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【発明の名称】 アニオン吸着剤、水質又は土壌浄化剤及びそれらの製造方法
【発明者】 【氏名】柳田 友隆

【要約】 【課題】生体安全性に優れた金属である鉄を主体とした、極めてアニオン吸着能が高い新規なアニオン吸着剤の提供。

【構成】第一鉄種が存在する条件下で生成された非晶質の水酸化第二鉄を有効成分として含むことを特徴とするアニオン吸着剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一鉄種が存在する条件下で生成された水酸化第二鉄を含有することを特徴とするアニオン吸着剤。
【請求項2】
前記水酸化第二鉄が、第一鉄水溶液に酸化剤を第一鉄の当量未満の量で加えた後、アルカリを加え反応終了時のpHが1.5〜5.5になるよう調整して生成された、請求項1記載のアニオン吸着剤。
【請求項3】
前記水酸化第二鉄が、第一鉄水溶液に酸化剤を酸化還元電位が+400〜770mVになるように加えた後、アルカリを加え反応終了時のpHが1.5〜5.5になるよう調整して生成された、請求項1記載のアニオン吸着剤。
【請求項4】
前記水酸化第二鉄が、第一鉄水溶液に酸化剤を第一鉄の当量未満の量で加えて酸化還元電位を+400〜770mVとした後、アルカリを加え反応終了時のpHが1.5〜5.5になるよう調整して生成された、請求項1記載のアニオン吸着剤。
【請求項5】
前記酸化剤が、次亜塩素酸塩である、請求項2〜4のいずれか一項記載のアニオン吸着剤。
【請求項6】
前記水酸化第二鉄が非晶質である、請求項1〜5のいずれか一項記載のアニオン吸着剤。
【請求項7】
グリセリンを更に含む、請求項1〜6のいずれか一項記載のアニオン吸着剤。
【請求項8】
リン酸イオン、砒酸イオン又は亜砒酸イオンを吸着する、請求項1〜7のいずれか一項記載のアニオン吸着剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項記載のアニオン吸着剤を含有する、水質又は土壌浄化剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、人体や環境上有害な各種アニオン(陰イオン。例えば、リン酸イオン、砒酸イオン、亜砒酸イオン又はフッ素イオン等の無機アニオン或いは有機アニオン)を高効率で吸着可能であるアニオン吸着剤に関する。より具体的には、例えば、水又は土壌中から前記有害アニオンを除去する水質又は土壌浄化剤として有用なアニオン吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒素やリンの負荷量の急速な増大に起因したいわゆる富栄養化の現象が環境保全対策の視点から問題となっている。ここで、富栄養化の一因であるリン酸の対策として、例えば、特許文献1及び2に記載されているように、石炭灰の造粒物からなるリン吸着剤や火山灰と硫酸第一鉄とを混合・焼成したリン吸着剤等、各種のリン吸着剤が提案されている。
【0003】
更に、水中に存在する有毒アニオンである砒酸イオン(AsO3−)及び亜砒酸イオン(AsO)については、平成5年に水質基準値が10μgAs/l以下という厳しい値に改定された。そのため、水中の砒素を高度に除去することのできる技術の確立が求められている。ここで、従来における砒酸イオン及び亜砒酸イオンの除去方法としては、カルシウム塩、鉄塩、アルミニウム塩等の金属塩を砒素含有水に添加してこれらの金属の水酸化物を生成させ、前記砒素酸化物をこれらの金属水酸化物に共沈させて除去する方法等が知られている(特許文献3の「従来の技術」の欄参照)。
【特許文献1】特開2004−113885
【特許文献2】特開2004−298668
【特許文献3】特開平9−327694
