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【発明の名称】 光触媒フィルム及びその製造方法
【発明者】 【氏名】青島 俊栄

【氏名】川村 浩一

【要約】 【課題】光触媒活性層と支持体との密着性が高く、且つ、光触媒作用に起因する劣化に対する耐久性及びその持続性に優れた光触媒フィルム、及び該光触媒フィルムの製造方法を提供すること。

【構成】支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなる有機−無機複合層と、光触媒活性層と、をこの順に備えたことを特徴とする光触媒フィルム、及びその製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなる有機−無機複合層と、光触媒活性層と、をこの順に備えたことを特徴とする光触媒フィルム。
【請求項2】
前記グラフトポリマー鎖が、その鎖中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基を有することを特徴とする請求項1に記載の光触媒フィルム。
【請求項3】
前記グラフトポリマー鎖が、その鎖中にアミド基を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光触媒フィルム。
【請求項4】
支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する工程と、
該グラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い有機−無機複合層を形成する工程と、
該有機−無機複合層上に光触媒活性層を形成する工程と、
を有することを特徴とする光触媒フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒フィルム及びその製造方法に関し、より詳細には、光触媒活性層と支持体との密着性が高く、光触媒作用に起因する劣化に対する耐久性及びその持続性に優れた光触媒フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒活性材料(以下、単に「光触媒」と称する場合がある。)からなる光触媒活性層をプラスチック等の有機基材上に設けた光触媒フィルムが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
光触媒は、そのバンドギャップ以上のエネルギーの光を照射すると、励起されて伝導帯に電子が生じ、かつ価電子帯に正孔が生じる。そして、生成した電子は表面酸素を還元してスーパーオキサイドアニオン(O2-)を生成させると共に、正孔は表面水酸基を酸化して水酸ラジカル(OH)を生成し、これらの反応性活性酸素種が強い酸化分解機能を発揮し、光触媒の表面に付着している有機物質を高効率で分解することが知られている。また、光触媒のもう1つの機能として、光励起されると、その光触媒表面は、水との接触角が10度以下となる超親水化を発現することも知られている。したがって、これらの機能を有する光触媒フィルムは、各種用途への適用が期待されている。
しかしながら、光触媒活性層を有機基材上に直接形成すると、光触媒作用により該有機基材が短時間で劣化してしまうという問題がある。
かかる問題に鑑み、例えば、プラスチックフィルム等の有機基材上に光触媒活性層を有する光触媒フィルムにおいては、光触媒作用による有機基材の劣化を防止するため、或いは、光触媒活性層と有機基材との密着性を向上させるために、通常、有機基材と光触媒活性層との間に中間層が設けている。このような中間層としては、一般に、シリコーン樹脂やアクリル変性シリコーン樹脂などからなる厚さ数μm程度の有機層が適用されている。
【0003】
しかしながら、上記のような中間層を設けた光触媒フィルムについても1〜3年程度で劣化してしまい、透明が要求される場合にはフィルムの干渉により透明性が低下したり、また、防汚性等の所望される機能が低下するなどの問題が生じる。
この劣化の原因としては、中間層が有機成分を含有することから、この有機成分が光触媒作用により分解し、その結果、中間層にクラックが発生したり、光触媒活性層と中間層、或いは、中間層と有機基材との界面で浮きや部分的剥離などが生じ、干渉が発生するためと思われる。更に、光触媒フィルムが、数μm程度の厚さをの中間層を有すると、フィルムそのもののたわみや屈曲によっても、部分的な界面剥離や欠落が生じやすいという問題もある。
【0004】
上記のような中間層を有する場合に生じる問題を改善する光触媒フィルムの一つとして、厚さ方向に組成が連続的に変化する有機‐無機複合傾斜膜を有する光触媒フィルムが提案されている(特許文献3参照)。この有機‐無機複合傾斜膜は、有機高分子と金属系化合物との化学結合物を含有する有機‐無機複合膜であり、該金属系化合物の含有率が膜の厚み方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有している。このような有機‐無機複合傾斜膜を有する光触媒フィルムは、支持体と光触媒活性層との密着性は向上するものの、光触媒作用に起因する劣化に対する耐久性やその持続性については不充分であり、さらなる向上が望まれているが、満足のできる光触媒フィルムは未だ提供されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平11−91030号公報
【特許文献2】特開2001−277418号公報
【特許文献3】特開2003−41034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、光触媒活性層と支持体との密着性が高く、且つ、光触媒作用に起因する劣化に対する耐久性及びその持続性に優れた光触媒フィルム、及び該光触媒フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、支持体上に直接結合したグラフトポリマー鎖と、金属アルコキシドの加水分解及び縮重合反応により形成された架橋構造と、を含む有機−無機複合層について鋭意研究を進めた結果、該有機−無機複合層を光触媒フィルムに適用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明の光触媒フィルムは、支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなる有機−無機複合層と、光触媒活性層と、をこの順に備えたことを特徴とする。
【0008】
このようなグラフトポリマー鎖は、支持体表面に発生した開始種を起点とした重合反応により生成したものであることが好ましい。
また、グラフトポリマー鎖は、その鎖中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基、及び/又は、アミド基を有することが好ましい。
更に、グラフトポリマー鎖が、極性基、好ましくはアミド基を有する構造単位と、シランカップリング基などのSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基、を有する構造単位との共重合体であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の光触媒フィルムの製造方法は、支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する工程と、該グラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い有機−無機複合層を形成する工程と、該有機−無機複合層上に光触媒活性層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
