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【発明の名称】 糖側鎖型ポリマーを用いたレクチン吸着剤
【発明者】 【氏名】永岡 昭二

【氏名】佐藤 崇雄

【氏名】高藤 誠

【氏名】伊原 博隆

【氏名】堀川 真希

【氏名】中嶋 康二

【氏名】丸山 学士

【要約】 【課題】吸着容量が大きく、かつ、吸着容量や吸着力・固定化力を制御することが可能となる、簡便に製造できるレクチン吸着剤を提供する。

【構成】式(2)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖側鎖型ウレアポリマーからなるレクチン吸着剤。
【請求項2】
糖側鎖型ウレアポリマーが2種以上の糖側鎖型ウレアモノマーのコポリマーである、請求項1記載のレクチン吸着剤。
【請求項3】
糖側鎖型ウレアポリマーが2種以上の糖側鎖型ウレアポリマーのブレンドポリマーである、請求項1記載のレクチン吸着剤。
【請求項4】
糖側鎖型ウレアポリマーが架橋材と共重合されたものである、請求項1乃至2記載のレクチン吸着剤。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の糖側鎖型ウレアポリマーを高分子材料又は無機微粒子に結合した、レクチン吸着剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、レクチンを認識するための分子素子をもち、効率的にレクチンを分離、精製できる、レクチンの吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
レクチンとは、血液凝集素とも呼ばれ、糖と相互作用する蛋白質あるいは糖蛋白質であり、赤血球等の細胞を凝集させたり、糖複合体を沈降させたりする特異な性質を持っており、動物、植物、微生物などの殆どの生物種に存在している生理活性物質である。
現在では、植物性から動物性のものまで、抗体など免疫学的産物ではない、結合価が2価以上の糖結合性細胞凝集素を広く、レクチンと呼ぶようになっている。1951−1952年には、W.T.J.MorganとW.M.Watikinsは、ABO式血液型特異的レクチンがそれぞれの血液型特異性の違いに対応して、異なった単糖で凝集活性が阻害されることを発見した。この知見は、ABO式血液型決定基の構造を推定する初めての手かがりを与えた。たとえば、Ulex europeus I(ハリエニシダ)やLotus tetragonolobus(ミヤコグサ)、Ele serum(ウナギ血清)は、L−Fucと結合するためにO型決定基の検出に使用される。また、Cytisus sessilifolius(シチサスマメ) 、Ulex europeus II(ハリエニシダ) は、D−GlcNAcb1→4D−GlcNAと結合するために、これもまた、O型決定基の検出に使用される。Phaseolus limensis(リママメ) 、Dolichos biflorus(ドリコスマメ) 、Vicia cracca(クサフジ)は、D−GalcNAcと結合するために、A型決定基の検出に使用される。Griffonia simplicifolia Iは、D−Galと結合するために、B型決定基の検出に使用される。
【0003】
また、細胞表面の糖の検索に各種レクチンが使用され、各種レクチンの認識する細胞表面糖タンパク質糖鎖、さらに糖鎖中の糖配列を推定できるようになった。
【0004】
また、コンカナバリンAのようなグルコース、マンノース結合型レクチンは、主に免疫機能における補体系に作用することが知られている。すなわち、これまで補体系の活性化経路としては、免疫グロブリンを異物の認識分子とし、補体第一成分が活性化されるいわゆる古典的経路と、細菌などの異物に補体第三成分が直接結合する第二経路が知られていたが、近年になって、マンノースあるいは、グルコース結合型レクチンがグルコース、マンノースやN−アセチルグルコサミンなどの微生物表面の糖鎖を特異的に認識して補体の活性化を起こす、レクチン経路と呼ばれる第三の補体活性化経路の存在が見いだされた。このレクチン経路は、抗原を認識して記憶するいわゆる獲得性免疫を持たない無脊椎動物を含め、普遍的に存在する自然免疫の一つであり、その中でも重要な位置を占める生体防御機能であると考えられている(J.Biol.Chem.1987 262 7451−7454;J.Clin.Invest.1989 84 1821−1829)。
マンノース結合型レクチンがウイルスや細菌などの表面の糖鎖にあるマンノースやN−グルコサミンを認識してそれらと結合することが起点となり、MASP(マンノース結合型レクチン−associated serine protease)との複合体の形成下に補体経路を活性化させ、ウイルスや細菌などの殺傷を引き起こす。
【0005】
