トップ :: B 処理操作 運輸 :: B03 液体による,または,風力テ−ブルまたはジグによる固体物質の分離;固体物質または流体から固体物質の磁気または静電気による分離,高圧電界による分離

【発明の名称】 フィールドフローフラクショネーション装置
【発明者】 【氏名】大久保 邦彦

【要約】 【課題】クロスフロー方式の分離チャンネルにおいて、出口ポート付近でのキャリア溶媒の流速の減少を抑えることでリテンションタイムが極端に長くなることを回避しつつ、微粒子のバンド濃度の大きな増加や周辺効果を抑えて分解能を確保する。

【構成】分離チャンネル50のチャネル高さHを軸方向流F2の流れ方向に沿って狭めることでチャンネル幅Wの狭めの程度は抑える。これにより、出口ポート16側で流路の断面積は小さくなるため溶媒の流速の低下を回避できる。また従来のようにチャンネル高さが一定である場合に比較して出口ポート16付近でのチャンネル幅も広めにできるため、微粒子のバンド幅濃度の増加も抑制でき、広い範囲の拡散係数を有する微粒子に対して高い分解能での分離が行える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア流体が透過可能で且つ分離対象の微粒子が透過しない底壁面とこれに対向する上壁面、及び一対の側壁面を有し、両端に入口ポートと出口ポートとが設けられた分離チャンネルと、該分離チャンネルの入口ポートにキャリア流体を導入する送給手段と、を具備し、前記分離チャンネル内部での入口ポートから出口ポートへ向かうキャリア流体の流れに伴って、該流体の一部をクロスフローとして前記底壁面を通し外部に流出させつつ分離チャンネル内部でのキャリア流体の流れ方向に微粒子を分離するフィールドフローフラクショネーション装置において、
前記分離チャンネルの底壁面と上壁面との間の間隔が、前記キャリア流体の流れ方向の少なくとも一部範囲でその流れ方向に沿って狭められてなることを特徴とするフィールドフローフラクショネーション装置。
【請求項2】
前記分離チャンネルの底壁面と上壁面との間の間隔は、前記キャリア流体の流れ方向の全範囲でその流れ方向に沿って単調に減少するようにされていることを特徴とする請求項1に記載のフィールドフローフラクショネーション装置。
【請求項3】
前記分離チャンネルの底壁面と上壁面との間の間隔は、前記キャリア流体の流れ方向の前半でその流れ方向に沿って単調に減少され、後半で一定とされていることを特徴とする請求項1に記載のフィールドフローフラクショネーション装置。
【請求項4】
前記分離チャンネルの一対の側壁面の間の間隔は、前記キャリア流体の流れ方向の全範囲で一定とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィールドフローフラクショネーション装置。
【請求項5】
前記分離チャンネルの一対の側壁面の間の間隔は、前記キャリア流体の流れ方向に沿って単調に減少するようにされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィールドフローフラクショネーション装置。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールドフローフラクショネーション(Field-Flow Fractionation)を利用して流体に含まれる微粒子を分離・分取するためのフィールドフローフラクションネーション装置に関し、さらに詳しくは、非対称チャンネル構造を採用したクロスフロー方式のフィールドフローフラクショネーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液中に分散されている1nm〜50μm程度の広い範囲の粒径の微粒子を分離して検出したり分取したりするための手法として、従来より、いわゆるクロスフロー方式のフィールドフローフラクショネーション(以下、FFFと略す)が知られている(例えば特許文献1、2など参照)。まず、図7及び図8に基づいてこの分離方法の原理について簡単に説明する。
【0003】
