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【発明の名称】 排ガス浄化触媒
【発明者】 【氏名】竹島 伸一

【氏名】小山 晃生

【要約】 【課題】排ガス浄化触媒の使用の間のペロブスカイト型複合酸化物の粒成長を抑制すると共に、最高浄化率及び/又は比較的高温における触媒活性に関しても優れた性能を有することができるペロブスカイト型複合酸化物系排ガス浄化触媒を提供する。

【構成】細孔構造を有するシリカからなる多孔質シリカ担体、及びこの多孔質シリカ担体の細孔構造内に担持されているペロブスカイト型複合酸化物の粒子を有する排ガス浄化触媒とする。ここでこの多孔質シリカ担体では、その細孔分布において、一次粒子間の間隙に起因するピークが、3〜100nmの範囲にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔構造を有するシリカからなる多孔質シリカ担体、及び前記多孔質シリカ担体の細孔構造内に担持されているペロブスカイト型複合酸化物の粒子を有し、且つ前記多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが、3〜100nmの範囲にある、排ガス浄化触媒。
【請求項2】
シリカの一次粒子間の間隙に起因する前記ピークが、5〜50nmの範囲にある、請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの細孔構造に起因するピークが、1〜5nmの範囲にある、請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記ペロブスカイト型複合酸化物が、下記の式で表されるペロブスカイト型複合酸化物である、請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス浄化触媒:
ABO
(Aは、ランタンLa、ストロンチウムSr、セリウムCe、バリウムBa、カルシウムCa、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;Bは、コバルトCo、鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、マンガンMn、マグネシウムMg及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;且つOは酸素)。
【請求項5】
前記ペロブスカイト型金属酸化物が、LaFeOの組成を有する、請求項4に記載の排ガス浄化触媒。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒、特に自動車からの排ガスを浄化するための排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関からの排ガス中には、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等が含まれている。これらの物質は、CO及びHCを酸化すると同時に、NOを還元する排ガス浄化触媒によって除去することができる。排ガス浄化触媒の代表的なものとしては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の貴金属をγ−アルミナ等の多孔質金属酸化物担体に担持させた三元触媒が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの貴金属は、価格が高く、また埋蔵量が少ないので、将来的には不足することも考えられる。従って貴金属以外の触媒として、ペロブスカイト型複合酸化物を排ガス浄化のための触媒として用いることが提案されている。
【0004】
これに関し、例えば特許文献1では、貴金属を含む触媒成分と、化学式ABOで表されるペロブスカイト型複合酸化物である触媒成分とを混合して用いることを開示している(Aは、ランタンLa、ストロンチウムSr、セリウムCe、バリウムBa、カルシウムCa、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;Bは、コバルトCo、鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、マンガンMn、マグネシウムMg及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;且つOは酸素)。この特許文献1では、ペロブスカイト型複合酸化物によって、微粒子状炭素物質及び/又は炭化水素が低温域から燃焼し始め、更にNOからNOへの酸化が促進されて、これがNOとして一時的に吸収される、としている。