また、同様にマンノース結合型レクチンがウイルスや細菌などに結合することが起点となり、食細胞がそれらを貧食すること、すなわちマンノース結合型レクチンはオプソニン作用を有していることが知られている。食細胞が細菌などへの貧食作用を起こさず易感染性を呈しているMBL欠損患者に対して、マンノース結合型レクチンを補充する治療を行ったところ、易感染性が改善されたとの報告もある(Scand.J.Immunol.1998 48 116−123)。
さらに、マンノース結合型レクチンがインフルエンザの感染を抑制するとの報告(Immunology 1999 97 385−392)、HIVの感染を抑制するとの報告(J.Exp.Med. 1989 169 185−196)、がん増殖を抑制するとの報告(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1999 96 371−375)などがこれまでに行われている。
【0006】
また、レクチンは、主に細胞表面の顕微鏡的研究のために使用されてきたが、近年になって、生理活性物質として、各種生物細胞の制御や分化の機構に深く関与していることが見出され、ある種のレクチンにはアルツハイマー型痴呆症の予防や治療への有効性が指摘されている神経成長因子の合成を促進する働きがあることが判明するなど、その重要な機能が明らかになりつつある。
【0007】
このような知見と共に、生物種に於けるレクチンの分布状況やそれらの性質についての研究が盛んに行われている。
【0008】
それらのレクチンの中に、グルコピラノシル構造、マルトース構造、マンノピラノシル構造、ガラクトピラノシル構造、6−デオキシガラクトピラノシル構造、N−アセチルガラクトサミニル構造、N,N’−アセチルキトビオース構造、を含む官能基に対して結合する性質を有する一群が知られているが、これらのレクチンを各種用途に使用する際には、生物から抽出したレクチン含有物をそのまま使用すると、含まれる不純物の影響が発現することがあるので、多くの場合、精製する必要がある。
【0009】
レクチンを生物から分離するには、適切な緩衝液で抽出する方法が採用されるが、それを更に精製する場合には、通常、硫安等による分画とレクチンが糖と結合する性質を利用したアフィニティークロマトグラフィー等が主な手法として採用される。
例えば、グルコピラノシル構造、マンノピラノシル構造、マルトース構造を含む官能基に対して結合する性質を有するレクチンをカラムクロマトグラフィーに吸着させた後、その吸着材から溶出剤としてD−グルコースやマンノース、メチル−β−D−マンノピラノシドを用いて溶出させる。
吸着させるカラムクロマトグラフィーとしては、表面にマンノース残基が露出している基材が該レクチンの吸着率が高い等の理由から有利に採用される。たとえば、市販のアガロースゲル(セファロース4B、ファルマシアバイオテク社)にマンノース、あるいはマンナンを固定化した吸着剤が使用されるが、レクチンの回収率は43%と低い(例えば、非特許文献1)。
これは、アガロース表面にマンノースが単層で結合しており、吸着サイトが小さいことに由来すると考えられる。また、アガロース表面で、分子は無秩序に固定化されているだけである。また、マンナン固定化アガロースの場合は、マンナンの分量などの記載はなく、分子量制御されたマンナンを固定化したものではないため、固定化力、あるいは、吸着容量を制御できるものではない。
同様に、ガラクトピラノシル構造を含む官能基に対して結合する性質を有するレクチンをアフィニティークロマトグラフィーに吸着させた後、その吸着材から溶出するさせる方法も採用されている。
吸着させるカラムクロマトグラフィーは、表面にガラクトース残基が露出している基材が該レクチンの吸着率が高い等の理由から有利に採用される。たとえば、市販のアガロースゲルや各種機材の表面にガラクトピラノシル構造を付加したもの等がある。これらも、マンノース結合型レクチンの場合と同様に、アガロース表面にラクトースやガラクトースが単層で、結合しており、吸着サイトが小さく、また、アガロース表面で、分子は、無秩序に固定化されている。
【0010】
また、コーンの低温エタノール分画法によって得られる第II+III画分からイムノグロブリンを抽出した残渣を原料として、グルコース結合型レクチン、マンノース結合型レクチンを工業レベルで精製する方法も報告されている(特許文献1)。しかし、この技術では、マンナンなどを固定化していないアガロース(セファロースCL4B、ファルマシアバイオテク社)を用いたアフィニティークロマトグラフィー処理工程の前処理として、不溶物を除去するための複数回の通常ろ過工程およびデリピドフィルターを用いたろ過工程が必要とされており、精製方法として煩雑であるほか、そのための設備も必要となる。
【0011】
