トップ :: B 処理操作 運輸 :: B04 物理的または化学的工程を行なうための遠心装置または機械

【発明の名称】 遠心分離機用ロータ及び遠心分離機。
【発明者】 【氏名】清水 雄貴

【氏名】楠元 昭二

【氏名】根本 建一

【要約】 【課題】共鳴音を削減しつつバイオセーフティが図られた遠心分離機用ロータ及び遠心分離機の提供。

【解決手段】分離する試料が内蔵される試料容器15を保持する収容部12aが複数形成される環状部12を有しており、環状部12においては収容部12aの孔12bが円周方向に整列配置されて開口する端面部12Aが設けられており、端面部12A上において隣り合う孔12bの間には、凸部14が配置された遠心分離機用ロータ10および遠心分離機用ロータ10が設けられた遠心分離機1を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離する試料が内蔵される試料容器を保持する収容部が複数形成される環状部を有し、該環状部において該収容部の孔が円周方向に整列配置されて開口する端面部が設けられた遠心分離機用ロータであって、
該端面部上において隣り合う該孔の間には、凸部または凹部が配置されていることを特徴とする遠心分離機用ロータ。
【請求項2】
該凹部は、隣り合う該孔を連通する溝部から構成されることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機用ロータ。
【請求項3】
分離する試料が内蔵される試料容器を保持する収容部が複数形成される環状部を有し、該環状部において該収容部の孔が円周方向に整列配置されて開口する端面部が設けられた遠心分離機用ロータであって、
該環状部は円錐状に構成されると共に該環状部を側壁とするくぼみ部が形成され、該くぼみ部の内周面に開口して該くぼみ部と該収容部内部とを連通する貫通孔が形成されていることを特徴とする遠心分離機用ロータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の円遠心分離起用ロータを備えたことを特徴とする遠心分離機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は遠心分離機及び遠心分離機に用いられる遠心分離機用ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機は分離する試料をチューブやボトル等の容器を介してロータに挿入し、ロータを高速に回転させることで試料の分離、精製を行う。ロータは、回転速度が用途によって異なり、チューブ孔が固定式のアングルロータや、チューブを装填したバケットがロータの回転により垂直状態から水平状態に揺動するスイングロータなどがある。
【0003】
少量の試料を素早く分離する高速微量遠心機においては、主にアングルロータが用いられることが多い。特許文献1に示されるように、従来の遠心分離機用アングルロータは主に、アルミのブロックを切削加工するか、プラスチックの成型品であり、チューブを保持するための複数のチューブ孔が回転軸に対して一定の角度で配置されており、チューブ孔の開口端面は、すり鉢状な面が回転軸と同心に形成されている。
【0004】
これらのアングルロータには、風による回転損失を極力少なくするため、チューブをロータに挿入した時の凸凹が大気中に露出されないように、ロータカバーが設けられているものがある。また近年のロータの中には、ロータカバーを取付けた状態で使用しても、ロータカバーを取付けない状態で使用しても良い種類のものがある。このようなロータの場合、分離する試料を入れたチューブの数が多い場合、分離後のチューブと分離前のチューブを入れ替えるために、その度にロータカバーを着脱する必要があるため、実際のところ、作業者はロータカバーを取付けずに使用していることが多い。
【0005】
特許文献1に示されているようなアングルロータの場合、チューブの挿入されていないチューブ孔において、共鳴音、所謂笛吹音が発生する場合がある。これを回避するために特許文献2に示されるように、チューブ孔内の空間とロータの外部とを連通させる貫通穴を設ける方法が開示されている。
【特許文献1】特開平8−103689号公報
【特許文献2】特開平10−34019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、チューブ孔にロータ外部と連通する貫通孔を形成すると、ロータの風による損失が大きくなるおそれがあった。これによりロータ回転に係るエネルギーが増大することになる。また近年バイオセーフティの問題があるが、ロータにロータ外部と連通する貫通孔が形成されている場合、チューブが破損すると貫通孔より試料がロータ外部に排出されて飛散するおそれがあり、バイオセーフティに反する場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、共鳴音を削減しつつバイオセーフティが図られた遠心分離機用ロータ及び遠心分離機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、分離する試料が内蔵される試料容器を保持する収容部が複数形成される環状部を有し、該環状部において該収容部の孔が円周方向に整列配置されて開口する端面部が設けられた遠心分離機用ロータであって、該端面部上において隣り合う該孔の間には、凸部または凹部が配置された遠心分離機用ロータを提供する。
【0009】
このような構成によると、端面部において空気との摩擦を増加させることができる。よってロータを回転させた際に、端面部において発生する相対的な空気の流れの流速を低下させることが可能になる。この流速を低下させることにより、共鳴音の発生を抑制している。またロータにおいて、収容部と外周部分とを連通する孔が形成されない。よって遠心分離中に収容部から試料が外部に漏れることが防がれる。