【0005】
この特許文献1では、ペロブスカイト型複合酸化物は、ペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属の塩とクエン酸とを溶解した水溶液を調整する第一工程と、得られた水溶液を乾燥してこれらの金属のクエン酸錯体を形成する第二の工程と、これらのクエン酸錯体を真空中又は不活性ガス中において350℃以上で加熱/仮焼成する第三の工程と、加熱/仮焼成した前駆体を酸化雰囲気中で焼成する第四の工程とによって製造できる、としている。
【0006】
触媒成分を担持する多孔質金属酸化物担体としては、アルミナのみでなく、多孔質シリカを用いることも提案されている。
【0007】
例えば特許文献2では、細孔として径が1〜5nmのメソ細孔のみを有するシリカ多孔質体を担体とし、少なくともメソ細孔内に貴金属が担持されている排ガス浄化触媒を提案している。この特許文献2では、このような排ガス浄化触媒では、メソ細孔内に担持されている貴金属は移動が困難であるので、耐久試験時の粒成長が抑制される、としている。
【0008】
特許文献3では、4nm以下のメソ細孔を有するシリカ多孔体よりなる担体に貴金属が担持された排ガス浄化用触媒であって、このメソ細孔内に、白金のような貴金属とセリアのような酸素吸蔵放出能を有する金属酸化物とが担持されている排ガス浄化用触媒を提案している。この特許文献3では、このような排ガス浄化触媒では、貴金属及び金属酸化物はメソ細孔内から出にくく、移動が規制されていることによって、メソ細孔の径以上の大きさに粒成長するのが抑制され、これにより耐久試験後も貴金属及び金属酸化物は高分散担持状態が維持される、としている。
【0009】
尚、多孔質シリカの製造方法については様々な製造方法が知られている。
【0010】
例えば特許文献4では、吸着材として使用される多孔質シリカに関し、比表面積が大きく、均一な大きさのメソ孔を有する多孔質シリカの新規な製造方法を提案している。この特許文献4の製造方法では、アルコキシシラン類の重縮合物とミセルを形成したアルキルアミン類とからなる有機無機複合体から、アルキルアミン類を除去することによって、多孔質シリカを製造している。
【0011】
【特許文献1】特開平8−229404号公報
【特許文献2】特開2000−24503号公報
【特許文献3】特開2000−24516号公報
【特許文献4】特開2003−181282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1で記載のように、排ガス浄化触媒の用途においてペロブスカイト型複合酸化物を触媒成分として使用することが知られている。このように排ガス浄化触媒の用途で使用されるペロブスカイト型複合酸化物は一般に、ペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属の塩を含有する溶液から、共沈法によってペロブスカイト型複合酸化物の前駆体を析出させ、この前駆体を乾燥及び焼成することによって製造されている。
【0013】
このようなペロブスカイト型複合酸化物は、低温触媒活性に関して、貴金属触媒に匹敵する又は貴金属触媒よりも優れた性能を提供できることが知られている。しかしながら、NOの最高浄化率、すなわち高温におけるNOの浄化率に関しては、必ずしも良好な結果を提供できなかった。
【0014】
また、上記のような共沈法によってペロブスカイト型複合酸化物を得る場合、得られるペロブスカイト型複合酸化物の粒子は、数μmに達する比較的大きい粒子径を有することがある。また更に、ペロブスカイト型複合酸化物が使用の間に粒成長して表面積が小さくなることがある。
【0015】
