トップ :: B 処理操作 運輸 :: B02 破砕,または粉砕;製粉のための穀粒の前処理

【発明の名称】 放電破砕方法
【発明者】 【氏名】垣内 幸雄

【氏名】石口 真実

【氏名】平林 守

【氏名】宇野 定雄

【要約】 【課題】構造が簡単な放電電極装置を使用し、破砕対象物に対する装填加工作業性が良い放電破砕方法を提供する。

【構成】破砕対象物(コンクリート版4)の面5の溝7を形成し、電線37の端部により形成された一対の電極35;36を溝7内に設置された固定材(挟み具31)に固定して所定間隔隔てて配置することによって放電部を形成し、この放電部を溝内に1つ以上設けるとともに、放電部を取り囲むように圧力伝達媒体を設け、放電部の設置された溝の開口を被せ材で塞いだ状態で、放電部の電極に電圧を印加して放電させることによって破砕対象物を破砕することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部により形成された一対の電極を破砕対象物の面に設置された固定材に固定して所定間隔隔てて配置することによって放電部を形成し、この放電部を面に1つ以上設けるとともに、放電部を取り囲むように圧力伝達媒体を設け、放電部を被せ材で覆った状態で、放電部の電極に電圧を印加して放電させることによって破砕対象物を破砕することを特徴とする放電破砕方法。
【請求項2】
破砕対象物の面に溝を形成し、電線の端部により形成された一対の電極を溝内に設置された固定材に固定して所定間隔隔てて配置することによって放電部を形成し、この放電部を溝内に1つ以上設けるとともに、放電部を取り囲むように圧力伝達媒体を設け、放電部の設置された溝の開口を被せ材で塞いだ状態で、放電部の電極に電圧を印加して放電させることによって破砕対象物を破砕することを特徴とする放電破砕方法。
【請求項3】
固定材として電線を挟んで固定する挟み具を用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放電破砕方法。
【請求項4】
固定材として粘土を用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放電破砕方法。
【請求項5】
破砕対象物は、上記面を形成する一方の面と当該一方の面と相対向する他方の面とを備えた平板状であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の放電破砕方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、放電によって破砕対象物を破砕する放電破砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
岩石、岩盤、コンクリート構造物などの破砕対象物を破砕するために放電破砕装置を用いた放電破砕方法が知られている(特許文献1;2参照)。
放電破砕装置50Aは、図8に示すように、パルスパワー源80、発電機等の電源部81、電極装置70を備える。
パルスパワー源80は、大容量のコンデンサ82及びスイッチ83,84を備えた回路により形成される。図示しないが、パルスパワー源80の回路は接地(アース)されている。
電源部81は、コンデンサ82の一方の極82bに接続されるとともにコンデンサ82の他方の極82aにスイッチ83を介して接続される。
電極装置70は、コンデンサ82の一方の極82bに接続された一方電極とコンデンサ82の他方の極82aにスイッチ84を介して接続された他方電極とこれら一方電極と他方電極とを絶縁する絶縁体とで形成される。例えば、+電極のような一方電極としての棒状の内部導体73と、内部導体73の外周囲を被覆する筒状の絶縁体74と、絶縁体74の外周囲に設けられた−電極のような他方電極としての外部導体75とにより構成される。即ち、電極装置70は、内部導体73と絶縁体74と外部導体75とが同軸状に配置された構成の同軸電極装置である。内部導体73及び外部導体75は、コネクタ72及び接続ケーブル71によりパルスパワー源80に接続される。
外部導体75は、内部導体73の中心線に沿った方向に間隔を隔てて設けられた複数の浮遊電極76を構成する。浮遊電極76とは、電源側と電気的に絶縁された電極のことである。
