トップ :: B 処理操作 運輸 :: B03 液体による,または,風力テ−ブルまたはジグによる固体物質の分離;固体物質または流体から固体物質の磁気または静電気による分離,高圧電界による分離

【発明の名称】 粒子分離装置および分離方法
【発明者】 【氏名】大木 達也

【氏名】四元 弘毅

【氏名】小林 幹男

【要約】 【課題】特定の条件下で遠心力を付与することにより、粒径に関係なく微粒子を比重別に分離可能とする技術の実現を図る。

【構成】基台11と、基台11上で回転する円盤型容器13と、懸濁液供給タンク15を有し、円盤型容器13は、その回転中心の周囲に周方向に等間隔で配設された複数の扇形遠心分離槽14と、粒子供給筒21を備え、複数の扇形遠心分離槽14は、それぞれ周側壁16と底壁17とから成り互いに独立したくぼみとして形成されており、粒子供給筒21は、前記円盤型容器13の中心部から前記扇形遠心分離槽14に向けて前記懸濁液を放出するように設けられており、懸濁液供給タンク15から供給される懸濁液に含まれる粒子を遠心分離槽の外側壁の内面に周方向に区画され複数の粒子回収ポケット22に分別する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、該基台上で一定回転する円盤型容器と、懸濁液供給タンクを有し、該懸濁液供給タンクから供給される懸濁液に含まれる粒子を前記円盤型容器内で分別する粒子分離装置であって、
前記円盤型容器は、その回転中心の周囲に周方向に配設された複数の遠心分離槽と、粒子供給筒と、蓋を備えて成り、
前記複数の遠心分離槽は、それぞれ内周壁と底壁とから成り互いに独立したくぼみとして形成されており、
前記粒子供給筒は、前記円盤型容器の中心部から予め水で満たされた前記遠心分離槽に向けて前記懸濁液中の粒子を放出し、大比重粒子の反回転方向の移動距離を、小比重粒子の移動距離に比べて大きくするとともに、同一比重粒子内では、粒径が大きいほど反回転方向の移動距離が大きくなる構成であることを特徴とする粒子分離装置。
【請求項2】
基台と、該基台上で一定回転する円盤型容器と、懸濁液供給タンクを有し、該懸濁液供給タンクから供給される懸濁液に含まれる粒子を前記円盤型容器内で分別する粒子分離装置であって、
前記円盤型容器は、その回転中心の周囲に周方向に配設された複数の遠心分離槽と、粒子供給筒と、蓋を備えて成り、
前記複数の遠心分離槽は、それぞれ内周壁と底壁とから成り互いに独立したくぼみとして形成されており、
前記粒子供給筒は、前記円盤型容器の中心部から予め水で満たされた前記遠心分離槽に向けて前記懸濁液中の粒子を放出し、小比重粒子の反回転方向の移動距離を、大比重粒子の移動距離に比べて大きくする構成であることを特徴とする粒子分離装置。
【請求項3】
前記遠心分離槽の内周壁の外側壁の内面には、周方向に区画されて成り、分別された小比重粒子と大比重粒子を受ける複数のポケットが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子分離装置。
【請求項4】
基台上で一定回転する円盤型容器に、懸濁液供給タンクから懸濁液を供給し、該懸濁液に含まれる粒子を、前記円盤型容器内で分別する粒子分離方法であって、
前記円盤型容器は、その回転中心の周囲に周方向に等間隔で配設された複数の遠心分離槽と、粒子供給筒と、蓋を備え、前記複数の遠心分離槽は、それぞれ内周側壁と底壁とから成り互いに独立したくぼみとして形成されており、
前記懸濁液中粒子を前記粒子供給筒を通して、前記円盤型容器の中心部から予め水で満たされた前記遠心分離槽に向けて放出し、大比重粒子の反回転方向の移動距離を、小比重粒子の移動距離に比べて大きくするとともに、同一比重粒子内では、粒径が大きいほど反回転方向の移動距離が大きくなる構成であることを特徴とする粒子分離方法。
【請求項5】
基台上で一定回転する円盤型容器に、懸濁液供給タンクから懸濁液を供給し、該懸濁液に含まれる粒子を、前記円盤型容器内で分別する粒子分離方法であって、
前記円盤型容器は、その回転中心の周囲に周方向に等間隔で配設された複数の遠心分離槽と、粒子供給筒と、蓋を備え、前記複数の遠心分離槽は、それぞれ内周側壁と底壁とから成り互いに独立したくぼみとして形成されており、
