トップ :: B 処理操作 運輸 :: B03 液体による,または,風力テ−ブルまたはジグによる固体物質の分離;固体物質または流体から固体物質の磁気または静電気による分離,高圧電界による分離

【発明の名称】 単層カーボンナノチューブの分離方法
【発明者】 【氏名】脇坂 嘉一

【氏名】中山 健一

【氏名】横山 正明

【氏名】兼松 泰男

【氏名】櫻井 芳昭

【要約】 【課題】金属性SWNT及び半導体性SWNTをそれぞれ分離可能であり、簡便かつスケールアップ容易なSWNTの分離方法の提供

【構成】本発明の単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分離方法は、金属性SWNTと半導体性SWNTとを含むSWNT混合物を金属性SWNTと半導体性SWNTとに分離する方法であって、前記SWNT混合物を水及び界面活性剤を含む液体に分散させてサスペンションとする工程、及び、前記サスペンションに電界を印加して金属性SWNTと半導体性SWNTとを分離する工程を含み、前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、ポリマー界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される界面活性剤である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属性単層カーボンナノチューブと半導体性単層カーボンナノチューブとを含む単層カーボンナノチューブ混合物を金属性単層カーボンナノチューブと半導体性単層カーボンナノチューブとに分離する方法であって、
前記単層カーボンナノチューブ混合物を水及び界面活性剤を含む液体に分散させてサスペンションとする工程、及び、
前記サスペンションに電界を印加し、金属性単層カーボンナノチューブと半導体性単層カーボンナノチューブとに分離する工程を含み、
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性、陰イオン性界面活性剤、ポリマー界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される界面活性剤であることを特徴とする単層カーボンナノチューブの分離方法。
【請求項2】
前記分離する工程が、前記サスペンションに電界を印加可能な少なくとも一対の電極による電気泳動により行われる請求項1記載の分離方法。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、少なくとも10のオキシエチレン繰り返し単位を含む非イオン性界面活性剤である請求項1又は2に記載の分離方法。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤が、炭素原子数6〜40の直鎖アルキル基を有する非イオン性界面活性剤である請求項1から3のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij35[商品名])、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij58[商品名])、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(Brij78[商品名])、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(Brij97[商品名])、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(Brij56[商品名])、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(Brij76[商品名])、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(Brij98[商品名])、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(Brij700[商品名])、ポリオキシエチレン(40)イソオクチルフェニルエーテル(Triton X−405[商品名])、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20[商品名])、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレアート(Tween85[商品名])及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤である請求項1から4のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項6】
前記陰イオン性界面活性剤が、炭素原子数6〜40の直鎖アルキル基を有する陰イオン性界面活性剤である請求項1から4のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項7】
前記陰イオン性界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、ドデシルスルホン酸ナトリウム(SDSA)、n−ラウロイルサルコシンナトリウム(Sarkosyl)、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(TREM)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される陰イオン性界面活性剤である請求項1から6のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項8】
前記ポリマー界面活性剤が、少なくとも10のオキシエチレン繰り返し単位を含むポリマー界面活性剤である請求項1から7のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項9】
前記ポリマー界面活性剤が、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレンブロックコポリマーであって、前記アルキレンの炭素原子数が3〜10である請求項1から8のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の分離方法を行うための単層カーボンナノチューブの分離装置であって、前記サスペンションに電界を印加可能な少なくとも一対の電極を備え、金属性単層カーボンナノチューブ及び半導体性単層カーボンナノチューブの少なくとも一方を分離する装置。
【請求項11】