【0010】
上記構成の遠心分離機用ロータにおいて、該凹部は、隣り合う該孔を連通する溝部から構成されることが好ましい。
【0011】
このような構成によると、共鳴音の発生に係る収容部の深さを小さくすることができる。この深さを小さくすることにより、共鳴に係る周波数を高くし、共鳴音の発生を抑制することができる。
【0012】
また上記課題を解決するために、分離する試料が内蔵される試料容器を保持する収容部が複数形成される環状部を有し、該環状部において該収容部の孔が円周方向に整列配置されて開口する端面部が設けられた遠心分離機用ロータであって、該環状部は円錐状に構成されると共に該環状部を側壁とするくぼみ部が形成され、該くぼみ部の内周面に開口して該くぼみ部と該収容部内部とを連通する貫通孔が形成された遠心分離機用ロータを提供する。
【0013】
このような構成においても、共鳴音の発生に係る収容部の深さを小さくすることができる。この深さを小さくすることにより、共鳴に係る周波数を高くし、共鳴音の発生を抑制することができる。またロータにおいて、収容部と外周部分とを連通する孔が形成されない。よって遠心分離中に収容部から試料が外部に漏れることが防がれる。
【0014】
また上記課題を解決するために、上記構成の遠心分離起用ロータを備えた遠心分離機を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の遠心分離機用ロータ及び遠心分離機によれば、共鳴音の発生を抑制し、かつバイオセーフティを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第一の実施の形態に係る遠心分離機及び遠心分離機用ロータについて図1乃至図4に基づき説明する。図1に示される遠心分離機1は、ハウジング2と、モータ3と回転室枠4と、蓋5と、ロータ10とから主に構成されている。
【0017】
ハウジング2は遠心分離機1の外殻となり、内部にモータ3、回転室枠4、ロータ10、及びその他図示せぬ制御機器等を内蔵している。またハウジング2の上部には、後述の回転室4aの開口となる開口部2aが形成されている。
【0018】
モータ3は出力軸である回転軸部3Bを有し、ダンパ3A、3Aを介してハウジング2内に、回転軸部3Bが上方を向くように設けられている。モータ3はロータ10を最大15000rpm程度で回転させることができる。
【0019】
回転室枠4はモータ3の上部であって開口部2aの下方に設けられ、内部に回転室4aが画成されている。また回転室枠4を貫通して回転軸部3Bの端部が回転室4a内に突出している。蓋5は、ハウジング2の上部に配置されており、回転室4aの開口部2aを開閉可能に設けられている。
【0020】
ロータ10は、主に軸部11と、環状部12と、軸部11と環状部12とを繋ぐくぼみ部13とから構成されており、回転室4a内に配置されて、軸部11で回転軸部3Bに同軸回転可能に固定されている。環状部12は、裁頭円錐状に構成されており、円錐の頂点側から麓へ向かう方向に配置された収容部12aが円周方向に整列して形成されている。収容部12a内には、遠心分離する試料が内蔵される試料容器15が挿入可能になっている。
【0021】
環状部12には、収容部12aの開口部分である孔12bが開孔する端面部12Aが設けられている。端面部12Aは、円錐の頂点側から麓へ向かう方向と交差し、ロータ10の回転方向に一連となるように構成されている。端面部12Aにおいて隣り合う孔12bの間には、端面部12Aから突出する凸部14がそれぞれ設けられている。凸部14は、回転方向と略直交する方向を長手方向として配置されている。
【0022】
上記構成の遠心分離機1において、複数の収容部12aの全てに試料容器15を挿入していない状態でロータ10を回転させた場合について説明する。ロータ10を回転させることにより、端面部12A上においては、相対的に風の流れが発生する。この場合に図3に示されるように、孔12b近傍部分において、周期的な渦が発生する。この周期的な渦が放出される渦放出周波数:fcは以下の以下の式で与えられる。
fc=(n−0.25)/(M+1.75)×U/LD・・・式1
M:マッハ数 U:代表流速 LD:開口部長さ n:モード(1、2、3、・・・)
開口部長さは定数であり、代表流速はロータ10の回転速度に応じて増減し、マッハ数は代表流速に依存するが0以上で精々2程度の数であるため、図4に示されるように渦放出周波数は、ロータ10の回転速度に比例する右上がりのグラフになる。
【0023】
また孔12bが開口している収容部12aは、閉管であるため共鳴し、その共鳴周波数:fは以下の式で与えられる。
f=(2n−1)/4×c/L・・・式2
C:音速 L:管の長さ n:モード(1、2、3、・・・)
音速及び管の長さは定数であるため、図4に示されるように共鳴周波数は一定の値を採る。
【0024】
ロータ10の回転数を上げることにより孔12b周辺で相対的に発生する風の流速が高まって渦放出周波数が高くなり、共鳴周波数と等しくなった状態で共鳴し、所謂笛吹音が発生する。しかし、凸部14が孔12b周辺に設けられていることにより、端面部12Aと空気との間の摩擦が大きくなる。よって端面部12A周辺の空気が過度に引っ張られるため、孔12b周辺において相対的に発生する風の流速が低下する。凸部14が設けられた状態においてはロータ10の回転速度が同じであっても、凸部14が設けられていない状態に比べて渦放出周波数が小さくなり、モータ3を最大限(15000rpm)回転させたとしても渦放出周波数が共鳴周波数に達することが無く、笛吹音を抑制することができる。
