トップ :: B 処理操作 運輸 :: B04 物理的または化学的工程を行なうための遠心装置または機械

【発明の名称】 サイクロン分離装置およびそれを用いた住宅換気用給気フード
【発明者】 【氏名】松村 昌典

【氏名】谷 真輝

【氏名】波田野 航

【氏名】遠藤 秀次

【要約】 【課題】軸方向の寸法が小さく小型でかつ塵埃分離効率のよいサイクロン分離装置を提供する。

【構成】軸方向の一端に吸気口4を他端に排気口5を設けたサイクロン室3を有するサイクロン分離装置であって、上記吸気口4は、軸心近傍の所定領域にサイクロン室3への吸気を遮る吸気遮断領域10を設けることにより当該吸気遮断領域10の周囲の環状領域として形成される一方、上記排気口5は、上記吸気遮断領域10と対面する軸心近傍の領域として形成され、上記環状領域として形成された吸気口4には、サイクロン室3に渦流を流入させるための傾斜状の羽根部材6が周方向に並ぶように配置され、上記吸気遮断領域10は排気口5の50%以上の大きさに設定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端に吸気口を他端に排気口を設けたサイクロン室を有するサイクロン分離装置であって、
上記吸気口は、軸心近傍の所定領域にサイクロン室への吸気を遮る吸気遮断領域を設けることにより当該吸気遮断領域の周囲の環状領域として形成される一方、上記排気口は、上記吸気遮断領域と対面する軸心近傍の領域として形成され、
上記環状領域として形成された吸気口には、サイクロン室に渦流を流入させるための傾斜状の羽根部材が周方向に並ぶように配置され、上記吸気遮断領域は排気口の50%以上の大きさに設定されていることを特徴とするサイクロン分離装置。
【請求項2】
上記環状領域として形成された吸気口の内周と外周に、それぞれ円筒状の吸気ダクトを配置した請求項1記載のサイクロン分離装置。
【請求項3】
上記排気口のサイクロン室側の開口部近傍が、サイクロン室側に突出するよう構成されている請求項1または2記載のサイクロン分離装置。
【請求項4】
上記サイクロン室の下部に、サイクロン室で分離された塵埃を収容する塵埃収容手段を備え、上記塵埃収容手段は、上下方向に並ぶ複数の塵埃排出弁が設けられ、上記複数の塵埃排出弁のうち少なくとも1つは他の塵埃排出弁と同時に開かないように構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のサイクロン分離装置。
【請求項5】
住宅の内部換気用の給気のために外気の取り入れを行うための住宅換気用給気フードであって、
軸方向の一端に吸気口を他端に排気口を設けたサイクロン室を有し、上記吸気口は、軸心近傍の所定領域にサイクロン室への吸気を遮る吸気遮断領域を設けることにより当該吸気遮断領域の周囲の環状領域として形成される一方、上記排気口は、上記吸気遮断領域と対面する軸心近傍の領域として形成され、上記環状領域として形成された吸気口には、サイクロン室に渦流を流入させるための傾斜状の羽根部材が周方向に並ぶように配置され、上記吸気遮断領域は排気口の50%以上の大きさに設定されたサイクロン分離装置を備えていることを特徴とする住宅換気用給気フード。
【請求項6】
上記サイクロン室の下部に、サイクロン室で分離された塵埃を収容する塵埃収容手段を備え、上記塵埃収容手段は、上下方向に並ぶ塵埃排出弁が設けられ、
風力により往復移動する受風部材の一方向への動きにより一方の塵埃排出弁を開弁させ、他方向への動きにより他方の塵埃排出弁を開弁させることにより、上記複数の塵埃排出弁のうち1つは他の塵埃排出弁と同時に開かないように構成された請求項6記載の住宅換気用給気フード。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向の寸法が小さく小型でかつ塵埃分離効率のよいサイクロン分離装置およびそれを用いた住宅換気用給気フードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサイクロン分離装置は、図10に示すように、上部が円筒状で下部がすり鉢状のサイクロン外筒と、その外筒と同心に配置された細い円筒状のサイクロン内筒から成る二重円筒構造になっている。このサイクロン分離装置では、空気はサイクロン外筒上部の周方向から流入し、内外筒間のサイクロン空間で旋回流となって塵埃を遠心分離しながら下降していくが、サイクロン空間下部で流れは反転し、内筒入り口から流入して内筒内を上昇し、サイクロン筒体上部から流出する。
【0003】