さらに、前記サスペンションの導入口及び流路、並びに、金属性単層カーボンナノチューブ及び半導体性単層カーボンナノチューブの少なくとも一方の回収口を備え、金属性単層カーボンナノチューブと半導体性単層カーボンナノチューブの少なくとも一方を連続的に分離可能な請求項10記載の分離装置。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか一項に記載の分離方法を行うための単層カーボンナノチューブの分離装置であって、装置本体と一対の電極とを備え、
前記装置本体が、内部に前記サスペンションの液溜め部を有し、前記液溜め部の両端の端部に対応する位置に前記本体上面と前記端部とを貫通する開口部を有し、
前記開口部に、前記電極を配置可能な分離装置。
【請求項13】
さらに、一対の電極槽を備え、前記電極槽は、両端に開口部を備える中空体であり、前記電極槽の一端の開口部と前記本体上面の開口部とが略一致するように前記本体上面に接続され、前記電極槽の内部に前記電極を配置可能な請求項12記載の分離装置。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか一項に記載の分離方法を行うための単層カーボンナノチューブの分離装置であって、本体容器と、一対の電極と、中空隔壁とを備え、
前記本体容器の内壁に一方の電極が配置され、
前記本体容器の略中央に他方の電極が配置され、
前記中央の電極を取り囲むように前記中空隔壁が配置され、
前記中空隔壁の側面が、単層カーボンナノチューブが透過可能な材料から形成される分離装置。
【請求項15】
半導体性単層カーボンナノチューブの製造方法であって、請求項1から9のいずれか一項に記載の分離方法、又は、請求項10から14のいずれか一項に記載の分離装置を用いて半導体性単層カーボンナノチューブを分離回収することを含む製造方法。
【請求項16】
金属性単層カーボンナノチューブの製造方法であって、請求項1から9のいずれか一項に記載の分離方法、又は、請求項10から14のいずれか一項に記載の分離装置を用いて金属性単層カーボンナノチューブを分離回収することを含む製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、単層カーボンナノチューブの分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、炭素原子からなる円筒状の物質である。カーボンナノチューブには、円筒形の層が1層の単層カーボンナノチューブ(SWNT)、前記層が2層以上の多層カーボンナノチューブ(MWNT)、これらが束になったバンドルが含まれる。カーボンナノチューブは、その螺旋度(カイラリティ)に依存して金属性又は半導体性を示す。
【0003】
単層カーボンナノチューブは、上述のとおり、構造によって金属的にも半導体的にもなることから、将来ボトムアップ的に微細な回路形成をするためのナノスケールの電子材料となることが期待されている。金属性SWNTは、ナノスケールの配線材料や透明電極材料として、また、半導体性SWNTは、ナノスケールの高性能な電界効果型トランジスタ用材料や、有機半導体に代わるフレキシブルデバイスの材料として期待されている。
【0004】
現在の単層カーボンナノチューブの合成方法では、金属性SWNTと半導体性SWNTとを選択的に合成することができない。したがって、通常合成される単層カーボンナノチューブは、金属性SWNTと半導体性SWNTの混合物である。しかしながら、単層カーボンナノチューブ本来の性能を引き出したデバイスを作製するためには、純度の高い金属性SWNT又は半導体性SWNTを得ることが重要である。
【0005】
電気的特性や化学修飾を利用して金属性SWNT及び/又は半導体性SWNTを単層カーボンナノチューブから分離しようとする試みは、これまでにいくつか報告されている。例えば、金属性SWNTと半導体性SWNTの誘電特性の違いに着目して誘電泳動により金属性SWNTを選択的に捕集する方法(例えば、非特許文献1)、DNAでラッピングしたSWNTを陰イオン交換クロマトグラフィーで分離する方法(特許文献1)、アミン系有機溶媒中で遠心分離をすることにより金属性SWNTを取得する方法(非特許文献2)、pH調整によりSWNTをそのカイラリティに応じて分離する方法(特許文献2)、過酸化水素により半導体性SWNTを除去する方法、ニトロニウム又は硫酸・硝酸混合液で処理して金属性SWNTを除去する方法(特許文献3及び4)、及び、帯電させたSWNTを電気泳動する方法(特許文献5)等が挙げられる。
【特許文献1】特表2006-512276号公報
【特許文献2】特表2005-527455号公報
【特許文献3】特開2005-325020号公報
【特許文献4】特開2005-194180号公報
【特許文献5】特開2005-104750号公報
【非特許文献1】R. Krupke et al., Scinence 301, 344 (2003)
【非特許文献2】Y. Maeda et al., J. Am. Chem. Soc. 127, 10287 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分離方法は、金属性SWNT及び半導体性SWNTのいずれか一方しか取得できない場合がある。また、金属性及び半導体性のSWNTをそれぞれ分離可能な場合であっても、スケールアップが困難であったり、pH調整などの作業が必要であったりする。そこで、本発明は、金属性SWNT及び半導体性SWNTをそれぞれ分離可能であり、簡便かつスケールアップ容易なSWNTの分離方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分離方法は、金属性SWNTと半導体性SWNTとを含むSWNT混合物を金属性SWNTと半導体性SWNTとに分離する方法であって、前記SWNT混合物を水及び界面活性剤を含む液体に分散させてサスペンション(suspension)とする工程、及び、前記サスペンションに電界を印加して金属性SWNTと半導体性SWNTとを分離する工程を含み、前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、ポリマー界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される界面活性剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明者らは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)に含まれる金属性SWNTと半導体性SWNTを分離する方法について鋭意研究を重ねた結果、SWNTをある種の界面活性剤を用いて分散させるだけで、得られたサスペンション中の金属性SWNTと半導体性SWNTにそれぞれ異なる電荷を帯電させることができることを見出した。そしてさらに研究を重ねた結果、例えば電気泳動のようにこのサスペンションに電界を印加すれば、移動度や移動速度の差により金属性SWNTと半導体性SWNTとをそれぞれ分離できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