従って本発明では、最高浄化率及び/又は比較的高温における触媒活性に関しても優れた性能を有し、また排ガス浄化触媒の使用の間のペロブスカイト型複合酸化物の粒成長を抑制することができるペロブスカイト型複合酸化物系排ガス浄化触媒を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の排ガス浄化触媒は、細孔構造を有するシリカからなる多孔質シリカ担体、及びこの多孔質シリカ担体の細孔構造内に担持されているペロブスカイト型複合酸化物の粒子を有する。ここで、本発明の排ガス浄化触媒では、多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが、3〜100nm、特に5〜50nm、より特に5〜30nm、更により特に8〜20nmの範囲にある。またここでは、多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの細孔構造に起因するピークが、例えば1〜5nm又は2〜4nmの範囲にある。
【0017】
本発明の排ガス浄化触媒の1つの態様では、ペロブスカイト型複合酸化物が、下記の式で表されるペロブスカイト型複合酸化物である:
ABO
(Aは、ランタンLa、ストロンチウムSr、セリウムCe、バリウムBa、カルシウムCa、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;Bは、コバルトCo、鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、マンガンMn、マグネシウムMg及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;且つOは酸素)。
【0018】
本発明の排ガス浄化触媒の1つの態様では、ペロブスカイト型金属酸化物が、LaFeOの組成を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
上記のように、従来のペロブスカイト型複合酸化物触媒では、NOの最高浄化率、すなわち高温におけるNOの浄化率に関しては、必ずしも良好な結果を提供できなかった。
【0020】
これは、従来のペロブスカイト型複合酸化物触媒では、NO濃度が低い条件及び/又は高温の条件においては、NOがペロブスカイト型複合酸化物の表面に吸着しにくく、それによってペロブスカイト型複合酸化物へのNOの吸着が律速段階となって、ペロブスカイト型複合酸化物が触媒活性を十分に発揮できなかったことによると考えられる。
【0021】
また、従来の排ガス浄化触媒に関して用いられていた通常のアルミナにペロブスカイト型複合酸化物粒子を担持した場合であっても、このようなアルミナ担体の表面上においてペロブスカイト型複合酸化物が移動してシンタリングすることによって、NO濃度が低い条件及び/又は高温の条件におけるペロブスカイト型複合酸化物のNO吸着力の低下を補えなかったと考えられる。
【0022】
更にまた、従来の排ガス浄化触媒に関して用いられていた通常の多孔質シリカ担体の細孔構造内にペロブスカイト型複合酸化物粒子を担持した場合であっても、このような細孔構造内に担持されたペロブスカイト型複合酸化物粒子と排ガスとの接触が良好に達成されないことによって、NO濃度が低い条件及び/又は高温の条件におけるペロブスカイト型複合酸化物のNO吸着力の低下を補えなかったと考えられる。
【0023】
本発明の排ガス浄化触媒は、細孔構造を有するシリカからなる多孔質シリカ担体、及びこの多孔質シリカ担体の細孔構造内に担持されているペロブスカイト型複合酸化物の粒子を有する。ここで、本発明の排ガス浄化触媒では、多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが、3〜100nmの範囲にある。
【0024】
尚、本発明に関して、細孔分布は、窒素吸着法によって測定される細孔径とその容積の分布を意味する。
【0025】
本発明の排ガス浄化触媒によれば、一般的なペロブスカイト型複合酸化物触媒と違って、比較的高い温度においても優れた排ガス浄化性能を提供することができる。
【0026】
これは、ペロブスカイト型複合酸化物粒子が多孔質シリカ担体の細孔構造内に担持されていることによって、ペロブスカイト型複合酸化物粒子のシンタリングが抑制されることによると考えられる。理論に限定されるわけではないが、このように非常に微細な状態で維持されているペロブスカイト型複合酸化物粒子では、バルクの性質ではなく表面の性質が強く表れ、それによってペロブスカイト型複合酸化物の表面にNOを吸着する傾向が強い特定の部位が形成されると考えられる。
