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【発明の名称】 ワーク保持具
【発明者】 【氏名】神足 泰臣

【要約】 【課題】簡素な工程でコーティング工程や洗浄工程を進めることが可能なワーク保持具を提供する。

【構成】ワーク保持具10のフレーム部材11には、ワーク支持部材13が設けられたワーク取り付け部12が配置されている。ワーク支持部材は13は、板バネ13aと突起13bとによって構成されている。ワークWは、被コーティング面W1と、被コーティング面W1に直交する内側面W2および外側面W3を有している。ワーク支持部材13の突起13bがワークWの内側面W2に接触し、板バネ13aの付勢力によりワークWを内側面W2から把持している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被コーティング面と該被コーティング面に交差する側面とを有するワークを保持するためのワーク保持具であって、
複数のワーク取り付け部を有するフレーム部材と、
前記フレーム部材における前記各ワーク取り付け部に設けられ、バネ付勢力により前記ワークを前記側面において把持する少なくとも2つのワーク支持部材と、
を備えているワーク保持具。
【請求項2】
請求項1記載のワーク保持具において、
前記ワーク支持部材は、前記フレーム部材から突出している板バネである、ワーク保持具。
【請求項3】
請求項1記載のワーク保持具において、
前記ワーク支持部材は、プランジャおよびプランジャを付勢するコイルバネによって構成されている、ワーク保持具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のワーク保持具において、
前記ワーク保持具は、ワークの搬送工程、洗浄工程、およびコーティング工程において、共通に用いられる、ワーク保持具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のワーク保持具において、
前記フレーム部材に着脱可能に構成され、前記被コーティング面の周辺部を覆うマスク部材をさらに備えている、ワーク保持具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング工程に用いられるワーク保持具に係り、特に製造工程における能率の向上対策に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、種々の機能を有するコーティング膜が形成された部品が多く用いられている。コーティング膜としては、光学的特性、耐摩耗性、耐腐食性など、基材の材質では発揮し得ない機能を有する膜が形成される。したがって、コーティング工程の能率向上は、重要な課題となっている。
【0003】
特許文献1には、コーティング工程や洗浄工程における能率を向上させるために、磁力によってワークを保持するワーク保持具が開示されている。この従来のワーク保持具は、一列に磁石を配置した短冊状のワークホルダと、ワークが収められる開口を有する短冊状のワークカバーとを備えている。そして、磁石の上面でワークの底面を吸着して、ワークを固定するように構成されている。洗浄工程では、ワーク保持具を洗浄トレーに装着し、コーティング工程では、ワーク保持具を回転軸体に装着することで、洗浄工程とコーティング工程とで、共通にワーク保持具を使用できる構成となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−46338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のワーク保持具(膜コーティング用治具)を用いた場合、ワークを保持するために磁石の磁力を用いているために、ワークは磁性材料である必要がある(特許文献1では、浸炭焼入れされた鉄系材料)。しかも、コーティング処理の終了後には、ワークに磁気が残留する。ワークに磁気が残留していると、ワーク同士が互いに引きつけ合うなどの不都合が生じるので、いずれかの段階で、脱磁処理を行う必要がある。そのために、余分な工程が増えることにより、製造コストの増大を招くおそれがあった。
【0006】
さらに、特許文献1のワーク保持具では、開口を貫通する磁石によってワークの底面を吸着しているが、洗浄工程などで、当初の固定時にワーク同士が接触したり、工程中に超音波の振動などによってワークが横方向にずれると、ワーク同士がこすれ合う可能性がある。そのため、ワークのコーティング面などの損傷を確実に防止することが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、各種材料からなるワークに広く使用でき、しかも、簡素な工程でコーティング工程や洗浄工程を進めることが可能なワーク保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワーク保持具は、被コーティング面を有するワークを保持するために、フレーム部材の複数のワーク取り付け部に、バネ付勢力によりワークを側面において把持する少なくとも2つのワーク支持部材を設けたものである。
【0009】
これにより、磁力を用いていないことから、非磁性材料からなるワークにも使用することができ、磁性材料からなるワークに使用したときでも脱磁などの余分な工程を追加する必要はないので、使用範囲の拡大とコーティング工程の簡素化を図ることができる。
【0010】
ワーク支持部材は、フレーム部材から突出している板バネであってもよいし、プランジャおよびプランジャを付勢するコイルバネによって構成されていてもよい。
【0011】
ワーク保持具が、ワークの搬送工程、洗浄工程、およびコーティング工程において、共通に用いられることにより、ワークの取り付け、取り外しの手間を省略することができ、工程の高能率化が実現する。