前記懸濁液中粒子を前記粒子供給筒を通して、前記円盤型容器の中心部から予め水で満たされた前記遠心分離槽に向けて放出し、小比重粒子の反回転方向の移動距離を、大比重粒子の移動距離に比べて大きくする構成であることを特徴とする粒子分離方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁液中の比重別又は比重別かつ粒径別によって分離する粒子分離装置及び分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比重の異なる2種以上の粒子に対し、水中運動の速度差を利用して比重別あるいは粒径別に分離する装置(ジグ、テーブル、サイクロン等およびその改良装置)が産業分野の各所で利用されている。
【0003】
本出願人は、すでに、粒子の比重の大小による沈降速度差を利用し、高比重粒子と低比重粒子を比重分離する粒子の比重分離方法において、粒子の沈降方向に振動を与え、粒子の比重、振動の周波数、振幅に応じて低比重粒子の沈降遅延を高比重粒子よりも大きくして、同速度で沈降する異比重粒子の粒径比である等速沈降比を拡大する粒子の比重分離方法を提案している(特許文献1参照)。
【0004】
又、微粒子を液体から固液分離する遠心分離装置では、モータで隔壁が回転するような構成は知られている(特許文献2参照)。
【0005】
又、本出願人は、特定の条件下で遠心力を付与することにより、比重に関係なく微粒子を粒径別に分離可能とする手段をすでに先行出願している(特願2006−003044参照)。
【特許文献1】特開2003−340314号公報
【特許文献2】特開昭63−62562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
比重の異なる2種以上の粒子に対し、水中運動の速度差を利用して比重別あるいは粒径別に分離する装置において、沈降速度に代表される水中の粒子運動速度は、粒子の比重と粒径(投影断面積)の両方に依存するため、大比重-小粒径の粒子と、小比重-大粒径粒子では同じ速度で運動するものや、小比重の方が速い速度で運動するものなどが存在する。
【0007】
したがって、これら粒子群を比重別に精度良く分離するには、大小比重粒子相互の混入を防止するため、大比重粒子より速度が速い大粒径の小比重粒子や、小比重粒子より速度が遅い小粒径の大比重粒子を事前に除いておかなければならない。
【0008】
これら特定の粒径の粒子を事前に比重別に取り除くことはできないので、通常は、篩い分けなど、比重に無関係に粒径別分離できる方法で特定の粒度幅に調整される。事前の粒度調整は数mm〜数cm程度の粒子では容易であるが、50〜100μmより小さな微粒子を特定粒度幅に調整することは、工業的には極めて困難である。
【0009】
従来の微粒子用分離装置では、遠心場を付与して粒子速度を増大させる仕組みが備わっているものが多い。しかし、遠心力は重力と同様に粒子の比重と粒径の両方に依存する力であり、分離に要する時間の短縮はできるが、事前調整すべき粒度幅を広げるなどの効果はほとんどない。
【0010】
したがって、従来技術では、特に多分散系(粒度幅の広い)微粒子の高精度な比重別分離(あるいは粒径別分離)は不可能であった。このような多分散系微粒子に対し、水中運動の差を利用して高精度に比重別分離をするには、
(1)比重分離時の粒子運動を制御して、粒子径とは無関係に微粒子を精度良く粒子比重別に分離するか、又は、分離の粒子径依存度合いを低減させて、事前調整すべき粒度幅を拡大させることで、事実上、事前の粒度調整を不要する方法などにより、1段階のプロセスで比重別分離する。
(2)比重分離で要求される粒度幅に事前調整可能な、粒子比重とは無関係に微粒子を精度良く粒径別分離できる技術を確立し、その後、既存の比重別分離を実施して、2段階のプロセスで比重別分離する。
のいずれかが必要である。
【0011】