本発明における有機−無機複合層は、支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー鎖(有機成分)と、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中において、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造(無機成分)と、を含んで構成される層である。このような有機−無機複合層は、支持体との密着性が高く、薄層であっても耐摩耗性が増大し、高い耐久性を有する。特に、グラフトポリマー鎖が極性基を有する場合には、その極性基の機能により架橋構造との間に極性相互作用が形成され、強度及び耐久性に優れた有機−無機複合層とすることができる。更に、グラフトポリマー鎖が、その鎖中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基を有する場合には、該グラフトポリマー鎖と架橋構造との間に共有結合が形成され、有機−無機複合層の強度及び耐久性が向上する。また、有機‐無機複合層表面の無機成分と光触媒活性層とは縮合反応により共有結合を形成することから、光触媒活性層と有機−無機複合層との密着性にも優れる。さらに、通常、光触媒フィルムにおいては、支持体等の材料として有機材料が好適に用いられることから、光触媒作用に起因する劣化が問題となるが、本発明においては、支持体と光触媒活性層との間に無機成分を含む有機−無機複合層を有することにより、有機材料からなる支持体を用いた場合であっても、光触媒作用に起因する劣化に対して優れた抑制効果を発揮しうる。
その結果、本発明の光触媒フィルムは、光触媒活性層と支持体との密着性、及び、光触媒作用に起因する支持体の劣化抑制の双方において優れるともに、その効果を長期間に亘って持続させることができるものと考えられる。
さらに、本発明における有機−無機複合層は、従来の光触媒フィルムの中間膜の厚み(数μm程度)よりも薄く形成することができるために、可撓性を有する支持体を用いた場合には、屈曲性についても優れた光触媒フィルムとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光触媒活性層と支持体との密着性が高く、且つ、光触媒作用に起因する劣化に対する耐久性及びその持続性光触媒フィルム、及び該光触媒フィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光触媒フィルムは、支持体と、該支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層中にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を含んでなる有機−無機複合層と、光触媒活性層と、をこの順に備えたことを特徴とする。
本発明における有機−無機複合層においては、反応性、化合物の入手の容易性から、Siのアルコキシドを用いて架橋構造が形成されていることが好ましい。
前記したようなアルコキシドの加水分解及び縮重合により形成された架橋構造を、本発明では、以下、適宜、「ゾルゲル架橋構造」と称する。
【0013】
このような本発明の光触媒フィルムは、下記の本発明の光触媒フィルムの製造方法により製造される。
即ち、本発明の光触媒フィルムの製造方法は、支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する工程〔以下、適宜、「グラフトポリマー層形成工程」と称する。〕と、該グラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い有機−無機複合層を形成する工程〔以下、適宜、「有機−無機複合層形成工程」と称する。〕と、該有機−無機複合層上に光触媒活性層を形成する工程〔以下、適宜、「光触媒活性層形成工程」と称する。〕と、を有する方法が適用されることが好ましい。
以下、「グラフトポリマー層形成工程」、「有機−無機複合層形成工程」、及び「光触媒活性層形成工程」について順に説明する。
【0014】
<グラフトポリマー層形成工程>
本工程では、支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させて、該グラフトポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を形成する。
ここで、本発明において「支持体表面」とは、本発明におけるグラフトポリマーが、その上に直接化学的に結合しうる表面を指し、支持体そのものの表面の他、支持体上に後述する重合開始層等の中間層を設けてその上にグラフトポリマー層を形成する場合であれば、支持体表面とは、支持体上に設けられた中間層の表面を指す。
【0015】
支持体表面に直接結合したグラフトポリマー鎖を生成させる方法としては、(1)支持体を基点として、重合可能な2重結合を有する化合物を表面グラフト重合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法や、(2)支持体と反応する官能基を有するポリマーと支持体表面とを化学結合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法がある。
この2つの方法について以下に説明する。
【0016】
(1)支持体を基点として、重合可能な2重結合を有する化合物を表面グラフト重合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法
この方法は、一般的には表面グラフト重合と呼ばれる方法である。表面グラフト重合法とは、プラズマ照射、光照射、加熱などの方法で支持体表面上に活性種を与え、その活性種を基点として、支持体と接するように配置された重合可能な2重結合を有する化合物を重合させる方法である。この方法によれば、生成するグラフトポリマー鎖の末端が支持体表面に直接結合され、固定される。
【0017】
本発明を実施するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135には、表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線等の放射線照射グラフト重合法が記載されている。光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては、上記記載の文献、及びY.Ikada et al,Macromolecules vol.19、page 1804(1986)などに記載の方法を適用することができる。
具体的には、PETなどの高分子表面を、プラズマ、若しくは、電子線にて処理して表面に活性種であるラジカルを発生させ、その後、その活性種を有する支持体表面と重合可能な2重結合を有する化合物(例えば、モノマー)と、を反応させることによりグラフトポリマー鎖を生成させることができる。
光グラフト重合は、上記記載の文献のほかに、特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)に記載されるように、フィルム支持体の表面に光重合性組成物を塗布して、ラジカル重合化合物を接触させて光を照射することによっても実施することができる。
【0018】
(2)の方法によってグラフトポリマー鎖を生成する際に有用な化合物は、重合可能な2重結合を有していることが必要である。また、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との極性相互作用の形成性を考慮すると、重合可能な2重結合を有し、且つ、極性基を有すること化合物であることが好ましい。更に、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との間に共有結合を形成することを考慮すると、重合可能な2重結合を有し、且つ、特定元素アルコキシド基を有すること化合物であることが好ましい。