本発明は上述のとおり金属性SWNTと半導体性SWNTとをそれぞれ分離できる方法であるから、本発明によれば、例えば純度の高い金属性SWNT及び/又は半導体性SWNTを製造することができる。また、本発明は簡便な方法であるから、本発明によれば例えばSWNTの分離処理のスケールアップや低コスト化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のSWNTの分離方法において、前記分離する工程は、前記サスペンションに電界を印加可能な少なくとも一対の電極による電気泳動により行われることが好ましい。
【0011】
本発明の単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分離方法において、前記非イオン性界面活性剤は、少なくとも10のオキシエチレン繰り返し単位、及び/又は、炭素原子数6〜40の直鎖アルキル基を有することが好ましい。前記非イオン性界面活性剤には、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij35[商品名])、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij58[商品名])、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(Brij78[商品名])、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(Brij97[商品名])、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(Brij56[商品名])、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(Brij76[商品名])、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(Brij98[商品名])、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(Brij700[商品名])、ポリオキシエチレン(40)イソオクチルフェニルエーテル(Triton X−405[商品名])、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20[商品名])、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレアート(Tween85[商品名])及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものが好ましく含まれる。
【0012】
前記陰イオン性界面活性剤は、例えば、炭素原子数6〜40の直鎖アルキル基を有する陰イオン性界面活性剤であって、好ましくは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、ドデシルスルホン酸ナトリウム(SDSA)、n−ラウロイルサルコシンナトリウム(Sarkosyl)、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(TREM)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される陰イオン性界面活性剤である。
【0013】
前記ポリマー界面活性剤は、例えば、少なくとも10のオキシエチレン繰り返し単位を含むポリマー界面活性剤であって、好ましくは、アルキレンの炭素原子数が3〜10のポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレンブロックコポリマーある。
【0014】
本発明は、その他の態様として、本発明のSWNTの分離方法を行うためのSWNTの分離装置であって、前記サスペンションに電界を印加可能な少なくとも一対の電極を備え、金属性SWNT及び半導体性SWNTの少なくとも一方を分離できる装置を提供する。
【0015】
本発明のSWNTの分離装置は、前記サスペンションに電界を印加可能な少なくとも一対の電極、前記サスペンションの導入口及び流路、並びに、金属性SWNT及び半導体性SWNTの少なくとも一方の回収口を備え、金属性SWNTと半導体性SWNTの少なくとも一方を連続的に分離可能な分離装置であることが好ましい。
【0016】
本発明のSWNTの分離装置は、装置本体と一対の電極とを備え、前記装置本体が、内部に前記サスペンションの液溜め部を有し、前記液溜め部の両端の端部に対応する位置に前記本体上面と前記端部とを貫通する開口部を有し、前記開口部に、前記一対の電極を配置可能な分離装置であることが好ましい。前記分離装置は、さらに、一対の電極槽を備え、前記電極槽は、両端に開口部を備える中空体であり、前記電極槽の一端の開口部と前記本体上面の開口部とが略一致するように前記本体上面に接続され、前記電極槽の内部に前記電極を配置可能な分離装置であることが好ましい。
【0017】
本発明のSWNTの分離装置は、本体容器と、一対の電極と、中空隔壁とを備え、前記本体容器の内壁に一方の電極が配置され、前記本体容器の略中央に他方の電極が配置され、前記中央の電極を取り囲むように前記中空隔壁が配置され、前記中空隔壁が、単層カーボンナノチューブが透過可能な材料から形成される分離装置であることが好ましい。
【0018】
本発明は、さらにその他の態様として、半導体性SWNTの製造方法であって、本発明のSWNTの分離方法又は本発明のSWNTの分離装置を用いて半導体性SWNTを分離回収することを含む製造方法を提供する。
【0019】
本発明は、さらにその他の態様として、金属性SWNTの製造方法であって、本発明のSWNTの分離方法又は本発明のSWNTの分離装置を用いて金属性SWNTを分離回収することを含む製造方法を提供する。
【0020】
本発明において、“単層カーボンナノチューブ(Single Wall carbon NanoTube;SWNT)”の用語は、円筒型の層が1層のカーボンナノチューブの単体、又はその集合体をいい、金属性SWNT、半導体性SWNT、及びそれらの混合物を含む。
【0021】
本発明において、“金属性SWNT”とは、一般にカイラルベクトルで金属性と定義されるSWNT、又は、ラマン散乱分光で金属性と判別されるSWNTであって、金属性SWNT単体、及び金属性SWNT単体の存在比が全体の50%以上、例えば、60%、70%、80%、90%、95%以上を占めるSWNTの集合体を含む。同様に、本発明において、“半導体性SWNT”とは、一般にカイラルベクトルで半導体性と定義されるSWNT、又は、ラマン散乱分光で半導体性と判別されるSWNTであって、半導体性SWNT単体、及び半導体性SWNT単体の存在比が全体の50%以上、例えば、60%、70%、80%、90%、95%以上を占めるSWNTの集合体を含む。
【0022】