【0012】
フレーム部材に着脱可能に構成され、被コーティング面の周辺部を覆うマスク部材をさらに備えることにより、被コーティング部以外の領域へのコーティング物質の堆積を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワーク保持具によると、簡素な工程で、ワークの損傷を防止しつつ、高能率にコーティング処理などを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態)
図1(a),(b),(c)は、順に、本発明の実施の形態におけるワーク保持具の上面図、Ib-Ib線における断面図、およびIc-Ic線における断面図である。ワーク保持具10は、12箇所にワーク取り付け部12が設けられたフレーム部材11を備えている。フレーム部材11には、長手方向に形成された長円形の4つの開口11aと、各開口11aで分離された5つの棹部11bとが設けられており、ワーク取り付け部12は、中央および両端の棹部11bを除く2つの棹部11bに6カ所ずつ設けられている。なお、中央の棹部11bには、マスク部材のピンが嵌合するピン穴14が2カ所に形成されている。
【0015】
ワーク取り付け部12には、2つの板バネ13aを有するコ字状の金属板17が、ネジ(図示せず)により取り付けられている。金属板17は、1枚のSUS製の短冊状板材の両側を折り曲げて構成され、折り曲げられた2つの部分が板バネ13aとして機能する。そして、板バネ13aには、ワークWに接触する突起13bが形成されている。この板バネ13aおよび突起13bは、ワークWを支持するためのワーク支持部材13として機能する。また、板バネ13aの先端は、ワークWとの接触を回避する方向に折り曲げられている。本実施の形態では、金属板17をフレーム部材11にネジ止めする構成としたが、接着剤、ろう付けなどによりフレーム部材11に接合してもよい。
【0016】
本実施の形態におけるワークWは、図1(b)において1カ所のみに例示するように、下端部が開放されたキャップ部材であり、上端面が被コーティング面W1となっている。そして、内側面W2および外側面W3は、被コーティング面に直交しており、本実施の形態では、内側面W2に2つのワーク支持部材13の突起13bが付勢されながら接触している。つまり、ワークWは、2つのワーク支持部材13の付勢力によって、内側面W2から把持されている。ただし、板バネ13aの付勢力の方向を逆にしてワークWを外側面W3から把持する構成を採ることもできる。
【0017】
図2(a),(b),(c)は、順に、マスク部材の上面図、IIb-IIb線における断面図、およびIIc-IIc線における断面図である。マスク部材20は、ワーク保持具10におけるワーク取り付け部12と同数(本実施の形態では12個)の開口22が形成されたマスクフレーム21を備えている。マスクフレーム21の開口22の径は、ワークWの径よりも大きく、両者間に一定の隙間が設けられている。また、マスクフレーム21における開口22の周辺には、合計21個の間隙保持ピン23がネジ(図示せず)により取り付けられている。間隙保持ピン23は、ワーク保持具10に取り付けられる際に、図1(a)に示す棹部11bのうち中央と両端の棹部11bに当接して、マスクフレーム21とワーク保持具10のフレーム部材11との間隙を一定に保持するものである。そして、間隙保持ピン23のうち、ワーク保持具10のピン穴14に対応する2つの間隙保持ピン23の先端には、位置決めピン24が設けられている。さらに、位置決めピン24の先端にはネジ25が設けられている。
【0018】
図3(a),(b),(c)は、順に、フレーム部材10にワークWおよびマスク部材20を装着したときのIIIa-IIIa線における横断面図、IIIb-IIIb線における縦断面図、およびIIIc-IIIc線における縦断面図である。ただし、図3(a)の一部には、上面から見た構造が示されている。以下、図3(a),(b),(c)を参照しながら、フレーム部材10にワークWおよびマスク部材20を装着する手順を説明する。
【0019】
まず、フレーム部材10のワーク支持部材13にワークWを装着する。このとき、上方からワークWを金属板17に押し込むだけで、板バネ13aの付勢力に抗してワークWがフレーム部材10に当接するまで押し込められる。そして、突起13bがワークWの内面に接触し、板バネ13aの付勢力によってワークWが固定される。次に、マスク部材20の2つの位置決めピン24を、フレーム部材10のピン穴14に嵌合させて、ネジ25にナット28を係合させることにより、フレーム部材10とマスク部材20とを固く連結させる。このとき、マスク部材20の各開口22がワークWと所定の間隙を保った状態で、マスク部材20の上面とワークWの被コーティング面W1とがほぼ同じ高さ位置になるように、間隙保持ピン23の長さが予め設定されている。
【0020】
図4(a),(b)は、コーティング工程で使用される成膜装置にワーク保持具(およびマスク部材)を取り付けた状態を説明するための縦断面図および横断面図である。図4(a)の中央部には、マスク部材20を装着したワーク保持具10の正面図が概略的に示されている。成膜装置の膜形成部40は、上板41aと下板41bとの間に架設された装着板42および中心軸44と、装着板42にワーク保持具10を連結させるための連結部材43とを備えている。なお、図示しないが、上板41aの上方には、上板41a,下板41bなどを中心軸44周りに回転自在に支持する固定部材が設けられている。また、図示しないが、成膜装置には、膜形成部40に被コーティング物質の気体粒子を供給する気体粒子生成部が配置されている。気体粒子の生成は、被コーティング材料に対する抵抗加熱、イオンビーム照射、スパッタなどによって行われる。なお、気体粒子を含む雰囲気ガスを供給してもよい。すなわち、本発明のワーク保持具は、PVD(Physical Vapor Deposition)法だけでなく、CVD(Chemical Vapor Deposition)法にも適用されるものである。