更に、アミノ糖を利用し、これを支持体に共有結合で結合させた吸着剤も報告されており、例えば特許文献2には、第一級アミノ基を有するアミノ糖で誘導体化した固形支持体、具体的には、D−マンノサミンあるいはD−グルコサミンをNHS−活性化セファロースFFにカップリングさせた支持体が、また、特許文献3には、ポリ−(β−1,4−D−グルコサミン)誘導体にグリコピラノシルアミド結合を介して糖質が結合した高分子材料が、それぞれ報告されている。
しかしながら、前者の方法は単糖類を使用するため吸着サイトが小さくなり、一方、後者の方法はアセチル化糖を用いて高分子へ糖を導入後脱アセチル化する、というように操作が煩雑である、という欠点があった。
【非特許文献1】J.Biochem.1983 94 937−947
【特許文献1】特表2002−517513号公報
【特許文献2】特表2005−511537号公報
【特許文献3】特開2005−36163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来の方法では、吸着容量が小さかった各種糖結合ゲルよりも、吸着容量が大きく、また、固定化力が制御された、簡便に製造できる基材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、かかる課題を解決するため研究の結果、糖を側鎖に有するウレア型ビニルモノマーを重合したものが分子素子となり得ることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)糖側鎖型ウレアポリマーからなるレクチン吸着剤、
(2)糖側鎖型ウレアポリマーが2種以上の糖側鎖型ウレアモノマーのコポリマーである、上記(1)記載のレクチン吸着剤、
(3)糖側鎖型ウレアポリマーが2種以上の糖側鎖型ウレアポリマーのブレンドポリマーである、上記(1)記載のレクチン吸着剤、
(4)糖側鎖型ウレアポリマーが架橋材と共重合されたものである、上記(1)乃至(2)記載のレクチン吸着剤、
(5)上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載の糖側鎖型ウレアポリマーを高分子材料又は無機微粒子に結合した、レクチン吸着剤、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の糖側鎖型ウレアポリマーは、分子量が大きく巨大な結合サイトを提供できる分子素子と成り得(Transactions of the Materials Research Society of Japan 2005 30 1139−1142)、また、重合の際に分子量を自在に制御できる。
そのため、その吸着容量が大きく、かつ、吸着容量や吸着力・固定化力を制御することが可能となる。
また、糖側鎖がウレア結合で結合しているため、ベンズアミド系糖側鎖型ポリマーのように会合形態が球状ではなく凝集力が弱い、あるいは、アミド型ポリマーように糖鎖が直鎖状の異性体が混合した物質となり物性が安定しない、という欠点もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいう、糖側鎖型ウレアポリマーとは、式(1)で表される糖側鎖型ウレアモノマーを重合した、式(2)で表されるポリマーである。
式中、Rは水素原子又はメチル基を、nは2以上の整数を表し、Gは糖類残基で、アノマー位をアミノ基に変換できる糖類の残基である。かかる糖類としては、具体的には、グルコピラノシル残基を有するグルコース、β−1,4の結合様式を有するセロビオース、セロトリオース、セロテトラオースあるいはセルロースを分解したセロオリゴ糖ならびにそれらの混合物、α−1,4の結合様式を有するマルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、アミロースを分解したマルトオリゴ糖ならびにそれらの混合物、ガラクトピラノシル残基を有するガラクトース、ラクトース、ガラクトオリゴ糖、更にβ−1,6結合を有するラフィノース、メリビオース、ゲンチビオースなどの還元糖を挙げることができる。
式(1)あるいは式(2)で表される化合物は、例えば、本発明者らが開発した特開2004−203870号公報に記載の方法に準じて、製造することができる。
【0016】
【化1】


【0017】
【化2】


【0018】
本発明のレクチン吸着剤は、上記式(2)のポリマーからなるものであり、ポリマーの糖類残基は、目的とするレクチンに合わせて適宜選択することができる。
【0019】
また、式(2)で表されるポリマーにおいて、異なった糖類残基をもつもの(異なる糖類残基をもつ式(1)で表される化合物を共重合したもの)、あるいは、異なった糖類残基をもつホモポリマーをブレンドしたものも用いることもできる。
これらは、グルコピラノシル構造、マルトース構造、マンノピラノシル構造、ガラクトピラノシル構造、6−デオキシガラクトピラノシル構造、N−アセチルガラクトサミニル構造、N,N’−アセチルキトビオース構造を含む官能基に対して結合する性質を有するレクチンの二種以上に特異的親和性を有するマルチな分子素子として、二種以上のレクチンの吸着剤として使用できる。
