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【発明の名称】 高機能米の製造方法
【発明者】 【氏名】三輪 精博

【要約】 【課題】籾の生理機能を活性化することによる、富有効成分及び高消化吸収性をもつ高機能米製造方法の提供。

【構成】通常の収穫適期より早期に収穫した高水分稲3を、高水分状態のまま脱穀して高水分籾4を得る刈取・脱穀工程S1と、高水分籾4を高水分状態を保ったままで、内部が適度な高温高湿の環境となった処理装置内に保持して籾の生理機能を活性化させる処理工程S2と、処理工程S2によって生成した高機能籾5を籾乾燥機で仕上げ基準水分まで乾燥する乾燥工程S3と、高機能籾5から籾殻を除去して高機能玄米2とする籾摺り工程S4とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾の平均水分が、湿量基準含水率30%±5%の範囲にある状態で刈り取り脱穀する刈取・脱穀工程と、
該刈取・脱穀工程で脱穀した前記籾を、内部温度及び内部湿度を調整可能な処理装置にて、装置内の温度を20℃以上、40℃以下に、相対湿度を95%以上、100%以下に調整し、8時間以上、72時間以下の範囲で処理することによって、籾が保持する生理作用を利用して、籾中玄米の成分を人が食して消化吸収しやすい、さらに人体に有効な成分に変換する処理工程と、
前記籾を仕上げ基準水分まで乾燥させる乾燥工程と、
前記籾の籾殻を除去する籾摺り工程と
を具備することを特徴とする高機能米の製造方法。
【請求項2】
籾の平均水分が、湿量基準含水率30%±5%の範囲にある状態で刈り取った稲を、内部温度及び内部湿度を調整可能な処理装置にて、装置内の温度を20℃以上、40℃以下に、相対湿度を95%以上、100%以下に調整し、8時間以上、72時間以下の範囲で処理することによって、籾が保持する生理作用を利用して、籾中玄米の成分を人が食して消化吸収しやすい、さらに人体に有効な成分に変換する処理工程と、
該処理工程を経過した前記稲を脱穀する脱穀工程と、
前記籾を仕上げ基準水分まで乾燥させる乾燥工程と、
前記籾の籾殻を除去する籾摺り工程と
を具備することを特徴とする高機能米の製造方法。
【請求項3】
圃場に立毛中の籾の平均湿量基準含水率が20%以上、30%以下の範囲にある状態で、圃場において立毛状態のままで稲を覆い、前記稲の周囲の温度を20℃以上、40℃以下に、相対湿度を95%以上、100%以下に調整し、8時間以上、72時間以下の範囲で処理することによって、籾が保持する生理作用を利用して、籾中玄米の成分を人が食して消化吸収しやすい、さらに人体に有効な成分に変換する処理工程と、
該処理工程を経過した前記稲を刈り取り脱穀する刈取・脱穀工程と、
前記籾を仕上げ基準水分まで乾燥させる乾燥工程と、
前記籾の籾殻を除去する籾摺り工程と
を具備することを特徴とする高機能米の製造方法。
【請求項4】
内部温度及び内部湿度を調整可能な処理装置にて、籾に気温30℃以上、60℃以下で相対湿度100%の空気を接触させることによって生じる前記籾表面の結露水を、前記籾に平均湿量基準含水率が約33%となるまで吸湿させる気中吸湿工程と、
前記処理装置内の温度を20℃以上、40℃以下に、相対湿度を95%以上、100%以下に調整し、前記籾を8時間以上、72時間以下の範囲で処理することによって、前記籾が保持する生理作用を利用して、前記籾中玄米の成分を人が食して消化吸収しやすく、さらに人体に有効な成分に変換する処理工程と、
前記籾を仕上げ基準水分まで乾燥させる乾燥工程と
前記籾の籾殻を除去する籾摺り工程と
を具備することを特徴とする高機能米の製造方法。
【請求項5】
内部温度及び内部湿度を調整可能な処理装置にて、玄米に気温30℃以上、60℃以下で相対湿度100%の空気を接触させることによって生じる前記玄米表面の結露水を、前記玄米に平均湿量基準含水率が約33%となるまで吸湿させる気中吸湿工程と、
前記処理装置内の温度を20℃以上、40℃以下に、相対湿度を95%以上、100%以下に調整し、前記玄米を8時間以上、72時間以下の範囲で処理することによって、前記玄米が保持する生理作用を利用して、前記玄米の成分を人が食して消化吸収しやすく、さらに人体に有効な成分に変換する処理工程と、
前記玄米を仕上げ基準水分まで乾燥させる乾燥工程と