本出願人が提案した前述の特許文献に記載発明では、水に特定の鉛直振動を付与することによって粒子運動を制御し、事前調整すべき粒度幅を拡大する方法(上記(1)に相当)である。しかし、この方法では変化可能な粒度幅に限界があるため、粒度調整を完全に不要にすることは難しい。
【0012】
又、本出願人が提案した先行出願(特願2006−003044)に係る発明は、このような従来の問題の解決を目的とする上記(2)に相当する技術で、特定の条件下で遠心力を付与することにより、比重に関係なく微粒子を粒径別に分離可能とする手段である。
【0013】
本発明は、この先行出願に係る発明をさらに改善することを目的とするものであり、この先行出願に係る発明とは異なる特定の条件下で遠心力を付与することにより、上記(2)の不完全な状態を利用し、比重別あるいは、粒径別かつ比重別分離の実現を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するために、基台と、該基台上で一定回転する円盤型容器と、懸濁液供給タンクを有し、該懸濁液供給タンクから供給される懸濁液に含まれる粒子を前記円盤型容器内で分別する粒子分離装置であって、前記円盤型容器は、その回転中心の周囲に周方向に配設された複数の遠心分離槽と、粒子供給筒と、蓋を備えて成り、前記複数の遠心分離槽は、それぞれ内周壁と底壁とから成り互いに独立したくぼみとして形成されており、前記粒子供給筒は、前記円盤型容器の中心部から予め水で満たされた前記遠心分離槽に向けて前記懸濁液中の粒子を放出し、大比重粒子の反回転方向の移動距離を、小比重粒子の移動距離に比べて大きくするとともに、同一比重粒子内では、粒径が大きいほど反回転方向の移動距離が大きくなる構成であることを特徴とする粒子分離装置を提供する。
【0015】
さらに、本発明は上記課題を解決するために、上記課題を解決するために、基台と、該基台上で一定回転する円盤型容器と、懸濁液供給タンクを有し、該懸濁液供給タンクから供給される懸濁液に含まれる粒子を前記円盤型容器内で分別する粒子分離装置であって、前記円盤型容器は、その回転中心の周囲に周方向に配設された複数の遠心分離槽と、粒子供給筒と、蓋を備えて成り、前記複数の遠心分離槽は、それぞれ内周壁と底壁とから成り互いに独立したくぼみとして形成されており、前記粒子供給筒は、前記円盤型容器の中心部から予め水で満たされた前記遠心分離槽に向けて前記懸濁液中の粒子を放出し、小比重粒子の反回転方向の移動距離を、大比重粒子の移動距離に比べて大きくする構成であることを特徴とする粒子分離装置を提供する。
【0016】
前記遠心分離槽の内周壁の外側壁の内面には、周方向に区画されて成り、分別された小比重粒子と大比重粒子を受ける複数のポケットが形成されていることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は上記課題を解決するために、基台上で一定回転する円盤型容器に、懸濁液供給タンクから懸濁液を供給し、該懸濁液に含まれる粒子を、前記円盤型容器内で分別する粒子分離方法であって、前記円盤型容器は、その回転中心の周囲に周方向に等間隔で配設された複数の遠心分離槽と、粒子供給筒と、蓋を備え、前記複数の遠心分離槽は、それぞれ内周側壁と底壁とから成り互いに独立したくぼみとして形成されており、前記懸濁液中粒子を前記粒子供給筒を通して、前記円盤型容器の中心部から予め水で満たされた前記遠心分離槽に向けて放出し、大比重粒子の反回転方向の移動距離を、小比重粒子の移動距離に比べて大きくするとともに、同一比重粒子内では、粒径が大きいほど反回転方向の移動距離が大きくなる構成であることを特徴とする粒子分離方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明は上記課題を解決するために、基台上で一定回転する円盤型容器に、懸濁液供給タンクから懸濁液を供給し、該懸濁液に含まれる粒子を、前記円盤型容器内で分別する粒子分離方法であって、前記円盤型容器は、その回転中心の周囲に周方向に等間隔で配設された複数の遠心分離槽と、粒子供給筒と、蓋を備え、前記複数の遠心分離槽は、それぞれ内周側壁と底壁とから成り互いに独立したくぼみとして形成されており、前記懸濁液中粒子を前記粒子供給筒を通して、前記円盤型容器の中心部から予め水で満たされた前記遠心分離槽に向けて放出し、小比重粒子の反回転方向の移動距離を、大比重粒子の移動距離に比べて大きくする構成であることを特徴とする粒子分離方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