【0020】
本発明では、上記式(2)で表されるポリマー(ホモポリマー、コポリマー)を、セルロース、グルコマンナン、プルラン、アガロース等の多糖粒子、ポリビニルアルコールやポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリルアミド、ポリスチレン等の合成高分子、シリカゲルやアルミナ、チタニア、ジルコニアなどの無機微粒子等微粒子表面にグラフト化した吸着剤が提供される。
グラフト化方法は、それ自体公知の方法が適用でき、例えば、微粒子にラジカルを生成させそこから重合する方法、あるいは、先に重合してポリマーを得て、これを微粒子に修飾させてもよい。
【0021】
本発明では、更に、上記式(1)で表される化合物を、重合性基を有する架橋剤、例えば、メチレンビスアクリルアミド、エチレングルコールジメタクリレート、エチレングルコールジアクリレート、ブチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの多官能モノマーと共重合せしめ、塊状物あるいは、微粒子とした吸着剤とすることもできる。
【0022】
本発明の吸着剤の使用方法としては、定法のカラムクロマトグラフィー用の基材として、あるいは特定のレクチンを含む溶液に本発明の吸着剤を添加し溶液から沈殿させ、固液分離することによって特定のレクチンを回収することができる。
レクチンの溶出は、公知の方法に準じ、対応する糖や糖アルコールを用いることにより実施することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
製造例1 2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースポリマー(式(3)、ポリマー1)の合成
(1)マルトシルアミンの合成
マルトース1.0g(2.93mmol)を300mlビーカー中、水50mlに溶かし、炭酸水素アンモニウムを18.5gずつ24時間毎3回加え(全量55.5g)、開放したまま37℃で72時間撹拌した。反応終了後、蒸留水100mlを加え、20mlまで水を留去した後、100mlの水を加え、10mlまで濃縮した。この操作をアンモニア臭が消失するまで繰り返し、凍結乾燥することにより、マルトシルアミンを白色固体として得た。該白色固体のHPLC分析を行ったところ、純度は78.4%であった。
得られたマルトシルアミン(白色固体)のH−NMRスペクトルを図1に示す。4.1ppm付近にβ型構造に由来するピーク、4.3ppm付近にα型構造に由来するピークが確認され(1位の炭素原子にアミノ基が結合したことにより、高磁場側にシフトしたと考えられる)、また4.5ppm付近にはα型構造とβ型構造共通のピーク、5.2ppm付近にマルトースのα型構造に由来すると推測されるピークが確認された。これらのH−NMRスペクトルの結果より、生成物の構造を確認した。
【0024】
(2)2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースの合成
(1)で得たマルトシルアミン0.8g(純度78.4%、1.84mmol)を1×10−3M−KOH水溶液20mlに溶解させた。その水溶液に、2−イソシアナートエチルメタクリレート(2−IEM)を0.713g(4.6mmol)を加えて、3℃に保ったまま12時間、激しくかき混ぜた。反応終了後、フラスコ内に析出した白色固体を濾去し、濾液を、未反応の2−IEMを除去するため30mlのジエチルエーテルを用いて4回洗浄した後、凍結乾燥を行った。凍結乾燥終了後、得られた白色固体を水2ml、メタノール3mlの混合溶液に溶解させ、ジエチルエーテル100mlとアセトン150mlの混合溶液に滴下し冷却した。析出した白色固体を濾取、減圧下乾燥することにより、2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトース0.55gを白色物として得た。
得られた白色物のHPLC分析を行った。クロマトグラムを図2に示す。マルトシルアミンのピークが消失し、新たに紫外可視領域に吸収を有する化合物の出現が認められた。これは目的生成物である2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースのビニル基に由来する吸収と考えられる。ピークの面積比より純度を算出したところ、純度は65.0%であった。
得られた白色物のFT−IRスペクトルを図3に示す。1570cm−1にNH−CO−NH相互伸縮、1650cm−1にC=O伸縮振動(urea)、1705cm−1にC=O伸縮振動(ester)、に由来するピークが確認された。