を具備することを特徴とする高機能米の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、籾の生理機能を活性化することによる、有効成分が豊富で消化吸収性が高い高機能米の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、米の発芽過程において米粒内のデンプン、タンパク質、アミノ酸、食物繊維、フィチンが酵素の働きにより分解され、糖質、γ‐アミノ酪酸(GABA)、遊離必須アミノ酸、ミネラル等の栄養素の含有量が富化される現象を利用して、富栄養化した「発芽米」の製造が行われている。特にGABAには生活習慣病や高血圧等の改善、及び神経抑制によるリラックス効果があることが知られており、日常的な食品におけるGABA富化による栄養改善は、健康増進において多大な効果があると考えられている。発芽米においては、GABAの含有量は、原料である玄米と比較すると発芽処理によって3倍程度に増加するとされている。
【0003】
玄米は、白米と比較してタンパク質、脂肪、ビタミンB群、ビタミンE、ミネラル、食物繊維等の栄養素を豊富に含んでおり、栄養価に優れた食材として知られているが、糠層の食味と食感とが一般に好まれず、通常、米が食される時には、精米して栄養に富む糠層を敢えて除去した白米が選好されている。玄米のみを、または白米に玄米を少量混ぜたものを炊飯し、飯の栄養分の改善を図る炊飯方法もあるが、玄米の食味及び食感の嗜好性の問題に加えて、玄米の糠層は透水性が悪いために白米より長時間の浸漬が必要であるといった調理上の問題もあり、広く普及するには至っていない。
【0004】
一方、発芽玄米は、米の発芽過程において糠層に対して酵素が働いて軟化させるため、白米には及ばないものの、玄米と比較すると柔らかく食べやすく、玄米より食味がよいとされる。前記のようにGABA富化をはじめとする栄養価の向上もあわせて、食用に供する米として良好な特性を有している。
【0005】
ところで、一般には米の発芽のためには水分、温度、及び酸素濃度を調整する必要があると考えられており、胚芽を有する米を一定時間流水中にて保温した状態で浸漬する発芽処理が行われている。
【0006】
この方法による発芽のためには8時間から48時間程度の長時間の浸漬が必要とされていたが、このような長時間にわたる浸漬は、籾殻や糠層の表面等に付いている雑菌の繁殖を促すため、浸漬後に悪臭を発し食味を悪化させる虞がともなっていた。特に、浸漬時に米の発芽に好適とされる20℃〜40℃程度に保温されると、細菌の繁殖に適した温度環境となるため、雑菌の繁殖が顕著であり、熱水処理、蒸気処理、薬剤投入、紫外線照射などの殺菌手段が必要とされていた。このように従来の発芽米は、製造工程が通常の玄米や白米と比較すると煩雑であり、細菌対策をも考慮すると、発芽米製造にあたって必要とされる設備費用や製造費用の負担は重く、浸漬工程の存在が発芽米製造の普及に対する障壁となっていた。
【0007】
また、一般に米の保存性を高めるために、収穫直後に貯蔵に先立って籾の乾燥が行われ、籾の含水率は仕上げ基準水分に調整される。仕上げ基準水分は気候等の米の保存に関する条件に基いて定められ、地域によって異なるが、一般には平均湿量基準含水率14.5%〜16.0%程度の範囲において定められる。
【0008】
従来の発芽玄米製造においては、仕上げ基準水分に調整された籾を籾摺りして籾殻を除去した玄米を用いて発芽処理を行う製造方法が採用されている。すなわち、収穫適期に収穫された籾は平均湿量基準含水率が20%〜26%程度であるのが通例であり、貯蔵に適した含水率よりも水分が多すぎるため、雑菌の繁殖やカビ等による品質低下を防ぐには早期に乾燥させる必要がある。従来の発芽玄米製造方法は、一旦仕上げ基準水分に乾燥した玄米を浸漬して発芽を促し、玄米がハト胸状態となった後に再度、仕上げ基準水分まで乾燥させるため、乾燥工程が少なくとも2回あり、通常の米の製造方法より乾燥工程が多かった。しかも、吸水時及び発芽後の乾燥時には急速な水分変化に起因する胴割れや米粒の破砕といった問題が生じやすく、乾燥工程の増加は品質低下を生じさせる虞があった。
【0009】
