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触媒体 - 特開2008−12426 | j-tokkyo
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【発明の名称】 触媒体
【発明者】 【氏名】畠中 優介

【氏名】上杉 彰男

【氏名】冨田 忠文

【要約】 【課題】陽極酸化皮膜のマイクロポア内に触媒活性を有する金属を担持した触媒体であって、優れた触媒性能を有する触媒体の提供。

【構成】バルブ金属に陽極酸化処理を施して得られる、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜と、前記マイクロポア内に存在する、触媒活性を有する金属とを有する触媒体であって、前記陽極酸化皮膜側の表面について、200℃で2時間保持した後にBET法により測定した実表面積を、幾何学的表面積で除して得られる表面積比が、5000〜30万であり、前記陽極酸化皮膜側の表面に存在する前記マイクロポアのうち、10%以上が直管状のマイクロポアである、触媒体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ金属に陽極酸化処理を施して得られる、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜と、前記マイクロポア内に存在する、触媒活性を有する金属とを有する触媒体であって、
前記陽極酸化皮膜側の表面について、200℃で2時間保持した後にBET法により測定した実表面積を、幾何学的表面積で除して得られる表面積比が、5000〜30万であり、
前記陽極酸化皮膜側の表面に存在する前記マイクロポアのうち、10%以上が直管状のマイクロポアである、触媒体。
【請求項2】
更に、前記陽極酸化皮膜を支持するバルブ金属部材を有している、請求項1に記載の触媒体。
【請求項3】
前記バルブ金属がアルミニウムである、請求項1または2に記載の触媒体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極酸化皮膜のマイクロポアに触媒を担持した触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
規則的な微細構造を有する微細構造体(ナノ構造体)を作製する方法についての研究が注目され、多く行われている。
例えば、自己規制的に規則的な構造が形成される方法として、電解液中でアルミニウムに陽極酸化処理を施して得られる陽極酸化皮膜が挙げられる。陽極酸化皮膜には、数nm程度から数百nm程度の直径を有する複数の微細孔(マイクロポア)が規則的に形成されることが知られている。この陽極酸化皮膜の自己規則化を用い、完全に規則的な配列を得ると、理論的には、マイクロポアを中心に底面が正六角形である六角柱のセルが形成され、隣接するマイクロポアを結ぶ線が正三角形を成すことが知られている。
非特許文献1には、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜が記載されている。また、非特許文献2には、陽極酸化皮膜には、酸化の進行に伴って、細孔が自然形成されることが記載されている。また、非特許文献3では、多孔質酸化皮膜をマスクとしてSi基板上にAuドットアレイを形成することも提案されている。
陽極酸化皮膜の材料としての最大の特徴は、複数のマイクロポアが、基板表面に対してほぼ垂直方向に、ほぼ等間隔に平行に形成されたハニカム構造を採る点にあるとされている。これに加え、ポア径、ポア間隔およびポア深さを比較的自由に制御することができる点もほかの材料にない特徴であるとされている(非特許文献3参照。)。
【0003】
陽極酸化皮膜の応用例としては、触媒担持用のナノデバイス、光機能デバイス、磁気デバイス、発光体等の種々のデバイス類が知られている。
触媒分野への応用としては、特許文献1にはアルマイトを、焼成してなる触媒担体が提案されている。特許文献2には、50℃〜350℃で熱水処理した後、又は、熱水処理を行いながら触媒活性を有する金属を前記アルミナ層に担持する触媒体の製造方法が記載されている。また、特許文献3には、陽極酸化皮膜を、水または温水で水和処理して細孔分布を調整する方法が提案されている。さらに、特許文献4には、陽極酸化されたアルマイト表面を水和処理、ゾルゲル処理、触媒担持処理および焼成処理した触媒担体が記載されている。特許文献5では陽極酸化されたアルマイト表面を酸処理よって形成されたアルマイト表面の細孔の孔径を拡大し、水和処理、焼成処理した触媒担体が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−59247号公報
【特許文献2】特開平4−200745号公報
【特許文献3】特開平8−246190号公報
【特許文献4】特開平10−73226号公報
【特許文献5】特開2002−119856号公報
【非特許文献1】H.Masuda et.Al.,Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.37(1998),pp.L1340−1342,Part2,No.11A,1 November 1998(Fig.2.)
【非特許文献2】「表面技術便覧」、(社)表面技術協会編(1998)、日刊工業新聞社、p.490−553
【非特許文献3】益田秀樹,「陽極酸化アルミナにもとづく高規則性メタルナノホールアレー」,固体物理,1996年,第31巻,第5号,p.493−499
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討した結果、特許文献1〜5に記載されている方法では、得られる触媒担体の触媒活性が十分ではないことが分かった。
そこで、本発明は、陽極酸化皮膜のマイクロポア内に触媒活性を有する金属を担持した触媒体であって、優れた触媒性能を有する触媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、触媒体の表面積比を大きくし、かつ、マイクロポア内部の深部まで液体、気体等の流体が円滑に流動するような構造にすることにより、従来にない高い性能の触媒体を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(3)を提供する。
(1)バルブ金属に陽極酸化処理を施して得られる、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜と、前記マイクロポア内に存在する、触媒活性を有する金属とを有する触媒体であって、
前記陽極酸化皮膜側の表面について、200℃で2時間保持した後にBET法により測定した実表面積を、幾何学的表面積で除して得られる表面積比が、5000〜30万であり、
前記陽極酸化皮膜側の表面に存在する前記マイクロポアのうち、10%以上が直管状のマイクロポアである、触媒体。
(2)更に、前記陽極酸化皮膜を支持するバルブ金属部材を有している、上記(1)に記載の触媒体。
(3)前記バルブ金属がアルミニウムである、上記(1)または(2)に記載の触媒体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の触媒体は、触媒活性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の触媒体は、バルブ金属に陽極酸化処理を施して得られる、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜と、前記マイクロポア内に存在する、触媒活性を有する金属とを有する触媒体である。