図7はクロスフロー方式FFFの分離チャンネルの基本構造の一例を示す斜視図、図8はこの分離チャンネルの一部の縦断面図である。図7に示すように、分離チャンネル10は、上下に対向して配置された平板状の底壁面11と上壁面12、一対の側壁面13、14を有し、それら4面で囲まれる中空の流路17の両端に入口ポート15と出口ポート16とが設けられている。図8に示すように、上壁面12には多数の開口が形成され、底壁面11は、上壁面12と同様に多数の開口が形成された支持壁11aの内側に、キャリア溶媒(流体)を通過し且つ分離対象の微粒子を通過させない半透膜11bが密着して設けられた構造を有している。ここでは、流路17の横幅(チャンネル幅)はWで一定、流路の高さ(チャンネル高さ)はHで一定である。一例としては、チャンネル幅Wは1〜2cm程度、チャンネル高さHは数十〜200μm程度で、流路17の長さ、つまりチャンネル長Lは20〜30cm程度である。
【0004】
上記のような分離チャンネル10に対し、上壁面12の全体に直交するように上からキャリア溶媒が供給され、これにより、上壁面12の開口を通して流路17内に流れ込み、底壁面11の半透膜11bを通過し支持壁11aの開口を経て下方に抜けるようにキャリア溶媒の流れが形成される。このキャリア溶媒の流れF1をクロスフローと呼ぶ。一方、入口ポート15からは所定の流速で以て分離対象の微粒子が分散されたキャリア溶媒が分離チャンネル10に導入され、これにより流路17には図8に示すように左方から右方に向かう流れF2が形成される。これは微粒子を入口ポート15から出口ポート16に向かって搬送してゆく流れであり軸方向流(或いは、フィールドフロー、チャンネルフロー)と呼ばれる。軸方向流F2とクロスフローF1とはほぼ直交した状態にある。
【0005】
クロスフローF1は底壁面11全体に亘って均一な流速を有し、半透膜11bは微粒子を通さないから、クロスフローF1の流れの粘性の作用により流路17内で微粒子は底壁面11近傍に分布する。微粒子は溶媒中で拡散しようとするから、この微粒子のブラウン運動、即ち拡散とクロスフローF1による力とでバランスが生じ、微粒子の濃度は底壁面11から、
exp(−|U|/D)
但し、|U|:クロスフロー流速、D:拡散係数
で表される指数(減衰)関数分布を示す。
【0006】
一方、入口ポート15から出口ポート16に向かう軸方向流F2はポアズイユ流と呼ばれる層流となり、図8中に示すように、中心が最大流速、底壁面11及び上壁面12において流速ゼロの放物面形状の流速分布を持つ。したがって、壁面11、12から離れるほど軸方向流F2の流速は大きくなり、この軸方向流F2の流速分布と上述したクロスフローF1による微粒子分布との組合せにより、最終的に微粒子の拡散係数に応じて出口ポート16に向かう移動速度が異なり、分離チャンネル10の長さ方向(つまりは軸方向流F2の流れ方向)に拡散係数の相違(通常は粒径の相違)に応じて微粒子の分離が行われることになる。これがクロスフロー方式FFFによる微粒子分離の原理である。
【0007】
しかしながら、上記のような分離チャンネル10の構造では上壁面12と底壁面11との透過性を揃えてクロスフロー流速を均一化することが困難である。また、互いに直交する2つの異なるキャリア溶媒の流れF1、F2を形成する必要があるため、構造が複雑で装置が大形になり、溶媒を送給するポンプも2台必要になる等コストも掛かる。
【0008】
これに対し非対称型のチャンネル構造のFFFが提案され、これによってFFFの実用化が進展してきた。図9は非対称型の分離チャンネル20の縦断面図である。この分離チャンネル20では、上壁面12には開口が設けられず、入口ポート15から供給されたキャリア溶媒が軸方向流F2として流れるに従い、少しずつ半透膜11bを透過し支持壁11aの開口を経て下方に流出し、これが軸方向流F2に略直交するクロスフローF1となる。この構成によれば、分離チャンネル20の構造が簡単で、キャリア溶媒を供給するためのポンプも1台で済むという利点がある。
【0009】