絶縁体74の先端74tより突出して露出する内部導体73の先端部により形成された先端電極73tとこの先端電極73tに最も近い浮遊電極76である先端側浮遊電極76tとの間で先端側放電ギャップ77が形成され、互いに対向する浮遊電極76同士の端部76sと端部76sとの間で中間側放電ギャップ78が形成される。中間側放電ギャップ78は複数形成される。
先端側放電ギャップ77を隔てて配置された先端電極73tと先端側浮遊電極76tとによって放電部が形成される。中間側放電ギャップ78を隔てて配置された浮遊電極76と浮遊電極76とによって放電部が形成される。即ち、電極装置は、複数の放電部を備える。
以上の構成の放電破砕装置50Aを用いた放電破砕方法を説明する。破砕対象物60に孔61を形成し、スイッチ84及びスイッチ83の非導通の状態で孔61内に水などの電解液63を注入してこの電解液63中に電極装置70の放電部を挿入する。スイッチ83を導通してコンデンサ82に電源部81からの電荷を蓄積させる。そして、スイッチ84を導通させて電極装置70の放電部の電極に電圧を印加して放電させることによって破砕対象物60を破砕する。
図示しないが、板状の破砕対象物の面と電極装置の放電部とを対向させ、放電部を取り囲むようにゼリー状の非圧縮体を設け、放電部の電極に電圧を印加して放電させることによって破砕対象物を破砕する方法も知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−311175号公報
【特許文献2】特開2003−320268号公報
【特許文献3】特開2005−161151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1〜3では、電極装置として同軸電極装置を使用しているが、同軸電極装置は構造が複雑で高価であり、同軸電極装置を用いた放電破砕方法は経済的な面で敬遠されがちであるといった課題があった。
また、特許文献1;2に示された従来技術のように、破砕対象物60に孔61を形成して、孔61内に電極装置70の放電部を設置して放電させる方法では、破砕対象物60に多数の孔61を形成する必要があり、多数の孔61を形成する作業が煩わしいという課題があった。
また、特許文献3に示された従来技術では、放電により生じた圧力が破砕対象物の面に加わらず、面より離れる方向に逃げてしまうので、破砕効率が悪いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による放電破砕方法は、電線の端部により形成された一対の電極を破砕対象物の面に設置された固定材に固定して所定間隔隔てて配置することによって放電部を形成し、この放電部を面に1つ以上設けるとともに、放電部を取り囲むように圧力伝達媒体を設け、放電部を被せ材で覆った状態で、放電部の電極に電圧を印加して放電させることによって破砕対象物を破砕することを特徴とする。
破砕対象物の面に溝を形成し、電線の端部により形成された一対の電極を溝内に設置された固定材に固定して所定間隔隔てて配置することによって放電部を形成し、この放電部を溝内に1つ以上設けるとともに、放電部を取り囲むように圧力伝達媒体を設け、放電部の設置された溝の開口を被せ材で塞いだ状態で、放電部の電極に電圧を印加して放電させることによって破砕対象物を破砕することも特徴とする。
固定材として電線を挟んで固定する挟み具を用いたことも特徴する。
固定材として粘土を用いたことも特徴とする。
破砕対象物は、上記面を形成する一方の面と当該一方の面と相対向する他方の面とを備えた平板状であることも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、破砕対象物の面に1つ以上の放電部を形成して放電するので、電極装置を低価格とでき、経済的に有利な放電破砕方法を実現できる。また、破砕対象物の面に多数の孔を形成する場合に比べて作業を簡単にできる。また、放電部を取り囲むように圧力伝達媒体を設け、放電部の設置された溝の開口を被せ材で塞いだ状態で放電するので、放電により生じた圧力が外部に抜けることなく破砕対象物の面に加わるため、破砕対象物を効率的に破砕できる。