このとき分離性能を高めるためには、サイクロン筒体の軸方向長さがある程度必要であり、したがってサイクロン分離装置の小型化は難しい課題となっている。またサイクロン筒体の軸方向長さの大きいこと、および二重円筒構造は、流路面積、すなわちサイクロン空間を形成する内外筒間の壁面および内筒内側の壁面の面積が増大し、その結果大きな摩擦損失の生じる原因となっている。さらにサイクロン空間で発生した旋回下降流が反転して内筒に流入する際には、流線の大きな変形と縮流が伴うため、ここで大きな圧力損失が発生する。したがって従来のサイクロン分離装置は、高い分離性能と低い圧力損失を両立することは構造上難しい課題となっている。
【0004】
そこで、サイクロン空間内で流れを反転させることなく、圧力損失を低くすることのできる軸流サイクロン分離装置として、下記の特許文献1に示す装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−259479号公報
【特許文献2】特開2005−127560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の装置は、配管やダクトの途中に装着することを前提にしているため、サイクロン筒体吸入口には流入筒が存在することや、さらにサイクロン空間内には自由渦正流板とその支柱が存在するため、サイクロン筒体の軸方向長さを短くすることはできず、十分な小型化には至っていない。
【0006】
また、一般に吸い込み型のサイクロン分離装置では、サイクロン空間の圧力は外気よりも低圧になっているため、サイクロン筒体流入口以外に外気に通じる孔があると、そこから外気が流入し、分離性能の低下を招く。そこでサイクロン分離装置運転中は、塵埃貯留室も外気に対して密閉状態である必要があり、本装置を運転しながら塵埃貯留室に貯留した塵埃を除去することは難しい。そこで、一般に、塵埃を取り出すときにはサイクロン分離装置の運転を一旦停止することが行われている。
【0007】
一方、外気を強制的に室内に取り込む住宅用の24時間換気システムにおいては、外気に含まれる塵埃や昆虫等を取り除くため、送風機本体の給気側に空気浄化用のフィルターを設置することが多い。フィルターの効果を持続させ、汚れによる圧力損失の増加を防止するためには、フィルターの定期的な清掃や交換等のメンテナンス作業が必要不可欠である。しかし現状では、フィルター交換の煩わしさや汚れたフィルターへの嫌悪感から、適切な頻度でフィルターを清掃/交換するユーザは非常に少なく、その結果、換気性能の低下した状態で使用し続けている場合も多い。
【0008】
一般に住宅の給気口には、雨雪や鳥あるいは大型昆虫等が給気口に入り込まないように給気フードを取り付けるが、この給気フードに空気浄化機能があれば、送風機本体のフィルターの負担が軽減され、必要なメンテナンス作業の頻度も少なくすることができる。しかしこの空気浄化機能の付加によって給気フード自体に清掃等のメンテナンスの必要が生じる場合は、メンテナンスの煩わしさの解決にはならず、また一般に給気口は高所に設置されることが多いため、一般ユーザによるメンテナンス作業は事実上不可能であり、かえって大きな問題が生じることになる。
【0009】
さらに空気浄化機能の付加によって圧力損失が増加することは、省エネの観点からも避ける必要があり、また軒や窓枠などの設置上の制約から、給気フードは小型であることが必要である。このように給気フードに空気浄化機能を持たせることは、住宅換気装置のメンテナンスコストの低減に有効であるが、メンテナンスフリーで圧力損失が低く、空気浄化機能を持つ小型な給気フードはこれまで提供されていなかったのが実情である。
【0010】
このような従来のサイクロン分離装置を住宅に適用したものとして、上記特許文献2に示すものが開示されているが、従来の大型のサイクロン装置をそのまま適用したものにすぎず、小型で分離性能がよい住宅用の給気システムにサイクロン分離装置を適用したものは、現在まで提供されていないのが実情である。
【0011】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたもので、サイクロン筒体の軸方向長さを短縮し、小型化して設置性を向上させるとともに、高い分離性能と低い圧力損失を両立させ、また該装置運転中でも貯留した塵埃の排出が可能なサイクロン分離装置を提供することを第1の目的とする。また、これを住宅換気用給気フードに組み込み、空気浄化機能と塵埃自動排出機能を伴ったメンテナンスフリーの住宅換気用給気フードを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のサイクロン分離装置は、軸方向の一端に吸気口を他端に排気口を設けたサイクロン室を有するサイクロン分離装置であって、