【0010】
<陽極酸化皮膜>
陽極酸化皮膜は、バルブ金属に陽極酸化処理を施して得ることができ、マイクロポアを有する。
【0011】
<バルブ金属>
バルブ金属としては、陽極酸化処理により表面がその金属の酸化物の皮膜で覆われる特性を示す金属を用いることができる。例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンが挙げられる。中でも、アルミニウムが好ましい。
【0012】
アルミニウムとしては、特に限定されず、従来公知のアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金を用いることができる。例えば、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板、低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)が挙げられる。
本発明においては、アルミニウム純度が99質量%以上であるのが好ましく、99.5質量%以上であるのがより好ましく、99.9質量%以上であるのが更に好ましい。そのような純度を有するアルミニウムとしては、JIS1000番台のアルミニウムが容易に入手可能である。例えば、JIS 1N00、1200、1100、1N30、1230、1050、1060、1070、1080、1085、1N90および1N99材が挙げられる。
【0013】
陽極酸化皮膜は、上述したバルブ金属に陽極酸化処理を施すことにより、形成させることができるが、必要に応じて、陽極酸化処理の前にバルブ金属の表面を清浄にするための脱脂処理、陽極酸化皮膜のマイクロポアを所定の位置に形成させるための起点形成処理、陽極酸化処理により形成された陽極酸化皮膜のマイクロポアの口径を拡大するポアワイド処理、表面積を増大させるための表面積増大処理等を行うことができる。以下、バルブ金属としてアルミニウムを用いる場合を例に挙げて、各処理について説明する。
【0014】
<脱脂処理>
アルミニウムは、あらかじめ脱脂処理を施されるのが好ましい。
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
【0015】
中でも、以下の各方法が好適に例示される。
各種アルコール(例えば、メタノール)、各種ケトン、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流
して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム表面に接触させつつ、アルミニウム表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電
流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法)である。
【0016】
脱脂処理は、アルミニウム表面の脂分を除去しうる一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらない方法が好ましい。この点で、有機溶剤法、界面活性剤法、乳化脱脂法、リン酸塩法が好ましい。中でも、界面活性剤法が簡便性および廃水処理性の点で好ましい。
【0017】
<起点形成処理>
起点形成処理は、後述する本陽極酸化処理において、マイクロポアを所望の位置に形成させるための起点を形成させる処理である。本発明においては、この起点形成処理を行うことが好ましい。
形成させる起点は、特に限定されないが、マイクロポアの形成が均一に進行するような窪みであるのが好ましい。窪みは、直径が10nm〜0.5μmであるのが好ましく、また、深さが10nmから数百μmであるのが好ましい。また、隣接する窪みの中心間隔は、数10nmから数μmであるのが好ましい。これらは、触媒体の構造等に応じて適宜選択することができる。
【0018】
起点形成処理の方法としては、特に限定されず、例えば、公知の方法を用いることができる。
具体的には、例えば、陽極酸化処理により形成するマイクロポアが処理の進行により規則的に配列する現象を利用した自己規則化法、集束イオンビームを用いて起点を作成するFIB法、半導体分野の微細加工レジストを応用したフォトリソグラフィック法、規則的な鋳型をあらかじめ作製しておき、そのパターンを転写するスタンプ法が挙げられる。また、陽極酸化処理、ポアワイド処理および部分的な陽極酸化皮膜の溶解除去処理を複数回繰り返す多段階陽極酸化処理法も有用である。
以下、自己規則化法および多段階陽極酸化処理法を例に挙げて説明する。
【0019】
<自己規則化法>
自己規則化法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、基板として高純度のアルミニウムを使用し、電解液の種類に応じた電圧で、陽極酸化皮膜を形成させ、その後、脱膜処理を行う。
この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
【0020】
電解液の平均流速としては0.5〜20.0m/minが好ましく、この範囲内の流速で陽極酸化処理を行うことにより、均一かつ高い規則性を有することができる。上記流速の更に好ましい範囲としては1.0〜15.0m/minであり、2.0〜10.0m/minがより好ましい。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。さらに、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速を制御することができるため、より好ましい。そのようなかくはん装置としては、例えば、マグネティックスターラーHS−50D(アズワン社製)が挙げられる。
【0021】
陽極酸化処理は、例えば、酸濃度1〜10質量%の溶液中で、基板を陽極として通電する方法を用いることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、酸溶液であるのが好ましく、硫酸、リン酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、酒石酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸の溶液がより好ましく、硫酸、リン酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、酒石酸の溶液が更に好ましい。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0022】
電解液の濃度は、通常、0.1〜6mol/Lであり、0.2〜5mol/Lであるのが好ましく、0.3〜4mol/Lであるのがより好ましい。
電解液の温度は、通常、10〜70℃で適宜設定することができるが、15〜60℃であるのが好ましく、20〜60℃であるのがより好ましい。
電解液の電気伝導度は、通常、30〜400mS/cmであり、40〜300mS/cmであるのが好ましく、50〜200mS/cmであるのがより好ましい。
