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【発明の名称】 デオキシリボ核酸複合体を固定化したシリコーン構造体の製造方法及び該方法により得られたシリコーン構造体
【発明者】 【氏名】槇 靖幸

【氏名】土橋 敏明

【要約】 【課題】芳香族化合物吸着性を有し、かつ力学的強度と弾性とを備えたDNA複合体を固定化したシリコーン構造体を大量に製造することができる方法及び該方法により得られたシリコーン構造体を提供する。

【構成】本発明のDNA複合体を固定化したシリコーン構造体の製造方法は、DNA11を含有する水溶液と両親媒性分子12を含有する水溶液とを混合してDNA複合体13を形成する工程と、形成したDNA複合体を有機溶媒14に溶解してDNA複合体溶解液16を調製する工程と、網状構造を有するシリコーン17を調製したDNA複合体溶解液中に浸漬することにより、シリコーンの網状構造内にDNA複合体と溶媒とを取り込ませ、シリコーンを膨潤させる工程と、膨潤させたシリコーンから溶媒を除去することにより、シリコーンの網状構造内にDNA複合体を固定化させる工程とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デオキシリボ核酸(11)を含有する水溶液と両親媒性分子(12)を含有する水溶液とを混合してデオキシリボ核酸複合体(13)を形成する工程と、
前記形成したデオキシリボ核酸複合体(13)を有機溶媒(14)に溶解してデオキシリボ核酸複合体溶解液(16)を調製する工程と、
網状構造を有するシリコーン(17)を前記調製したデオキシリボ核酸複合体溶解液(16)中に浸漬することにより、前記シリコーン(17)の網状構造内に前記デオキシリボ核酸複合体(13)と前記有機溶媒(14)とを取り込ませ、前記シリコーン(17)を膨潤させる工程と、
前記膨潤させたシリコーン(17)から有機溶媒(14)を除去することにより、前記シリコーン(17))の網状構造内に前記デオキシリボ核酸複合体(13)を固定化させる工程と
を含むことを特徴とするデオキシリボ核酸複合体を固定化したシリコーン構造体の製造方法。
【請求項2】
有機溶媒(14)にエタノールを更に含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
網状構造を有するシリコーン(17)の形状が粒状又は塊状である請求項1記載の方法。
【請求項4】
デオキシリボ核酸複合体(13)をシリコーン(17)の網状構造内に取り込んだことを特徴とするデオキシリボ核酸複合体を固定化したシリコーン構造体。
【請求項5】
シリコーン(17)の形状が粒状又は塊状である請求項4記載のシリコーン構造体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、デオキシリボ核酸複合体を固定化したシリコーン構造体の製造方法及び該方法により得られたシリコーン構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic Acid;以下、DNAという。)が二重らせん構造を持つことは周知である。水溶液中のDNAは約1.5Å毎にマイナス電荷を持つ持続長約500Åの棒状高分子に分類される。またDNAの核酸塩基対層には芳香族化合物の選択的吸着性があることが知られている。
従来、支持体上の水溶性DNA(例えば、サケの精巣由来のDNA)の水溶液もしくはその液膜、又は支持体上の水溶性DNAの薄層又は支持体上の水溶性DNAの溶液の液膜の濃縮乃至乾固により得られた薄層に、波長が250〜270nmの範囲の紫外線を照射することにより、支持体に水溶性DNAの水不溶性架橋重合体を固定する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、紫外線によりサケの精巣由来のDNAに架橋反応を起こさせて水不溶化し、この不溶化技術により芳香族化合物よりなる環境ホルモンを吸着することができる。
【特許文献1】特開2001−81098号公報(特許請求の範囲、[0019][0022])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、紫外線を用いてDNAを架橋反応させるために、DNAに長時間紫外線を照射する必要があり、大量生産に適しない問題点があった。また、紫外線照射により形成したものは強度や弾性などの力学的性質に劣り、また化学的安定性に乏しいため、このようなDNAの不溶化物をカラムに充填して環境浄化材料として用いる場合、変形したり、壊れたりするなど、作業効率が低下することが問題点として挙げられる。
