トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般

【発明の名称】 塗布ノズルおよび該ノズルの製造方法
【発明者】 【氏名】増市 幹雄

【氏名】高村 幸宏

【氏名】相良 秀一

【要約】 【課題】小型ながら複数本の塗布液を互いに独立して基板表面に向けて吐出することができる塗布ノズルおよび該ノズルの製造方法を提供する。

【構成】シート部材82に設けられた複数の吐出孔822とノズル本体81に設けられた複数の貫通孔811とが1対1の対応関係で且つ相互に連通されるとともに、各貫通孔811に塗布液を選択的に送給可能となっている。このため、1つの塗布ノズル8から複数本の塗布液が連続的に吐出可能となっている。また、貫通孔811および吐出孔822のペアが複数、しかも互いに独立して設けられているため、塗布液を複数の吐出孔822から選択的に吐出させることができる。したがって、塗布ノズルの大型化を抑えつつ3本の塗布液を互いに独立して基板表面に向けて吐出することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる位置に複数の吐出孔が設けられ、各吐出孔の吐出口が基板の表面を臨むように該基板に対向配置される樹脂材料製の第1シート部材と、
前記複数の吐出孔に対して1対1の対応関係を有し且つ前記吐出孔よりも大きな内径を有する、貫通孔が複数個形成されたノズル本体とを備え、
前記複数の吐出孔の各々がそれに対応する前記貫通孔と連通され、前記複数の貫通孔の各々に塗布液が送給されると、該貫通孔に連通する前記吐出孔の前記吐出口から前記基板に向けて前記塗布液を吐出することを特徴とする塗布ノズル。
【請求項2】
請求項1記載の塗布ノズルの製造方法であって、
前記第1シート部材と同一材料で構成された前記ノズル本体を準備するノズル本体準備工程と、
前記第1シート部材と同一材料で構成された第2シート部材を準備するシート部材準備工程と、
前記複数の貫通孔が開口された前記ノズル本体の両主面のうち前記塗布液の供給側と反対側の主面を第1被接着面とし、前記第2シート部材の両主面のうち前記第1被接着面に対向する主面を第2被接着面とし、前記第1被接着面と前記第2被接着面に表面処理を施し、前記第1被接着面と前記第2被接着面とを相互に対向配置した後に、前記ノズル本体と前記第2シート部材とを熱融着させて接着する接着工程と、
前記複数の貫通孔の各々について、該貫通孔と連通する孔を前記吐出孔として前記第2シート部材に設けて前記第1シート部材を形成する孔形成工程と
を備えたことを特徴とする塗布ノズルの製造方法。
【請求項3】
前記接着工程は、前記第1被接着面と前記第2被接着面とを直接当接させながら前記ノズル本体と前記第2シート部材とを熱融着させる請求項2記載の塗布ノズルの製造方法。
【請求項4】
前記接着工程は、前記第1被接着面と前記第2被接着面に表面処理を施した後で且つ前記第1被接着面と前記第2被接着面とを相互に対向配置する前に、前記第1被接着面および前記第2被接着面の少なくとも一方面に接着剤を塗布し、しかも、前記熱融着により前記接着剤を硬化させて前記ノズル本体と前記第2シート部材とを接着する請求項2記載の塗布ノズルの製造方法。
【請求項5】
前記第2シート部材、前記接着剤および前記ノズル本体は同一の樹脂材料で構成されている請求項4記載の塗布ノズルの製造方法。
【請求項6】
前記第2シート部材、前記接着剤および前記ノズル本体はポリイミド系樹脂材料で構成されている請求項5記載の塗布ノズルの製造方法。
【請求項7】
前記孔形成工程は、前記レーザ光を前記貫通孔を介して前記シート部材に照射して前記吐出孔を形成する工程である請求項4ないし6のいずれかに記載の塗布ノズルの製造方法。
【請求項8】
前記孔形成工程の前または後に、前記レーザ光を前記貫通孔内に付着する接着剤に照射して該接着剤を取り除く請求項7記載の塗布ノズルの製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の塗布ノズルの製造方法であって、
前記樹脂材料と同一材料で構成された前記ノズル本体を準備するノズル本体準備工程と、
前記第1シート部材を準備するシート部材準備工程と、
前記複数の貫通孔が開口された前記ノズル本体の両主面のうち前記塗布液の供給側と反対側の主面を第1被接着面とし、前記第1シート部材の両主面のうち前記第1被接着面に対向する主面を第2被接着面とし、前記第1被接着面と前記第2被接着面に表面処理を施し、前記第1被接着面と前記第2被接着面とを相互に当接させた後に、前記ノズル本体と前記第1シート部材とを熱融着させて接着する接着工程と
を備えたことを特徴とする塗布ノズルの製造方法。
【請求項10】
前記表面処理は、前記第1被接着面と前記第2被接着面を活性化する表面活性化処理である請求項2ないし9のいずれかに記載の塗布ノズルの製造方法。
【請求項11】
前記表面処理は、プラズマ処理またはコロナ処理である請求項10記載の塗布ノズルの製造方法。
【請求項12】
前記ノズル本体準備工程は、前記樹脂材料製の薄板部材を複数枚準備する工程と、前記複数の薄板部材を積層させた際に互いに対向する前記複数の薄板部材の主面に表面処理を施す工程と、前記表面処理を受けた前記複数の薄板部材を積層した後に熱融着により前記複数の薄板部材を相互に接着して前記ノズル本体を形成する工程とを有している請求項2ないし11のいずれかに記載の塗布ノズルの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の吐出孔から塗布液を基板に向けて吐出する塗布ノズルおよび該ノズルの製造方法に関するものである。ここでは、基板としては、例えば有機EL表示器、液晶表示器およびプラズマディスプレイなどのFPD(Flat Panel Display)に用いられる基板、ならびに半導体基板などの各種基板(以下、単に「基板」という)が含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来より基板に塗布液を塗布する装置として次のようなものがある。例えば特許文献1に記載の装置は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)材料を含む溶液を塗布液として塗布ノズルから吐出させながらノズル移動機構部によりノズルを移動させて塗布液を基板上の微小領域に塗布している。このノズルは、その先端部が開口されたノズル本体を備えている。そして、このノズル本体の内部にスペーサ、フィルタ、スペーサおよびシート部材がこの順序で挿入され、ノズル先端部においてシート部材が基板の表面と対向している。また、このシート部材の中央部にはオリフィスが吐出孔として穿設されている。このため、ノズルに塗布液を圧送することでノズル先端部に設けられた吐出孔から塗布液が連続的に吐出され、基板表面に対して塗布液が液柱状に供給される。そこで、上記装置では、塗布液の連続吐出を継続させつつ、基板上に形成された微小な溝(例えば溝の幅寸法が100μm以下)に沿ってノズルをほぼ直線的に移動させ、これによって基板表面に塗布液をストライプ状に塗布している。