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、水質又は土壌浄化のために従来のアニオン除去剤を用いる場合、複数の有害アニオンを少量で有効に除去可能な性能を備えた単一のアニオン除去剤は存在しないので、近年の環境に対する意識の高まりに対応する程の、これら有害アニオンの除去を目指す場合には、除去対象のアニオンに適合した除去剤を複数組み合わせて使用するか、単一のアニオン除去剤を大量に使用する必要がある。したがって、本発明は、少量でも複数の有害アニオンを有効に除去可能であると共に、水質又は土壌浄化剤としても有用なアニオン吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(1)は、第一鉄種が存在する条件下で生成された水酸化第二鉄を含有することを特徴とするアニオン吸着剤である。
【0006】
本発明(2)は、前記水酸化第二鉄が、第一鉄水溶液に酸化剤を第一鉄の当量未満の量で加えた後、アルカリを加え反応終了時のpHが1.5〜5.5(好適には1.5〜4.0、より好適には2.0〜3.5)になるよう調整して生成された、前記発明(1)のアニオン吸着剤である。
【0007】
本発明(3)は、前記水酸化第二鉄が、第一鉄水溶液に酸化剤を酸化還元電位が+400〜770mV(好適には+500〜730mV、より好適には+600〜700mV)になるように加えた後、アルカリを加え反応終了時のpHが1.5〜5.5(好適には1.5〜4.0、より好適には2.0〜3.5)になるよう調整して生成された、前記発明(1)のアニオン吸着剤である。
【0008】
本発明(4)は、前記水酸化第二鉄が、第一鉄水溶液に酸化剤を第一鉄の当量未満の量で加えて酸化還元電位を+400〜770mV(好適には+500〜730mV、より好適には+600〜700mV)とした後、アルカリを加え反応終了時のpHが1.5〜5.5(好適には1.5〜4.0、より好適には2.0〜3.5)になるよう調整して生成された、前記発明(1)のアニオン吸着剤である。
【0009】
本発明(5)は、前記酸化剤が、次亜塩素酸塩である、前記発明(2)〜(4)のいずれか一つのアニオン吸着剤である。
【0010】
本発明(6)は、前記水酸化第二鉄が非晶質である、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つのアニオン吸着剤である。
【0011】
本発明(7)は、グリセリンを更に含む、前記発明(1)〜(6)のいずれか一つのアニオン吸着剤である。
【0012】
本発明(8)は、リン酸イオン、砒酸イオン又は亜砒酸イオンを吸着する、前記発明(1)〜(7)のいずれか一つのアニオン吸着剤である。
【0013】
本発明(9)は、前記発明(1)〜(8)のいずれか一つのアニオン吸着剤を含有する、水質又は土壌浄化剤である。
【0014】
本発明(10)は、第一鉄水溶液に酸化剤を第一鉄の当量未満の量で加えた後、アルカリを加えpH1.5〜5.5(好適には1.5〜4.0、より好適には2.0〜3.5)になるよう調整する工程を含むことを特徴とする、水酸化第二鉄を含有するアニオン吸着剤の製造方法である。
【0015】
本発明(11)は、第一鉄水溶液に酸化剤を酸化還元電位が+400〜770mV(好適には+500〜730mV、より好適には+600〜700mV)になるように加えた後、アルカリを加えpH1.5〜5.5(好適には1.5〜4.0、より好適には2.0〜3.5)になるよう調整する工程を含むことを特徴とする、水酸化第二鉄を含有するアニオン吸着剤の製造方法である。
【0016】
本発明(12)は、第一鉄水溶液に酸化剤を第一鉄の当量未満の量で加えて酸化還元電位を+400〜770mV(好適には+500〜730mV、より好適には+600〜700mV)とした後、アルカリを加えpH1.5〜5.5(好適には1.5〜4.0、より好適には2.0〜3.5)になるよう調整する工程を含むことを特徴とする、水酸化第二鉄を含有するアニオン吸着剤の製造方法である。
【0017】
本発明(13)は、前記酸化剤が、次亜塩素酸塩である、前記発明(10)〜(12)のいずれか一つの製造方法である。
【0018】
本発明(14)は、前記水酸化第二鉄が非晶質である、前記発明(10)〜(13)のいずれか一つの製造方法である。
【0019】
本発明(15)は、グリセリンを添加する工程を含む、前記発明(10)〜(14)のいずれか一つの製造方法である。
【0020】
本発明(16)は、脱水、凍結乾燥又は噴霧乾燥する工程を更に含む、前記発明(10)〜(15)のいずれか一つの製造方法である。
【0021】