従来の水中粒子の運動差を利用した分離技術では、比重別分離を行なう際には対象粒子の粒径が揃っている必要があり、粒径別分離を行なう際は多くは比重差のない単一種粒子群のみが分離対象となっていた。本発明によれば、比重や粒径に幅のある粒子群について比重別、粒径別の高精度な分離が可能となる。
【0020】
また、従来の「粒子の比重分離方法」(例えば、特開2003−340314号公報参照)は、粒径は10〜100μmの間の一部の粒径領域に限られ、また、振動による沈降遅延効果を応用したものであるため分離速度が著しく遅いなどの欠点があったが、本発明では、適用粒度に理論上の制限はなく、また、遠心場を応用したことにより分離速度も極めて早い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る懸濁液中の粒子を比重別あるいは粒径別によって分離する粒子分離装置及び分離方法の実施の形態を実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。
【0022】
(基本構成)
本発明の基本的な構成及び原理は前記先行発明(特願2006-003044)と共通しており、以下の通りである。通常の遠心分離機あるいはサイクロンなどでは、容器内は懸濁液状の粒子で満たされ、また、その水は回転方向へ移動が可能であるので、水および粒子の両者に対し回転から遅れをとる方向にコリオリ力(回転により回転方向に作用する「みかけ」の力)が生じる。このコリオリ力は、遠心分離速度の低下に繋がるものとしてその対策が検討されてきた。
【0023】
円盤型容器内に放射状の隔壁を設ける(特許文献2参照)と、水の回転が防止されるため遠心力が粒子に効率的に作用し、遠心分離速度が低下しないことが既に知られている。本発明に係る分離装置も外見上はこの隔壁を持つタイプの遠心分離機と似ているが、分離の概念は異なり、水の往来を完全に遮断するとともに、粒子の供給方法、回収方法などを変えることにより、粒径別分離を可能にするものである。この点を、概念図である図1と、作用を説明する図2で説明する。
【0024】
図1に概念図を示すように、円盤型の容器1内に清澄水を満たし、円盤型の容器1の回転軸2を中心とした放射状の隔壁3により水の往来が完全にできない扇形の部屋4を設け、軸2を中心に一方向に回転させる。あるいは、任意形状の容器内に清澄水を満たし、容器外の位置に回転軸を設けて容器を一方向に回転させる。
【0025】
任意の回転速度で容器1の回転を維持した状態で、粒子供給筒5から扇形の部屋4内に遠心力のかかる方向で粒子6を解き放つ。清澄水は、隔壁3によって、部屋4内に完全に拘束されているため、清澄水内を移動可能な粒子6にのみコリオリ力が働く。コリオリ力は見かけ上の力で、その大きさ、つまり回転方向からの遅れの度合いは、粒子6の慣性と回転する水の粘性のバランスによって決まる。
【0026】
外部からみれば、粒子6は容器1の軸を中心に回転しながら、遠心作用により徐々に外側に移動する。すなわち、粒子6は渦巻き状の軌跡を描きながら外側へ移動する。ここで遠心方向に作用する遠心力は、重力と同様に粒子6の比重と粒径の両者に依存する。
【0027】
一方、回転方向(厳密には回転の接線方向)に作用する力は、主として水の抵抗力である。これは水が回転することによって、粒子と水の間に速度差が生じ、水の回転と同方向に粒子6を動かそうとする力であり、粒子6の比重に無関係に、粒子体積だけに依存する力である。
【0028】
遠心場(遠心作用が働く場)では、粒子6は回転方向に水を追随しながら、外側に行くに従って回転方向の速度を増大させるので、すなわち、粒子6に水の抵抗力が加わることになる。ここで、同一粒径粒子では、回転方向の水と粒子の速度差に依存して抵抗力を受けるが、ある粒径では、異なる粒子比重間の速度差の違いが小さく、質量の小さい小比重粒子の方が運動は大きくなる。つまり、同一時間内の運動を比較すると、小比重粒子は水を良く追随し、大比重粒子になるほど水から遅れるようになる。
