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【発明の名称】 ドラフトチャンバー
【発明者】 【氏名】春原 伸次

【氏名】瀧谷 一宏

【要約】 【課題】化学実験等にて用いられる背面に有害ガス等を排出するための排気路を形成するバッフルパネルを備えたドラフトチャンバーで、作業室内よりの逆流や作業室内での乱流が生じないように開口部での空気流の流速が均一になるようにする。

【解決手段】ドラフトチャンバーの背面に配置される排気路を形成するバッフルパネルを上方より上部パネル、中部パネル、下部パネルの三つにて形成し、天井と上部パネル、各パネル間、下部パネルと作業台との間に夫々隙間を設けて排気路へ流入排出するようにしたもので、更にバッフルパネルとドラフトチャンバーの側壁面との間に隙間を設けることにより、この隙間からも排気路に気流を流入させ排出することにより、ドラフトチャンバー開口部での流速を均一化した。更にバッフルパネルの中央に開口を設けることにより、一層の流速の均一化を図るようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面に沿って配置されたバッフルパネルとの間に排気路を形成し、上部に設けられた排気口より実験台上の実験室内の空気を前記排気路を通って排気口より排出し得るようにしたドラフトチャンバーで、前記バッフルパネルが排気口側より順に上部パネル、中部パネル、下部パネルの三つのパネルにより形成され、前記上部パネルとドラフトチャンバーの上部壁および各バッフルパネル間、更には下部バッフルパネルと作業台との境界に夫々水平方向の隙間を設け、更にバッフルバネルの左右端面とドラフトチャンバーの左右の壁面との境界に夫々垂直方向の隙間を設けたことを特徴とするドラフトチャンバー。
【請求項2】
前記バッフルパネルの中央部に、水平方向に長い開口を形成したことを特徴とする請求項1のドラフトチャンバー。
【請求項3】
前記開口が下部パネルに形成されていることを特徴とする請求項2のドラフトチャンバー。
【請求項4】
前記開口が下部パネルの上端にパネルの中心より左右に伸びる形状である請求項3のドラフトチャンバー。
【請求項5】
上記中部パネル及び下部パネルの上下方向の長さを夫々h1、h2、上記開口の上下方向の長さをh3、上記中部パネル及び下部パネルの水平方向の長さをいずれもt1、上記開口の水平方向の長さをt2、上記下部パネルの端部より開口までの水平方向の長さをt3とする時、次の関係を有する請求項4のドラフトチャンバー。
t3:t2:t3が3.5:3:3.5から2.5:5:2.5の範囲内で、h2:h3:h1が4.0:3.0:3.0から2.5:2.0:5.5の範囲内である。
【請求項6】
バッフルパネルが次の関係を有する開口を有する請求項5のドラフトチャンバー。
t3:t2:t3=3:4:3、h1:h3:h2=3:3:4
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラフトチャンバーに関するもので、特にドラフトチャンバーの背面に設けられた排気路を形成するためのバッフルバネルに特徴を有するドラフトチャンバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ドラフトチャンバーは、化学薬品等を使用しての実験を行なう際に発生する有害なガスや粒子による作業者の危険を防止するためのものである。つまり、実験の際に発生するガスや粒子等の有害物質を囲い込み、これを排出、除去するための装置である。そのため、ドラフトチャンバーは、作業台上の作業を行なう部分を覆う作業室を有し、この作業室内の気体を排出して危険物質を同時に排出除去するための排気路や排気口が設けられている。
【0003】
このドラフトチャンバーは、実験を行なうための開口を有し、前記の排気路を通り排気口よりの気体の排出により、作業室内は作業のための開口より空気が流入し、作業室内を通り排気路を通って排気口より排出される気流が生ずる。
【0004】
図3は、従来のドラフトチャンバーの概略図で、同時に気流の状況を示している。
【0005】
これら図において、20はドラフトチャンバー、21は作業台で、その上部が作業室22になっている。又、ドラフトチャンバー20の背面23の前にはバッフルパネルと称する板状の部材24が取り付けられ、ドラフトチャンバーの背面23とこのバッフルパネル24との間に排気路25が形成される。又、この排気路25の上部には排気口26が形成されている。
【0006】
このバッフルパネル24の下端は作業台21との間に若干の隙間27が設けられ、作業台21上の空気は、この隙間27より排気路25に流入し、排気路25を上昇して排気口26より排出される。
【0007】