本発明(17)は、前記pH調整工程の後、脱水、凍結乾燥又は噴霧乾燥する工程の前、当該工程時又はその後に、グリセリンの添加工程を実施する、前記発明(16)の製造方法である。
【0022】
本発明(18)は、前記アニオン吸着剤がリン酸イオン、砒酸イオン又は亜砒酸イオンを吸着する、前記発明(10)〜(17)のいずれか一つの製造方法である。
【0023】
本発明(19)は、前記アニオン吸着剤が水質又は土壌浄化剤である、前記発明(10)〜(18)のいずれか一つの製造方法である。
【0024】
ここで、本明細書における各用語について説明する。「第一鉄種」とは、第一鉄イオンや第一鉄化合物(例えば水酸化第一鉄)等の、鉄が二価で存在する物質を指す。「アニオン吸着剤」で対象としている「アニオン」は、例えば、リン酸イオン、砒酸イオン、亜砒酸イオン又はフッ素イオンのような無機アニオン或いは有機アニオンを指すが、これらの一又は複数と他の物質(アニオンに限定されない)を対象としている場合も本概念に包含される。「第一鉄水溶液」とは、第一鉄イオンが存在する水溶液であれば特に限定されず、他の物質を含んでいてもよい。「酸化剤」とは、特に限定されず、次亜塩素酸塩、過酸化水素、カルシウムハイドロパーオキサイドを挙げることができ、好適には、次亜塩素酸塩である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の最良形態について説明する。尚、本発明の技術的範囲は、本最良形態に何ら限定されるものではない。
【0026】
本アニオン吸着剤は、第一鉄種(例えば水酸化第一鉄)が存在する条件下で生成された非晶質の水酸化第二鉄を含む。ここで、高アニオン吸着能を示す有効成分は、非晶質の水酸化第二鉄であるが、水酸化第二鉄であれば当該効果を奏する訳ではない。例えば、第二鉄溶液に苛性ソーダを加え生成した水酸化第二鉄や市販の水酸化第二鉄はそれ程高いアニオン吸着能を示さない(実施例参照)。本水酸化第二鉄は、Fe2+−Fe(OH)系でのEh(酸化還元電位)−pH図に基づけば、鉄イオンが安定な化学種として存在する場合には第一鉄に止まっているEh−pH条件下でありながら、第二鉄として存在しているような極めて不安定な条件下で生成したものであるので、生成した沈殿物中の水酸化第二鉄に第一鉄を含むと共に、不安定で非晶質程度が極めて高い状態にある。したがって、−Fe−O−Fe−O−Fe−結合が不安定で切れやすい特性を具えており、本水酸化第二鉄は結合を切りながら、新たに生成するFe-OH基とアニオンとが反応して、著しく高い吸着力を示すと推測される。
【0027】
ここで、水酸化第二鉄の化学構造は定かでないが、実験結果等に基づけば以下の構造ではないかと推定される(但し、本発明の水酸化第二鉄は、当該推定された形態に何ら限定されるものではない)。即ち、本水酸化第二鉄は、第二鉄を必須的に含有すると共に、鉄原子に酸素原子又は水酸基が六配位しており、酸素原子を介して六配位の鉄が連結している形態であると推定される。そして、当該鉄原子の周囲に存在するある種の水分子が、鉄原子と酸素原子との結合に影響を与える結果、当該結合を不安定化しているものと推定される。そして、鉄原子に配位している水酸基又は不安定化した酸素原子とアニオン(例えばリン酸イオン)が交換する結果、鉄原子がアニオン(リン酸イオン)と結合すると考えられる。当該仮定の下、好適な形態は、適度な水酸基の存在によって−Fe−O−Fe−O−Fe−(クラスター)が適度の大きさであるものである。
【0028】
ここで、本アニオン吸着剤の一製造工程においては、以下で説明するように、第一鉄と酸化剤(例えば次亜塩素酸ナトリウム)とを反応させることにより、水酸化第二鉄に変化させている。ここで、当該酸化還元反応式を以下に示す。尚、以下の式では、理解の容易上、水酸化第二鉄を簡略化して「Fe(OH)」と記載した。
【式1】
【0029】


【0030】
このように、第一鉄2モルに対して次亜塩素酸1モルが反応する(即ち、第一鉄2モルに対して次亜塩素酸1モルが当量となる)。そして、以下で説明するように、当該製造工程においては、使用する酸化剤の量を第一鉄の当量未満(例えば、第一鉄2モルの場合には、次亜塩素酸1モル未満)とすることにより、第一鉄が完全には第二鉄に酸化されない状態を構築するようにしている。