また、1H−NMRスペクトルを図4に示す。1.9ppmにメチル基、4.2ppm付近付近にはメチレン基、5.7ppmと6.1ppmにはビニル基に由来するピークが確認され、3.3〜4.0ppm付近には糖骨格に由来するピークが確認され、目的物の構造を確認した。
【0025】
(3)2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースの重合
(2)で得た2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトース4.46g(5.85mmol)を脱気水20mlに溶解させ、氷冷下で窒素通気を30分間行った。その後、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン(TEEDAm)を100.8mg(0.585mmol)を加え、開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)を13.35mg(0.0585mmol)を添加し、氷冷下、窒素雰囲気下3時間撹拌した。反応終了後、反応液を2倍に希釈し3日間透析により精製した後、凍結乾燥を行い、1.2gのの白色物を得た(収率60%)。
得られた白色物のFT−IRスペクトルを図5に示す。該スペクトルは図4に示したモノマーのスペクトルに比べ、ブロードになっている。これはポリマー化に伴うポリマー側鎖の自由度の低下に起因していると考えられる。
また、H−NMRスペクトルを図6に示す。該スペクトルでは、ポリマー化に伴うピークのブロードニングが確認できとともに、5.7ppmと6.1ppmのビニル基に由来するピークが消失し、メチレン基に由来する新たなピークが1.5ppm付近に観察され、白色物が、2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースポリマーであることを確認した。
【0026】
【化3】


【0027】
製造例2 2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドラクトースポリマー(ポリマー2)の合成
(1)ラクトシルアミンの合成
ラクトース 1.0(2.93mmol)を300mlビーカー中、水50mlに溶かし、炭酸水素アンモニウムを18.5gずつ24時間毎3回加え(全量55.5g)、開放したまま37 ℃で72時間撹拌した。反応終了後、蒸留水100mlを加え、20mlまで水を留去した後、100mlの水を加え、10mlまで濃縮した。この操作をアンモニア臭が消失するまで繰り返し、凍結乾燥することにより、ラクトシルアミンを白色固体として得た。生成物は、H−NMRスペクトルによりその構造を確認した。
【0028】
(2)2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドラクトースの合成
(1)で得たラクトシルアミン0.8g(純度78.4%、1.84mmol)を1×10−3M−KOH水溶液20mllに溶解させた。その水溶液に、2−イソシアナートエチルメタクリレート(2−IEM)を0.713g (4.6mmol)を加えて、3℃に保ったまま12時間、激しくかき混ぜた。反応終了後、フラスコ内に析出した白色固体を濾去し、濾液を、未反応の2−IEMを除去するため30mlのジエチルエーテルを用いて4回洗浄した後、凍結乾燥を行った。凍結乾燥終了後、得られた白色固体を水2ml、メタノール3mlの混合溶液に溶解させ、ジエチルエーテル100mlとアセトン150mlの混合溶液に滴下し冷却した。析出した白色固体を濾取、減圧下乾燥することにより、2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドラクトース0.55gを白色物として得た。
生成物は、FT−IRスペクトル、H−NMRスペクトルによりその構造を確認した。
【0029】
(3)2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドラクトースの重合
(2)で得た2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドラクトース4.46g(5.85mmol)を脱気水20mlに溶解させ、氷冷下で窒素通気を30分間行った。その後、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン(TEEDAm)を100.8mg(0.585mmol)を加え、開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)を13.35mg(0.0585mmol)を添加し、氷冷下、窒素雰囲気下3時間撹拌した。反応終了後、反応液を2倍に希釈し3日間透析により精製した後、凍結乾燥を行い、1.2gの白色物を得た(収率83.6%)。
生成物は、FT−IRスペクトル、H−NMRスペクトルによりその構造を確認した。