これに対し、特許文献1に開示されている発芽玄米製造方法C20においては、収穫適期に収穫された籾を未乾燥のままで浸漬し発芽させて発芽玄米を製造するため、重複する乾燥工程を省くことができる。以下、発芽玄米製造方法C20について、図6に基き説明する。まず、収穫適期に圃場にて刈り取った稲を脱穀して籾C21を得る。一般には脱穀した籾C21は仕上げ基準水分まで乾燥されるが、発芽玄米製造方法C20では、籾C21が乾燥されることなく、そのまま発芽工程C1によって浸漬処理が行われる。温水に対する浸漬処理によって高水分状態となった籾C21はそのまま浸漬・保温されて発芽させられる。こうして発芽処理された発芽籾C22は、脱水機等によって脱水され、続いて乾燥工程C2において加熱乾燥によって湿量基準含水率15.0%〜16.0%まで水分を低下させられる。そして、籾摺り工程C3にて発芽籾C22から籾殻が除去され、発芽玄米C23を得る。
【0010】
【特許文献1】特開2003−325117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示の発芽玄米製造方法C20によると、収穫適期に収穫された籾を早期に浸漬して発芽を行う構成を採用することで、籾の乾燥工程を1回省略することが可能となった。しかし、依然として浸漬工程が必要であったため、前記の浸漬に伴う問題を解決するには至らなかった。さらに、籾を発芽させるため、籾摺りが済んだ玄米を使用する場合と比較すると、籾殻が透水の障害となり浸漬が長時間化するという問題もあった。発芽玄米製造方法C20によれば、未乾燥の籾を使用するために浸漬時間が短縮されるとあるが、それでも18〜20時間の浸漬が必要とされる。
【0012】
さらに、従来の製造方法によって得られる発芽米は肝心の栄養面においても問題があった。浸漬中は米に対して発芽に必要な多量の酸素を供給する必要があるので米は流水中に浸漬されるが、流水中にGABA、ビタミンB群、ミネラル等の水溶性の栄養素が溶出して栄養価が低下しがちでもあった。栄養価の低下は発芽米の最大の価値を減ずるため、改善策が求められていた。
【0013】
また、前記のように従来の発芽玄米は、玄米を搗精して白米又は胚芽米にしようとしても、浸漬及び乾燥の影響で米粒が割れやすくなり、搗精すると砕けやすいため、搗精には不向きであり分搗米や白米とすることが困難であった。そのために、搗精しても砕米にならない高機能米の製造方法が求められていた。
【0014】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、食味がよく水溶性の栄養素を豊富に含んだ高機能米を低コストで製造するために、高温高湿の空気中で処理を行う高機能米の製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の高機能米の製造方法は、「籾の平均水分が、湿量基準含水率30%±5%の範囲にある状態で刈り取り脱穀する刈取・脱穀工程と、
該刈取・脱穀工程で脱穀した前記籾を、内部温度及び内部湿度を調整可能な処理装置にて、装置内の温度を20℃以上、40℃以下に、相対湿度を95%以上、100%以下に調整し、8時間以上、72時間以下の範囲で処理することによって、籾が保持する生理作用を利用して、籾中玄米の成分を人が食して消化吸収しやすい、さらに人体に有効な成分に変換する処理工程と、
前記籾を仕上げ基準水分まで乾燥させる乾燥工程と、
前記籾の籾殻を除去する籾摺り工程と
を具備する」ことを特徴とするものである。
【0016】
ここで、「高機能米」とは、胚芽を有する米が保持する生理作用を利用して、米の成分を人が食して消化吸収しやすい、さらに人体に有効な成分に変換する処理がなされた米のことを言う。また、同変換処理のことを「高機能化」と言う。高機能化の例として、デンプンを糖化したり、グルタミン酸を変換させてGABAを生成したりすることが挙げられるが、こうした生理作用を伴う現象として発芽がある。米が発芽する時には前記の高機能化が進行する。なお、特に搗精していない高機能米のみを指す場合には「高機能玄米」と言い、高機能玄米の胚芽を残して搗精したものを「高機能胚芽米」と言う。高機能玄米を通常の精白米と同様に搗精したものを「高機能精白米」という。また、籾摺り前の高機能米を「高機能籾」と言う。
【0017】
本発明においては、籾の平均湿量基準含水率を30%±5%としているが、籾の含水率は粒、穂、稲株によって個々にバラツキが大きいため、処理時間は8時間以上、72時間以内としている。また、本発明においては、高水分状態の籾を浸漬せずにそのまま空気中で処理するので、乾燥を防ぐために処理を行う処理装置の内部の湿度は可能な限り高く保つ。従って、相対湿度は100%に近い値が望ましいが、技術的な困難を考慮し、95%以上、100%以下としている。