【0031】
ここで、「非晶質の」や「非晶質程度が極めて高い」とは、CuのKα線をX線源とする粉末X線回折において2θ値で5°〜80°の範囲に少なくとも1つの非晶質ハロー(halo)図形を有し、明らかな結晶性ピークが存在しないことを意味する。尚、製造時の出発原料等によって非晶質ハロー図形中に僅かながら結晶性ピークが観測される場合があるが、そのような場合、CuのKα線をX線源とする粉末X線回折において2θ値で5°〜80°の範囲に観測される結晶性ピーク強度が、対応する結晶性参照物質の結晶性ピークに対する割合(%X線回折強度/参照物質)で5%以下であればよい。具体的な%X線回折強度/参照物質としてはASTM(American Society for Testing and Materials)D3906に準拠して次式で与えられるものを使用することができる。尚、積分反射強度の算出に用いる結晶性ピーク数は特に限定されることはないが、1〜8本の範囲が好ましい。
【式2】
【0032】


【0033】
このように、有効成分は水酸化第二鉄であるが、前記のように第一鉄種(例えば水酸化第一鉄)が存在する条件下で生成されるので、不可避的に第一鉄種を含有する。第一鉄種(例えば水酸化第一鉄)の含有量は、特に限定されないが、乾燥重量(炉乾、105℃、2h)に対し、通常は5重量%以下であり、好適には0.01〜4重量%であり、より好適には0.1〜2重量%である。尚、製造時にはこのように不可避的に第一鉄種を含有するが、当該成分を洗浄により除去してもよい。
【0034】
更に、本アニオン吸着剤は、有効成分である非晶質の水酸化第二鉄が存在する限り、結晶質の水酸化第二鉄を含有していてもよい。この場合、好適には、非晶質成分が30%以上であり、より好適には50%以上、更に好適には75%以上である。
【0035】
本アニオン吸着剤は、更にグリセリンを含有することが好適である。水酸化第二鉄は、乾燥やaging(長期保存)の方法如何では、−Fe−O−Fe−O−Fe−の鉄に結合しているOH基が脱水し、クラスターが大きくなる等して安定な状態に変化し、吸着力が低下する可能性がある。したがって、例えば、湿状態の水酸化第二鉄にグリセリンを混合することにより、乾燥してもOH基の脱水が起こり難くなるため、吸着力の低下を顕著に抑制できる。ここで、グリセリンの含有量は、好適には乾燥重量(炉乾、105℃、2h)に対し、20重量%以下である。
【0036】
次に、本最良形態に係るアニオン吸着剤の製造方法について説明する。本アニオン吸着剤は、(工程1A)第一鉄水溶液に酸化剤(例えば次亜塩素酸塩水溶液)を第一鉄の当量未満(好適には0.3〜0.95、より好適には0.4〜0.8)の量で加えた後、又は、(工程1B)第一鉄水溶液に酸化剤(例えば次亜塩素酸塩水溶液)を酸化還元電位が+400〜770mV(好適には+500〜730mV、より好適には+600〜700mV)になるように加えた後、(工程2)アルカリ(好適には苛性アルカリ)を加えpH1.5〜5.5(好適には1.5〜4.0、より好適には2.0〜3.5)になるよう調整する、ことにより得られる。ここで、(工程1A)又は(工程1B)と(工程2)の順番が重要であり、逆にすると吸着能の高いアニオン吸着剤を得ることができない。以下、各条件について説明する。
【0037】
まず、第一鉄水溶液において使用可能な第一鉄塩は、水溶性塩である限り特に限定されず、例えば、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硝酸第一鉄を挙げることができるが、沈殿物の濾過が簡単であるために硫酸第一鉄が好適である。更に、第一鉄水溶液における第一鉄イオンの濃度は、0.05〜2Mが好適である。
【0038】
次に、使用可能な酸化剤は、特に限定されないが、好適には次亜塩素酸塩である。ここで、次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムを挙げることができるが、特に次亜塩素酸ナトリウムが好適である。尚、次亜塩素酸塩水溶液における次亜塩素酸塩濃度は、特に限定されないが、市販されている5〜10%のものが使用可能である。
