トップ :: B 処理操作 運輸 :: B04 物理的または化学的工程を行なうための遠心装置または機械

【発明の名称】 遠心分離容器及び遠心分離方法
【発明者】 【氏名】森元 慎二

【氏名】笹山 典久

【要約】 【課題】少数の器具で簡易に実施できる遠心分離容器及び遠心分離方法を提供する。

【解決手段】遠心分離容器10は、ポート11を有するシリンジ筒12と、ポート11に接続可能であって目的とする遠心分離画分を保持可能な容器13と、シリンジ筒12を液密に封止してシリンジ筒12内を往復動されるガスケット14と、ガスケット14に設けられたプランジャ15とを具備する。この遠心分離容器10によれば、採血や被遠心分離液の吸引に使用されるシリンジを用いて遠心分離を行い、小数の器具で容易に目的とする遠心分離画分を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートを有するシリンジ筒と、
上記ポートに接続可能であって目的とする遠心分離画分を保持可能な容器と、
上記シリンジ筒を液密に封止してシリンジ筒内を往復動されるガスケットと、
上記ガスケットに設けられたプランジャと、を具備する遠心分離容器。
【請求項2】
上記容器は、ねじ込み式により上記ポートに対して着脱可能である請求項1に記載の遠心分離容器。
【請求項3】
上記プランジャは、上記ガスケットに対して着脱可能である請求項1又は2に記載の遠心分離容器。
【請求項4】
上記プランジャは、ねじ込み式により上記ガスケットに対して着脱可能である請求項3に記載の遠心分離容器。
【請求項5】
少なくとも上記シリンジ筒、上記容器及び上記ガスケットはγ線滅菌されたものである請求項1から4のいずれかに記載の遠心分離容器。
【請求項6】
上記シリンジ筒、上記容器、上記ガスケット及び上記プランジャが滅菌袋に密封されたものである請求項1から5のいずれかに記載の遠心分離容器。
【請求項7】
ポートを有するシリンジ筒と、該ポートに接続可能であって目的とする遠心分離画分を保持可能な容器と、上記シリンジ筒を液密に封止してシリンジ筒内を往復動されるガスケットと、該ガスケットに設けられたプランジャと、を具備する遠心分離容器を用いた遠心分離方法であって、
被遠心分離液が満たされた上記シリンジ筒のポートに上記容器を取り付ける第1ステップと、
上記容器が接続された上記シリンジ筒のポート側を遠心移動方向として、上記シリンジ筒内の被遠心分離液を遠心分離する第2ステップと、
上記シリンジ筒から上記容器を取り外して、該容器内の遠心分離画分を得る第3ステップと、を含む遠心分離方法。
【請求項8】
上記プランジャは、上記ガスケットに着脱可能に設けられたものであり、
上記第2ステップにおいて、上記プランジャを上記ガスケットから取り外して遠心分離を行う請求項7に記載の遠心分離方法。
【請求項9】
上記被遠心分離液は血小板を含む血漿であり、上記遠心分離画分は多血小板血漿である請求項7又は8に記載の遠心分離方法。
【請求項10】
請求項9に記載の遠心分離方法により得られた多血小板血漿。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離容器及び遠心分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離は、比重の異なる物質を分離するために用いられる手法であり、血液から血漿を得る場合などに用いられている。遠心分離では、遠心分離装置が用いられる。遠心分離装置のロータに、被遠心分離液が収容された試験管などの容器が装填され、被遠心分離液に所定のGが生じるようにロータが回転される。遠心分離により、被遠心分離液中の成分が、比重の重さに応じて遠心力が働く方向へ分離されるので、分離された被遠心分離液から目的とする遠心分離画分を取り出す。このような遠心分離を利用して、血液から多血小板血漿(以下、「PRP」と称されることがある。)が得られる。
【0003】
多血小板血漿とは、血小板を多く含む血漿である。血球成分を含む全血においては、赤血球が約95%、白血球が3%、血小板が約1%の割合で含まれる。これに対し、多血小板血漿においては、血小板が高い割合で含まれる。PRPにおける血小板の割合は特に定義がない。一般に、全血における血漿の割合が約55%であることを考慮すると、血球成分が除去された血漿に含まれる血小板の割合は約2%程度と考えられる。この約2%程度より明らかに高い割合の血小板が、PRPに含まれる。
