トップ :: B 処理操作 運輸 :: B01 物理的または化学的方法または装置一般

【発明の名称】 耐水性酸化チタン・ガラス複合材、その製造方法及び該複合材を含む水浄化処理装置
【発明者】 【氏名】伊熊 泰郎

【氏名】丹羽 紘一

【氏名】久高 佑美

【要約】 【課題】本発明は、簡便且つ安価な方法で製造可能であり、水浄化処理装置に適用された場合に必要十分な耐水性を担保しうる耐水性酸化チタン・ガラス複合材、その製造方法及び該複合材を含む水浄化処理装置を提供することを目的とする。

【構成】ガラス材料からなる基材に対し、Siアルコキシド溶液に酸化チタン微粉末を分散してなるTi/Siアルコキシド分散溶液をスプレーコーティングにより所定のガス圧をもって吹付けることによって、酸化チタン微粉末が基材表面に特異な島状構造をもって膜を形成する。この膜を所定温度条件下で焼成することによって、シリコンをガラス基材側に分散させることによって、高い光触媒活性を維持しつつ、光触媒活性層とガラス基材との間に高度な密着性を実現する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材と、該基材の表面に形成された光触媒活性膜とを含む耐水性酸化チタン・ガラス複合材であって、
前記光触媒活性膜は、TiO微粒子とSiOとを含み、前記ガラス基材の表面上に島状構造をもって形成される耐水性酸化チタン・ガラス複合材。
【請求項2】
請求項1に記載の耐水性酸化チタン・ガラス複合材と、
前記複合材を内包した状態で水を貯留可能な紫外線透過性の水貯留部と、
前記水貯留部に水を注入および回収可能に設けられた水流路と、
前記複合材に紫外線を照射する紫外線照射部とを含む水浄化処理装置。
【請求項3】
前記水貯留部は円筒状の外管として構成され、前記複合材は円筒状の内管として構成され、前記内管は前記外管に挿設される、請求項2に記載の水浄化処理装置。
【請求項4】
Siアルコキシド溶液に酸化チタン微粒子を分散させてTi/Siアルコキシド分散溶液を調製する工程と、
前記Ti/Siアルコキシド分散溶液をガラス基材にスプレーコーティングする工程と、
前記コーティングされたガラス基材を焼成する工程とを含む耐水性酸化チタン・ガラス複合材の製造方法であって、
前記焼成工程の焼成温度が300〜530℃であり、
前記スプレーコーティングのガス圧が4〜8kgf/cmである
製造方法
【請求項5】
前記焼成温度が470〜530℃である、請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒活性複合材に関し、より詳細には、高度な耐水性を有する酸化チタン・ガラス複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光触媒としての酸化チタンの環境浄化への応用が様々な分野で検討されており、特に揮発性有機化合物に汚染された地下水などの水源を浄化する水浄化処理技術の検討が進められていた。ここで酸化チタンを水浄化処理装置に適用するにあたり、酸化チタンを含む光触媒活性層をセラミック系、金属系、あるいはガラス系などの基材表面に形成することが必要となる。酸化チタンを含む光触媒活性層の形成方法については、光触媒活性や機械的強度などの観点から種々検討がなされているが、その代表的なものの一つにゾルゲル法を用いた方法がある。
【0003】
一般に、ゾルゲル法を用いた酸化チタン光触媒活性層の形成方法は、チタンアルコキシドまたはチタニアの微粒子を含んで調製されたゾルゲル液をスピンコーティング、ディップコーティングなどの方法によって基材表面にコーティングしたのち、適宜、乾燥、焼成することによって膜形成を行うものであり、その工程が比較的簡便で、かつ安価であるという利点を有している。しかしながら、水浄化処理装置においては、通常、基材上に形成された光触媒活性層は、循環する汚染水に長時間晒されることになるため、基材と光触媒活性層との高い密着性が要求されるところ、上述したゾルゲル法を用いた方法によって形成された膜は、長時間水の中に浸漬するとはがれや膨潤といった不都合が生じ、その耐水性において問題があった。
【0004】
酸化チタンを含む光触媒活性層と基材との密着性の観点から、A general process for in situ formation of functional surface layers
on ceramics,Toshihiro Ishikawa.et.al,NATURE VOL416,Number6876,p64〜67,7 MARCH