この図3に示す従来のドラフトチャンバーは、バッフルパネル24が上部パネル24Aと下部パネル24Bとより構成されており、パネル24Aとパネル24Bとの間にも一定の隙間28が形成されており、パネル24Aの上側端面と天井との間にも一定の隙間29が形成されている。
【0008】
したがって、前記の隙間27のほか、上部パネル24Aと下部パネル24Bとの間の隙間28および上部パネル24Aと天井との間の隙間29からも排気される。
【0009】
一方上部パネル24Aおよび下部パネル24Bの夫々の左右端部とドラフトチャンバーの左右の側壁面との間は密着されていて隙間は存在しない。
【0010】
尚、ドラフトチャンバー20の前面には、サッシ(昇降扉)30が設けられ、実験を行なう際は、サッシ30を開けて作業を行ない得るように構成されている。
【0011】
ここで図3において(A)は作業を行なうためにサッシ30を開けた状態の気流の状況を示し、又(B)はサッシ30を閉じた状態で、その時の気流の状況を示す。
【0012】
又、図4は、他の従来のドラフトチャンバーを示す図である。この従来のドラフトチャンバーは、バッフルパネル24が上部パネル24A、下部パネル24Bの他に、天井付近に傾斜させ配置されたパネル(傾斜パネル)24Cを設けたもので、傾斜パネル24Cの上端にも隙間31が形成されている。
【0013】
この図4に示す従来例も、上部パネル24A、下部パネル24B、傾斜パネル24Cの左右端部は、ドラフトチャンバーの左右の側壁面に密着配置されていて、各パネルの左右端面には隙間が形成されていない。
【0014】
したがって、気体は隙間27、28の他に隙間31からも排気路25を通り排気口26より排出される。
【0015】
この従来例のドラフトチャンバーは、図4に示すような気流の状況となる。
このようなドラフトチャンバーにおいては、前述のように作業室22から排気路25を通り排気口26より作業室22内の空気が排出される。これにより、実験により発生した有害ガスや有害な粒子等は排出除去される。
【0016】
このような安全性を確保するためと、好ましい状態にての実験を行ない得るようにするためには、内部で発生する乱流が少ない空気の流れを確保する必要がある。しかも、例えば実験中に作業室に流れ込む気流の各箇所での流速がほぼ等しく流量が一定で安定した流れを得ることが望ましい。つまり、流速等が均一でない場合、乱流が生じ、流れに大きな乱れが生ずることになり好ましくない。そのために、図3、図4に示すような従来のドラフトチャンバーは、バッフルパネルにおける隙間27、28等の配置位置(高さ)や、隙間の大きさ等が適切なものになるように工夫されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の発明者は、従来のドラフトチャンバーにおいて気流の測定を行なった結果、ドラフトチャンバーの側面の内側(作業室側)の壁面に沿って流速がかなり低下すると共に、ドラフトチャンバーの内側面より僅かに離れた箇所は逆に流速が大であることを見出した。しかも、この流速が大になる箇所から中心に向けては一定の間隔で流速が大である状態であり、中心付近では、一定の間隔、流速が小であることも明らかになった。
【0018】
この現象により、作業室内において、特に水平方向に向けての流速の変化が存在し、これによる乱流や作業室内からの若干の逆流が起こることも観測された。
【0019】
本発明は、開口部における流れを均一化し又効率の良い排気をなし得るようにしたドラフトチャンバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のドラフトチャンバーは、その背面に沿って配置されたバッフルパネルとの間に排気路を形成し、これにより上部に設けられた排気口より実験台上の実験室内の空気をこの排気路を通って排気口より排出するようにしたもので、バッフルパネルを複数のパネル(例えば排気口側より作業台側へ順に、上部パネル、中部パネル、下部パネル)にて構成したもので、ドラフトチャンバーの天井部分の上部壁面と上部パネルの間、各パネルの間および下部パネルと作業台との間に夫々隙間を設けたもので、更にドラフトチャンバーの側壁面と各パネルの左右端の間にも隙間を設けたことを特徴とする。
【0021】
これにより、前記の課題であるドラフトチャンバー開口部より作業室内へ流入する気流の流速を均一化して(特に水平方向の流速を均一にして)、作業室内を乱流等の生ずることのない良好な状態を保ち得るようにした。
【0022】
本発明のドラフトチャンバーは、このように排気路を形成するバッフルパネルの左右端部とドラフトチャンバーの左右側壁面との間に隙間を形成することにより、ドラフトチャンバー側壁面に沿って流れる空気流をこの隙間より直接排気路へ導くことにより、従来例では流速が小であった側壁面に沿った流速を高め、これにより、側壁面から僅かに離れた位置での流速をおさえることにより水平方向の流速の均一化を図るようにしている。つまり、ドラフトチャンバーの側壁面より僅かに離れた位置から、水平方向内側にかけての流速の大である部分の流速をおさえ、これにより流速が小である中央部分との流速の差を少なくしてドラフトチャンバー開口部より流れ込む空気流の水平方向の流速を均一化し得るようにした。