上記吸気口は、軸心近傍の所定領域にサイクロン室への吸気を遮る吸気遮断領域を設けることにより当該吸気遮断領域の周囲の環状領域として形成される一方、上記排気口は、上記吸気遮断領域と対面する軸心近傍の領域として形成され、
上記環状領域として形成された吸気口には、サイクロン室に渦流を流入させるための傾斜状の羽根部材が周方向に並ぶように配置され、上記吸気遮断領域は排気口の50%以上の大きさに設定されていることを要旨とする。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明の住宅換気用給気フードは、住宅の内部換気用の給気のために外気の取り入れを行うための住宅換気用給気フードであって、
軸方向の一端に吸気口を他端に排気口を設けたサイクロン室を有し、上記吸気口は、軸心近傍の所定領域にサイクロン室への吸気を遮る吸気遮断領域を設けることにより当該吸気遮断領域の周囲の環状領域として形成される一方、上記排気口は、上記吸気遮断領域と対面する軸心近傍の領域として形成され、上記環状領域として形成された吸気口には、サイクロン室に渦流を流入させるための傾斜状の羽根部材が周方向に並ぶように配置され、上記吸気遮断領域は排気口の50%以上の大きさに設定したサイクロン分離装置を備えていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明は、上記吸気口を軸心近傍の所定領域にサイクロン室への吸気を遮る吸気遮断領域を設けることにより当該吸気遮断領域の周囲の環状領域として形成し、上記環状領域として形成された吸気口には、サイクロン室に渦流を流入させるための傾斜状の羽根部材が周方向に並ぶように配置されていることから、軸方向寸法が極めて短い構造により効果的に渦流を発生させて環状の吸気口からサイクロン室に渦流を導入することができる。そして、上記排気口を上記吸気遮断領域と対面する軸心近傍の領域として形成することにより、環状の吸気口から渦流を導入することにより、サイクロン室の軸心付近には渦流を入れず、塵埃を分離するための側壁近傍に渦流を導入できることから、環状の吸気口から流入した渦流がサイクロン室の側壁に効果的に当って塵埃が効果的に分離される。しかも、従来のようなサイクロン内筒を必要としないため、サイクロン筒体内で生じる摩擦損失も小さく、吸気口から流入した流れは軸方向に反転することなく軸に沿って一方向に流れて排出されるうえ、サイクロン室自体の軸方向長さを大幅に縮小できるため、圧力損失も大幅に減少する。このような構造により、サイクロン室自体の軸方向長さを大幅に縮小して小型化することができ、かつ塵埃の分離効率も高くて圧力損失も少ないサイクロン分離装置が得られたのである。しかも、上記吸気遮断領域は排気口5の50%以上の大きさに設定されているため、サイクロン筒体内の排気口に近い領域に渦流を吸入させるのを防止でき、遠心分離により十分塵埃が除去されない状態の吸気が排気口から排出されてしまうのが防止され、十分な分離効率を確保できる。
【0015】
本発明において、上記排気口のサイクロン室側の開口部近傍が、サイクロン室側に突出するよう構成されている場合には、
サイクロン室内の渦流が排気口から排出される際に、排気が突出した部分を乗り越えて外部に排出されることになることから、排気の勢いによって塵埃を外部に出してしまうことが一層確実に防止され、分離効率を向上させることができる。
【0016】
本発明において、上記環状領域として形成された吸気口の内周と外周に、それぞれ円筒状の吸気ダクトを配置した場合には、
上記吸気ダクトの存在により、吸気口付近の気流が吸気口以外の部分に逃げずに吸気口に導かれるため、強い渦流をサイクロン室内に導入することができ、サイクロン室の側壁に渦流が効果的に当って塵埃が一層効果的に分離される。
【0017】
本発明において、上記サイクロン室の下部に、サイクロン室で分離された塵埃を収容する塵埃収容手段を備え、上記塵埃収容手段は、上下方向に並ぶ複数の塵埃排出弁が設けられ、上記複数の塵埃排出弁のうち少なくとも1つは他の塵埃排出弁と同時に開かないように構成されている場合には、