【0003】
また、塗布液を連続的に吐出する塗布ノズルを3本設けた装置が特許文献2に記載されている。この装置では、3本の塗布ノズルがノズルホルダに保持されており、該ノズルホルダに接続されたノズル移動機構が往復移動するように構成されている。また、各塗布ノズルはフィルタおよび流量計を介してポンプと接続されている。このため、3つのポンプから選択したポンプを作動させると、選択作動ポンプに接続された塗布ノズルから基板に向けて塗布液が吐出される。このように各塗布ノズルから塗布液を選択的に基板に向けて吐出可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−74076号公報(図1)
【特許文献2】特開2002−75640号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記装置では、塗布ノズルが往復移動して基板全面に塗布液を塗布する。したがって、塗布動作に要する時間を短縮するためには、例えば特許文献2に記載されているように複数の塗布ノズルを配置して塗布効率を向上させる必要がある。しかしながら、従来装置では各塗布ノズルから吐出される液柱状の塗布液は単一であるため、効率向上のためには塗布ノズルの配列本数を増やす必要がある。そのため、配列本数の増大にしたがってノズルホルダも大型化する。そして、ノズルホルダの大型化にともなって装置の大型化を招いてしまうという問題が生じる。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、小型ながら複数本の塗布液を互いに独立して基板表面に向けて吐出することができる塗布ノズルおよび該ノズルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる塗布ノズルは、上記目的を達成するため、互いに異なる位置に複数の吐出孔が設けられ、各吐出孔の吐出口が基板の表面を臨むように該基板に対向配置される樹脂材料製の第1シート部材と、複数の吐出孔に対して1対1の対応関係を有し且つ吐出孔よりも大きな内径を有する、貫通孔が複数個形成されたノズル本体とを備え、複数の吐出孔の各々がそれに対応する貫通孔と連通され、複数の貫通孔の各々に塗布液が送給されると、該貫通孔に連通する吐出孔の吐出口から基板に向けて塗布液を吐出することを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、第1シート部材に設けられた複数の吐出孔とノズル本体に設けられた複数の貫通孔とが1対1の対応関係で且つ相互に連通されている。このため、複数の貫通孔の各々に塗布液が送給されると、該貫通孔に連通する吐出孔の吐出口から基板に向けて塗布液が吐出される。このように1つの塗布ノズルから複数本の塗布液が連続的に吐出可能となっている。また、貫通孔および吐出孔のペアが複数組存在しており、しかも互いに独立して設けられている。そして、複数の貫通孔のうち一の貫通孔に対して選択的に塗布液を送給すると、その選択貫通孔およびこれに連通する吐出孔を介して塗布液が基板に向けて吐出される。したがって、塗布ノズルの大型化を抑えつつ複数本の塗布液が互いに独立して基板表面に向けて吐出される。
【0009】
また、このように構成された塗布ノズルを製造するにあたって最も問題となるのが、複数の吐出孔と複数の貫通孔とを1対1の対応関係で且つ相互に連通させる点である。ここで、吐出孔と貫通孔との対応関係を確立させるために、例えばシート部材とノズル本体とを接着させることが考えられるが、シート部材がノズル本体に接着された際にシート部材にシワが発生すると、吐出口が設定位置に形成されないことがある。そして、吐出口の輪郭部がシワに重なると、吐出口の輪郭形状が設計形状と異なってしまい、その結果、塗布液の吐出方向が変動し、着弾精度が低下したり、塗布液の流量が変動することがあった。また、接着不良が発生してシート部材がノズル本体から剥がれてしまうと、吐出口の向きが設計方向から異なるものとなってしまい、上記と同様の問題が発生しまうこともあった。そこで、本発明にかかる塗布ノズルの製造方法はこれらの課題を解消するために以下のように構成している。
【0010】
この発明にかかる塗布ノズルの製造方法は、第1シート部材と同一材料で構成されたノズル本体を準備するノズル本体準備工程と、第1シート部材と同一材料で構成された第2シート部材を準備するシート部材準備工程と、複数の貫通孔が開口されたノズル本体の両主面のうち塗布液の供給側と反対側の主面を第1被接着面とし、第2シート部材の両主面のうち第1被接着面に対向する主面を第2被接着面とし、第1被接着面と第2被接着面に表面処理を施し、第1被接着面と第2被接着面とを相互に対向配置した後に、ノズル本体と第2シート部材とを熱融着させて接着する接着工程と、複数の貫通孔の各々について、該貫通孔と連通する孔を吐出孔として第2シート部材に設けて第1シート部材を形成する孔形成工程とを備えている。
【0011】
このように構成された発明では、ノズル本体と第2シート部材が同一樹脂材料で構成されている。そして、ノズル本体の第1被接着面と第2シート部材の第2被接着面とはそれぞれ表面処理を受けた上で相互に対向配置される。さらに、ノズル本体と第2シート部材とが熱融着されて接着された後、第2シート部材に複数の吐出孔が設けられて第1シート部材が形成される。このように表面処理を受けた第1被接着面と第2被接着面とを介してノズル本体とシート部材とが接着されるため、シート部材がノズル本体から剥がれるのを効果的に防止することができる。しかも、両者は同一の樹脂材料で構成されており、熱収縮率は相互に一致またはほぼ一致する。したがって、熱融着によりシート部材をノズル本体に接着した際に、シート部材にシワが発生するのを抑制することができる。
【0012】
ここで、第1被接着面と第2被接着面とを直接当接させてノズル本体と第2シート部材を熱融着させてもよく、これによりノズル本体と第2シート部材とが一体化されてシート部材をノズル本体に強固に固定することができ、シート部材の剥がれが防止される。