また、本発明によれば、破砕対象物の面に形成した溝内に1つ以上の放電部を形成して溝内で放電するので、電極装置を低価格とでき、経済的に有利な放電破砕方法を実現できる。この場合、破砕対象物の面に少数の溝を形成すればよく、破砕対象物の面に多数の孔を形成する場合に比べて作業を簡単にできる。また、放電部を取り囲むように圧力伝達媒体を設け、放電部の設置された溝の開口を被せ材で塞いだ状態で放電するので、放電により生じた圧力が溝の外に漏れることなく溝の内面に加わるため、破砕対象物を効率的に破砕できる。
電線の端部により形成された一対の電極を固定する固定材として電線を挟んで固定する挟み具を用いたので、放電部を自由に簡単に形成でき、構成が簡単で、低コストな電極装置を用いた放電破砕方法を実現できる。また、挟み具の設け方によって、放電部の設け方を自由に設定できる。
固定材として粘土を用いたので、放電時に飛び散った場合には集めて何回でも使用でき、経済的である。また、扱いやすく、放電部を自由に簡単に形成できるようになる。
また、破砕対象物を平板状としたことで、電線による電極装置の放電部での放電により破砕対象物を破砕でき、電源装置のコンデンサの容量を小さくできて、電源装置の省コスト化が図れる。また、平板状の破砕対象物の面に少数の溝を形成して溝内で放電を行わせることによって平板状の破砕対象物を効率的に細かく破砕できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1
図1乃至図3は本発明の最良の形態1を示し、図1は放電破砕装置及び破砕対象物を示し、図2は放電破砕方法の工程を示し、図3は放電破砕後のコンクリート版の破砕状態を示す。
【0007】
図1を参照し、放電破砕装置及び破砕対象物を説明する。
放電破砕装置1は、電源装置2、電極装置3を備える。
破砕対象物としての平板状のコンクリート版4は、例えば、縦の長さaが500mm、横の長さbが400mm、厚さdが140mmである。縦500mm、横400mmの表裏2つの面としての方形の面5;6のうち、上に向ける一方の面5には、例えば、幅eが20mm〜25mm程度、深さfが50mm程度の溝7が形成される。溝7は、一方の面5において互いに相対峙する一方の縁部8から他方の縁部9まで連続して延長し、上部10及び両縁部11;11が開口する形状である。
本発明で定義する溝とは、溝の延長方向の長さ、即ち、溝長a(ここでは縦の長さaと同じ)が、幅eより長く形成された溝のことを言う。
本発明で定義する平板状とは、上述した厚さdが、縦の長さaや横の長さbよりも短い寸法の平板形状のことを言う。厚さdは均一でも均一でなくともよい。
【0008】
電源装置2は、パルスパワー源16、昇圧部17、電極接続部18を備える。
パルスパワー源16は、コンデンサ20及びスイッチ21,22を備えた回路19により形成される。図示しないが、パルスパワー源16の回路19は接地(アース)されている。
昇圧部17は、コンデンサ20の一方の極23に接続されるとともにコンデンサ20の他方の極24にスイッチ21を介して接続される。コンデンサ20の容量は例えば200μF(マイクロファラッド)である。
電極接続部18は、パルスパワー源16の筐体25に設けられる。一方の電極接続部18aは、コンデンサ20の一方の極23に接続される。他方の電極接続部18bは、コンデンサ20の他方の極24にスイッチ22を介して接続される。
最良の形態では、スイッチ22、スイッチ21がともに非導通の状態で、例えば、図外の電源コードを経由して昇圧部17に交流200V電源が供給され、交流200Vが昇圧部17で直流22kVに昇圧される。そして、スイッチ21を導通すると、コンデンサ20に電荷が蓄積される。コンデンサ20に電荷が蓄積された後に、スイッチ22を導通すると、電極装置3の放電部30の電極35;36間(図2(a)参照)で放電を生じる。
【0009】
放電用の電極装置3は、放電部30を形成する電線37、電線37を挟んで固定する固定材としての挟み具31、コネクタ40を備える。電線37は、例えば線径2mm〜3mm程度の銅線のような導体線の周囲がビニル樹脂などの樹脂で被覆された線径4mm〜5mm程度の、いわゆる被覆線により形成される。