上側の塵埃排出弁の開弁によって排出された塵埃は、下側の塵埃排出弁で受けられて一旦保持され、下側の塵埃排出弁の開弁によって排出され、上から下に向かって順次排出される。このとき、塵埃排出弁のうち少なくとも1つは他の塵埃排出弁と同時に開かないため、一旦落下した塵埃がサイクロン室内の方に逆流することなく排出される。このように、フィルタ交換のような煩雑な作業を行うことなく、メンテナンスフリーで運転することができる。
【0018】
本発明において、吸気遮断領域は排気口と同じかそれよりも広く形成した場合には、塵埃が分離されたサイクロン室内の渦流は、吸気口の吸気遮断領域よりも小さな排気口から排出される際に、排気口から排出される排気の勢いによって塵埃を外部に出してしまうことが防止され、分離効率が高くなる。
【0019】
本発明において、環状の吸気口と排気口が形成されたサイクロン筒体の内部空間が空洞である場合には、サイクロン筒体内部に気流の流れを阻害する部材が存在しないことになるため、圧力損失が最小限ですむ。
【0020】
本発明において、上記サイクロン室の下部に、サイクロン室で分離された塵埃を収容する塵埃収容手段を備え、上記塵埃収容手段は、上下方向に並ぶ塵埃排出弁が設けられ、
風力により往復移動する受風部材の一方向への動きにより一方の塵埃排出弁を開弁させ、他方向への動きにより他方の塵埃排出弁を開弁させることにより、上記複数の塵埃排出弁のうち1つは他の塵埃排出弁と同時に開かないように構成された場合には、
上側の塵埃排出弁の開弁によって排出された塵埃は、下側の塵埃排出弁で受けられて一旦保持され、下側の塵埃排出弁の開弁によって排出され、上から下に向かって順次排出される。このとき、塵埃排出弁のうち少なくとも1つは他の塵埃排出弁と同時に開かないため、一旦落下した塵埃がサイクロン室内の方に逆流することなく排出される。
また、上記塵埃の排出を、受風部材に風力を受けることにより行うことができるため、何の動力を用いることも、フィルタ交換のような煩雑な作業を行うこともなく、メンテナンスフリーで運転することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明が適用されたサイクロン分離装置の一実施形態を示す図である。
【0023】
このサイクロン分離装置は、水平軸型のサイクロン分離装置であり、サイクロン筒体1の軸2を水平に設置したものである。
【0024】
上記サイクロン分離装置は、内部がサイクロン室3となった略円筒状のサイクロン筒体1を備えている。上記サイクロン筒体1には、軸方向の一端の壁面1aに吸気口4が設けられ、他端の壁面1bに排気口5が設けられている。
【0025】
上記サイクロン筒体1の吸気口側の壁面1aには、軸心近傍の所定領域にサイクロン室3への吸気を遮る吸気遮断領域10が設けられている。上記吸気遮断領域10は、軸心を中心とした円形の領域として形成され、上記吸気口4は、上記吸気遮断領域10により当該吸気遮断領域10の周囲において軸心を中心とした同心円状の環状領域として形成されている。上記環状領域として形成された吸気口4の内周と外周には、それぞれ短い円筒状の吸気ダクト7a,7bが配置されている。また、上記吸気口4の外側の周辺には、環状の壁面1aが存在している。
【0026】
一方、上記排気口5は、上記吸気遮断領域10と対面する軸心近傍の領域として形成され、上記排気口5は、軸心を中心とした円形の領域として形成され、開口縁に筒状のダクト部材14が取り付けられている。このように、上記排気口5、吸気遮断領域10、吸気口4、サイクロン筒体1は、すべて軸心を中心とした同心円状に配置、形成されている。
【0027】
上記環状領域として形成された吸気口4には、サイクロン室3に渦流を流入させるための傾斜状の羽根部材6が周方向に並ぶように配置されている。
【0028】
図2(a)および(b)は、上記羽根部材6を示す図である。上記羽根部材6は、軸心を中心として放射状に配置されており、各羽根部材6は、軸2に直交する平面(すなわち壁面1aと平行な平面)に対して所定角度(この例ではα)だけ傾斜するよう配置されている。そして、この例では、各羽根部材6は、所定角度(この例ではθ)の略扇形の平板状に形成され、羽根部材6が周方向に略等間隔に12枚配置されている(したがって、この例ではθは約30°程度である)。
【0029】
図2(c)および(d)は、上記羽根部材6の変形例であり、図2(c)は、平板状ではなく断面を流線型にしたもの、図2(d)は、傾斜の上流側の側辺部を上流側に湾曲形成したものである。なお、羽根部材6の枚数や傾斜角度ならびに大きさ・形状等は、上述した例に限るものではなく、圧力損失や分離性能等の観点から適宜設定することができる。
【0030】