【0023】
更に、本発明のドラフトチャンバーは、その背面に排気路を形成するために設けたバッフルパネルをその中央に水平方向に伸びる長方形状の開口を設けた構成としたことを特徴とする。
【0024】
本発明のドラフトチャンバーは、そのバッフルパネルに開口を設けることにより、この開口を通しての排気を可能にし、これにより、中央部分の流速を高め逆に作業室の左右の部分における流速をおさえ、水平方向において一層均一な流れを形成するようにした。
【0025】
これにより、作業室内の気体の流れに乱れ等が生ずることがなくなり、一層安全に作業を行ない得るようにした。又、作業室内の気流の安定化により、一層良好な作業が可能になる。
【0026】
即ち、本発明のドラフトチャンバーは、バッフルパネルを前記のような構成にすると共に、バッフルパネル全体の中央付近に水平方向に長い開口を設けたことを特徴とする。
【0027】
本発明のドラフトチャンバーにおいて、バッフルパネルに上記のような開口を設けることにより、この開口より排気路を通って排気口より排出される流れにより、開口部中央より作業室に流入する気流の速度を大にして、一層水平方向の流速の均一化が可能になる。
【0028】
この場合、上部パネル、中部パネル、下部パネルのうちの下部パネルの上端部に中心より左右に伸びる水平方向に長い開口を設けることが好ましい。
【0029】
本発明のドラフトチャンバーにて配置されるバッフルパネルの具体的構成は、排気口側より少なくとも上部パネルと中部パネルと下部パネルとにて構成され、ドラフトチャンバーの側壁面とパネル間に一定の隙間を設け更に下部パネルの上側端面でその中心より左右に水平に伸びる開口を設けたものである。
【0030】
本発明のドラフトチャンバーは、前記のように、バッフルパネルの下部パネルの上側端面に中心より左右に水平に伸びる開口を設けることにより、この開口を通して作業室内の空気が排気路を通って流れ出るようにして、上下方向、左右方向(垂直方向、水平方向)に関するいずれの方向にても均一な流れを得ることを可能にした。これにより、少なくともドラフトチャンバーの作業室内より、作業者側の外部への逆流を生ずることは全くなく、極めて安全に作業を行ない得ると共に、作業室内の気流は常に安定した状態を保ち作業を良好に行ない得る。
【0031】
特に、開口の配置位置との大きさを特定することにより、その効果を一層高めることが可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明のドラフトチャンバーは、その排気路を形成するバッフルパネルとドラフトチャンバーの側壁面との間に隙間を設けることにより、ドラフトチャンバー開口部より流入する気体の水平方向の流速を均一にすることにより、作業室内の乱流の発生を防止する等、気流の状態を良好なものとして良好な作業を行ない得ると共に危険物の排出を確実なものとした。
【0033】
又、バッフルパネルの中央部分に水平方向に長い開口を設けることにより、その効果を一層向上させるようにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施の形態を図示する実施例をもとに説明する。
【実施例1】
【0035】
本発明の実施例1は、図1、図2に示す構成である。これら図1、図2のうち、図1はドラフトチャンバーの開口部分の正面図、図2は断面図である。
【0036】
これら図において、1がドラフトチャンバー、2は作業台、3は作業室でその後方のドラフトチャンバー1の背面側に従来例と同様のバッフルパネル4が配置されている。そして、このバッフルパネル4とその後方のドラフトチャンバーの背面との間が従来例と同様排気路を形成し、その上部に排気口が設けられている。つまり、バッフルパネル4の構成以外は、従来のドラフトチャンバーと実質上同じ構成である。
【0037】
この実施例1のドラフトチャンバー1は、その背面側に設けられているバッフルパネル4が図1、図2に示すように上部パネル4Aと中部パネル4Bと下部パネル4Cの三つのパネルにて構成され、作業台2と下部パネル4Cとの間には隙間5が、中部パネル4Bと下部パネル4Cとの間には隙間6が、上部パネル4Aと中部パネル4Bとの間には隙間7が形成されている。又、上部パネル4Aと天井との間にも隙間7aが形成されている。
【0038】
更にこれら上部パネル4A、中部パネル4B、下部パネル4Cの夫々の左右端とドラフトチャンバー1の側壁1aとの間にも隙間11が形成されていることを特徴とする。
【0039】