2002(非特許文献1)は、酸化チタン微粒子を含有したセラミックスのグリーン・ボディを一旦100℃程度に温めることによって酸化チタン微粒子をセラミックスのプリカーサーの表面に析出させた後、1200℃以上の高温で焼成してなる機能性セラミックス材料を開示する。非特許文献1には、上述した機能性セラミックス材料の焼成過程において、酸化チタンを含む光触媒活性層と基材としてのバルクセラミック層とが一体的に形成されるため両層間の高度な密着性が実現される旨が記載されている。
【0005】
しかしながら、非特許文献1の機能性セラミックス材料は、焼成温度が高温であることに加えセラミックス・プリカーサーの作製工程が複雑であるうえ、光触媒活性層と基材の一体型材料として形成されるものであって、非特許文献1は、既存の汎用材料に充分な密着性をもって新たな光触媒活性層を別途付加するための技術を何ら開示するものでなかった。
【非特許文献1】A general process for in situ formation of functional surface layerson ceramics,Toshihiro Ishikawa.et.al,NATURE VOL416,Number6876,p64〜67,7 MARCH2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、簡便且つ安価な方法で製造可能であり、水浄化処理装置に適用された場合に必要十分な耐水性を担保しうる光触媒活性複合材、その製造方法及び該複合材を含む水浄化処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、酸化チタンを含む光触媒活性複合材料において、簡便且つ安価な方法で製造可能であり、水浄化処理装置に適用された場合に必要十分な耐水性を担保しうる光触媒活性複合材料につき鋭意検討した結果、ガラス材料からなる基材に対し、酸化チタン微粉末をSiアルコキシド溶液に分散してなるTi/Siアルコキシド分散溶液をスプレーコーティングにより所定のガス圧をもって吹付けることによって、酸化チタン微粉末が基材表面に特異な島状構造をもって吸着し、これを所定温度条件下で焼成することによって、光触媒活性層とガラス基材との間にシリコンの拡散による高度な密着性が実現され、併せて酸化チタンの好適な光触媒活性も同時に実現されることを見出し、本発明に至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、ガラス基材と、該基材の表面に形成された光触媒活性膜とを含む耐水性酸化チタン・ガラス複合材であって、前記光触媒活性膜は、TiO微粒子とSiOとを含み、前記ガラス基材の表面上に島状構造をもって形成される耐水性酸化チタン・ガラス複合材が提供される。
【0009】
また、本発明の別の構成によっては、上記耐水性酸化チタン・ガラス複合材と、前記複合材を内包した状態で水を貯留可能な紫外線透過性の水貯留部と、前記水貯留部に水を注入および回収可能に設けられた水流路と、前記複合材に紫外線を照射する紫外線照射部とを含む水浄化処理装置が提供される。前記水貯留部は円筒状の外管として構成され、前記複合材は円筒状の内管として構成され、前記内管は前記外管に挿設することができる。
【0010】
また、本発明の別の構成によっては、Siアルコキシド溶液に酸化チタン微粒子を分散させてTi/Siアルコキシド分散溶液を調製する工程と、前記Ti/Siアルコキシド分散溶液をガラス基材にスプレーコーティングする工程と、前記コーティングされたガラス基材を焼成する工程とを含む耐水性酸化チタン・ガラス複合材の製造方法であって、前記焼成工程の焼成温度が300〜530℃であり、前記スプレーコーティングのガス圧が4〜8kgf/cmである製造方法が提供される。本発明においては、前記焼成温度を470〜530℃とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
上述したように、本発明によれば、簡便且つ安価な方法で製造可能であり、水浄化処理装置に適用された場合に必要十分な耐水性を担保しうる酸化チタン・ガラス複合材、その製造方法及び該複合材を含む水浄化処理装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。まず、本発明の酸化チタン・ガラス複合材10の物理的構成について以下説明する。
【0013】
図1は、本発明の酸化チタン・ガラス複合材10を概念的に示した図であり、図1(a)は、その上面図を示し、図1(b)は、その断面図を示す。図1に示されるように本発明の酸化チタン・ガラス複合材10は、ガラス基材12および光触媒活性膜14を含んで構成されており、光触媒活性膜14は、ガラス基材12上において島状構造をもって形成されている。