この方法に適用される化合物としては、分子内に2重結合を有し、必要に応じて極性基及び/又は特定元素アルコキシド基を有していれば、ポリマーでも、オリゴマーでも、モノマーでも、これらいずれの化合物をも用いることができる。
本発明において有用な化合物の一つは、極性基を有するモノマーである。
【0019】
本発明で有用な極性基を有するモノマーとは、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマーや、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離し得る酸性基を有するモノマーが挙げられるが、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基、などの非イオン性の基を有する極性基を有するモノマーを用いることもできる。
【0020】
本発明において、特に有用な極性基を有するモノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン酸塩、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそれらの塩、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレート、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド、などを使用することができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなども有用である。
【0021】
本発明で有用な極性基を有するマクロマーは、”新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている合成法により得ることができる。また、山下雄他著”マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。
具体的には、アクリル酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルアセトアミドなど、上記の具体的に記載した極性基を有するモノマーを使用して、文献記載の方法に従い極性基を有するマクロマーを合成することができる。
【0022】
本発明で使用される極性基を有するマクロマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系マクロマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート等の水酸基含有モノマーから誘導されるマクロマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等のアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロマーである。また、ポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロマーとして有用に使用することができる。
これらの中でも、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との極性相互作用が強く形成される点から、極性基としてアミド基を有するマクロマーを用いることが好ましい。
これらのマクロマーのうち有用な分子量は、400〜10万の範囲、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万の範囲である。
【0023】
また、本発明におけるグラフトポリマー鎖は、先に述べたように、その鎖中に、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基(以下、適宜、特定元素アルコキシド基と称する)を有することが好ましい。この特定元素アルコキシド基は、後述する架橋剤(金属アルコキシド)との加水分解及び縮重合反応を経て共有結合を形成しうる置換基である。このようにグラフトポリマー鎖が特定元素アルコキシド基を有することで、後述の有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造とグラフトポリマー鎖との間に共有結合を形成することができる。
(1)の表面グラフト重合法を用いる場合には、特定元素アルコキシド基を有するモノマーやマクロマーを用いることが好ましい。この特定元素アルコキシド基として代表的なシランカップリング基を例に挙げて具体的に説明する。本発明に好適なシランカップリング基として、下記一般式(I)に示すような官能基を例示することができる。
【0024】
【化1】


【0025】
一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数8以下の炭化水素基を表し、mは0〜2の整数を表す。
及びRが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
及びRは、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0026】
一般式(I)に示すような官能基を有するモノマーとしては、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)トリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)トリメトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、(メタクリロキシプロピル)トリイソプロピルシラン、メタクリロキシプロピル(トリスメトキシエトキシ)シラン、等が挙げられる。
【0027】
本発明において、(1)の方法を用いる場合には、極性基を有するモノマーやマクロマーと、シランカップリング基などの特定元素アルコキシド基を有するモノマーやマクロマーと、を用い、表面グラフト重合法にて共重合させて、グラフトポリマー鎖を生成することが好ましい。中でも、極性基としてアミド基を有するモノマーやマクロマーを用いることがより好ましい。
【0028】
(2)支持体と反応する官能基を有するポリマーと支持体表面とを化学結合させて、グラフトポリマー鎖を生成する方法
この方法においては、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーを使用し、この官能基と支持体表面の官能基とを化学反応させることでグラフトポリマー鎖を生成させることができる。支持体と反応する官能基としては、支持体表面の官能基と反応し得るものであれば特に限定はないが、例えば、アルコキシシランのようなシランカップリング基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等を挙げることができる。
主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーとして特に有用な化合物は、トリアルコキシシリル基をポリマー末端に有するポリマー、アミノ基をポリマー末端に有するポリマー、カルボキシル基をポリマー末端に有するポリマー、エポキシ基をポリマー末端に有するポリマー、イソシアネート基をポリマー末端に有するポリマーである。
また、この時に使用されるポリマーは、更に極性基を有することが好ましく、極性基を有するポリマーとしては、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミドなどを挙げることができる。
これら以外にも、前述の(1)の方法で使用される極性基を有するモノマーの重合体、若しくは、極性基を有するモノマーを含む共重合体を使用することもできる。
