発現しないで高速塗布を行うことができる。
【0092】
また、試験12〜14は、試験6〜12のうちの最も塗布限界速度が大きかった試験8におけるC2の値を使用した。試験13から分かるように、C1を狭くし過ぎると、ウエブWが堰板16の上端16Aに接触してしまい、ウエブWにスリギズが発生した。しかし、試験14のように、C1が0.1mmの場合には、ウエブWにスリギズが発生せずに塗布限界速度が大きくなることから、C1は0.1mmを下回らないことが必要である。ちなみに、試験12のようにC1を拡くし過ぎても、塗布液溜まり部Aの圧力が高くなりにくいので、塗布限界速度が小さくなる傾向にある。
【0093】
(実施例3)
実施例3では、バー12の上端12Aから堰板16の上端16Aまでの高さの差Hと、塗布限界速度との関係を調べたものである。また、ウエブWと堰板16の上端16Aとの距離C1は0.5mmで一定とした。また、供給流路24のウエブ幅方向のスリット幅を1mとし、スリット隙間を0.5mmとした。試験結果を表3に示す。
【0094】
【表3】


【0095】
試験15から分かるように、差Hが0.2mmのように正の値をとり、バー12の上端12Aが堰板16の上端16Aよりも僅かでも高くなれば、塗布限界速度は150m/分と大きくなる。一方、試験16、試験17から分かるように、差Hが0又は−0.2mmのように負の値をとり、バー12の上端12Aと堰板16の上端16Aとが同じ高さ、又はバー12の上端12Aよりも堰板16の上端16Aが僅かでも高くなると、塗布限界速度は50〜70m/分と小さくなる。
【0096】
従って、バー12の上端12Aから堰板16の上端16Aまでの高さの差Hは、正の値をとることが塗布限界速度を上げるために好ましい。
【0097】
(実施例4)
実施例4は、ウエブWが塗布開始前にバー12に進入する進入角度を水平面に対してθ3とし、バー12の上端12Aと堰板16の上端16Aとを結ぶ線の成す角度を水平面に対してβとしたときに、θ3とβとの関係が塗布開始時及び塗布終了時の厚塗りに対してどのように影響するかを調べたものである。また、供給流路24のウエブ幅方向のスリット幅を1mとし、スリット隙間を0.5mmとした。この場合、角度βは20°で一定として、塗布開始前のウエブ侵入角度θ3を変化させた。表4の○は厚塗りにならなかったことを示し、×は厚塗りになったことを示す。
【0098】
【表4】


【0099】
その結果、試験18及び試験19から分かるように、θ3≧βの場合には、塗布開始時及び塗布終了時ともに、厚塗りを防止できなかった。しかし、試験20〜22のように、θ3<βを満足することによって、塗布開始時及び塗布終了時ともに、厚塗りを防止することができた。
【0100】
(実施例5)
実施例5は、供給流路24の出口からウエブWの下面に向けて噴出することで流体壁を形成する場合の好ましい噴出速度を調べた。噴出速度は、供給流路24のスリット間隙を変えることによって調整した。試験結果を表5に示す。
【0101】
【表5】


【0102】
その結果、噴出速度を2.5m/分以上にすると、良好な流体壁が形成され、塗布限界速度を150m/分まで大きくすることができた。但し、表5には示さなかったが、噴出速度が50m/分を超えると、噴出する勢いが強くなり過ぎてウエブWにバタツキが発生し、塗布が不可能になった。このことから、供給流路24の出口からウエブWの下面に向けて噴出させる塗布液の噴出速度は2.5m/分以上、50m/分以下であることが好ましい。
【0103】
(実施例6)
実施例6は、ウエブWの塗布中におけるバー12への侵入角度を水平面に対してθ1とし、バー支持部材14の上流側上面14Bが水平面に対して成す角度をγとしたときに、θ1/γが塗布限界速度にどのように影響するかを調べたものである。また、供給流路24のウエブ幅方向のスリット幅を1mとし、スリット隙間を0.5mmとした。試験結果を表6に示す。
【0104】
【表6】


【0105】
その結果、θ1/γが0.5未満又は2を超えると、100m/分程度の塗布限界速度しか達成できないのに対し、θ1/γを0.5≦θ1/γ≦2の範囲に設定することにより、塗布限界速度は150〜200m/分となり、高速塗布が可能であった。
【0106】
(実施例7)
実施例7は、供給流路24の出口における液圧をPとし、大気圧をPとしたときに、P/Pと塗布限界速度との関係を調べたものである。試験結果を表7に示す。
【0107】
【表7】


【0108】
その結果、P/Pが1.0の試験31は塗布限界速度が100m/分であったが、P/Pを1.1にすることで塗布限界速度が120m/分まで大きくなり、P/Pを1.2にすると塗布限界速度は150m/分まで大きくなった。このことから、塗布欠陥が発現しないように高速塗布するには、P/Pが1.1以上であることが好ましい。
【0109】
(実施例8)
実施例8は、塗布幅Lに対する塗布液溜まり部Aの縦断面積Sの比(S/L)と、塗布限界速度との関係を調べたものである。実施例8の場合には、塗布幅Lを200mmで一定として縦断面積Sを変化させた。従って、供給流路24のウエブ幅方向のスリット幅を塗布幅Lに合わせて小さくすると共に、スリット隙間は上記と同様に0.5mmとした。試験結果を表8に示す。
【0110】
【表8】


【0111】
その結果,S/Lを小さくしていくと、塗布限界速度が大きくなるい傾向にあり、S/Lが0.15のときの塗布限界速度は100m/分であったものが、S/Lが0.10のときには120m/分まで大きくなり、S/Lが0.08のときには150m/分まで大きくなった。このことから、S/L≦0.15mmを満足することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に係る塗布装置の実施形態の構成を示す斜視図
【図2】図1の塗布装置の断面図
【図3】本発明の塗布装置の特徴部分を示す模式図
【図4】図1の塗布装置の作用を示す説明図
【符号の説明】
【0113】
10…塗布装置、12…バー、12A…バーの上端、14…バー支持部材、14B…上流側上面、14E…上流側上面の上流側上端(エッジ部)、16…堰板、16A…堰板の上端、16B…テーパ面、18…基台、20、22…パスローラ、24…供給流路、26…一時貯留室、28、30…オーバーフロー液溜め部、W…ウエブ
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三


【公開番号】 特開2008−6378(P2008−6378A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−179772(P2006−179772)