【0027】
またこれは、細孔構造を有する多孔質シリカ担体の細孔分布において、シリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが、3〜100nmの範囲にあること、すなわち多孔質シリカ担体が比較的小さい一次粒子を有していることによって、多孔質シリカ担体の細孔構造内に担持されているペロブスカイト型複合酸化物粒子と排ガスとの接触の機会が多く、それによって高温におけるペロブスカイト型複合酸化物のNO吸着力の低下が補われていることによると考えられる。
【0028】
〔高外部表面積多孔質シリカ担体〕
本発明の排ガス浄化触媒において使用される多孔質シリカ担体は、細孔構造を有するシリカからなる。またこの多孔質シリカ担体では、細孔分布において、シリカの一次粒子間の間隙に起因するピークが、3〜100nmの範囲にあり、また細孔構造に起因するピークが、例えば1〜5nmの範囲にある。
【0029】
尚、本発明に関してシリカの細孔構造とは、シリカを構成するケイ素原子及び酸素原子によって形成される規則的に配列した分子レベルの細孔を意味している。
【0030】
このようなシリカ担体は例えば、水性溶媒中において、アルキルアミンを自己配列させ、この溶液にアルコキシシラン及び随意の塩基を加えて、自己配列しているアルキルアミンをテンプレートとして用いて、その周囲でシリカ担体前駆体を析出させ、これを焼成することによって得ることができる。この方法で用いるアルキルアミン及びアルコキシシランは、意図するシリカ担体の一次粒子径、細孔分布等に従って選択することができる。例えばこの方法では、水性溶媒としてエタノール水溶液を用い、アルキルアミンとしてヘキサデシルアミンを用い、アルコキシシランとしてテトラエトキシシランを用い、随意の塩基としてアンモニアを用いることができる。
【0031】
〔ペロブスカイト型複合酸化物粒子〕
本発明の排ガス浄化触媒で用いられるペロブスカイト型複合酸化物としては、任意のペロブスカイト型複合酸化物を挙げることができる。
【0032】
本発明の排ガス浄化触媒のペロブスカイト型複合酸化物としては、下記の式で表されるペロブスカイト型複合酸化物、特にLaFeOの組成を有するペロブスカイト型金属酸化物を挙げることができる:
ABO
(Aは、ランタンLa、ストロンチウムSr、セリウムCe、バリウムBa、カルシウムCa、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;Bは、コバルトCo、鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、マンガンMn、マグネシウムMg及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;且つOは酸素)。
【0033】
上記のペロブスカイト型複合酸化物においては、金属元素A又はBの一部が他の金属によって部分的に置換されていてもよく、例えば貴金属で置換することができる。
【0034】
ペロブスカイト型金属酸化物の粒子は、10nm以下、特に5nm以下の平均粒子径を有することができる。
【0035】
多孔質シリカ担体に対するペロブスカイト型複合酸化物の担持量は、ペロブスカイト型複合酸化物の粒成長を抑制し、且つ排ガス浄化に関する十分な性能を提供できる範囲で選択することができる。従ってこの担持量は、多孔質シリカ担体の外部表面積に部分的に依存する。この担持量としては、例えばペロブスカイト型複合酸化物(ABO)を構成している金属A又はBに関して、1〜10質量%/多孔質シリカ担体−g、例えば5質量%/多孔質シリカ担体−gとすることができる。
【0036】
多孔質シリカ担体へのペロブスカイト型複合酸化物の担持は、ペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属の塩の溶液を多孔質シリカ担体に含浸させ、得られた多孔質シリカ担体を乾燥及び焼成することによって達成できる。ペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属の塩としては、硝酸塩、塩酸塩のような無機酸塩、酢酸塩のような有機酸塩を挙げることができる。