放電部30は、放電ギャップとなる所定の間隔gを隔てて互いに対向するよう配置された一対の電極35;36と、一対の電極35;36を所定の間隔gを隔てて互いに対向する状態に固定する挟み具31とにより形成される。一対の電極35;36は電線37の端部により形成される。
【0010】
電極装置3の放電部30は1つ以上形成される。例えば、溝7内の一方の側縁部11A側、他方の側縁部11B側、側縁部11Aと側縁部11Bとの間の中央部の3箇所にあらかじめ挟み具31A;31B;31Cを接着剤などで固定しておく(図2(a)参照)。挟み具31は、ベース基板31aの上に一対の挟み部31b;31cを備えた構成であり、ベース基板31aの裏に接着剤を付けてベース基板31aを溝7の溝底46に固定する。挟み部31b; 31cは、ベース基板31aの上に設けられた支持脚31jと、支持脚31jの上部に互いに相対峙するよう設けられて電線を挟み込む挟持片31h;31hとにより形成される。挟み具31に設けられた一対の挟み部31b;31cのそれぞれに電線37の端部を挟んで固定する。この際、電線37の端部により形成される一対の電極35;36間の間隔を調整する。
【0011】
図1;図2(a)を参照し、放電部30の形成方法を説明する。例えば、一端にコネクタ40Aを備えた電線37Aの他端側を、溝7の一方の側縁部11Aに一番近い位置に設けられた挟み具31Aの一方の挟み部31bに固定し、電線37Aの一端側を側縁部11Aを経由して溝7の外に導いて当該電線37Aをコネクタ40Aを介して電源装置2の一方の電極接続部18aに接続する。一端にコネクタ40Bを備えた電線37Bの他端側を、溝7の他方の側縁部11Bに一番近い位置に設けられた挟み具31Bの他方の挟み部31cに固定し、電線37Bの一端側を側縁部11Bを経由して溝7の外に導いて当該電線37Bをコネクタ40Bを介して電源装置2の他方の電極接続部18bに接続する。電線37Cの一端37e側を、電線37Cの一端37eと電線37Aの他端との間隔を所定の間隔gに調整しながら、溝7の挟み具31Aの他方の挟み部31cに固定するとともに、電線37Cの他端37f側を、溝7の中央部に固定した挟み具31Cの一方の挟み具31bに固定する。電線37Dの一端37e側を、電線37Dの一端37eと電線37Cの他端37fとの間隔を所定の間隔gに調整しながら、挟み具31Cの他方の挟み部31cに固定するとともに、電線37Dの他端37f側を、電線37Dの他端37fと電線37Bの一端との間隔を所定の間隔gに調整しながら、挟み具31Bの一方の挟み具31bに固定する。
以上により、溝7の両方の側縁部11A;11Bと溝7の中央部とに放電部30が形成される。
【0012】
図2を参照し、放電破砕方法を説明する。図2(a)は溝7内に電極装置3の放電部30と放電部30を取り囲む圧力伝達媒体としての非圧縮体42とが設けられ、溝7の両縁部11;11の開口がパテなどの充填塞材41により塞がれた状態の溝の部分を溝の延長方向に沿って切断した断面図、図2(b)は図2(a)の状態のコンクリート版4の面5の上に被せ材を被せた状態を溝7の延長方向と直交する方向に沿って切断した断面図、図2(c)は放電破砕されたコンクリート版4を示す図である。まず、コンクリート版4の一方の面5に上述した溝7を形成する。溝7は、例えば、円盤状のカッターを回転させてコンクリートを切削する図外のコンクリートカッターと呼ばれるような切削工具を用いて形成する。円盤状の2枚のカッターを備えた図外のコンクリートカッターを用いれば、幅eの広い溝7を一度に形成できるので、幅eの広い溝7を効率的に形成できる。2枚のカッターを備えたコンクリートカッターは、例えば、円形板の円形面を互いに平行に対向させて円の中心を一直線状に通過する回転中心軸を回転中心として回転可能に設けられた2枚のカッターを備えた構成により実現される。そして、図2(a)のように、溝7を形成した面5が上にくるように面6を地面などの設置部99に向けてコンクリート版4を設置部99に設置する。面5に形成された溝7内に上述したように放電部30を形成し、溝7の両縁部11;11の開口をパテなどの充填塞材41により塞ぐ。