【0004】
本発明の目的は、芳香族化合物吸着性を有し、かつ力学的強度と弾性とを備えたDNA複合体を固定化したシリコーン構造体を大量に製造することができる方法及び該方法により得られたシリコーン構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、DNA11を含有する水溶液と両親媒性分子12を含有する水溶液とを混合してDNA複合体13を形成する工程と、図2に示すように、形成したDNA複合体13を有機溶媒14に溶解してDNA複合体溶解液16を調製する工程と、網状構造を有するシリコーン17を調製したDNA複合体溶解液16中に浸漬することにより、シリコーン17の網状構造内にDNA複合体13と有機溶媒14とを取り込ませ、シリコーン17を膨潤させる工程と、膨潤させたシリコーン17から有機溶媒14を除去することにより、シリコーン17の網状構造内にDNA複合体13を固定化させる工程とを含むことを特徴とするDNA複合体を固定化したシリコーン構造体の製造方法である。
請求項1に係る発明では、上記各工程を経ることにより、芳香族化合物を吸着する性質を有し、かつ力学的強度と弾性とを備えたDNA複合体を固定化したシリコーン構造体を大量に製造することができる。本発明の製造方法は、複雑な操作が必要な工程がないため、シリコーン構造体18の大量生産に適している。
【発明の効果】
【0006】
本発明のDNA複合体を固定化したシリコーン構造体の製造方法は、芳香族化合物吸着性を有するDNAと両親媒性分子とから有機溶媒に可溶なDNA複合体を形成し、このDNA複合体を力学的強度と弾性とを備えた網状構造を有するシリコーンに固定化したので、芳香族化合物吸着性を有し、かつ力学的強度と弾性とを備えたDNA複合体を固定化したシリコーン構造体を大量に製造することができる。
【0007】
また、本発明のDNA複合体を固定化したシリコーン構造体は、DNA複合体をシリコーンの網状構造内に取り込んだことを特徴とし、本来DNAに備わっている芳香族化合物の選択的吸着性を維持するとともに、シリコーンの有する優れた強度や弾性といった力学的特性を併せ持つ。芳香族化合物の選択的吸着性を有するため、環境ホルモン等の有害な物質を吸着するカラム材料として工業施設などの排水プロセスなどの用途に利用可能である。また吸着対象である環境ホルモンの多くは発色性を有するため、本発明のシリコーン構造体を充填したカラムに環境ホルモンが吸着されると、カラム内部が発色することから環境ホルモンのインディケーター(indicator)としての応用が考えられる。また、高い力学的強度及び弾性を有するため、応力がかかる環境や流量の多い条件での使用が可能であり、環境浄化物質の実用化及び汎用化のために必要とされる重要な特性を備えている。更に、支持体であるシリコーンが化学的安定性を有しているため、例えば、生体内にシリコーン構造体を投与し、生体内に存在する有害物質を吸着し、その後体外に排出されるような、医療目的での応用も考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の製造方法では、先ず、図1に示すように、DNA11を含有する水溶液と両親媒性分子12を含有する水溶液とを混合してDNA複合体13を形成する。DNA11は二重らせん構造の周囲にマイナス電荷を有しており、水には溶解するが、有機溶媒には不溶である。そこで本発明の製造方法では、DNAを有機溶媒に可溶化させるため、複合体を形成する。複合体を構成する両親媒性分子12は、DNAとの結合に必要なカチオン性を有し、かつ有機溶媒に可溶な疎水性部分を有する。
【0009】
DNA11としては、水に可溶な水溶性DNAが好適である。水溶性DNAとしては、一本鎖のDNA又は二本鎖DNA、例えば魚類の精巣又は動物の胸腺から得られるDNAが挙げられる。具体的にはサケやニシン、タラの白子(精巣)などから得られるものが好ましい。また、哺乳動物や鳥類、例えばウシ、ブタ、ニワトリ等の胸腺から得られるものが好ましい。またその他、合成DNA、特に(dA)−(dT)の塩基対を持つDNA配列、特に例えばpoly(dA)−poly(dT)型の配列を持つDNAであってもよい。
【0010】