【0014】
本発明における光触媒活性膜14は、酸化チタン(TiO)微粒子16と二酸化ケイ素(SiO)18を含んで構成されている。図1(b)においては、説明の便宜のため、概念的に、TiO微粒子16を●で示し、SiO18を○で示す。図1(b)に示されるように、本発明における光触媒活性膜14は、一般的な酸化チタン膜とは異なり、TiO微粒子16およびSiO18がガラス基材12の表面12a上に塊となって盛り上がった形で吸着し、島状構造として形成される。光触媒活性膜14においては、TiO微粒子16は、SiO18のマトリックス構造の中に分散している。一方、SiO18のマトリックス構造は、その底部においてガラス基材12の表面12aと強く吸着しているため、結果的にTiO微粒子16は、SiO18のマトリックス構造を介してガラス基材12に強い密着性をもって支持されることになる。
【0015】
本発明の酸化チタン・ガラス複合材10においては、SiO18が光触媒活性膜14の厚み方向においてガラス基材12の表面12a側に向かうほど多く存在するように形成することがより好ましい。すなわち、SiO18が光触媒活性膜14の厚み方向においてガラス基材12の表面12a側に向かうほどその濃度が大きくなるように濃度勾配をもって存在している場合には、SiO18のマトリックス構造の底部と表面12aとの間の密着性がより向上すると考えられ、酸化チタン・ガラス複合材10全体としての充分な耐水性が担保される。さらに併せて、光触媒活性膜14の外表面において、TiO微粒子16がよりむき出しになった状態で支持されることによって好適な光触媒活性が実現される。
【0016】
本発明における光触媒活性膜14の膜厚は、1μm〜10μmとすることができる。本発明においては、光触媒活性膜14をマイクロメータオーダーの膜厚で形成した場合であっても、上述した構造を備えることによって、光触媒活性膜14がガラス基材12と高い密着性をもって吸着することができ、長時間水に晒されても光触媒活性膜14が膨潤したり、その一部がガラス基材12から剥離したりすることが好適に防止される。また、本発明の酸化チタン・ガラス複合材10においては、光触媒活性膜14が島状構造をもって形成されるため、光触媒活性膜14の上表面14uのみならず、その側壁面14sも光触媒活性面として機能することになり、本発明の酸化チタン・ガラス複合材10全体としての光触媒活性が向上する。このことは、光触媒活性膜14の膜厚が大きい場合に特に顕著となる。
【0017】
本発明におけるガラス基材12は、二酸化ケイ素(SiO)を主成分とするガラス材料からなるものであれば特に限定するものでなく、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、カリガラス、クリスタルガラス、石英ガラス、ガラスセラミックスおよびグラスファイバーなどのガラス材料を適宜選択して用いて形成することができる。なお、ガラス基材12の形状は、平面板状に限定されるものではなく、円筒状を始めとしていかなる形状としてもよい。また、本発明におけるTiO微粒子16は、その平均粒径を5〜100nmとすることができ、また、その光触媒活性の観点からアナターゼ型結晶を多く含むことが好ましい。
【0018】
次に、本発明の酸化チタン・ガラス複合材10の製造方法について、以下説明する。まず、最初にTi/Siアルコキシド分散溶液を調製する工程について説明する。純水と有機溶媒を混合したものに、触媒として塩酸を加え、そこにSiアルコキシドを混合してSiアルコキシド溶液を調製する。本発明においては、純水の量を有機溶媒1に対して1〜3まで変えることができる。Siアルコキシドとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシランなどを適宜選択して用いることができる。また、有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類などを適宜選択して用いることができ、あるいはこれらの混合溶媒とすることもできる。
【0019】
上述したSiアルコキシド溶液に酸化チタン微粉末を混合し撹拌したのち、超音波撹拌器等を用いて充分に拡散してTi/Siアルコキシド分散溶液を調製する。本発明においては、Siアルコキシド溶液56gに対して酸化チタン微粉末を5〜20g分散させることができる。また、本発明においては、酸化チタン微粉末として、その平均粒径が5〜100nmのものを用いることができ、10〜30nmのものを用いることが好ましい。さらに、酸化チタン微粉末は、光触媒活性の観点からアナターゼ型結晶を多く含むものを用いることが好ましく、その含有率が70%以上であることが望ましい。