【0013】
また、第1被接着面と第2被接着面に表面処理を施した後で且つ第1被接着面と第2被接着面とを相互に対向配置する前に、第1被接着面および第2被接着面の少なくとも一方面に接着剤を塗布した後、熱融着により接着剤を硬化させてノズル本体と第2シート部材とを接着してもよい。このように予め表面処理が施された面に接着剤が塗布された状態でノズル本体と第2シート部材とが相互に接着されるため、シート部材の剥がれを効果的に防止することができる。なお、このように接着剤を用いる場合には、シート部材、接着剤およびノズル本体は同一の樹脂材料で構成するのが望ましい。この場合、シート部材、接着剤およびノズル本体の熱収縮率は相互に一致またはほぼ一致する。したがって、シート部材にシワが発生するのを抑制することができる。ここで、「樹脂材料」としては、例えばポリイミド系樹脂材料を用いることができる。
【0014】
また、レーザ光を貫通孔を介して第2シート部材に照射して吐出孔を形成することができる。このように貫通孔側より吐出孔を形成すると、貫通孔に対する吐出孔の位置決め精度を高め、吐出孔と貫通孔とを確実に連通させることができる。
【0015】
また、接着剤を用いてノズル本体と第2シート部材とを接着した場合、貫通孔内に接着剤が残存してしまうことがある。この場合には、孔形成工程の前または後に、レーザ光を貫通孔内に付着する接着剤に照射して該接着剤を取り除くのが望ましい。これによって複数の貫通孔について、その内部空間を予め設定した形状や大きさに整えることができ、各吐出孔から吐出される塗布液を安定して吐出させることができる。
【0016】
また、上記発明では、(貫通孔が形成されていない)第2シート部材をノズル本体に接着させた後で吐出孔を形成しているが、すでに吐出孔が形成されている第1シート部材を準備しておき、この第1シート部材をノズル本体に接着してもよい。この場合にも、上記発明と同様に、表面処理を利用するのが望ましい。例えば第1シート部材の両主面のうち第1被接着面に対向する主面(第2被接着面)と、第1被接着面とに表面処理を施し、第1被接着面と第2被接着面とを相互に当接させた後に、ノズル本体と第1シート部材とを熱融着させて接着してもよい。これにより上記発明(塗布ノズルの製造方法)と同様に、小型ながら複数本の塗布液を互いに独立して基板表面に向けて吐出することができる。
【0017】
また、上記「表面処理」としては、第1被接着面と第2被接着面を活性化する表面活性化処理が含まれる。この表面活性化処理により被接着面に活性基を構成させて接着力を向上させることができる。また、表面活性化処理は被接着面を親水処理化して接着剤の濡れ性を向上させてシート部材とノズル本体との接着をより良好に行うことができる。その「表面活性化処理」にはプラズマ処理およびコロナ処理が含まれている。また、接着剤の濡れ性を向上させる表面処理としてはサンドブラストやプライマー処理を用いてもよい。
【0018】
さらに、ノズル本体準備工程を、樹脂材料製の薄板部材を複数枚準備する工程と、複数の薄板部材を積層させた際に互いに対向する複数の薄板部材の主面に表面処理を施す工程と、表面処理を受けた複数の薄板部材を積層した後に熱融着により複数の薄板部材を相互に接着してノズル本体を形成する工程とで構成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、この発明によれば、第1シート部材に設けられた複数の吐出孔とノズル本体に設けられた複数の貫通孔とが1対1の対応関係で且つ相互に連通されており、複数の貫通孔の各々に塗布液が送給されると、該貫通孔に連通する吐出孔の吐出口から基板に向けて塗布液が吐出される。したがって、小型ながら複数本の塗布液を互いに独立して基板表面に向けて吐出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、この発明にかかる製造方法の一実施形態により製造された塗布ノズルを装備する基板処理装置を示す図である。この基板処理装置は、基板1上に形成された溝11に液体状の有機層(正孔輸送層や有機EL層)を形成するための材料を含む塗布液(以下、単に「塗布液」という)を塗布する基板処理装置である。
【0021】
この基板処理装置では、基板1を載置するテーブル2が設けられている。このテーブル2はY方向にスライド自在で、しかも垂直軸Zに対してθ方向に回動自在となっている。また、テーブル2にはテーブル移動機構21が接続されており、装置全体を制御する制御部3からの動作指令に応じてテーブル移動機構21が作動することでテーブル2をY方向に移動させたり、θ方向に回転させてテーブル2上の基板1を位置決めすることができる。
【0022】
また、このテーブル2の上方には、1個の多孔タイプの塗布ノズル8が配設されている。このノズル8はノズルホルダ5に保持されており、該ノズルホルダ5に接続されたノズル移動機構61が制御部3からの動作指令に応じて作動することでノズル8をX方向に往復移動可能となっている。したがって、ノズル8を基板1上の溝11に対向させた状態でノズル8をX方向に移動させると、ノズル8は溝11に沿って移動することとなる。
【0023】
この塗布ノズル8は後で詳述するように複数の吐出孔を有し、各吐出孔から塗布液を選択的に基板1に向けて吐出可能となっている。また、各吐出孔はノズル本体の貫通孔と連通され、さらに貫通孔に取り付けられた継手を介して塗布液の供給源たる液供給部62と配管接続されている。そして、この液供給部62から塗布液の供給先を選択しながら塗布液を選択貫通孔に送給すると、その選択貫通孔に連通する吐出孔から基板1に向けて塗布液が連続的に吐出される。こうしてノズル8から塗布液を吐出させると、ノズル8からの塗布液はまっすぐ下方に吐出され、基板1に供給される。したがって、ノズル8が溝11と対向している場合には、ノズル8から吐出される塗布液を溝11に塗布することができる。
【0024】
<第1実施形態>
次に、上記装置に装備された塗布ノズル8の第1実施形態にかかる構成および製造方法について図面を参照しつつ詳述する。
【0025】
図2は図1の基板処理装置に組み込まれた塗布ノズルを示す図で、同図(a)は分解組立図であり、同図(b)は塗布ノズルの断面図であり、同図(c)は塗布ノズルの底面図である。この実施形態は、いわゆる多孔タイプの塗布ノズル8の製造方法に関するものであり、該ノズル8からは3本の塗布液が選択的に吐出可能となっている。以下、この第1実施形態にかかる塗布ノズルの製造方法を図2を参照しつつ詳述してノズル構成についても同時に説明する。
【0026】