【0030】
製造例3 2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドセロビオースポリマー(ポリマー4)の合成
特開2004−203870号公報実施例1記載の方法に準じ、2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドセロビオースポリマーを得た。
【0031】
実施例1 マルトース残基を有するウレアポリマーを用いた吸着実験
塩化カルシウム27.75mgをトリス塩酸緩衝液に250mlに溶解し、1mM塩化カルシウム/トリス塩酸緩衝液(I)を調製した。Concanavalin A(Con A)50mgを(I)100mlに溶解し、0.5mg/mlのCon A溶液(II)を調製した。
また、製造例1で得た2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースポリマー5mgを(I)10mlに溶解(1×10−6unit mol/ml、(III))し、(III)から50μl(5×10−8unit mol)、100μl(1×10−7unit mol)、500μl(5×10−7unit mol)を採取し、それぞれに(II)を1.5mlずつ加え、25℃で15分おきに2時間、500nmにおける透過率測定を行った。
測定の結果を図7に示す。図7から明らかなように、これら濃度において15分までに全て白濁した。
【0032】
実施例2
マルトース、アミロース、2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースポリマー(ポリマー1)、2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトトリオースポリマー(ポリマー4)、2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドセロビオースポリマー(ポリマー3)、及びポリビニルベンズアミドマルトース(PV−MA、生化学工業株式会社製)を用い、実施例1に準じ(上記(I)、(II)及び糖溶液の混合溶液)、溶液を25℃1時間静置させ、500nmにおける透過率を測定した。
結果を図8に示す。
図8から明らかなように、ポリマー1、ポリマー2、PV−MAにおいて透過率の減少が確認された。これは、α−グルコース残基と選択的に結合するCon Aが、ポリマー側鎖のマルトース、マルトトリオースのα−グルコース残基と結合し、架橋構造を形成したためと考えられる。さらに、ポリマー1、ポエイマー4において、それぞれ一定濃度以上になると沈澱の凝集による透過率の上昇が確認された。これに対して、同様な糖側鎖型ポリマーであるPV−MAは、白く濁るものの凝集沈殿しなかった。このことから、本発明のレクチン吸着剤は、より強い結合能を示すことが示唆された。
また、マルトース、アミロースがα−グルコース残基を有するにも関わらず透過率の減少が確認されなかったことについては、Con Aとの結合が生じても、α−グルコース残基が片末端にしか存在せず架橋構造が形成できないため、ポリマー3においては、β−グルコース残基であるためCon Aとの結合が起こらず透過率の減少は見られなかった。
【0033】
製造例4 糖側鎖型ウレアポリマーグラフト化無機微粒子(シリカゲル)の調製
(1)メルカプトトリメトキシシリカゲル(Sil−MPS)の調製
脱水トルエン90mlにシリカゲル5.0gを加え、30分外部超音波照射を行い分散させた。その後、3−メルカプトプロピル トリメトキシシラン7.24g( 36.88mmol)を加えて、200rpm、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、放冷し沈殿物を濾取後、トルエン、ジエチルエーテルで洗浄し、減圧下乾燥することにより白色固体(Sil−MPS)を得た。
元素分析値(測定値) H:1.37%、C:3.87%、S:2.51%
元素分析の結果から、炭素含量、硫黄含量の増加が確認され、また、MPSの固定化量は8.093%と算出された。
【0034】
2,2−ジチオビリジン(2PDS)8.43mgをメタノール250mlに溶解させ、採取したSil−MPS3.5mgに10mlずつ加え、外部超音波照射を30分間行った。その後8時間撹拌したのち、UVスペクトル測定を行った。360nmにおける吸光度はSil−MPSが0.266であった。その結果を、検量線(y=0.5968x+0.0202)に代入し、Sil−MPSの固定化量を、5.87×10−4mol/gと算出した。
【0035】
(2)グラフト化反応
