トップ :: B 処理操作 運輸 :: B04 物理的または化学的工程を行なうための遠心装置または機械

【発明の名称】 遠心分離機
【発明者】 【氏名】根本 建一

【要約】 【課題】回転中のロータに十分な結合力を確保しつつ、ロータの駆動軸に対する着脱が容易である遠心分離機を提供すること。

【解決手段】試料を収容保持するロータ50と、該ロータ50を回転駆動する駆動装置とを備え、前記ロータ50には前記駆動装置と嵌合する嵌合穴50eを形成し、その嵌合穴50eの底にウェイト(空転防止用突起部材)3を収納し、前記駆動装置の駆動軸35にも同様の空転防止用突起部材を設けて成る遠心分離機において、前記駆動軸35の外周部に弾性シール部材7を設け、該駆動軸35に嵌合する前記ロータ50の嵌合穴50eの上部に外部と連通する複数の穴8を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容保持するロータと、該ロータを回転駆動する駆動装置とを備え、前記ロータには前記駆動装置と嵌合する嵌合穴を形成し、その嵌合穴の底に空転防止用突起部材を収納し、前記駆動装置の駆動軸にも同様の空転防止用突起部材を設けて成る遠心分離機において、
前記駆動軸の外周部に弾性シール部材を設け、該駆動軸に嵌合する前記ロータの嵌合穴の上部に外部と連通する穴を設けたことを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記穴を複数設けたことを特徴とする請求項1記載の遠心分離機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを交換して回転させる遠心分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物試料等を分離するための遠心分離機においては、試料保持容器であるロータを交換して使用するため、ロータの着脱作業は頻繁に行われることが多い。このため、ロータと駆動装置との結合は簡便なほど使用者の使い勝手が良いことになる。この簡便性を実現するにはネジによる締結手段等ではなく、容易に着脱が可能な着脱手段とする必要がある。
【0003】
図7及び図8に着脱を容易にするための代表的な機構を示す。
【0004】
図7は従来の遠心分離機の破断正面図、図8は図7のB部拡大詳細図であり、従来はロータ50の結合穴51の奥に複数のピン53を配置し、結合される駆動軸35の上面側にも同様に複数のピン1を配置し、駆動軸35からの回転力をロータ50に伝達する構造を採っている。
【0005】
通常、回転速度が20,000rpm程度までの遠心分離機においては、大気中で運転されるため、ロータ50を装着するロータ室33には空気が存在する。このため、ロータ50が高速回転することでロータ室33内の空気が攪拌され、ロータ室33内には圧力分布が生じる。ロータ50の断面形状により圧力分布は様々であるが、ロータ50の上部と下部の圧力差が大きい場合、軸方向に移動する力が発生する。上部の圧力P1が下部の圧力P2よりも低い場合、浮力となってロータ50の結合力が低下する。
【0006】
又、ロータ50の結合穴51と駆動軸35との間には僅かな隙間を設けており、隙間があることで着脱が可能となっている。しかし、隙間を大きく取り過ぎるとロータ50の結合が悪くなり、回転中に自励振動を発生させる要因となってしまう。
【0007】
このため、駆動軸35の側面には僅かに移動可能に取り付けしたウェイト3を設けている。このウェイト3は、駆動軸35が回転することで発生する遠心加重によってロータ50の結合穴51の内部に設けた環状溝に押し付けられる。環状溝の軸方向両端にはテーパ部が設けてあり、ウェイト3をテーパ部で保持することで回転中にロータ50が軸方向に移動することを抑止する力を発生する。この軸方向移動抑止力によって浮力によるロータ50の移動防止と自励振動の発生を防止している。
【特許文献1】特開2000−107643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の構成において、頻繁にロータ50を着脱すると該ロータ50の結合穴51の内部に設けた環状溝に磨耗が発生することがある。環状溝に磨耗が発生した状態でロータ50に駆動力を伝達した場合、ウェイト3で発生する遠心加重による軸方向抑止力だけでは抑止効果が不足して自励振動が発生してしまう場合があった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、回転中のロータに十分な結合力を確保しつつ、ロータの駆動軸に対する着脱が容易である遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、試料を収容保持するロータと、該ロータを回転駆動する駆動装置とを備え、前記ロータには前記駆動装置と嵌合する嵌合穴を形成し、その嵌合穴の底に空転防止用突起部材を収納し、前記駆動装置の駆動軸にも同様の空転防止用突起部材を設けて成る遠心分離機において、前記駆動軸の外周部に弾性シール部材を設け、該駆動軸に嵌合する前記ロータの嵌合穴の上部に外部と連通する穴を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記穴を複数設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動軸の外周部に弾性シール部材を設け、該駆動軸に嵌合するロータの嵌合穴の上部に外部と連通する複数の穴を設けたため、モータに回転トルクが発生すると弾性シール部材に遠心力が発生し、該シール部材がロータの嵌合穴に密着する。このとき、弾性シール部材より上部に形成される空間Vは、弾性シール部材以下の空間とは隔離される。回転中は空間Vの内部の空気がロータの嵌合穴に形成された穴より排出されるため、弾性シール部材によって隔離された上部の空間Vの圧力は低下する。外部との圧力差により、ロータには回転軸方向に結合力が発生する。この結合力は回転することで発生するが、ロータが一定の回転速度で回転している場合、ロータ室の内部に大きな圧力変動は発生しないため、一定の結合力を安定して発生させることができる。
【0013】