【0004】
PRPは、全血を遠心分離することにより得られる。詳細に説明すると、まず、全血を弱遠心して赤血球画分を分離して血漿を得る。この血漿には白血球及び血小板が含まれる。さらに、得られた血漿を強遠心する。これにより、血小板は遠心力が加わる方向(以下、本明細書において遠心分離方向とも称する。)に集中し、上清には血小板がほぼ含まれない。強遠心された血漿から上清を取り除き、或いは遠心分離方向(下側)の所定量のみを取り出して、PRPを得る(特許文献1参照)。
【0005】
血小板のα顆粒中には、PDGF、TGF−β、ILGFなどの成長因子が存在することが知られている。これら成長因子が創傷治癒や組織再生に効果的な役割を果たすことが着目されている。例えば、歯周組織再生法などの再生医療において、PRPの利用が期待されている(特許文献2、特許文献3及び非特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2006−78428号公報
【特許文献2】特開2006−232834号公報
【特許文献3】特開2005−278910号公報
【非特許文献1】多血小板血漿の口腔への応用、ロバート・E・マルクス著、クィーン・テッセンス出版社出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述されたように、全血からPRPを得る方法として遠心分離が知られている。全血を遠心分離すると、遠心分離方向から赤血球画分、バフィーコート及び血小板を含む血漿画分に分離される。血小板を含む血漿画分が上清及びPRPに分離されるには、一般的に強遠心が行われる。したがって、1回目の遠心分離で血小板を含む血漿画分を得て、その血漿画分に対して強遠心、つまり2回目の遠心分離を行う手法が採用される。1回目の遠心分離を強遠心として、1回の遠心分離によりPRPを得ることは可能である。しかし、遠心分離後に、PRPと赤血球画分とが隣接した状態となるため、PRPのみを取り出し難くい。
【0008】
採血された全血から2回の遠心分離によりPRPを得るには、多数の器具が必要とされる。多数の器具とは、採血において使用される採血器具や、1回目の遠心分離において使用される容器、2回目の遠心分離において使用される容器、遠心分離後に所望の血漿やPRPを採取するために使用される注射器などである。また、PRPが再生医療に用いられる場合には、これら多数の器具はγ線滅菌されることが望ましい。
【0009】
本発明は、これらの事情に問題に鑑みてなされたものであり、少数の器具で簡易に実施できる遠心分離容器及び遠心分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明に係る遠心分容器は、ポートを有するシリンジ筒と、上記ポートに接続可能であって目的とする遠心分離画分を保持可能な容器と、上記シリンジ筒を液密に封止してシリンジ筒内を往復動されるガスケットと、上記ガスケットに設けられたプランジャと、を具備する。
【0011】
本発明に係る遠心分離容器が、例えば、血液から多血小板血漿を分離するために用いられる場合には、シリンジ筒は、採血針が取り付けられて採血に使用されてもよい。シリンジ筒が採血に使用された場合には、一度遠心分離を行って赤血球画分と白血球及び血小板を含む血漿画分とを分離して、赤血球画分をシリンジ筒から排出する。また、シリンジ筒は、採血された血液を遠心分離して得られた血小板を含む血漿を吸引するために使用されてもよい。採血や血漿の吸引においては、プランジャが操作されてシリンジ筒内のガスケットが往復動される。このような方法を任意に採択して、シリンジ筒に被遠心分離液が満たされる。
【0012】
被遠心分離液が満たされたシリンジ筒のポートに容器が接続される。シリンジ筒の内部空間と容器の内部空間とは、ポートを通じて液体や気体が流通可能である。容器が接続されたシリンジ筒は、ポート側(容器側)を遠心移動方向として遠心分離が行われる。遠心分離により、容器内の空気は、ポートを通じてシリンジ筒のガスケット側へ移動する。被遠心分離液において比重の重い遠心分離画分は、ポートを通じてシリンジ筒から容器へ移動する。これにより、容器内に目的とする遠心分離画分が保持される。遠心分離を終えた後、シリンジ筒から容器を取り外して目的とする遠心分離画分を得る。