ラマン散乱分光においてSWNTを金属性又は半導体性と判別する方法としては、例えば、励起波長632.8nmでラマンスペクトルを測定した場合に、180〜240cm-1の領域に共鳴ラマン散乱光が現れるものを金属性、240〜310cm-1の領域に共鳴ラマン散乱光が現れるものを半導体性とする判別方法が挙げられる。
【0023】
以下に本発明のSWNTの分離方法について説明する。本発明のSWNTの分離方法は、上述のとおり、金属性SWNTと半導体性SWNTとを含むSWNT混合物を水及び界面活性剤を含む液体に分散させたサスペンションを調製する工程と、前記サスペンションに電界を印加して金属性SWNTと半導体性SWNTとに分離する工程を含む。
【0024】
まず、金属性SWNTと半導体性SWNTとを含むSWNT混合物を準備する。前記SWNT混合物は、金属性SWNTと半導体性SWNTとを含むものであれば特に制限されず、従来公知のSWNTの合成法により合成してもよく、また、市販のものであってもよい。SWNTの合成法としては、例えば、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱CVD法等が挙げられる。上述したとおり、従来公知のSWNT合成法では金属性SWNTと半導体性SWNTとが混在したSWNTしか合成することができない。したがって、本発明における前記SWNT混合物としては、従来公知のSWNT合成法により合成されたものを使用することができる。
【0025】
次に、前記SWNT混合物を水及び界面活性剤を含む液体に分散させたサスペンションを調製する。前記サスペンションを得る方法は特に制限されず、従来公知の方法を適用できるが、例えば、前記SWNT混合物、水、及び界面活性剤を混合して超音波処理することでSWNTを分散させる方法などが挙げられる。前記超音波処理に変えて、機械的なせん断力によりSWNTを分散させてもよい。前記サスペンションにおいて、SWNTは孤立した状態であることが好ましい。そのため、必要に応じて、超遠心分離処理を用いてバンドルを除去してもよい。
【0026】
前記サスペンションの調製に使用する界面活性剤は、SWNTを分散させることができる界面活性剤であれば特に制限されないが、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び、ポリマー界面活性剤、並びにこれらの組み合わせである。
【0027】
前記非イオン性界面活性剤は、少なくとも10のオキシエチレン繰り返し単位を有することが好ましい。前記オキシエチレン繰り返し単位数としては、例えば10〜200であって、好ましくは15〜150であって、より好ましくは20〜100である。また、前記非イオン性界面活性剤は、炭素原子数6〜40、好ましくは、炭素原子数7〜30、より好ましくは、炭素原子数8〜20の直鎖アルキル基を有することが好ましい。前記非イオン性界面活性剤は、前記オキシエチレン繰り返し単位及び前記直鎖アルキル基のどちらか一方を有するものであってもよいが、同時に備えることがより好ましい。さらにまた、前記非イオン性界面活性剤は、分子量が1000以上であることが好ましい。
【0028】
前記非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij35[商品名])、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij58[商品名])、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(Brij78[商品名])、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(Brij97[商品名])、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(Brij56[商品名])、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(Brij76[商品名])、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(Brij98[商品名])、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(Brij700[商品名])、ポリオキシエチレン(40)イソオクチルフェニルエーテル(Triton X−405[商品名])、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20[商品名])、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレアート(Tween85[商品名])及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。この中でも好ましくは、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(Brij78[商品名])、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(Brij700[商品名])、ポリオキシエチレン(40)イソオクチルフェニルエーテル(Triton X−405[商品名])、及び、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20[商品名])であって、より好ましくは、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20[商品名])及びポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(Brij700[商品名])である。
【0029】
前記陰イオン性界面活性剤は、例えば、炭素原子数6〜40の直鎖アルキル基を有するものが挙げられる。前記炭素原子数としては、好ましくは7〜30、より好ましくは8〜20である。前記陰イオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、ドデシルスルホン酸ナトリウム(SDSA)、n−ラウロイルサルコシンナトリウム(Sarkosyl)、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(TREM)及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。この中でも好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)である。
【0030】