両縁部11;11の塞がれた溝7内に、圧力伝達媒体としての非圧縮体42を充填して、放電部30を非圧縮体42で取り囲む。即ち、溝7内に設置された放電部30の回りを非圧縮体42で埋める。溝7内に非圧縮体42を充填した後に、この非圧縮体42中に放電部30を埋めてもよい。非圧縮体42としては、水や水溶液のような電解液を用いる。そして、図2(b)のように、上に向けた一方の面5の上に被せ材としての重り43を載せて溝7の上部10の開口を塞いだ後に、電源装置2を起動する。所定時間だけ電源装置2のスイッチ22を非道通とするとともにスイッチ21を導通してコンデンサ20に電荷を蓄積させる。上記所定時間経過後にスイッチ22を導通すると、電極装置3の放電部30の電極35;36に電圧が印加されて、放電部30で放電を生じる。この放電によるエネルギーによって押圧された非圧縮体が溝7の内面(溝壁45及び溝底46)を押圧することによってコンクリート版4を破砕したり、放電によるエネルギーによって非圧縮体42の一部が気化することで体積膨張して溝7の内面を押圧することによってコンクリート版4を破砕する。即ち、放電の際に発生するエネルギーにより生じた圧力によってコンクリート版4が破砕される。
尚、重り43は、放電の際に発生するエネルギーによって生じた圧力を受けても浮き上がらない重量のものを用いれば、放電の際に発生するエネルギーによって生じた圧力が溝7の外に漏れることなく溝7の内面に加わるので、より効果的である。
即ち、コンクリート版4の一方の面5に溝7を形成し、溝7内に電極装置3の放電部30と放電部30を取り囲む非圧縮体42とを設け、放電部30及び非圧縮体42の設置された溝7の両縁部11;11の開口を充填塞材41により塞ぐとともに、溝7の上部10の開口を被せ材としての重り43によって塞いだ状態で、放電部30の電極35;36に電圧を印加して放電させることによってコンクリート版4を破砕する。
【0013】
最良の形態1によれば、固定材として挟み具31を用いたので、放電部30を自由に簡単に形成でき、構成が簡単で、低コストな電極装置3を用いた放電破砕方法を実現できる。また、挟み具31の設け方によって、放電部30の設け方を自由に設定できる使い勝手の良い電極装置3を提供できる。さらに、放電ギャップとなる所定の間隔gを変更できるので、電源条件、非圧縮体42の条件などに応じて最適な放電ギャップに設定可能となる。また、最良の形態1の電極装置によれば、電線37を並べない1本線構成とできるため、放電時の電線37間の反発作用を防止できて、放電ギャップの間隔gが変わってしまうというようなことを少なくでき、正常な放電を実現できる。
【0014】
最良の形態1によれば、放電部30の設置された溝7の両縁部11;11の開口をパテなどの充填塞材41により塞ぐとともに、重り43により溝7の上部10の開口を塞ぐことによって、放電の際に発生するエネルギーによって生じた圧力が溝7の外に漏れにくいように構成してから放電を行うので、放電の際に発生するエネルギーによって生じた圧力が溝7の内面に加わるようになる。この内面に加わる圧力が、コンクリート版4のコンクリートを自由面となる側面4s側に移動させる力となってコンクリートに伝わることにより、コンクリートにひび割れ(亀裂)Dが生じてコンクリート版4が破砕する。また、溝7が、図1;2に示すように、溝壁45と溝底46との境界である角部47を備えるため、角部47がひび割れDの起点となってコンクリートにひび割れDを生じやすくなるので、コンクリート版4を効果的に破砕できる。
【0015】
また、厚さdが縦の長さaや横の長さbよりも短い寸法に形成された平板状のコンクリート版4を破砕対象物としたことで、厚さdの短いコンクリート版4を電線37による電極装置3の放電部30での放電により破砕でき、電源装置2のコンデンサ20の容量を小さくできて、電源装置2の省コスト化が図れる。
【0016】
図8に示した従来の放電破砕方法でコンクリート版4を細かく破砕しようとする場合、図4((a)図は平面図、(b)図は(a)図のA−A断面図)に示すように、コンクリート版4に一方の面5から他方の面6の方向に延長する孔61を多数形成した後に、適当な孔61内に水と電極装置70の放電部とを入れて放電させることによってコンクリート版4を破砕したり、孔61を、一方の面5の縁部に近い側から1つずつ形成して行ってその孔61内で放電を行わせてコンクリート版4の縁部側から順番に破砕していく必要がある。即ち、一方の面5に多数の孔61を形成する必要があり、多数の孔61を形成する作業が煩わしい。