電流密度は、通常、0.1〜300A/dm2であり、0.3〜250A/dm2であるのが好ましく、0.5〜200A/dm2であるのがより好ましい。
電圧は、通常、3〜500Vであるが、電解液の種類に応じて適宜好適範囲を選択することができる。例えば、硫酸水溶液では10〜30Vであるのが好ましく、リン酸水溶液では150〜210Vであるのが好ましく、シュウ酸水溶液では30〜60Vであるのが好ましく、クエン酸水溶液では230〜250Vであるのが好ましく、マロン酸水溶液では100〜140Vであるのが好ましく、酒石酸水溶液では180〜210Vであるのが好ましい。
中でも、直流を用い、かつ、電圧を一定にすることによって、膜厚20μm以上の陽極酸化皮膜を形成させる定電圧電解が、高い規則性を得ることができる点で好ましい。
処理時間は、0.1〜20時間であるのが好ましく、0.3〜16時間であるのがより好ましく、0.5〜7時間であるのが更に好ましい。
【0023】
規則配列した窪みを持ったアルミニウム表面を得るために、自己規則化処理によって形成した陽極酸化皮膜を除去する脱膜処理を行う。自己規則化処理で形成した陽極酸化皮膜においては、表面から遠ざかるほど(アルミニウム基板に近づくほど)、マイクロポアの規則性が高くなるので、一度脱膜して、アルミニウム基板付近に残存したマイクロポアの底部分を表面に露出させて、後述する本陽極酸化処理において、マイクロポアの起点となる規則的な窪みを得る。
したがって、脱膜処理は、アルミニウムを除去せず、酸化アルミニウムである陽極酸化皮膜のみを除去する方法であれば特に限定されない。具体的には、例えば、化学的な溶解処理、逆電解処理が挙げられる。
【0024】
化学的な溶解処理としては、例えば、アルミニウムは溶解させず、酸化アルミニウムである陽極酸化皮膜のみを溶解させる溶媒を用いて、陽極酸化皮膜を溶解させる処理が挙げられる。
例えば、硝酸、リン酸、無水クロム酸、水酸化クロム、リン酸ジルコニウム系化合物、リン酸チタン系化合物、リチウム塩化合物、セリウム塩化合物、マグネシウム塩化合物、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物およびハロゲン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する水溶液を用いる方法が挙げられる。中でも、クロム酸およびリン酸の混合水溶液、リン酸および硝酸の混合水溶液、リン酸および無水クロム酸の混合水溶液が好ましい。
これらの水溶液に含まれる化合物の濃度は、0.01〜10mol/Lであるのが好ましく、0.05〜5mol/Lであるのがより好ましく、0.1〜1mol/Lであるのが更に好ましい。
水溶液の温度は、0℃以上であるのが好ましく、20℃以上であるのがより好ましく、40℃以上であるのが更に好ましい。なお、沸騰した水溶液を用いると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、水溶液は沸騰させないで用いるのが好ましい。
処理時間は、30分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上であるのが更に好ましい。
【0025】
逆電解処理は、アルミニウム基板を陰極として、酸水溶液中で電解することにより、陽極酸化皮膜とアルミニウム基板とをはく離させて、マイクロポアの起点となる規則的な窪みを有するアルミニウム部材を得る方法である。なお、この逆電解処理においては、アルミニウム基板を陰極として電解を行うが、これは陽極酸化処理の電解がアルミニウム基板を陽極とするのと逆になるので、逆電解処理と呼んでいる。
【0026】
逆電解処理においては、陽極酸化皮膜とアルミニウム基板との界面で水素が発生し、この水素により陽極酸化皮膜のアルミニウム基板との界面にあるバリア層が還元され、アルミニウムイオンとなって電解液として用いられる酸水溶液中に移動して溶出し、同時に水素ガスの圧力によって基板から陽極酸化皮膜が浮き上がるため、陽極酸化皮膜とアルミニウム基板とがその界面ではく離するものと考えられる。
【0027】
逆電解処理においては、陰極として、上述した陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板を用い、アルミニウム基板側から通電させる。陽極は、特に限定されず、例えば、PtメッキされたTi電極、Pt電極、カーボン電極が挙げられる。中でも、PtメッキされたTi電極、Pt電極が好ましい。
【0028】
逆電解処理に用いられる酸水溶液は、pH1〜7あるのが好ましく、pH2〜6であるのがより好ましく、pH2.5〜5.5であるのが更に好ましい。また、酸水溶液の電気伝導度は、0.01〜100mS/cmであるのが好ましく、0.1〜50mS/cmであるのがより好ましい。酸水溶液のpHおよび電気伝導度が上記範囲であると、アルミニウム基板の腐食および残膜が発生しにくく、はく離性が良好になる。
酸水溶液の電気伝導度が低すぎると、電流値の極小値が発生しないことがある。その場合には、酸水溶液中のイオン濃度を高くして、電流値の極小値が発生させるのが好ましい。逆に、酸水溶液中のイオン濃度が高すぎると、電流値の極小値が発生はするものの、短時間で終了し、その後、急速に電流値が増加してしまうので、制御が困難となる。更に、極小値に達する時間を超えると、腐食が発生してしまう。
【0029】
酸水溶液には、酸として、例えば、シュウ酸、硫酸、リン酸を好適に用いることができる。また、例えば、水に溶解して酸性を示す金属塩化合物、水に溶解して酸性を示す有機化合物を用いることもできる。
水に溶解して酸性を示す金属塩化合物としては、例えば、シュウ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムが挙げられる。
水に溶解して酸性を示す有機化合物は、カルボン酸であるのが好ましい。例えば、アジピン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、マレイン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、安息香酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、サリチル酸等の芳香族オキシカルボン酸が好適に挙げられる。
また、水に溶解して中性を示す塩、すなわち、中性塩を用いることもできる。中性塩としては、例えば、炭酸アンモニウム等の炭酸塩、ホウ酸アンモニウム等のほう酸塩が好適に挙げられる。
中性塩を用いる場合、更に、添加剤として、フッ化物、炭酸誘導体または酸アミドを添加した混合浴とするのも好適な態様の一つである。フッ化物としては、例えば、フッ化アンモニウムが挙げられる。炭酸誘導体としては、例えば、炭酸グアニジン、尿素、ホルムアルデヒドが挙げられる。酸アミドとしては、例えば、アセトアミドが挙げられる。
これらの中でも、シュウ酸、シュウ酸アルミニウム、硫酸、硫酸アルミニウムまたはこれらの混合物が好ましい。特に、硫酸アルミニウム、硫酸が、入手性や廃液処理性の点で好ましい。
【0030】
また、上記陽極酸化処理で用いられた電解液と同一の種類のものを用いるのが好ましい態様の一つである。これにより、同一の電解槽で、陽極酸化処理と逆電解とを行うことが可能となる。また、別の電解槽で行う場合であっても、逆電解槽への液の持ち込みによる悪影響がない。