【0029】
しかし、この間、遠心方向の運動は小比重粒子の方が小さく、大比重粒子の方が大きくなる。すなわち、図2に示すように、比重の異なる同一粒径粒子の場合、同程度の抵抗力を受けることによって生じる回転方向の運動差と、異なる遠心力を受けることによって生じる遠心方向の運動差が加味されることにより、移動速度は小比重粒子ほど遅く、大比重粒子ほど速くなるものの、運動の軌跡、すなわち移動方向はほぼ同じとなる場合がある。
【0030】
全ての粒子がこの条件に従えば、図3Bのような粒子配列となるが、実際には回転方向の抵抗力差が主として粒子の粒径により異なるため、ある粒径領域の粒子のみがこのような配列となる。
【0031】
以上のとおり本発明の構成、原理は先行発明と共通しているが、本発明の特徴は以下のとおりである。即ち、先行発明におけるその粒径領域は粒子比重の組み合わせにより異なるが、ガラス(比重約2.5)とジルコニア(比重約6.1)の組み合わせによる回転数3500rpmによる検証実験では、およそ100μm前後の粒子が上記の粒度領域に該当した。
【0032】
一方、前記検証実験の条件において、およそ200μmより大きな粒度領域になると、次第に図3(c)のように大比重粒子の反回転方向の移動距離が、小比重粒子の反回転方向の移動距離に比して大きくなる。
【0033】
このとき、同一比重粒子では粒径が大きいほどその移動距離も大きくなるので、1段階のプロセスで、比重別に粒子を分離しつつ、各比重の粒子を粒径別に分離することが可能となる。
【0034】
また、この傾向は、粒径が大きくなるほど、回転数が早くなるほど顕著となるので、図3(c)のような粒子配列となる閾値は分離条件(粒径や回転数など)によって変動する。
【0035】
さらに、静止水中で同じ速度で沈降する、粒径が小さな大比重粒子と粒径が大きな小比重粒子を対象とすれば、比較的低回転(例えば700rpm程度)で分離を行うと、図3(d)のように大比重粒子の反回転方向の移動距離が、小比重粒子に比して小さくなる条件が存在する。
【0036】
上記条件が存在することは、慣性系におけるX−Y平面上の粒子運動を、x方向およびy方向について下記のBBO式を、Runge-Kutta Gill法により微分方程式を解くことにより、計算上確認した。尚、y方向の式も下記の式中の変数xを変数yに置き換えた式になる。


但し、
d:粒子径
x:x方向の位置
ρp:粒子密度
ρf:水密度
Re:レイノルズ数
ux:x方向の水速度
vx:x方向の粒子速度
χ:付加質量係数(0.5を採用)
ω:水の角速度
【0037】
上記微分方程式によれば、中心から外に向かって螺旋運動する粒子軌跡が得られる。本発明の条件では水と水槽は同一の回転運動をするので、回転軸2を基準とした回転座標系に座標変換すると、図5のような粒子軌道が得られる。図5は、回転軸2を中心に左から右方向に回転するとき、回転軸2から0.007m離れたノズル先端から粒子を放出した際の粒子の軌跡を計算した例を示すものである。
【0038】
上記計算結果を用いて、比重6.1のジルコニア球形粒子と比重2.49のガラスの球形粒子を所定の回転速度で水槽を回転させた場合の粒径と射出角の関係を計算した結果を図6に示す。図6は、回転速度がそれぞれ700rpmの場合の計算結果を示す。
【0039】
粒子の比重、粒子径、水槽の回転数、粒子の放出点の距離(例えば、ノズルの長さ)等によって変化する。そのため、図6は計算の一例に過ぎないが、この計算例によると、静止水中で同じ速度で沈降する、粒径50μmのジルコニア粒子と粒径約93μmのガラス粒子を、その射出角が異なるようになることが分かる。上記の場合、更に、低比重粒子としてのガラス粒子が、高比重粒子としてのジルコニア粒子よりも外側、すなわち回転と反対方向の位置に放出されることが理解できる。
【0040】