なお、後述する有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造との極性相互作用が強く形成される点から、極性基としてアミド基を有するポリマーを用いることが好ましい。
【0029】
一方、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーは、更にSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド基(特定元素アルコキシド基)を有することが好ましい。このポリマーを用いることで、生成されるグラフトポリマー鎖中に特定元素アルコキシド基を導入することができる。このようにグラフトポリマー鎖が特定元素アルコキシド基を有することで、後述の有機−無機複合層形成工程において形成されるゾルゲル架橋構造とグラフトポリマー鎖との間に共有結合を形成することができる。
本発明においては、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマーが、極性基としてアミド基と特定元素アルコキシド基との両方を有することが特に好ましい。
【0030】
本発明において、ゾルゲル架橋構造との極性相互作用の形成性や、共有結合の形成性の点から、上記のような方法で生成したグラフトポリマー鎖中は、アミド基及び/又は特定元素アルコキシド基を有することが好ましい。
本発明におけるグラフトポリマー鎖中のアミド基の好ましい導入量は、10mol%〜90mol%の範囲であり、特定元素アルコキシド基の導入量としては10mol%〜90mol%の範囲であることが好ましい。
【0031】
本発明におけるグラフトポリマー鎖は、その鎖中に、上述のような極性基や特定元素アルコキシド基を有することが好ましいが、これらの基以外にも、架橋性基や重合性基などが導入され、それらの基を用いることで、グラフトポリマー鎖間で架橋構造を形成していてもよい。
【0032】
〔支持体〕
本発明における支持体としては、機械的強度や寸法安定性を有するものであればいずれも使用しうるが、光触媒フィルムが透過性を必要とする場合には、透明性を有するフィルムが好ましく使用される。
【0033】
本発明の光触媒フィルムは、前記有機−無機複合層を備えたことにより、支持体として有機材料からなるフィルムを用いた場合であっても、光触媒活性層が発揮する光触媒作用により該有機材料からなるフィルムの劣化を効果的に抑制しうる。
【0034】
支持体として使用されるフィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ナイロン66フィルム、ナイロン6フィルム、メタキシリデンジアミン共重合ポリアミドフィルム等のポリアミドフィルム;ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドイミドフィルム;ポリビニルアルコールフィルム;エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム;ポリフェニレンフィルム;ポリスルフォンフィルム;ポリフェニレンスルフィッドフィルム;等が挙げられる。これらの中でも、コストパフォーマンス、透明性等の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムや、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムが好ましい。これらのフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいし、単独で使用しても、異なる性質のフィルムを積層して使用してもよい。
【0035】
本発明において支持体として用いられるフィルムは、厚み50μmのフィルムに対してカーボンアーク式サンシャインウエザーメータによる900時間の促進耐候試験を行った際において、JIS C231(2005年度版)による引張り試験の強度低下率が50%以下であるものが好ましい。
【0036】
支持体として用いられるフィルムには、本発明の効果を損なわない限り、種々の添加剤や安定剤を含有させたり、塗布したりしてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤、耐候剤などが挙げられ、適宜選択して用いることができる。光触媒作用に起因する支持体の劣化を抑制する観点からは、添加剤として、耐候剤を用いることが好適である。
【0037】
耐候剤としては、紫外線吸収剤及び光安定剤が挙げられる。
紫外線吸収剤は、高エネルギーをもつ紫外線を吸収し、低エネルギーに転換してラジカルの発生を抑え、プラスチックフィルム等からなる支持体の劣化を防止する機能を有するものである。
光安定剤は、紫外線によって生じたラジカルと結合して連鎖反応を阻止してプラスチックフィルム等からなる支持体の劣化を防止する機能を有するものである。
紫外線散乱剤とは、紫外線を散乱させることによって、紫外線遮断効果をもたらす材料のことである。
【0038】
紫外線吸収剤としては、一般に、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、その他に大別することができる。
サリシレート系紫外線吸収剤の例としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレートなどが挙げられ、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例としては、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0039】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2−(2−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−アミル−5’−イソブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンドリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3−テトラメチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0040】
置換アクリロニトリル系紫外線吸収剤の例としては、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
その他の紫外線吸収剤としては、例えば、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)蓚酸ジアミドなどが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系のものが好ましく、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミド]、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(1,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,1’−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジン)、(ミックスト2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(ミックスト1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル]−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト[1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル]−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ポリ[6−N−モルホリル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミド]、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2−ジブロモエタンとの縮合物、[N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]プロピオンアミドなどを挙げることができる。