【0018】
温度条件に関しては、籾の生理特性に関する従来技術を参考としているが、浸漬を行わないで空気中で処理を行うために細菌の繁殖の虞が小さいことから、より高い温度域にて処理することが可能である。ただし、40℃を超える高温においては、稲の品種によって生理特性に異常が発生したり、籾が死んでしまうといった問題が生じる場合がある。また、低い温度域に関しては、高水分籾が呼吸によって発熱することを考慮すると、処理を開始する時点における処理装置内の気温が多少低くても、処理工程の進行に伴い次第に上昇する。しかし、20℃未満ともなると生理活性が低下し、高機能化に支障が生じる。以上の理由により、処理工程における温度条件は20℃以上、40℃以下とする。
【0019】
本発明によれば、原料の稲を平均湿量基準含水率30%±5%の状態で刈り取って使用する。平均湿量基準含水率が30%±5%と高い籾を得るために、通常の収穫適期よりも早刈りを行う。含水率が高い籾を使用すると、浸漬によらずとも籾が内部に保有する水分のみで生理的活性化が可能である。ゆえに原料の籾を浸漬することなく処理が可能となり、浸漬にともなう細菌の繁殖を予防し悪臭の発生を防ぐことができる。これにより、従来よりも食味に優れ、衛生的な高機能米の製造が可能となる。
【0020】
浸漬工程がないため、高機能化処理によって得られた栄養素が米粒中から浸漬水へ溶出して栄養価が低下する虞がない。浸漬を行うと、浸漬時間の長さにもよるが、水溶性の栄養分の溶出は避けられない。浸漬による発芽作用にともなう富栄養化に主眼をおいた従来の発芽玄米の製造においては、GABAやビタミンB群の溶出が重大な問題であった。ビタミンB群は白米においては不足するが、玄米には豊富な栄養素であり、ビタミンB群補給は玄米食に期待される重要な点である。GABAに至っては高機能米製造の目的ともいえる栄養素であるため、これらの栄養素の溶出は可能な限り避けたいところである。本発明によれば、これらの主要な栄養素の浸漬水への溶出の虞がないため、理想的な高機能米を提供することができる。
【0021】
また、浸漬を行わないことから、浸漬のために必要な設備が不要となるので、製造者の設備負担が軽減される。すなわち、浸漬槽、浸漬槽のための給排水設備、循環設備、殺菌設備、水切り用の遠心分離装置、予備乾燥用の乾燥機等が不要となる。さらには、例えば、穀物乾燥調整貯蔵施設において本発明の処理工程に必要な設備を備えていれば、高機能米の製造、長期間の貯蔵、及び製品管理等の関連業務を集約し、極めて簡素化することが可能となる。
【0022】
また、本発明によれば、早刈りによって通常よりも5〜10日前に収穫が可能となるため、穀物乾燥調整貯蔵施設における乾燥調整処理の混雑期を避けることができ、収穫作業の負担を軽減することができるとともに、穀物乾燥調整貯蔵施設の稼働率の向上にも寄与することが可能となる。また、より低水分の籾と混ぜることなく高水分籾のみで脱穀、処理、及び乾燥工程を行うことから、高水分籾を原料としながらも、乾燥機に対する高負荷や急速な乾燥による胴割れなどの問題を避けることができる。
【0023】
本発明の高機能米の製造方法は、「籾の平均水分が、湿量基準含水率30%±5%の範囲にある状態で刈り取った稲を、内部温度及び内部湿度を調整可能な処理装置にて、装置内の温度を20℃以上、40℃以下に、相対湿度を95%以上、100%以下に調整し、8時間以上、72時間以下の範囲で処理することによって、籾が保持する生理作用を利用して、籾中玄米の成分を人が食して消化吸収しやすい、さらに人体に有効な成分に変換する処理工程と、
該処理工程を経過した前記稲を脱穀する脱穀工程と、
前記籾を仕上げ基準水分まで乾燥させる乾燥工程と、
前記籾の籾殻を除去する籾摺り工程と
を具備する」構成とすることもできる。
【0024】
本構成によれば、稲藁が付いたままで籾を処理して高機能化を行うため、圃場にて稲を刈り取った後、脱穀せずとも処理が可能である。すなわち、処理工程においては籾が処理に適した水準の高水分状態でなくてはならないため、早刈りした稲を乾燥させてはならないが、脱穀機能を備えていない古い農機具や手作業で刈り取りを行った場合等、直ちに脱穀できない状況においても、脱穀を後工程とし処理を優先して行うことが可能である。
【0025】