【0039】
ここで、工程1Aを採用する場合においては、使用する酸化剤の量を、第一鉄水溶液における第一鉄の当量未満となる量とする。ここで、当該酸化剤の量は、第一鉄の量に対して、当量比で0.3〜0.95が好適であり、0.4〜0.8がより好適である。
【0040】
また、工程1Bを採用する場合においては、第一鉄水溶液に酸化剤(例えば次亜塩素酸塩水溶液)を、酸化還元電位が+400〜770mV(好適には+500〜730mV、より好適には+600〜700mV)になるように添加する。この際、攪拌しながら酸化剤液(例えば次亜塩素酸塩水溶液)を滴下することが好適である。
【0041】
尚、工程1Aと工程1Bとは、必ずしも相互独立の工程とは限らず、工程1Aを実施すると、結果的に工程1Bを実施することになる場合や、その逆の場合をも包含する。
【0042】
次に、工程1Aで所定量の酸化剤を添加した後、又は、工程1Bで酸化還元電位が前記範囲内に収まったことを確認した後、アルカリを添加するという工程2を行う。ここで、アルカリは、特には限定されないが、好適には苛性アルカリである。苛性アルカリとしては、例えば、苛性ソーダ、苛性カリウムを挙げることができ、苛性ソーダが好適である。加えて、アルカリ濃度(好適には苛性アルカリ濃度)は、例えば、0.5〜5Nである。そして、所定量の酸化剤が添加された溶液(工程1A)又は前記酸化還元電位が前記範囲内に収まった溶液(工程1B)に、アルカリ水溶液(好適には苛性アルカリ水溶液)を添加し、pH1.5〜5.5(好適には1.5〜4.0、より好適には2.0〜3.5)になるよう調整する。この操作を行なうことにより、非晶質の水酸化第二鉄が沈殿し、本アニオン吸着剤を得ることができる。
【0043】
尚、本アニオン吸着剤は、取扱上乾燥形態が好適である。ここで、乾燥方法は、脱水、凍結乾燥又は噴霧乾燥が好適であり、これらの方法によると乾燥時のFe−OH結合からの脱水が少ないのでアニオン吸着力は高く保たれる。
【0044】
更に、乾燥前、乾燥時又は乾燥後にグリセリンを混合するとアニオン吸着力の低下を少なく抑えることができる。ここで、グリセリンの添加量は、乾燥重量(炉乾、105℃、2h)に対し、20%以下(好適には3〜7%)である。尚、グリセリンを混合するタイミングは、特に限定されないが、好適にはpH調製後乾燥前である。
【0045】
次に、本アニオン吸着剤の用途及び使用方法について説明する。本アニオン吸着剤は、アニオンの除去が求められる分野であれば特に限定されず、例えば、水質浄化剤又は土壌浄化剤として有用である。以下、これらの用途を詳述する。
【0046】
まず、水質浄化剤は、川、海、湖沼、養魚水槽、養魚池等、水質浄化が求められる場所に適用できる。本発明に係る水質浄化剤の使用量は、水質浄化の対象、水中のアニオン(例えばリン酸イオン、砒酸イオン、亜砒酸イオン)濃度等によって異なるが、一般に水1mに対し、100〜1000gが適当である。更に、本発明に係る水質浄化剤を使用するに際しては、そのまま散布する方法や、これを充填した筒に浄化対象の水を強制循環させる方法等、状況に合わせて様々な方法を用い得る。
【0047】
次に、土壌浄化剤は、土壌汚染が問題となる土壌(スラッジや浚渫汚泥を含む)に適用できる。本発明に係る土壌浄化剤の使用量は、浄化の対象土壌、土壌中のアニオン(例えばリン酸イオン、砒酸イオン、亜砒酸イオン)濃度等によって異なるが、例えば土壌中に汚染物質が0.1〜10mg/リットル程度含まれる場合には、土壌1mに対して、100〜10000gが適当である。また、本発明に係る土壌浄化剤を土壌と混合する方法として、土壌及び土壌浄化剤を各種ミキサー等で混合する方法、ポンプ注入、ジェット注入、土壌表面に単に散布する方法及びスプリンクラーによる散布等が挙げられる。
【実施例】
【0048】
アニオン吸着剤の製造
0.1M硫酸第一鉄水溶液800mlに6%次亜塩素酸ナトリウム(活性塩素5%)を酸化還元電位が650mVになるように攪拌しながら滴下し(滴下量=29.8g;当量比=0.588)、攪拌しながら3分間放置した。その液に1N苛性ソーダをpHが2.7で安定するまで加え、本実施例に係るアニオン吸着剤を得た。反応終了時のpHは2.7、酸化還元電位は+584mVであった。