これらの光安定剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記紫外線吸収剤と併用することもできる。
【0042】
なお、耐候剤を含有させた支持体としては、市販品を用いることもでき、例えば、帝人デュポンフィルム(株)製の「テトロン HB」、トチセン(株)社製の「T−UV」、等が挙げられる。
【0043】
支持体には、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理、粗面化処理などの表面処理を施してもよい。
【0044】
さらに、支持体として使用されるフィルムには、その有機−無機複合層を有する面とは反対側の面(支持体裏面)に、紫外線遮蔽層を有していてもよい。
紫外線遮蔽層は、適当なバインダーと、それに含まれる紫外線遮蔽材料とからなる層であって、単層構造であってもよいし、二層以上の積層構造を有していてもよい。
紫外線遮蔽材料としては、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの紫外線遮蔽材料を含む層を設けることにより、支持体裏面からの紫外線が効果的に遮断され、支持体が紫外線による劣化することを抑制することができる。
紫外線吸収剤としては、耐候剤として前記した紫外線吸収剤の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。紫外線吸収剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、必要に応じ、前記の光安定剤と組み合わせて用いてもよい。
【0045】
また、紫外線散乱剤とは、紫外線を散乱させることによって、紫外線遮断効果をもたらす材料のことであり、主に金属酸化物粉末などの無機系材料が用いられる。
紫外線散乱剤の例としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどを微粒子化した粉体、あるいは二酸化チタン微粒子を酸化鉄で複合化処理してなるハイブリッド無機粉末、酸化セリウム微粒子の表面を非結晶性シリカでコーティングしてなるハイブリッド無機粉体などが挙げられる。なお、紫外線散乱効果は、粒子径に大きく影響を受けるので、紫外線散乱剤の平均粒子径は5μm以下が好ましく、特に10nm〜2μmの範囲が好ましい。なお、紫外線散乱剤が光触媒活性を有するものである場合には、粒子表面を水ガラスなどで薄くコーティングして光触媒活性をなくしたものを用いることが好ましい。
【0046】
紫外線遮蔽層は、前記の紫外線吸収剤および紫外線散乱剤の中から選ばれる少なくとも1種を含む単層構造のものであってもよく、紫外線吸収剤を含む層と紫外線散乱剤を含む層とを二層以上積層した積層構造のものであってもよい。
【0047】
また、紫外線遮蔽層における紫外線遮蔽材料の含有量としては特に制限はなく、紫外線遮蔽材料の種類や支持体の種類などに応じて適宜選定されるが、通常は0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%の範囲である。なお、紫外線遮蔽材料が、紫外線散乱剤である場合には、その含有量は0.1〜10質量%の範囲が好ましく、特に1〜5質量%の範囲が好適である。一方、紫外線遮蔽材料が紫外線吸収剤である場合には、その含有量は0.01〜10質量%の範囲が好ましく、特に0.05〜5質量%の範囲が好ましい。
【0048】
紫外線遮蔽層の形成に用いられるバインダーとしては、該紫外線遮蔽層上に有機−無機複合傾斜膜が設けられることから、有機系バインダーが好ましい。有機系バインダーとしては特に制限はなく、従来公知のもの、例えばアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ブチラール系樹脂など、さらには紫外線硬化型樹脂の硬化物などを挙げることができる。
【0049】
紫外線遮蔽層は、前記バインダーと紫外線遮蔽材料を含む紫外線遮蔽層用塗布液を調製し、従来公知の方法、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、支持体に塗布し、加熱又は紫外線を照射して、硬化させることにより、形成することができる。この紫外線遮蔽層の厚さは、通常0.1〜20μm、好ましくは0.5〜10μmの範囲である。
【0050】
支持体の厚さは、光触媒フィルムの使用態様を考慮して、適宜、設定することができるため、特に制限を受けるものではないが、一般的な実用性の観点からは、3μm〜1mmの範囲であることが好ましく、可撓性や加工性の観点からは、10μm〜300μmの範囲であることがより好ましい。
【0051】
このような支持体は、それ自体がエネルギー付与により活性種を発生しうるものであれば、そのまま使用してもよいが、グラフトポリマー鎖を形成する開始種の発生をより効率よく行う目的で、支持体表面に重合開始能を有する表面層を有していてもよい。
重合開始能を有する表面層としては、低分子や高分子の重合開始剤を含有する層であることが好ましい。中でも、安定性、耐久性の観点から、重合開始剤を架橋反応により固定化してなる重合開始層であることが好ましく、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層であることがより好ましい。
この側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層については、特開2004−161995号公報の段落番号〔0011〕〜〔0169〕に記載に詳細に記載されており、この重合開始層を本発明に適用することができる。
【0052】
<有機−無機複合層形成工程>
本工程では、前述のグラフトポリマー層形成工程で得られたグラフトポリマー層中で、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行い有機−無機複合層を形成する。
つまり、本発明における有機−無機複合層は、グラフトポリマー鎖からなる有機成分と、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行うことにより形成された架橋構造(ゾルゲル架橋構造)からなる無機成分と、が混在する層である。
【0053】
まず、本工程では、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解及び縮重合による架橋反応を行うことにより形成された架橋構造を形成しうる化合物(以下、単に、「架橋剤」と称する場合がある。)を用いて、本発明におけるゾルゲル架橋構造を形成することが好ましい。
本発明における架橋剤としては、例えば、下記一般式(II)で表される化合物が用いられる。
下記一般式(II)で表される化合物は、グラフトポリマー鎖が特定元素アルコキシド基を有する場合、その特定元素アルコキシド基と加水分解及び縮重合することで、グラフトポリマー鎖とゾルゲル架橋構造との間に共有結合を形成することができる。これにより、強固な有機−無機複合層を形成することができる。
【0054】
【化2】