【0013】
(2) 上記容器は、ねじ込み式により上記ポートに対して着脱可能なものが好ましい。これにより、遠心分離中にポートから容器が脱落することが防止される。
【0014】
(3) 上記プランジャは、上記ガスケットに対して着脱可能なものが好ましい。
【0015】
遠心分離において、ガスケットからプランジャが取り外されることにより、シリンジ筒からプランジャが突出しないので、シリンジ筒の取り扱いが容易である。また、プランジャが不用意に操作されることがない。また、遠心分離においてプランジャの重量がガスケットに作用しないので、シリンジ筒から容器が外れるおそれを軽減できる。一方、シリンジ筒内への被遠心分離液の吸引などにおいて、ガスケットにプランジャが取り付けられることにより、ガスケットが容易に移動できる。
【0016】
(4) 上記プランジャは、ねじ込み式により上記ガスケットに対して着脱可能なものが好ましい。これにより、ガスケットに着脱可能なプランジャが簡易に実現される。また、プランジャをガスケットへ着脱することを繰り返すことができる。
【0017】
(5) 少なくとも上記シリンジ筒、上記容器及び上記ガスケットはγ線滅菌されたものが好ましい。これにより、目的とする遠心分離画分を医療行為に用いることができる。
【0018】
(6) 上記シリンジ筒、上記容器、上記ガスケット及び上記プランジャが滅菌袋に密封されることが好ましい。これらがキットとして1つの滅菌袋に密封されることにより、使い勝手が向上する。
【0019】
(7) 本発明に係る遠心分離方法は、ポートを有するシリンジ筒と、該ポートに接続可能であって目的とする遠心分離画分を保持可能な容器と、上記シリンジ筒を液密に封止してシリンジ筒内を往復動されるガスケットと、該ガスケットに設けられたプランジャと、を具備する遠心分離容器を用いる。この遠心分離方法は、被遠心分離液が満たされた上記シリンジ筒のポートに上記容器を取り付ける第1ステップと、上記容器が接続された上記シリンジ筒のポート側を遠心移動方向として、上記シリンジ筒内の被遠心分離液を遠心分離する第2ステップと、上記シリンジ筒から上記容器を取り外して、該容器内の遠心分離画分を得る第3ステップと、を含む。
【0020】
本発明に係る遠心分離方法が、例えば、血液から多血小板血漿を分離するために用いられる場合には、シリンジ筒は、採血針が取り付けられて採血に使用されてもよい。シリンジ筒が採血に使用された場合には、一度遠心分離を行って赤血球画分と白血球及び血小板を含む血漿画分とを分離して、赤血球画分をシリンジ筒から排出する。また、シリンジ筒は、採血された血液を遠心分離して得られた血小板を含む血漿を吸引するために使用されてもよい。採血や血漿の吸引においては、プランジャが操作されてシリンジ筒内のガスケットが往復動される。このような方法を任意に採択して、シリンジ筒に被遠心分離液が満たされる。
【0021】
第1ステップでは、シリンジのポートに容器を取り付ける。これにより、シリンジ筒の内部空間と容器の内部空間とが、ポートを通じて液体や気体が流通可能となる。第2ステップでは、容器が接続されたシリンジ筒が、ポート側(容器側)を遠心移動方向として遠心分離を行う。遠心分離により、容器内の空気は、ポートを通じてシリンジ筒のガスケット側へ移動する。被遠心分離液において比重の重い遠心分離画分は、ポートを通じてシリンジ筒から容器へ移動する。これにより、容器内に目的とする遠心分離画分が保持される。第3ステップでは、遠心分離を終えた後のシリンジ筒から容器を取り外して目的とする遠心分離画分を得る。
【0022】
(8) 上記プランジャは、上記ガスケットに着脱可能に設けられたものであり、上記第2ステップにおいて、上記プランジャを上記ガスケットから取り外して遠心分離を行うことが好ましい。
【0023】