【0025】
また第一の実施の形態においては、収容部12aに直接孔等を形成することなく笛吹音を低減している。よって収容部12a内において試料容器15が破損した場合であっても、試料が収容部12aから排出されることはない。
【0026】
次に本発明の第二の実施の形態に係る遠心分離機及び遠心分離機用ロータについて図5乃至図7に基づき説明する。第二の実施の形態に係る遠心分離機は、図5に示されるロータ20の構成以外が第一の実施の形態にかかる遠心分離機1と同じであるため、説明を省略する。
【0027】
ロータ20は、主に軸部21と、環状部22と、軸部21と環状部22とを繋ぐくぼみ部23とから構成されており、回転室4a内に配置されて、軸部21で回転軸部3B(図1)に同軸回転可能に固定されている。環状部22は、裁頭円錐状に構成されており、円錐の頂点側から麓へ向かう方向に配置された収容部22aが円周方向に整列して形成されている。収容部22a内には、遠心分離する試料が内蔵される試料容器15(図2)が挿入可能になっている。
【0028】
環状部22には、収容部22aの開口部分である孔22bが開孔する端面部22Aが設けられている。端面部22Aは、円錐の頂点側から麓へ向かう方向と交差し、ロータ20の回転方向に一連となるように構成されている。端面部22Aにおいて隣り合う孔22bの間には、一の孔22bと他の孔22bとを繋ぐ溝部24が形成されている。
【0029】
溝部24が設けられることにより、図6に示されるように、共鳴周波数に係る管の長さ:LがL’と短くなる。よって式2より、収容部22aにかかる共鳴周波数は、図7に示されるように、溝部24が設けられていない場合に比べて高くなる。故にモータ3を最大限(15000rpm)回転させたとしても渦放出周波数が共鳴周波数に達することが無く、笛吹音を抑制することができる。
【0030】
第二の実施の形態の変形例として、図8に示されるように、くぼみ部33の内周面に開口して、くぼみ部33と収容部32a内部とを連通する貫通孔32cが形成されているロータ30を用いてもよい。このような構成においても、図9に示されるように、共鳴周波数に係る管の長さ:LがL’’と短くなる。よって第二の実施の形態と同様に、当該変形例に係るロータ30において渦放出周波数が共鳴周波数に達することが無く、笛吹音を低減することができる。
【0031】
また第二の実施の形態及びその変形例においては、収容部に溝若しくは穿孔がそれぞれ形成されている。しかし環状部の外周部分には穿孔等が形成されていないため、遠心分離中に試料容器15が破損した場合であってもロータ外に試料が排出されることはない。
【0032】
本発明による遠心分離機及び遠心分離機用ロータは上述の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば第一の実施の形態において凸部を設けることにより、端面部と空気との摩擦を大きくして相対的な速度を低下させていたが、凹部を設けることにより、端面部と空気との摩擦を大きくしてもよい。この凹部は第二の実施の形態に示される溝部24のように形成されてもよいし、単に隣り合う一の収容部と他の収容部との間に形成され端面部に開口する穿孔であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る遠心分離機の断面図。
【図2】本発明の第一の実施の形態に係る遠心分離機用ロータの断面図。
【図3】本発明の第一の実施の形態に係る遠心分離機用ロータの収容部において渦流と管長と野関係を示す模式図。
【図4】本発明の第一の実施の形態に係る遠心分離機用ロータの渦放出周波数と共鳴周波数との関係を示すグラフ。
【図5】本発明の第二の実施の形態に係る遠心分離機用ロータの斜視図。
【図6】本発明の第二の実施の形態に係る遠心分離機用ロータの部分断面図。
【図7】本発明の第二の実施の形態に係る遠心分離機用ロータの渦放出周波数と共鳴周波数との関係を示すグラフ。
【図8】本発明の第二の実施の形態の変形例に係る遠心分離機用ロータの斜視断面図。
【図9】本発明の第二の実施の形態の変形例係る遠心分離機用ロータの部分断面図。
【符号の説明】
【0034】
1・・遠心分離機 2・・ハウジング 2a・・開口部 3・・モータ 3A・・ダンパ
3B・・回転軸部 4・・回転室枠 4a・・回転室 5・・蓋 10・・ロータ
11・・軸部 12・・環状部 12A・・端面部 12a・・収容部 12b・・孔
13・・くぼみ部 14・・凸部 15・・試料容器 20・・ロータ 21・・軸部
22・・環状部 22A・・端面部 22a・・収容部 22b・・孔
23・・くぼみ部 24・・溝部 30・・ロータ 32a・・収容部
32c・・貫通孔 33・・くぼみ部。
【出願人】 【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
【出願日】 平成19年3月20日(2007.3.20)
【代理人】 【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩

【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸

【識別番号】100099829
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 朗子


【公開番号】 特開2008−229500(P2008−229500A)
【公開日】 平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願番号】 特願2007−72972(P2007−72972)