【0021】
本実施形態のワーク保持具10は、コーティング工程の他、コーティングの前後を問わず洗浄工程でも用いられる。特に、洗浄工程で、フレーム部材11に長円形状の開口11aが設けられ、キャップ状のワークWの内側面にも洗浄液が容易に入り込む構造となっている。また、コーティング工程から洗浄工程への移送の際には、成膜装置40からワーク保持具10を取り外し、運搬トレーに装着することにより、ワークWの取り外し、取り付けを行うことなく、作業を行うことができる。
【0022】
本実施の形態によると、ワーク保持具10によってワークWを保持する際、ワーク支持部材13が板バネ13aの付勢力を利用して構成されているので、非磁性材料、例えばアルミニウム,銅などの非磁性金属やセラミックス、プラスチックスなど、からなるワークにも使用することができる。また、磁性材料からなるワークに使用した場合にも、脱磁工程のような余分な処理を行う必要はない。したがって、使用範囲の拡大とコーティング工程の簡素化とを図ることができる。しかも、ワーク支持部材13は、板バネ13aの付勢力を利用して、ワークWを被コーティング面W1に交差する側面において把持しているので、ワークWが横方向にずれて互いに接触することもないことから、ワークWの被コーティング面W1などを傷つけることもない。
【0023】
また、ワーク保持具10にマスク部材20を装着すると、被コーティング面W1の周辺部がマスク部材20で覆われているので、ワークWの被コーティング面W1以外の領域、例えば外側面W3や、フレーム部材11の各領域におけるコーティング材料の堆積を抑制することができる。
【0024】
本実施の形態のワーク保持具10は、上述のように、コーティング終了後や、コーティング前の洗浄工程、搬送工程でも、ワークWを保持した状態で用いることができる。つまり、ワークWの取り付け、取り外しを行うことなく、たとえば洗浄→搬送→コーティング→搬送→洗浄などの複数の工程を順次行うことができるので、工程の円滑化を図ることができる。
【0025】
特に、洗浄工程において、キャップ状のワークWを洗浄する際に、ワーク保持具10のフレーム部材11に長穴形状の開口11aが設けられていて、ワークWが開口11aを跨いだ状態で取り付けられるので、ワークWの内部まで洗浄液が入り込んで、ワークWの内面をも洗浄することができる。
【0026】
(他の実施の形態)
上記開示された本発明の実施の形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0027】
上記実施の形態においては、ワークWを円形のキャップ状のものとしたが、ワークの形状は、矩形のキャップ状、円柱状、角柱状、あるいは異形のものであってもよい。
【0028】
図5は、本実施形態の変形例に係るワーク支持部材50の断面図である。同図に示すように、ワーク支持部材50は、シリンダ51と、シリンダ51内を摺動可能なボールプランジャ52と、ボールプランジャ52を付勢するコイルバネ53とによって構成されている。この構造は、ワークWを外側面から把持するのに適している。このワーク支持部材50を用いる場合は、3カ所または4カ所にワーク支持部材50を設置することにより、ワークWを確実に把持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のワーク保持具は、各種機械部品のコーティング工程、洗浄工程、搬送工程などにおいて利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a),(b),(c)は、順に、本発明の実施の形態におけるワーク保持具の上面図、Ib-Ib線における断面図、およびIc-Ic線における断面図である。
【図2】ワ(a),(b),(c)は、順に、マスク部材の上面図、IIb-IIb線における断面図、およびIIc-IIc線における断面図である。
【図3】(a),(b),(c)は、順に、フレーム部材にワークおよびマスク部材を装着したときのIIIa-IIIa線における横断面図、IIIb-IIIb線における縦断面図、およびIIIc-IIIc線における縦断面図である。
【図4】(a),(b)は、コーティング工程で使用される成膜装置にワーク保持具(およびマスク部材)を取り付けた状態を説明するための縦断面図および上板から下方を見たときの平面図である。
【図5】実施形態の変形例に係るワーク支持部材の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
W ワーク
10 ワーク保持具
11 フレーム部材
11a 開口
11b 棹部
12 ワーク取り付け部
13 ワーク支持部材
13a 板バネ
13b 突起
14 ピン穴
15 ネジ部材
17 金属板
20 マスク部材
21 マスクフレーム
22 開口
23 間隙保持ピン
24 位置決めピン
25 ネジ
40 成膜装置
41a 上板
41b 下板
42 装着板
43 連結部材
44 中心軸
【出願人】 【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【出願日】 平成18年7月13日(2006.7.13)
【代理人】 【識別番号】100124981
【弁理士】
【氏名又は名称】川嶋 正章

【識別番号】100111936
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 征一


【公開番号】 特開2008−18353(P2008−18353A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−192936(P2006−192936)