【0031】
逆電解の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ない。
電解液濃度は、例えば、シュウ酸水溶液の場合、0.4〜10質量%、硫酸水溶液の場合、2〜20質量%、リン酸水溶液の場合、0.4〜5質量%であるのが好ましい。
電解液の温度は、一般的には、0〜50℃であるのが好ましく、10〜35℃であるのがより好ましい。
電流密度は、0.1〜200A/dm2であるのが好ましく、0.3〜50A/dm2であるのがより好ましく、0.5〜10A/dm2であるのが更に好ましい。上記範囲であ
ると、はく離にムラが生じず、より均一に行うことができる。
電圧は、5〜500Vであるのが好ましく、10〜240Vであるのがより好ましい。逆電解が陽極酸化処理に引き続いて行われる場合は、陽極酸化処理と同じ電圧で、定電圧逆電解を行うのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。電圧を断続的に変化させる方法においては、電圧を順次低くしていくのが好ましい態様の一つである。電解時間は、1〜500秒であるのが好ましく、10〜120秒であるのがより好ましい。
【0032】
上記範囲であると、陽極酸化皮膜のバリア層とアルミニウム基板とのはく離性により優れ、かつ、陽極酸化皮膜の窪みの規則性もより高くなるので好ましい。電気量が多すぎたり、電解時間が長すぎたりすると、陽極酸化皮膜のバリア層とアルミニウム基板との界面が高温となり、得られる構造体が変形し、窪みの規則性が損なわれる場合がある。
【0033】
また、逆電解処理は、電流値をモニターし、電流値が極小となる時間を中心に±30%程度の範囲で停止して終了するのが好ましく、電流値が極小付近となる点で電解を停止して終了するのがより好ましい。この場合、はく離性と、はく離後の陽極酸化皮膜およびアルミニウム基板の面状とが、優れたものになる。
【0034】
逆電解処理を行って得られるアルミニウム基板には、はく離面の10%以下の領域に、厚さ0.2μm以下の陽極酸化皮膜の残存物が残留することがある。このアルミニウム基板を利用する場合には、陽極酸化皮膜の残存物がないのが好ましい。
したがって、この場合、逆電解処理後、化学処理を行って、陽極酸化皮膜の残存物を除去するのが好ましい。具体的には、各種の酸性またはアルカリ性の水溶液を陽極酸化皮膜に接触させることにより、除去することができる。
【0035】
酸性水溶液としては、例えば、リン酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液、シュウ酸水溶液、クロム酸とリン酸との混合水溶液が挙げられる。中でも、クロム酸とリン酸との混合水溶液が好ましい。
酸性水溶液は、pH0.3〜6であるのが好ましく、pH0〜4であるのがより好ましく、pH2〜4であるのが更に好ましい。酸性水溶液の温度は、20〜60℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
処理時間は、1秒〜6時間であるのが好ましく、5秒〜3時間であるのがより好ましく、10秒〜1時間であるのが更に好ましい。
【0036】
アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムの各水溶液が挙げられる。
アルカリ性水溶液は、pH10〜13.5であるのが好ましく、pH11〜13であるのがより好ましい。アルカリ性水溶液の温度は、10〜50℃であるのが好ましく、20〜40℃であるのがより好ましい。処理時間は、1秒〜10分であるのが好ましく、2秒〜1分であるのがより好ましく、3秒〜30秒であるのが更に好ましい。
【0037】
アルカリ性水溶液で生成した中和生成物は、更に、上述した酸水溶液で溶解するのが好ましい。好ましい酸水溶液としては、例えば、リン酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液が挙げられる。酸水溶液は、pH0.3〜6であるのが好ましく、pH0〜4であるのがより好ましく、pH2〜4であるのが更に好ましい。酸水溶液の温度は、20〜60℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。処理時間は、1秒〜60分であるのが好ましく、5秒〜10分であるのがより好ましく、10秒〜5分であるのが更に好ましい。
【0038】
逆電解の好適条件の例を下記に例示する。
<好適条件1>
陰極:濃度0.3mol/L、温度17℃のシュウ酸水溶液で、電圧40V、処理時間60分の条件で陽極酸化処理して得られる陽極酸化皮膜、厚さ60μm、ポア径35nm、ポア径の変動係数15%、マイクロポア周期63nm
陽極:カーボン電極
電解液:濃度0.04g/L(アルミニウムイオン換算)、pH3.8、電気伝導度0.6mS/cm、温度33℃の硫酸アルミニウム水溶液
電圧:40V(設定電圧)
電流密度:5A/dm2(極小値1A/dm2
処理時間:40秒(極小時)
【0039】
逆電解処理の処理時間は、クロム酸とリン酸との混合水溶液で溶解させる脱膜工程に要する時間に比べて、極めて短い。また、クロム酸とリン酸との混合水溶液は、脱膜工程時において、酸化アルミニウムの含有量がAl23として15g/Lを超えると、急激に溶解能力が劣化する。
これに対し、この逆電解処理では、陽極酸化皮膜がアルミニウム基板との界面で固形の状態ではく離するため、フィルター等で簡便に分離することができ、逆電解処理に用いられる酸水溶液が劣化しない。
したがって、逆電解処理の処理時間および酸水溶液の消費量は、クロム酸とリン酸との混合水溶液による脱膜工程の処理時間および処理液の消費量に比べて、格段に短く、少ない。
【0040】
<多段階陽極酸化処理法>
多段階陽極酸化処理法は、表面に陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板に、少なくとも、前記陽極酸化皮膜の一部を溶解させる第1皮膜溶解処理と、前記第1皮膜溶解処理後の陽極酸化処理とを含む工程を1回以上行う規則化処理と、前記陽極酸化皮膜を溶解させる、第2皮膜溶解処理とをこの順に施して、表面にマイクロポアを有する微細構造体を得る方法である。
この場合、第1皮膜溶解処理の前の陽極酸化皮膜の膜厚は、10μm以上であるのが好ましく、15μm以上であるのがより好ましく、20μm以上であるのが更に好ましい。上記範囲であると、第2皮膜溶解処理後の表面の規則化度を85%以上にすることが容易となる。
【0041】
<本陽極酸化処理>
本発明では、上述したように用途に合わせてアルミニウム表面に窪みを形成させた後、陽極酸化処理により、陽極酸化皮膜を形成させることができる。本明細書においては、この陽極酸化処理を、自己規則化法に用いられる陽極酸化処理等と区別して、「本陽極酸化処理」という。
本陽極酸化処理は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができるが、上述した自己規則化法と同一の条件で行われるのが好ましい。
本陽極酸化処理後の陽極酸化皮膜の膜厚は、0.5〜600μmであるのが好ましく、10〜400μmであるのがより好ましく、20〜200μmであるのが更に好ましい。上記範囲であると、本発明の触媒体の触媒性能が優れたものになる。
陽極酸化皮膜の膜厚は、概ね電気量に比例するので、処理時間と電流密度とを適宜選択することにより、調節することができる。