第2ステップにおいて、ガスケットからプランジャが取り外されることにより、シリンジ筒からプランジャが突出しないので、遠心分離においてシリンジ筒の取り扱いが容易である。また、プランジャが不用意に操作されることがない。また、遠心分離においてプランジャの重量がガスケットに作用しないので、シリンジ筒から容器が外れるおそれを軽減できる。一方、シリンジ筒に被遠心分離液を満たす場合などにおいて、ガスケットにプランジャが取り付けられることにより、ガスケットが容易に移動できる。
【0024】
(9) 上記被遠心分離液として、血小板を含む血漿が想定される。上記遠心分離画分として、多血小板血漿が想定される。
【0025】
(10) 本発明は、前述された遠心分離方法により得られた多血小板血漿として捉えうる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る遠心分離容器及び遠心分離方法によれば、採血や被遠心分離液の吸引に使用されるシリンジを用いて遠心分離を行い、小数の器具で容易に目的とする遠心分離画分を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る遠心分離容器10の外観構成を示す分解斜視図である。図2は、遠心分離容器10の内部構成を示す縦断面図である。
【0029】
図1及び図2に示されるように、遠心分離容器10は、ポート11を有するシリンジ筒12と、ポート11に着脱可能な容器13と、シリンジ筒12内を往復動されるガスケット14と、ガスケット14に着脱可能に設けられたプランジャ15とを具備する。
【0030】
シリンジ筒12は、ガスケット14及びプランジャ15とともにシリンジを構成する。シリンジ筒12は、ほぼ円筒形状であり、一方の端部が縮径されて針取付部20が形成されている。針取付部20の内部空間は、シリンジ筒12の内部空間と連続している。針取付部20により本発明に係るポート11が形成されている。針取付部20には、採血針が取り付け可能である。
【0031】
シリンジ筒12には、針取付部20の周囲に雌ネジ部21が形成されている。雌ネジ部21は円筒形状であり、一端側がシリンジ筒12に接続されており、他端側がポート11と同方向に開口している。雌ネジ部21の内面と針取付部20の外面との間に間隙が形成されている。この間隙は、容器13や採血針の取り付けのために設けられている。雌ネジ部21の軸方向の長さは、針取付部20の軸方向の長さより若干短く、針取付部20の先端は雌ネジ部21の先端から軸方向に突出している。
【0032】
シリンジ筒12の他方の端部は、縮径されることなく開口されている。この他方の端部からシリンジ筒12の内部空間へプランジャ15が進退される。シリンジ筒12の他方の端部には、シリンジ筒12の外周側へ突出する鍔22が形成されている。鍔22はハンドリングを向上させるためのものであり、シリンジ筒12及びプランジャ15の操作の際に鍔22に指が掛けられる。
【0033】
シリンジ筒12の素材は特に限定されず、ガラスや合成樹脂などが採用されうる。遠心分離容器10がディスポーザル品とされることや、γ線滅菌が施されることを考慮すると、シリンジ筒12をポリプロピレンの成形品とすることが一般的である。シリンジ筒12の内部空間に満たされた血液や血漿などを目視確認するために、シリンジ筒12は、透明ないし半透明であることが好ましい。シリンジ筒12の容量は特に限定されない。シリンジ筒12に容量を示す目盛りが付されていると、内部空間に満たされた液体の量などが容易に把握できるので好ましい。
【0034】
容器13は、目的とする遠心分離画分を保持可能である。容器13は、先端側が封止された円筒形状であり、その内部空間に所定容量の液体を保持する。容器13の基端側(ポート11と接続される側)は開口しており、この基端側がシリンジ筒12のポート11に接続可能である。容器13の外径はシリンジ筒12の雌ネジ部21の外径とほぼ同じである。容器13の基端側は縮径されて、接続部30が形成されている。接続部30は、雌ネジ部21に挿入可能な外径である。接続部30の外周面には雄ネジ31が形成されており、この雄ネジ31が雌ネジ部21と噛合する。これにより、容器13が、ねじ込み式によりポート11に対して着脱可能となる。
【0035】