水槽内に整流板を設置するなど、水槽内でわずかに生じる水の対流を防止する等の対策を講じ、理想的な分離状態を実現できれば、理論上、この微細粒子領域の粒子を比重別に分離することが可能である。
【0041】
以上説明した原理を、粒子分離装置及び分離方法として採用すれば、種々の比重粒子が混在した多分散系微粒子を1段のプロセスで高精度な比重別分離あるいは、比重別かつ粒径別分離を行うことが可能である。
【実施例1】
【0042】
図4は、本発明に係る粒子分離装置及び分離方法の実施例を説明する図である。この粒子分離装置10は、定置された基台11上に、基台11から突設した支持軸12を中心に円盤型容器13が、図示しないモータ等の駆動装置により、回転可能に配置されている。
【0043】
円盤型容器13には扇形遠心分離槽14が支持軸12を中心に対称的に一対設けられている。なお、円盤型容器13における扇形遠心分離槽14の設置数、設置箇所は、1つでもよいし、複数でもよく、円盤型容器13の規模、分離処理量等により適宜、設計されるべき設計事項である。
【0044】
円盤型容器13の中心部において、支持軸12の周囲には、分離されるべき粒子が液体中に混合された状態で含まれる懸濁液を収容し、扇形遠心分離槽14(前記基本構成における「扇形の部屋4」に相当する。)に供給する懸濁液供給タンク15が設けられている。
【0045】
扇形遠心分離槽14は、内周壁16と底壁17とから成るくぼみとして構成されている。内周壁16は、内側壁18、円周方向に区画する隔壁(側壁)19及び外側壁20が一体的に連続して形成されている。扇形遠心分離槽14内には、水等の液体が充填されており、円盤型容器13が回転しても扇形遠心分離槽14内に拘束され、流れ出ないように構成されている。
【0046】
扇形遠心分離槽14の内側壁18には懸濁液供給タンク15と連通する粒子供給筒(ノズル)21が設けられている。懸濁液供給タンク15内に充填された懸濁液中の粒子は、この粒子供給筒21から扇形遠心分離槽14に供給可能である。
【0047】
扇形遠心分離槽14の外側壁20の内面には、周方向に複数の粒子回収ポケット22が配列されている。各ポケット22は、周方向に隣接する別のポケット22と区画壁23で区画されている。この一連の複数のポケット22のそれぞれに、分離された粒子が収容されることとなる。
【0048】
扇形遠心分離槽14は、上部開口は蓋24で閉じることができるが、この蓋に空気抜き孔25が設けられている。この空気抜き孔25を通して、扇形遠心分離槽14は大気と連通している。
【0049】
(作用)
上記構成から成る粒子分離装置及び分離方法の作用を以下に説明する。扇形遠心分離槽14内の水の乱れを防ぐため、懸濁液供給タンク15内にあらかじめ水を仕込み、空気抜き孔25より気泡を開放後、空気抜き孔25の栓を閉じ、懸濁液供給タンク15の懸濁液投入口(図示しない。)だけが開栓した状態で全ての栓を閉じ密閉状態にする。
【0050】
円盤型容器13を回転させ始め一定回転数で安定したならば、懸濁液供給タンク15と粒子供給筒21を遮断していた弁(図示しない。)を開放し、粒子供給筒21を経て、扇形遠心分離槽14 (図3の装置例では2槽型となっている)へ粒子を放つ。
【0051】
なお、懸濁液の供給については、特に図示はしないが、懸濁液供給タンクを円盤型容器13の上方に設け、円盤型容器13の中心部に供給室を設け、懸濁液供給タンクからこの供給室に通じるパイプを設け、このパイプを通して懸濁液中の粒子を供給室内に落とし込むように構成するとよい。そして、粒子回収ポケット22内の粒子を含む水を粒子とともに装置外に排出する構成としてもよい。
【0052】
また、分離槽に供給する際には、粒子は粒子供給筒21を通じて極力同じ点から放たれることが重要である。このとき、粒子供給筒21が非常に太かったり、あるいは、遠心分離槽内の水の乱れが大きかったりすると、遠心分離槽に放たれた粒子群は容易に拡散してしまい、粒径別分離の効果は失われる。すなわち、粒子供給筒21の内径は細いほど分離精度が良くなる。
【0053】