【0037】
この塩溶液からの溶媒の除去及び乾燥は、任意の方法及び任意の温度で行うことができる。これは例えば、塩溶液を含浸させた多孔質シリカ担体を120℃のオーブンに入れて達成できる。このようにして溶媒を除去及び乾燥した多孔質シリカ担体を焼成して、本発明の触媒担体粒子を得ることができる。この焼成は、金属酸化物合成において一般的に用いられる温度、例えば500〜1100℃の温度で行うことができる。
【0038】
〔本発明の排ガス浄化触媒〕
本発明の排ガス浄化触媒は更に、貴金属、例えば白金、ロジウム、パラジウム、及び/又はNO吸蔵元素、すなわちアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選択される元素、特にリチウム及びバリウムを担持していてもよい。
【0039】
本発明の排ガス浄化触媒への貴金属及びNO吸蔵元素の担持は、任意の方法で行うことができる。例えば本発明の排ガス浄化触媒に白金を担持する場合、白金の塩及び/又は錯塩を含有する溶液、例えばジニトロジアンミン白金水溶液を吸水担持し、乾燥及び焼成して行うことができる。本発明の排ガス浄化触媒への白金の担持量は、多孔質シリカ担体に対して0.01〜5質量%、特に0.1〜2質量%であってよい。
【0040】
本発明の排ガス浄化触媒は、それ自体を成形して用いるだけでなく、モノリス担体、例えばセラミックハニカムにコートして用いることもできる。
【0041】
以下、本発明を実施例に基づき更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
〔実施例〕
多孔質シリカ担体の合成
エタノールと蒸留水とを1:1で混合してエタノール水溶液を得、このエタノール水溶液に対して、ヘキサデシルアミンを0.5mol/L溶解した。得られた水溶液を2時間にわたって撹拌して、ヘキサデシルアミンを自己配列させた。次に、ヘキサデシルアミンを自己配列させた溶液に、テトラエトキシシランとアンモニア水を添加して、溶液のpHを9.5にした。
【0043】
この溶液中において、テトラエトキシシランを30時間にわたって加水分解して、配列したヘキサデシルアミンの周りにシリカを析出させて、ナノサイズの細孔を有する一次粒子からなる二次粒子を形成した。次にこの水溶液に少量の硝酸を加えてpH7にし、1時間にわたって二次粒子を更に凝集及び熟成させて、多孔質シリカ担体前駆体を得た。
【0044】
その後、得られた多孔質シリカ担体前駆体を、エタノール水で洗浄し、ろ過し、乾燥して、800℃の空気中で2時間にわたって焼成して、本発明において用いる多孔質シリカ担体を得た。
【0045】
ハニカム基材への多孔質シリカ担体のコート
上記のようにして得た多孔質シリカ担体100部、スノーテックスOS(日酸化学製、酸性シリカゾル)30部、及び水80部を混合し、得られた混合物を1時間にわたってミリングして、スラリーを得た。得られたスラリーにハニカム基材を浸漬して、コートした。コート量は、50g/基材−Lとした。
【0046】
ペロブスカイト型複合酸化物(LaFeO)の担持
硝酸ランタン0.5mol/L、硝酸鉄0.5mol/L及びクエン酸を1.2mol/Lを溶解した塩溶液を作成した。この塩溶液に、上記のようにして得た多孔質シリカ担体をコートしたハニカム基材を浸漬して、ランタンイオン及び鉄イオンを、多孔質シリカ担体の細孔構造内に吸水担持した。
【0047】
得られたハニカム基材を、120℃で通風乾燥し、500℃で1時間にわたって焼成した後で、800℃で2時間にわたって焼成した。ペロブスカイト型複合酸化物(LaFeO)の担持量は、ハニカム基材に対して、鉄(Fe)としておおよそ5質量%であった。
【0048】
細孔評価
図1にペロブスカイト型複合酸化物(LaFeO)の担持の前後の、基材部分を除いた多孔質シリカ担体のみの細孔分布を示している。この図1で示されているように、実施例の方法で得られた多孔質シリカ担体は、シリカの細孔構造に起因する2.7nm付近の細孔だけでなく、シリカの一次粒子間の間隙に起因する10nm強の細孔を有している。
【0049】