また、本発明の高機能米の製造方法は、「圃場に立毛中の籾の平均湿量基準含水率が20%以上、30%以下の範囲にある状態で、圃場において立毛状態のままで稲を覆い、前記稲の周囲の温度を20℃以上、40℃以下に、相対湿度を95%以上、100%以下に調整し、8時間以上、72時間以下の範囲で処理することによって、籾が保持する生理作用を利用して、籾中玄米の成分を人が食して消化吸収しやすい、さらに人体に有効な成分に変換する処理工程と、
該処理工程を経過した前記稲を刈り取り脱穀する刈取・脱穀工程と、
前記籾を仕上げ基準水分まで乾燥させる乾燥工程と、
前記籾の籾殻を除去する籾摺り工程と
を具備する」構成とすることもできる。
【0026】
本構成によれば、刈り取り前に圃場において立毛状態の稲の高水分籾を高機能化処理するため、刈り取り後に処理装置によって処理する必要がない。すなわち、刈り取り後の工程は通常の米の収穫と同様でよいため、さらに費用低減と省力化とを果たすことが可能となる。
【0027】
また、本発明の高機能米の製造方法は、「内部温度及び内部湿度を調整可能な処理装置にて、籾に気温30℃以上、60℃以下で相対湿度100%の空気を接触させることによって生じる前記籾表面の結露水を、前記籾に平均湿量基準含水率が約33%となるまで吸湿させる気中吸湿工程と、
前記処理装置内の温度を20℃以上、40℃以下に、相対湿度95%以上、100%以下に調整し、前記籾を8時間以上、72時間以下の範囲で処理することによって、前記籾が保持する生理作用を利用して、前記籾中玄米の成分を人が食して消化吸収しやすく、さらに人体に有効な成分に変換する処理工程と、
前記籾を仕上げ基準水分まで乾燥させる乾燥工程と
前記籾の籾殻を除去する籾摺り工程と
を具備する」構成とすることもできる。
【0028】
本構成によれば、気中吸湿工程において高温高湿の空気を用いて籾の表面に結露を生じさせ、籾に水を吸収させる。その後に処理工程によって籾を処理し高機能米にする。これにより、籾の含水率が低い場合にも浸漬を行うことなく処理することができる。浸漬しないので、栄養分が浸漬水中に溶出したり、浸漬水中で細菌が繁殖したりする虞がない。本構成によれば、通常の収穫適期に収穫した籾や、一旦乾燥を行った籾を使用しても高品質な高機能米を製造することが可能となる。
【0029】
また、本発明の高機能米の製造方法は、「内部温度及び内部湿度を調整可能な処理装置にて、玄米に気温30℃以上、60℃以下で相対湿度100%の空気を接触させることによって生じる前記玄米表面の結露水を、前記玄米に平均湿量基準含水率が約33%となるまで吸湿させる気中吸湿工程と、
前記処理装置内の温度を20℃以上、40℃以下に、相対湿度95%以上、100%以下に調整し、前記玄米を8時間以上、72時間以下の範囲で処理することによって、前記玄米が保持する生理作用を利用して、前記玄米の成分を人が食して消化吸収しやすく、さらに人体に有効な成分に変換する処理工程と、
前記玄米を仕上げ基準水分まで乾燥させる乾燥工程と
を具備する」構成とすることもできる。
【0030】
本構成によれば、籾摺りが済んだ玄米を原料として使用して高機能米を製造する。玄米は籾と比較してより透水性が高いので、吸水が早く、且つ、含水率のむらを解消しやすい。これにより、気中吸湿工程による原料の高水分化を容易かつ円滑に行うことができる。また、籾殻が除去されていることから籾を原料とした場合より容積が減少し、処理設備を小型化したり、一度に処理できる量を増大させたりして製造効率を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
このように、本発明によれば、高水分状態で早刈りした籾を浸漬することなく高温高湿の空気中で処理することによって食味と栄養に優れた高機能米を製造し、製造設備の簡素化も同時に実現することが可能な高機能米の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態である高機能米製造方法1について、図1及び図2に基き説明する。図1は本発明の高機能米製造方法の第一実施形態の構成を示す説明図であり、図2(a)は高水分籾の長さ−幅断面を示す説明図であり、図2(b)は処理直後の高機能籾の長さ−幅断面を示す説明図である。
【0033】
本実施形態の高機能米の製造方法1は、図1に示すように、高水分状態で刈り取った稲を脱穀して高水分籾4を得る刈取・脱穀工程S1、脱穀した高水分籾4を、温度及び湿度を調節できる処理装置で処理して高機能籾5にする処理工程S2、乾燥工程S3、及び籾摺り工程S4から構成されている。