しかしながら、上記のような非対称型分離チャンネル20の場合、入口ポート15から供給されるキャリア溶媒によってクロスフローF1もまかなうため、出口ポート16に近づくに伴い軸方向流F2の単位断面積当たりの流量が減って流速が小さくなる(一次関数的に減少する)。そのため、微粒子が出口ポート16に到達するまでの時間であるリテンションタイムがきわめて遅くなるという問題がある。その結果、分離に時間が掛かるのみならず、特に拡散係数の小さな微粒子では出口ポート16付近に滞留してしまって出口ポート16から流出して来ない場合もある。
【0010】
この問題を解決するために、非特許文献1に記載のような構造の分離チャンネルが提案されている。図10はこの分離チャンネル30の斜視図である。この分離チャンネル30は、入口ポート15から出口ポート16に向かうに従いチャンネル幅Wが一次関数的に狭まるように上面視台形状に形成されている。即ち、両側壁面13、14の間の間隔は軸方向流F2の流れ方向に徐々に狭められている。そのため、出口ポート16に向かうに従い断面積が小さくなる分だけ軸方向流F2の流速が増加するため、上記のようなキャリア溶媒の流量の減少に伴う流速低下の問題が軽減される。ところが、出口ポート16付近でのチャンネル幅が狭くなるため、出口ポート16付近における試料(微粒子)のバンド濃度が数倍高くなり、高濃度である(微粒子の密度が高い)ことによる分解能の劣化が顕在化する。また、チャンネル幅が狭い部分では側壁面13、14と溶媒中の微粒子との相互作用による周辺効果(side effect)が問題となり、これも分解能を低下させる一因となる。
【0011】
また一般に、クロスフローF1の流速が一定であればチャンネル高さHの二乗に反比例して分解能は向上するし、特定の拡散係数を中心に分解能は高くなる。しかしながら、この特定の拡散係数から離れた拡散係数を持つ微粒子については、分解能を十分に高くすることは難しい。そこで、クロスフローF1の流速を時間経過に応じて変化させるようにキャリア溶媒の供給流量を制御することで、分解能の向上を図る方法も提案されている。この方法では、入口ポート15付近での供給溶媒の流速の変化、クロスフローF1の流速の変化、及び軸方向流F2の背圧制御を組み合わせることでクロスフローF1を時間経過に応じて適宜変化させるようにするが、出口ポート16から流出するキャリア溶媒の流速を一定に維持するのは難しく、この流速の変動が微粒子を検出するための検出器に誤差を与えるため、検出精度に問題が生じる。そのため、できるだけ広い範囲の粒子径に対し複雑な流速のプログラム制御を行うことなく、高い分解能が得られるような構造の分離チャンネルが要望されている。
【0012】
【特許文献1】米国特許第4147621号明細書
【特許文献2】米国特許第5193688号明細書
【非特許文献1】リトゼン(A. Litzen)、ワフルンド(K. G. Wahlund)著、「ゾーン・ブロードニング・アンド・ダイリューション・イン・レクタンギュラー・アンド・トラプゾイダル・アシンメトリカル・フロー・フィールド-フロー・フラクショネーション・チャンネルズ(Zone Broadening and Dilution in Rectangular and Trapezoidal Asymmetrical Flow Field-Flow Fractionation Channels)」、アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(American Chemical Society)、1991, 63, p.1001-1007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その主な目的は、軸方向流の流速の低下を抑えながら出口ポート付近での微粒子のバンド濃度の上昇も抑制し、バンド広がりに起因する分解能の劣化を防止することができるフィールドフローフラクショネーション装置を提供することにある。また、本発明の他の目的とするところは、より広い範囲の拡散係数を持つ微粒子に対して高い分解能を達成することができるフィールドフローフラクショネーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従来のフィールドフローフラクショネーション装置における分離チャンネルでは、軸方向流の流れ方向に沿ってチャンネル幅を変えることは行われているものの、チャンネル高さは一定とすることが前提であった。これに対し、本発明に係るフィールドフローフラクショネーション装置では、チャンネル高さを軸方向流の流れ方向に沿って変化させることで分離チャンネルの断面積を変化させ、それによって軸方向流の流速を調整するようにしている。