図2に示されるように、容器13が雌ネジ部21に噛合された状態で、容器13の内部空間は、ポート11を通じてシリンジ筒12の内部空間と通じている。したがって、シリンジ筒12と容器13との間において、液体又は気体が流通可能である。また、容器13が雌ネジ部21に噛合されると、シリンジ筒12の内部空間は容器13により密封された状態となる。したがって、この状態で遠心分離が行われても、シリンジ筒12内の液体がポート11からシリンジ筒12又は容器13の外側へ漏出することがない。
【0036】
容器13の素材は特に限定されず、ガラスや合成樹脂などが採用されうる。遠心分離容器10がディスポーザル品とされることや、γ線滅菌が施されることを考慮すると、容器13としてポリプロピレンの成形品が採用されうる。
【0037】
ガスケット14は、シリンジ筒12の内部に挿入されてシリンジ筒12を液密に封止する。ガスケット14は、液密状態を維持したまま、シリンジ筒12内を往復動可能である。ガスケット14の往復動により、シリンジ筒12の内部に密封可能な液体の容量が変化する。図1に示されるように、ガスケット14は、シリンジ筒12の内径に対応した径の円柱形状である。図2に示されるように、ガスケット14の一方の端面は円錐形状に突出されている。この端面の形状は、シリンジ筒12の奥部の形状に対応している。プランジャ15と接続されるガスケット14の他方の端面には、取付孔40が形成されている。取付孔40はガスケット14の円形の端面の中心に形成されている。取付孔40は円孔であり、その内周面に雌ネジ41が形成されている。
【0038】
ガスケット14の素材は特に限定されず、ガラスや合成樹脂などが採用されうる。遠心分離容器10がディスポーザル品とされることや、γ線滅菌が施されることを考慮すると、ガスケット14としてエラストマーの成形品が採用されうる。
【0039】
プランジャ15は、ねじ込み式によりガスケット14に対して着脱可能なものである。プランジャ15の全体形状は、シリンジ筒12の内部空間に挿入可能な外形であって、シリンジ筒12の軸方向(図1の1点鎖線方向、図2における上下方向)の長さより十分に長い。したがって、ガスケット14をシリンジ筒12の奥部(ポート11側)に押し込んだ状態で、プランジャ15の一部がシリンジ筒12の反対側の端部から突出する。
【0040】
プランジャ15は、雄ネジ部50と軸部51と端板52とを有する。雄ネジ部50は、ガスケット14の取付孔40にねじ込まれる。取付孔40の雌ネジ41と雄ネジ部50とは噛合する。これにより、プランジャ15がガスケット14に対してねじ込み式により着脱される。この着脱は繰り返し行うことができる。
【0041】
軸部51は、横断面(軸方向と直交する方向)が十字形状である。軸部51の断面形状は成形加工の容易性や強度などを考慮して適宜選択されうる。軸部51の一方端に雄ネジ部50が配置され、他方端に端板52が配置されている。端板52は、円板形状の平板であり、軸部51の軸方向に垂直に接続されている。端板52はプランジャ15のハンドリングを向上させるためのものであり、プランジャ15がシリンジ筒12に対して押し込まれる際に指が押し当てられ、プランジャ15がシリンジ筒12から引き出される際に持ち手となる。
【0042】
プランジャ15の素材は特に限定されず、ガラスや合成樹脂などが採用されうる。遠心分離容器10がディスポーザル品とされることや、γ線滅菌が施されることを考慮すると、プランジャ15をポリプロピレンの成形品とすることが一般的である。
【0043】
目的とする遠心分離画分、例えば多血小板血漿を再生医療などの医療行為に適したものとして得るには、遠心分離容器10を構成する各部材のうち、採血された血液と接触する少なくともシリンジ筒12、容器13、及びガスケット14は、γ線滅菌されることが好適である。また、シリンジ筒12、容器13、ガスケット14及びプランジャ15を滅菌袋に密封してキットとすることにより、遠心分離容器10の使い勝手が向上する。キットの構成品は、少なくともシリンジ筒12、容器13、ガスケット14及びプランジャ15を各1個含んでいればよいが、例えば、後述される多血小板血漿分離方法の前処理としての遠心分離においてキャップ16を用いる場合には、キットにキャップ16が付属されていてもよい。また、本実施形態に係るシリンジ筒12、容器13、ガスケット14、及びプランジャ15の構成は一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲において、各部材の構成の一部を他の公知の部材の構成に変更しうる。