これは、図2に示しているように、細孔構造を有するシリカの一次粒子径が10〜20nmと小さく、これらの一次粒子が凝集して二次粒子を形成しているので、これらの一次粒子間に10nm強の細孔が提供されていることによる。実施例の方法で得られた多孔質シリカ担体では、内部表面積が580m/gであり、外部表面積が280m/gであった。
【0050】
ここで「外部表面積」は、シリカの一次粒子間の間隙に起因する表面積を意味し、また「内部表面積」は、シリカの細孔構造に起因する表面積を意味する。ここでこの外部表面積は、排ガス中の成分が容易に接近することができる担体の表面積に相当する。例えば内部表面積は、具体的にはTEM(透過型電子顕微鏡)、SEM(走査型電子顕微鏡)等を用いてシリカの細孔構造における細孔径及び細孔の壁厚を求めることによって知ることができる。また、外部表面積は、窒素吸着法等によって測定される全表面積の値から、内部表面積の値を引くことによって知ることができる。
【0051】
尚、従来のMCM−41シリカ、FSM16シリカなどでは、一次粒子がマイクロメートル(μm)オーダーであるので、細孔直径が10nm付近の細孔は実質的に存在していない。例えば一般的なFSM16シリカでは、内部表面積が約800m/gであり、外部表面積が1.5m/gである。また例えば一般的なアルミナ触媒担体では、内部表面積が実質的に存在せず、外部表面積が180m/gである。参考のために、MCM−41シリカ粒子のSEM像を図4に示す。
【0052】
図1で示されているように、ペロブスカイト型複合酸化物の担持後は、シリカの細孔構造内にペロブスカイト型複合酸化物が担持されるため、2.7nm付近の細孔は小さくなった。尚、シリカの一次粒子間の間隙に対応する10nm付近の細孔の細孔直径は、若干大きい方にシフトしたが、大幅な変化はなく、ペロブスカイト型複合酸化物の担持がうまく言ったことが理解される。
【0053】
ペロブスカイト型複合酸化物の担持状態の評価
ペロブスカイト型複合酸化物を担持する前の多孔質シリカ担体のTEM(透過型電子顕微鏡)像を図2に、ペロブスカイト型複合酸化物を担持した後の多孔質シリカ担体のTEM像を図3に示す。図3のTEM像では、シリカの細孔構造に対応する部分が図2のTEM像でよりも濃く写っており、従ってペロブスカイト型複合酸化物が細孔構造内に担持されたことが理解される。尚、これら図2及び図3のTEM像において、3〜5nmの黒い粒子は、金コロイドであり、三次元画像を構成するための位置基準マーカーとして混合されている。
【0054】
また、3D−TEM(三次元透過型電子顕微鏡)を用いて、ペロブスカイト型複合酸化物を担持した多孔質シリカ担体を観察した。尚、3D−TEM像は、TEM像を多アングルから撮影して三次元(3D)構造を再構築したものである。この3D−TEM像からは、粒子径が1〜2nm程度の微粒子が、シリカ担体の細孔に担持されていることが理解された。この粒子の付近をEDXD(エネルギー分散性X線回折)分析で分析したところ、ランタン(La)及び鉄(Fe)が検出され、この微粒子がLaFeOペロブスカイト型複合酸化物粒子であることが確認された。
【0055】
〔比較例〕
この比較例では、共沈法によってペロブスカイト型複合酸化物(LaFeO)を合成し、このペロブスカイト型複合酸化物を、ハニカム基材にコートした。
【0056】
ペロブスカイト型複合酸化物(LaFeO)の合成
硝酸ランタン及び硝酸鉄を含有している塩溶液(La:Fe=1:1)に、アンモニアを加えて、共沈法によって沈殿物を得た。得られた沈殿物を、800℃で3時間にわたって焼成して、ペロブスカイト型複合酸化物(LaFeO)を得た。
【0057】
ペロブスカイト型複合酸化物(LaFeO)のコート
このようにして得たペロブスカイト型複合酸化物100部、シリカゾル70部、及び水65部を混合し、得られた混合物を1時間にわたってミリングして、スラリーを得た。得られたスラリーにハニカム基材を浸漬して、コートした。ペロブスカイト型複合酸化物(LaFeO)の担持量は、ハニカム基材に対して、鉄(Fe)としておおよそ25質量%であった。
【0058】
〔参考例〕
この参考例では、以下に示すようなマイクロエマルション法を改良した方法によって、ランタン−鉄系ペロブスカイト型複合酸化物の微粒子を、酸化ランタン−酸化イットリウム−ジルコニア複合酸化物粒子担体の表面に担持して、排ガス浄化触媒を得た。ここで得られる排ガス浄化では、ペロブスカイト型複合酸化物の微粒子が酸化ランタン−酸化イットリウム−ジルコニア複合酸化物担体粒子の表面に密に配置されていることによって、触媒の使用の間の複合酸化物担体粒子同士のシンタリングが抑制される。