【0017】
一方、最良の形態による放電破砕方法によれば、一方の面5に溝7を1つ又は少数形成して、溝7内での放電により、例えば、図3に示すように、コンクリート版4を効率的に細かく破砕でき、多数の孔61を形成する場合に比べて作業を簡単にできる。
特に、コンクリート版4のような平板状の破砕対象物を破砕する場合は、面に少数の溝7を形成して、溝7内で放電を行わせることによってコンクリート版4を効率的に細かく破砕できる。
【0018】
また、図8に示した従来の放電破砕方法では、コンクリート版4の厚さ寸法が比較的小さい場合は、孔61の深さ寸法t(図4(b)参照)も小さくなり、電極装置70の放電部や非圧縮体を収納するための孔61内の大きさも小さくなるので、電極装置70の放電部が孔61内に入らない場合は、コンクリート版4を破砕できなくなる。電極装置70の放電部が孔61内に入ったとしても孔61内に入る電極装置70の放電部の数が少なくなってしまって、1つ1つの孔61内での放電により生じる圧力は小さくなるので、一方の面5に多数の孔61を形成して、いくつかの個々の孔61内で1回ずつ順番に放電を行わなければならず、多数の孔61を形成する作業及び放電作業が煩わしくなる。
【0019】
尚、重り43の下面とコンクリート版4の面5との間にゴムシートやウレタンシートのような密着性維持材を介在させることにより、重り43の下面と密着性維持材との間、及び面5と密着性維持材との間から圧力が抜けるようなこと(圧力漏れ)を防止でき、コンクリート版4を効率的に破砕できる。コンクリート版4の面5側に向けられる面に予め密着性維持材が取り付けられた重り43を用いても良い。
【0020】
最良の形態2
図5を参照し、最良の形態2について説明する。図5(a);図5(c)は平面図、図5(b)は図5(a)のA−A断面図である。
破砕対象物が、縁の切れていないコンクリート構造体4A、例えば、道路や橋の床を形成する床版、既設建設物の床や壁などの場合、コンクリート構造体4Aの縁の切れていない一方の面5Aに設けた溝7(以下、最良の形態2では放電溝という)の近傍に自由面を形成する溝79(以下、最良の形態2では自由溝という)を設ける。即ち、自由溝79の内面が自由面となる。例えば、図5(a)や図5(b)のように、自由溝79と放電溝7とを並べて形成したり、図5(c)のように、一方の面5Aにおいて放電溝7を取り囲むように自由溝79を形成する。自由溝79は放電溝7より所定の距離Wを隔てた場所に形成する。距離Wは、放電溝7内での放電の際に発生するエネルギーによって生じた圧力が自由面に及び得る距離に決める。自由溝79の溝幅Pは溝7の溝幅eより小さくてよく、例えば5mm程度でよい。
最良の形態2によれば、放電溝7内での放電の際に発生するエネルギーによって生じた圧力が自由溝79の自由面に及ぶことによってコンクリート構造体4Aを効率的に破砕できる。
図示しないが、自由溝79は、一方の面5Aから他方の面6Aの方向に向けて斜めに延長するよう形成された溝であってもよい。
また、図5(b)に示す自由溝79の深さQは、深くした方が自由面の面積を大きくできるので好ましく、放電溝7の深さR以上とすれば自由面を他方の面6の近くまで形成できて好ましい。
図5の自由溝79の代わりに放電溝7としても利用する図外の兼用溝を形成し、放電溝7での放電の際に当該兼用溝の内面を自由面として機能させてもよい。
尚、コンクリート構造体4Aの一方の面5Aから他方の面6Aまでの距離、即ち、コンクリート構造体4Aの厚さV(図5(b)参照)が薄く、面6Aが自由面として機能する場合には、自由溝79を形成しなくても良い。
【0021】
最良の形態3
固定材として、粘土を用いてもよい。つまり、あらかじめ溝7の溝底46に粘土を盛っておき、電線37の端部を粘土に押し込んで固定し、放電部30を形成する。最良の形態1で説明した挟み具31を用いた場合、放電の衝撃で挟み具31が壊れてしまって、1回しか使えない使い捨てとなる可能性があり、不経済である。