【0044】
以下に、本発明に係る遠心分離方法が説明される。本実施形態に係る遠心分離方法は、上記遠心分離容器10を用いて行われ、3つの主要なステップからなる。第1ステップでは、被遠心分離液が満たされたシリンジ筒12のポート11に対して容器13を取り付ける。第2ステップでは、容器13が接続されたシリンジ筒12のポート11側を遠心移動方向として、シリンジ筒12内の被遠心分離液を遠心分離する。第3ステップでは、シリンジ筒12から容器13を取り外して、容器13内の遠心分離画分を得る。これら各ステップが、図3から図5を用いて以下に詳細に説明される。図3から図5は、多血小板血漿分離方法の各ステップにおける遠心分離容器10の状態を示す断面図である。
【0045】
本実施形態では、本発明に係る遠心分離方法が、血液から多血小板血漿を分離するために用いられる場合について説明される。つまり、本発明に係る被遠心分離液が血小板を含む血漿62であり、目的とする遠心分離画分がPRP63である。この場合、シリンジ筒12は、採血針が取り付けられて採血に使用されうる。シリンジ筒12が採血に使用された場合には、一度遠心分離を行って赤血球画分と白血球及び血小板を含む血漿画分とを分離して、赤血球画分をシリンジ筒12から排出する。このような前処理が、本発明に係る遠心分離方法に先立って説明される。
【0046】
図3(a)に示されるように、シリンジ筒12のポート11に対してキャップ16を取り付けて、シリンジ筒12を密封状態にする。キャップ16はポート11を封止できるものであればよい。シリンジ筒12、ガスケット14、及びプランジャ15からなるシリンジは、採血に使用される。採血する際には、シリンジ筒12のポート11には採血針が取り付けられる。また、プランジャ15はガスケット14に取り付けられる。採血は通常の方法であり、詳細な説明は省略される。この採血により、シリンジ筒12は血液60で満たされる。血液60は全血であり、赤血球、白血球、血小板、血漿などを含む。採血後に、シリンジ筒12のポート11から採血針を取り外して、キャップ16を用いてポート11を封止する。これにより、図3(a)に示されるように、シリンジ筒12が密封状態となる。
【0047】
つづいて、密封したシリンジ筒12を用いて1回目の遠心分離を行う。この遠心分離に先だって、図3(b)に示されるように、プランジャ15をガスケット14から取り外す。これにより、シリンジ筒12からプランジャ15が突出しないので、遠心分離においてシリンジ筒12の取り扱いが容易である。また、遠心分離において、プランジャ15が不用意に操作されることがない。さらに、遠心分離においてプランジャ15の重量がガスケット14に作用しないので、シリンジ筒12から容器13が外れるおそれを軽減できる。
【0048】
この遠心分離において、シリンジ筒12のポート11側を遠心移動方向とする。ここで、「遠心移動方向」とは、遠心分離において遠心力が作用する方向であり、通常は下側である。また、1回目の遠心分離は、弱遠心である。弱遠心とは、血液の遠心分離において慣用されており、一般に、「全血を赤血球とその他(白血球、血小板、血漿)に分離する遠心分離」(非特許文献1参照)と定義される。具体的には、遠心分離条件が約500〜2500rpmの範囲における遠心分離が弱遠心とされる。遠心分離に用いられる遠心分離容器は一般的なものなので、詳細な説明は省略される。
【0049】
この遠心分離により、シリンジ筒12に密封された血液60は、赤血球画分61と白血球及び血小板を含む血漿62とに分離される。図3(c)に示されるように、赤血球画分61は、遠心分離により遠心移動方向、つまりシリンジ筒12の下側に分離される。
【0050】
つづいて、シリンジ筒12から赤血球画分61を排出する。遠心分離を終了した後、図4(a)に示されるように、プランジャ15をガスケット14に取り付ける。これにより、ガスケット14が容易に移動できる。また、図4(a)に示されるように、シリンジ筒12からキャップ16を外してポート11を開封する。その状態で、プランジャ15を操作してガスケット14をポート11側へ移動させる。これにより、シリンジ筒12のポート11から赤血球画分61が排出される。シリンジ筒12から赤血球画分61を完全に排出した後、ガスケット14の移動を中止する。これにより、シリンジ筒12には血小板を含む血漿62のみが残る。排出された赤血球画分61は廃棄するか、別目的に使用する。ここまでの作業が前処理である。