【0059】
担体用マイクロエマルション液の調製
15リットルの反応器に、シクロヘキサン5.5リットル、ポリオキシエチレン(n=5)ノニルフェニルエーテル0.21kgを混合して、よく撹拌した。得られた溶液に、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO)0.144モル、硝酸イットリウム(Y(NO)0.0226モル、硝酸ランタン(La(NO)0.0113モルを溶解した水溶液0.12リットルを加えて、室温下でよく撹拌して、逆ミセル(油中水型マイクロエマルション、水滴径30nm)である担体用マイクロエマルション液を調製した。ここで、この担体用マイクロエマルション液では、オイル(有機溶媒)と界面活性剤との比率(O/S)は110、オイルと水との比率(O/W)は8であった。
【0060】
ジルコニウムアルコキシド溶液の調製
ジルコニウム−n−ブトキシド0.145モルをシクロヘキサン0.2リットルに溶解させたジルコニウムアルコキシド溶液を調製した。
【0061】
超微粒子用マイクロエマルション液の調製
シクロヘキサン750mlとポリオキシエチレン(n=5)ノニルフェニルエーテル171gを混合してよく撹拌し、これにペロブスカイト型複合酸化物超微粒子の原料液として、硝酸ランタン(La(NO)0.0692モルと硝酸第二鉄(Fe(NO)0.0692モルとを溶解した水溶液60mlを加えて室温下でよく撹拌して、粒径が3nmの逆ミセル(油中水型マイクロエマルション)である超微粒子用のマイクロエマルション液を調整した。ここで、この超微粒子用のマイクロエマルション液では、オイル(有機溶媒)と界面活性剤との比率(O/S)は18、オイルと水との比率(O/W)は2.2であった。
【0062】
複合酸化物担体前駆体の加水分解反応による合成
上記のようにして得た担体用マイクロエマルション液中にジルコニウムアルコキシド溶液とアンモニア水を撹拌しながら加え、pHを7.5に調整し、加水分解を開始させた。これによれば、有機溶媒中に分散しているミセル内の水相あるいはその境界で加水分解が生じて、ランタンイットリアジルコニア複合酸化物の一次粒子が生じるとともに、その一次粒子が凝集して二次粒子が生成された。
【0063】
加水分解反応の開始から1分後に、超微粒子用マイクロエマルション液を、担体用マイクロエマルション液とジルコニウムアルコキシド溶液との混合液に加え、さらにアンモニア水を加えてpHを9.8に調整した。超微粒子用マイクロエマルション液中の超微粒子の原料液は粒径が3nm程度のミセルとなっており、このミセルが担体二次粒子の合成反応場となっているミセルと衝突して合一化する。これによれば、合一化したミセル内での中和共沈によって、ランタン鉄ペロブスカイト型複合酸化物超微粒子が合成される。
【0064】
このようにして得られるランタン鉄ペロブスカイト型複合酸化物超微粒子は、pH=9.8ではプラスに帯電する。これに対して上記の担体二次粒子は、このpHにおいてマイナスに帯電する。従って、ランタン鉄ペロブスカイト型複合酸化物超微粒子は生成するとほぼ同時に、担体粒子(特に二次粒子)の表面に、両者のゼータ電位の相違による電気的作用によって短時間で吸着される。このようにして得られた溶液に、水9.6リットルを加え、さらに撹拌しながら約1時間にわたって熟成を行った。
【0065】
その後、母液をろ別し、界面活性剤を除去するために、得られた沈殿をエタノールで3回洗浄し、80℃で一晩にわたって乾燥した後で、大気中において400℃で5時間にわたって焼成し、更に大気中において800℃で2時間にわたって焼成して、ランタンイットリアジルコニア複合酸化物を担体とし、その表面にランタン鉄ペロブスカイト型複合酸化物超微粒子を担持している排ガス浄化用触媒前駆体を得た。これを、アルミナをベースとするモノリス担体に、公知の担持方法によって担持させて、排ガス浄化用触媒を作成した。
【0066】
〔排ガス浄化性能評価〕
実施例、比較例及び参考例の排ガス浄化触媒について、下記の表1に示す組成の評価ガスを供給し、この評価ガスの温度を徐々に上げていき、NOの浄化率が50%に達したときの触媒温度(NO50%浄化温度)を調べた。このNO50%浄化温度が比較的低いことは、触媒が比較的優れた低温活性を有することを意味している。