本発明でいう両親媒性分子12とは、四級アンモニウム塩などのカチオン基と、ある程度の大きさの疎水性部分を有する分子である。このような両親媒性分子は、カチオン性脂質や高分子が挙げられる。具体的には、カチオン性脂質としては、臭化セチルトリメチルアンモニウム(以下、CTABという。)、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ジドデシルジメチルアンモニウムが、高分子としては、ポリ(メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドメチルクロリド四級塩)等が挙げられる。
【0011】
DNA複合体13の形成では、先ず、DNA11を含有する水溶液と両親媒性分子12を含有する水溶液とをそれぞれ調製する。DNA11を含有する水溶液と両親媒性分子12を含有する水溶液の濃度は、それぞれDNAのアニオン基と両親媒性分子のカチオン基の個数が1:1になる濃度であれば、未反応物を減らすことができるため好適である。また希薄な濃度であれば大きな凝集体の形成を抑えることができるため好適である。大きな凝集体は有機溶媒への溶解性が低いおそれがあるためである。具体的には、1%濃度のDNA水溶液と、例えば、1.1%濃度のCTAB水溶液のような濃度の組み合わせが好ましい。
【0012】
次に、調製したDNA11を含有する水溶液と両親媒性分子12を含有する水溶液とを1:1の割合となるように室温で混合して放置する。混合した水溶液中では、DNA11のマイナス電荷と両親媒性分子12のカチオン基とが引きあってDNA複合体13が形成される。このDNA複合体13は水に不溶となるため、沈殿物として形成される。
【0013】
続いて、得られたDNA複合体13の沈殿物を水溶液から取出し、水を加えて遠心分離し、上澄みを取り除くという操作を繰り返すことにより、沈殿物に含まれる未反応物を除去する。更に、凍結乾燥により沈殿物に含まれる水を取除くことにより、DNA複合体13が分離される。このようにして形成されたDNA複合体13は、両親媒性分子の疎水性部分によって有機溶媒に溶解し、水には不溶な性質を有する。
【0014】
次いで、図2に示すように、形成したDNA複合体13を有機溶媒14に溶解してDNA複合体溶解液16を調製する。使用する有機溶媒14は、DNA複合体13を溶解する能力と後に続く工程で網状構造を有するシリコーン17を膨潤させる能力の双方を有することが必要である。このような有機溶媒14としては、クロロホルム、ヘキサン、ベンゼン、酢酸エチルなどが挙げられる。上記有機溶媒は単一溶媒で使用しても良いし、2種以上の混合溶媒としても良い。DNA複合体溶解液16中に含まれるDNA複合体は有機溶媒に対して2%程度の割合となるように混合することが好ましい。また、有機溶媒14にDNA複合体13を溶解する能力が高いエタノールを更に含むことで、作業効率が向上する。具体的には、先ず、DNA複合体13を少量のエタノールで溶解し、次に例えばクロロホルムを投入してDNA複合体13を完全に溶かすことにより、DNA複合体が均一に溶解したDNA複合体溶解液16が調製される。エタノールは有機溶媒14の10〜20vol%とすることが好ましい。
【0015】
次に、網状構造を有するシリコーン17を調製したDNA複合体溶解液16中に浸漬することにより、シリコーン17の網状構造内にDNA複合体13と有機溶媒14とを取り込ませ、シリコーンを膨潤させる。網状構造を有するシリコーン17は、粒状でも良いし、塊状であっても良く、本発明の製造方法により得られるシリコーン構造体の用途に併せて大きさや形状を選択することができる。
【0016】
本発明で供される網状構造を有するシリコーン17は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0017】
形状が粒状のシリコーンを製造する場合、あらかじめ、界面活性剤の水溶液を作っておく。界面活性剤としてはドデシルスルホン酸ナトリウム(以下、SDSという。)が好適である。100cc〜200ccの水にSDSを加え、濃度が10%程度となるように界面活性剤水溶液を調製する。別に、以下の式(1)に示す両末端ビニルジメチルシロキサンとPt触媒とを混合し、この混合体に更に以下の式(2)に示す環状シロキサンを加える。両末端ビニルジメチルシロキサンと環状シロキサンとの混合割合は、モル比で2:1程度が好ましい。
【0018】
【化1】