このノズル8はノズル本体81、シート部材82およびノズルケース83を備えている。このノズル本体81は、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン (PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などの樹脂材料やステンレス鋼などの金属材料により直方体形状に仕上げられている。また、塗布液の吐出ピッチ(隣接して吐出される塗布液の間隔)で3つの貫通孔811が予め形成されている。各貫通孔811は吐出孔よりも大きな内径を有し、しかも各貫通孔811の内周面には後で説明する継手(本体)の外周面に形成された雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部812が設けられている。なお、このように構成されたノズル本体81は予め機械的に加工されている(ノズル本体準備工程)。
【0027】
シート部材82は、同図に示すように、例えばポリイミド(PI)シート、ポリ塩化ビニル(PVC)シート、ポリプロピレン(PP)シート、ポリエチレン(PE)シート、液晶ポリエステル(LCP)シートなどの樹脂材料製により構成されるものである。そして、3つの吐出孔822が、塗布液の吐出ピッチだけ相互に離間して配置されるように、該シート部材82に形成される。これによって、シート部材82の両主面のうち基板1と対向する対向面821において、各吐出孔822の一方端が開口して3つの吐出口が形成される。また、このシート部材82の平面形状はノズル本体81の底面と同一形状となっている。このシート部材82の一方主面821が基板1と対向配置され、その対向面821の反対側の面上にノズル本体81の底面が当接すると、3つの吐出孔822に対して1対1の対応関係で3つの貫通孔811が位置決めされる。この状態で貫通孔811から吐出孔822に塗布液が流通し、さらに吐出孔822の吐出口から塗布液が吐出可能となる。このように、本実施形態ではシート部材82が本発明の「第1シート部材」に相当しており、このシート部材82とノズル本体81と相互に当接して吐出孔822と貫通孔811との位置関係が規定される。したがって、ノズル周辺温度により両者の位置関係が変動するのを防止する観点から、ノズル本体81とシート部材82の線膨張率を同一あるいはほぼ同一に設定するのが望ましく、ノズル本体81とシート部材82とを同一樹脂材料で構成するのがさらに望ましい。例えばノズル本体81をポリイミド系樹脂、例えばベスペル(デュポン社の登録商標)で構成する一方、シート部材82をポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製の商品名「ユービレックス」)で構成することができる。このように両者をポリイミド(PI)系樹脂材料で構成することで貫通孔811と吐出孔822との位置ずれを防止して高精度で、かつ安定した塗布液の吐出を行うことができる。
【0028】
ここで、液供給部62から供給される塗布液を各吐出孔822から独立して吐出させるために、各貫通孔811に対してファイナルフィルタ84、継手(フェルール)85、継手(本体)86とがこの順序で挿入可能となっている。つまり、ファイナルフィルタ84は貫通孔811に挿入されて吐出孔822の直上位置に位置する。このため、吐出孔822から吐出される前に塗布液中に存在するパーティクルや再凝集した溶質成分が確実に除去される。また、ファイナルフィルタ84に続いて継手(フェルール)85および継手(本体)86とがこの順序で貫通孔811に挿入されるとともに、液供給部62から延びる配管(チューブ)87が継手(本体)86に挿入される。この挿入時に継手(本体)86の外周面に設けられた雄ネジ部861は雌ネジ部812に螺合して継手(本体)86はノズル本体81にしっかり固定される。これにより、吐出孔822ごとに塗布液を独立して基板に向けて吐出可能となっている。すなわち、液供給部62から特定の配管87を介して塗布液を圧送すると、その配管87に接続された継手(本体)86および継手(フェルール)85を介してファイナルフィルタ84に送られてフィルタリングされた後、吐出孔822から吐出される。
【0029】
また、この実施形態では、ノズル本体81とシート部材82とを一体的に保持するために、ノズルケース83が設けられている。このノズルケース83は凹形状を有しており、その内部空間831においてシート部材82およびノズル本体81をこの順序で収容可能となっている。また、各吐出孔822から吐出された塗布液を基板1に導くために、3つの貫通孔832がノズルケース83の底面部に上記吐出ピッチで設けられている。
【0030】
以上のように、この第1実施形態によれば、シート部材82に設けられた複数の吐出孔822とノズル本体81に設けられた複数の貫通孔811とが1対1の対応関係で且つ相互に連通されるとともに、各貫通孔811に塗布液を選択的に送給可能となっている。このため、1つの塗布ノズル8から複数本(この実施形態では3本)の塗布液が連続的に吐出可能となっている。また、貫通孔811および吐出孔822のペアが複数組存在し、しかも互いに独立して設けられているため、塗布液を複数の吐出孔822から選択的に吐出させることができる。したがって、塗布ノズル8の大型化を抑えつつ3本の塗布液を互いに独立して基板表面に向けて吐出することができる。
【0031】
ここで、シート部材82を準備するにあたって、後述するノズル本体準備工程、シート部材準備工程、接着工程や孔形成工程を適宜組み合わせてもよいが、次のような点に留意するのが望ましい。すなわち、シート部材82を構成する材料として上記した樹脂材料製の市販シートを用いることができる。つまり、これらのシート状の樹脂シートに対して機械加工やレーザ加工を施して吐出孔822を形成することによって上記シート部材82を準備することができる。しかしながら、市販の樹脂シートからシート部材82を形成した場合、次のような理由により吐出口の形状が予め設計した形状と異なってしまうことがあった。すなわち、市場に流通している樹脂シートは樹脂材料の押出成型により製造されることが多く、成型性や巻取性などを考慮してジルコニアやシリコン等のフィラーが樹脂材料に分散されている。そのため、シート表面に存在していたフィラーが抜け落ちてシート表面にクレータ状の欠損が存在することがある。また、成型された樹脂シートを巻き取る際にシート表面に巻取傷が生じたり、搬送時に表面傷が付与されてしまうことがある。したがって、これらの要因により樹脂シートの表面は必ずしも平坦であるとはいえない。このような表面状態を有する樹脂シートに吐出孔822を形成した際に、基板1と対向する対向面821に存在する傷や欠損などに吐出口の輪郭部が重なると、吐出口の輪郭形状が設計形状と異なってしまい、その結果、塗布液の吐出方向が変動してしまうことがあった。例えば吐出口の輪郭部が表面傷と重なる位置では、吐出口から吐出しようとする塗布液は表面傷側に引っ張られてしまい、着弾精度を低下させてしまう。また、塗布液の流量も変動することも報告されている。そこで、シート部材82については、次のような態様で準備するのが望ましい。