十分に脱気した蒸留水9mlにSil−MPS0.05g(0.0392mmol)と2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースモノマー0.109g、0.218g、0.436g、0.654g(純度89.4%、それぞれ0.196mmol、0.393mmol、0.789mmol、1.176mmol;MPS残基に対して、それぞれ、5倍(Sil−Mal5)、10倍(Sil−Mal10)、20倍(Sil−Mal20)、30倍(Sil−Mal30)当量)を加え、15分間外部超音波照射を行いSil−MPSを分散させ、5℃で窒素通気を30分間行った。その後、TEEDAm0.084mlを加え、開始剤としてAPS8.95mg(0.0392mmol)を加えて、5℃窒素雰囲気下で3時間撹拌した。反応終了後、沈殿物を濾取し、蒸留水、エタノール、ジエチルエーテルの順で洗浄後、減圧下乾燥することにより白色固体を得た。
定性分析はFT−IRで行い、1650cm−1にC=O(urea)伸縮振動、1705cm−1にC=O(ester)伸縮振動に由来するピークが確認された。
元素分析値(測定値)
Sil−Mal5 H:1.50%、C:6.50%、N:0.64%
Sil−Mal10 H:1.47%、C:6.61%、N:0.65%
Sil−Mal20 H:1.90%、C:9.65%、N:1.18%
Sil−Mal30 H:2.34%、C:12.3%、N:1.41%
【0036】
実施例3
製造例4で得たSil−Mal5、Sil−Mal10、Sil−Mal20、Sil−Mal30及びシリカゲルを3mgずつサンプル管に採取し、実施例1で用いた緩衝液(I)900μlとRhodamine−Con A溶液(5mg/ml)100μlを加え、暗所で1時間静置したのちディスクフィルターでろ過し、ろ液を蛍光スペクトルにより測定した。
結果を図9に示す。
図9から、シリカゲルを添加した場合が最も蛍光強度が低く、シリカゲルにCon Aが吸着されることが示唆された。Sil−Mal5において吸着量が減少したことについては、担体のシリカゲルにポリマー鎖が吸着され、側鎖のマルトースの自由度が奪われてCon Aが結合できなかったことに加え、吸着されたポリマー鎖によってシリカゲル自体にもCon Aの吸着が起こらなかったためと考えられる。また、重合度が伸びるにつれて自由なマルトースが増加するためCon Aの吸着量は増加し、Sil−Mai30では高分子効果により吸着量が一気に上昇したものと考えられる。
【0037】
製造例5 糖側鎖型ウレアポリマーグラフト化高分子微粒子(セルロース)の調製
(1)メルカブトトリメトキシセルロース微粒子(Cell−MPS)の調製
セルロースビーズ23.81gをメタノールで洗浄したのち、トルエンで洗浄し、減圧下乾燥後に白色固体を得た。そのうち4gを採取し、脱水トルエン90mlを加え30分間外部超音波照射を行い、セルロース微粒子を分散させた。その後、3−メルカプトトリメトキシシラン7.24g(36.88mmol)を加えて、200rpm、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、放冷し、沈殿物を濾取し、トルエン、ジエチルエーテルで洗浄し、減圧下乾燥することにより白色固体(Cell−MPS)を得た。
元素分析値(測定値) H:6.66%、C:41.2%、S:2.18%
【0038】
2PDS8.43mgをメタノール250mlに溶解させ、採取したCell−MPS3.5mgに10mlずつ加え、外部超音波照射を30分間行った。その後、8時間撹拌したのちUVスペクトル測定を行った。360nmにおける吸光度はCell−MPSが0.266であった。その結果を、検量線(y=0.5968x+0.0202)に代入し、Cell−MPSの固定化量を、4.59×10−4mol/lと算出した。
【0039】
(2)グラフト化反応
十分に脱気した蒸留水13.5mlにCell−MPS0.12g(0.0551mmol)と2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースモノマー0.168g、0.457g、0.672g、1.008g(純度89.4%、それぞれ0.275mmol、0.0550mmol、1.10mmol、1.650mmol;MPS残基に対して、それぞれ、5倍(Cell−Mal5)、10倍(Cell−Mal10)、20倍(Cell−Mal20)、30倍(Cell−Mal30)当量)を加え、15分間外部超音波照射を行いSil−MPSを分散させ、5℃で窒素通気を30分間行った。その後、TEEDAm0.119mlを加え、開始剤としてAPS12.6mg(0.0551mmol)を加えて、5℃窒素雰囲気下で3時間撹拌した。反応終了後、沈殿物を濾取し、蒸留水、エタノール、ジエチルエーテルの順で洗浄後、減圧下乾燥することにより白色固体を得た。
定性分析はFT−IRで行い、1650cm−1にC=O(urea)伸縮振動、1705cm−1にC=O(ester)伸縮振動に由来するピークが確認された。
元素分析値(測定値)