【0015】
即ち、上記課題を解決するために成された本発明は、キャリア流体が透過可能で且つ分離対象の微粒子が透過しない底壁面とこれに対向する上壁面、及び一対の側壁面を有し、両端に入口ポートと出口ポートとが設けられた分離チャンネルと、該分離チャンネルの入口ポートにキャリア流体を導入する送給手段と、を具備し、前記分離チャンネル内部での入口ポートから出口ポートへ向かうキャリア流体の流れに伴って、該流体の一部をクロスフローとして前記底壁面を通し外部に流出させつつ分離チャンネル内部でのキャリア流体の流れ方向に微粒子を分離するフィールドフローフラクショネーション装置において、
前記分離チャンネルの底壁面と上壁面との間の間隔が、前記キャリア流体の流れ方向の少なくとも一部範囲でその流れ方向に沿って狭められてなることを特徴としている。
【0016】
なお、分離チャンネルは必ずしも底壁面が下側、上壁面が上側に来るように略水平に設置される必要はなく、上下倒置や起立配置など、その設置形態は特に問わない。したがって、ここで言う、底壁面、上壁面、側壁面はクロスフローが下方に抜けると考えた場合の便宜上の呼称であって、実際の設置状態における位置関係を示すものではない。
【0017】
本発明に係るフィールドフローフラクショネーション装置では、軸方向流に沿った方向での分離チャンネルの底壁面と上壁面との間の間隔つまりチャンネル高さが減少されているため、チャンネル高さが一定である場合と比較して、出口ポート側において軸方向流の流速を増加させることができる。これにより、出口ポート側で或る程度チャンネル幅を広げておいても十分な流速を得ることができるため、出口ポート付近での微粒子のバンド濃度の増加を抑制し、周辺効果も抑えて分解能を高めることができる。それと同時に、軸方向流の流速を維持することでリテンションタイムが極端に長くなることを回避し、拡散係数の小さな微粒子も確実に分離チャンネルから吐き出して検出に供することができる。
【0018】
本発明に係るフィールドフローフラクショネーション装置において、チャンネル高さの減少の態様は様々なものが考え得る。即ち、従来、分離チャンネルの平坦な底壁面と上壁面とは互いに平行になるように配置されていたが、例えば底壁面又は上壁面のいずれか一方を他方に対して軸方向流に沿って近づくように傾斜して設けることにより、チャンネル高さを軸方向流の流れ方向に沿って一次関数的に単調減少させることができる。また、底壁面又は上壁面のいずれか一方を緩い二次関数に従った曲面形状のものとすることで、チャンネル高さを軸方向流の流れ方向に沿って二次関数的に単調減少させるようにすることもできる。また、底壁面又は上壁面のいずれか一方を傾斜の相違する二つの平面を滑らかに(つまり適度な曲率を有して)連ねた形状とすることにより、チャンネル高さの軸方向流の流れ方向に沿った減少度合が或る位置付近で変化するようにしてもよい。
【0019】
さらにまた、分離チャンネルの軸方向流に沿った全体に亘ってではなく、一部の範囲でのみ上記のようなチャンネル高さが一次関数的、二次関数的、又は折れ線的等に単調減少する部分を設けてもよい。特に、出口ポート付近でチャンネル高さが極端に小さくなると軸方向流が理想的なポアズイユ流から外れて微粒子の分離に支障をきたすおそれがあるから、例えばチャンネル高さは軸方向流の流れ方向の前半でその流れ方向に沿って単調減少とされ、後半でその流れ方向に沿って一定とされている構成とするとよい。
【0020】