【0032】
図3はシート部材の準備工程の一例を示す模式図である。まず、シート部材820を準備する(シート準備工程)。シート部材820は市販のものを採用することができる。しかしながら、これらのシート部材820は樹脂材料の押出成型により製造されることが多く、成型性や巻取性などを考慮してジルコニアやシリコン等のフィラーが樹脂材料に分散されている。そのため、シート部材820の表面に欠損が存在することがある。また、シート部材820の表面に巻取傷や表面傷が存在することもある。
【0033】
そこで、吐出孔を形成する(孔形成工程)前に、シート部材820の両主面のうち基板1と対向する対向面821から所定深さの表面領域(図3中の符号823)を研磨除去して該対向面821を平坦化している(対向面の研磨工程)。こうして、対向面821が平坦化されたシート部材820Aが得られる。なお、この研磨処理としては、従来より周知の技術を用いることができる。例えば、研磨剤を含有したスラリー液を用いた化学的機械的研磨(CMP)により対向面821を研磨して優れた平坦性を確保することができる。この研磨処理によって、対向面821の表層部823が除去されてシート準備工程時点にシート部材820の対向面821に存在していた欠損や傷は消失する。
【0034】
この研磨工程に続いて、レーザ加工や機械可能によりシート部材820Aに対して貫通孔を吐出孔822として形成し、3つの吐出孔822が直線状に並んだシート部材82が得られる(孔形成工程)。このようにシート部材82では、対向面821から傷や欠損を除去した状態で吐出孔822が形成され、対向面821に吐出口824が開口される。その結果、吐出口824は常に吐出孔822に対応した輪郭形状を有する。例えば、この実施形態では断面形状が円形の吐出孔822を形成しており、吐出口824も円形となっている。
【0035】
このように、樹脂製のシート部材820の両主面のうち基板1と対向する対向面821をCMP法により研磨しているので、対向面821に存在していた欠損や傷が確実に除去される。そして、こうして対向面821が優れた平坦性に仕上げられた、シート部材820Aに対して吐出孔822が形成される。したがって、吐出口824は常に吐出孔822に対応した輪郭形状を有し、所望塗布液吐出を行うことができる。つまり、シート部材820の対向面821に欠損や傷などが存在していたとしても、ノズル8を構成するシート部材82の吐出口824から吐出される塗布液は傷などの影響を受けず、設計通りに仕上げられた吐出口824から基板1に向けて吐出される。その結果、ノズル8は各吐出孔822から塗布液を高精度で、かつ安定して吐出することができる。
【0036】
図4はシート部材の準備工程の他の例を示す模式図である。このシート部材準備工程が上記シート部材準備工程と大きく相違する点は、シート部材820Aの提供方法である。すなわち、図3のシート部材準備工程では市販の樹脂シート(シート部材820)に対して研磨工程を施してシート部材820Aを形成しているのに対し、このシート部材準備工程ではいわゆるスピンコート法によりシート部材820Aを形成している。このシート部材準備工程では、図4に示すようように、スピンテーブル100を回転させながらスピンテーブル100の上面に液体の樹脂材料、例えば熱硬化性のポリイミドを供給する。このスピンテーブル100上に供給されたポリイミド樹脂は遠心力を受けて水平方向に広がり薄膜が形成される。そして、ポリイミド薄膜に対して熱を与えると、熱硬化してシート部材820Aが形成される(シート部材形成工程)。このシート部材準備工程では、こうして形成されたシート部材820Aをスピンテーブル100から剥がした後、図3のシート部材準備工程と同様に、孔形成工程を実行してシート部材82を得ている。
【0037】
このようにスピンコート法によりシート部材820Aを形成しているので、フィラーを樹脂材料に混入させる必要がない。また、シート部材形成工程に続いて孔形成工程を実行している。したがって、シート部材に欠損や傷などが発生することはなく、研磨工程が不要となり、製造工程を簡素化することができる。また、対向面821に欠損や傷が存在していないシート部材820Aを用いてノズル8に組み込む完成品(シート部材82)を製造しているため、上記と同様の作用効果、つまり吐出孔822から塗布液を高精度で、かつ安定して吐出することができる塗布ノズル8を製造することができる。さらに、スピンコート法を用いているため、シート部材820Aの厚みを高精度に制御することができる。したがって、シート部材形成工程の段階でノズル8に組み込む完成品(シート部材82)に対応した厚みでシート部材820Aを形成することができる。
【0038】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、ノズルケース83によりノズル本体81およびシート部材82を保持しているが、図5に示すようにノズル本体81とシート部材82とを接着して一体化してもよい。このように構成した第2実施形態では、ノズルケース83は不要となる。以下、第2実施形態にかかる塗布ノズルの製造方法について図5を参照しつつ説明する。
【0039】
図5は本発明にかかる塗布ノズルの第2実施形態を示す模式図であり、同図(a)は分解組立図であり、同図(b)は塗布ノズルの断面図であり、同図(c)は塗布ノズルの底面図である。また、図6は図5の塗布ノズルの製造方法を示す模式図である。この第2実施形態ではノズル8はノズル本体81およびシート部材82で構成されている。ノズル本体81およびシート部材82の構成は第1実施形態と同一であるため、ここでは、それらの構成説明は省略してノズル8の製造方法について説明する。
【0040】
ノズル8の製造にあたっては、ノズル本体81を準備する(ノズル本体準備工程)とともに、シート部材82を形成する(シート部材形成工程)。このシート部材形成工程では、第1実施形態で説明した製造方法によりシート部材82を形成してノズル本体81の底面と同一形状を有するシート部材82が得られる。
【0041】