【0051】
1回目の遠心分離を弱遠心とすることにより、血液60を赤血球画分61と白血球及び血小板を含む血漿62とに分離するとともに、血漿62においては血小板をほぼ均等に分散させることができる。つまり、赤血球画分61との境界付近に血小板が集中することがなく、赤血球画分61の完全な排出のために、血漿62をも若干排出することに伴う血小板のロスを少なくすることができる。
【0052】
以下に本発明に係る遠心分離方法の各ステップが説明される。第1ステップでは、図4(b)に示されるように、シリンジ筒12のポート11に容器13を取り付ける。これにより、シリンジ筒12の内部空間と容器13の内部空間とが、ポート11を通じて液体や気体が流通可能となる。前述されたように、シリンジ筒12の内部空間は血漿62で満たされている。容器13の内部空間には液体は保持されていない。また、シリンジ筒12は、容器13が取り付けられることにより密封状態になる。容器13は、シリンジ筒12の雌ネジ部21にねじ込まれているので、この状態で遠心分離が行われても、容器13がシリンジ筒12から脱落することはない。
【0053】
第2ステップでは、容器13が接続されたシリンジ筒12を、ポート11側(容器13側)を遠心移動方向として遠心分離を行う。この遠心分離に先だって、図4(b)に示されるように、プランジャ15をガスケット14から取り外す。これにより、シリンジ筒12からプランジャ15が突出しないので、遠心分離においてシリンジ筒12の取り扱いが容易である。また、遠心分離において、プランジャ15が不用意に操作されることがない。さらに、遠心分離においてプランジャ15の重量がガスケット14に作用しないので、シリンジ筒12から容器13が外れるおそれを軽減できる。
【0054】
この遠心分離において、シリンジ筒12のポート11側を遠心移動方向とする。また、第2ステップにおける遠心分離は、強遠心である。強遠心とは、血液の遠心分離において慣用されており、一般に、「血小板、白血球と残留赤血球を血漿から分離する遠心分離」(非特許文献1参照)と定義される。本発明では、血漿62の下方に血小板を濃縮する遠心分離を強遠心という。具体的には、遠心分離条件が約3000〜4000rpmの範囲における遠心分離が強遠心とされる。
【0055】
容器13内の空気は、血漿62より比重が軽いので、この遠心分離によりポート11を通じてシリンジ筒12内のガスケット14側へ移動する。血漿62において比重の重い血小板は、ポート11を通じてシリンジ筒12から容器13内へ移動する。つまり、図5(a)に示されるように、血小板を含む血漿62が遠心分離され、血小板が遠心移動方向、つまり容器13内へ移動する。また、この遠心分離を強遠心とすることにより、血小板を含む血漿62から高濃度のPRP63を分離することができる。なお、図5(a)において、血小板を含む血漿62中に示された横線の密度が高いほど、血小板濃度が高いことが示されている。実際には、遠心分離された血小板を含む血漿62において、上側から下側へ向けて形成されるほぼ透明から濃い黄色へのグラデーションにより、血小板が下側に移動したことが目視により確認できる。これにより、容器13内に目的とするPRP63が保持される。
【0056】
第3ステップでは、図5(b)に示されるように、遠心分離を終えた後のシリンジ筒12から容器13を取り外して目的とするPRP63を得る。容器13を取り外しても、シリンジ筒12内のガスケット14は移動しないので、ポート11から血漿62が漏れ出すことがない。これにより、採血された血液60からPRP63が分離される。PRP63における血小板の濃度は必ずしも明確に定義されていないが、例えば、1mLにおける血小板数を血小板の濃度とした場合、採取された全血における血小板の濃度に対して3〜7倍に濃縮されたものがPRP63とされる。また、本発明に係る多血小板血漿分離方法においては、容器13に保持される所定量をPRP63とすることが考えられる。本実施形態に係る遠心分離方法によれば、例えば、約10mLの血液60から約1mLのPRP63を得ることができる。