本発明では、水槽内に所定の射出角で放出された粒子が円周上の異なる位置のポケットに回収されることにより、懸濁液に含まれる粒子の分離を行うので、ノズルから放出される際の条件がなるべく同一であることが望ましい。ノズル内を遠心方向に移動する粒子は、回転と逆方向にコリオリ力を受けている。そのため、ノズル径/粒径比が200程度以内であれば、図7に示すように、粒子はノズル内壁の回転方向とは逆側の壁に押しつけられながら放出点までたどり着く。しかし、ノズルの内径が粒子の粒径と比較して著しく太いと、粒子が放出される点が同一にならない場合がある。
【0054】
例えば、平均粒径が0.1mmの粒子群の場合、ノズルの内径が1mm〜5mmの範囲内であれば、粒子はほぼ同一の点から放出されると考えられる。しかし、内径が粒径に比して極めて大きいノズル、例えば、内径10cm程度のものを用いた場合、ノズル内の水の対流の発生等により、同一点からの粒子の放出が妨げられるおそれがある。
【0055】
また、遠心分離槽内の水は分離槽に対してなるべく静止していることが望ましい。特に慣性の小さな微細粒子の比重別分離を図3(d)のような形態で実現するには、分離槽内の特に粒子が通過する経路については、水は分離槽に対して完全に静止していなければならない。
【0056】
以上のように本件の分離法によれば、従来では分離が困難である粒度幅を持つ数μm以上の多分散系微粒子の比重分離及び粒径分離を、1段のプロセスで理論上ほぼ完璧に(分離効率100%近くで)行うことが可能である。
【0057】
以上、本発明に係る粒子の粒子分離装置および分離方法を実施例挙げて説明したが、本発明の実施例は上記実施例に限定されることはなく、特許請求の範囲の技術的範囲内でいろいろな態様があることは言うまでもない。
【産業上の利用の可能性】
【0058】
本発明に係る懸濁液中の粒子を粒径別あるいは比重別によって分離する粒子分離装置及び分離方法は、懸濁液中の粒子を粒径別あるいは比重別によって分離することを必要とする各種産業分野(鉱業ならびに各種産業分野の製造工程、リサイクルおよび環境修復プロセスにおける粒子分離工程等)に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る粒子分離装置及び分離方法の基本的な構成及び方法を説明する図である。
【図2】本発明に係る粒子分離装置及び分離方法の基本的な構成及び方法の作用(円盤型容器内の遠心分離槽を上部から見た図で分離槽内の粒子の動きを説明)を説明する図である。
【図3】本発明に係る粒子分離装置及び分離方法の基本的な構成及び方法の作用(円盤型容器内の遠心分離槽を上部から見た図で分離槽内の粒子の動きを説明)を説明する図である。
【図4】本発明に係る粒子分離装置及び分離方法の実施例1を説明する図である。
【図5】回転軸2から0.007m離れたノズル先端から粒子を放出した際の粒子の軌跡の計算例を示す図である。
【図6】比重6.1のジルコニア球形粒子と、静止水中でそのジルコニア粒子と同じ速度で沈降する比重2.49のガラスの球形粒子を回転速度700rpmで水槽を回転させた場合の粒径と射出角の関係を計算した結果を示す図である。
【図7】ノズル内の粒子の動きを示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 円盤型の容器
2 容器の回転軸
3 隔壁
4 扇形の部屋
5 粒子供給筒
6 粒子
7 大きな比重の粒子
8 小さな比重の粒子
10 粒径別分離装置
11 基台
12 支持軸
13 円盤型容器
14 扇形遠心分離槽
15 懸濁液供給タンク
16 内周壁
17 底壁
18 内側壁
19 隔壁(側壁)
20 外側壁
21 粒子供給筒
22 粒子回収ポケット
23 区画壁
24 蓋
25 空気抜き孔
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成19年7月13日(2007.7.13)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−49332(P2008−49332A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2007−184742(P2007−184742)