本陽極酸化処理により、バルブ金属の一部が陽極酸化され、陽極酸化皮膜とそれを支持するバルブ金属部材とが得られる。
【0042】
<ポアワイド処理>
ポアワイド処理は、本陽極酸化処理後、浸せき法等により、陽極酸化皮膜を酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより、陽極酸化皮膜を溶解させ、マイクロポアのポア径を拡大する処理である。
これにより、マイクロポアの配列の規則性およびポア径のばらつきを制御することが容易となる。
【0043】
ポアワイド処理に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
ポアワイド処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
浸せき法の場合、酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜60分であるのが好ましく、10〜50分であるのがより好ましく、15〜30分であるのが更に好ましい。
【0044】
<表面積増大処理>
陽極酸化皮膜には、表面積を増大させる表面積増大処理を施すのが好ましい態様の一つである。
表面積増大処理としては、例えば、特開昭59−059247号公報に記載の焼成処理;「新アルマイト理論」,カロス出版,1997年,p.208−212に記載の熱水水和処理;フッ化物イオンを含有する水を用いる常温水和処理、特許第3154638号公報に記載の純水を用いる常温水和処理等の常温水和処理を用いることができる。
【0045】
中でも、常温水和処理が好ましい。常温水和処理には、純水を使用することができるが、更に、反応促進剤として、アンモニア、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、ケイ酸ナトリウム、重クロム酸カリウムおよびトリエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する水溶液を用いるのが好ましい。中でも、水和処理の効率の点で、アンモニア、ケイ酸ナトリウムおよびトリエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する水溶液であるのが好ましく、アンモニアおよび/またはケイ酸ナトリウムを含有する水溶液であるのがより好ましく、アンモニア水溶液であるのが更に好ましい。
水溶液中の反応促進剤の量は、通常、1〜50質量%であり、3〜40質量%であるのが好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましい。
【0046】
水溶液の温度は、5℃以上40℃未満であるのが好ましく、10〜35℃であるのがより好ましく、20〜30℃であるのが更に好ましい。
水溶液は、pH8〜12であるのが好ましく、pH10〜12であるのがより好ましく、pH11〜12であるのが更に好ましい。
水和処理の条件が、上記範囲であると、マイクロポアの内部に微細凹凸構造が形成することによって表面積を増大させることができるとともに、マイクロポアの開口部が塞がれることを防止することができる点で好ましい。
【0047】
<触媒活性を有する金属>
本発明に用いられる触媒活性を有する金属は、特に限定されず、例えば、触媒活性を有する公知の金属、合金および金属化合物が挙げられる。
具体的には、金属としては、例えば、Pt、Pd、Ru、Re、Rh、Ni、Mo、Ru、Cu、Co、Au、Agが挙げられる。合金としては、例えば、これらの金属の合金、より具体的には、例えば、Pt−Rh−Pd3元触媒、Re−Pt合金が挙げられる。金属化合物としては、例えば、これらの金属または合金の塩、錯体が挙げられる。
中でも、微粒子状態での取り扱いが容易で触媒活性が高いため、広汎に使われている貴金属触媒が好ましい。
特に、Pt、Pd、Au、Ag、ReおよびRhからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属またはその塩もしくは錯体であるのが好ましく、PtもしくはPt合金またはその塩もしくは錯体が好ましい。
【0048】
<触媒担持処理>
本発明の触媒体は、上述した陽極酸化皮膜のマイクロポア内に、上述した触媒活性を有する金属を担持させることにより、得ることができる。
具体的には、触媒活性を有する金属を陽極酸化皮膜に吸着させ、さらに、触媒反応に用いられる物質(例えば、流体)と接触しても脱着しない程度に固定化させる。
触媒担持処理の方法は、特に限定されず、例えば、含漬法、イオン交換法、共沈法、沈着法、混練法、水熱合成法、気相合成法等の公知の方法を用いることができる。中でも、含漬法が好ましい。
含漬法は、その工程により分類され、吸着法、ポアフィリング法、incipient wetness法、蒸発乾固法、スプレー法等が知られている。
中でも、触媒学会編,「触媒実験ハンドブック」,講談社,1989年,p.18−34に記載されているような、触媒活性を有する金属イオンを含有する水溶液に浸せきさせる方法が好ましく、触媒活性を有する貴金属イオンを含有する水溶液に浸せきさせる方法がより好ましい。
この場合、水溶液の温度は、5〜80℃であるのが好ましく、10〜50℃であるのがより好ましく、5〜40℃未満であるのが更に好ましい。水溶液は、pH7.5〜13であるのが好ましく、pH8〜12であるのがより好ましく、pH9〜12であるのが更に好ましい。処理時間は、0.1〜12時間であるのが好ましく、0.5〜10時間であるのがより好ましく、1〜8時間であるのが更に好ましい。
【0049】
含漬法に用いられる水溶液は、触媒活性を有する金属を含む、塩化物、臭化物、アンモニウム化合物、シアン化物、アルカリ金属塩(すなわち、K、Na等のアルカリ金属との塩)、これらの複合化合物を用いて調製することができる。中でも、入手の容易さおよび調製の簡便性の点で、塩化物、アンモニウム化合物が好ましい。
【0050】
<同時処理>
ヘキサクロロ白金(IV)酸・六水和物の水溶液(酸性)またはジクロロテトラアンミン白金(II)・n水和物の水溶液(酸性)に、アンモニアを添加してpH8〜13のアルカリ性にpH調整すると、白金イオンがアンモニアと反応して錯イオンを形成し、[Pt(NH342+錯体が形成される。
この水溶液を用いて触媒担持処理を施すと、微細な結晶となり、触媒体として高い性能を示すことが期待され、また、触媒担持処理と同時に、水和処理による表面積増大処理が行われるので、製造効率の点で好ましい。
【0051】
<焼成処理>
本発明においては、本発明の触媒体の陽極酸化皮膜側の表面積を増大させたり、陽極酸化皮膜に吸着した触媒活性を有する金属を固着させたりすることを目的として、更に、焼成処理を施すことができる。
焼成処理は、空気中または不活性ガス雰囲気中、100〜600℃で0.1〜5時間保持することにより行うのが好ましく、不活性ガス雰囲気中、350〜600℃で0.5〜3時間保持することにより行うのがより好ましい。
【0052】
<バルブ金属部材除去処理>
本発明の触媒体は、特に高温環境下で使用する場合、バルブ金属部材を除去した態様で用いるのが好ましいことがある。このため、触媒担持処理の前または後に、バルブ金属部材を除去する処理を行うことができる。