そして、上記サイクロン分離装置では、吸気遮断領域10は排気口5の50%以上の大きさとするのが好ましく、排気口5の80%以上の大きさとすればより好ましい。このようにすることにより、サイクロン筒体内の排気口5に近い領域に渦流を吸入させるのを防止でき、遠心分離により十分塵埃が除去されない状態の吸気が排気口5から排出されてしまうのが防止され、十分な分離効率を確保できる。
【0031】
さらに好ましいのは吸気遮断領域10は排気口5と同じかそれよりも広く形成するのが好ましい。すなわち、吸気遮断領域10の直径が排気口5の直径と同じかそれよりも大きくなるよう設定するのがより好ましい。この例では、図示した符号ではd≦dの関係となるよう設定されている。このようにすることにより、塵埃が分離されたサイクロン室内の渦流は、吸気口の吸気遮断領域よりも小さな排気口から排出される際に、排気口から排出される排気の勢いによって塵埃を外部に出してしまうことが防止され、分離効率が高くなる。
【0032】
上記サイクロン筒体1の下部には、サイクロン室3で分離された塵埃を収容する塵埃収容室8を備えている。上記塵埃収容室8とサイクロン室3との間のサイクロン筒体1の壁面には、塵埃落下口9が開口している。上記塵埃落下口9は、サイクロン筒体1の軸方向の全長にわたるスリット状に形成されている。また、上記塵埃落下口9は、サイクロン分離装置を使用する状態に配置したときに、最も高さが低くなる位置に設けられている。これにより、サイクロン室3内で周壁との摩擦で落下して分離された塵埃は、重力で塵埃落下口9から塵埃収容室8内に落下する。
【0033】
図3は変形例であり、サイクロン筒体1の内周壁において、塵埃落下口9の渦流の回転方向の下流側の縁部に、軸方向の全長にわたって延びる突状18が形成されている。この突状18は、渦流の気流の作用で内周壁に沿って進む塵埃と衝突して、塵埃を塵埃落下口9に効率的に落下させて分離効率を高めるものである。
【0034】
同様に、渦流の気流の作用で内周壁に沿って進む塵埃と衝突して塵埃の分離効率を高める微小突起をサイクロン室3の内周壁の全体に設けたり、内周壁をブラスト加工等により粗面仕上げを施すことにより、分離効率を高めることも可能である。
【0035】
上記構成により、羽根部材6によって流入時に強い旋回流が発生し、塵埃はサイクロン筒体1への流入直後に遠心分離され、直ちに塵埃収容室8に落下するため、サイクロン筒体1の軸方向長さを短くしても、分離性能の低下はほとんどみられず、高い分離性能を保った状態で小型化が可能となる。またサイクロン筒体1の吸気口4の面積を大きく取ることができるので外気流入時の圧力損失を小さくすることができ、さらにサイクロン筒体1の軸方向長さが短く、従来型のサイクロン分離装置のようなサイクロン内筒を必要としないため、サイクロン筒体内で生じる摩擦損失も小さく、さらにサイクロン筒体1の吸気口4から流入した流れは、従来のサイクロン分離装置のように軸方向に反転することなく軸に沿って一方向に流れてサイクロン筒体1から排出されるので、各種流動損失を小さくすることができる。このため、この装置の総合的な圧力損失は、従来型のサイクロン分離装置に比べて大幅に小さくすることができる。
【0036】
図4は、上記サイクロン分離装置を住宅換気用給気フードに適用した一実施形態を示す。
【0037】
住宅換気用給気フードは、軒や窓枠等による設置スペース上の制約や、住宅外壁景観上の問題から、外壁上の占有面積は小さく、外壁から見た厚さも薄い方が望ましい。したがってサイクロン筒体1の軸長さLを短くして薄くできる水平軸型の本装置は、住宅換気用給気フードとして最適である。
【0038】
本装置を住宅換気用給気フードに組み込む場合は、雨雪の吹き込みを防止するため、吸気口4は雨雪防止カバー15で覆うことが望ましい。また、上記住宅換気用給気フードは、一般に高所に取り付けられることが多いため、ユーザがメンテナンスを行うことは難しいため、本装置には自動的に塵埃を排出する機構を設けた。
【0039】
図5は、塵埃収容室8に収容された塵埃を自動的に排出する塵埃排出装置を示す。
【0040】
この上記塵埃排出装置は、上下方向に並ぶ複数の塵埃排出弁11,12が設けられ、上記複数の塵埃排出弁11,12のうち少なくとも1つは他の塵埃排出弁と同時に開かないように構成されている。
【0041】
より詳しく説明すると、塵埃収容室8の下部に塵埃落下室19が設けられている。上記塵埃収容室8の下面には第1塵埃排出口13aが形成され、この第1塵埃排出口13aを開閉する第1塵埃排出弁11が設けられている。上記塵埃落下室19の下面には、第1塵埃排出口13bが形成され、この第2塵埃排出口13bを開閉する第2塵埃排出弁12が設けられている。