最良の形態3では、粘土なので放電時に飛び散った場合には集めて何回でも使用でき、経済的である。また、粘土なので扱いやすく、放電部30を自由に簡単に形成できる。
【0022】
最良の形態4
最良の形態1;2では、溝7内で放電部3を形成するための固定材を説明したが、図6に示すような間隔維持材31Xを用いることにより、放電部3の放電ギャップとなる所定の間隔gを簡単かつ正確に設定できる。間隔維持材31Xは、例えばプラスチックゴムにより円筒状に形成されたものである。円筒状の筒孔の両端部51;52の径は電線37が嵌合する径に形成される。筒孔の中央部53の径は筒孔の両端部51;52の径よりも小さい径に形成される。筒孔の中央部53と筒孔の両端部51;52との段差部が端面突当面54;55として形成され、筒孔の両端部からそれぞれ嵌合された電線37;37の端面がそれぞれ端面突当面54;55に突き当てられることによって、電線の端面と端面とで間隔gが形成される。このような間隔維持材31Xを溝7内に固定しておき、間隔維持材31Xの両端部51;52に電線37を入れて図外の接着テープや接着剤などで互いに固定させることで、放電部3の放電ギャップとなる所定の間隔gを簡単かつ正確に設定できる固定材として使用できる。
【0023】
最良の形態5
最良の形態1では、電極装置3の放電部30を溝7内に設置したが、コンクリート版4の面5に溝7を形成することなく、コンクリート版4の面5に電極装置3の放電部30と放電部30を取り囲む非圧縮体42とを設け、放電部30及び非圧縮体42を被せ材で覆った状態で、放電部30の電極に電圧を印加して放電させることによってコンクリート版4を破砕するようにしてもよい。この場合、放電部30の形成は、固定材として粘土98を用いて最良の形態3と同様に形成する。
上記被せ材としては、図7に示すように、重り43と、重り43と面5との間に設けられるゴムシートやウレタンシートのような密着性維持材43Aとにより構成され、密着性維持材43Aの面5側に向けられる面43aに、放電部30及び非圧縮体42を収納するために溝7と同じような溝により形成された収納部43bを備えた構成の被せ材を用いることによって、収納部43bの周りの密着性維持材43Aが面5と密着状態に接触する接触面43cとなって密着性維持材43Aと面5との密着性が向上し、面5と密着性維持材43Aとの間から圧力が抜けるようなことを防止でき、コンクリート版4を効率的に破砕できる。
上記被せ材は、互いに別体の重り43と密着性維持材43Aとからなるものを用いてもよいし、密着性維持材43Aが重り43の面5側に向けられる一面に予め取り付けられた構成のものを用いてもよい。
尚、密着性維持材43Aの面5側に向けられる面43aに収納部43bを形成する溝が予め形成されていない構成の被せ材を用いてもよい。このような被せ材を用いた場合でも、重り43の重量を大きくしたり、密着性維持材43Aとして柔らかい材質のものを用いたりすることによって、密着性維持材43Aの面5側の面43aが、重り43の圧力と電線37の圧力とで押圧されて窪むことによって密着性維持材43Aの面5側の面43aに収納部43bが形成され、密着性維持材43Aの面5側の面43aにおける収納部43bの周りの密着性維持材43Aが面5と密着状態に接触する接触面43cとなるので、面5と密着性維持材43Aとの間から圧力が抜けるようなことを防止でき、コンクリート版4を効率的に破砕できる。
非圧縮体42は、例えば、放電部30を覆うように設けられた図外の袋内に密閉充填することによって放電部30を取り囲むように設ければよい。
即ち、コンクリート版4の面5に放電部30及び非圧縮体42を設けて、放電の際に発生するエネルギーによって生じた圧力が外部に漏れにくいように、これら放電部30及び非圧縮体42を被せ材で覆ってから放電を行う。
尚、電極装置3の電線37が面5の縁部8;9から外部に導出される部分において、電線37と面5や被せ材との間に隙間が生じている場合には、この隙間をパテなどの充填塞材41で塞ぐ。
最良の形態5によれば、コンクリート版4の面5に多数の孔61を形成する作業を不要とでき、作業を簡単にできる。
