トップ :: B 処理操作 運輸 :: B04 物理的または化学的工程を行なうための遠心装置または機械

【発明の名称】 遠心分離機
【発明者】 【氏名】高橋 廣之

【要約】 【課題】真空ポンプの消費電力を低減して省エネルギー化を実現することができる遠心分離機を提供すること。

【構成】ロータ1と、該ロータ1を収容するロータ室2と、該ロータ室2内で前記ロータ1を回転駆動するモータ5と、前記ロータ室2内を真空にするための油回転真空ポンプ4と、前記ロータ室2の真空度を検出する真空センサ6と、該真空センサ6によって検出された真空度に基づいて前記モータ5と前記油回転真空ポンプ4を駆動制御する制御手段7を有する遠心分離機において、前記ロータ室2の真空度として第1の設定値と該第1の設定値よりも低真空の第2の設定値をそれぞれ設定し、前記制御手段7は、前記真空センサ6によって検出された真空度が前記第1の設定値に達すると前記油回転真空ポンプ4を停止し、真空度が前記第2の設定値に達すると前記油回転真空ポンプ4を駆動する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離すべき試料を保持するロータと、該ロータを収容するロータ室と、該ロータ室内で前記ロータを回転駆動する駆動源であるモータと、前記ロータ室内を排気して真空にするための真空ポンプと、前記ロータ室の真空度を検出する真空センサと、該真空センサによって検出されたロータ室の真空度に基づいて前記モータと前記真空ポンプを駆動制御する制御手段を有する遠心分離機において、
前記ロータ室の真空度として第1の設定値と該第1の設定値よりも低真空の第2の設定値をそれぞれ設定し、前記制御手段は、前記真空センサによって検出された真空度が前記第1の設定値に達すると前記真空ポンプを停止し、真空度が前記第2の設定値に達すると前記真空ポンプを駆動することを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記真空ポンプを停止した後、真空度が前記第2の設定値より低真空にならなくても所定時間が経過すると前記真空ポンプを駆動すること特徴とする請求項1記載の遠心分離機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ室内を真空に保ちつつロータをロータ室内で回転させて試料を分離するための遠心分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機は、チューブやボトルに収容された試料をロータに収納し、該ロータを密閉されたロータ室(回転室)内でモータ等の駆動装置によって高速回転させることによって、ロータと共に回転する試料の分離や精製等を行うものである。
【0003】
ところで、ロータの回転速度は用途によって異なり、最高回転速度が数千回転(rpm)程度の比較的低速のものから15万回転(rpm)程度の高速のものまで幅広く、遠心分離機としては種々のロータ回転速度を有する製品群が一般に提供されている。
【0004】
中でもロータの回転速度が概ね30,000rpmを超える遠心分離機にあっては、ロータ室内の空気とロータとの摩擦熱によるロータと試料の温度上昇を抑制するため、ロータ室を真空にするための真空ポンプを備えている。ここで、真空ポンプは、粗引きポンプとしての油回転真空ポンプと、より高真空を得る補助ポンプとしての油拡散真空ポンプとで構成されることが一般的である。
【0005】
真空ポンプを備えた周知の遠心分離機においては、ロータ室の真空度を検出する真空センサと、該真空センサによって検出されるロータ室の真空度に基づいてモータと油拡散真空ポンプ及び油回転真空ポンプを駆動制御する制御手段を備えている。
【0006】
上記制御手段による制御においては、ロータ室の真空度が所定値に達しない場合はロータの回転速度を制限したり、遠心終了時刻が予め分かっている場合には、その数分前から油拡散真空ポンプを停止して油の消費量を低減する等の措置が採られてきた。
【0007】
その他、特許文献1には、加熱による真空ホース等の劣化やヒータの加熱による温度上昇を防止するために、油拡散真空ポンプの温度を温度センサで測定し、ヒータへの通電をフィードバック制御する技術が開示されている。
【0008】
又、特許文献2には、消費電力を低減するためにインバータを用いて油回転真空ポンプの動作能力を必要な程度に低減する技術が開示されている。更に、特許文献3には、真空シール部等の保守頻度を低減することを目的として、ロータの種類や回転速度に応じて真空度を変化させて真空度を必要以上に高真空にしない技術が開示されている。
【0009】
(特許文献1)特開2001−104826号公報
【特許文献2】特開2001−214868号公報
【特許文献3】特許第2610045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、ロータ室を真空にする遠心分離機においては、ロータは真空中で一定速度で回転しているため、空気との摩擦抵抗力が小さく必要な電力は極めて少ない。
【0011】