前記ポリマー界面活性剤としては、例えば、少なくとも10のオキシエチレン繰り返し単位を有するポリマー界面活性剤であって、好ましくは、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレンブロックコポリマーが挙げられる。前記アルキレンの炭素原子数としては、例えば、3、4、5、6〜10である。そのなかでも前記ポリマー界面活性剤としては、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーが好ましい。前記ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーとしては、例えば、Pluronic[商品名]系界面活性剤が挙げられ、その中でも好ましくは、Pluronic F−68[商品名]である。
【0031】
前記水及び界面活性剤を含む液体は、例えば、水と界面活性剤とを混合して調製できる。前記サスペンションの分散媒として機能する範囲で前記水に換えて重水や従来公知の様々なバッファーを使用してもよい。例えば、前記サスペンションの調製において超遠心分離を行う場合には重水を使用できる。
【0032】
前記水及び界面活性剤を含む液体における前記界面活性剤の濃度は、前記SWNT混合物を分散できる範囲であれば特に制限されず、また、当該技術分野の当業者であれば適宜設定可能である。前記界面活性剤の濃度としては、例えば、CMC(臨界ミセル濃度)以上30wt%以下であって、好ましくは、CMC以上10wt%以下であって、より好ましくは、CMC以上5wt%以下である。
【0033】
前記水及び界面活性剤を含む液体に混合する前記SWNT混合物の量、すなわち、前記サスペンションにおける前記SWNT混合物の濃度は、分散可能な範囲であれば特に制限されないが、例えば、前記水及び界面活性剤を含む液体に対して、1μg/mL〜100mg/mLであって、好ましくは、5μg/mL〜10mg/mLであり、より好ましくは10μg/mL〜5mg/mLである。
【0034】
前記SWNT混合物及び前記水及び界面活性剤を含む液体を混合したものに、超音波処理やせん断処理などをすることでSWNTを分散させてサスペンションを得る。前記超音波処理及びせん断処理の条件は、従来公知のものでよく、特に制限されない。例えば、前記超音波処理の条件としては、例えば、1〜1000W、1分〜12時間、0〜100℃が挙げられる。
【0035】
前記超音波処理又はせん断処理などによって得られたサスペンションは、さらに、超遠心分離処理を行い、SWNTのバンドルを除去してもよい。前記超遠心分離処理の条件は特に制限されないが、例えば、2000〜2000000×g、5分〜50時間、0〜80℃が挙げられる。
【0036】
そして、調製された前記サスペンションに電界を印加して金属性SWNTと半導体性SWNTとに分離する。上述のとおり、前記サスペンションを形成するだけで金属性SWNTと半導体性SWNTとがそれぞれ異なる電荷を帯電し、これを利用すれば簡便に電気的に両者を分離できるという知見は、本発明者らが初めて見出したことである。
【0037】
前記サスペンションに電界を印加して両者を分離する方法としては、金属性SWNTと半導体性SWNTとで異なる電荷量に起因する電界中での移動速度や移動度の差に基づくものであれば特に制限されない。印加する電界は、通常、直流電界又は直流パルス電界である。金属性SWNTは、通常、前記サスペンション中で正電荷を帯び、その電荷量は半導体性SWNTより大きい。従って、金属性SWNTは、電界中で陰極方向へ移動し、その移動速度/移動度は、半導体性SWNTよりも大きくなる。この点を踏まえれば、当該技術分野の当業者であれば、両者を電気的に分離する従来公知の技術や条件を適宜設定できる。
【0038】
前記サスペンションへの電界の印加方法は、特に制限されず、電界を発生させる少なくとも一対の電極を用いて行うことができる。前記電極は、前記サスペンションに直接接触させてもよいし、接触させなくてもよい。また、具体的な分離技術としては、例えば、従来公知の電気泳動法が挙げられる。前記電気泳動法としては、ゲルを用いる方法、ゲルを用いない方法のいずれであってもよい。大量のSWNT混合物を処理する場合には、例えば、前記サスペンションの流れ(フロー)に対して直角方向に電界を印加し連続的に電気泳動するフリーフロー電気泳動法を採用できる。前記電極の材質は、特に制限されず適宜選択可能であるが、金又は白金電極が好ましい。電気泳動で印加する電圧は、特に制限されず適宜調節可能であるが、例えば、電界強度が10kV/cm以下、好ましくは1kV/cm以下、より好ましくは100V/cm以下となる電圧である。
【0039】
本発明のSWNTの分離方法を用いて分離できる半導体性SWNTの純度は、分離されたSWNT中の半導体性SWNT存在比として、例えば、70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらにより好ましくは95%以上である。また、本発明のSWNTの分離方法により分離できる金属性SWNTの純度は、分離されたSWNT中の金属性SWNT存在比として、例えば、70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらにより好ましくは95%以上である。
【0040】
以下に本発明のSWNTの分離装置について説明する。本発明のSWNTの分離装置は、本発明のSWNTの分離方法を行うための装置であって、前記サスペンションに電界を印加可能な少なくとも一対の電極を備える。前記電極は、前記サスペンションに直接接触するように配置することもでき、又は、接触しないように配置してもよい。本発明のSWNTの分離装置は、金属性SWNT及び半導体性SWNTのいずれか一方を分離する装置であってもよく、又は、双方を分離する装置であってもよい。また、本発明のSWNTの分離装置は、バッチ式であってもよく、連続式であってもよい。連続式の分離装置としては、特に制限されないが、例えば、上述のとおり、フリーフロー電気泳動が可能な分離装置が挙げられる。
【0041】
本発明のSWNTの分離装置の一実施形態を図7に示す。図7の本発明のSWNT分離装置10は、一対の電極11,12、前記電極11,12が発生させる電界の方向と直角の方向に配置された流路13、前記流路13に接続する前記サスペンションの導入口14、前記流路の下流に配置された分岐点15、及び、前記分岐点で分岐した流路13に接続する回収口16を備える。同図の本発明のSWNT分離装置10は、下記のように使用することができる。すなわち、金属性及び半導体性SWNTを含む前記サスペンションを導入口14から導入し同図の矢印方向にフローさせ、このフローに対して電源に接続された電極11,12から電界を印加する。すると、金属性SWNTは半導体性SWNTよりも大きな速度で陰極12に移動して分岐点15付近では陽極11側に半導体性SWNT、陰極12側に金属性SWNTが分布することとなる。その結果、陽極11側の回収口16からは半導体性SWNTが、陰極12側の回収口16からは金属性SWNTが回収できる。前記分岐点15及び回収口16の数は特に制限されず、さらに設けてもよい。より細かく分画することで、より純度の高い金属性SWNT及び半導体性SWNTを回収できる。また、前記電極の数も特に制限されない。