【0034】
さらに詳細に説明すると、本実施形態においては、籾が通常の収穫適期とされる水分状態より高水分状態において原料の稲を刈り取る。通常ならば収穫した籾の平均湿量基準含水率は20〜26%程度であるのに対し、早刈りすることによってより水分を多く含む高水分籾4を得ることができる。高水分籾4は平均湿量基準含水率が30%±5%である。
【0035】
高水分籾4の収穫にあたってコンバインを使用する場合には、高水分稲3を刈り取りしながら脱穀を行う。なお、収穫にはコンバインでなくとも、バインダー等を用いて刈り取りを行い、別途脱穀を行ってもよい(刈取・脱穀工程S1)。
【0036】
前記のように本実施形態における高水分籾4は、30%±5%と高い平均湿量基準含水率を有する。このため、浸漬を行うことなく処理するのに十分な水分を内部に有している。脱穀された高水分籾4は、装置内部に所定の量の籾を収納・保持し、内部の温度及び湿度を調整可能な処理装置によって温度及び湿度を管理された状態で所定の期間保持される(処理工程S2)。
【0037】
処理が進行する前に高水分籾4が乾燥すると処理効果が低下する虞がある。また、温度が適した範囲を外れて上下するとやはり処理が停止する虞があるため、処理装置には空調装置が備えられ、装置内部の気温は20℃〜40℃に、そして、高水分籾4の保有水分をできるだけ減少させないために相対湿度は95%〜100%に保たれる。特に処理時には籾が呼吸によって発熱するため、温度を低下させなくてはならず、冷房又は換気を行う必要があるが、同時に、処理工程を通じて籾が乾燥し過ぎないように処理装置内の湿度を保つための加湿装置を備える。そして、処理装置にて処理される高水分籾4は、熱と水分の偏りを予防するために処理装置内に設置の攪拌機などの攪拌手段によって攪拌されながら、処理が進行して高機能化されるまで8時間〜72時間保持される。
【0038】
所定の時間が経過し、高水分籾4が高機能化され、図2(b)に示すような状態の高機能籾5となったら処理工程S2を終了し、乾燥工程S3へと移る。乾燥工程S3において、籾乾燥機等によって籾の含水率は仕上げ基準水分まで低下させられる。なお、各地にある乾燥調整貯蔵施設の設備は高水分籾4に対応可能であるので、乾燥工程S3以降の工程は乾燥調整貯蔵施設においても実施が可能である。高機能米製造にあたっては、過処理になると米粒が持っていた栄養素は消費され、食材としての栄養価値は減少するため、処理工程S2における過処理を防ぐ必要がある。これに対し、乾燥工程S3において含水率を低下させることによって処理を確実に停止させることができる。処理工程S2の終了後は速やかに乾燥工程S3に移行し、水分を減少させて過処理を防ぐ。また、処理工程S2の終了後の籾を20℃以下の低温に晒すことによっても過処理を防ぐことができる。
【0039】
適切な含水率まで乾燥したら、一般の籾摺り機によって高機能籾5の籾殻31を除去し、高機能玄米2として調整する(籾摺り工程S4)。高機能玄米2は、搗精して糠層32を除去し、胚乳33と胚芽34とからなる高機能胚芽米としてもよい。
【0040】
本実施形態の高機能米製造方法1によれば、高水分稲3を脱穀した後、高水分籾4を浸漬せずにそのまま処理を行うため、従来の発芽玄米C23と比較して食味と栄養に優れた高機能玄米2を製造することが可能である。また、浸漬を行わないため、臭気や衛生面の問題が生じる虞が小さく、品質に優れた高機能米を安定して製造することができる。浸漬槽が不要なため、浸漬槽の付帯設備も含めて設備の簡素化が可能である。さらに、殺菌の必要が乏しいことにより、紫外線照射、薬剤の投入、蒸気噴霧等の殺菌処理が不要となり、さらに設備の簡素化を果たすことができる。
【0041】
また、高水分籾4の含水率は、通常の収穫期の籾の平均湿量基準含水率が20%〜26%程度であることを考慮すると非常に水分が多く、乾燥調整貯蔵施設においては一般的な含水率の籾と混在すると乾燥処理が困難となるため、通常は収穫には適さないとされるものである。しかし、本実施形態においては、通常の収穫適期よりも5日〜10日早く収穫し、より含水率の低い通常の籾とは別々に分けて高水分籾のみで脱穀を行うことに加え、乾燥工程は脱穀から時間をおいた後工程とするため、高水分籾4の利用による乾燥調整貯蔵施設において施設に負担がかかる問題を防止できる。