回転停止後のロータの着脱時には、回転停止と同時に空間V内に穴を通って外部の空気が流入するために圧力差が解消されて結合力は発生しない。又、遠心力が無くなることで弾性シール部材が元の形状に復元するため、ロータの着脱に支障を来すことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係る遠心分離機30の破断正面図であり、図示の遠心分離機30は、モータ34、ロータ室33を備え、モータ34は、振動を吸収する防振ゴム等から成るモータ支持部37によって支持されている。モータ34の駆動軸35はロータ室33に突出しており、その上端には締結部36を介してロータ50が固定されている。ロータ室33の上部にはドア32が設置されており、ロータ50はドア32を開けて上方から着脱される。
【0016】
次に、締結部36を図2及び図3に基づいて説明する。
【0017】
図2は締結部の正面断面図、図3は図2の弾性シール部材取付部の部分拡大断面図である。
【0018】
締結部36は、大きく円筒部2とテーパ部4とで構成され、円筒部2の上端面には円周状の溝5が形成されている。この溝5には円筒状のピン1が溝5と同心となるように円状に等間隔で複数配置されている。又、円筒部2の側面にはウェイト溝2aが形成されており、このウェイト溝2aにはウェイト3が収納されている。ウェイト3は、ウェイトピン3aを介して半径方向に僅かに移動可能な状態で円筒部2に固定されている。
【0019】
円筒部2とウェイト溝2aとの中間にはシール溝6が形成されており、このシール溝6内には弾性シール部材7が実装されている。
【0020】
シール溝6内に実装されている弾性シール部材7の外径d2は、図3に示すように、円筒部2の外径d1よりも僅かに大きく設定されている。
【0021】
弾性シール部材7は、例えばゴム等の弾性体で構成され、その断面積はシール溝6の断面積に対して80%前後となるように設定されている。この弾性シール部材7は、その断面形状が円形でも矩形でも同様の効果を発揮するが、ロータ50の着脱を容易に行うためには摺動抵抗を減らす必要があるために円形が最も適している。通常、断面形状が円形の場合、弾性シール部材7として工業用Oリングを用いるのが最も簡便な手段である。
【0022】
次に、ロータ50の構造を図4及び図5に基づいて説明する。尚、図4はロータの正面断面図、図5は図4のA−A線断面図である。
【0023】
ロータ50は、略円錐台状に成形され、遠心分離すべき試料を保持するための複数のチューブ穴50cが回転軸60に対して所定角度をもって放射状に形成されている。ロータ50の下面側には、当該ロータ50を駆動軸35に装着するための装着穴50eが形成されており、この装着穴50eは、円筒穴部51と該円筒穴部51から下面にかけて裾野が広がるように形成されたテーパ面52から構成されている。円筒穴部51の奥側最終端面には、ロータピン53が円筒穴部51と同心となるように円状に等間隔で複数配置されている。
【0024】
又、円筒穴部51は、図5に示すように、最終端部に円筒穴部51から径方向外側に向かって連通穴8が放射状に複数形成されている。ここで、円筒穴部51の内径Dは、前記弾性シール部材7の外径d2よりも僅かに大きく設定されている。尚、ロータ50の形状は本実施の形態のものに限定されるものではない。
【0025】
次に、本発明の効果を図6に基づいて説明する。
【0026】
図6は遠心分離機30にロータ50を組み合わせてモータ34が回転トルクを発生した場合の遠心力及び空気の流れを示す模式図である。
【0027】
モータ34に回転トルクが発生すると、締結部36に設けられた弾性シール部材7に遠心力が発生し、該弾性シール部材7がロータ50の装着穴50eの円筒穴51とシール溝6に張り付いて密閉される。このとき、弾性シール部材7より上部に形成される空間Vは、弾性シール部材7以下の空間とは隔離される。回転中は空間Vの内部の空気がロータ50の装着穴50eの円筒穴部51に形成された連通穴8より排出されるため、弾性シール部材7によって隔離された上部の空間Vの圧力は低下する。外部との圧力差により、ロータ50と締結部36は回転軸方向に結合力が発生する。この結合力は回転することで発生するが、ロータ50が一定の回転速度で回転している場合、ロータ室33の内部に大きな圧力変動は発生しないため、一定の結合力を安定して発生させることができる。
【0028】
回転停止後のロータ50の着脱時には、回転停止と同時に空間V内に連通穴8を通って外部の空気が流入するために圧力差が解消されて結合力は発生しない。又、遠心力が無くなることで弾性シール部材7が元の形状に復元し、装着穴50eの円筒穴部51の内径Dよりも小さくなるためにロータ50の着脱に支障を来すことはない。
【0029】
従来の構造では、弾性シール部材7を設けていないため、隔離される空間Vは形成されず、空間Vから半径方向外側に連通する連通穴8が存在しないため、空間Vの内部の圧力は低下せず、回転軸方向の締結力は発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る遠心分離機の破断正面図である。
【図2】本発明に係る遠心分離機の締結部の正面断面図である。
【図3】図2の弾性シール部材取付部の部分拡大断面図である。
【図4】本発明に係る遠心分離機のロータの正面断面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】本発明に係る遠心分離機においてモータが回転トルクを発生した場合の遠心力及び空気の流れを示す模式図である。
【図7】従来の遠心分離機の破断正面図である。
【図8】図7のB部拡大詳細図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ピン
2 円筒部
2a ウェイト溝
3 ウェイト
3a ウェイトピン
4 テーパ部
5 溝
6 シール溝
7 弾性シール部材
8 連通穴
30 遠心分離機
32 ドア
33 ロータ室
34 モータ
35 駆動軸
36 締結部
37 モータ支持部
50 ロータ
50c チューブ穴
50e 装着穴
51 円筒穴部
52 テーパ面
53 ロータピン
60 回転軸
【出願人】 【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
【出願日】 平成19年3月13日(2007.3.13)
【代理人】 【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一


【公開番号】 特開2008−221129(P2008−221129A)
【公開日】 平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願番号】 特願2007−62889(P2007−62889)