【0042】
本発明のSWNTの分離装置のその他の実施形態は、装置本体と一対の電極とを備え、前記装置本体が、内部に前記サスペンションの液溜め部を有し、前記液溜め部の両端の端部に対応する位置に前記本体上面と前記端部とを貫通する開口部を有し、前記開口部に、前記一対の電極を配置可能な分離装置である。このように電極を配置する部分を開口とすることで、電極に電圧を印加した場合に発生する気泡を逃がすことができる。前記装置本体の大きさ及び材料は、特に制限されず適宜設計選択できる。また、前記開口部間の距離も、特に制限されない。
【0043】
前記分離装置は、さらに、一対の電極槽を備え、前記電極槽は、両端に開口部を備える中空体であり、前記電極槽の一端の開口部と前記本体上面の開口部とが略一致するように前記本体上面に接続され、前記電極槽の内部に前記電極を配置可能な分離装置であることが好ましい。電極を前記電極槽に配置することにより、気泡の発生に伴う対流の影響を抑制できる。そのような本発明のSWNTの分離装置の一例を図8に示す。図8の分離装置20は、基板21、スペーサ22、上部カバー23、電極槽24を含む。基板21、スペーサ22及び上部カバー23が結合して装置本体を形成する。スペーサ22の空間29が、液溜め部となる。上部カバー23の開口部は、電極槽24の両端の開口部と一致している。なお、同図において電極は図示していない。前記分離装置20の使用方法を図9の断面模式図に基づき説明する。図9において、図8と同一部分には同一符号を付す。まず、電極槽24の開口部27から試料であるSWNTサスペンション28を液溜め部26へ注入する。注入するサスペンション28の量は特に制限されないが、例えば、電極槽24内で前記サスペンション28と電極25とが接触する程度に注入することが好ましい。そして、両方の電極25を配置した後、電極25に直流電圧を印加することで、電気泳動によるSWNTの分離が可能となる。電極25の材質は、特に制限されず適宜選択可能であるが、金又は白金電極が好ましい。また、電極25の形態は、電極槽24に納まる形態であれば特に制限されないが、例えば、コイル状であることが好ましい。
【0044】
本発明のSWNTの分離装置のさらにその他の実施形態を図10に示す。図10の分離装置30は、本体容器31と、一対の電極32、33と、中空隔壁34とを備え、前記本体容器31の内壁に一方の電極32が配置され、前記本体容器31の略中央に他方の電極33が配置され、前記中央の電極33を取り囲むように前記中空隔壁34が配置され、前記中空隔壁34の側面がSWNTの透過可能な材料から形成される分離装置である。
【0045】
本体容器31と電極32は、例えば、本体容器31の側面が電極となりうる金属からなるときは、一体化することができる。本体容器31の形状は、特に制限されず、例えば円筒形である。中央電極33の形状は、特に制限されないが、例えば棒状(円柱や角柱)が挙げられる。電極32,33の材質は、特に制限されず適宜選択可能であるが、金又は白金電極が好ましい。前記中空隔壁34の側面材料は、SWNTが透過可能であれば特に制限されないが、各種フィルター、メンブレン、不織布などが利用できる。フィルターやメンブレンの場合、その口径は、例えば、0.1〜10μmである。図10において中空隔壁34は1つであるが、必要に応じて2つ以上配置してもよい。中空隔壁34の形状は、特に制限されず、例えば円筒形である。
【0046】
図10の分離装置30の断面模式図を図11に示す。同図において図10と同一部分には同一符号を付す。分離装置30は、中空隔壁34を備えることにより、中空隔壁34の内側(電極33側)の液35と外側(電極32側)の液36とが対流して混合することを抑制でき分離精度の向上が可能となる。また、液35又液36を回収する場合にも、他方の液と混合を抑制しながら回収することができ、回収作業の簡便化及び回収物の純度の向上という利点がある。
【0047】
さらに分離装置30であれば、例えば、中空隔壁34の内側へSWNTのサスペンションを注入し、中空隔壁34の外側へSWNTを含まない界面活性剤と水を含む液体を注入し、中央の電極33をプラスに印加して金属性SWNTのみを外側の液に移動させ、純度がより向上した金属性SWNTを分離する方法などが可能となる。この方法において、前記SWNTサスペンションは中空隔壁の内側、外側どちらに注入してもよく、かける電圧の方向も適宜変更可能であり、サスペンション側から中空隔壁34を通過し界面活性剤と水を含む液体側に移動させるSWNTも半導体性・金属性のどちらでもよい。
【0048】
本発明の金属性SWNT及び/又は半導体性SWNTの製造方法は、本発明のSWNTの分離方法又は本発明のSWNTの分離装置を用いて金属性及び/又は半導体性のSWNTを分離する工程を含む。本発明の製造方法は、金属性SWNT及び半導体性SWNTのいずれか一方を製造する方法であってもよく、双方のSWNTをそれぞれ製造する方法であってもよい。本発明の製造方法は、さらに、分離回収した金属性及び/又は半導体性のSWNTを精製する工程を含んでもよい。前記精製する方法は、特に制限されない。
【0049】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0050】
<サスペンションの調製>
1wt%の非イオン性界面活性剤Tween20[商品名](ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を含む重水10mL中に10mgのHiPco SWNT(Carbon Nanotechnologies社製)を混合し、プローブ型超音波ホモジナイザーを用いて300W、20分、氷水中で超音波処理を行った。その超音波処理したものを260,000×g、50分の超遠心分離を行い、その上清の70%をピペットで回収してSWNTのサスペンションとした。
【0051】
<分離装置>
前記サスペンションを電気泳動するために、図1(A)に示す電極チップを作製して分離装置とした。前記電極チップは、ガラス基板1上に平行平面電極2が配置されている。この電極チップの平行平面電極2は、700μmのステンレスロッドをマスクとして用いてガラス基板1上にCr 10nm、Au 100nmの順に蒸着し、前記ロッドをリフトオフすることで作製した。最終的な平行平面電極2間の距離dは、約700μmであった。そして、前記電極チップを利用して、図1(B)に示すような分離装置を作製した。すなわち、この分離装置は、ガラス基板1及び平行平板電極2の上に厚み100μmのシリコンゴム製スペーサ3が配置され、滴下されたサスペンション5をスライドグラス4が密封する構成である。電気泳動は、直流電源を用いて電極2間に直流電界を印加して電気泳動を行った。対物レンズ6は、顕微ラマン(励起光:25mW、He−Neレーザー(632,8nm)、レーザースポット径3.5μm)のものである。電気泳動と同時にラマンスペクトル測定し、金属性SWNT及び半導体性SWNTの挙動を評価した。すなわち、励起波長632.8nmでラマンスペクトルを測定した場合に、金属性SWNTであれば、180〜240cm-1の領域に、半導体性SWNTであれば、240〜310cm-1の領域に共鳴ラマン散乱光が現れることを利用した。