【0042】
次に、本発明の第二実施形態である高機能米製造方法10について、図3に基き説明する。本実施形態によれば、前記の高機能米製造方法1とは異なり、刈取工程S7において刈り取られた高水分稲3は脱穀されずにそのまま処理工程S2にて処理を受ける。そして、処理工程S2の後に脱穀工程S5が行われ、処理された高機能籾5が得られる構成となっている。
【0043】
高機能米製造方法10によれば、脱穀工程S5よりも処理工程S2が先であり、高水分稲3を脱穀する前に処理を行うものである。脱穀を処理の後とすることにより、刈り取り後すぐに脱穀ができない場合であっても、収穫した高水分稲3の籾の含水率を低下させることなく処理して高機能化することが可能である。
【0044】
次に、本発明の第三実施形態である高機能米製造方法50について、図4に基き説明する。本実施形態によれば、圃場において、籾が高水分状態にある立毛中の高水分稲51を処理して高機能籾5を製造する(立毛中処理工程S6)。稲が立毛中の圃場において、上方及び側方を覆う形状のプラスティック製のシートと金属フレーム等で構成されたテント状の天蓋を圃場に被せ、天蓋内を高温高湿状態に維持し、立毛中の高水分稲51を高機能化処理する。立毛中処理工程S6の温度条件は20℃〜40℃、湿度条件は95%〜100%であり、処理時間は8〜72時間である。天蓋内の温度及び湿度は日照等の天候条件によって左右されるが、シートを多重にしたり素材を変更したりすることによって、天蓋の断熱性能を変化させ、内部の温度及び湿度を高機能化処理に適した条件に対応させる。
【0045】
高機能米製造方法50によれば、立毛中の稲を高機能化した後に刈り取るため、収穫後の高機能籾5から高機能玄米2を製造するにあたって刈取・脱穀工程S1、乾燥工程S3、籾摺り工程S4等の各工程は、通常の玄米や白米を製造するときの工程と同様でよい。また、収穫後の各工程の設備についても従来のものを利用できる。従って、製造工程及び設備に関して従来のものをほぼそのまま利用して高機能米製造が可能となり、費用低減と省力化において大きな効果が期待できる。
【0046】
さらに、本発明の第四実施形態である高機能米製造方法70について、図5に基き説明する。高機能米製造方法70においては、籾71を原料とし、気中吸湿工程S8において、処理装置に籾71を入れ、装置内に気温30〜60℃、相対湿度100%の高温高湿の空気を送入して籾71に接触させる。籾71の表面には結露が生じ、結露によって表面が水分に覆われた籾71は吸湿し、平均約33%まで湿量基準含水率が上昇する。吸湿が前記の水準まで進んで高水分籾4となったら、処理工程S2へと移行し、処理装置内の気温を20℃〜40℃に、相対湿度を95%〜100%とし、8時間〜72時間保持して処理して高機能籾5を得る。そして、乾燥工程S3及び籾摺り工程S4を経て高機能玄米2が製造される。
【0047】
なお、高機能米製造方法70においては当初より高水分籾を使用する必要はない。適度に乾燥した籾の方が収穫後の取り扱いや保管が容易であるので、通常の収穫適期において収穫された籾、または収穫後に仕上げ基準水分まで乾燥された籾が高機能米製造方法70の原料として好適である。気中吸湿工程S8において吸湿させるので、籾は予備乾燥程度の乾燥状態のものでもよいし、未乾燥で通常より水分を多く含む状態のものであってもよい。また、籾摺りが済んで籾殻が除去された玄米を用いてもよい。玄米を使用する場合には、籾を使用する場合よりも製造効率の改善が期待できる。すなわち気中吸湿工程S8において籾よりも玄米は透水性が高いので、高水分状態になるまでの時間を短縮、且つ、吸湿状態のむらを解消しやすい。また、籾殻が除去されているので容積が小さくなり、処理装置を小規模なものにすることができる。
【0048】
高機能米製造方法70によれば、高温高湿の空気によって籾の表面に結露を生じさせて吸湿させるため、籾を浸漬することなく高機能化処理に必要な水を籾に吸収させることが可能である。浸漬を行わないので浸漬水の中に栄養素が溶出する虞がない。また、空気中で処理を行うため、籾に吸湿させながらも細菌の繁殖による悪臭の発生や有害物質の発生といった問題も防ぐことができる。
【0049】
また、高機能米製造方法70によれば、処理装置を用いて気中吸湿工程S8と処理工程S2とを両方行うことができるため、含水率が低下した米を使用して高機能米を製造する場合にも、浸漬工程が不要であり、浸漬設備とそれに伴う付帯設備とを省略することができる。