【0057】
このように、本発明に係る遠心分離容器10及び遠心分離方法によれば、採血に使用されるシリンジ筒12を用いて遠心分離を行い、小数の器具で容易に目的とするPRP63を得ることができる。
【0058】
なお、上記実施形態では、シリンジ筒12を採血及び1回目の遠心分離(前処理)に使用することとしたが、前処理においてシリンジ筒12を使用するか否かは任意である。したがって、別のシリンジなどを用いて血液60を赤血球画分61と、白血球及び血小板を含む血漿62に遠心分離して、その血漿62をシリンジ筒12へ吸引することとしてもよい。
【0059】
図6には、別のシリンジ17を用いて血液60を遠心分離した状態が示されている。シリンジ17の構成は任意であり、例えば、シリンジ筒12、ガスケット14、キャップ16と同様の構成が採用されうる。もちろん、シリンジ17ではなく、遠心分離管や試験管が用いられてもよい。シリンジ17内の血液は遠心分離により赤血球画分61と、白血球及び血小板を含む血漿62とに分離されている。
【0060】
図6に示されるように、このシリンジ17から血漿62をシリンジ筒12内へ吸引する。シリンジ筒12の針取付部20には採血針18を取り付ける。また、ガスケット14にはプランジャ15を取り付ける。そして、シリンジ17の基端側から遠心分離装置10を進入させて、採血針18のカヌラ19をシリンジ17のガスケット23に貫通させる。これにより、カヌラ19の先端がシリンジ17内の血漿62に到達する。この状態で、プランジャ15をシリンジ筒12から引き出してガスケット14を移動させると、シリンジ17内の血漿62がシリンジ筒12内へ吸引される。このような前処理によっても、シリンジ筒12に被遠心分離液である血漿62を満たすことができる。その後、前述された第1ステップから第3ステップを行うことにより、血漿62からPRP63を得ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、本発明に係る遠心分離装置及び遠心分離方法を、血液60からPRP63を得るために用いることとしたが、本発明の使用目的はPRPを得ることのみに限定されない。例えば、被遠心分離液として精子及びパーコールを含む液を用い、目的とする遠心分離画分として濃縮された精子を得る場合に、本発明を使用することができる。このような精子の濃縮方法は、例えば特開2000−288082号公報に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る遠心分離容器10の外観構成を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、遠心分離容器10の内部構成を示す縦断面図である。
【図3】図3は、多血小板血漿分離方法の各ステップにおける遠心分離容器10の状態を示す断面図である。
【図4】図4は、多血小板血漿分離方法の各ステップにおける遠心分離容器10の状態を示す断面図である。
【図5】図5は、多血小板血漿分離方法の各ステップにおける遠心分離容器10の状態を示す断面図である。である。
【図6】図6は、本発明に係る遠心分離方法に用いられる他の前処理を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10・・・遠心分離容器
11・・・ポート
12・・・シリンジ筒
13・・・容器
14・・・ガスケット
15・・・プランジャ
【出願人】 【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
【出願日】 平成18年10月27日(2006.10.27)
【代理人】 【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫

【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩


【公開番号】 特開2008−110272(P2008−110272A)
【公開日】 平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願番号】 特願2006−293035(P2006−293035)