バルブ金属部材を除去する処理の方法は、特に限定されないが、例えば、陽極酸化処理については難溶性または不溶性であり、かつ、バルブ金属については溶解性である溶剤を用いて、好ましくは0〜80℃、より好ましくは10〜60℃、更に好ましくは20〜40℃の温度で、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは1時間以上、この溶剤に、バルブ金属部材を、場合により陽極酸化皮膜とともに接触させる方法が挙げられる。
溶剤は、バルブ金属としてアルミニウムを用いた場合は、臭素、ヨウ素等のハロゲン;希硫酸、リン酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等の酸性溶剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ性溶剤が好ましく、臭素、ヨウ素がより好ましい。
バルブ金属部材を溶剤に接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、浸せき法、滴下法が挙げられる。
また、バルブ金属部材を除去する処理の方法として、上述した逆電解処理も好適に用いられる。
【0053】
<貫通処理>
本発明の触媒体は、マイクロポアの底部を貫通させ、マイクロポアの両端が開口した形態とすることができる。この形態では、触媒反応に気体、液体等の流体を用いる場合に、流体をマイクロポアの中を流通させた状態で反応を行うことができるため、触媒効率が優れたものとなる。
貫通処理は、必要に応じて上述したバルブ金属の除去処理を施した後、化学溶解処理、イオンミリング処理等を行うことにより施すことができ、これにおり、マイクロポアの底部が貫通し、両端が開口した形態の触媒体が得られる。
【0054】
化学溶解処理は、陽極酸化皮膜を溶解させうる水溶液(例えば、上述した自己規則化法に用いた陽極酸化処理用の電解液)を用いて、陽極酸化皮膜を溶解させる方法である。
水溶液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸、マロン酸等の酸性水溶液が好ましい。水溶液の濃度は、通常、0.1〜6mol/Lであり、0.2〜5mol/Lであるのが好ましく、0.3〜4mol/Lであるのがより好ましい。水溶液の温度は、通常、10〜70℃であり、15〜60℃であるのが好ましく、20〜60℃であるのがより好ましい。
化学溶解処理の方法は、特に限定されないが、例えば、バルブ金属を除去して得られた陽極酸化皮膜を、バリアー層側が上記水溶液と接触するように減圧フィルターホルダーに鋏み、上から上記水溶液を入れ、吸引ろ過瓶にセットして吸引することにより行うことができる。この方法では、マイクロポアの底部が貫通し、水溶液が浸透して滴下するようになったら、吸引を中止して、水溶液を中性の水に入れ替えて水洗する。その後、自然乾燥してメンブランフィルター状の貫通膜を得ることができる。
【0055】
イオンミリング処理は、2〜10kVで加速したアルゴンイオンビーム等を、入射角10°以下でバルブ金属に照射し、バリアー層を削ってマイクロポアの底部を貫通させる方法である。イオンミリング処理は、市販の装置、例えば、日立ハイテクノロジー社製のPIPS精密イオンポリッシング装置691型、精密エッチングコーティングシステム682型PECSおよびイオンミリング装置E−3500を用いて行うことができる。
【0056】
<表面積比>
本発明の触媒体においては、陽極酸化皮膜側の表面について、200℃で2時間保持した後にBET法により測定した実表面積を、幾何学的表面積で除して得られる表面積比が、5000〜30万である。
実表面積は、200℃で2時間保持した後に、BET法により測定される。触媒体を200℃で2時間保持することにより、後のBET法において、測定される実表面積が安定した値となる。
触媒体を200℃で2時間保持する方法としては、例えば、真空中で加熱する方法、真空中で保管した後、不活性流通ガス中で加熱する方法が好適に挙げられる。
【0057】
BET法は、試料表面に吸着占有面積の知られている物質を液体窒素の温度で吸着させ,その量から試料の表面積を求める方法である。
本発明においては、BET法は、常法により行うことができる。例えば、触媒学会編,「触媒実験ハンドブック」,講談社,1989年,p.167−168の記載を参照して行うことができる。
BET法に用いられる測定器は、特に限定されず、例えば、市販の測定器が挙げられる。具体的には、例えば、島津製作所社製のフローソーブ、カンタクローム社製のオートソーブが挙げられる。
吸着質としては、窒素、クリプトン、ベンゼン、トルエン等の有機化合物が用いられる。中でも、窒素、窒素とヘリウムとの混合ガスが一般的に用いられる。触媒体の実表面積が比較的小さい場合には、クリプトンガスが好適に用いられる。
BET法における吸着時間は、触媒体の実表面積、測定する触媒体の量等によって、異なるが、例えば、25mm×2mmの大きさでは、概ね30分〜15時間の範囲である。脱着時間は、5〜10分程度で行われる。
実表面積は、脱着時に計測される面積の値を用いる。
【0058】
幾何学的表面積は、触媒体の陽極酸化皮膜側の表面を平面であると仮定して算出される面積である。具体的には、ノギス等で計測した触媒体の大きさから算出される。
【0059】
上述したようにして得られた実表面積を幾何学的表面積で除して、表面積比を算出する。
【0060】
本発明の触媒体は、表面積比が5000〜30万であり、1万〜25万であるのが好ましく、2万〜20万であるのがより好ましい。上記範囲であると、触媒反応(例えば、メチルシクロヘキサンの脱水素反応)の速度、転換率等の触媒性能と触媒体作製の簡便性とのバランスに優れる。
【0061】
<直管度>
本発明の触媒体においては、陽極酸化皮膜側の表面に存在するマイクロポアのうち、10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上が直管状のマイクロポアである。
一般に、触媒反応の効率を高くするためには、触媒体の表面積比を大きくすることが必要であるが、例えば、陽極酸化皮膜の膜厚を厚くしてマイクロポアを深くすることにより表面積比を大きくすると、触媒反応に用いられる液体、気体等の流体がマイクロポアの深部まで到達しにくくなり、触媒反応の効率が高くなりにくくなる。
これに対し、直管状のマイクロポアにおいては、触媒反応に用いられる液体、気体等の流体が、マイクロポアの深部まで円滑に移動することができる。したがって、直管状のマイクロポアの割合(直管度)が上記範囲であると、マイクロポアを深くした場合であっても、触媒反応の効率が高くなるため好ましい。
【0062】
ポアの直管度は、触媒体の断面をSEM等で観察し、分岐や閉塞がないものを直管状であるとして、そのようなマイクロポアの割合を算出することにより、求めることができる。なお、直管状のポアは、分岐や閉塞がなければ、屈曲しているものであってもよい。
ポアの直管度は、例えば、触媒体を折り曲げて、陽極酸化皮膜の破断面を作製し、FE−SEMによって観察し、マイクロポアの中間部から底部にかけて合計5箇所の写真を倍率5万倍で撮影し、視野の中で、直管状になっているマイクロポアの個数Cと、分岐しまたは閉塞しているマイクロポアの個数Dとから、下記式(1)により算出する。
【0063】
直管度(%)=C/(C+D)×100 (1)
【0064】