【0055】
一般式(II)中、Rは、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rはアルキル基又はアリール基を表し、XはSi、Al、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。
及びRがアルキル基を表す場合、その炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。
なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0056】
以下に、一般式(II)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
XがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0057】
また、XがAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
XがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
XがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
【0058】
このような架橋剤を用いてグラフトポリマー層中にゾルゲル架橋構造を形成するには、この架橋剤をエタノールなどの溶媒に溶解後、必要に応じて、触媒等を加えて塗布液組成物を調製し、これをグラフトポリマー層上に塗布し、加熱、乾燥する方法を用いることができる。この方法により、架橋剤が加水分解及び重縮合することにより、ゾルゲル架橋構造が形成される。
ここで、加熱温度と加熱時間は、塗布液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性などの点から、加熱温度は200℃以下であることが好ましく、加熱時間(架橋時間)は1時間以内が好ましい。
【0059】
塗布液組成物中の架橋剤の含有量は、形成するゾルゲル架橋構造の量に応じて、決定すればよいが、表面硬度及び密着性の観点から、一般的には、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%の範囲であることが好ましい。
【0060】
また、グラフトポリマー鎖がその鎖中に特定元素アルコキシド基を有する場合、塗布液組成物中の架橋剤の含有量は、特定元素アルコキシド基に対して、架橋剤中の架橋性基が5mol%以上、更に10mol%以上となる量に調整されることが好ましい。
この際、架橋剤の含有量の上限は、特定元素アルコキシド基と充分架橋できる範囲内であれば特に制限はないが、大過剰に添加した場合、架橋に関与しない架橋剤により、形成された有機−無機複合層がべたつくなどの問題を生じる可能性がある。
【0061】
前記塗布液組成物を調製する際に用いる溶媒としては、架橋剤及びその他の成分を、均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0062】
また、前記塗布液組成物には、架橋剤の加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を併用することが好ましく、実用上、好ましい反応効率を得ようとする場合、触媒は必須である。
この触媒としては、酸、或いは塩基性化合物をそのまま用いるか、或いは水又はアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する)を用いることができる。触媒を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよいが、濃度が高い場合は加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、塗布液組成物中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0063】
酸性触媒或いは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。
具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0064】
また、この塗布液組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、種々の添加剤を目的に応じて使用することができる。例えば、塗布液の均一性を向上させるため界面活性剤などを添加することができる。
【0065】
なお、本発明においては、以下の方法でグラフトポリマー層、及び有機−無機複合層を形成してもよい。
即ち、例えば、前記したような極性基と特定元素アルコキシド基とに加え、更に、主鎖末端若しくは側鎖に支持体と反応する官能基を有するポリマー、架橋剤、及び触媒を含有する塗布液組成物を調製し、それをプラズマ若しくは電子線等にて処理して表面に活性種であるラジカルを発生させた支持体上に塗布し、加熱、乾燥させる方法が挙げられる。
この方法では、前記ポリマーが有する支持体と反応する官能基と、支持体とが反応することで、支持体に直接結合したグラフトポリマーが生成し、グラフトポリマー層が形成される。また、塗布液組成物を加熱、乾燥させる際に、架橋剤の加水分解及び縮重合反応が生じ、グラフトポリマー層中に架橋構造を形成することができる。
つまり、このような方法によれば、塗布液組成物を調製し、それを塗布、加熱、乾燥させるという一連の工程により、グラフトポリマー層と有機‐無機複合層とを一度に形成することができる。
【0066】
なお、この塗布液組成物を調製するにあたっては、別途親水性ポリマーを含んでいてもよい。親水性ポリマーは、先に挙げたグラフトポリマー鎖を形成するのに有用な極性基を有するモノマーを重合することにより得ることができる。親水性ポリマーの含有量は固形分換算で、10質量%以上、50質量%未満とすることが好ましい。含有量が50質量%以上になると膜強度が低下する傾向があり、また、10質量%未満であると、皮膜特性が低下し、膜にクラックが入るなどの可能性が高くなり、いずれも好ましくない。
【0067】
以上述べたように、本発明における有機−無機複合層の形成は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年〕、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明における有機−無機複合層の形成に適用することができる。
【0068】
この有機−無機複合層の膜厚は、光触媒フィルムの用途等により選択できるが、一般的には0.1μm〜10μmの範囲が好ましく、0.5μm〜10μmの範囲が更に好ましい。この膜厚の範囲で、光触媒機能が充分に得られ、且つ、カールの発生や、可撓性や耐屈曲性の低下も生じにくいので、好ましい。
【0069】
<光触媒活性層形成工程>
本工程では、前記有機−無機複合層形成工程において形成された有機−無機複合層上に、光触媒活性層を形成する。
【0070】
光触媒活性層は光触媒活性材料を含有して構成される層である。
光触媒活性層に含有しうる光触媒活性材料としては特に制限はなく、従来公知の光触媒活性材料を用いることができる。光触媒活性材料として具体的には、例えば、二酸化チタン、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウム(BaTi)、チタン酸ナトリウム(NaTi13)、二酸化ジルコニウム、α−Fe、酸化タングステン、KNb17、RbNb17、KRbNb17、硫化カドミウム、硫化亜鉛などを挙げることができる。これらの中でも、二酸化チタン、特にアナターゼ型二酸化チタンは実用的な光触媒活性材料として有用である。この二酸化チタンは、太陽光などの日常光に含まれる紫外線領域の特定波長の光を吸収することによって優れた光触媒活性を示す。