【0042】
上記第1塵埃排出弁11および第2塵埃排出弁12は、それぞれ回動軸20を中心にして回動することにより開閉するようになっている。また、上記第1塵埃排出弁11および第2塵埃排出弁12は、図示しないねじりコイルばねのような付勢手段により、通常は第1塵埃排出口13aおよび第2塵埃排出口13bを閉じるように付勢力が働いている。
【0043】
上記第1塵埃排出弁11および第2塵埃排出弁12には、それぞれの回動軸20の部分に、回動軸20を軸として第1塵埃排出弁11および第2塵埃排出弁12を回動させるための鉤状の第1レバー部材21a,第2レバー部材21bが取り付けられている。上記第1レバー部材21aを図示の左側に押圧操作することにより第1塵埃排出弁11が回動して開弁し、上記第2レバー部材21bを図示の右側に押圧操作することにより第2塵埃排出弁12が回動して開弁するように構成されている。
【0044】
そして、上記塵埃収容室8の第1塵埃排出弁11よりも上方には、受風板16が取り付けられた回動アーム17が軸支されている。上記回動アーム17が回動軸22を軸として図示の左右に振り子のように回動し、回動アーム17の下端部に取り付けられた受風板16は、屋外の風を受けることにより、左右に往復移動するようになっている。
【0045】
そして、風力により往復移動する受風部材としての受風板16の一方向(図示の左側)への動きにより、回動アーム17が第1レバー部材21aを図示の左側に押圧操作して一方の第1塵埃排出弁11を開弁させる。この第1塵埃排出弁11の開弁により、塵埃収容室8内に溜まった塵埃が第1塵埃排出口13aから排出されて塵埃落下室19に導入される。ついで、受風板16の他方向への動きにより、回動アーム17が第2レバー部材21bを図示の右側に押圧操作して他方の第2塵埃排出弁12を開弁させるようになっている。この第2塵埃排出弁12の開弁により、塵埃落下室19内に溜まった塵埃が第2塵埃排出口13bから外部に排出される。
【0046】
このような構成により、上記第1塵埃排出弁11と第2塵埃排出弁12は同時に開かないように構成されている。これにより、上記塵埃排出装置は、風力によって自動的に作動する。すなわち、風圧を受ける受風板16を回転運動する回動アーム17の端部に固定し、受風板16が本給気フードの下部になるように設置する。この受風板16に、ある程度の強い風が当たると、風圧によって受風板16が動き、回動アーム17が回転運動する。この回転運動をリンク機構によって2つの塵埃排出弁11,12に伝達し、弁の開閉を行う。受風板の大きさによって、弁の開閉動作の起こる風の強さが決まるので、予想風力と必要な排出頻度の関係から、受風板16の大きさを決めることが望ましい。
【0047】
図6は、塵埃排出装置の変形例を示す。
【0048】
この塵埃排出装置は、受風板16と回動アーム17で機械的に第1塵埃排出弁11と第2塵埃排出弁12を開閉するのではなく、第1電磁コイル23aと第2電磁コイル23bとにより電気的に第1塵埃排出弁11と第2塵埃排出弁12を開閉操作するようにしている。この場合でも、上記第1塵埃排出弁11と第2塵埃排出弁12は同時に開かないように制御することが行われる。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、上記吸気口4を軸心近傍の所定領域にサイクロン室3への吸気を遮る吸気遮断領域10を設けることにより当該吸気遮断領域10の周囲の環状領域として形成し、上記環状領域として形成された吸気口4には、サイクロン室3に渦流を流入させるための傾斜状の羽根部材6が周方向に並ぶように配置されていることから、軸方向寸法が極めて短い構造により効果的に渦流を発生させて環状の吸気口4からサイクロン室3に渦流を導入することができる。そして、上記排気口5を上記吸気遮断領域10と対面する軸心近傍の領域として形成し、上記吸気遮断領域10を排気口5と同じかそれよりも広く形成することにより、環状の吸気口4から渦流を導入することにより、サイクロン室3の軸心付近には渦流を入れず、塵埃を分離するための側壁近傍に渦流を導入できることから、環状の吸気口4から流入した渦流がサイクロン室3の側壁に効果的に当って塵埃が効果的に分離される。しかも、塵埃が分離されたサイクロン室3内の渦流は、吸気口4の吸気遮断領域10よりも小さな排気口5から排出される際に、排気口5から排出される排気の勢いによって塵埃を外部に出してしまうことが防止される。しかも、従来のようなサイクロン内筒を必要としないため、サイクロン筒体1内で生じる摩擦損失も小さく、吸気口4から流入した流れは軸方向に反転することなく軸に沿って一方向に流れて排出されるうえ、サイクロン室3自体の軸方向長さを大幅に縮小できるため、圧力損失も大幅に減少する。このような構造により、サイクロン室3自体の軸方向長さを大幅に縮小して小型化することができ、かつ塵埃の分離効率も高くて圧力損失も少ないサイクロン分離装置が得られたのである。