一方、分離チャンネルの一対の側壁面の間の間隔つまりチャンネル幅は軸方向流の流れ方向の全範囲で一定とされている構成としてもよいし、或いは上面視台形状の構成のように軸方向流の流れ方向の全範囲で流れ方向に沿って単調減少としてもよい。前者の場合、出口ポート付近での軸方向流の流速を高くするにはチャンネル高さをかなり小さくする必要があるが、後者の場合、チャンネル幅も或る程度狭めるのでチャンネル高さの減少度合を抑えて、より理想的なポアズイユ流を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るフィールドフローフラクショネーション装置によれば、出口ポートにおいてもキャリア流体の十分な流速を得ることでリテンションタイムが極端に長引くことを回避しつつ、出口ポート付近での微粒子のバンド濃度の増加を抑制することでバンドの広がりを軽減し且つ周辺効果も抑えて分解能を高めることができる。また、チャンネル高さのみならずチャンネル幅を同時に狭める場合でも、チャンネル幅の狭め方を抑えて比較的広いチャンネル幅を確保できるので、特定の拡散係数を有する微粒子だけでなく、より広い拡散係数を持つ微粒子に対して高い分解能での分離が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るFFF装置の幾つかの実施例について図面を参照して説明する。なお、これら各実施例の図面において既に説明した従来の構造で説明した構成要素については同じ符号を付して対応関係を明確にしている。
【0023】
まず、本発明の第1実施例によるFFF装置を図1を参照して説明する。図1は第1実施例のFFFにおける分離チャンネル40の概略斜視図、図2はこの分離チャンネル40の一部の縦断面図である。
【0024】
この第1実施例による分離チャンネル40では、図7に示した従来例と同様にチャンネル幅Wは一定であるが、チャンネル高さHを軸方向流F2の流れ方向に沿って一次関数的に単調に減少するように構成している。即ち、上壁面12を基準とすれば、底壁面11は軸方向流F2の流れ方向に沿って斜め上向きに傾斜した構造となっている。
【0025】
図3はこのFFF装置の構成例である。まず分離対象の微粒子が分散された試料が、入口ポート15とは別に設けた試料導入ポート3から分離チャンネル40の流路17内に導入される(図3(a)参照)。微粒子を流路17内に導入した直後は試料幅が広いため、入口ポート15と出口ポート16の双方から向流的に溶媒を流すことで、微粒子の拡散を抑え試料幅を狭める(つまりは濃縮する)工程を経る。その後、ポンプ1より入口ポート15にキャリア溶媒(本発明におけるキャリア流体)を所定の流速で以て供給する。すると、キャリア溶媒が分離チャンネル40の流路17を通過する間に微粒子は拡散係数に応じて、つまりは粒径に応じて分離され、出口ポート16から流出する(図3(b)参照)。流出する溶媒中の微粒子は多角度散乱計等の検出器2により順次検出される。
【0026】
この分離チャンネル40では、流路17中でのキャリア溶媒の進行に伴ってチャンネル高さHが狭まることで流路17の断面積は狭くなるため、図9に示したような従来の構造に比較して、出口ポート16付近でのキャリア溶媒の流速を増加させることができる。これによって、出口ポート16付近での微粒子のバンド濃度の増加は抑制され、その濃度によるバンド広がりや周辺効果の低減が達成される。また出口ポート16付近でのチャンネル幅Wは広いため、広い範囲の拡散係数を有する微粒子に対して高い分解能での分離が行える。なお、図3では微粒子を導入するための試料導入ポート3を入口ポート15とは別に設けているが、他の図では説明の便宜上、試料導入ポート3の記載を省略している。
【0027】
次に、本発明の第2実施例によるFFF装置を図4を参照して説明する。図4は第2実施例のFFFにおける分離チャンネル50の概略斜視図である。この第2実施例による分離チャンネル50では、チャンネル高さHを軸方向流F2の流れ方向に沿って一次関数的に単調に減少するようにしているのみならず、図10に示した従来例と同様に、チャンネル幅Wも軸方向流F2の流れ方向に沿って一次関数的に単調に減少するようにしている。但し、チャンネル高さHが減少している分、チャンネル幅Wの減少の度合いが抑えられており、出口ポート16付近でのチャンネル幅Wは広めになっている。逆に、チャンネル幅Wが減少している分、第1実施例の構成と比較してチャンネル高さHの減少の度合いを抑えることができる。
【0028】
