トップ :: B 処理操作 運輸 :: B03 液体による,または,風力テ−ブルまたはジグによる固体物質の分離;固体物質または流体から固体物質の磁気または静電気による分離,高圧電界による分離

【発明の名称】 製鉄ダスト含有スラリーの遠心分離方法
【発明者】 【氏名】濱田 積

【氏名】長井 悟

【氏名】立山 政幸

【氏名】村上 公彦

【氏名】松本 光司

【要約】 【課題】製鉄ダスト含有スラリー中の鉄と亜鉛とを効率よく分離することができる製鉄ダスト含有スラリーの遠心分離方法を提供することを目的とする。

【解決手段】亜鉛と鉄とを含んだ製鉄ダストのスラリーを遠心分離機で遠心分離する製鉄ダストの遠心分離方法において、遠心分離機の遠心力を80〜150Gとする。該スラリーの濃度を3〜18重量%とし、遠心分離機へのスラリーの供給量をΣあたりの供給量で200×10−4L/cmhr〜400×10−4L/cmhrとするのが好ましい。遠心分離機としてはデカンタ型遠心分離機が好ましい。製鉄ダスト含有スラリーとしては、高炉排ガスや転炉排ガスを湿式集塵したスラリーなどが挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛と鉄とを含んだ製鉄ダストのスラリーを遠心分離機で遠心分離する製鉄ダストの遠心分離方法において、
遠心分離機の遠心力を80〜150Gとすることを特徴とする製鉄ダスト含有スラリーの遠心分離方法。
【請求項2】
請求項1において、スラリー濃度を3〜18重量%とし、遠心分離機の遠心沈降面積あたりのスラリー供給量を200×10−4〜400×10−4L/cmhrとすることを特徴とする製鉄ダスト含有スラリーの遠心分離方法。
【請求項3】
請求項1または2において、遠心分離機はデカンタ型遠心分離機であることを特徴とする製鉄ダスト含有スラリーの遠心分離方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄ダストを含んだスラリーを遠心分離する製鉄ダスト含有スラリーの遠心分離方法に係り、特に亜鉛の分離効率の高い製鉄ダスト含有スラリーの遠心分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉排ガスや転炉排ガスを湿式集塵したスラリーなどの製鉄ダスト含有スラリーには鉄だけでなく亜鉛が含まれている。この亜鉛を遠心分離により回収することが特開2004−105801号に記載されている。
【特許文献1】特開2004−105801号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
製鉄ダスト含有スラリーに含まれる鉄分は、有価分として製鉄工程に再利用することが望ましい。一方、同時に含有される亜鉛は、高炉内張りレンガの損傷の原因になるとともに炉壁付着物の生成を助長するため、原料として不適当である。
【0004】
そこで本発明は、製鉄ダスト含有スラリー中の鉄と亜鉛とを効率よく分離することができる製鉄ダスト含有スラリーの遠心分離方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の製鉄ダスト含有スラリーの遠心分離方法は、亜鉛と鉄とを含んだ製鉄ダストのスラリーを遠心分離機で遠心分離する製鉄ダストの遠心分離方法において、遠心分離機の遠心力を80〜150Gとすることを特徴とするものである。遠心分離機に供給するスラリーの濃度を3〜18重量%とし、遠心分離機の遠心沈降面積(以下、これを「Σ」という。)あたりのスラリーの供給量を200×10−4〜400×10−4L/cmhrとすることが好ましい。また、採用する遠心分離機としては、デカンタ型遠心分離機が好ましい。
【0006】
なお、Σは、遠心沈降機のスケールアップに用いる面積の単位をもつ値であって、重力沈降を仮定した場合に必要な沈降面積に相当する。一般に下記算出式で算出できる。
【0007】
Σ=2πωLe(3/4R+1/4r)/g
上記式において、πは円周率、ωは回転角速度、Leはフィードポイントからフロントハブまでの距離(スラリー入口から分離液出口までの距離)、Rは遠心分離機の回転筒内径、rは回転軸から液面までの距離、gは重力の加速度を表わす。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、酸化鉄と酸化亜鉛を両者の粒径差に基づいて効率よく遠心分離することができる。特に、デカンタ型遠心分離機を用いることにより、効率よく遠心分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明で遠心分離の処理対象とするスラリーは、亜鉛と鉄とを含んだ製鉄ダストのスラリーである。この製鉄ダストは、製鉄所において発生するダストであり、特に高炉において発生するダスト及び製鋼工程で発生するダストである。
【0011】