なお、本発明においては、表面積増大処理および触媒担持処理において、陽極酸化皮膜の表面近傍の観察が難しくなる傾向があるので、SEM等による観察はマイクロポアの中間部から底部にかけての範囲で行うのが好ましい。
【0065】
図1は、本発明の触媒体の断面SEM写真の一例である(撮影倍率5万倍、左下のバーの長さ0.2μm)。図1に示される触媒体は、図1の上部に、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜を有している。図1に示される触媒体においては、直管度は100%である。
図2は、ポアの直管度を算出する方法の説明図である。図2(A)においては、4個のマイクロポア10はいずれも分岐や閉塞がない。したがって、直管状のマイクロポアの割合は、4/4×100=100(%)である。一方、図2(B)においては、6個のマイクロポアのうち、分岐状のマイクロポア12が4個、他のマイクロポアの中間部で閉塞しているマイクロポア14が1個あるため、直管状のマイクロポア10は1個となっている。したがって、直管度は、1/6×100=17(%)である。
【0066】
<規則化度>
本発明の触媒体においては、陽極酸化皮膜のマイクロポアの規則化度が10%以上であるのが好ましく、20%以上であるのが好ましく、30%以上であるのが更に好ましい。
規則化度は、マイクロポアの規則性の指標であり、上述したバルブ金属部材除去処理およびその後の貫通処理によりマイクロポアの底部を貫通させて、裏面からFE−SEMによる写真を撮影し、下記式(2)により算出する。
【0067】
規則化度(%)=B/A×100 (2)
【0068】
上記式(2)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
【0069】
図3は、ポアの規則化度を算出する方法の説明図である。図2を用いて、上記式(1)をより具体的に説明する。
図3(A)に示されるマイクロポア1は、マイクロポア1の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円3(マイクロポア2に内接している。)を描いた場合に、円3の内部にマイクロポア1以外のマイクロポアの重心を6個含んでいる。したがって、マイクロポア1は、Bに算入される。
図3(B)に示されるマイクロポア4は、マイクロポア4の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円6(マイクロポア5に内接している。)を描いた場合に、円6の内部にマイクロポア4以外のマイクロポアの重心を5個含んでいる。したがって、マイクロポア4は、Bに算入されない。また、図3(C)に示されるマイクロポア7は、マイクロポア7の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円9(マイクロポア8に内接している。)を描いた場合に、円9の内部にマイクロポア7以外のマイクロポアの重心を7個含んでいる。したがって、マイクロポア7は、Bに算入されない。
【0070】
本発明の触媒体は、用いられる触媒の種類に応じて、種々の用途に用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.触媒体の作製
(実施例1〜19ならびに比較例1および2)
第1表に示されるように、基板に、脱脂処理、起点形成処理(実施例1のみ)、本陽極酸化処理、ポアワイド処理、触媒担持処理および逆電解処理(実施例19のみ)を順次施して、各触媒体を得た。
【0072】
以下、基板および各処理について説明する。
【0073】
(1)基板
構造体の作製に用いた基板は、以下のとおりである。これらを10cm四方の範囲で陽極酸化処理を施すことができるような大きさにカットして用いた。
基板1:JIS 1N99材、日本軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.30mm
基板2:JIS 1090材、ユニファスアルミニウム社製、純度99.9質量%、厚さ0.30mm
基板3:JIS 1070材、ユニファスアルミニウム社製、純度99.7質量%、厚さ0.30mm
基板4:JIS 1050材、日本軽金属社製、純度99.5質量%、厚さ0.24mm
基板5:JIS 1N30材、ユニファスアルミニウム社製、純度99.3質量%、厚さ0.30mm
基板6:JIS 1100材、ユニファスアルミニウム社製、純度99質量%、厚さ0.30mm
基板7:JIS 1050材、日本軽金属社製、純度99.5質量%、厚さ3mm
【0074】
(2)脱脂処理
圧延油を除去するため、中性洗剤(チャーミー、ライオン社製)の水希釈液(濃度10質量%、温度40℃)に浸せきさせ、スポンジ(PSスポンジ、富士写真フイルム(株)製)により10分間擦って洗浄した。
【0075】
(3)起点形成処理
実施例1においては、以下に示すようにして、マイクロポアの形成の起点(開始点)となる窪みを形成させる起点形成処理を施した。実施例2〜17ならびに比較例1および2においては、起点形成処理を行わなかった。
【0076】
起点形成処理は、具体的には、基板1について、以下に示す第1回陽極酸化処理、第1回化学溶解処理、第2回陽極酸化処理および第2回化学溶解処理をこの順で施すことにより、行った。
【0077】
<第1回陽極酸化処理>
第1回陽極酸化処理は、電解浴として、濃度0.5mol/L、温度16℃のシュウ酸水溶液を用い、電解浴中で、電圧40Vの定電圧条件で電解処理を60分間行うことにより施し、膜厚9μmの陽極酸化皮膜を形成させた。電流密度は、特に制御しなかったが、陽極酸化処理中の平均値で、約0.5A/dm2であった。
【0078】
<第1回化学溶解処理>
第1回化学溶解処理は、濃度0.56mol/L、温度40℃のリン酸水溶液中に、20分間浸せきさせることにより施し、陽極酸化皮膜を溶解させて、膜厚8μmとした。
【0079】
<第2回陽極酸化処理>
第2回陽極酸化処理は、電解浴として、濃度0.5mol/L、温度16℃のシュウ酸水溶液を用い、電解浴中で、電圧40Vの定電圧条件で電解処理を60分間行うことにより施し、陽極酸化皮膜を成長させて、膜厚17μmとした。電流密度は、特に制御しなかったが、陽極酸化処理中の平均値で、約0.5A/dm2であった。
【0080】
<第2回化学溶解処理>
第2回化学溶解処理は、濃度0.56mol/L、温度40℃のリン酸水溶液中に、20分間浸せきさせることにより施し、陽極酸化皮膜を溶解させて、膜厚8μmとした。
【0081】
(4)本陽極酸化処理
実施例1〜19においては、第1表に示される電解液の種類、濃度および濃度、電圧、電流密度ならびに処理時間で、定電圧電解処理による本陽極酸化処理を行い、第1表に示される膜厚の陽極酸化皮膜を形成させた。なお、第1表中、電流密度は、特に制御しなかったが、陽極酸化処理中の平均値を示した。
実施例1においては、得られた陽極酸化皮膜についてFE−SEM写真(倍率5万倍)を撮影し、写真から20個のマイクロポアを適宜選択してポア径をノギスで測定したところ、平均直径33nm、標準偏差3nmであった。
【0082】
比較例1および2においては、第1表に示される電解液の種類、濃度および濃度、電圧、電流密度ならびに処理時間で、定電流電解処理による本陽極酸化処理を行い、第1表に示される膜厚の陽極酸化皮膜を形成させた。なお、電圧は、特に制御しなかったが、陽極酸化処理の開始時が60V、終了時が35Vであり、その間、漸減していた。