【0019】
【化2】


【0020】
続いて、室温〜80℃の温度に維持された界面活性剤水溶液に混合体を投入して200〜1000rpmの速度で攪拌すると、水溶液中で重合が起こり、内部に網状構造を有するポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane;以下、PDMSという。)粒子が形成される。上記条件では平均粒径が0.3mm程度のPDMS粒子が形成される。形成される粒子の平均粒径は攪拌速度だけでなく、界面活性剤水溶液の濃度によってその大きさを調整することができる。粒子の平均粒径は小さい方が表面積は大きくなるがその分取扱い難く、平均粒径が大きいと表面積は小さくなるが、取扱い易いため、その用途によって大きさを調整することが好ましい。なお、界面活性剤水溶液の維持温度は、混合体中に添加した触媒量の増減によって調整される。例えば、触媒の添加量が多ければ界面活性剤水溶液の維持温度が室温程度でも重合が起こり、触媒の添加量が少なければ界面活性剤水溶液の維持温度を高めることで重合する。
【0021】
形状が塊状のシリコーンを製造する場合、上記粒状シリコーンを製造する際に調整した混合体を、所定の大きさの容器に入れた後、室温で1〜24時間程度放置しておくことにより、容器内部で重合が起こり、内部に網状構造を有するシリコーンの固化体が形成される。後は、形成された固化体を所望の大きさ、例えば5mm角の大きさのように切り分けることで塊状シリコーンを得ることができる。
【0022】
このように製造した網状構造を有するシリコーン17を先に調製したDNA複合体溶解液16に浸漬する。網状構造を有するシリコーン17は、溶解液16に浸漬した状態で1日間程度放置することで、溶解液中の有機溶媒14により膨潤し、網状構造にDNA複合体13と有機溶媒14とが取り込まれる。なお、図2では、技術内容を理解し易くするため、DNA複合体溶解液16に直接シリコーン17を浸漬した図を用いているが、実際にはシリコーン17の形状は粒状又は塊状であるため、シリコーン17をメッシュで包み、このメッシュごとDNA複合体溶解液16に浸漬することで、シリコーン17の網状構造にDNA複合体13と有機溶媒14とを取り込ませている。使用するシリコーン17の形状が粒状の場合、塊状に比べて表面積が大きいため、その分網状構造にDNA複合体13を取り込み易く、固定化する量も多くなる。
【0023】
続いて、膨潤させたシリコーン17をDNA複合体溶解液16から引き上げる。引き上げたシリコーン17は、網状構造にDNA複合体13と有機溶媒14とが保持された状態となっている。
【0024】
次に、膨潤させたシリコーン17から有機溶媒14を除去することにより、シリコーン17の網状構造内にDNA複合体13を固定化させる。溶解液16から引き上げたシリコーン17を例えば、120℃のオーブンに1日間程度入れて、シリコーン17内部に保持された有機溶媒14を蒸発させることで、膨潤していたシリコーン17は収縮し、網状構造にDNA複合体13が濃縮された状態で固定化される。
【0025】
このように本発明の製造方法では、上記各工程を経ることにより、芳香族化合物吸着性を有し、かつ力学的強度と弾性とを備えたDNA複合体を固定化したシリコーン構造体18を製造することができる。本発明の製造方法は、複雑な操作が必要な工程がないため、シリコーン構造体18の大量生産に適している。
【0026】
上記製造方法により得られた本発明のDNA複合体を固定化したシリコーン構造体18は、DNA複合体13をシリコーン17の網状構造内に取り込んだことを特徴とし、本来DNAに備わっている芳香族化合物の選択的吸着性を維持するとともに、シリコーンの有する優れた強度や弾性といった力学的特性を併せ持つ。本発明のシリコーン構造体18は、芳香族化合物の選択的吸着性を有するため、環境ホルモン等の有害な物質を吸着するカラム材料として工業施設などの排水プロセスなどの用途に利用可能である。また吸着対象である環境ホルモンの多くは発色性を有するため、本発明のシリコーン構造体を充填したカラムに環境ホルモンが吸着されると、カラム内部が発色することから環境ホルモンのインディケーター(indicator)としての応用が考えられる。また、本発明のシリコーン構造体18は、高い力学的強度及び弾性を有するため、応力がかかる環境や流量の多い条件での使用が可能であり、環境浄化物質の実用化及び汎用化のために必要とされる重要な特性を備えている。また、本発明のシリコーン構造体18は、支持体であるシリコーンが化学的安定性を有しているため、例えば、生体内にシリコーン構造体を投与し、生体内に存在する有害物質を吸着し、その後体外に排出されるような、医療目的での応用も考えられる。
【実施例】
【0027】
次に本発明の実施例を詳しく説明する。
<実施例1>
DNAとして平均塩基対数10kbpのサケ白子由来のDNAを、両親媒性分子としてCTABを、網状構造を有するシリコーンとして、図3に示すような、平均粒径が0.3mmの粒状PDMSをそれぞれ用意した。
【0028】
先ず、1.0g/100cm3濃度のDNA水溶液と1.1g/100cm3濃度のCTAB水溶液をそれぞれ調製した。このDNA水溶液とCTAB水溶液とを1:1の割合となるように室温で混合して放置することにより、DNA複合体であるDNA−CTA複合体の白色沈殿を生成させた。得られたDNA−CTA複合体の白色沈殿を水溶液から取出し、遠心分離することにより、白色沈殿に含まれる水分及び未反応物を分離した。分離したDNA−CTA複合体は、凍結乾燥した。次いで、DNA−CTA複合体を少量のエタノールで溶解し、更に、クロロホルムを投入して複合体を完全に溶解することにより、0.02g/cm3濃度のDNA−CTA複合体溶解液を調製した。
【0029】
次に、粒状PDMSをDNA−CTA複合体溶解液に浸漬し、浸漬した状態で1日間程度放置することで、PDMSの網状構造にDNA−CTA複合体と溶媒とを取り込ませ、粒状PDMSを膨潤させた。続いて、膨潤させた粒状PDMSをDNA−CTA複合体溶解液から引き上げた。引き上げた粒状PDMSを120℃のオーブンに1日間程度入れて、PDMS内部に保持された溶媒であるクロロホルム及びエタノールを蒸発させることで、膨潤していたPDMSを収縮させ、網状構造にDNA−CTA複合体が濃縮された状態で固定化させることにより、シリコーン構造体を得た。
【0030】
<実施例2>
網状構造を有するシリコーンとして、大きさが5mm角の塊状シリコーンを使用した以外は実施例1と同様にしてシリコーン構造体を製造した。
【0031】
<比較試験1>
実施例1及び実施例2で得られたシリコーン構造体にどの程度DNA−CTA複合体が含有しているか、その重量を計測することにより含有量を算出した。その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】