通常、この製鉄ダストはベンチュリースクラバなどの湿式集塵装置で捕集され、シックナーで濃縮され、さらにフィルタープレスで脱水され、回収工程に送られている。本発明では、上記の湿式集塵工程からのダスト含有スラリーを主たる処理対象スラリーとする。
【0012】
通常、これらのスラリー中のダストは鉄(金属鉄及び酸化鉄)を多量に含有すると共に、さらに亜鉛(金属亜鉛及び酸化亜鉛)も相当量含有している。なお、高炉ダストの場合、炭素も多量に含有されている。
【0013】
高炉ダストは、通常の場合、酸化鉄(FeとFeOの合量)30〜50重量%、、酸化亜鉛1〜5重量%、炭素30〜55重量%を含んでいる。
【0014】
この高炉ダスト中の酸化鉄の粒径は1〜100μm、酸化亜鉛の粒径は10μm以下であり、細粒ダストに亜鉛が多く含まれていることが分かっている。
【0015】
転炉ダストは、通常の場合、酸化鉄(FeとFeOの合量)60〜70重量%、酸化亜鉛0.2〜0.5重量%、炭素1〜2重量%を含んでいる。
【0016】
湿式集塵装置から取り出されるこれらの製鉄ダストのスラリー濃度は、通常1〜5重量%程度である。
【0017】
本発明では、このようなスラリーをシックナーで沈澱濃縮し、工水等でスラリー濃度を希釈調整後、遠心分離機で遠心分離する。用いる遠心分離機としては、湿式サイクロンよりデカンタ型遠心分離機が好適である。周知の通り、湿式サイクロンは液体自身に流速を付与して遠心力を確保するため、比重,粘性などスラリー性状の変動が分離効率に大きく影響するためである。一方、デカンタ型遠心分離機は、原液スラリーを高速回転する回転ボウル内に導入して、遠心効果により比重の重い固形物(ケーキ)を、回転ボウル内壁へ沈降分離し、同時に回転ボウルと若干の差速を有して回転するスクリュウコンベヤによって、沈降固形物を傾斜部(ビーチゾーン)側に移送し、さらに固形物をこのビーチゾーンをスクリュウコンベヤにて掻揚して脱液し、回転ボウルに設けられるケーキ排出口から機外に排出するよう構成されている。
【0018】
本発明では、この遠心分離機に製鉄ダスト含有スラリーを供給して遠心力を80〜150G、好ましくは100〜150Gで遠心分離を行う。遠心分離機に供給する製鉄ダスト含有スラリーの濃度は3〜18重量%、好ましくは5〜10重量%とし、遠心分離機の遠心沈降面積あたりのスラリー供給量を200×10−4〜400×10−4L/cmhrとすることが好ましい。
【0019】
遠心分離機の遠心力が80Gよりも低いと、高比重固形物(粗粒ダスト)の分離が不十分であり、鉄及び亜鉛等の固形物の分離効率が低下する。また、80G以下では安定運転ができない。一方、150Gよりも高い場合には亜鉛が多く含まれる低比重固形物(細粒ダスト)も選鉱液から分離され、高比重固形物(粗粒ダスト)とともに回収されるため分離効率が悪くなる。また、遠心分離機に供給するスラリー濃度が3重量%よりも低いと、固液分離が促進されるため処理効率が悪く、18重量%よりも高いと、高比重固形物(粗粒ダスト)の分離が不十分となり、鉄と亜鉛との分離効率が悪くなる。更に、遠心分離機の遠心沈降面積あたりのスラリー供給量が200×10−4L/cmhrよりも小さいと鉄と亜鉛との分離効率が悪くなり、400×10−4L/cmhrよりも大きいと、機械的負荷が高くなりすぎて連続運転ができない可能性がある。
【実施例】
【0020】
〔実験例〕高炉ダストとして、組成が酸化鉄(FeとFeOの合量)32〜38重量%、酸化亜鉛1.4〜3.8重量%、炭素32〜41重量%のダストを含んだスラリーを遠心分離機で処理した。遠心分離機の回転数、スラリー濃度、スラリー供給量を種々変えて分離効率を測定した。用いた遠心分離機は巴工業株式会社製のデカンタ型遠心分離機PTM006である。スラリーについてはタンク中で所定濃度となるように水を添加し、十分に攪拌したものをポンプによって遠心分離機に供給した。
【0021】
(1) 遠心力と亜鉛除去率の関係を求める試験
スラリー濃度が3〜9重量%のスラリーを700L/hr又は900L/hrで供給し、遠心力を100G,150G又は200Gとして遠心分離を行い、亜鉛除去率を測定した。遠心力100G、供給量700L/hrのときΣあたりの供給量は189×10-4/cmhr、遠心力100G、供給量900L/hrのときΣあたりの供給量は243×10-4/cmhrとなる。なお、Σ値は遠心力に比例する。
【0022】
なお、亜鉛除去率は、供給するスラリー中の全亜鉛の量と、固形物として回収したケーキ中の全亜鉛の量から計算される。
【0023】
結果を第1図に示す。第1図の通り、遠心力を高くすると亜鉛除去率は低下する。これは、遠心力が高くなると、ダストの沈降量が増え、ケーキ中に取り込まれる亜鉛量が増加するためである。第1図より、遠心力は150G以下が好ましいことが認められる。
【0024】
(2) 供給量とケーキの固形物濃度との関係を求める試験