【0050】
また、高機能米製造方法70において使用される設備は、前記の高機能米製造方法1においても使用可能であるため、複数の製造方法を用いて高機能米製造を行うことが可能である。例えば、通常の収穫適期より早期に収穫した高水分籾4を使用し、高機能米製造方法1によって収穫適期より早くに高機能米の製造を開始するとともに、収穫適期において収穫した米を予備乾燥して保管しておき、高機能米製造方法1による高機能米製造が終了した後に高機能米製造方法70によって引き続き高機能米を製造することが可能である。これにより、製造設備の稼働率を向上させて高機能米製造の収益性を改善するとともに、品種や風味において多様な高機能米を製造することも可能となる。
【0051】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0052】
すなわち、高機能米製造方法10では、処理工程S2の終了後に脱穀工程S5を経てから乾燥工程S3において乾燥機を用いて高機能籾5を乾燥させるものを示したが、処理工程S2の終了後、脱穀工程S5の前において、高機能化処理を行った稲を天日干しして乾燥させる構成であってもよい。これにより、籾の含水率の低下が緩やかな乾燥が可能となり、胴割れの減少や食味の改善といった効果が期待できる。また、伝統的な技法によって生産されることで、製品に付加価値が生じることも考えられる。仮に天日干しでは不十分な乾燥状態となっても、乾燥工程S3において仕上げ乾燥を行って適切な含水率にすることができる。また、天日干しで十分に乾燥させることができれば、乾燥機を用いた乾燥工程S3をごく短いものとすることができる。同様に、高機能米製造方法50においても、刈取・脱穀工程S1において、刈り取りと脱穀との間に天日干しを行ってもよい。
【0053】
本発明によって得られた高機能米は、通常の玄米同様に搗精の度合いによって栄養素と食味とを様々に調整することが可能である。すなわち、玄米を搗精するときに、五分搗き、あるいは七分搗きといった胚芽が残る搗精方法で糠層のみを除去して、白米に近い食味と胚芽部分の栄養とを両立させる胚芽米とすることもできる。また、本発明によって得られた高機能米は、搗精前の玄米のままでも、処理工程において浸漬を行わないために細菌の繁殖が抑えられており、臭気や食味において従来の発芽玄米より優れており、そのまま炊飯して食するのに適している。
【0054】
また、高機能玄米2を加工して様々な米加工食品を製造することも可能である。前記の高機能玄米2、高機能胚芽米、及び高機能精白米を使用することで、様々な米加工食品においてGABA等の栄養を富化することができる。例えば、高機能胚芽米を炊飯して真空パックした冷凍米飯製品等が挙げられる。その他にも、高機能米を原料とする玄米粥等のレトルト入り米加工食品、米味噌、米菓等の製品を提供することが可能である。また、高機能米を粉末状にして米粉として各種加工食品の原料としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第一実施形態である高機能米製造方法を示す説明図である。
【図2】高水分籾及び高機能籾の長さ−幅断面を示す説明図である。
【図3】本発明の第二実施形態である高機能米製造方法を示す説明図である。
【図4】本発明の第三実施形態である高機能米製造方法を示す説明図である。
【図5】本発明の第四実施形態である高機能米製造方法を示す説明図である。
【図6】従来の発芽玄米製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
S1 刈取・脱穀工程
S2 処理工程
S3 乾燥工程
S4 籾摺り工程
S5 脱穀工程
S6 立毛中処理工程
S8 気中吸湿工程
1 高機能米製造方法
2 高機能玄米
3 高水分稲
4 高水分籾
5 高機能籾
51 立毛中の高水分稲
71 籾
【出願人】 【識別番号】306013223
【氏名又は名称】安藤 年治
【識別番号】306013212
【氏名又は名称】安藤 艶子
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次


【公開番号】 特開2008−639(P2008−639A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−169617(P2006−169617)