【0071】
光触媒活性材料は、光触媒活性層中に、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光触媒活性層における光触媒活性材料の含有量としては、光触媒活性層における光触媒活性材料の含有量としては、光触媒活性層に含有される全固形分に対して、1〜100質量%が好ましく、20〜100質量%がより好ましい。
【0072】
光触媒活性材料層には、光触媒活性を促進させる目的で、光触媒活性材料と共に、所望により従来公知の光触媒促進剤を含有させることができる。
光触媒促進剤としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族金属が好ましく挙げられる。これらの光触媒促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光触媒活性材料層における光触媒促進剤の添加量は、光触媒活性の点から、通常、光触媒活性材料と光触媒促進剤との合計質量に基づき、1〜20質量%の範囲で選ばれる。
【0073】
本工程における光触媒活性層の形成方法は、特に制限されず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などのPVD法(物理気相蒸着法)、金属溶射法等の乾式法、光触媒活性材料等の成分を含む光触媒活性層用塗布液を用いる湿式法などを適用することができる。
【0074】
乾式法を適用する場合には、装置や操作が簡単である点から、金属溶射法をが好適である。金属溶射法では、光触媒活性材料をガス燃焼炎を使用して溶融し、微粒子状にして、有機−無機複合層上に吹き付け、光触媒活性材料層を形成する。
金属溶射法を適用して光活性触媒層を形成するに際して、光触媒活性材料と共に光触媒促進剤を用いる場合には、光触媒活性材料と光触媒促進剤との混合物を溶融して、複合傾斜膜上に吹き付けてもよいし、あるいは、まず光触媒活性材料の溶融物を有機−無機複合層上に吹き付け、さらにその上に光触媒促進剤の溶融物を吹き付けてもよい。
【0075】
湿式法を適用する場合には、適当な溶媒中に、光触媒活性材料及び必要に応じて用いられる光触媒促進剤や無機系バインダーなどの微粒子を含む分散液からなる光触媒活性層用塗布液を調製し、この塗布液を有機−無機複合層上に、塗布し、自然乾燥又は加熱乾燥することにより光触媒活性層を形成することができる。
【0076】
光触媒活性層用塗布液における光触媒活性材料の含有量としては、該塗布液に含有される全固形分に対して、1〜98質量%が好ましく、20〜98質量%がより好ましい。
【0077】
光触媒活性層用塗布液の塗布方法としては、公知の方法を適用することができ、例えば、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0078】
また、光触媒促進剤を用いる場合には、例えば、有機−無機複合層上に光触媒活性材料及び所望により用いられる無機系バインダーなどの微粒子を含む光触媒活性層用塗布液を塗布したのち、溶存酸素が除去された光触媒促進剤の金属イオンを含む水溶液に、有機−無機複合層上に光触媒活性材料の塗膜が形成された支持体を浸漬し、光を照射して、該金属イオンを塗膜面に沈積させる光デポジション法により、光触媒活性材料を含む塗膜上に光触媒促進剤層を設けることによって、光触媒活性層を形成させることもできる。
【0079】
光触媒活性層用塗布液の調製において必要により用いられる無機系バインダーとしては、バインダーとしての機能を発揮し得るものであればよく、特に制限されず、従来公知のもの、例えばケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タングステン、スズ、タンタルなどの金属の酸化物や水酸化物、あるいは上記金属の中から選ばれた2種以上の金属の複合酸化物や複合水酸化物などを挙げることができる。この無機系バインダーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該塗布液には、光触媒活性層形成用の塗布液に使用しうる従来公知の他の添加成分、例えばシリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂、シランカップリング剤などを含有させることができる。
【0080】
本工程における光触媒活性層の形成方法としては、加工性の観点から、湿式法を用いることが好ましい。
【0081】
光触媒活性層の厚みは、充分な光触媒機能を発揮し、且つ、クラックの発生や屈曲性の低下を抑制する観点から、10nm〜5μmの範囲が好ましく、30nm〜3μmの範囲がより好ましく、40nm〜1μmの範囲が特に好ましい。
【0082】
本発明の光触媒フィルムは、支持体上に、有機−無機複合層と、光触媒活性層と、をこの順に有するものであるが、必要に応じて、これら以外の他の層を有してもよい。
例えば、本発明の光触媒フィルムは、光触媒活性材料層を有する面とは反対側の面に、必要により粘着剤層を設けることができる。これにより、本発明の光触媒フィルムを、被着体に容易に貼付することが可能となる。粘着剤層を構成する粘着剤としては特に制限はなく、従来公知の様々な粘着剤の中から、状況に応じて適宜選択して用いることができるが、耐候性などの点から、特にアクリル系、ウレタン系及びシリコーン系粘着剤が好適である。この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。この粘着剤層には、必要に応じ、前述の紫外線吸収剤や光安定剤などの耐候剤を含有させることができる。
また、粘着剤層の上には、所望により、剥離シートを設けることができる。剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。このように剥離シートを設けた場合には、使用する際に該剥離シートを剥がし、粘着剤層面が被着体に接するようにして貼付すればよい。
【0083】
本発明の光触媒フィルムは、防汚、抗菌、脱臭機能などを有しており、種々の用途に適用することができる。例えば、自動車や各種輸送機器のボディーや窓ガラス、建築物やその窓ガラス、道路の標識、ロードサイド看板、高速道路などの遮音板、カーブミラー、冷凍・冷蔵ショーケースや温室などの内側などに備えることにより、これらの表面あるいは内部空間に存在する微量有害物質の分解などに効果を長期間に亘って発揮することができる。また、抗菌機能を利用して、食品包装用のラップフィルムとして、あるいは飲料水保存プラスチック容器の内面貼付用などとして用いることができる。
【実施例】
【0084】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0085】
[実施例1]
<支持体Aの作製>
耐候剤が練りこまれたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(テトロン HB、厚さ:3.50μm、帝人デュポンフィルム(株)製)を用い、グロー処理装置として平版マグネトロンスパッタリング装置(芝浦エレテック製CFS−10−EP70)を使用し、下記の条件で酸素グロー処理を行ってPET支持体を得た。
−酸素グロー処理条件−
初期真空 :1.2×10−3Pa
酸素圧力 :0.9Pa
RFグロー :1.5kW
処理時間 :60sec
【0086】
<グラフトポリマー層の形成1>