【0020】
次に、光触媒活性膜の形成工程について説明する。上述した手順で調製したTi/Siアルコキシド分散溶液を圧縮された空気と混合して霧状にして所望のガラス基材に直接吹き付ける。上記吹付け工程は、市販のスプレーガン等によって簡単に行うことできる。本発明においては、上述したスプレーコーティングを所定以上のガス圧で行うことが光触媒活性膜を島状構造をもって形成するために好ましい。一般的に、スプレーコーティングにより均質な膜を形成することを目的とする場合、膜材料と溶媒とが分離しない状態で被成膜基材に到達するようにスプレーコーティングのガス圧が調整される。一方、本発明においては、酸化チタン微粉末をガラス基材の面方向において不均質に吸着させるために、酸化チタン微粉末がガラス基材に到達する前に酸化チタン微粉末を取り囲む溶媒がある程度蒸散していることが好ましい。すなわち、本発明においては、所定以上のガス圧でスプレーコーティングを行うことによって酸化チタン微粉末をガラス基材の面方向において不均質性をもって吸着させることで、光触媒活性膜を島状構造をもって形成することができる。本発明においては、上記スプレーコーティングのガス圧を4〜8kgf/cmとすることが好ましい。
【0021】
最後に、上述した手順で成膜されたガラス基材を室温にて充分に自然乾燥したのち焼成して本発明の酸化チタン・ガラス複合材10を得る。ここで、焼成温度が低すぎる場合には、光触媒活性自体は高いものの光触媒活性膜とガラス基材との密着性が不十分となるため好ましくない。一方で、焼成温度が高すぎる場合には、SiOのガラス基材の表面水平方向への拡散が活発となり、SiOが光触媒活性膜の各島状構造間に形成された溝を埋めてしまうことによって島状構造が消失してしまい、光触媒の比表面積が減少し酸化チタン・ガラス複合材10全体としての活性が低減するため好ましくない。本発明においては、所定の焼成温度で焼成することによって、上述した島状構造を保持しつつSiOをガラス基材側に拡散させてガラス基材と光触媒活性膜との密着性を向上させることができる。すなわち、本発明においては、好適な光触媒活性を維持しつつ、シリコンの拡散を利用して充分な膜密着性を実現するために上記焼成温度を300〜530℃とすることが望ましい。
【0022】
以上説明したように、本発明の酸化チタン・ガラス複合材10は、好適な光触媒活性と耐水性を併せて備えるため、地下水や河川などの水源に長期間にわたり設置される水浄化処理装置にこれを用いることができる。本発明の酸化チタン・ガラス複合材10を含む水浄化処理装置について以下説明する。
【0023】
図2は、本発明の水浄化処理装置20の概略図を示す。本発明の水浄化処理装置20は、円筒状の内管として構成された酸化チタン・ガラス複合材10と、酸化チタン・ガラス複合材10より大きな径を有する円筒状の外管として構成された水貯留部22と、酸化チタン・ガラス複合材10に紫外線を照射する紫外線照射部23とを含んで構成され、酸化チタン・ガラス複合材10は、水貯留部22に同心円状に挿設されている。水貯留部22の内壁と酸化チタン・ガラス複合材10の外壁、すなわち光触媒活性膜との間にはドーナツ状の空間が形成されており、この空間が被浄化水の流路として機能する。
【0024】
水貯留部22には、被浄化水を注入するための注入流路24と浄化された水を排出するための排出流路26が設けられている。水貯留部22は、石英ガラスなどの紫外線透過性の材料によって形成されており、紫外線照射部23から照射された紫外線は、水貯留部22を透過して酸化チタン・ガラス複合材10を照射する。また、注入流路24と排出流路26とをポンプなどの圧送システムを介して連結し、循環型の水浄化処理装置とすることもできる。なお、本発明の水浄化処理装置20は、水貯留部22は、酸化チタン・ガラス複合材10を水中に内包した状態で水を貯留可能に構成されていればよく、図2に示した実施の形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明の酸化チタン・ガラス複合材10は、上述したように優れた耐水性を備えており光触媒活性膜の剥離等の問題を考慮する必要がなく、また、その製造方法もいたって簡便である。すなわち、本発明の酸化チタン・ガラス複合材10を用いることによって、メンテナンスフリーの水浄化システムを簡便に構築することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の酸化チタン・ガラス複合材について、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