【0033】
表1より明らかなように、比表面積が大きい粒状シリコーンを用いた実施例1のシリコーン構造体の方が、塊状シリコーンを用いた実施例2のシリコーン構造体よりも多くのDNA−CTA複合体を含有していることが判った。
【0034】
<比較試験2>
実施例1及び実施例2で得られたシリコーン構造体について、以下に示すアクリジンオレンジの吸着試験を行った。
【0035】
先ず、以下の式(3)に示すアクリジンオレンジを用いて10μg/cm3濃度のアクリジンオレンジ水溶液を調製した。このアクリジンオレンジ水溶液は、図4に示すように、波長λが491nmで吸収ピークが得られた。
【0036】
【化3】


【0037】
次に、このアクリジンオレンジ水溶液10cm3中に実施例1で得られたシリコーン構造体1gを浸漬し、この状態で2日間放置した。同様に、アクリジンオレンジ水溶液10cm3中に実施例2で得られたシリコーン構造体1gを浸漬し、この状態で2日間放置した。放置後は水溶液からシリコーン構造体を取り出した。更に、水溶液の上澄み液を採取し、波長λ=491nmで吸光度を測定した。同様にDNA−CTA複合体を含有していないシリコーン構造体を用いて吸着試験を行い、吸光度を測定した。これらの結果を表2に示す。ただし、水をリファレンスとして用い、水の吸光度が0となるようにした。
なお、浸漬前とは、DNA−CTA複合体を含有していないシリコーン構造体を浸漬したアクリジンオレンジ水溶液の吸光度の結果であり、浸漬後とは、実施例1並びに実施例2のシリコーン構造体を浸漬したアクリジンオレンジ水溶液の吸光度の結果である。
【0038】
【表2】


【0039】
表2より明らかなように、実施例1及び実施例2のシリコーン構造体を浸漬した後の上澄み液の吸光度はDNA−CTA複合体を含有していないシリコーン構造体を浸漬した後の上澄み液の吸光度に比べて低い数値が得られており、アクリジンオレンジを良く吸着していることが判る。また、実施例1と実施例2とを比較すると、DNA−CTA複合体の含有量が多い実施例1の方がより吸着している結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】DNA複合体の形成を示す図。
【図2】DNA複合体溶解液にシリコーンを浸漬してDNA複合体を固定化したシリコーン構造体の工程を示す図。
【図3】粒状PDMSの写真図。
【図4】比較試験2で使用したアクリジンオレンジ水溶液の吸光度を示す図。
【符号の説明】
【0041】
11 DNA
12 両親媒性分子
13 DNA複合体
14 有機溶媒
16 DNA複合体溶解液
17 網状構造を有するシリコーン
18 DNA複合体を固定化したシリコーン構造体
【出願人】 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
【出願日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【代理人】 【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義


【公開番号】 特開2008−12434(P2008−12434A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−186241(P2006−186241)