また、放電部30を取り囲むように非圧縮体42を設け、面5の上に設置した放電部30及び非圧縮体42を被せ材で覆った状態とし、被せ材が収納部43bを備え、被せ材の面5側の面43aにおける収納部43bの周りが面5と密着状態に接触する接触面43cとなるので、放電の際に発生するエネルギーによって生じた圧力が外部に抜けくくなり面5に加わる。この面5に加わる圧力が、コンクリート版4のコンクリートを自由面である端面4s側や面5側に移動させる力となってコンクリートに伝わることにより、コンクリートにひび割れが生じてコンクリート版4が破砕する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
固定材として、電線37を溝7内の溝壁45や溝底46に固定する接着剤や接着テープなどを用いてもよい。
コンクリート版4の面5の上に被せ材としての金属板などの剛板を載せて、図外の万力装置のあごで剛板の面とコンクリート版4の面6とを挟み付けて固定してから、放電を行うようにしても良い。面5と剛板との間に密着性維持材43Aを設ければ、放電により生じた圧力の漏れを効果的に防止できて好ましい。コンクリート版4の面5側に向けられる面に予め密着性維持材43Aが取り付けられた剛板を用いても良い。
コンクリート版4の一方の面5を下に向けて図外の平板載台の上に載せて放電を行えば、重り43を不要とできる。
溝7は、溝長aが、幅eより長く形成された溝であればよく、一方の縁部8から他方の縁部9まで連続して延長しない溝でもよい。例えば、一方の縁部8が開口し他方の縁部9が開口していない溝としたり、一方の縁部8及び他方の縁部9のいずれも開口していない溝とすれば、溝7の両縁部11;11の開口をパテなどの充填塞材41で塞ぐ作業を少なくでき、作業の簡略化が図れる。尚、この場合、電線37を溝7から外部に導くための溝をコンクリート版4の面5や被せ材の面に形成しておけば、面5と被せ材との密着性が増し、放電の際に発生するエネルギーによって生じた圧力の抜けを効果的に防止できて好ましい。
溝7は、面5;5Aから面6;6Aの方向に向けて斜めに延長するよう形成された溝であってもよい。
間隔維持材31としては、絶縁ビニル粘着テープ、締結バンドの他に、ゴムバンド、専用の接続具なども使用できる。
破砕対象物はコンクリート塊や岩石のような塊状のものであっても良い。この場合、塊状の破砕対象物の面としての外面に溝を形成し、溝内に放電部を設置し、放電部の周囲に非圧縮体を設け、溝の開口を被せ材で塞いで放電を行わせることで当該塊状の破砕対象物を破砕できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】放電破砕装置及び破砕対象物を示す図(最良の形態1)。
【図2】放電破砕方法の工程を示す図(最良の形態1)。
【図3】コンクリート版の破砕状態を示す図(最良の形態1)。
【図4】コンクリート版を従来の放電破砕方法で破砕する場合の孔の設け方を示す図。
【図5】自由面の形成例を示す図(最良の形態2)。
【図6】固定材として使用可能な間隔維持材の断面図(最良の形態4)。
【図7】放電部の設置状態を示す断面図(最良の形態5)。
【図8】従来の放電破砕装置及び破砕対象物を示す図。
【符号の説明】
【0026】
1 放電破砕装置、4 コンクリート版(破砕対象物)、
5 一方の面(面)、6 他方の面、7 溝、30 放電部、
31 挟み具(固定材)、35;36 放電部の電極、
37 電線、42 非圧縮体(圧力伝達媒体)、
43 重り(被せ材)、98 粘土(固定材)。
【出願人】 【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
【識別番号】502281127
【氏名又は名称】株式会社ファテック
【出願日】 平成18年7月14日(2006.7.14)
【代理人】 【識別番号】100080296
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 純一


【公開番号】 特開2008−18402(P2008−18402A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−194695(P2006−194695)