【0027】
(Ti/Si光触媒活性膜の形成)
(1)Ti/Siアルコキシド分散溶液の調製
純水(27質量%)、エタノール(43質量%)、塩酸(0.3質量%)、テトラエトキシラン(29質量%)を混合しSiアルコキシド溶液を調製した。このSiアルコキシド溶液にTiO微粉末(Degussa社、P-25、平均粒径25nm、アナターゼ型結晶含有率70%以上)を上記溶液に対して15質量%の割合で混合し、マグネチック・スターラーで撹拌した後、さらに超音波撹拌器で15分間撹拌しTiO微粉末を充分に分散させTi/Siアルコキシド分散溶液を得た。
【0028】
(2)コーティング・焼成
上述した手順で作製したTi/Siアルコキシド分散溶液をスライドガラス(松浪硝子工業(株)、S-1111)にスプレーガンによってスプレーコーティングした。この際のガス圧は、4kgf/cmとした。コーティングされたサンプルを室温にて乾燥させたのち、電気炉にセットして2時間焼成した。焼成は、450℃、500℃、550℃、および600℃の条件下でそれぞれ行った。
【0029】
(Ti/Si光触媒活性膜の構造解析)
本発明におけるTi/Si光触媒活性膜について、SEMおよびEDX装置を用いて構造解析を行った。図3は、本発明のTi/Si光触媒活性膜の断面のSEM写真を示す。図3(a)は、焼成前の膜を示し、図3(b)は、500℃で2時間焼成した膜を示す。図3(b)に示されるように、焼成前においては約10μmであった膜厚は、500℃で2時間焼成した後には約7μmとなった。500℃で焼成した膜においては、TiOの粒子の粒形が多く確認できる態様で膜に支持されていることが示された。一方、600℃で2時間焼成した膜においては、TiOの粒子がSiOに囲い込まれてしまい、その粒形がほとんど確認できなかった。
【0030】
図4は、焼成前の膜の解析像を示す図であり、図4(a)は、焼成前の膜の上面のSEM写真を示し、図4(b)および(c)は、それぞれSiKαおよびTiKαのEDXマップを示す。図4(a)に示されるように、膜表面には約1μmの幅でクラックが観察され、膜が島状構造をもって形成されていることが示された。また、図4(b)および(c)に示されるように、EDX分析においても、TiおよびSiともに同様のクラックの存在を確認することができた。この結果から、本発明のTi/Si光触媒活性膜においては、ガラス基材上にTiおよびSiが島状構造をもって存在していることが示された。図5は、500℃で2時間焼成した膜の上面のSEM写真を示す。図5に示されるように、500℃で2時間焼成した後においても上述した島状構造が維持されていることがわかった。
【0031】
図6は、550℃で2時間焼成後の膜の解析像を示す図であり、図6(a)は、550℃で2時間焼成後の膜の上面のSEM写真を示し、図6(b)および(c)は、それぞれSiKαおよびTiKαのEDXマップを示す。図6(a)に示されるように、550℃で焼成した膜においては、焼成前に観察されたクラックが非常に細くなっていることが示された。一方、図6(c)に示すTiKαマップにおいては、Tiの島状構造間にクラックが確認されたが、図6(b)に示すSiKαマップにおいては細いクラックさえ確認することができなかった。この結果から、550℃で2時間焼成した場合、Tiはほとんど拡散しなかったものの、Si(SiO)がガラス基材の表面水平方向に拡散しクラックを埋めたことが示された。
【0032】
図7は、本発明のTi/Si光触媒活性膜の断面におけるSiKαのEDXマップを示す。図7(a)は、焼成前のSiKαのEDXマップを示し、図7(b)は、500℃で2時間焼成後のSiKαのEDXマップを示す。図7に示されるように、焼成前においては、膜の厚み方向においてほぼ均一に分散していたSiが、焼成後においては、ガラス基材側に拡散し、膜の厚み方向においてガラス基材側に向かうほど多く存在していることがわかった。
【0033】
図8は、本発明のTi/Si光触媒活性膜の断面におけるTiKαのEDXマップを示す。図8(a)は、焼成前のTiKαのEDXマップを示し、図8(b)は、500℃で2時間焼成後のTiKαのEDXマップを示す。図8に示されるように、Tiは、焼成の前後のいずれにおいても膜の厚み方向においてほぼ均一に分散して存在することがわかった。