次に、吐出孔822と貫通孔811とが1対1の対応関係で且つ相互に連通されるように、ノズル本体81とシート部材82とを接着させる(接着工程)。この第2実施形態における接着工程では、表面処理と熱融着処理とがこの順序で実行される。すなわち、ノズル本体81の両主面のうち塗布液の供給側(図5及び図6の上方側)と反対側の主面813を第1被接着面とし、シート部材82の両主面のうち第1被接着面813に対向する主面825を第2被接着面とし、第1被接着面813と第2被接着面825に表面処理を施す。この「表面処理」は次に説明する熱融着を良好に行うための前処理であり、被接着面813、825に対する表面活性化処理がこれに含まれる。さらに具体的に説明すると、ノズル本体81およびシート部材82をともにポリイミド(PI)系樹脂で構成するとともに、表面活性化処理としてプラズマ処理を被接着面813、825に施して表面を活性状態にする。例えばプラズマ処理により(−O−基)、(=CO基)、(−COOH基)などを被接着面813、825に構成させることができる。
【0042】
こうして表面処理が完了すると、吐出孔822と貫通孔811とが1対1の対応関係で且つ相互に連通されるようにノズル本体81とシート部材82を位置決めしながら、第1被接着面813と第2被接着面825とを直接当接させる。そして、ノズル本体81とシート部材82との当接部分を熱融着させる(熱融着処理)。これにより、ノズル本体81とシート部材82とが強固に接着される。なお、このように優れた接着強度が得られる理由はプラズマ処理により発生した(−O−基)等の活性基同士の結合によるものと考えられる。また、ノズル本体81とシート部材82の界面は接着工程により消失するものの、その接着部分は母材部分と異なる原子配列を有しており、組織が異なっていると考えられる。
【0043】
上記のようにしてノズル本体81とシート部材82との接着が完了すると、第1実施形態と同様に、各貫通孔811に対してファイナルフィルタ84、継手(フェルール)85、継手(本体)86をこの順序で挿入してノズル8を完成させる(図5(b)および(c)参照)。
【0044】
以上のように、この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、シート部材82に設けられた複数の吐出孔822とノズル本体81に設けられた複数の貫通孔811とが1対1の対応関係で且つ相互に連通されるとともに、各貫通孔811に塗布液を選択的に送給可能となっている。その結果、塗布ノズル8の大型化を抑えつつ3本の塗布液を互いに独立して基板表面に向けて吐出することができる。
【0045】
また、ノズル本体81とシート部材82を接着するためにプラズマ処理を利用しているため、次のような作用効果が得られる。上記のように吐出孔822と貫通孔811との対応関係を確立させるために、シート部材82とノズル本体81とを接着させる場合、その接着工程においてシート部材82にシワが発生したり、接着されたシート部材82がノズル本体81から剥がれると、上記した問題(着弾精度の低下、塗布液の流量変動など)が発生することがある。これに対し、本実施形態では、ノズル本体81とシート部材82が同一樹脂材料で構成されている。そして、ノズル本体81の第1被接着面813とシート部材82の第2被接着面825に対してプラズマ処理を施した後、両者を直接当接させながらノズル本体81とシート部材82を熱融着させている。そのため、ノズル本体81とシート部材82を強固に接着することができ、シート部材82がノズル本体81から剥がれるのを効果的に防止することができる。しかも、両者は同一の樹脂材料で構成されており、熱収縮率は相互に一致またはほぼ一致する。したがって、熱融着によりシート部材82をノズル本体81に接着した際に、シート部材82にシワが発生するのを抑制することができる。よって、優れた着弾精度で、しかも安定した流量で塗布液を基板に向けて吐出することができる塗布ノズル8を得ることができる。
【0046】
<第3実施形態>
また、上記第2実施形態では既に吐出孔822が設けられたシート部材82をノズル本体81に接着しているが、図7に示すように、吐出孔822を接着工程の完了後に形成してもよい。以下、図7を参照しつつ第3実施形態について説明する。
【0047】
図7は本発明にかかる塗布ノズルの第3実施形態を示す模式図である。この第3実施形態では、雌ネジ部812を有する3つの貫通孔811が形成されたノズル本体81を準備する(ノズル本体準備工程)。また、本発明の「第2シート部材」に相当するシート部材820Aを準備する。このシート部材820Aは市販の樹脂シートを用いてもよいが、図3や図4に示す製造方法により形成されたシート部材を用いるのが望ましい。また、この実施形態では、ノズル本体81およびシート部材82をともにポリイミド(PI)系樹脂で構成している。
【0048】
こうしてノズル本体81およびシート部材820Aの準備が完了すると、接着工程および孔形成工程を実行する。この第3実施形態における接着工程では、表面処理と熱融着処理とがこの順序で実行される。すなわち、ノズル本体81の第1被接着面813に表面処理としてプラズマ処理を施す。また、シート部材820Aの両主面のうち第1被接着面813に対向する主面825を第2被接着面とし、この第2被接着面825に表面処理としてプラズマ処理を施す。これによって、第2実施形態と同様に、(−O−基)、(=CO基)、(−COOH基)などの活性基が被接着面813、825に構成される。そして、表面処理が完了すると、第1被接着面813と第2被接着面825を直接当接させながら、ノズル本体81とシート部材820Aとの当接部分を熱融着させる(熱融着処理)。これにより、ノズル本体81とシート部材820Aとが強固に接着される。
【0049】
次に、レーザ光Lを用いてシート部材820Aに吐出孔822を形成する(孔形成工程)。この実施形態では、レーザ光Lを各貫通孔811を介してシート部材820Aに照射して吐出孔822を形成しているため、貫通孔811に対する吐出孔822の位置決め精度を高め、吐出孔822と貫通孔811とを確実に連通させることができる。
【0050】
上記のようにしてシート部材820Aへの吐出孔822の形成が完了して本発明の「第1シート部材」に相当するシート部材82が形成されると、第1実施形態と同様に、各貫通孔811に対してファイナルフィルタ84、継手(フェルール)85、継手(本体)86をこの順序で挿入してノズル8を完成させる。
【0051】