次に、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、エタノール混合溶液(N,N−ジメチルアクリルアミド:メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン=1:1(モル比)、濃度:50質量%)を窒素バブリングした。この混合溶液に、上記PET支持体を70℃で7時間浸漬した。浸漬後のPET支持体をエタノールで充分洗浄して、その構造内に特定元素アルコキシド基であるシランカップリング基及びアミド基を有するグラフトポリマー鎖がPET支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー層を形成した。このグラフトポリマー層を有するPET支持体を支持体Aを得た。
【0087】
<有機−無機複合層の形成1>
得られた支持体Aに、エタノール、水、テトラエトキシシラン、及びリン酸を以下の量で含む塗布液組成物1を室温で24時間撹拌したものを塗布し、100℃、10分間加熱乾燥して有機−無機複合層を形成することにより、有機−無機ハイブリッドフィルムAを得た。
−塗布液組成物1−
・テトラエトキシシラン〔架橋成分〕 0.9g
・エタノール 3.7g
・水 8.7g
・リン酸水溶液(0.85%水溶液) 1.3g
【0088】
<光触媒活性層の形成>
得られた有機−無機ハイブリッドフィルムA上に、光触媒液(ST−K211、石原産業(株)社製)を塗布し、120℃で10分加熱することにより光触媒活性層を形成し光触媒フィルムAを得た。得られた光触媒活性層の厚さは0.5μmであった。
【0089】
[実施例2]
実施例1の<有機−無機複合層の形成1>において、有機−無機複合層の形成に使用した塗布液組成物1に含まれるテトラエトキシシラン0.9gを、テトラメトキシチタネート1.0gに換えた以外は、実施例1と同様の方法で光触媒フィルムBを得た。
【0090】
[実施例3]
実施例1の<有機−無機複合層の形成1>において、有機−無機複合層の形成に使用した塗布液組成物1に含まれるテトラエトキシシラン0.9gを、テトラメトキシジルコネート1.6gに換えた以外は、実施例1と同様の方法で光触媒フィルムCを得た。
【0091】
[実施例4]
実施例1の<有機−無機複合層の形成1>において、有機−無機複合層の形成に使用した塗布液組成物1に含まれるテトラエトキシシラン0.9gを、トリメトキシアルミネート0.7gに換えた以外は、実施例1と同様の方法で光触媒フィルムDを得た。
【0092】
[実施例5]
実施例1において、<グラフトポリマー層の形成1>を下記<グラフトポリマー層の形成2>に変更して支持体Bを作製し、更に、<有機−無機複合層の形成1>において用いた支持体Aを支持体Bに変更して有機−無機ハイブリッドフィルムBを作製した以外は、実施例1と同様の方法で光触媒フィルムEを得た。
【0093】
<グラフトポリマー層の形成2>
アクリルアミド水溶液(濃度:50質量%)を窒素バブリングした。この水溶液に実施例1で用いたPET支持体を70℃で7時間浸漬した。浸漬後のPET支持体を蒸留水で充分洗浄して、その構造内にアミド基を有するグラフトポリマー鎖がPET支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー層を形成した。このグラフトポリマー層を有する支持体を支持体Bとした。
【0094】
[実施例6]
<グラフトポリマー層の形成3>
メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン・エタノール溶液(濃度:50質量%)を窒素バブリングした。この溶液に、実施例1で用いたPET支持体を70℃で7時間浸漬した。浸漬後のPET支持体を蒸留水で充分洗浄して、その構造内に特定元素アルコキシド基であるシランカップリング基を有するグラフトポリマー鎖がPET支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー層を形成した。このグラフトポリマー層を有する支持体を支持体Cとした。
【0095】
<有機−無機複合層の形成2>
得られた支持体Cに、2−プロパノール、水、テトラエトキシシラン、及びリン酸を以下の量で含む塗布液組成物2を室温で5時間撹拌したものを塗布し、100℃、10分間加熱乾燥して有機−無機複合層を形成することにより、有機−無機ハイブリッドフィルムCを得た。
−塗布組成物2−
・2−プロパノール 8g
・テトラエトキシシラン[架橋成分] 1.0g
・水 1.0g
・リン酸水溶液(0.85%水溶液) 1.0g
【0096】
<光触媒活性層の形成>
得られた有機−無機ハイブリッドフィルムCに、実施例1の<光触媒活性層の形成>と同様の方法で光触媒活性層を形成し、光触媒フィルムFを得た。
【0097】
[比較例1]
実施例1において、<グラフトポリマー層の形成1>を下記<グラフトポリマー層の形成4>に変更して支持体Dを作製し、更に、<有機−無機複合層の形成1>を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で光触媒フィルムGを得た。
【0098】
<グラフトポリマー層の形成4>
スチレン・メチルエチルケトン溶液(濃度:50質量%)を窒素バブリングした。この溶液に実施例1にて用いた基材Aを70℃で7時間浸漬した。浸漬後の基材をメチルエチルケトンにて充分洗浄して、スチレンが基材表面にグラフトされた支持体Dを得た。
【0099】
[比較例2]
実施例1において用いた支持体Aをポリエチレンテレフタレートに換えた以外は、実施例1と同様の方法で光触媒フィルムHを得た。
【0100】
〔光触媒フィルムの性能評価〕
実施例1〜6、比較例1、2の光触媒フィルムA〜Gについて、以下のようにして性能評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0101】
1.密着性の評価
JIS K5400(2005年度版)に準拠し、光触媒フィルムA〜Gの光触媒活性層を設けた側に、ロータリーカッターにて1mm角の碁盤目100マスを付け、セロテープ(ニチバン(株)製、登録商標)を圧着させたのち、30000mm/minの速度で90度の剥離試験を3回実施した。評価は、剥離試験後に残存する升目の数を測定することにより行った。結果を表1に示す。
【0102】
2.耐候性
光触媒フィルムA〜Gの各々について、カーボンアーク式サンシャインウエザーメータ(WEL−SUN−HCT、スガ試験機(株))による900時間の促進耐候試験を行った後、水接触角を測定するとともに、目視観察により干渉の発生の有無を調べた。結果を表1に示す。
【0103】
3.屈曲性
4cm幅に切断た光触媒フィルムA〜Gを、径2mmのステンレス鋼製ロッドに光触媒活性層側を外側にして360°巻きつけ、2R曲げ試験を行った。屈曲部を(株)キーエンス社製の表面形状測定顕微鏡「VF−7500」を用いて2500倍で観察し、線状クラック、剥離などの発生の有無を調べた。結果を表1に示す。
【0104】
【表1】


【0105】
表1の結果より、有機−無機複合層を有する実施例の光触媒フィルムA〜Fは、支持体と光触媒活性層の密着性が良好であると共に、耐候性にも優れることから、光触媒作用に起因する劣化に対して高い耐久性を有していることがわかる。さらに、実施例の光触媒フィルムA〜Fは、屈曲性についても優れていることが分かる。
一方、有機−無機複合層を形成せず、支持体上に形成されたグラフトポリマー層に直接光触媒活性層を形成した比較例1の光触媒フィルムGは、支持体と光触媒活性層の密着性は有するものの、耐候性が低く、屈曲性に劣るものであることが分かる。また、支持体上に直接光触媒活性層を形成した比較例2の光触媒フィルムHは、支持体と光触媒活性層の密着性が低く、屈曲性に劣るものであることが分かる。
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志


【公開番号】 特開2008−6419(P2008−6419A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182288(P2006−182288)