【0034】
(酸化チタン・ガラス複合材の特性評価)
(1)光触媒活性
本発明の酸化チタン・ガラス複合材の光触媒活性について検証した。未焼成のサンプル、および450℃、500℃、550℃、および600℃の条件下で焼成したサンプルについて、メチレンブルーによって染色し、紫外線照射の下、染色されたサンプルの白色化までの時間を調べた。図9は、焼成温度(℃)と白色化までの時間(h)の関係を示す。この結果から、焼成温度が530℃を超えると光触媒活性が徐々に低下することが示された。
【0035】
(2)密着強度
本発明の酸化チタン・ガラス複合材におけるTi/Si光触媒活性膜とガラス基材との密着強度について検証した。検証は、テープ引き剥がしによって実施した。ガラス基材上に形成されたTi/Si光触媒活性膜試料に市販のセロハンテープを密着させた後、これを引き剥がし、ガラス基材上に残存した量を比較した。TiOの残存量(%)=テープをはがした後の酸化チタン・ガラス複合材の質量/焼成後の酸化チタン・ガラス複合材の質量×100から算出した。図10は、焼成温度と残存量(%)の関係を示す。この結果から、焼成温度が470℃より低い場合には密着強度が充分でなく、さらに530℃を超えると密着強度が徐々に低下することが示された。
【0036】
(3)耐水性
本発明の酸化チタン・ガラス複合材の耐水性について検証した。ホウケイ酸ガラスチューブ(外径25mm、長さ170mm)の外周面に対し、上述した方法によってTi/Si光触媒活性膜をコーティングしたのち500℃で2時間焼成して酸化チタン・ガラス複合材を作製した。作製した酸化チタン・ガラス複合材10を紫外線透過性の石英管(内径32mm、長さ200mm)に同心円状に挿設したのち両端を塞いで浄化処理装置を作製した。この浄化処理装置の両端に流入口および排出口を設け、水を循環させた。120日後、浄化処理装置の中から酸化チタン・ガラス複合材を取出し重量を量ったところ、Ti/Si光触媒活性膜の剥離等による重量欠損は全く観察されなかった。また、その後さらに半年以上、浄化の実験を繰り返し実施したが、重量変化など著しい変化は認められなかった。
【0037】
上述した実施例から、470〜530℃の焼成温度条件下で形成した本発明の酸化チタン・ガラス複合材は、水浄化装置に適用した場合に好適な光触媒活性ならびに密着強度を示し、また高い耐水性が示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上、説明したように、本発明によれば、簡便且つ安価な方法で製造可能であり、水浄化処理装置に適用された場合に必要十分な耐水性を担保しうる耐水性酸化チタン・ガラス複合材、その製造方法及び該複合材を含む水浄化処理装置が提供される。本発明の耐水性酸化チタン・ガラス複合材を備える水浄化処理装置は、水中に長期間にわたりメンテナンスフリーで設置することが可能であり、地下水や河川などの水源の環境浄化への応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の酸化チタン・ガラス複合材10を概念的に示した図。
【図2】本発明の水浄化処理装置20の概略図。
【図3】Ti/Si光触媒活性膜の断面のSEM写真を示した図。
【図4】焼成前のTi/Si光触媒活性膜の解析像を示した図。
【図5】500℃で2時間焼成したTi/Si光触媒活性膜の上面のSEM写真を示した図。
【図6】550℃で2時間焼成後のTi/Si光触媒活性膜の解析像を示した図。
【図7】Ti/Si光触媒活性膜の断面におけるSiKαのEDXマップを示した図。
【図8】Ti/Si光触媒活性膜の断面におけるTiKαのEDXマップを示した図。
【図9】Ti/Si光触媒活性膜の焼成温度(℃)と白色化までの時間(h)の関係を示した図。
【図10】Ti/Si光触媒活性膜の焼成温度と残存量(%)の関係を示した図。
【符号の説明】
【0040】
10…本発明の酸化チタン・ガラス複合材、12…ガラス基材、14…光触媒活性膜、16…TiO微粒子、18…SiO、20…本発明の水浄化処理装置、22…水貯留部、23…紫外線照射部、24…注入流路、26…排出流路
【出願人】 【識別番号】800000080
【氏名又は名称】タマティーエルオー株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー


【公開番号】 特開2008−6395(P2008−6395A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180963(P2006−180963)