【0050】
また、上記環状領域として形成された吸気口4の内周と外周に、それぞれ円筒状の吸気ダクト7a,7bを配置したため、上記吸気ダクト7a,7bの存在により、吸気口4付近の気流が吸気口4以外の部分に逃げずに吸気口4内に導かれるため、強い渦流をサイクロン室3内に導入することができ、サイクロン室3の側壁に渦流が効果的に当って塵埃が一層効果的に分離される。
【0051】
また、上記サイクロン室3の下部に、サイクロン室3で分離された塵埃を収容する塵埃収容手段を備え、上記塵埃収容手段は、上下方向に並ぶ複数の塵埃排出弁11,12が設けられ、上記複数の塵埃排出弁11,12のうち少なくとも1つは他の塵埃排出弁と同時に開かないように構成されているため、第1塵埃排出弁11の開弁によって排出された塵埃は、第2塵埃排出弁12で受けられて一旦保持され、第2塵埃排出弁12の開弁によって排出され、上から下に向かって順次排出される。このとき、塵埃排出弁11,12のうち少なくとも1つは他の塵埃排出弁と同時に開かないため、一旦落下した塵埃がサイクロン室3内の方に逆流することなく排出される。このように、フィルタ交換のような煩雑な作業を行うことなく、メンテナンスフリーで運転することができる。
【0052】
また、風力により往復移動する受風板16の一方向への動きにより第1塵埃排出弁11を開弁させ、他方向への動きにより第2塵埃排出弁12を開弁させるようにしたため、上記塵埃の排出を、受風板16に風力を受けることにより行うことができるため、何の動力を用いることも、フィルタ交換のような煩雑な作業を行うこともなく、メンテナンスフリーで運転することができる。
【0053】
また、環状の吸気口4と排気口5が形成されたサイクロン筒体1の内部空間が空洞であるため、サイクロン筒体1内部に気流の流れを阻害する部材が存在せず、圧力損失が最小限ですむ。
【0054】
図7は、本発明の第2実施形態のサイクロン分離装置である。
【0055】
このサイクロン分離装置は、垂直軸型のサイクロン分離装置である。基本的な構図は図1に示す水平軸型と同様であるが、サイクロン筒体1の軸2を垂直に設置したことにより、吸気口4となるサイクロン筒体1の壁面1aがサイクロン筒体1の下側に位置する。そして、サイクロン筒体1の壁面1aの外周部近傍に塵埃落下口9を設け、その下部に塵埃収容室8を設置する。したがって、吸気口4の直径dの最大値は、この塵埃収容室8に必要な大きさだけ小さくなる。なお、図では、塵埃落下口9と塵埃収容室8は、サイクロン筒体1の壁面1aの外周部近傍の一部だけに設けているが、これをサイクロン筒体1の壁面1aの外周近傍の全周にわたって、サイクロン筒体1と同心円状に設置することも可能である。それ以外は、第1の実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この実施形態でも、上記第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0056】
図8は、本発明の第3実施形態のサイクロン分離装置である。
【0057】
このサイクロン分離装置は、上記排気口5のサイクロン室3側の開口部近傍が、サイクロン室3側に突出するよう構成されている。
【0058】
図8(a)は、排気口5の周縁に設けられたダクト部材14の根元部分をサイクロン室3側に突出させて突出部24aを形成したものである。
図8(b)は、排気口5の周縁の壁面1bの一部に、サイクロン室3側に突出する湾曲部を形成して突出部24bを形成したものである。
図8(c)は、排気口5の周縁の壁面1bを排気口5に近づくほど徐々にサイクロン室3側に突出する傾斜面に形成することにより突出部24cを形成したものである。
【0059】
このように、上記排気口5のサイクロン室3側の開口部近傍が、サイクロン室3側に突出するよう構成したため、サイクロン室3内の渦流が排気口5から排出される際に、排気が突出した部分を乗り越えて外部に排出されることになることから、排気の勢いによって塵埃を外部に出してしまうことが一層確実に防止され、分離効率を向上させることができる。