本陽極酸化処理においては、冷却装置としてNeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置としてペアスターラー PS−100(EYELA社製)、電源としてGP0650−2R(高砂製作所社製)を用いた。
なお、第1表中、シュウ酸および硫酸は、いずれも関東化学社製の試薬を用いた。
【0083】
(5)ポアワイド処理
ポアワイド処理は、基板を、濃度5質量%、温度30℃のリン酸水溶液に15分間浸せきさせることにより行った。
実施例1においては、ポアワイド処理後の陽極酸化皮膜についてFE−SEM写真(倍率5万倍)を撮影し、写真から20個のマイクロポアを適宜選択してポア径をノギスで測定したところ、平均直径40nmであった。
【0084】
(6)触媒担持処理
Ptの含有量が2g/L程度となるようにHPtCl6・6H2O(関東化学社製試薬)を純水に溶解させた。ついで、アンモニア水(関東化学社製試薬)を添加してpH11.4となるように調整した後、純水を添加してPtの含有量が最終的に1g/Lとなるように調整した。
得られた水溶液を室温下で6時間かくはんし、水溶液の色彩が当初の黄色から無色透明に近い状態に変化して安定したことを確認した後、プログラム低温インキュベーター(IQ820、ヤマト科学社製)中に前記水溶液が入ったポリ瓶を密閉した状態で置いて25℃にし、その後、基板を第1表に示される時間浸せきさせることにより、触媒担持処理を施し、触媒体を得た。
【0085】
(7)逆電解処理
実施例19においては、以下のようにして、逆電解処理を施し、陽極酸化皮膜を基板からはく離させた。実施例1〜18ならびに比較例1および2においては、逆電解処理を施さなかった。
逆電解処理は、マスキングを行った後、陰極として触媒担持処理後の基板を用い、陽極としてPt電極を用い、濃度4.5g/L、温度33℃の硫酸アルミニウム水溶液中で、電圧16Vの定電圧条件で電解処理を行うことにより施し、これにより陽極酸化皮膜と基板とをはく離させた。
逆電解処理においては、電流値のモニタリングを行い、電流値が初期電流値の10%以下となったときに逆電解処理を終了した。
陽極酸化皮膜の表面における逆電解において電解液と接触した部分と接触しなかった部分との境界(半径1.7cmの円状)にカッターで切り込みを入れて、陽極酸化皮膜を基板から分離した。
なお、逆電解処理の後に貫通処理は、行わなかった。
【0086】
2.触媒体の性状
(1)表面積比
上記で得られた触媒体を小型裁断機により40mm×3mmの大きさに裁断した。裁断後の触媒体を、市販の真空保管容器の中に入れ、真空度1×10-1Paで12時間保管した。
ついで、触媒体を流動式比表面積自動測定装置(フローソーブIII2305、島津製作所社製)に入れ、0.1%クリプトンを含有した窒素ガス流通下で、200℃で2時間保持し、脱気した。
その後、感度設定1/1として、short Passを使用し、0.1%クリプトンを含有した窒素ガス流通下で、液体窒素温度で1時間吸着させたところ、シグナルが消え、吸着が完了した。ついで、室温に戻したところ、5分後にシグナルが消え、脱着が完了した。
脱着データより得られた実表面積を幾何学的面積(0.00012m2)で除して、表面積比を算出した。結果を第1表に示す。
【0087】
(2)直管度
上記で得られた触媒体を折り曲げて、陽極酸化皮膜の破断面を作製し、FE−SEM(S−900、日立製作所社製)によって観察し、マイクロポアの中間部から底部にかけて合計5箇所の写真を倍率5万倍で撮影し、視野の中で、直管状になっているマイクロポアの個数Cと、分岐しまたは閉塞しているマイクロポアの個数Dとから、上記式(1)により直管度を算出した。結果を第1表に示す。
【0088】
(3)規則化度
上記で得られた触媒体に逆電解処理を施し、陽極酸化皮膜を基板からはく離させた。逆電解処理の条件は、以下のとおりであった。
陰極:上記で得られた触媒体
陽極:カーボン電極
電解液:濃度0.04g/L(アルミニウムイオン換算)、pH3.8、電気伝導度0.6mS/cm、温度33℃の硫酸アルミニウム水溶液
電圧:40V(設定電圧)
電流密度:5A/dm2(極小値1A/dm2
処理時間:40秒(極小時)
【0089】
ついで、得られた陽極酸化皮膜に貫通処理を施した。貫通処理は、濃度5質量%、温度40℃のリン酸水溶液に、陽極酸化皮膜をバリアー層側が下側になるようにして浮かせ、30分間放置することにより行い、これによりバリアー層を溶解させ、マイクロポアの底部を貫通させた。
【0090】
マイクロポアの底部が貫通した陽極酸化皮膜について、裏面からFE−SEMによる写真(倍率5万倍)を撮影し、1.2μm×2μmの視野で、マイクロポアについて上記式(2)により定義される規則化度を測定した。規則化度の測定は、150箇所において行い、平均値を算出した。結果を第1表に示す。
【0091】
3.触媒体の性能評価
流通式微分反応装置(化学工学論文集,第19巻,第1号(1993),p.42のFig.1に示されるもの。)を用いて、以下のようにしてメチルシクロヘキサンの脱水素反応を行って触媒体の脱水素反応率を測定し、触媒体の性能評価を行った。
前処理として、350℃で12時間空気酸化を行った後、水素による還元処理を2時間行い、ついで、窒素でパージしながら200℃まで降温させた。
つぎに、5℃のメチルシクロヘキサンをバブリングによって気化させてキャリアガスとして用いた窒素ガスに接触させ、温度とバブリングの程度とを適宜制御することにより、メチルシクロヘキサンのガス濃度を制御した。導入濃度は200ppmとした。反応圧力は1気圧であった。
メチルシクロヘキサンを触媒体に1時間接触させた後、発生したトルエン濃度を検量線法で求めた。発生したトルエン濃度から、下記式により、脱水素反応率を算出した。結果を第1表に示す。
【0092】
脱水素反応率(%)=(発生したトルエン濃度)/(導入したメチルシクロヘキサン濃度=200ppm)×100
【0093】
【表1】



【0094】
第1表から明らかなように、本発明の触媒体(実施例1〜19)は、直管度が低い場合(比較例1および2)に比べて、脱水素反応率が高かった。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の触媒体の断面SEM写真の一例である。
【図2】ポアの直管度を算出する方法の説明図である。
【図3】ポアの規則化度を算出する方法の説明図である。
【符号の説明】
【0096】
1、2、4、5、7、8 マイクロポア
3、6、9 円
10 直管状のマイクロポア
12 分岐状のマイクロポア
14 閉塞しているマイクロポア
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】 【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔

【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子

【識別番号】100112645
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 弘薫


【公開番号】 特開2008−12426(P2008−12426A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−185578(P2006−185578)