【0067】
【表1】


【0068】
NO50%浄化温度を下記の表2に示す。
【0069】
【表2】


【0070】
三元触媒反応の低温活性を示すNO50%浄化温度について表2で示すように、本発明の実施例のペロブスカイト型複合酸化物触媒では、従来の共沈法で得られた共沈法ペロブスカイト型複合酸化物(比較例)よりも低いNO50%浄化温度を有する。またこの表2で示されているように、本発明による実施例のペロブスカイト型複合酸化物触媒は、比較的簡単な製造方法で製造されているにもかかわらず、改良されたマイクロエマルション法(改良ME法)で製造されたペロブスカイト型複合酸化物触媒(参考例)に近いNO50%浄化温度を有している。
【0071】
NOの浄化率が50%に達した後も排ガス温度を上げていき、触媒温度が400℃、450℃、500℃、550℃及び600℃のときのNO浄化率を調べた。結果を下記の表3に示す。
【0072】
【表3】


【0073】
この表3から明らかなように、従来の共沈法ペロブスカイト型複合酸化物触媒(比較例)、及び改良されたマイクロエマルション法(改良ME法)で製造されたペロブスカイト型複合酸化物触媒(参考例)では、600℃の比較的高い触媒温度においてNO浄化率が低下している。これは、高温の条件においては、NOがペロブスカイト型複合酸化物の表面に吸着しにくく、それによってペロブスカイト型複合酸化物が触媒活性を発揮できないことによると考えられる。
【0074】
これに対して本発明による実施例のペロブスカイト型複合酸化物触媒では、600℃までの温度でNO浄化率の実質的な低下なく、比較例及び参考例のペロブスカイト型複合酸化物触媒とは明らかに異なる触媒特性を示している。
【0075】
実施例及び参考例の排ガス浄化触媒に対して、上記表1の組成の評価ガスを流通させながら1,000℃で2時間にわたって耐久を行った。この耐久の後で、上記の表1に示す組成の評価ガスを供給し、この評価ガスの温度を徐々に上げていき、耐久後の実施例及び参考例の排ガス浄化触媒について、NO50%浄化温度を調べた。耐久後のNO50%浄化温度と耐久前のNO50%浄化温度との差から、耐久によるNO50%浄化温度の変化を求めた。この値が比較的小さいことは、触媒が比較的優れた耐熱性を有することを意味している。結果を下記の表4に示す。
【0076】
【表4】


【0077】
この表4から明らかなように、本発明による実施例の排ガス浄化触媒は、比較的簡単な製造方法で製造されているにもかかわらず、改良されたマイクロエマルション法(改良ME法)で製造されたペロブスカイト型複合酸化物触媒(参考例)よりも優れた耐熱性を有していることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施例においてペロブスカイト型複合酸化物を多孔質シリカ担体に担持する前及び担持した後の、多孔質シリカ担体の細孔容積分布を表す図である。
【図2】実施例において得た多孔質シリカ担体(ペロブスカイト型複合酸化物の担持前)のTEM像である。
【図3】実施例において得た多孔質シリカ担体(ペロブスカイト型複合酸化物の担持後)のTEM像である。
【図4】MCM−41シリカ粒子のSEM像である。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年7月3日(2006.7.3)
【代理人】 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤

【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬

【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次

【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫


【公開番号】 特開2008−12382(P2008−12382A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−183474(P2006−183474)