【実施例】
【0060】
図9は、本発明のサイクロン分離装置の塵埃分離能力の測定結果を示す図である。
【0061】
図1に示す水平軸型のサイクロン分離装置により、塵埃分離能力の測定を行った。このときの試験条件は下記に示すとおりとした。
〔試験条件〕
サイクロン筒体 外径 D=200mm
羽根部材 枚数 n=18枚
吸気口 外径 d=180mm
吸気口 内径 d=100mm
排気口 直径 d=100mm
流量 Q=100m/h
【0062】
図9に、上記条件において、サイクロン筒体1の軸長さLを変更し、上記軸長さLに対する分離性能を評価した。試験塵埃としては、小昆虫を想定したものとして粒径2.5mmの発泡スチロール粒子と、一般的な屋外塵埃を想定したものとしてJIS粉体(JIS Z8901試験用粉体1の15種)を使用した。分離率ηは、吸入された塵埃に対する分離捕集された塵埃の重量割合として評価した。
【0063】
発泡スチロール粒子に関しては、L≧60mmにおいてほぼ100%近い分離率が得られていることがわかる。また、JIS粉体に関しては、L≧100mmにおいてほぼ80%程度の分離率が得られていることがわかる。したがって、この場合においては、特に限定するものではなく、当該分離装置より下流で室内への送風装置に設けられるフィルタの負荷が約1/5に軽減されることになる。一方、この場合における圧力損失係数は約2程度であり、通常使用される住宅換気用給気フードと同程度のレベルである。
【0064】
以上のように、本発明によれば、高い分離性能と低い圧力損失を両立させながらサイクロン分離装置を小型化することができるため、これまで設置性の問題からサイクロン分離装置の使用ができなかった各種装置類(例えば住宅換気用給気フード,エンジンのエアクリーナー,空調機器など)に該装置を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のサイクロン分離装置の一実施形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【図2】羽根部材を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)および(d)は変形例の断面図である。
【図3】変形例のB−B断面図である。
【図4】本発明の住宅換気用給気フードの一実施形態を示す斜視図である。
【図5】上記住宅換気用給気フードの排出弁の構造を説明する図であり、(a)は断面図、(b)は1つの排出弁を示す斜視図である。
【図6】排出弁の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明のサイクロン分離装置の第2実施形態を示す図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。
【図8】本発明のサイクロン分離装置の第3実施形態を示す図である。
【図9】本発明のサイクロン分離装置の塵埃分離能力の測定結果を示す図である。
【図10】従来のサイクロン分離装置を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1:サイクロン筒体
1a:壁面
1b:壁面
2:軸
3:サイクロン室
4:吸気口
5:排気口
6:羽根部材
7a:吸気ダクト
7b:吸気ダクト
8:塵埃収容室
9:塵埃落下口
10:吸気遮断領域
11:塵埃排出弁
12:塵埃排出弁
13a:第1塵埃排出口
13b:第2塵埃排出口
14:ダクト部材
15:雨風防止カバー
16:受風板
17:回動アーム
18:突状
19:塵埃落下室
20:回動軸
21a:第1レバー部材
21b:第2レバー部材
22:回動軸
23a:第1電磁コイル
23b:第2電磁コイル
24a:突出部
24b:突出部
24c:突出部
【出願人】 【識別番号】592217820
【氏名又は名称】エア・ウォーター・エモト株式会社
【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
【出願日】 平成18年8月9日(2006.8.9)
【代理人】 【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之


【公開番号】 特開2008−36579(P2008−36579A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−217070(P2006−217070)