Cell−Mal5 H:6.37%、C:39.9%、N:0.19%
Cell−Mal10 H:6.42%、C:40.5%、N:0.25%
Cell−Mal20 H:6.39%、C:39.9%、N:0.35%
Cell−Mal30 h:6.34%、C:40.4%、N:0.42%
【0040】
実施例4
製造例5で得たCell−Mal5、Cell−Mal10、Cell−Mal20、Cell−Mal30及びセルロース微粒子を3mgずつサンプル管に採取し、実施例1で用いた緩衝液(I)900μlとRhodamine−Con A溶液(5mg/ml)100μlを加え、暗所で1時間静置したのちディスクフィルターでろ過し、ろ液を蛍光スペクトルにより測定した。
結果を図10に示す。
図10から、セルロース微粒子自体には吸着は起きず、ポリマー鎖の重合度増加に伴う吸着量の増加が確認された。
【0041】
製造例6 架橋材との共重合による塊状物
十分に脱気した蒸留水2.2mlに表1のような所定比で、2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースモノマーとメチレンビスアクリルアミド(MBAAm)を混合し、5℃で窒素通気を30分間行った。その後、TEEDAm0.0217mlを加え、開始剤としてAPS2.3mg(0.0101mmol)を加えて5℃窒素雰囲気化で3時間撹拌した。反応終了後、蒸留水でよく洗浄したのち凍結乾燥により白色固体を得た。
定性的同定は、FT−IRで行った。
【0042】
【表1】


【0043】
実施例5
[2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースモノマー]/[MBAAm]=0/10、5/5、6/4、7/3、8/2のゲルを3mgずつサンプル管に採取し、実施例1で用いた緩衝液(I)900μlとRhodamine−Con A溶液(5mg/ml)100μlを加え、暗所で1時間静置したのちフィルターでろ過し、ろ液を蛍光スペクトルにより測定した。
結果を図11に示す。
図11から、マルトースの組成比増加に伴い吸着量の増加が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明してきたように、本発明によると、吸着容量が大きく、かつ、吸着容量や吸着力・固定化力を制御することが可能となる、簡便に製造できるレクチン吸着剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】マルトシルアミンのH−NMRスペクトルである。
【図2】2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースとマルトシリアミンのHPLCクロマトグラムである。
【図3】2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースのFT−IRスペクトルである。
【図4】2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースのH−NMRスペクトルである。
【図5】2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースポリマーのFT−IRスペクトルである。
【図6】2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースポリマーのH−NMRスペクトルである。
【図7】ポリマー1水溶液とCon Aとを混合した溶液の500nmの透過率の経時変化を示した図である。
【図8】各種ポリマー水溶液とCon Aとを混合した溶液の、ポリマー添加量と500nmの透過率の関係を示した図である。
【図9】シリカ上にグラフト化されたポリマーの重合度とCon Aの吸着量の関係を示した図である。
【図10】セルロース上にグラフト化されたポリマーの重合度とCon Aの吸着量の関係を示した図である。
【図11】2−(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドマルトースとメチレンビスアクリルアミドの原料比とCon Aの吸着量の関係を示した図である。
【出願人】 【識別番号】000142252
【氏名又は名称】株式会社興人
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
【識別番号】502451982
【氏名又は名称】永岡 昭二
【出願日】 平成18年7月7日(2006.7.7)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−12460(P2008−12460A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−187437(P2006−187437)