一方、油拡散真空ポンプや油回転真空ポンプは連続して駆動されており、どちらも電力を連続的に消費する特質を有している。そのため、遠心分離機全体の消費電力を分析すると、油拡散真空ポンプと油回転真空ポンプの消費電力、特に油回転真空ポンプの消費電力が大きな比率を占めている。
【0012】
ロータ室は或る程度(概ね1Pa)より高真空であればロータの温度上昇を抑制するのに充分であるが、従来の遠心分離機は、真空度を十分に高真空(例えば0.1Pa)にする能力を有していながら、モータの回転中は油回転真空ポンプの駆動を停止することはないため、この油回転真空ポンプを必要以上に駆動することによって無駄な電力を消費しているという問題を有していた。
【0013】
ところが、これまでは遠心分離機用のモータの加速・減速特性改善等のためにモータの高効率化が図られることはあっても、油回転真空ポンプの消費電力を低く抑えて省エネルギー化を図ることに着目されることがなかった。
【0014】
特許文献2に開示されているようにインバータを用いれば省エネルギー化を図ることはできるが、インバータによってコストが増加してしまう。
【0015】
又、特許文献3に記載された方法では、サーボ制御弁や複数の真空ポンプ、或は可変電圧源としてのインバータ装置が必要となり、これもコストの上昇を招くという問題がある。そして、特許文献3には、ロータ室を必要以上の高真空にしないために、真空ポンプでの排気を行いながらサーボ制御弁によってロータ室内へ空気を流入させる提案もなされており、空気の無駄な循環を発生させるために省エネルギー化に反するという問題を含んでいる。
【0016】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、真空ポンプの消費電力を低減して省エネルギー化を実現することができる遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、分離すべき試料を保持するロータと、該ロータを収容するロータ室と、該ロータ室内で前記ロータを回転駆動する駆動源であるモータと、前記ロータ室内を排気して真空にするための真空ポンプと、前記ロータ室の真空度を検出する真空センサと、該真空センサによって検出されたロータ室の真空度に基づいて前記モータと前記真空ポンプを駆動制御する制御手段を有する遠心分離機において、前記ロータ室の真空度として第1の設定値と該第1の設定値よりも低真空の第2の設定値をそれぞれ設定し、前記制御手段は、前記真空センサによって検出された真空度が前記第1の設定値に達すると前記真空ポンプを停止し、真空度が前記第2の設定値に達すると前記真空ポンプを駆動することを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記真空ポンプを停止した後、真空度が前記第2の設定値より低真空にならなくても所定時間が経過すると前記真空ポンプを駆動すること特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、真空度が第1の設定値に達すると真空度が第2の設定値に達するまで真空ポンプを停止するようにしたため、その間の電力消費が抑えられ、省エネルギー化が実現される。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、真空ポンプを停止した後、真空度が第2の設定値より低真空にならなくても所定時間が経過すると真空ポンプを駆動するようにしたため、ロータ室が真空の状態で真空ポンプが長時間停止することによって該真空ポンプ内の油がロータ室内に吸い上げられてロータ室内が油で汚染されるという不具合の発生が防がれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明に係る遠心分離機100の構成図であり、図示のように、遠心分離機100は、分離すべき試料を保持するロータ1と、該ロータ1を収容するロータ室2と、該ロータ室2内で前記ロータ1を回転駆動する駆動源であるモータ5と、前記ロータ室2内を排気して真空にするための油拡散真空ポンプ3及び油回転真空ポンプ4と、前記ロータ室2の真空度を検出する真空センサ6と、該真空センサ6によって検出されたロータ室2の真空度に基づいて前記モータ5と油拡散真空ポンプ3及び油回転真空ポンプ4を駆動制御する制御手段7によって構成されている。
【0023】
ここで、油拡散真空ポンプ3は、大気圧から真空引きできないため、初めに油回転真空ポンプ4で真空引きし、その後、当該油拡散真空ポンプ3が動作すると、該油拡散真空ポンプ3と油回転真空ポンプ4でロータ室2を減圧するものである。尚、油拡散真空ポンプ3は、オイルを貯留するボイラと、該ボイラを加熱するヒータと、ボイラで気化したオイル分子を一定方向に噴射させるジェットと、気化したオイル分子を冷却して液化するための冷却部とで構成されている。
【0024】
次に、以上の構成を有する遠心分離機100における油回転真空ポンプ4の駆動制御を図2のタイミングチャートと図3のフローチャートに基づいて説明する。尚、本実施の形態では、遠心分離機100を運転している間は油拡散真空ポンプ3を駆動(ON)しているものとする。