又、この実施例1のドラフトチャンバー1は、図1に示すように、パッフルパネル4の中央部分に開口10が形成されている。具体的には、下部パネル4Cの上端に、図示するような開口10が設けられている。
【0040】
これにより、この実施例1のドラフトチャンバー1は、開口部より乱入する空気流のうち側壁1aの内面に沿って流れる空気流は、隙間11より排気路に流れ込む。又、下部の隙間5、中央の隙間6、上部パネル4Aの上下の隙間7aと7、左右の隙間11および下部バッフルパネル4Cの開口10を通り作業室へ流入する空気は図2に示すように流れる。
【0041】
このように、本発明の実施例1のドラフトチャンバーは、側壁面に沿って流れる空気流を隙間11より排気路へ流入させることによりその流速を加速し、これによりこの流れの内側の流速が大になるのを抑えて、更に中央の流れの流速とが比較的均一な流れになっている。
【0042】
更にバッフルパネル4の中央部分に長方形状の開口10を形成することにより、前述の作業室へ流れ込む気流のうちの流速が小である中央部分が開口10を通って、排気路へ流れ排気口より排出されるため、その流速が速くなる。
【0043】
したがって、ドラフトチャンバー外から作業室へ流れ込む気流は、上下方向のみならず左右方向も均一な流速が得られる。
【0044】
ここで、この実施例1におけるバッフルパネル自体の、特に開口10の位置、大きさは次の通りである。
【0045】
図1において、h1は中部パネル4Bの上下方向の長さ(高さ)、h2は下部パネル4Cの上下方向の長さ(高さ)、h3は下部パネル4Cに形成される開口10の上下方向の長さ(高さ)である。
【0046】
又、図1において、t1はパネルの水平方向の長さ、t2は開口10の水平方向の長さである。又、t3は、下部パネル4Cの端面より開口10までの水平方向の長さである。つまり下部パネル4Cの左端より開口10の左端までの水平方向の長さ及び下部パネル4Cの右端より開口10の右端までの水平方向の長さが夫々t3である。
【0047】
この実施例1においては、h1:h3:h2がほぼ3:3:4であり、t2:t1はほぼ4:10つまり、開口10から夫々パネルの左右の端面までをt3とすると、t3:t2:t3がほぼ3:4:3である。
【0048】
実験の結果、実施例1に示す通りの開口の位置および大きさが最も望ましい。
【0049】
しかし、開口の幅t2は、t3:t2:t3が3.5:3:3.5から2.5:5:2.5の範囲内であれば十分効果が得られる。同様に上下方向の高さh3はh2:h3:h1が4.0:3.0:3.0から2.5:2.0:5.5の範囲内であれば同様の効果が得られる。
【0050】
即ち、本発明のドラフトチャンバーのバッフルパネルに形成する開口は、水平方向の長さt2が、0.8t3<t2<2t3の範囲内であり、又垂直方向の長さh3が、0.7h2<h3<1.2h2の範囲内であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明はドラフトチャンバーに関するもので、特にその背面に作業室内に排気により有害ガス、物質を排出して安全な作業を行ない得るようにバッフルパネルを配置して排気路を形成したもので、しかもこのバッフルパネルの左右端部とドラフトチャンバーの左右側壁面との間に隙間を設け、これにより開口部における空気の流れをより均一にし、又排気の効率化をはかることにより一層の安全性を確保して安全に作業が行なえるようにし、更に気流の均一化による良好な実験を行ない得るようにした。
【0052】
又、バッフルパネルの中央部分に水平方向に長い開口を設けることにより気流の一層の均一化が可能になり、更に良好な作業を行なうことを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のドラフトチャンバーの実施例の正面図
【図2】前記実施例における気流の状態を示す図
【図3】従来のドラフトチャンバーの気流の状態を示す図
【図4】他の従来のドラフトチャンバーの気流の状態を示す図
【符号の説明】
【0054】
1 ドラフトチャンバー
2 作業台
3 作業室
4 バッフルパネル
4A 上部バッフルパネル
4B 中部バッフルパネル
4C 下部バッフルパネル
5、6、7 隙間
8 排出路
9 排出口
10 開口
11 隙間
【出願人】 【識別番号】000133467
【氏名又は名称】株式会社ダルトン
【出願日】 平成19年5月31日(2007.5.31)
【代理人】 【識別番号】100075867
【弁理士】
【氏名又は名称】向 寛二


【公開番号】 特開2008−296129(P2008−296129A)
【公開日】 平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願番号】 特願2007−144862(P2007−144862)