スラリーとして、濃度3.0重量%、4.1重量%、4.7重量%、7.0重量%、10.5重量%、12.5重量%、の6種類のものを用いた。各スラリーの供給量を500〜1500L/hrの範囲(Σあたりの供給量で135×10−4L/cmhr〜405×10−4L/cmhr)で変化させ、ケーキの固形物濃度を測定した。結果を第2図に示す。
【0025】
第2図の通り、供給量を多くするとケーキの固形物濃度が上昇する。これは、供給量を多くすると、液の機内滞留時間が短くなり、粒径の小さい炭素分が沈降しにくくなり、ケーキ中の鉄などの高比重分の割合が相対的に増大するためである。第2図より、供給量はΣあたりの供給量で200×10−4L/cmhr以上(流量としては、740L/hr以上)が好ましいことが認められる。
【0026】
(3) 供給量と固形物(SS)回収率の関係
上記(2)の試験において、測定した各供給液条件における供給量と固形物回収率の関係を第3図に示す。いずれの供給液条件でも供給量を多くすると固形物回収率は低下している。これは、供給量を多くすると液の機内での滞留時間が短くなり、固形物が沈降せずに分離液側に流出するためである。第3図より、固形物回収率70%以上を得るためには、供給量はΣあたりの供給量で400×10−4L/cmhr以下(流量として約1500L/hr以下)が好ましいことが認められる。
【0027】
(4) 供給量と亜鉛除去率の関係
スラリーとして、濃度3.0重量%、4.1重量%、4.7重量%、7.0重量%、10.5重量%、12.5重量%、の6種類のものを用いた上記(2)の試験において、各供給液条件における供給量と亜鉛除去率の関係を第4図に示す。いずれの供給条件でも供給量を多くすると亜鉛除去率は上昇傾向を示す。これは、供給量を多くすると液の滞留時間が短くなるために、亜鉛分が沈降せずに分離液側に流出するためである。供給量がΣあたりの供給量で200×10−4L/cmhr以上で全ての供給液条件で亜鉛除去率は80%以上となった。第4図より、供給量はΣあたりの供給量で260×10−4L/cmhr以上がさらに好ましいことが認められる。
【0028】
(5) 供給液濃度と亜鉛除去率の関係
上記(2)に示した各スラリーをΣあたりの供給量で200×10−4L/cmhr以上としたとき供給液濃度と亜鉛除去率の関係を第5図に示す。第5図の通り、供給液濃度を高くすると亜鉛除去率は低下傾向を示す。これは、濃度が高いと供給液の固形物の分散が不十分となり、亜鉛分が鉄分と共に沈降するためであると考えられる。
第5図より、75%以上の亜鉛除去率を得るためには、スラリー濃度18重量%以下が好ましいことが認められる。
【0029】
(6) 実験例のまとめ
(i) 遠心力は低い方が亜鉛除去率は高くなる。最も適正な遠心力は約100Gである。
(ii) 供給量を多くするとケーキの固形物濃度、亜鉛除去率は共に上昇傾向を示し、SS回収率は低下傾向を示す。
(iii) 供給液濃度を高くすると亜鉛除去率は低下傾向を示す。
【0030】
〔実施例〕
高炉ダストとして、組成が酸化鉄(FeとFeOの合量)31〜38重量%、酸化亜鉛2.7〜4重量%、炭素37〜44重量%のダストを含んだスラリーを遠心分離機(巴工業株式会社製のデカンタ型遠心分離機PTM470)で処理した。
【0031】
処理条件は次のとおり。
遠心力:100G(ω:590rpm)
スラリー濃度:7〜18
Σあたりの供給量:200×10−4L/cmhr〜240×10−4L/cm
r(16.7〜20m/hr)
処理の結果、酸化鉄の回収率は100%であり、亜鉛除去率は84.5%であった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】遠心力と亜鉛除去率の関係を求める試験結果を示すグラフである。
【図2】供給量とケーキの固形物濃度との関係を求める試験結果を示すグラフである。
【図3】供給量と固形物回収率との関係を求める試験結果を示すグラフである。
【図4】供給量と亜鉛除去率との関係を求める試験結果を示すグラフである。
【図5】供給液濃度と亜鉛除去率との関係を求める試験結果を示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
【識別番号】000004581
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
【識別番号】591162022
【氏名又は名称】巴工業株式会社
【出願日】 平成19年3月2日(2007.3.2)
【代理人】 【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛


【公開番号】 特開2008−212809(P2008−212809A)
【公開日】 平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願番号】 特願2007−52975(P2007−52975)