【0025】
本実施の形態では、制御手段7は、真空センサ6によって検出されるロータ室2の真空度に応じて油回転真空ポンプ4をON(駆動)/OFF(停止)する。具体的には、図2に示すように、油回転真空ポンプ4を駆動した後に該油回転真空ポンプ4をOFFするための第1の設定値aとして最大高真空に近い値を設定し、油回転真空ポンプ4をOFFした後にロータ室2の真空度が低下したために油回転真空ポンプ4を再度ONするための第2の設定値bを設定し、真空度がこれらの設定値a,bに達した時点で油回転真空ポンプ4をON/OFF制御するようにしている。尚、図2において、cはロータ1の温度上昇を抑制するために必要な真空度であり、油回転真空ポンプ4を再度ONするための第2の設定値bは、ロータ1の温度上昇を抑制し得る真空度cに近い値に設定されている。
【0026】
図2に示す時刻t0で遠心分離機100を駆動すると(図3のステップS1の判断がYES)、真空センサ6で検出されるロータ室2の真空度は図2に示すように時間の経過と共に徐々に低下し、制御手段7は、真空度が第1の設定値aより高真空であるか否かを判断する(図3のステップS2)。
【0027】
図2に示すように、真空度が設定値c,bを超えて時刻t1で第1の設定値aに達すると(図3のステップS2での判断結果がYESである場合)、油回転真空ポンプ4をOFFする(図3のステップS3)。
【0028】
上述のように油回転真空ポンプ4をOFFすると、ロータ室2の真空度は図2に示すように徐々に悪化するが、制御手段7は、真空度が第2の設定値bよりも低真空か否かを判断し(図3のステップS4)、図2に示すように時刻t2において真空度が第2の設定値bに達すると(図3のステップS4での判断結果がYESである場合)、油回転真空ポンプ4を再びONする(図3のステップS5)。
【0029】
その後、図2に示すように、時刻t3において真空度が第1の設定値aに達すると油回転真空ポンプ4をOFFし、時刻t4において真空度が第2の設定値bに達すると油回転真空ポンプ4をONし、時刻t5において真空度が第1の設定値aに達すると油回転真空ポンプ4をOFFする。以後、同様にして真空度が第1の設定値aに達する油回転真空ポンプ4をOFFし、油回転真空ポンプ4をOFFした後に真空度が第2の設定値bに達すると油回転真空ポンプ4をONする動作が繰り返される。
【0030】
このように、本発明に係る遠心分離機においては、真空度が第1の設定値aに達すると真空度が第2の設定値bに達するまで油回転真空ポンプ4を停止するようにしたため、その間の電力消費が抑えられ、省エネルギー化が実現される。尚、油回転真空ポンプ4の頻繁なON/OFFによる寿命低下を避けるため、真空度の第1の設定値aは油回転真空ポンプ4の最大の高真空に近い値とし、第2の設定値bはロータ1の温度上昇を抑制し得る真空度cに近い値とすべきである。
【0031】
ところで、ロータ室2が真空の状態で油回転真空ポンプ4が長時間停止していると、該油回転真空ポンプ4内の油が徐々に吸い上げられてロータ室2内に流入し、ロータ室2内を汚染してしまう可能性がある。そのため、本実施の形態では、油回転真空ポンプ4を停止して所定時間が経過した場合には、真空度が第2の設定値bまで悪化しなくとも、油回転真空ポンプ4を再駆動するようにしている。これによってロータ室2内の油による汚染を防ぐことができる。
【0032】
尚、本実施の形態では、油回転真空ポンプ4を真空度に応じてON/OFF制御したが、これは、油拡散真空ポンプ3は一旦停止すると、再駆動した際にその能力が発揮されるまでに長時間を要するため、真空度が更に悪化して設定値cに達してしまい、ロータ1の温度上昇を引き起こす可能性があるためである。但し、油拡散真空ポンプ3の駆動能力に合わせた第2の設定値bを決定することによって真空度の悪化を防ぐことができるため、油拡散真空ポンプ3も同様に駆動制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る遠心分離機の構成図である。
【図2】本発明に係る遠心分離機の油回転真空ポンプの駆動制御方法を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明に係る遠心分離機の油回転真空ポンプの駆動制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1 ロータ
2 ロータ室
3 油拡散真空ポンプ
4 油回転真空ポンプ
5 モータ
6 真空センサ
7 制御手段
100 遠心分離機
【出願人】 【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
【出願日】 平成18年7月24日(2006.7.24)
【代理人】 【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一


【公開番号】 特開2008−23477(P2008−23477A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−200364(P2006−200364)