即ち、軸方向流F2の流れ方向に沿ってチャンネル幅Wとチャンネル高さHとを共に減少させることで、それぞれの極端な減少を抑えながら流路17の断面積自体の減少度合いを確保している。したがって、出口ポート16付近でもチャンネル高さHが極端に小さくならないのでポアズイユ流の乱れが生じにくく、またチャンネル幅Wも極端に小さくならないのでバンド幅濃度の増加や周辺効果も抑制されて分解能を高めることができる。また、チャンネル幅Wを或る程度広く確保することで、広い範囲の拡散係数を有する微粒子に対して高い分解能での分離が行える。
【0029】
上記第1及び第2実施例によるFFF装置では、チャンネル高さHが軸方向流F2の流れ方向に沿って一次関数的に単調減少される構成となっているが、一次関数的である必要はなく例えば二次関数的であってもよい。こうした場合には、底壁面11又は上壁面12の一方又は両方が平面ではなく曲面となっている。
【0030】
また、チャンネル高さHが軸方向流F2の流れ方向に沿って単調減少でなくてもよく、さらには軸方向流F2の流れ方向に沿ってその全体で単調減少である必要もない。図5は第3実施例のFFFにおける分離チャンネル60の概略斜視図、図6はこの分離チャンネル60の一部の縦断面図である。この第3実施例の分離チャンネル60では、チャンネル幅Wは第2実施例と同様に軸方向流F2の流れ方向に沿って一次関数的に単調減少されている。一方、チャンネル高さHは途中まで(具体的には図5、図6中にPで示す位置付近まで)一次関数的に減少されているが、それよりも前方(出口ポート16に近い側)では一定とされている。
【0031】
具体的には、図6に示すように、上壁面12は略水平な平面であるが、底壁面11はPで示す位置付近よりも入口ポート15に近い側では傾斜した平面、Pで示す位置付近よりも出口ポート16に近い側では略水平な平面となっており、その両平面がPで示す位置近傍で緩やかな曲面で接続された構成となっている。このような構成により、出口ポート16付近でのチャンネル高さHの極端な狭まりを抑え、ポアズイユ流を良好な状態に保持して微粒子を適切に分離することが可能となる。
【0032】
なお、上記各実施例では、チャンネル高さHを狭めるために底壁面11を傾斜させたりその形状を変えたりしたが、上壁面12において同様の変形を行ってもよい。また、上記実施例では分離チャンネル40、50、60を略水平載置しているが、上述したように、分離チャンネルは上下倒置や起立配置など、自由にその設置態様を採ることができる。
【0033】
さらにまた、上記実施例はいずれも本発明の一例にすぎないから、上記記載以外の点においても、本発明の趣旨の範囲で適宜に修正、変更、追加などを行っても本願発明に包含されることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例(第1実施例)による分離チャンネルの斜視図。
【図2】第1実施例の分離チャンネルの一部の縦断面図。
【図3】第1実施例のFFFの概略構成図。
【図4】本発明の他の実施例(第2実施例)による分離チャンネルの斜視図。
【図5】本発明の他の実施例(第3実施例)による分離チャンネルの斜視図。
【図6】第3実施例の分離チャンネルの一部の縦断面図。
【図7】クロスフロー方式FFFの分離チャンネルの基本構造の一例を示す斜視図。
【図8】図7に示した分離チャンネルの一部の縦断面図。
【図9】従来の他の構成による分離チャンネルの一部の縦断面図。
【図10】従来の他の構成による分離チャンネルの斜視図。
【符号の説明】
【0035】
1…ポンプ
2…検出器
3…試料導入ポート
40、50、60…分離チャンネル
11…底壁面
11a…支持壁
11b…半透膜
12…上壁面
13、14…側壁面
15…入口ポート
16…出口ポート
17…流路
F1…クロスフロー
F2…軸方向流

【出願人】 【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100095670
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良平


【公開番号】 特開2008−724(P2008−724A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−174681(P2006−174681)