以上のように、第3実施形態においても、第1実施形態と同様にシート部材82に設けられた複数の吐出孔822とノズル本体81に設けられた複数の貫通孔811とが1対1の対応関係で且つ相互に連通されるとともに、各貫通孔811に塗布液を選択的に送給可能となっている。その結果、塗布ノズル8の大型化を抑えつつ3本の塗布液を互いに独立して基板表面に向けて吐出することができる。
【0052】
また、第3実施形態はプラズマ処理を利用して接着工程を実行しているため、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、シート部材82にシワが発生したり、シート部材82がノズル本体81から剥がれるのを効果的に防止する。その結果、優れた着弾精度で、しかも安定した流量で塗布液を基板に向けて吐出することができる塗布ノズル8を得ることができる。
【0053】
<第4実施形態>
上記第3実施形態ではプラズマ処理された第1被接着面813と第2被接着面825を直接当接させてノズル本体81とシート部材820Aとを相互に接着させているが、さらに接着剤を介在させて接着してもよい。以下、図8を参照しつつ第4実施形態について説明する。なお、同図では、ノズル本体準備工程およびシート部材準備工程の図示は省略されている。
【0054】
図8は本発明にかかる塗布ノズルの第4実施形態を示す模式図である。この第4実施形態が第3実施形態と大きく相違する点は、接着剤を用いてノズル本体81とシート部材820Aとを接着している点である。すなわち、この実施形態では、ノズル本体81およびシート部材820Aの準備が完了すると、以下の接着工程が実行される。
【0055】
この第4実施形態における接着工程では、第3実施形態と同様に、ノズル本体81の第1被接着面813と、シート部材820Aの第2被接着面825に表面処理としてプラズマ処理を施す。これによって、(−O−基)、(=CO基)、(−COOH基)などの活性基が被接着面813、825に構成される。そして、これに続いて、シート部材820Aの被接着面825に接着剤88を塗布した後、第1被接着面813と第2被接着面825を互いに対向配置しながら、ノズル本体81とシート部材820Aで接着剤88を挟み込んだ状態で熱融着させる(熱融着処理)。これにより、ノズル本体81とシート部材820Aとが接着剤88により強固に接着される。なお、この実施形態では、被接着面825に接着剤88を塗布しているが、被接着面813に接着剤88を塗布してもよい。あるいは、両被接着面813、825に接着剤88を塗布してもよい。
【0056】
ここで、注目すべきは、接着剤88をノズル本体81とシート部材820Aの構成材料と一致させている点である。この実施形態では、ノズル本体81をポリイミド系樹脂、例えばベスペル(デュポン社の登録商標)で構成する一方、シート部材82をポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製の商品名「ユービレックス」)で構成しているが、接着剤88としてポリイミド(PI)系接着剤を用いている。このポリイミド(PI)系接着剤としては、宇部興産株式会社製の「U−ワニス(商品名)」や東レ株式会社製の「セミコファイン(商品名)」などを用いることができる。これらのポリイミド(PI)系接着剤はポリイミド全躯体溶液であり、シート部材820Aの被接着面825にPI接着剤88としてスピン塗布(図4参照)やディップ塗布可能となっている。しかも、この実施形態では、PI接着剤88の塗布前に、被接着面825に対してプラズマ処理を施しているため、PI接着剤88の濡れ性を高めて被接着面全面に均一塗布される。そして、上記のようにノズル本体81とシート部材820Aで接着剤88を挟み込んだ状態で熱融着処理を実行することで被接着面813、825を含めてイミド化反応が進行しながら熱硬化する。その結果、ノズル本体81とシート部材820Aとが強固に接着される。
【0057】
しかも、PI接着剤88はノズル本体81とシート部材820Aと同一樹脂材料であり、熱収縮率もほぼ一致している。そのため、次のような作用効果が得られる。ここで、比較例を例示して該作用効果について説明する。その比較例として、ノズル本体81とシート部材820Aを宇部興産株式会社製の商品名「ユービレックス」で構成する一方、これと異なる樹脂材料で構成された接着剤、例えばテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)で構成された接着剤を用いてノズル本体81とシート部材820Aを接着した。こうして製造されたノズルを観察したところ、シート部材820Aにシワが発生するのが確認された。また、ノズル本体81をベスペル(デュポン社の登録商標)で構成するとともにシート部材820Aを東レ・デュポン株式会社製の商品名「カプトン」で構成する一方、これらと異なる樹脂材料PFAで構成された接着剤を用いてノズル本体81とシート部材820Aを接着すると、シート部材820Aが反ってノズル本体81から剥がれるのが確認された。これに対し、ノズル本体81と、接着剤88と、シート部材820Aを同一樹脂材料で構成した場合には、これらの不具合(シワ発生や剥がれなど)は発生せず、良好に接着された。この種たる理由は同一樹脂材料で構成したことにより熱収縮率が同一あるいはほぼ同一となっているためと考えられる。
【0058】
接着工程が完了すると、第3実施形態と同様に、レーザ光Lを用いてシート部材820Aに吐出孔822を形成する(孔形成工程)。これによって、シート部材820Aへの吐出孔822の形成が完了して本発明の「第1シート部材」に相当するシート部材82が形成される。また、これに続いて、各貫通孔811に対してファイナルフィルタ84、継手(フェルール)85、継手(本体)86をこの順序で挿入してノズル8を完成させる。
【0059】
以上のように、この第4実施形態においても、第1実施形態と同様にシート部材82に設けられた複数の吐出孔822とノズル本体81に設けられた複数の貫通孔811とが1対1の対応関係で且つ相互に連通されるとともに、各貫通孔811に塗布液を選択的に送給可能となっている。その結果、塗布ノズル8の大型化を抑えつつ3本の塗布液を互いに独立して基板表面に向けて吐出することができる。
【0060】
また、ノズル本体81、接着剤88およびシート部材82をともに同一樹脂材料で構成しているので、シート部材82へのシワ発生やシート部材82の剥がれなどを発生させることなく、シート部材82をノズル本体81に強固に接着することができる。その結果、優れた着弾精度で、しかも安定した流量で塗布液を基板に向けて吐出することができる塗布ノズル8を得ることができる。
【0061】