【0052】
<電気泳動の結果>
前記分離装置に2Vの電圧を印加して前記サスペンションを電気泳動したときの電極間の中央部分におけるラマンスペクトルの測定結果の一例を図2(A)に示す。同図に示すとおり、電界を印加すると中央部分では金属性SWNTが半導体性SWNTよりも早く減少し、10分後にはほぼ半導体性SWNTのみとなっていた。一方、電気泳動した時の陰極電極上におけるラマンスペクトルの測定結果の一例を図2(B)に示す。同図に示すとおり、電界を印加して20分後には陰極上に金属性SWNTがより多く増加していた。これらの結果から、前記サスペンションを電気泳動するだけで、金属性SWNTと半導体性SWNTとを分離できることが示された。
【0053】
電気泳動における金属性及び半導体性SWNTの挙動を確認するために、図3に示す測定位置a〜eの5箇所でラマンスペクトルを測定した。点aは陽極近傍、点bは陽極から50μm、点cは両電極の中央、点dは陰極から50μm、点eは陰極近傍である。
【0054】
金属性SWNT及び半導体性SWNTの積分強度、並びに、半導体性SWNTの割合をそれぞれ算出した結果の一例を図4−1〜図4−5にそれぞれ示す。陽極近傍(a点)では金属性SWNTが急激に減少し、それより少し遅れて半導体性SWNTが減少した(図4−1)。b及びc点でもa点と同様の現象が観察されたが、b〜e点では積分強度の経時変化にピークが現れた(図4−2〜5)。このピークは、SWNTの電気泳動が進行するに従いSWNTがある程度一団となって移動したために現れたと考えられる。また、ピークが現れる時間は陰極に近いほど遅いことから、金属性及び半導体性SWNTは共に陰極方向に移動したことが確認された。また、測定位置により差はあるが、電極間では半導体性SWNTの割合が増加し、電界印加前には約50%程度であった半導体性SWNTの割合は、最大80%程度となった。このことから、金属性SWNTと半導体性SWNTとを選択的に分離できることが確認された。
【実施例2】
【0055】
界面活性剤を非イオン性界面活性剤Brij700[商品名](ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル)に換えた他は実施例1と同様にサスペンションを調製して電気泳動を行い、図3に示す測定位置b、c、dの3箇所でラマンスペクトルを測定した。金属性SWNT及び半導体性SWNTの積分強度、並びに、半導体性SWNTの割合をそれぞれ算出した結果の一例を図5−1〜図5−3にそれぞれ示す。これらの図に示すとおり、金属性及び半導体性SWNTが共に陰極方向へ泳動され、金属性SWNTの泳動速度が半導体性SWNTのそれよりも速いという泳動挙動は、実施例1と同様であった。なお、最終的な半導体性SWNTの純度は、実施例1よりも高く約90%であった。
【実施例3】
【0056】
界面活性剤を陰イオン性界面活性剤SDBS(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)に換えた他は実施例1と同様にサスペンションを調製して電気泳動を行い、図3に示す測定位置b、c、dの3箇所でラマンスペクトルを測定した。金属性SWNT及び半導体性SWNTの積分強度、並びに、半導体性SWNTの割合をそれぞれ算出した結果の一例を図6−1〜図6−3にそれぞれ示す。これらの図に示すとおり、金属性及び半導体性SWNTが共に陰極方向へ泳動され、金属性SWNTの泳動速度が半導体性SWNTのそれよりも速いという泳動挙動は、実施例1及び2と同様であった。
【実施例4】
【0057】
界面活性剤を2wt%のポリマー界面活性剤 Pluronic F68[商品名](BASF社製)に換え、SWNTの濃度を0.3mg/mlとした他は実施例1と同様にサスペンションを調製して電気泳動を行い、図3に示す測定位置c(中央)でラマンスペクトルを測定した。その結果の一例を図12に示す。同図に示すとおり、10分後には金属性SWNTのピークが著しく減少した。よって、金属性SWNTの泳動速度が半導体性SWNTのそれよりも速いという泳動挙動は、実施例1〜3と同様であった。
【実施例5】
【0058】
界面活性剤を1wt%のTritonX−405[商品名](ポリオキシエチレン(40)イソオクチルフェニルエーテル)に換え、SWNTの濃度を1mg/mlとした他は実施例1と同様にサスペンションを調製して電気泳動を行い、ラマンスペクトルを測定した。その結果、金属性SWNTの泳動速度が半導体性SWNTのそれよりも速いという泳動挙動は、実施例1〜4と同様であった。
【実施例6】
【0059】
界面活性剤を1wt%のBrij78[商品名](ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル)に換え、SWNTの濃度を1mg/mlとした他は実施例1と同様にサスペンションを調製して電気泳動を行い、ラマンスペクトルを測定した。その結果、金属性SWNTの泳動速度が半導体性SWNTのそれよりも速いという泳動挙動は、実施例1〜5と同様であった。
【0060】
(比較例1)
界面活性剤を1wt%のコール酸ナトリウムに換え、SWNTの濃度を1mg/mlとした他は実施例1と同様にサスペンションを調製して電気泳動を行い、図3に示す測定位置c(中央)でラマンスペクトルを測定した。その結果の一例を図13に示す。同図に示すとおり、金属性及び半導体性SWNTのピークはいずれも変化せず、電気泳動がされていないことが示された。
【0061】
(比較例2)
界面活性剤を1wt%のデオキシコール酸ナトリウムに換え、SWNTの濃度を1mg/mlとした他は実施例1と同様にサスペンションを調製して電気泳動を行い、図3に示す測定位置c(中央)でラマンスペクトルを測定した。その結果の一例を図14に示す。同図に示すとおり、金属性及び半導体性SWNTのピークは共に時間とともに減少し、30分後にはどちらのピークもほぼ消滅した。したがって、金属性及び半導体性SWNTが同じ泳動挙動を示し両者の分離ができないことが示された。
【実施例7】
【0062】
<分離装置>
図8及び9に示す分離装置を作製し、本発明のSWNTの分離方法のスケールアップ化を試みた。作製した分離装置は、スペーサ22の空間29は、厚み3mm、幅10mm、長さ5cmであって、電極槽24の内径が8mm、高さが30mmであった。電極としては、白金製のコイル状電極を使用した。前記分離装置に、実施例2と同様のSWNTサスペンションを4.2ml注入し、前記電極をセットし、直流100Vで18時間、電気泳動した。電気泳動終了後、陽極側から順に6つに分画して回収した(各0.7ml)。