【0049】
成分分析
(1)Fe形態別定量分析
上記アニオン吸着剤について、T−Fe、M−Fe、Fe2+及びFe3+に関して定量分析を行なった(ここで、「T」はtotalを意味し、「M」は金属を意味する)。尚、T−Feに関しては、塩化第一スズ還元−二クロム酸カリウム滴定法、M−Feに関しては、塩化第二水銀溶解−二クロム酸カリウム滴定法、Fe2+に関しては、不活性ガス充填酸溶解−二クロム酸カリウム滴定法で測定し、Fe3+に関しては、算出法〔Fe3+=T−Fe−(M−Fe+Fe2+)〕で算出した。表1に結果を示す。尚、No.1はペースト状のアニオン吸着剤であり、No.2は凍結乾燥したアニオン吸着剤である。
【0050】
【表1】


【0051】
(2)X線回折(XRD)による構成相の同定
装置: リガク社製 RINT−2200型
管球: Cu
電圧―電流: 40kV−40mA
走査速度: 4°/min
走査範囲: 5°〜80°(2θ)
上の測定条件でX線回折試験を行なった。X線回折測定チャートを図1〜図4に、解析結果を表2に示す。
【0052】
【表2】


【0053】
解析結果より、試料No.1及びNo.2共にレピドクロサイト(γ−FeOOH)が非常に弱く検出された。また、両試料ともX線回折チャートにおいて得られた回折ピーク以外には全体的にブロード化しており、非晶質度が極めて高いことが判明した。
【0054】
リン吸着能試験
リン吸収能力の測定方法は、本実施例に係るアニオン吸着剤を乾燥重量0.5gとり、それにリン酸アンモニウム溶液(5.9gP/l)20ml加え、時々振り混ぜながら24時間放置した。そして、これをろ過しろ液のリン濃度を測定し算出した。尚、比較のため、1MFeCl水溶液に1NのNaOHをpH7.5〜8.0になるように急速に攪拌して生成した水酸化第二鉄や、水酸化第二鉄が脱水して生成した含水酸化鉄(市販品)についても同様の手法で吸着能を試験した。その結果を表3に示す。
【0055】
【表3】


【0056】
グリセリン等の添加例
上記の方法に従い製造した含水率70%のアニオン吸着剤に、グリセリン、エタノール及びスキムミルクを、それぞれアニオン吸着剤の5重量%加え凍結乾燥した。当該乾燥物のリン吸着能を表4に示す。
【0057】
【表4】


【0058】
亜砒酸及び砒酸吸着試験
亜砒酸としてAs3+濃度が60ppmのNaAsO水溶液を用いた。この水溶液20mlに本実施例に係るアニオン吸着剤を0.20g加え20時間振蕩した。振蕩後の液中の亜砒酸は測定限界以下であった。したがって、本実施例に係るアニオン吸着剤の亜砒酸吸着量は11.9mg/g以上であった。また、砒酸としてAs5+濃度が80ppmのNaHAsO・7HO水溶液を用いた。この水溶液20mlに本発明に係るアニオン吸着剤を0.20g加え20時間振蕩した。振蕩後の液中の砒酸は測定限界以下であった。したがって、本発明に係るアニオン吸着剤の砒酸吸着量は15.9mg/g以上であった。
【0059】
土壌改善効果確認試験
ヒ素溶出量が1.47mg/lである浚渫汚泥1kgに、硫酸第一鉄溶液と次亜塩素酸ナトリウムとの混合物を苛性ソーダを用いpH2.7に調整し生成させた懸濁物を、水酸化第二鉄の乾重換算で5g散布しよく混合した。浚渫汚泥と水酸化第二鉄含有懸濁物との混合物からのヒ素溶出量は検出限界以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、試料No.1のX線回折測定チャートである。
【図2】図2は、試料No.1のX線回折測定チャートである。
【図3】図3は、試料No.2のX線回折測定チャートである。
【図4】図4は、試料No.2のX線回折測定チャートである。
【出願人】 【識別番号】505217561
【氏名又は名称】柳田 友隆
【出願日】 平成18年11月7日(2006.11.7)
【代理人】 【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温


【公開番号】 特開2008−6427(P2008−6427A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−301559(P2006−301559)