さらに、上記第4実施形態では、ノズル本体81、接着剤88およびシート部材82をともにポリイミド(PI)系樹脂材料で構成しているので、次の作用効果も有している。図8の最下段に示すように、孔形成工程を実行することにより接着剤層およびシート部材層を上下に貫通して吐出孔822が形成される。このため、吐出孔822の内壁面において接着剤88が露出し、塗布液がその露出面と接触する。上記した比較例(接着剤88としてPFAを用いた例)では、PFA製の接着剤88を用いているため、吐出孔822においてPFA露出面が存在することとなる。PFAは従来より周知のように水との接触角は約100゜であり、塗布液の吐出流れを低減させる方向に作用している。これに対し、本実施形態ではポリイミド(PI)系樹脂材料の接着剤を用いている。このPIの水との接触角は約70゜であり、PFAよりも小さな値を有している。このため、ポリイミド(PI)系樹脂材料の接着剤88を用いた実施形態によれば、比較例に比べて塗布液を吐出流れを良好なものとすることができる。
【0062】
なお、接着剤88の種類としては、上記第4実施形態に限定されるものではなく、ノズル本体81およびシート部材82(820A)と同一樹脂材料のものを採用することができる。例えば、上記のようにノズル本体81およびシート部材82をポリイミド(PI)系樹脂材料(上記したベスペル(デュポン社の登録商標)、商品名「カプトン」、商品名「ユービレックス」など)で構成した場合には、接着剤88を上記した商品名「U−ワニス」や商品名「セミコファイン」以外にポリイミドを主成分とする感光材料、例えば東レ株式会社製の高耐熱性ポリイミドコーティング剤「フォトニース(商品名)」を用いることができる。
【0063】
<その他>
ところで、上記第4実施形態では、接着剤88を使用しているため、例えば図9(a)に示すように、接着剤88の一部が貫通孔811内に残余することがある。この場合、吐出孔822を形成する前にレーザ光Lを貫通孔811内を走査させて残余物881をアブレーション(蒸散)して除去することができる。そして、アブレーション後に孔形成工程を実行してもよい(同図(b))。もちろん、孔形成工程後にアブレーション処理を実行してもよい。このように、貫通孔811に残余した接着剤881を取り除くことにより貫通孔811および吐出孔822を介して塗布液を円滑に吐出することができ、塗布液の流量安定化を図ることができる。
【0064】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記第実施形態では、直方体形状に仕上げられた樹脂材料製のノズル本体81を用いているが、例えば図10に示すように複数枚(同図では3枚)の樹脂製薄板部材814を貼り合わさせてノズル本体81を構成してもよい(ノズル本体準備工程)。この場合、樹脂製薄板部材814としては、例えば東レ・デュポン株式会社製の商品名「カプトン」で構成することができる。そして、薄板部材814を積層させた際に互いに対向する薄板部材814の主面815にプラズマ処理を施した後、薄板部材814を積層し、さらに熱融着処理により3枚の薄板部材814を相互に接着してノズル本体81を形成することができる。そして、該ノズル本体81に対して機械加工処理を施して貫通孔811および雌ネジ部812が設けられる。
【0065】
また、上記実施形態では、表面処理の表面活性化処理としてプラズマ処理を実行しているが、コロナ処理を実行してもよい。また、第4実施形態ではプラズマ処理を実行して接着剤88の濡れ性を高めているが、濡れ性を高める観点からすれば、表面処理として上記したコロナ処理以外に、サンドブラストやプライマー処理などを実行してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、1枚のシート部材に対して吐出孔を3個設けた多孔ノズルについて説明したが、1枚のシート部材に対する吐出孔の形成個数および配列はこれに限定されるものではなく、複数の吐出孔822を任意の配列で設けることができる。
【0067】
また、上記第3および第4実施形態では、レーザ加工により吐出孔822を形成しているが、機械加工により吐出孔を形成してもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
この発明は、有機EL表示器、液晶表示器およびプラズマディスプレイなどのFPD(Flat Panel Display)に用いられる基板、ならびに半導体基板などの各種基板に対して吐出孔から塗布液を吐出する塗布ノズル全般に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】この発明にかかる製造方法の一実施形態により製造された塗布ノズルを装備する基板処理装置を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置に組み込まれた塗布ノズルを示す図である。
【図3】シート部材の準備工程の一例を示す模式図である。
【図4】シート部材の準備工程の他の例を示す模式図である。
【図5】本発明にかかる塗布ノズルの第2実施形態を示す模式図である。
【図6】図5の塗布ノズルの製造方法を示す模式図である。
【図7】本発明にかかる塗布ノズルの第3実施形態を示す模式図である。
【図8】本発明にかかる塗布ノズルの第4実施形態を示す模式図である。
【図9】本発明にかかる塗布ノズルの他の実施形態を示す模式図である。
【図10】本発明にかかる塗布ノズルの別の実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0070】
1…基板
8…塗布ノズル
81…ノズル本体
82…第1シート部材
88…接着剤
811…貫通孔
813…第1被接着面
814…薄板部材
815…(薄板部材の)主面
820A…第2シート部材
822…吐出孔
824…吐出口
825…第2被接着面
【出願人】 【識別番号】000207551
【氏名又は名称】大日本スクリーン製造株式会社
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】 【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一

【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司


【公開番号】 特開2008−6334(P2008−6334A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177004(P2006−177004)