【0063】
<電気泳動の結果>
回収した分画の第1フラクション(陽極)及び第6フラクション(陰極)について、金属性及び半導体性SWNTの存在を、励起波長632.8nm及び782nmのラマンシフト、並びに、吸収スペクトルで確認した。リファレンスとして、電気泳動をしていないサスペンションを使用した。なお、励起波長782nmでラマンスペクトルを測定すると、半導体性SWNTであれば、200〜270cm-1の領域に共鳴ラマン散乱光が検出される。また、吸収スペクトルでは、金属性SWNTは、440〜645nmで吸収を示し、半導体性SWNTは、600〜800nm及び830〜1600nmで吸収を示す。励起波長632.8nm及び782nmのラマンシフト、並びに、吸収スペクトルの結果を、それぞれ、図15、16及び17に示す。図15に示すとおり、陽極側の第1フラクションは、ほとんど金属性SWNTが検出されない非常に純度の高い半導体性SWNTであり、反対に、陰極側の第6フラクションは、ほとんど半導体性SWNTが検出されない非常に純度の高い金属性SWNTであることが示された。また、図16においても、第6フラクションは半導体性SWNTがほとんど検出できないことが示される。さらに、図17の結果も、第1フラクションが半導体性SWNTに富み、第6フラクションが金属性SWNTに富むことが示された。なお、図17は、400nmで標準化した。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したとおり、本発明のSWNTの分離方法であれば、簡便かつ大量に低コストで金属性SWNTと半導体性SWNTとをそれぞれ分離回収することができるから、例えば、カーボンナノチューブのデバイス応用分野において非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1(A)は、本発明のSWNTの分離方法を行うための分離装置の一例の模式図であって、図1(B)は、図1(A)の分離装置におけるラマンスペクトル測定の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、電極間の中央(A)、又は、陰極上(B)における金属性及び半導体性SWNTの相対ラマン強度を測定した結果の一例のグラフである。
【図3】図3は、実施例において行った本発明のSWNTの分離方法において、ラマン強度を測定した測定位置を説明する図である。
【図4−1】図4−1は、本発明のSWNTの分離方法を行い測定位置aで測定したラマンスペクトル積分強度及び半導体性SWNT比の結果の一例を示すグラフである。
【図4−2】図4−2は、本発明のSWNTの分離方法を行い測定位置bで測定したラマンスペクトル積分強度及び半導体性SWNT比の結果の一例を示すグラフである。
【図4−3】図4−3は、本発明のSWNTの分離方法を行い測定位置cで測定したラマンスペクトル積分強度及び半導体性SWNT比の結果の一例を示すグラフである。
【図4−4】図4−4は、本発明のSWNTの分離方法を行い測定位置dで測定したラマンスペクトル積分強度及び半導体性SWNT比の結果の一例を示すグラフである。
【図4−5】図4−5は、本発明のSWNTの分離方法を行い測定位置eで測定したラマンスペクトル積分強度及び半導体性SWNT比の結果の一例を示すグラフである。
【図5−1】図5−1は、本発明のSWNTの分離方法を行い測定位置bで測定したラマンスペクトル積分強度及び半導体性SWNT比の結果の一例を示すグラフである。
【図5−2】図5−2は、本発明のSWNTの分離方法を行い測定位置cで測定したラマンスペクトル積分強度及び半導体性SWNT比の結果の一例を示すグラフである。
【図5−3】図5−3は、本発明のSWNTの分離方法を行い測定位置dで測定したラマンスペクトル積分強度及び半導体性SWNT比の結果の一例を示すグラフである。
【図6−1】図6−1は、本発明のSWNTの分離方法を行い測定位置bで測定したラマンスペクトル積分強度及び半導体性SWNT比の結果の一例を示すグラフである。
【図6−2】図6−2は、本発明のSWNTの分離方法を行い測定位置cで測定したラマンスペクトル積分強度及び半導体性SWNT比の結果の一例を示すグラフである。
【図6−3】図6−3は、本発明のSWNTの分離方法を行い測定位置dで測定したラマンスペクトル積分強度及び半導体性SWNT比の結果の一例を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明のSWNTの分離装置の一例を示す模式図である。
【図8】図8は、本発明のSWNTの分離装置のその他の例を示す模式図である。
【図9】図9は、本発明のSWNTの分離装置のその他の例を示す模式図である。
【図10】図10は、本発明のSWNTの分離装置のさらにその他の例を示す模式図である。
【図11】図11は、本発明のSWNTの分離装置のさらにその他の例を示す模式図である。
【図12】図12は、金属性及び半導体性SWNTの相対ラマン強度を測定した結果の一例を示すグラフである。
【図13】図13は、金属性及び半導体性SWNTの相対ラマン強度を測定した結果のその他の例を示すグラフである。
【図14】図15は、金属性及び半導体性SWNTの相対ラマン強度を測定した結果のさらにその他の例を示すグラフである。
【図15】図15は、金属性及び半導体性SWNTの相対ラマン強度を測定した結果のさらにその他の例を示すグラフである。
【図16】図16は、金属性及び半導体性SWNTの相対ラマン強度を励起波長=782nmで測定した結果の一例を示すグラフである。
【図17】図17は、金属性及び半導体性SWNTの吸収スペクトルを測定した結果の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
1・・基板
2・・電極
3・・スペーサ
4・・スライドグラス
5・・サスペンション
6・・・対物レンズ
10・・分離装置
11,12・・電極
13・・流路
14・・導入口
15・・分岐
16・・回収口
20・・分離装置
21・・基板
22・・スペーサ
23・・上部カバー
24・・電極槽
25・・電極
26・・液溜め部
27・・開口部
28・・サスペンション
29・・スペーサ空間
30・・分離装置
31・・容器本体
32、33・・電極
34・・中空隔壁
35、36・・液
【出願人】 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
【識別番号】000205627
【氏名又は名称】大阪府
【出願日】 平成18年9月1日(2006.9.1)
【代理人】 【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ


【公開番号】 特開2008−55375(P2008−55375A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−237840(P2006−237840)